説明

固相担体上における分子間の非特異相互作用の抑制方法

本発明は、分子を固相担体に固定化し、当該固相上で該分子と特異的に相互作用する分子との間での特異相互作用を解析する過程において、固相担体における固相表面の疎水的性質を調節すること、特に固相担体への分子の固定化の際に親水性スペーサーを介在させることを特徴とする、分子間の非特異的な相互作用を抑制する方法を提供し、かかる方法によって、分子間の非特異的な相互作用を抑制することが可能となり、固相上への非特異的な吸着を低減化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、固相担体を用いた分子間相互作用における基盤技術に関する。より詳しくは、解析を目的とする分子を固相担体に固定化し、当該固相上での分子間相互作用を活用し、当該相互作用を測定、解析することによって、解析を目的とする分子に特異的な相互作用を有する分子(以下、ターゲット分子ともいう)を選別、精製する、あるいは分子間の特異的な相互作用を解析する技術に関する。
【背景技術】
近年、分子間相互作用を基盤とした手法を用い、ある特定の分子に特異的な相互作用を有する分子を探索する試み、あるいは分子間相互作用を詳細に検討する研究が盛んに行われている。これは具体的には、低分子−低分子、低分子−高分子、あるいは高分子−高分子の組み合わせのうちの片方の分子を固相担体に固定し、両分子間の相互作用を測定する研究、あるいはそれに基づいて目的とするターゲット(固相担体に固定化した分子に特異的な相互作用を有する分子)を精製する研究に代表される。分子間相互作用を基盤とした各種手法の例としては、後者の例としての1)アフィニティー樹脂を用いたターゲット研究、前者の例としての2)表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonanse:SPR)を応用した方法が有名である。1)の例としては、1989年のシュライバー教授によるアフィニティー樹脂を用いた免疫抑制剤FK506の結合タンパク質FKBP(FK506 binding proteins)の発見(FK506の細胞内結合タンパク質としてのFKBP12の発見、Nature,341,758,1989)、および引き続き行われたFK506−FKBP複合体によるFK506薬効メカニズムにおけるカルシニューリン阻害作用の発見(Cell,66,807−815,1991)や、抗癌剤Trapoxinのターゲットタンパク質としてのHDAC(Science,272,408,1996)発見等が有名である。また2)の例としては、固相担体として金薄膜を利用し、化合物あるいはタンパク質等とそれと特異的に相互作用するタンパク質等との相互作用を詳細に検討できるBIACORE(商品名)が有名である。
しかし、これまでに上記手法において、1)アフィニティー樹脂を用いたターゲット探索においてはアフィニティー樹脂に結合したタンパク質をSDSゲル等で解析する際に特異的タンパク質を覆い隠すような非特異的タンパク質が存在し、特異的タンパク質の検出が困難になる、あるいは2)BIACORE等を用いた解析においては、大きな非特異的タンパク吸着に起因するピークの存在による特異的タンパク結合によるピーク判別が困難になる等、特異的な分子間相互作用に基づく選別、精製の障害となる非特異的な分子間相互作用の存在が問題となってきた。これらは、重要な基盤技術である固相担体、詳しくは固相担体の表面の性状が原因と経験上考えられてきたが、どのような性状が非特異的な相互作用の要因となっているのか、またこのような非特異的な分子間相互作用を効率的に抑制する方法は明確に知られていないのが現状である。例えばTentaGel(Fluka社、Cat.No=86364)等一部の樹脂はPEGスペーサーを有する化学的・物理的に安定でかつアフィニティークロマト用樹脂としても使用されているが(例;Thorpe DS,Walle S.,Combinatorial chemistry defines general properties of linkers for the optimal display of peptide ligands for binding soluble protein targets to TentaGel microscopic beads.,Biochem Biophys Res Commun 2000 Mar 16;269(2):591−5)、非特異的な相互作用の抑制にどのような構造がどのように寄与しているのか等の基礎的な技術は知られないできているし、その非特異的な相互作用がどの程度抑制されているかあるいはアフィニティー樹脂として十分機能しているのかについての情報も充分でないのが現状である。
そのようなPEGスペーサーとしては上記したTentaGelやArgoGel(Argonaut社)が市販されている。これらの構造は下記の通りである。

また、親水的な性質を有する糖誘導体から構成される樹脂(例えば、アフィゲル(AffiGel;Bio−Rad社、Cat.No=153−2401)やセファロース誘導体(ファルマシア社、ECH Sepharose 4B、Cat.No=17−0571−01)等が知られている)は、非特異的な分子間相互作用は小さいものの、糖誘導体であるため物理的・化学的に不安定でその使用は制限されるものであった。
上記分子間相互作用を基盤とした手法において、非特異的な相互作用を人為的に抑制することが可能となれば、得られた結果が特異的タンパク結合によるものかあるいは非特異的タンパク吸着によるものかの検定をする必要がなくなり、両者の区別が現実的に不可能であるためによる研究の中断の機会が減少するばかりでなく、使用するタンパク等の必要量も大幅に削減でき時間的面、労力的面においても大幅なコスト削減が可能となる等、これらの手法の適応は一段と増すと考えられる。
本発明は、固相担体上での分子間相互作用の解析において障害となる非特異的な相互作用を排除、抑制する方法の提供を目的とし、さらに当該方法を利用して、固相担体上に固定化された分子と特異的な相互作用を有する分子を精製・解析する方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、リガンドとして特定の低分子化合物を固相担体における固相表面に固定し、固定化したリガンドと特異的に相互作用する分子(ターゲット分子)あるいは非特異的に相互作用する分子を定量的に観測する研究を行い、固定化する化合物(リガンド)の疎水性パラメーターと非特異的な相互作用に相関性があること、すなわち固相表面の疎水的な性質が分子間の非特異的な相互作用を引き起こす要因の一つとなり得ることを見出した。さらにかかる知見をもとに、固相表面と検討対象分子であるリガンドとの結合に親水性のスペーサーを導入することにより非特異的な相互作用を抑制することに成功して本発明を完成するに至った。
即ち本発明は下記の通りである。
(1)固相担体における固相表面の疎水的性質を調節することを特徴とする、分子の固相表面への非特異的な吸着を調節する方法。
(2)分子Aを固相担体に固定化し、当該固相上での分子Aと該分子Aと特異的に相互作用する分子Bとの間での特異的な相互作用を解析する過程において、固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理を行うことを特徴とする、分子Aおよび/または固相担体と分子B以外の分子との非特異的な相互作用を抑制する方法。
(3)分子Aを固相担体に固定化し、当該固相上での分子Aと該分子Aと特異的に相互作用する分子Bとの間での特異的な相互作用を用いて分子Bを選別する過程において、固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理を行うことを特徴とする、分子Aおよび/または固相担体と分子B以外の分子との非特異的な相互作用を抑制する方法。
(4)分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および低分子化合物、低分子化合物および高分子化合物、ならびに高分子化合物および高分子化合物のいずれかである上記(2)または(3)記載の方法。
(5)分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および高分子化合物、または高分子化合物および高分子化合物である上記(2)または(3)記載の方法。
(6)固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理が、分子Aの固相担体への固定化の際にそれらの間に親水性スペーサーを導入することである、上記(2)または(3)記載の方法。
(7)親水性スペーサーが、固相担体および分子Aと結合した状態で以下の特徴のいずれかを少なくとも有するものである、上記(6)記載の方法:
(i)水素結合アクセプター数が6以上である、
(ii)水素結合ドナー数が5以上である、
(iii)水素結合アクセプター数および水素結合ドナー数の総計が9以上である。
(8)さらに、該親水性スペーサーがその分子中にカルボニル基を1以上有するものである、上記(7)記載の方法。
(9)さらに、該親水性スペーサーが水溶液中で電荷的に陽性あるいは陰性になる官能基を有さないことを特徴とする、上記(7)または(8)記載の方法。
(10)分子Aを固相担体に固定化し、当該固相上での分子Aと該分子Aと特異的に相互作用する分子Bとの間での特異的な相互作用を解析する方法であって、固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理を行うことにより分子Aおよび/または固相担体と分子B以外の分子との非特異的な相互作用を抑制することを特徴とする方法。
(11)分子Aを固相担体に固定化し、当該固相上での分子Aと該分子Aと特異的に相互作用する分子Bとの間での特異的な相互作用を用いて、分子Bを選別する方法であって、固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理を行うことにより分子Aおよび/または固相担体と分子B以外の分子との非特異的な相互作用を抑制することを特徴とする方法。
(12)分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および低分子化合物、低分子化合物および高分子化合物、ならびに高分子化合物および高分子化合物のいずれかである上記(10)または(11)記載の方法。
(13)分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および高分子化合物、または高分子化合物および高分子化合物である上記(10)または(11)記載の方法。
(14)固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理が、分子Aの固相担体への固定化の際にそれらの間に親水性スペーサーを導入することである、上記(10)または(11)記載の方法。
(15)親水性スペーサーが、固相担体および分子Aと結合した状態で以下の特徴のいずれかを少なくとも有するものである、上記(14)記載の方法:
(i)水素結合アクセプター数が6以上である、
(ii)水素結合ドナー数が5以上である、
(iii)水素結合アクセプター数および水素結合ドナー数の総計が9以上である。
(16)さらに、該親水性スペーサーがその分子中にカルボニル基を1以上有するものである、上記(15)記載の方法。
(17)さらに、該親水性スペーサーが水溶液中で電荷的に陽性あるいは陰性になる官能基を有さないことを特徴とする、上記(15)または(16)記載の方法。
(18)分子Aに対して特異的な相互作用を有する分子Bのスクリーニング方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法:
(i)分子Aを固相担体に親水性スペーサーを介して固定化する工程、
(ii)分子Bを含むかまたは含まない試料を上記(i)で得られた分子Aが固定化された固相担体に接触させる工程、
(iii)分子Aに特異的な相互作用を示したか、または示さなかった分子を同定し、解析する工程、および
(iv)上記(iii)で得られた解析結果に基づいて分子Aに対して特異的な相互作用を有する分子を分子Bと判断する工程。
(19)分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および低分子化合物、低分子化合物および高分子化合物、ならびに高分子化合物および高分子化合物のいずれかである上記(18)記載の方法。
(20)分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および高分子化合物、または高分子化合物および高分子化合物である上記(18)記載の方法。
(21)親水性スペーサーが、固相担体および分子Aと結合した状態で以下の特徴のいずれかを少なくとも有するものである、上記(18)記載の方法:
(i)水素結合アクセプター数が6以上である、
(ii)水素結合ドナー数が5以上である、
(iii)水素結合アクセプター数および水素結合ドナー数の総計が9以上である。
(22)さらに、該親水性スペーサーがその分子中にカルボニル基を1以上有するものである、上記(21)記載の方法。
(23)さらに、該親水性スペーサーが水溶液中で電荷的に陽性あるいは陰性になる官能基を有さないことを特徴とする、上記(21)または(22)記載の方法。
(24)固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる為の親水性スペーサーであって、固相担体および分子Aと結合した状態で以下の特徴のいずれかを少なくとも有するものである親水性スペーサー:
(i)水素結合アクセプター数が6以上である、
(ii)水素結合ドナー数が5以上である、
(iii)水素結合アクセプター数および水素結合ドナー数の総計が9以上である。
(25)さらに、該親水性スペーサーがその分子中にカルボニル基を1以上有するものである、上記(24)記載の親水性スペーサー。
(26)さらに、該親水性スペーサーが水溶液中で電荷的に陽性あるいは陰性になる官能基を有さないことを特徴とする、上記(24)または(25)記載の親水性スペーサー。
(27)固相担体および上記(24)〜(26)のいずれか1項に記載の親水性スペーサーを含む複合体。
(28)上記(24)〜(26)のいずれか1項に記載の親水性スペーサーおよび分子Aを含む複合体。
(29)固相担体、上記(24)〜(26)のいずれか1項に記載の親水性スペーサーおよび分子Aを含む複合体。
(30)下記式(Ia)〜(Ie)からなる群より選択されるいずれか1つの式で表される部分構造を少なくとも1つ有する、上記(24)〜(26)のいずれか1項に記載の親水性スペーサー:

(式(Ia)中、
Aは適当な連結基であり、
〜Xはそれぞれ同一または異なって単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
〜Rはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOHあるいは水酸基であり、
mは0〜2の整数であり、m’は0〜10の整数であり、m”は0〜2の整数であり、
〜Rが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Xが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(Ib)中、
nおよびn’はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(Ic)中、
p、p’およびp”はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(Id)中、
は単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
〜R10はそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOHあるいは水酸基であり、
qは1〜7の整数であり、
が複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Xが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(Ie)中、
11〜R16はそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOHあるいは水酸基であり、
rは1〜10の整数であり、r’は1〜50の整数であり、
11〜R16がそれぞれ複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)。
(31)式(Ia)〜(Ie)からなる群より選択されるいずれか1つの式で表される部分構造を2つ以上有する上記(30)記載の親水性スペーサー。
(32)固相担体および上記(30)または(31)記載の親水性スペーサーを含む複合体。
(33)上記(30)または(31)記載の親水性スペーサーおよび分子Aを含む複合体。
(34)固相担体、上記(30)または(31)記載の親水性スペーサーおよび分子Aを含む複合体。
(35)式(Ia)〜(Ie)からなる群より選択されるいずれか1つの式で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物、
但し以下の化合物は除く。

(36)式(Ia)〜(Ie)からなる群より選択されるいずれか1つの式で表される部分構造を2つ以上有する上記(35)記載の化合物。
(37)下記式(IIa)〜(IIe)からなる群より選択されるいずれか少なくとも1つの式で表される化合物:

(式(IIa)中、
Yaは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zaは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
Wa、Wa’およびWa”はそれぞれ同一または異なって水素原子または水酸基の保護基(これらの保護基は、隣り合う保護基同士で結合してジアルキルメチレン基を形成してもよい)であり、
Bは適当な連結基であり、
1a〜X3aはそれぞれ同一または異なって単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
1a〜R7aはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOH(式中、水酸基は保護されていてもよい)あるいは保護されていてもよい水酸基であり、
は0〜2の整数であり、m’は0〜10の整数であり、m”は0〜2の整数であり、
3a〜R7aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X3aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(IIb)中、
Ybは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zbは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
およびn’はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(IIc)中、
YcおよびYc’はそれぞれ同一または異なって水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zcは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
、p’およびp”はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(IId)中、
Ydは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zdは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
Wdは水素原子または水酸基の保護基であり、
4aは単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
8a〜R10aはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOH(式中、水酸基は保護されていてもよい)あるいは保護されていてもよい水酸基であり、
は1〜7の整数であり、
8aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X4aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(IIe)中、
Yeは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zeは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
11a〜R16aはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOH(式中、水酸基は保護されていてもよい)および保護されていてもよい水酸基であり、
は1〜10の整数であり、r’は1〜50の整数であり、
11a〜R16aがそれぞれ複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、
但し以下の化合物は除く。

(38)式(IIa)〜(IIe)からなる群より選択される少なくとも1つの式で表される化合物を重合してなるポリマー化合物。
(39)固相担体および上記(35)〜(38)のいずれか1項に記載の化合物を含む複合体。
(40)上記(35)〜(38)のいずれか1項に記載の化合物および分子Aを含む複合体。
(41)固相担体、上記(35)〜(38)のいずれか1項に記載の化合物および分子Aを含む複合体。
【図面の簡単な説明】
図1は、親水性スペーサーを導入することによる、固相担体上での非特異的な分子間相互作用の抑制効果を示すグラフである。固相担体として樹脂を用いた。
固相担体および/または固相担体上のFK506に吸着する分子のうち10種を選択し、それぞれの吸着量に及ぼす親水性スペーサーの導入の影響を示す。FK506に特異的な相互作用を示すFKBP12の吸着量は、親水性スペーサーの導入およびヘキサエチレングリコールの繰り返し構造の数に関わらずほぼ一定であったが、特にバンド1や2の吸着量は顕著に減少し、これらのバンドが非特異的な相互作用によりFK506結合アフィニティー樹脂に結合していたこと、および親水性スペーサーの導入によりこの非特異的な相互作用を抑制することができたことを示している。横軸はSDS−PAGEのレーンの番号を、縦軸はSDS−PAGEにおけるバンドのピーク量を相対的に表したものである。
図2は、固相表面の疎水性と非特異的な相互作用との関係を示したグラフである。縦軸は非特異的な結合に基づくと思われる6種類のタンパク質の固相表面への結合量を、SDS−PAGEにおけるバンドのピーク量をもとに相対的に表したものである。横軸は疎水性パラメーターであるCLOGPの値を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、特異的な分子間相互作用を解析し、それを利用する技術(上記)において問題視されてきた、非特異的な分子間相互作用(例えばタンパク質の固相担体への非特異的な吸着に代表される)が、固相担体における固相表面とタンパク質等の分子との疎水相互作用によるものであるという知見に基づく。従って、本発明は固相担体における固相表面の疎水的性質を調節することによって、当該固相への種々の分子の非特異的な吸着を調節する方法を提供する。
本明細書中、疎水的な性質は、一般的に疎水性パラメーターによって表すことができるが、例えば分配係数、具体的にはLOGPによって表すことができる。LOGPの算出には、簡便には、CLOGP(化合物の疎水性パラメーターを計算機によって見積もるソフトによって得られる予測値;例えばCorwin/Leo’s program(CLOGP,Daylight Chemical Information System Co.,Ltd)を使用して計算できる)等が利用されるが、疎水性のパラメーターはCLOGPに限定されるものではない。定性的に疎水性傾向が強まるにつれて、非特異的な相互作用が増加する。例えばCLOGPについて言えば、CLOGPが大きい程、疎水性が高いことを意味し、CLOGPの増加は非特異的な相互作用(例えば固相表面へのタンパク質の非特異的な吸着)の増加と相関関係にある。ここで疎水性パラメーターの変化は、例えば固相表面上に固定化する分子(分子A)を様々な値(例えばCLOGP)の疎水性パラメーターを有するものに変更することによって実施され得るし、また、固相担体と分子Aとの間に親水性のスペーサーを導入することによって、固相表面の疎水的な性質を緩和、低減化することもできる。一方、より疎水的な性質を有するスペーサーを導入すること等によって疎水性が増し、ひいては非特異的な相互作用が増加する。すなわち、本発明における疎水的性質の「調節」とはその増加ならびに低減化の両方を意図する。
当該スペーサーの導入は、CLOGPが大きいことが予測されるリガンドを固相に固定化する必要がある場合に好ましい態様であり、以下に非特異的な相互作用を抑制する手段として親水性スペーサーを用いた場合について詳述する。
本発明は、固相担体に固定化された分子(本明細書中、分子Aとも定義し、便宜上リガンドとも称する)と当該分子に対して特異的な相互作用を有する分子(本明細書中、分子Bとも定義し、便宜上ターゲット分子とも称する)との相互作用を解析する技術、かかる解析をもとに分子Bを同定、選別するという技術を提供する。本明細書中、リガンドならびにターゲット分子という用語は、互いに特異的な分子間相互作用を有する組み合わせを意図するものであって、当該組み合わせのうち、片方をリガンドとして固相に固定化すれば他方がターゲット分子となり、すなわちどちらを固相に固定化するかによって、それらの呼称は変更され得る。分子Aに特異的な相互作用を有する分子Bは1種類とは限らず、また同様に分子Bに特異的な相互作用を有する分子Aも1種類とは限らない。本明細書では分子Aならびに分子Bという用語は、互いに異なる物質であることを明確にすべく、便宜上、AあるいはBとの符号を付したものである。ある特定の分子を指すものではなく特異的な相互作用を有する分子同士の各々を意図するものである。又、このような分子Aと特異的な相互作用を有さない分子は「分子B以外の分子」と同義である。
「特異的な相互作用」とは、特定のリガンド(特定のターゲット分子)のみを特異的に認識して結合するような特性を発揮する作用であり、アゴニストあるいはアンタゴニストに対する特異的受容体、基質に対する酵素、そして例えばFK506(リガンド)に対するFK506結合タンパク質(ターゲット分子)や、ステロイドホルモンに対するステロイドホルモン受容体(例;dexamathasonとglucocorticoid receptor)、抗がん剤trapoxinに対するHDAC等の関係が「特異的な相互作用」に該当する。一方、「非特異的な相互作用」とは、それによる結合の対象が広範にわたり且つ特定分子に限定されず、反応条件によって種々変化するような状況を生じる作用をいい、本発明においては、固相上の分子Aや固相担体表面に、結合・吸着するような不特定の分子間の作用を意味する。「非特異的な相互作用」は、「特異的な相互作用」に基づくリガンドとターゲット分子の結合の障害となるか、あるいは混同されることにより「特異的な相互作用」による結合を見落としてしまう危険性がある。
本発明において「特異的な相互作用を解析する」とは、分子Aと分子Bとの間の特異的な相互作用の程度を、相互作用情報として得ることであって、例えばKd(解離速度定数)、Ka(結合速度定数)等の数値として得ることができる。本発明において「選別」とは、上記相互作用情報に基づき、分子Aと特異的な相互作用を有するか否かを判定し、分子Bを同定することを意図する。
本発明の非特異的な相互作用を抑制する方法、分子Aと分子Bとの特異的な相互作用を解析する方法ならびに分子Bを選別する方法においては、固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理を必須とする。かかる処理としては、例えば、固相担体への分子Aの固定化の際にそれらの間に親水性スペーサーを導入する方法が挙げられる。親水性スペーサーを導入することにより固相担体表面の疎水的な性質が変化し、非特異的な相互作用を抑制することができる。このような固相担体と分子Aとの間に導入された親水性スペーサーという非特異的な相互作用を抑制する手段を用いることによって、分子Aに特異的な相互作用を有する分子(ターゲット分子:分子B)を同定、選別すること、および両者の相互作用を正確に測定することが可能となる。
本発明において用いられる固相担体は、その上で分子Aと分子Bの特異的な相互作用が生じるものであれば特に限定されず、当分野で通常使用されるものが利用でき、その後に実施する分子Bの同定、選別の工程の為に行われる方法に応じて適宜決定される。材質としては、例えば、樹脂(ポリスチレン、メタクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド等)、ガラス、金属(金、銀、鉄、シリコン等)等が用いられる。これらの固相は、いかなる形状のものであってもよく、また上記した材質の種類や、その後に実施する分子Bとの相互作用の解析、分子Bの同定、選別の工程の為に行われる方法に応じて適宜決定される。例えば板状、ビーズ状、薄膜状、糸状、コイル状等が挙げられるが、樹脂からなるビーズであればカラムに充填することによりその後の操作を簡便にし、また金属の薄膜であれば表面プラズモン共鳴によるBIACORE等の担体として好適に使用できる。またガラスプレートを用いることも好適である。
本発明において使用する固相は、上述の如く、その材質や形状に特に制限はないが、当然のことながら、分子Aが固定化されないような、あるいは分子Aが固定化されるものの分子Bとの特異的な相互作用を発揮することができないような構造上の障害を有するものは、余分な工程を経る必要があって操作が煩雑になったり、あるいは使用に耐えなかったりする場合があるので、本発明を実施する上で好ましくない。
本発明において、「親水性スペーサー」とは、分子Aの固相担体への固定化の際に導入されて固相担体と分子Aとの間に介在する基となる物質であって、親水性である。親水性の程度については後述する。ここで「スペーサーが介在する」とは、該スペーサーが固相内の官能基からリガンド内の官能基までの間に存在することを意味する。該スペーサーは、その一端を固相内の官能基と結合し、他端をリガンド内の官能基と結合する。
また当該親水性スペーサーは、結果的に固相担体と分子Aとの間に介在する基として機能し得るものであれば2以上の化合物を順次、結合、重合させることによって得られるものであっても構わない。好ましくは単位化合物の重合反応によって得られる。2以上の化合物を結合あるいは重合させる過程は好ましくは固相上で行われる。固相担体と親水性スペーサーとの結合、親水性スペーサーと分子Aとの結合、ならびに親水性スペーサーを構成する各成分の結合や重合はアミド結合や、シッフ塩基、C−C結合、エステル結合、水素結合、疎水相互作用等の共有結合あるいは非共有結合であり、いずれも当分野で公知の材料ならびに反応により形成される。
本発明において、非特異的な相互作用の抑制手段として固相担体と分子Aとの間に導入させる親水性スペーサーとしては、固相担体における固相表面の疎水的な性質を変化させ、非特異的な相互作用を排除するかあるいは抑制するようなものであれば特に限定されないが、好ましくは固相担体および分子Aと結合した状態(以下、この様な状態にある親水性スペーサーを便宜上「親水性スペーサー部分」と称する)で水素結合アクセプター(HBA;hydrogen bond acceptor)数が6以上であるか、水素結合ドナー(HBD;hydrogen bond donor)数が5以上であるか、あるいは該スペーサー1分子あたりのHBA数およびHBD数の総計が9以上の化合物である。またこれらの条件を2つもしくは全て満たすような化合物であってもよい。特に好ましくはHBA数は9以上であり、HBD数は6以上である。
ここで、水素結合アクセプター数(HBA数)とは、含まれる窒素原子(N)と酸素原子(O)の総数であり、水素結合ドナー数(HBD数)とは、含まれるNHとOHの総数である(C.A.Lipinski et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 23(1997)3−25)。本発明においては、固相担体と分子Aとの間に介在する基であっても、固相担体に由来する(すなわち固相合成時にあらかじめ導入されており固相担体の一部とみなされるもの)NHやOHはそれぞれHBA数やHBD数に含めない。また、分子Aと親水性スペーサーとの結合をより容易にする為に分子Aと親水性スペーサーとの間に任意の基を親水性スペーサーとの結合の前にあらかじめ分子Aに結合あるいは導入することができるが、これらは分子Aに応じて適宜選択されるものであって、固相担体の疎水的な性質の緩和への寄与が少ないと考えられるので、当該基に含まれるNやO、あるいはNHやOHも本発明におけるHBD数やHBA数には含めない。尚、分子Aと親水性スペーサーの間への任意の基の導入も上述したような種々の共有結合あるいは非共有結合が利用され、いずれも当分野で公知の材料ならびに反応により実施される。
本願発明の状況下ではHBA数が6以上(好ましくは9以上)、HBD数が5以上(好ましくは6以上)、HBA数とHBD数の総計が9以上、というこれらの条件を少なくとも1つ、好ましくは2つ以上満たさなければ、非特異的な相互作用を十分に抑制することができず、固相担体への非特異的な吸着が生じる。従って、本願発明の親水性スペーサーにおいて「親水性」とは上記の性質を満たすことを意味する。本発明において親水性スペーサーのHBD数あるいはHBA数の上限としては、親水性であり且つ非特異的な相互作用を抑制することができるものであれば特に限定されるものではなく、適切に重合反応等を繰り返すことにより極めて高い親水性を有するスペーサーを得ることができる。また、該スペーサーはタンパク質等の高分子であってもよく、そういった観点から、いずれも5万程度の値を上限とする。
また、本発明においては、「親水性」の程度は上記定義を満たすものの物理的・化学的に不安定な化合物、例えば糖誘導体やセファロース誘導体をその基本骨格とする親水性スペーサーは、その不安定さ故にリガンドの固定化、続く種々の処理に耐えられない場合があり使用するのに好ましくない。
さらに本発明において使用する親水性スペーサーは、それ自体非特異的な相互作用(例えば該スペーサーへのタンパク質の吸着等)を生じるものでないことが好ましい。具体的には、該スペーサーが水溶液中で電荷的に陽性あるいは陰性になるような官能基を有さないことであり、当該官能基としてはアミノ基(ただし、該アミノ基に該アミノ基の塩基性を減弱させる官能基(例えばカルボニル基、スルホニル基)が結合している場合は除く)、カルボキシル基、硫酸基、硝酸基、ヒドロキサム酸基等が挙げられる。ここで水溶液中とは、具体的には、固相上での分子Aと分子Bとの相互作用を解析する過程、分子Bを選別する過程、あるいは分子Bをスクリーニングする為に実施される分子Aと分子Bとの結合反応(特異的な相互作用に基づいた反応)が行われる環境下であって、親水性スペーサーが電荷的に陽性あるいは陰性になるような官能基を有する場合にはイオン化するような条件下である。かかる条件は、例えば水溶液中、pH1〜11、温度0℃〜100℃であり、好ましくはpH中性付近(pH6〜8)、約4℃〜約40℃程度である。
さらに、本発明の親水性スペーサーは、後述する好適な親水性スペーサーとして例示される各種の構造ないしは化合物から理解されるように、その分子内に1以上のカルボニル基を有していることが好ましい。
例えば、本発明の親水性スペーサーは、下記式(Ia)〜(Ie)からなる群より選択されるいずれか一つの式で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物である。

(式(Ia)中、
Aは適当な連結基であり、
〜Xはそれぞれ同一または異なって単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
〜Rはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOHあるいは水酸基であり、
mは0〜2の整数であり、m’は0〜10の整数であり、m”は0〜2の整数であり、
〜Rが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Xが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(Ib)中、
nおよびn’はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(Ic)中、
p、p’およびp”はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(Id)中、
は単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
〜R10はそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOHあるいは水酸基であり、
qは1〜7の整数であり、
が複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Xが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(Ie)中、
11〜R16はそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOHあるいは水酸基であり、
rは1〜10の整数であり、r’は1〜50の整数であり、
11〜R16がそれぞれ複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)
本明細書において各基の定義中、「適当な連結基」とは隣接する各々の部位を連結することができる基であれば特に限定されないが、具体的には以下の基が用いられる。

(式中、R17は水素原子または炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、R18〜R21はそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOHあるいは水酸基であり、R22〜R26はそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基(該アルキル基は水酸基、カルボン酸基、アミノ基等の親水性置換基で置換されていてもよい)である)
本明細書において各基の定義中「炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
本明細書において、「炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基」とは無置換のメチレン基ならびに上記した炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で1または2置換されたメチレン基を意図する。
式(Ia)中、好ましい連結基Aとしては、

(好ましくはR17は水素原子)
であって、好ましいX〜Xはそれぞれ単結合であって、好ましいR〜Rはそれぞれ水素原子であって、好ましいmは0〜2の整数であり、好ましいm’は0〜2の整数であり、好ましいm”は0〜2の整数である。
式(Ib)中、好ましいnおよびn’はそれぞれ1〜50の整数であり、より好ましくはそれぞれ1〜5の整数であり、特に好ましくは等しく1〜5の整数であり、いっそう好ましくは等しく5である。
式(Ic)中、好ましいp、p’、p”はそれぞれ1〜50の整数であり、より好ましくはそれぞれ1〜5の整数であり、特に好ましくは等しく1〜5の整数であり、いっそう好ましくは等しく5である。
式(Id)中、好ましいXは単結合であり、好ましいR〜R10はそれぞれ水素原子であって、好ましいqは1〜4の整数であって、特に好ましくは4である。
式(Ie)中、好ましいR11〜R16は水素原子であって、好ましいrは1であって、好ましいr’は1〜50の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であって、特に好ましくは5である。
本発明の親水性スペーサーは、上記部分構造を2つ以上有していてもよく、その場合それらの部分構造は同一の式で表されるものであっても異なる式で表されるものであってもよい。
上記親水性スペーサーを少なくとも1種固相担体に固定化する。固相担体上のスペーサーの数は特に限定されず、分子Aの種類や量および分子Bの種類や量、ならびに使用するスペーサーの種類や特性に応じて当業者は適宜設定することができるし、所望の分子間相互作用が検出できれば特に決める必要はない。通常、固相ならびに分子Aに対して過剰量の親水性スペーサーを用いて固定化する。固相担体に結合しなかった親水性スペーサーは、固相担体の洗浄等の処理により反応系から容易に排除できる。
本発明において固相担体に固定化する分子A(リガンド)は特に限定されず、公知の化合物であっても今後開発される新規な化合物であってもよい。また、低分子化合物であっても高分子化合物であってもかまわない。ここで低分子化合物とは分子量1000未満程度の化合物であって、例えば医薬品として通常使用し得る有機化合物およびその誘導体や無機化合物が挙げられ、有機合成法等を駆使して製造される化合物やその誘導体、天然由来の化合物やその誘導体、プロモーター等の小さな核酸分子や各種の金属等であり、望ましくは医薬品として使用し得る有機化合物およびその誘導体、核酸分子をいう。また、高分子化合物としては分子量1000以上程度の化合物であって、タンパク質、ポリ核酸類、多糖類、およびこれらを組み合わせたものなどが挙げられ、望ましくはタンパク質である。これらの低分子化合物あるいは高分子化合物は、公知のものであれば商業的に入手可能であるか、各報告文献に従って採取、製造、精製等の工程を経て得ることができる。これらは、天然由来であっても、また遺伝子工学的に調製されるものであってもよく、また半合成等によっても得ることができる。
本発明では、上記分子Aを固定化した固相上で該分子Aとの特異的な相互作用に基づいて分子Bを選別する過程を要する。従って分子Bは、分子Aと特異的に相互作用するものであれば特に限定されるものではなく、公知化合物である場合もあれば新規物質である場合も予想される。分子Bとしては低分子化合物であっても高分子化合物であってもかまわない。分子Bが低分子化合物の場合には、低分子化合物である分子Aとの低分子化合物と低分子化合物との特異的な相互作用に基づき、あるいは高分子化合物である分子Aとの高分子化合物と低分子化合物との特異的な相互作用に基づき、分子Bが選別され得る。また分子Bが高分子化合物の場合には、低分子化合物である分子Aとの低分子化合物と高分子化合物との特異的な相互作用に基づき、あるいは高分子化合物である分子Aとの高分子化合物と高分子化合物との特異的な相互作用に基づき、分子Bが選別され得る。好ましい分子Aと分子Bの組み合わせは低分子化合物と高分子化合物、あるいは高分子化合物と高分子化合物という組み合わせである。
分子Aの分子Bとの相互作用の解析、ならびに分子Bの選別は簡便には固相上で行う。分子Bとして予め候補物質が予測される場合には、候補物質を単独で上記固相に固定化された分子Aと接触させ両者の相互作用を測定し、候補物質が分子Bであるか否か、すなわち分子Aのターゲット分子であるか否かを判断すればよいが、通常、複数の物質(高分子化合物および/または低分子化合物)を含む試料を分子Aと接触させ、複数の物質(高分子化合物および/または低分子化合物)の各々と分子Aとの相互作用の有無ならびにその相互作用の程度を測定することにより分子Bであるか否かを判断し、選別する。ここで複数の物質を含む試料としては、全て公知化合物から構成されるものであっても、一部新規な化合物を含むものであっても、さらには全て新規な化合物から構成されるものであってもよい。しかしながら、リガンドのターゲット分子の探索、あるいは昨今のプロテオーム解析の進歩によれば、全てその構造が公知な化合物の混合物であることが望ましい。全て公知な化合物から構成される試料としては、大腸菌等によって遺伝子工学的に調製されたタンパク質の混合物等であり、一部新規な化合物を含むものとしては、細胞や組織の抽出物(Lysate)であり、また全て新規な化合物から構成されるものとしては、まだその機能や構造が知られていない新規なタンパク質や新しく合成された化合物等の混合物が挙げられる。試料が混合物の場合、特に公知化合物を含む場合には、任意にこれらの化合物の試料中の含有量を所望の値に設定しておくこともできる。リガンドのターゲット分子の探索という見地にたてば、選別すべき分子Bは、低分子化合物ならびに高分子化合物であるのが好ましく、ヒト等の動物体内でのターゲット分子の探索についていえば高分子化合物であることが好ましい。
本発明は、上記固相に固定化された分子Aを用いて、当該分子Aに特異的な相互作用を有する分子Bをスクリーニングする方法を提供する。該スクリーニング方法は以下の工程を少なくとも含む。尚、本スクリーニング法における、分子Aおよび分子Bや固相担体、ならびに親水性スペーサーの各々の定義は上記した通りである。
(1)分子Aを固相担体に親水性スペーサーを介して固定化する工程。
当該工程は、分子Aと親水性スペーサーとの結合、親水性スペーサーと固相担体との結合からなる。分子Aに親水性スペーサーを結合させて、その後それらの複合体を固相担体に結合させてもよいし、固相担体に親水性スペーサーを結合させてから分子Aを結合させてもよく、分子Aが固相担体に固定化されたか否かは、分子A、あるいは分子Aに予め結合・導入された任意の基に含まれるある特定の構造乃至置換基等に基づく呈色反応等を利用して確認することができる。例えばアミノ基を認識するニンヒドリン反応等が利用できる。個々の結合は、通常当分野で実施される反応を利用して実施される。簡便且つ確実な手段としてアミド結合形成反応を利用する方法が挙げられる。本反応は、例えば「ペプチド合成の基礎と実験」(ISBN 4−621−02962−2、丸善、昭和60年初版)に従って実施できる。各反応に用いられる試薬や溶媒については当分野で通常用いられるものが利用でき、採用する結合反応によって適宜選択される。
(2)分子Bを含むかまたは含まない試料を上記(1)で得られた分子Aが固定化された固相担体に接触させる工程。
本工程において用いる試料は、上記同様、複数の物質を含むものである。その態様は特に限定されず、使用する固相担体や後の工程(3)および(4)の同定方法あるいは解析方法にどのような原理や手段、方法を用いるかによって適宜変更し得る。例えば分子Aが固定化されたビーズ樹脂を充填したカラムを用いる場合には液状とするのが好ましい。分子Bを含まない試料であれば、工程(3)で分子Aに特異的な相互作用を示さなかった分子(複数種存在する場合あり)の同定ならびに解析を行う。分子Bを含む試料であれば、工程(3)で分子Aに特異的な相互作用を示した分子B(複数種存在する場合あり)を同定、解析する。試料と固相担体とを接触させる方法は、試料内の分子Bが固相担体に固定化された分子Aと結合することができれば特に限定されず、使用する固相担体や後の工程(3)および(4)の同定方法あるいは解析方法にどのような原理や手段、方法を用いるかによって適宜変更し得る。例えば分子Aが固定化されたビーズ樹脂を充填したカラムを用いる場合には、液状にした試料をカラムに添加しカラム内を通すことにより簡便に実施される。
(3)分子Aに特異的な相互作用を示したか、または示さなかった分子を同定し、解析する工程。
かかる工程は、使用する固相担体や固定化した分子Aの種類等によって適宜変更し得るが、通常当分野で実施されている低分子化合物あるいは高分子化合物を同定する為の各種方法により行う。また、今後開発されるであろう方法によっても実施可能であろう。例えば分子Aが固定化された固相担体として分子Aが固定化されたビーズ樹脂を充填してなるカラムを用いた場合〔工程(1)〕、続く試料の添加により〔工程(2)〕、分子Aに分子Bを結合させる。結合した分子Bを緩衝液の極性を変える、あるいは過剰の分子Aをさらに加える等の処理によって分子Aから解離させ、その後同定したり、あるいは固相上の分子Aと結合した状態でそのまま界面活性剤等によって抽出して同定したりすることもできる。同定方法としては具体的には電気泳動法、免疫学的反応を用いたイムノブロッティングや免疫沈降法、クロマトグラフィー、マススペクトラム、アミノ酸シーケンス、NMR(低分子のときに特に)等の公知の手法により、またこれらの方法を組み合わせて実施する。分子Aに結合しない分子を同定する工程も上記分子Aに結合する分子を同定する方法に準じて行うことができるが、カラムの素通り画分に含まれる分子を同定の対象とするので、同定工程に入る前に予め濃縮や粗精製等の処理を行うことが好ましい。得られたデータならびに既存の報告をもとに各分子を同定し、分子Aのターゲット分子であるか否かを判断する。
また、本工程は自動化されていてもよい。例えば2次元電気泳動で得られた種々の分子のデータを直接読み取り、既存のデータベースに基づいて分子の同定を行うことも可能である。
本発明はさらに上記親水性スペーサーとして好適な化合物、当該化合物と固相担体との複合体、当該化合物と分子Aとの複合体、ならびに当該化合物、固相担体および分子Aとの複合体を提供する。当該化合物としては下記の一般式(IIa)〜(IIe)で表される化合物(以下、本発明のモノマー成分とも称する)およびそれらの重合体(以下、本発明のポリマーあるいはポリマー化合物とも称する)が挙げられる。

{式(IIa)中、
Yaは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zaは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
Wa、Wa’およびWa”はそれぞれ同一または異なって水素原子または水酸基の保護基(これらの保護基は、隣り合う保護基同士で結合してジアルキルメチレン基を形成してもよい)であり、
Bは適当な連結基であり、
1a〜X3aはそれぞれ同一または異なって単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
1a〜R7aはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOH(式中、水酸基は保護されていてもよい)あるいは保護されていてもよい水酸基であり、
は0〜2の整数であり、m’は0〜10の整数であり、m”は0〜2の整数であり、
3a〜R7aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X3aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(IIb)中、
Ybは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zbは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
およびn’はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(IIc)中、
YcおよびYc’はそれぞれ同一または異なって水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zcは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
、p’およびp”はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(IId)中、
Ydは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zdは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
Wdは水素原子または水酸基の保護基であり、
4aは単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
8a〜R10aはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOH(式中、水酸基は保護されていてもよい)あるいは保護されていてもよい水酸基であり、
は1〜7の整数であり、
8aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X4aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(IIe)中、
Yeは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zeは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
11a〜R16aはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOH(式中、水酸基は保護されていてもよい)および保護されていてもよい水酸基であり、
は1〜10の整数であり、r’は1〜50の整数であり
11a〜R16aがそれぞれ複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい}
各式の基の定義中「適当な連結基」、「炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基」および「炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基」の意味するところは上述の通りである。
式(IIa)中、好ましい連結基Bとしては、

(好ましくはR17は水素原子)
であって、好ましいX1a〜X3aはそれぞれ単結合であって、好ましいR1a〜R7aはそれぞれ水素原子であって、好ましいmは0〜2の整数であり、好ましいm’は0〜2の整数であり、好ましいm”は0〜2の整数である。
式(IIb)中、好ましいnおよびn’はそれぞれ1〜50の整数であり、より好ましくはそれぞれ1〜5の整数であり、特に好ましくは等しく1〜5の整数であり、いっそう好ましくは等しく5である。
式(IIc)中、好ましいp、p’、p”はそれぞれ1〜50の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であり、特に好ましくは等しく1〜5の整数であり、いっそう好ましくは等しく5である。
式(IId)中、好ましいX4aは単結合であり、好ましいR8a〜R10aはそれぞれ水素原子であって、好ましいqは1〜4の整数であって、特に好ましくは4である。
式(IIe)中、好ましいR11a〜R16aは水素原子であって、好ましいrは1であって、好ましいr’は1〜50の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であって、特に好ましくは5である。
各式の基の定義中の「アミノ基の保護基」、「カルボキシル基の保護基」あるいは「水酸基の保護基」は、種々の重合反応や、その後に続くリガンド等との結合を実施するのに好適なものが選択される。「アミノ基の保護基」としては、tert−ブトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;ベンジル基等のアラルキル基;ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基等の置換スルホニル基などが例示される。「カルボキシル基の保護基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基等の炭素数1〜6の直鎖状もしくは分枝状の低級アルキル基;ベンジル基等のアラルキル基などが例示される。「水酸基の保護基」としては、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基等のアリールメチル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ベンジルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等のシリル基;エトキシメチル基、メトキシメチル基等の低級アルコキシメチル基などを例示することができる。適当な保護基のリストとして、例えば公知文献「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis),T.W.Green and P.G.M.Wuts.(John Wiley & Sons,Inc.)」が挙げられる。
化合物中に複数の「アミノ基の保護基」、「カルボキシル基の保護基」および/または「水酸基の保護基」が存在する場合には、それぞれ同一のものであってもよく、保護の必要な部位に応じて適宜選択される。それ以外の各記号の定義は上述の通りである。
尚、下記の化合物はCAS番号が付された化合物であるが、固相担体における固相表面の疎水性性質を低減させる為の親水性スペーサーとしての有用性については全く知られていない。

以下に本発明のモノマー成分あるいはその誘導体の一般的製法について記載するが、記載される以外の通常当分野で実施される方法、あるいはそれらの方法を組み合わせた方法によっても又製造し得ることは当業者には明らかである。
尚、本明細書で使用する略語は下記の通りである。
略語 正式名称
Ac アセチル基
AET アミノエチルタータリックジアミド
AMT アミノメチルタータリックジアミド
Bn ベンジル基
BuP トリブチルフォスフィン
CDI 1,1’−カルボニルジイミダゾール
DABT ジハイドロキシアミノブチルタータリックアシッド
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DMAP ジメチルアミノピリジン
DME 1,2−ジメトキシエタン
DMF ジメチルホルムアミド
EDC 1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド
Et エチル基
Fmoc 9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基
Fmoc−OSu 9−フルオレニルメチルスクシンイミジルカルボネート
Gold
foil 金膜
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HyT ヒドラジノタータリックアミド
Me メチル基
NMP N−メチル−2−ピロリドン
PEG ポリエチレングリコール
PhP トリフェニルフォスフィン
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート
TBAF フッ化テトラブチルアンモニウム
TBDMS t−ブチルジメチルシリル基
TBDMSOTf トリフルオロメタンスルホン酸 t−ブチルジメチルシリル基
TBDPS t−ブチルジフェニルシリル基
TBS t−ブチルジメチルシリル基
tBu t−ブチル基
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMAD N,N,N’,N’−テトラメチルアゾジカルボキサミド
TOYO−Pearl
resin TOYOパール樹脂
Tr トリチル基
Ts トシル基(トルエンスルホニル基)
WSC 水溶性カルボジイミド(N−エチル−N’−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)
製法1:一般式(IIa)の製造方法(1)


式中、W〜Wは水酸基の保護基であり、Zはカルボキシル基の保護基であり、Yはアミノ基の保護基である。X3a’はX3aと同義であり、またX3a”もX3aと同義である。R5a′はR5aと同義であり、またR5a”もR5aと同義である。またそれ以外の各記号の定義は上述の通りである。
水酸基の保護基としては、当分野で通常用いられている任意の各基が用いられるが、具体的には、tert−ブチル基等のアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基等のアリールメチル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等のシリル基;エトキシメチル基、メトキシメチル基等の低級アルコキシメチル基などが例示され、好ましくは、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、メトキシメチル基、tert−ブチル基が挙げられる。カルボキシル基の保護基としては、当分野で通常用いられている任意の各基が用いられるが、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、イソブチル基、アリル基等の炭素数1〜6の直鎖状もしくは分枝状の低級アルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等のシリル基などが例示され、好ましくは、アリル基、tert−ブチル基、ベンジル基、tert−ブチルジフェニルシリル基が挙げられる。アミノ基の保護基としては、当分野で通常用いられている任意の各基が用いられるが、具体的には、tert−ブトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;ベンジル基等のアラルキル基;ベンゼンスルホニル基p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基等の置換スルホニル基などが例示され、好ましくは、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基が挙げられる。
アミノ基の保護および脱保護、カルボキシル基の保護および脱保護、および水酸基の脱保護は使用する保護基に応じて適宜公知の方法および試薬によって実施される。
化合物(a−4)および化合物(a−2)をアミド化によって脱水縮合する反応は、通常、等量のアミノ体とカルボン酸の存在下、1.1当量程度のN−エチル−N’−ジメチルアミノカルボジイミド、N−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール等の縮合剤を用いて、DMFや塩化メチレン等の溶媒中で、室温下1時間から10時間程度反応させることによって行なわれる。
製法2:一般式(IIa)の製造方法(2)

式中、Yはアミノ基の保護基である。R3a’はR3aと同義であり、またR3a”もR3aと同義である。R4a’はR4aと同義であり、またR4a”もR4aと同義である。R6a’はR6aと同義であり、またR6a”もR6aと同義である。R7a’はR7aと同義であり、またR7a”もR7aと同義である。それ以外の各記号の定義は上述の通りである。アミノ基の保護基としては、上記したものと同様のものが例示される。
アミノ基の脱保護は使用する保護基によって適宜公知の方法および試薬によって実施される。
化合物(a−9)および化合物(a−10)をアミド化によって脱水縮合する反応は、通常、等量のアミノ体とカルボン酸の存在下、1.1当量程度のN−エチル−N’−ジメチルアミノカルボジイミド、およびN−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール等の縮合剤を用いて、DMFや塩化メチレン等の溶媒中で、室温下1時間から10時間程度反応させることによって行なわれる。
製法3:一般式(IIa)の製造方法(3)

式中、Yはアミノ基の保護基であり、それ以外の各記号の定義は上述の通りである。アミノ基の保護基としては、上記したものと同様のものが例示される。
化合物(a−14)および化合物(a−15)をアミド化によって脱水縮合する反応は、通常、等量のアミノ体とカルボン酸の存在下、1.1当量程度のN−エチル−N’−ジメチルアミノカルボジイミド、およびN−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール等の縮合剤を用いて、DMFや塩化メチレン等の溶媒中で、室温下1時間から10時間程度反応させることによって行なわれる。
製法4:一般式(IIb)の製造方法

式中、W〜Wは水酸基の保護基であり、Halはハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子)を表し、それ以外の各記号の定義は上述の通りである。水酸基の保護基としては、上記したものと同様のものが例示される。尚nは、n−1あるいはn′−1である(n、n′は上述のとおり)。
水酸基の保護、脱保護は使用する保護基によって適宜公知の方法および試薬によって実施される。
化合物(b−4)の化合物(b−5)へのハロゲン置換反応は、通常、1当量のアルコール体に2〜3当量の四臭化炭素、および1〜2当量のトリフェニルフォスフィンを塩化メチレン等の溶媒中、0℃〜室温で、1時間から数時間反応させることによって行なわれる。
化合物(b−6)と化合物(b−2)との脱水縮合反応は、通常、1当量のアルコール体と1当量のトリブチルフォスフィンをトルエン溶媒中室温で1時間程度反応を行い、ここに1当量のフェノール体および1,1’−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)等の縮合剤を加え、0〜50℃で数時間から終夜で反応させることによって行なわれる。
化合物(b−8)と化合物(b−5)との縮合反応は、通常、0〜10℃において、1当量のフェノール体と約10倍当量の過剰の水素化ナトリウムのような強塩基をTHF等の溶媒中、10〜60分程度反応させ、そこに2当量程度のハロゲン体を加え、室温下1〜10時間程度反応させることによって行なわれる。

式中、W〜Wは水酸基の保護基であり、Alkは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基(上述と同義)、Yはアミノ基の保護基であり、それ以外の各記号の定義は上述の通りである。水酸基の保護基およびアミノ基の保護基としては、上記したものと同様のものが例示される。
水酸基あるいはアミノ基の脱保護、もしくはカルボキシル基の脱保護は使用する保護基によって適宜公知の方法および試薬によって実施される。
化合物(b−10)の化合物(b−11)へのアルコキシカルボニル化は、通常、0〜10℃において、1当量のアルコール体と3〜5倍当量程度の過剰の水素化ナトリウムのような強塩基をTHF等の溶媒中、10〜60分程度反応させ、そこに3〜5倍当量程度の過剰のハロゲン体(ブロモ酢酸−tert−ブチルエステル)を加え、室温下1〜10時間程度反応させることによって行なわれる。
化合物(b−12)の化合物(b−13)へのアジド化は、通常、1当量のアルコール体と1.5当量程度のp−トルエンスルフォニルクロライドおよび0.2当量程度の4−ジメチルアミノピリジンのような塩基をピリジン等の溶媒中、30〜50℃で、数時間反応させることによって得られるO−トシル体を単離し、それに約10倍当量程度の過剰のアジ化ナトリウムを加え、DMF等の溶媒中、50〜90℃で数時間反応させることにより行なわれる。
化合物(b−13)の化合物(b−14)へのアミノ化は、通常、1当量のアジド体を、0.1当量程度の水酸化パラジウムのような触媒を用いてメタノール等の溶媒存在下、1〜数気圧の水素存在下、室温で数時間反応させることによって得られる。
製法5:一般式(IIc)の製造方法
各構造式中、特定の基、特定の化合物を記載する場合があるが、それらは一例であって、特に限定されるものではない。同等の働きを有するものであれば適宜変更し得る。


式中、各記号の定義は上述の通りである。式中の水酸基の保護基、アミノ基の保護基、カルボキシル基の保護基はその一例を示したものであって、それ以外にも通常当分野で用いられる任意の各基が用いられる。具体的には上記したものと同様なものが例示される。アミノ基の保護、カルボキシル基の脱保護、および水酸基の保護ならびに脱保護の方法は、本明細書に記載する以外にも、使用する保護基に応じて適宜公知の方法および試薬によって実施され得ることは当業者には明らかであろう。
化合物(c−1)の化合物(c−2)への水酸基の保護は、例えば保護基としてTBSを使用する場合には、通常、1当量のフェノール体、3当量程度の塩基(例えばイミダゾール)および2当量程度のシリルクロライドを、DMF等の溶媒中で、室温で10時間程度反応させることによって行なわれる。
化合物(c−2)と化合物(c−4)との脱水縮合反応は、通常、1当量のアルコール体と1当量のトリブチルフォスフィンとをトルエン溶媒中室温で1時間程度反応を行い、ここに1.3当量のフェノール体および1.3当最の1,1’−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)等の縮合剤を加え、室温で数時間から終夜反応させることによって行なわれる。
化合物(c−7)の化合物(c−8)への水酸基の脱保護は、通常、1当量のフェノールの保護体(例えばシリル保護体)、1.2当量程度のテトラブチルアンモニウムフルオライドをTHF等の溶媒中で、室温で1時間程度反応させることによって行う。
化合物(c−8)と化合物(c−6)との縮合反応は、通常、室温で1当量のフェノール体と約5.2当量の過剰の水素化ナトリウムのような強塩基をTHFやDMF等の溶媒中で、10〜60分程度反応させ、そこに4当量程度のハロゲン化物(例えばアルキルブロマイド)を加え、室温で約4時間程度反応させることによって行われる。この縮合反応によって化合物(c−9)が得られる。
化合物(c−9)の化合物(c−10)への水酸基の脱保護は、通常、1当量のフェノール保護体(例えばトリチル保護体)を、TFAを含む塩化メチレン等の溶媒中で、室温で約1時間程度反応させることによって行なわれる。
化合物(c−10)の化合物(c−11)への水酸基の保護は、例えば保護基としてtert−ブトキシカルボニル基を使用する場合には、通常、1当量のアルコール体、約4当量の水素化ナトリウム等の強塩基、約4当量のブロモ酢酸tert−ブチルエステルを、THFやDMF等の溶媒中で、室温で約4時間程度反応させることによって行われる。
化合物(c−11)の化合物(c−12)への水酸基の脱保護は、通常、1当量のフェノール保護体(例えばベンジル保護体)、触媒量の水酸化パラジウムを、水素ガス雰囲気下、メタノール等の溶媒中で、室温で約6時間程度反応させることによって行なわれる。
化合物(c−12)の化合物(c−13)への水酸基の保護は、例えば保護基としてTsを使用する場合には、通常、1当量のアルコール体、触媒量のDMAP等の塩基、約6当量のトシルクロライドを、ピリジン等の溶媒中で、室温〜40℃で約2時間程度反応させることによって行われる。
化合物(c−13)の化合物(c−14)へのアジド化は、1当量のトシル体、約15当量のアジ化ナトリウムを、DMF等の溶媒中で、約60℃、約2時間程度反応させることによって行われる。
化合物(c−14)の化合物(c−15)へのアミノ化および、化合物(C−16)へのアミノ基の保護基の導入は、通常、1当量のフェノール保護体(ベンジル保護体)、触媒量の水酸化パラジウムを水素ガス雰囲気下、メタノール等の溶媒中で、室温で約1時間程度反応させることによって得られるアミン体(c−15)に、約0.84当量の炭酸9−フルオレニルメチルスクシンイミジル、約1.5当量のトリエチルアミンのような塩基を加え、THF等の溶媒中で、室温で約1時間程度反応させることによって行われる。
化合物(c−16)の化合物(IIc)へのカルボキシル基の脱保護は、通常、1当量のフェノール保護体(例えばt−ブチル保護体)をTFAを含む水溶液中で、室温、約10時間程度反応させることによって行われる。
製法6:一般式(IId)の製造方法
(R10a=R9a=水素原子,R8a=水素原子,X4a=単結合)
各構造式中、特定の基、特定の化合物を記載する場合があるが、それらは一例であって、特に限定されるものではない。同等の働きを有するものであれば適宜変更し得る。

式中Wは水酸基の保護基であり、他の記号の定義は上述の通りである。水酸基の保護基としては上記したものと同様なものが例示される。水酸基の脱保護は使用する保護基に応じて適宜公知の方法および試薬によって実施される。
化合物(d−4)から目的化合物(IId)へのカルボキシル化は、通常、1当量のアルコール体を、10当量の過ヨウ素酸ナトリウム、0.4当量程度の塩化ルテニウム水和物(III)のような酸化剤を水、アセトニトリル、ジクロロメタン等の溶媒存在下、室温で数時間反応させることによって得られる。
製法7:一般式(IIe)の製造方法(1)
各構造式中、特定の基、特定の化合物を記載する場合があるが、それらは一例であって、特に限定されるものではない。同等の働きを有するものであれば適宜変更し得る。

水酸基の保護基、アミノ基の保護基としては上記したものと同様なものが例示される。水酸基の脱保護は使用する保護基によって適宜公知の方法および試薬によって実施される。
化合物(e−2)の化合物(e−3)へのカルボニル基の還元反応は1.2当量程度のNaBHのような還元剤をメタノール等の溶媒中で反応させ、引き続きアジド基の還元反応(アミノ化)は、通常、1当量のアジド体を、0.1当量程度の水酸化パラジウムのような触媒をメタノール等の溶媒存在下、1〜数気圧の水素存在下、室温で数時間反応させることによって行う。
化合物(e−3)の化合物(e−4)への水酸基の脱保護は1N水酸化ナトリウム等のアルカリをジオキサン、水等の混合溶媒中で反応させ、引き続きアミノ基の保護は(c−15)から(c−16)と同様な反応により行うことが出来る。
化合物(e−4)の化合物(e−5)への水酸基の保護は、例えば、20当量程度のTBDMS−OTfを2,6−Lutidine等の存在下反応させることにより行うことが出来る。
化合物(e−5)の化合物(IIe)への水酸基の脱保護は10%ギ酸/ジクロロメタンと反応させ、引き続きアルコールの酸化は化合物(d−4)から化合物(IId)への反応と同様にして行うことが出来る。
製法8:一般式(IIe)の製造方法(2)


式中、各記号の定義は上述の通りである。式中の水酸基の保護基、アミノ基の保護基、カルボキシル基の保護基はその一例を示したものであって、それ以外にも通常当分野で用いられる任意の各基が用いられる。具体的には上記したものと同様なものが例示される。アミノ基の保護、カルボキシル基の脱保護、および水酸基の保護の方法は、本明細書に記載する以外にも、使用する保護基に応じて適宜公知の方法および試薬によって実施され得ることは当業者には明らかであろう。
化合物(e−7)から化合物(e−8)へのアジド化は、1当量の化合物(e−7)、触媒量のDMAP等の塩基、約10当量のトシルクロライドを、塩化メチレンなどの溶媒中で、室温〜40℃で約2時間〜終夜反応させることによって化合物(e−7)のトシル誘導体を得、得られたトシル誘導体1当量に対して約15当量のアジ化ナトリウムを、DMSO等の溶媒中で、約60〜70℃で約5時間程度反応させることによって行われる。
化合物(e−8)をアミノ化し、続いて当該アミノ基を保護することによって、化合物(IIe)が得られる。
通常、1当量の化合物(e−8)、触媒量の水酸化パラジウムを水素雰囲気下、メタノールやエタノールなどの溶媒中で、室温で約1〜2時間程度反応させることによってアミン体を得る。ついで、得られたアミン体に常法に従い、例えば炭酸9−フルオレニルメチルスクシンイミジル等を用いて、トリエチルアミンのような塩基の存在下、THF等の溶媒中で反応させることによってアミノ基の保護基を導入する。
本発明において、モノマー成分を重合してポリマーとするには、当分野で通常実施されている種々の方法を採用する。
具体的には上記一般式(IIa)〜(IIe)で表される化合物を用いてアミド化、N−置換アミド化、シッフ塩基形成(シッフ塩基形成後、該当箇所を還元反応に付すこともできる)、エステル化、アミンあるいは水酸基によるエポキシ開裂反応等の化学反応に付すことによってモノマー成分を重合する。当該重合反応は、もとになるモノマー成分がフリーな状態でも行うことができるが、後の精製工程が容易になるという点から、好ましくはもとになるモノマー成分を固相担体上に固定化し、次いで固相担体上で重合反応を行う。これらの反応に使用する試薬や反応条件は通常当分野で実施されている方法に準じる。
【実施例】
以下、製造例ならびに実施例、実験例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
製造例1:17−アリル−14−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−1−ヒドロキシ−12−{2−[4−(7−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ−カルボニル)ヘプタノイル−オキシ)−3−メトキシ−シクロヘキシル]−1−メチル−ビニル}−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザ−トリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオンの合成

17−アリル−14−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−1−ヒドロキシ−12−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−シクロヘキシル)−1−メチル−ビニル]−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザ−トリシクロ[22.3.1.04.9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン(FK506;138mg,0.15mmol)、O−モノ(tert−ブチル−ジメチル−シラニル)オクタン二酸(86.7mg,0.218mmol)、ジメチルアミノピリジン(DMAP;16.5mg,0.098mmol)、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC/HCl;69.1mg,0.261mmol)および塩化メチレン(CHCl;1ml)の混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応物を酢酸エチル−水混合液に注ぎ、抽出した。得られた有機相を水、食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥した。MgSOを濾別後、減圧下濃縮した。こうして得られた残渣をシリカゲルカラムで精製し(20%AcOEt(n−ヘキサン中)で溶出)、目的とする17−アリル−14−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−1−ヒドロキシ−12−{2−[4−(7−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ−カルボニル)ヘプタノイル−オキシ)−3−メトキシ−シクロヘキシル]−1−メチル−ビニル}−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザ−トリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン(44mg,24.6%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:−0.1−0.1(12H,m),0.7−2.6(47H,m),0.85 and 0.86(18H,s),1.50(3H,s),1.63(3H,s),2.75(1H,m),3.31(3H,s),3.35(3H,s),3.39(3H,s),4.05(1H,m),3.0−4.4(6H),4.5−5.8(9H,m).
製造例2:17−アリル−1,14−ジ−ヒドロキシ−12−{2−[4−(7−カルボキシ−ヘプタノイル−オキシ)−3−メトキシ−シクロヘキシル]−1−メチル−ビニル}−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザ−トリシクロ[22.3.1.04.9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオンの合成

製造例1で調製した17−アリル−14−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−1−ヒドロキシ−12−{2−[4−(7−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ−カルボニル)ヘプタノイル−オキシ)−3−メトキシ−シクロヘキシル]−1−メチル−ビニル}−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザ−トリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン(44mg,0.037mmol)とアセトニトリル(0.88ml)の混合物に46−48%のフッ化水素(HF)水(0.12ml)を静かに加え室温にて終夜撹拌した。反応物を酢酸エチル−水混合液に注ぎ、抽出した。得られた有機相を水、食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥した。MgSOを濾別後、減圧下濃縮した。こうして得られた残渣をシリカゲルカラムで精製し(5%メタノール(クロロホルム中))、目的とする17−アリル−1,14−ジ−ヒドロキシ−12−{2−[4−(7−カルボキシ−ヘプタノイル−オキシ)−3−メトキシ−シクロヘキシル]−1−メチル−ビニル}−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザ−トリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン(14.2mg,40%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:0.7−2.6(47H,m),1.50(3H,s),1.63(3H,s),2.75(1H,m),3.31(3H,s),3.35(3H,s),3.39(3H,s),4.05(1H,m),3.0−4.4(6H),4.5−5.8(11H,m).
MS(m/z):960(M
製造例3:FK506付TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)の合成

製造例2で調製した17−アリル−1,14−ジヒドロキシ−12−{2−[4−(7−カルボキシ−ヘプタノイル−オキシ)−3−メトキシ−シクロヘキシル]−1−メチル−ビニル}−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザ−トリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン(38.4mg,0.04mmol)、TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino,100μl,遊離アミノ基(available amino group)は0.01mmol)、EDC/HCl(9.2mg,0.048mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt;6.5mg,0.048mmol)およびジメチルホルムアミド(DMF;1ml)の混合物を室温で6時間撹拌した。反応の終点はニンヒドリン反応で残存アミノ基が肉眼で観測できなくなることで確認した。この時の反応率を換算すると約82%であった。反応終了確認後、DMFで樹脂を5回洗浄した。ここに無水酢酸(100μl)およびDMF(400μl)を加え1時間室温で撹拌した。その後DMFで十分洗浄し、得られたFK506付TOYOパール樹脂は後述する結合実験に用いた。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する基のHBA数は4、HBD数は3である(但し、FK506にあらかじめ導入された基に由来する分は数に入れない)。当該HBA数およびHBD数は市販のTOYOパール樹脂のリンカーに由来する。
製造例4:FK506付AffiGel樹脂の合成

TOYOパール樹脂の代わりにAffiGel樹脂(Bio−Rad社)を用いる以外は製造例3と同様な手法によりFK506付AffiGel樹脂を合成した。得られたFK506付AffiGel樹脂は後述する結合実験に用いた。AffiGel樹脂とFK506の間に介在する基のHBA数は3、HBD数は2である(但し、FK506にあらかじめ導入された基に由来する分は数に入れない)。当該HBA数およびHBD数は市販のAffigel樹脂のリンカーに由来する。
製造例5:親水性スペーサー分子の合成(1−1)
2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)エタノールの合成

ペンタエチレングリコール(化合物1;10g,42.0mmol)をピリジン(100ml)に溶解し、トリフェニルメチルクロリド(11.6g,41.6mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.9g,7.4mmol)を室温で加えた後、35℃で終夜攪拌した。これを減圧濃縮して得られた残渣をクロロホルムに溶解し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水、及び飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、クロロホルムで洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学 60N;600ml)に供し、溶出液(60:1 クロロホルム(CHCl)−メタノール(MeOH)にて目的の2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)エタノール(化合物2;10.4g,51.2%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.53(1H,t),3.16(2H,t),3.49−3.63(18H,m),7.14−7.41(15H,m).
製造例6:親水性スペーサー分子の合成(1−2)
[2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸の合成

製造例5で得られた化合物2(10.2g,21.2mmol)をテトラヒドロフラン(THF;200ml)及びDMF(50ml)の混合溶媒に溶解し、0℃にて水素化ナトリウム(3.1g;油性,60wt%)を少しずつ加えた後、室温で30分間攪拌した。これを0℃に冷却した後、ブロモ酢酸(6.5g,46.8mmol)を少しずつ加え、室温で30分間攪拌した。その後更に水素化ナトリウム(11.6g;油性,60wt%)を室温で少しずつ加えて室温で1時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水(25ml)を徐々に加えた後、反応液の量が約100mlになるまで減圧濃縮した。これに酢酸エチル(200ml)及び、食塩水(100ml)を加え、攪拌しながら2M硫酸水素カリウム水を加え、pHを6に調製した。有機相を抽出し、30℃にて減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学 60N;400ml)に供し、溶出液(85:15 CHCl−MeOH)にて目的の[2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸(化合物3)の粗精製物(12.4g)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.34(2H,t),3.76−3.84(20H,m),4.13(2H,s),7.30−7.83(15H,m).
製造例7:親水性スペーサー分子の合成(1−3)
[2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸 ベンジルエステルの合成

製造例6で得られた化合物3の粗精製物(12.4g)を塩化メチレン(100ml)に溶解し、4−ジメチルアミノピリジン(0.29g,2.4mmol)、ベンジルアルコール(3.1ml,30.0mmol)を加えた。これを0℃に冷却し、水溶性カルボジイミド(N−エチル−N’−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;WSC;4.5g,23.5mmol)を加え、室温にて終夜攪拌した。反応液をクロロホルムで抽出し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水、及び飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、クロロホルムで洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学 60N;600ml)に供し、溶出液(1:1 酢酸エチル−ヘキサン)にて目的の[2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸 ベンジルエステル(化合物4;12.0g,90.1%,2steps)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.16(2H,t),3.55−3.65(20H,m),4.11(2H,s),5.11(2H,s),7.15−7.40(20H,m).
製造例8:親水性スペーサー分子の合成(1−4)
[2−(2−{2−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸 ベンジルエステルの合成

製造例7で得られた化合物4(12.0g)を5%トリフルオロ酢酸塩化メチレン溶液(150ml)に溶解し、0℃にて水(10ml)を加えて、0℃にて20分間攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水に注いで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、クロロホルムで洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学 60N;400ml)に供し、溶出液(1000:15CHCl−MeOH)にて目的の[2−(2−{2−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸 ベンジルエステル(化合物5;7.0g,95%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.80(1H,t),3.62−3.76(20H,m),4.22(2H,s),5.20(2H,s),7.36−7.41(5H,m).
製造例9:親水性スペーサー分子の合成(1−5)
[2−(2−{2−[2−(2−アジド−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸 ベンジルエステルの合成

製造例8で得られた化合物5(7.0g,18.1mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.4g,3.3mmol)をピリジン(45ml)に溶解し、0℃に冷却した。これにp−トルエンスルホニルクロリド(5.2g,27.2mmol)を加えて室温で終夜攪拌し、更にp−トルエンスルホニルクロリド(3.1g,16.2mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(120mg,0.98mmol)を加えて30℃で2時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水(3ml)を加えて減圧濃縮し、得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水、及び飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、酢酸エチルで洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をDMF(50ml)に溶解し、アジ化ナトリウム(11.8g,0.18mol)を加えて60℃で1時間攪拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水、及び飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、酢酸エチルで洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学 60N;250ml)に供し、溶出液(3:1 酢酸エチル−ヘキサン)にて目的の[2−(2−{2−[2−(2−アジド−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸 ベンジルエステル(化合物6;3.3g,44.3%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.31(2H,t),3.54−3.87(20H,m),4.13(2H,s),5.12(2H,s),7.20−7.30(5H,m).
製造例10:親水性スペーサー分子の合成(1−6)
[2−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸の合成

製造例9で得られた化合物6(1.94g,4.72mmol)をメタノール(50ml)に溶解し、10%Pd−C(500mg)を加えて、室温で2.5時間接触水素添加を行った。固形物をセライトろ過にて除去し、メタノールで洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮して目的の[2−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸(化合物7;1.4g,定量的)を得た。
MS(m/z):296(M
製造例11:親水性スペーサー分子の合成(1−7)
{2−[2−(2−{2−[2−(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}酢酸の合成

製造例10で得られた化合物7(1.25g,4.23mmol)を10%炭酸ナトリウム水(14ml)に溶解し、ジメトキシエタン(14ml)に懸濁した9−フルオレニルメチルスクシンイミジルカルボネート(2.15g,6.37mmol)を室温で滴下した後、室温で終夜攪拌した。固形物をセライトにてろ別後、クロロホルムで洗浄した。ろ液と洗液を合わせてクロロホルムで抽出し、有機相を2M硫酸水素ナトリウム水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、クロロホルムで洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学 60N;150ml)に供し、溶出液(1000:7 CHCl−MeOH)にて目的の{2−[2−(2−{2−[2−(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}酢酸(化合物8;1.38g,63.0%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.34(2H,t),3.50−3.71(18H,m),4.05(2H,s),4.12(1H,t),4.33(2H,d),5.57(1H,s),7.22−7.95(8H,m).
製造例12:親水性スペーサー付樹脂の合成:ヘキサエチレングリコール誘導体付TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino;100μl中に0.01mmolのアミンが存在)に塩化メチレン(0.4ml)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP;0.1ml)の混合溶媒に溶解した{2−[2−(2−{2−[2−(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}酢酸(製造例11で得られた化合物8;21mg,0.04mmol)を加え、更にベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP;26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約81%)。得られた樹脂に無水酢酸/塩化メチレン/NMP(1/8/2)の混合溶液(0.5ml)を加えて室温で3時間振とうした。樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、ピペリジン/DMF/塩化メチレン(1/4/4)の混合溶液(0.5ml)を加えて室温で3時間振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより樹脂100μl中に約7.9μmolのアミンが存在することを確認した。
製造例13:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例12で得られたヘキサエチレングリコール誘導体付TOYOパール樹脂を用い、製造例3で述べた方法に準じて親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(PEG)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は11、HBD数は4である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は7、HBD数は1である。
製造例14:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例12で得られたヘキサエチレングリコール誘導体付TOYOパール樹脂を用い、製造例12に従い親水性スペーサーの伸長反応を行った後、製造例3で述べた方法に準じて親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(PEG)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は18、HBD数は5である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は14、HBD数は2である。
製造例15:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例12で得られたヘキサエチレングリコール誘導体付TOYOパール樹脂を用い、製造例12に従い親水性スペーサーの伸長反応をくり返し行った後、製造例3で述べた方法に準じて親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(PEG)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は25、HBD数は6である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は21、HBD数は3である。
製造例16:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例12で得られたヘキサエチレングリコール誘導体付TOYOパール樹脂を用い、製造例12に従い親水性スペーサーの伸長反応をくり返し行った後、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(PEG)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は32、HBD数は7である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は28、HBD数は4である。
製造例17:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例12で得られたヘキサエチレングリコール誘導体付TOYOパール樹脂を用い、製造例12に従い親水性スペーサーの伸長反応をくり返し行った後、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(PEG)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は39、HBD数は8である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は35、HBD数は5である。
製造例18:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例12で得られたヘキサエチレングリコール誘導体付TOYOパール樹脂を用い、製造例12に従い親水性スペーサーの伸長反応をくり返し行った後、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(PEG)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は46、HBD数は9である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は42、HBD数は6である。
製造例19:親水性スペーサー分子の合成(2−1)
(5S−アミノメチル−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4S−イルメチル)カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチル エステル(化合物10)の合成

化合物9(1.0g,6.25mmol)をTHF20mlに溶解し、氷冷下攪拌した。その反応系中に9−フルオレニルメチルスクシンイミジルカルボネート(Fmoc−Osu;2.1g,6.25mmol)をTHF10mlにて溶解し、ゆっくりと滴下した。引き続きトリエチルアミンを滴下後、氷冷下30分間攪拌した。反応終了後、水を加え、酢酸エチルにて水相を抽出し、有機相を飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。得られた有機相を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(BW−820MH;富シリシア化学、展開溶媒(10:1=酢酸エチル:エタノール))にて精製し目的の化合物10(1.22g)を収率52.8%にて得た。
MS(m/z):383(MH),H−NMR(DMSO d)δ:1.30(s,6H),2.68(d,2H),3.07(m,2H),3.63−3.6(m,1H),3.69−4.02(m,1H),4.04−4.21(m,1H),4.29(m,2H),7.33(m,2H),7.42(t,2H),7.70(d,2H),7.89(d,2H).
製造例20:親水性スペーサー分子の合成(2−2)
5R−({5S−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−メチル]−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4R−イルメチル}−カルバモイル)−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4S−カルボン酸 ベンジルエステル(化合物11)の合成

2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4R,5R−ジカルボン酸(740mg,3.89mmol)をアセトニトリル50mlに溶かし、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI;1.26g,7.78mmol)を添加し室温にて30分間攪拌した。その反応系中にベンジルアルコール(BnOH;420mg,3.89mmol),1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU;887mg,5.84mmol)を加え、室温にて17時間攪拌した。反応終了後、反応溶液中に水を加え、さらに1N−塩酸にて弱酸性とした。反応液を酢酸エチルにて抽出し、抽出した有機相を飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。得られた有機相を減圧濃縮後、目的のモノベンジルエステル体を得た。精製することなく得られたモノベンジルエステル体をDMF100mlに溶かし、製造例19で得られた化合物10(1.2g,3.14mmol)をDMF10mlに溶かし反応系中に加えた。ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP;3.37g,6.48mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(i−PrNEt;1.25g,9.74mmol)を加え、室温にて17時間攪拌した。反応液中に水100mlを加え、酢酸エチル100mlにて3回抽出した。抽出した有機相を飽和食塩水にて洗浄し、得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的の化合物11(0.49g)を収率23.5%にて得た。
MS(m/z):645(MH),H−NMR(CDCl)δ:1.33−1.39(m,6H),1.43(s,3H),1.50(m,3H),3.42(b,2H),3.53(b,2H),3.75(m,1H),4.21(m,1H),4.37−4.48(m,2H),4.76−4.82(m,2H),5.25(s,2H),5.29(m,1H),6.93(m,1H),7.28−7.41(m,9H),7.59(d,2H,J=7.5Hz),7.75(d,2H,J=7.5Hz).
製造例21:親水性スペーサー分子の合成(2−3)
N−[4−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−2S,3S−ジヒドロキシ−ブチル]−2R,3R−ジヒドロキシ−スクシンアミド酸 ベンジルエステル(化合物12)の合成

化合物11(0.46g,0.71mmol)を80%トリフルオロ酢酸(TFA)水10mlに溶かし、室温にて5時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し、ジクロロメタンにて3回共沸した。残渣を酢酸エチルに溶解し、有機相を飽和食塩水にて洗浄した。無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧濃縮した。n−ヘキサン−酢酸エチルにて再結晶し、目的の化合物12(220mg)を収率55%にて得た。
MS(m/z):565(MH),H−NMR(DMSO d)δ:2.99−3.06(m,2H),3.09−3.19(m,2H),3.44(m,2H),4.18−4.23(m,1H),4.26−4.27(m,3H),4.47(d,1H),4.63(dd,2H),5.15(dd,2H),5.40(d,1H),5.88(t,1H),7.14(m,1H),7.28−7.42(m,10H),7.64(m,1H),7.70(d,2H),7.88(d,2H).
製造例22:親水性スペーサー分子の合成(2−4)
N−[4−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−2S,3S−ジヒドロキシ−ブチル]−2R,3R−ジヒドロキシ−スクシンアミド酸(化合物13)の合成

化合物12(200mg,0.35mmol)をメタノール−酢酸エチル(1:1)の混合溶媒100mlに溶かし、10%Pd/C(50%含水)50mgを加え、水素気流下室温にて2時間攪拌した。反応終了後、Pd/Cを濾取し、メタノールにて3回洗いこみをした。得られた有機相を減圧濃縮し、目的の化合物13(165mg)を定量的に得た。
MS(m/z):475(MH),H−NMR(ACETON d)δ:3.2−3.4(m,3H),3.49−3.70(m,3H),4.23(m,1H),4.33−4.35(m,2H),4.46(m,1H),4.60(m,1H),6.50(m,1H),7.33(t,2H),7.41(t,2H),7.68(m,1H),7.71(d,2H),7.86(d,2H).
製造例23:親水性スペーサー付樹脂の合成:ジハイドロキシアミノブチルタータリックアシッド誘導体付TOYOパール樹脂の合成

トヨパール樹脂(TSKgel AF−amino;100μl中に0.01mmolのアミンが存在)にジクロロメタン(0.4ml)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP;0.1ml)を加え、さらに、N−[4−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−2R,3R−ジヒドロキシ−ブチル]−2R,3R−ジヒドロキシ−スクシンアミド酸(40mg,0.08mmol)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP;50mg,0.096mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(25mg,0.192mmol)を加え、室温で2時間振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率73.4%を確認した。得られた樹脂に無水酢酸/メタノール/ジクロロメタン(1/1/10)の混合溶液(1ml)を加えて室温で0.5時間振とうした。樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、ピペリジン/DMF/塩化メチレン(1/4/4)の混合溶液(0.5ml)を加えて室温で3時間振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄し、目的のジハイドロキシアミノブチルタータリックアシッド誘導体付TOYOパール樹脂[TOYO+(DABT)]を得た。
製造例24:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例23で得られたジハイドロキシアミノブチルタータリックアシッド誘導体付TOYOパール樹脂[TOYO+(DABT)]より、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(DABT)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は12、HBD数は9である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は8、HBD数は6である。
製造例25:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例23で得られたジハイドロキシアミノブチルタータリックアシッド誘導体付TOYOパール樹脂[TOYO+(DABT)]より、製造例23に従い親水性スペーサーの伸長反応を行った。ただし、反応溶媒には塩化メチレン(0.5ml)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP;0.05ml)の混合溶媒を用いた。次いで、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(DABT)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は20、HBD数は15である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は16、HBD数は12である。
製造例26:親水性スペーサー分子の合成(3−1)
N−[2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−エチル]−2,3−ジヒドロキシ−スクシンアミド酸(化合物16)の合成

9H−9−フルオレニルメチル N−(2−アミノエチル)カルバメート 塩酸塩(化合物14;5.00g,153.7mmol)及びL−(+)−酒石酸(化合物15;5.89g,39.2mmol)に、N,N−ジメチルホルムアミド(300ml)及びトリエチルアミン(5.46ml,39.2mmol)を加え、溶解させた。次いで、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(2.52g,16.5mmol)を加え、1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(3.16g,16.5mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(200ml)溶液を滴下した後、室温で終夜攪拌した。これを減圧濃縮して得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、有機相を2Nクエン酸水溶液で洗浄した。次いで、炭酸水素ナトリウム水を用いて逆抽出を行った後、得られた水相を酢酸エチルで洗浄した。氷冷下、2Nクエン酸水溶液にて水相を酸性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物をろ過、減圧濃縮した後、メタノール−ジエチルエーテルより結晶化を行い、目的とするN−[2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−エチル]−2,3−ジヒドロキシ−スクシンアミド酸(2.72g,42%)を得た。
H−NMR(d−acetone)δ:3.29(2H,t),3.37(2H,t),4.24(1H,m),4.30(2H,m),4.41(1H,d),4.59(1H,d),7.29−7.42(4H,m),7.68(2H,d),7.85(2H,d).MS(m/z):415.2(M).
製造例27:親水性スペーサー付樹脂の合成:アミノエチルタータリックジアミド誘導体付TOYOパール樹脂の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino;100μl中に0.01mmolのアミンが存在)に塩化メチレン(0.5ml)を加え、更に製造例26で得られた化合物16(16.6mg,40μmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(16.7μl,96μmol)、PyBOP(25.0mg,48μmol)を加え、室温で終夜振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、得られた樹脂に無水酢酸/メタノール/塩化メチレン(1/1/10)の混合溶液(1.5ml)を加えて室温で25分振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、20%ピペリジン/DMF溶液(0.5ml)を加えて室温で10分振とうした。次いで、樹脂をDMFで洗浄した後、再度、20%ピペリジン/DMF溶液(0.5ml)を加えて室温で20分振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄し、アミノエチルタータリックジアミド誘導体付TOYOパール樹脂〔TOYO+(AET)〕を得た。
製造例28:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例27で得られたアミノエチルタータリックジアミド誘導体付TOYOパール樹脂〔TOYO+(AET)〕より、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(AET)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は10、HBD数は7である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は6、HBD数は4である。
製造例29:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例27で得られたアミノエチルタータリックジアミド誘導体付TOYOパール樹脂〔TOYO+(AET)〕より、製造例27に従い親水性スペーサーの伸長反応を行った。ただし、反応溶媒には塩化メチレン(0.5ml)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP;0.05ml)の混合溶媒を用いた。次いで、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(AET)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は16、HBD数は11である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は12、HBD数は8である。
製造例30:親水性スペーサー分子の合成(4−1)
4−tert−ブチルジメチルシリルオキシフェノール(化合物18)の合成

氷冷したハイドロキノン(化合物17;3.3g,30mmol)のDMF(60ml)溶液へ、イミダゾール(3.1g,45mmol)及びtert−ブチルジメチルシリルクロライド(4.5g,30mmol)のDMF(30ml)溶液を加え、氷浴を取り除き室温にて終夜攪拌した。これを水へ注ぎ、反応を停止させた後、エーテルから抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー〔Biotage、溶出液(9:1 n−ヘキサン:酢酸エチル)〕にて精製し、化合物18(白色固体3.6g,53%)を得た。
MS(m/z):225(MH),H−NMR(CDCl)δ:0.16(6H,s),0.97(9H,s),4.43(1H,s),6.70(4H,d,J=2Hz).
製造例31:親水性スペーサー分子の合成(4−2)
[2−(2−{2−[2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)]エタノール(化合物19)の合成

化合物1(5.2g,21.8mmol)へ水酸化カリウム(1.2g,21.4mmol)を加え、オイルバス上130℃で15分攪拌した後、オイルバスから外し、ベンジルクロライド(2.7g,21.3mmol)をゆっくりと加えた。これを再び130℃に昇温し、2時間攪拌した。室温まで放冷した後、水を注ぎ、反応を停止させ、塩化メチレンから抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(酢酸エチル〜5%メタノール−酢酸エチル溶液)にて精製し、化合物19(淡黄色オイル 2.3g,32%)を得た。
MS(m/z):329(MH),H−NMR(CDCl)δ:3.34(2H,t),3.76−3.84(20H,m),4.13(2H,s),7.26−7.35(5H,m).
製造例32:親水性スペーサー分子の合成(4−3)
[2−(2−{2−[2−(2−ブロモ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシメチル]ベンゼン(化合物20)の合成

化合物19(2.04g,6.21mmol)の塩化メチレン(20ml)溶液へ、四臭化炭素(4.12g,12.4mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を室温にて加え、氷冷した後トリフェニルフォスフィン(2.51g,12.4mmol)を加えた。氷浴を外し、室温にて1時間攪拌した。減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(n−ヘキサン:酢酸エチル 2:1〜1:1))にて精製し、化合物20(淡黄色オイル 2.14g,88%)を得た。
MS(m/z):391(MH),H−NMR(CDCl)δ:3.46(2H,t,J=6.4Hz),3.62−3.69(m,16H),3.62−3.72(20H,m),3.80(2H,t,J=6.4Hz),4.57(2H,s),7.26−7.35(5H,m).
製造例33:親水性スペーサー分子の合成(4−4)
tert−ブチル−ジメチル−{4−[2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノキシ}シラン(化合物21)の合成

化合物2(2.8g,5.8mmol)のトルエン(10ml)溶液へ、トリブチルフォスフィン(1.17g,5.8mmol)のトルエン(2ml)溶液を室温で加え、1時間攪拌した。これを化合物18(1.1g,4.9mmol)と、1,1’−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)(1.0g,5.8mmol)のトルエン(10ml)溶液へゆっくりと加え、室温にて終夜攪拌した。酢酸エチルを加え、生じた不溶物をセライトろ過によって取り除き、酢酸エチルにより洗浄を行った。合わせた有機相を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(n−ヘキサン:酢酸エチル 2:1))にて精製し、化合物21(無色オイル 2.03g,60%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:0.16(6H,s),0.97(9H,s),3.23(2H,t,J=5Hz),3.64−3.69(14H,m),3.80(2H,t,J=5Hz),4.04(2H,t,J=5Hz),6.69−6.75(5H,m),7.23−7.30(13H,m),7.45−7.47(6H,m).
製造例34:親水性スペーサー分子の合成(4−5)
4−[2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]フェノール(化合物22)の合成

氷冷した化合物21(1.88g,2.74mmol)のTHF(20ml)溶液へ1MテトラブチルアンモニウムフルオライドTHF溶液(4ml)を加えた。添加終了後、氷浴を外し室温にて10分間攪拌した。これを水へ注ぎ、反応を停止させた後、酢酸エチルから抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(n−ヘキサン:酢酸エチル 2:1〜1:1))にて精製し、化合物22(淡黄色オイル 1.45g,92%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.23(2H,t,J=5Hz),3.64−3.69(m,14H),3.79(2H,t,J=5Hz),4.04(2H,t,J=5Hz),4.68(1H,s),6.71−6.79(4H,m),7.20−7.30(9H,m),7.45−7.47(6H,m).
製造例35:親水性スペーサー分子の合成(4−6)
1−[2−(2−{2−[2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−4−[2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]ベンゼン(化合物23)の合成

氷冷した水素化ナトリウム(800mg,20mmol;60% in mineral oil)のTHF(15ml)懸濁溶液へ、化合物22(1.2g,2.1mmol)のTHF(20ml)溶液をゆっくりと加え、20分間攪拌した。ここへ化合物20(1.7g,4.3mmol)のTHF(12ml)溶液を加え20分間攪拌した。氷浴を外した後、更に2時間室温にて攪拌した。注意深く水を加えて反応を停止させた後、減圧下濃縮した。塩化メチレンから抽出し、合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(n−ヘキサン:酢酸エチル 2:1〜1:1))にて精製し、化合物23(淡黄色オイル 1.56g,84%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.23(2H,t,J=5Hz),3.61−3.72(30H,m),3.78−3.82(4H,m),4.03−4.07(4H,m),4.56(2H,s),6.82(4H,s),4.12(1H,t),7.09−7.34(14H,m),7.44−7.47(6H,m).
製造例36:親水性スペーサー分子の合成(4−7)
2−(2−{2−[2−(2−{4−[2−(2−{2−[2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)エタノール(化合物24)の合成、

氷冷した化合物23(1.43g,1.62mmol)の塩化メチレン(20ml)溶液へ、10%トリフルオロ酢酸を含む塩化メチレン溶液(10ml)を加え、さらにここへ水(1ml)を加えた後、氷浴を外し室温にて2時間30分間攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液へ注ぎ反応を停止させた後、塩化メチレン、クロロホルムから抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(10%メタノールを含む酢酸エチル))に供し、化合物24(淡黄色オイル 875mg,85%)を得た。
MS(m/z):641(MH),H−NMR(CDCl)δ:3.59−3.74(32H,m),3.80−3.84(4H,m),4.05−4.08(4H,m),4.56(2H,s),6.83(4H,s),7.26−7.34(5H,m).
製造例37:親水性スペーサー分子の合成(4−8)
[2−(2−{2−[2−(2−{4−[2−(2−{2−[2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸 tert−ブチルエステル(化合物25)の合成

氷冷した水素化ナトリウム(180mg,4.5mmol;60% in mineral oil)のTHF/DMF(5/1混液7ml)懸濁溶液へ、化合物24(817mg,1.28mmol)のTHF(6ml)溶液をゆっくりと加え、30分間攪拌した。ここへブロモ酢酸tert−ブチルエステル(1.0g,5.1mmol)のTHF(7ml)溶液を加えた。氷浴を外した後、更に2時間室温にて攪拌した。注意深く水を加えて反応を停止させた後、酢酸エチルから抽出し、合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(酢酸エチル〜5%メタノールを含む酢酸エチル溶液))にて精製し、化合物25(淡黄色オイル 655mg,68%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.61−3.73(30H,m),3.81−3.84(4H,m),4.02(2H,s),4.05−4.08(4H,m),4.56(2H,s),6.83(4H,s),7.26−7.24(5H,m).
製造例38:親水性スペーサー分子の合成(4−9)
[2−(2−{2−[2−(2−{4−[2−(2−{2−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸 tert−ブチルエステル(化合物26)の合成

窒素雰囲気下、水酸化パラジウム(20重量%;145mg)のメタノール(4ml)懸濁溶液へ化合物25(655mg,0.868mmol)のメタノール(6ml)溶液を加え、水素雰囲気に置換した後、室温で4時間攪拌した。再び窒素雰囲気とした後、酢酸エチル(約10ml)を加え、シリカゲル上でろ過し、10%メタノールを含む酢酸エチル溶液で洗浄した。減圧濃縮後、化合物26の粗精製物を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.59−3.84(36H,m),3.81−3.84(4H,m),4.02(2H,s),4.07−4.09(4H,m),6.84(4H,s).
製造例39:親水性スペーサー分子の合成(4−10)
[2−(2−{2−[2−(2−{4−[2−(2−{2−[2−(2−アジド−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸 tert−ブチルエステル(化合物27)の合成

化合物26(254mg,0.451mmol)のピリジン(1.5ml)溶液へ、4−ジメチルアミノピリジン(11mg,0.09mmol)を加え氷冷した後、p−トルエンスルホニルクロライド(130mg,0.677mmol)を加え、30℃〜40℃に加温しつつ2時間攪拌した。ここへ氷を加えて反応を停止させた後、酢酸エチル、水を加えた。酢酸エチルから抽出し、合わせた有機相を飽和硫酸水素カリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧下濃縮し、粗精製物を得た。得られた粗精製物をDMF(1ml)に溶解し、ここへアジ化ナトリウム(264mg,4.1mmol)を加えた。約60℃に加温し、90分間攪拌した。室温まで放冷した後、酢酸エチルで希釈した。更に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルから抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧下濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液;10%メタノールを含む酢酸エチル溶液)にて精製し、化合物27(無色オイル 196mg,73%、2steps)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.38(2H,t,J=5Hz),3.66−3.72(30H,m),3.81−3.84(4H,m),4.02(2H,s),4.06−4.08(4H,m),6.84(4H,s).
製造例40:親水性スペーサー分子の合成(4−11)
[2−(2−{2−[2−(2−{4−[2−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]酢酸 tert−ブチルエステル(化合物28)の合成

窒素雰囲気下、水酸化パラジウム(20重量%;18mg)のメタノール(1ml)懸濁溶液へ化合物27(190mg,0.323mmol)のメタノール(1.5ml)溶液を加え、水素雰囲気に置換した後、室温で1時間攪拌した。再び窒素雰囲気とした後、セライト上で不溶物をろ別し、メタノールで洗浄した。減圧下濃縮し化合物28の粗精製物を得た。
MS(m/z):664(MH).
製造例41:親水性スペーサー分子の合成(4−12)
{2−[2−(2−{2−[2−(4−{2−[2−(2−{2−[2−(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−フェノキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}酢酸 tert−ブチルエステル(化合物29)の合成

製造例40で得られた化合物28の粗精製物(175mg,0.311mmol)のTHF(1.2ml)溶液を氷冷し、ここへ炭酸9−フルオレニルメチルスクシンイミジル(115mg,0.34mmol)のTHF(0.5ml)溶液を加え、更にトリエチルアミン(62mg,0.62mmol,85μl)を加え45分間攪拌した。ここへ水を加えて反応を停止させた後、酢酸エチルから抽出し、合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧下濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液;酢酸エチル〜10%メタノールを含む酢酸エチル溶液)にて精製し、化合物29(無色オイル 196mg,84%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.37−3.41(1H,m),3.55−3.84(36H,m),3.66−3.72(30H,m),4.01(2H,s),4.01−4.07(4H,m),4.20−4.23(1H,m),4.40(2H,d,J=7Hz),6.81(4H,s),7.29−7.33(2H,m),7.39−7.41(2H,m),7.60(2H,d,J=7Hz),7.76(2H,d,J=7Hz).
製造例42:親水性スペーサー分子の合成(4−13)
{2−[2−(2−{2−[2−(4−{2−[2−(2−{2−[2−(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−フェノキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}酢酸(化合物30)の合成

化合物29(196mg,0.25mmol)へ5%含水トリフルオロ酢酸(1.5ml)を室温で加え、5分間攪拌した。トルエン(約1ml)を加え、減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液;3%メタノールを含むクロロホルム〜10%メタノールを含む酢酸エチル溶液)にて精製し、化合物30(無色オイル 175mg,96%)を得た。
MS(m/z):830(MH),H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.37−3.39(1H,m),3.56−3.84(36H,m),4.02−4.07(4H,m),4.12(2H,s),4.22−4.23(1H,m),4.40(2H,d,J=7Hz),6.81(4H,s),7.29−7.33(2H,m),7.38−7.41(2H,m),7.60(2H,d,J=7Hz),7.76(2H,d,J=7Hz).
製造例43:親水性スペーサー付樹脂の合成:化合物30誘導体付TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)の合成
TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino;100μl中に0.01mmolのアミンが存在)に塩化メチレン(0.4ml)と{2−[2−(2−{2−[2−(4−{2−[2−(2−{2−[2−(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−フェノキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}酢酸(66mg,0.08mmol)を加え、更にベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP;52mg,0.10mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(34μl,0.20mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合を確認した。得られた樹脂に無水酢酸/塩化メチレン/NMP(1/8/2)の混合溶液(1.0ml)を加えて室温で3時間振とうした。樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、ピペリジン/DMF/塩化メチレン(1/4/4)の混合溶液(0.5ml)を加えて室温で3時間振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストによりアミンの存在を確認し、親水性スペーサーが樹脂に付いたことが確認できた。
製造例44:親水性スペーサー付樹脂の合成:化合物30誘導体ダイマー付TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)の合成
製造例43で得られた樹脂(100μl)を製造例43の手法に従って反応し目的物を得た。これを製造例43の手法に従ってアセチル化、脱Fmoc化して、化合物30誘導体ダイマー付TOYOパール樹脂を得た。ニンヒドリンテストよりアミンの存在を確認し、親水性スペーサーが樹脂に付いたことが確認できた。
製造例45:親水性スペーサー分子の合成(5−1)
2−[[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]アミノ]−アセトアミド(化合物32)の合成

2−アミノ−アセトアミド 塩酸塩(化合物31,10.0g,90.5mmol)に、10%炭酸ナトリウム水溶液(600ml)及びアセトン(250ml)を加え、次いで氷冷下、N−(9−フルオレニルメトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド(30.5mg,90.5mmol)のアセトン溶液(250ml)を滴下した。室温で1時間攪拌後、減圧濃縮して得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、有機相を2Nクエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水、飽和食塩水で順次洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。固形物をろ過、減圧濃縮した後、メタノールより結晶化を行い、目的とする2−[[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]アミノ]−アセトアミド(化合物32;27.7g,quant)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.87(2H,bd),4.23(1H,t),4.46(2H,d),7.30(2H,t),7.39(2H,t),7.57(2H,d),7.75(2H,d);MS(m/z);297.2(M).
製造例46:親水性スペーサー分子の合成(5−2)
N−[(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−メチル]−2,3−ジヒドロキシ−スクシンアミド酸(化合物33)の合成

化合物32(1.50g,5.06mmol)に、酢酸エチル(15ml)、アセトニトリル(15ml)、HO(15ml)及び[ビス(トリフルオロ−アセトキシ)ヨード]ベンゼン(2.83g,6.58mmol)を加え、室温で1.5時間攪拌した。0.2N塩酸水溶液で逆抽出を行った後、得られた水相をジエチルエーテル:ヘキサン混合溶媒で洗浄した。氷冷下、飽和炭酸水素ナトリウム水にて水相をアルカリ性とした後、クロロホルムで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、固形物をろ過、減圧濃縮した。得られた残渣に、L−(+)−酒石酸(1.42g,9.45mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)を加え溶解させた。次いで、1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)−カルボジイミド 塩酸塩(795mg,4.15mmol)を加えた後、室温で終夜攪拌した。これを減圧濃縮して得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、有機相を2Nクエン酸水溶液で洗浄した。次いで、炭酸水素ナトリウム水を用いて逆抽出を行った後、得られた水相を酢酸エチルで洗浄した。氷冷下、2Nクエン酸水溶液にて水相を酸性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物をろ過、減圧濃縮した後、メタノールより結晶化を行い、目的とするN−[(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−メチル]−2,3−ジヒドロキシ−スクシンアミド酸(化合物33;588mg,29%)を得た。
H−NMR(d−acetone)δ:4.24(1H,t),4.23(2H,d),4.44(1H,d),4.58−4.71(3H,m),7.33(2H,t),7.41(2H,t),7.71(2H,d),7.86(2H,d);MS(m/z);401.2(M).
製造例47:親水性スペーサー付樹脂の合成:アミノメチルタータリックジアミド誘導体付TOYOパール樹脂の合成

製造例27の手法に従って、TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino;100μl中に0.01mmolのアミンが存在)に化合物33を反応させ、アミノメチルタータリックジアミド誘導体付TOYOパール樹脂〔TOYO+(AMT)〕を得た。
製造例48:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例47で得られたアミノメチルタータリックジアミド誘導体付TOYOパール樹脂〔TOYO+(AMT)〕より、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(AMT)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は10、HBD数は7である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スぺーサーのHBA数は6、HBD数は4である。
製造例49:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例47にて得られたアミノメチルタータリックジアミド誘導体付TOYOパール樹脂〔TOYO+(AMT)〕より、製造例47に従い親水性スペーサーの伸長反応を行った。次いで、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(AMT)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は16、HBD数は11である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は12、HBD数は8である。
製造例50:親水性スペーサー分子の合成(6−1)
(2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシ−ヘキシル)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(化合物35)の合成

D−グルカミン(化合物34:9.0g,49.7mmol)を10%炭酸ナトリウム水溶液200mlと混ぜ、氷冷下攪拌した。9−フルオレニルメチルスクシンイミジルカルボナート(16.7g,49.7mmol)をDME(1,2−ジメトキシエタン)200mlに溶かし、反応系中に加え、氷冷下30分間攪拌した。析出した結晶をろ取し、結晶をHO×3、MeOH×3にて洗浄した。減圧下乾燥し、目的の化合物(2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシ−ヘキシル)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(化合物35:20g)を定量的に得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:2.99−3.05(m,1H),3.17−3.20(m,1H),3.37−3.48(m,3H),3.56−3.63(m,3H),4.19−4.27(m,4H),4.30−4.33(m,1H),4.39−4.40(m,1H),4.48−4.49(m,1H),4.73(m,1H),7.09−7.13(m,1H),7.35(t,J=7.2Hz,2H),7.41(t,J=7.2Hz,2H),7.71(d,J=7.2Hz),7.88(d,J=7.2Hz,2H);MS(m/z)404(MH).
製造例51:親水性スペーサー分子の合成(6−2)
{6−[ビス−(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メトキシ]−2,3,4,5−テトラヒドロキシ−ヘキシル}−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(化合物36)の合成

化合物35(5.0g,12.4mmol)をピリジン100mlに溶かし共沸した。この操作を2回行った後、乾燥ピリジン100mlに溶かし、窒素気流下氷冷した。4,4’−ジメトキシトリチルクロライド(5.0g,14.9mmol)、ジメチルアミノピリジン(1.5g,12.4mmol)を加え、氷冷下から室温にゆっくりと昇温し、室温にて17時間攪拌した。ピリジンを減圧留去した後、酢酸エチル500mlにて希釈した。水を加えた後、有機相を分離後、再び水相を酢酸エチルにて抽出した。酢酸エチル相は飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl:MeOH=10:1)にて精製し、目的の化合物(化合物36:5.06g)を収率57.9%にて得た。
H−NMR(d−acetone)δ:3.23−3.38(m,4H),3.67−3.95(m,6H),3.77(s,6H),4.05(d,1H),4.18−4.24(m,2H),4.31−4.33(m,2H),6.51(m,1H),6.86(d,4H),7.17−7.42(m,1H),7.51(d,2H),7.70(d,2H),7.86(d,2H).
製造例52:親水性スペーサー分子の合成(6−3)
[6−[ビス−(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メトキシ]−2,3,4,5−テトラキス−(tert−ブチルジメチル−シラニルオキシ)−ヘキシル]−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(化合物37)

化合物36(2.46g,3.49mmol)を2,6−ルチジン(15g,140mmol)に溶かし、氷冷下攪拌した。トリフルオロメタンスルホン酸tert−ブチルジメチルシリル(18.4g,69.8mmol)をゆっくりと加えた。氷冷下から室温へゆっくり戻し、一昼夜攪拌した。ジクロロメタン200ml、水200mlを加え、室温にて2時間攪拌した。有機相を分離後、水相をさらにジクロロメタン200mlにて抽出した。ジクロロメタン相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−hexane:AcOEt=5:1)にて精製し、目的の化合物(化合物37:3.5g)を収率86.4%にて得た。
H−NMR(CDCl)δ:−0.1−0.2(m,24H),0.72(s,9H),0.75(s,9H),0.91−0.96(m,18H),3.25(d,1H),3.35−3.50(m,3H),3.59(m,1H),3.75(s,6H),3.80(m,1H),4.03−4.19(m,3H),4.29−4.41(m,2H),5.18(m,1H),6.76(d,J=8.4Hz,4H),7.15−7.21(m,9H),7.27−7.34(m,4H),7.47(t,J=7.2Hz,2H),7.65(d,J=7.2Hz,2H).
製造例53:親水性スペーサー分子の合成(6−4)
[2,3,4,5−テトラキス−(tert−ブチルジメチル−シラニルオキシ)−6−ヒドロキシヘキシル]−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(化合物38)の合成

化合物37(1.16g,1mmol)を(ギ酸:ジクロロメタン=1:10)溶液10mlに溶かし、室温にて2時間攪拌した。飽和重曹水に反応液を注ぎ込み、ジクロロメタン100mlにて抽出した。ジクロロメタン相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−hexane:AcOEt=10:1〜5:1)にて精製し、目的のアルコール体(化合物38:600mg)を収率69.8%にて得た。
H−NMR(CDCl)δ:−0.50−0.10(m,24H),0.77−0.87(m,36H),2.10(m,1H),3.29−3.36(m,1H),3.43−3.56(m,2H),3.57−3.61(m,1H),3.65−3.71(m,1H),3.75(m,1H),4.03(m,1H),4.09(m,1H),4.27−4.32(m,2H),4.90(m,1H),7.17−7.21(m,2H),7.29(t,J=7.6Hz,2H),7.49(t,J=7.6Hz,2H),7.66(d,J=7.6Hz,2H);MS(m/z)860(MH).
製造例54:親水性スペーサー分子の合成(6−5)
2,3,4,5−テトラキス−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−6−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−ヘキサン酸(化合物39)の合成

化合物38(50mg,58.1μmol)に、水(1.5ml)、アセトニトリル(4.5ml)及びジクロロメタン(0.75ml)を加え、溶解させた。次いで、過ヨウ素酸ナトリウム(121mg,581μmol)、次いで塩化ルテニウム(III)水和物(5mg,23μmol)を加えた後、室温で3時間攪拌した。これに酢酸エチルを加え、得られた有機相を2N硫酸水素カリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物をろ過、減圧濃縮した後、分取TLC(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、目的とする2,3,4,5−テトラキス−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−6−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−ヘキサン酸(化合物39:9.1mg,18%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:0.07−0.20(24H,m),0.91(36H,m),3.43(1H,m),3.52(1H,m),4.00(1H,m),4.05(2H,t,J=5.1Hz),4.20(2H,m),4.41(2H,d),4.53(1H,s),7.30(2H,t,J=7.4Hz),7.39(2H,t,J=7.4Hz),7.59(2H,m),7.76(2H,d,J=7.4Hz);MS(m/z);874.4(MH).
製造例55:親水性スペーサー分子の合成(7−1)
4−[N’−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル)−ヒドラジノ]−2,3−ジヒドロキシ−4−オキソ−ブタン酸(化合物41)の合成

N−(9H−9−フルオレニルメトキシカルボニル)ヒドラジン塩酸塩(化合物40;500mg,1.72mmol)及びL−(+)−酒石酸(化合物15;634mg,4.22mmol)に、N,N−ジメチルホルムアミド(10ml)及びジイソプロピルエチルアミン(300μl,1.72mmol)を加え、溶解させた。次いで、1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(485mg,2.53mmol)を加えた後、室温で終夜攪拌した。これを減圧濃縮して得られた残渣に、炭酸水素ナトリウム水、及びジエチルエーテルを加え、二相を分液した。得られた水相を、氷冷下、2N硫酸水素カリウム水溶液にて酸性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物をろ過、減圧濃縮した後、メタノール−ジエチルエーテルより結晶化を行い、目的とする4−[N’−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル)−ヒドラジノ]−2,3−ジヒドロキシ−4−オキソ−ブタン酸(化合物41:413mg,63%)を得た。
H−NMR(d−acetone)δ:4.29(2H,t,J=7.1Hz),4.35(1H,m),4.60(1H,s),4.63(1H,s),7.33(2H,t,J=7.4Hz),7.42(2H,t,J=7.4Hz),7.76(2H,d,J=7.4Hz),7.85(2H,d,J=7.4Hz);MS(m/z);387.2(M).
製造例56:親水性スペーサー付樹脂の合成:ヒドラジノタータリックアミド誘導体付TOYOパール樹脂の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino;100μl中に0.01mmolのアミンが存在)に塩化メチレン(0.5ml)を加え、更に製造例55で得られた化合物41(15.5mg,40μmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(16.7μl,96μmol)、PyBOP(25.0mg,48μmol)を加え、室温で終夜振とうした。樹脂をDMF、及び塩化メチレンで十分に洗浄した後、塩化メチレン(0.5ml)を加え、再度、化合物41(15.5mg,40μmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(16.7μl,96μmol)、PyBOP(25.0mg,48μmol)を加え、室温で5時間振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、得られた樹脂に無水酢酸/メタノール/塩化メチレン(1/1/10)の混合溶液(1.5ml)を加えて室温で25分振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄した後、20%ピペリジン/DMF溶液(0.5ml)を加えて室温で10分振とうした。次いで、樹脂をDMFで洗浄した後、再度、20%ピペリジン/DMF溶液(0.5ml)を加えて室温で20分振とうした。反応終了後、樹脂を塩化メチレン、及びDMFで十分に洗浄し、ヒドラジノタータリックアミド誘導体付TOYOパール樹脂〔TOYO+(HyT)〕を得た。
製造例57:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成

製造例56で得られたヒドラジノタータリックアミド誘導体付TOYOパール樹脂〔TOYO+(HyT)]より、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(HyT)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は10、HBD数は7である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は6、HBD数は4である。
製造例58:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂の合成:


製造例56で得られたヒドラジノタータリックアミド誘導体付TOYOパール樹脂〔TOYO+(HyT)〕より、製造例27に従い親水性スペーサーの伸張反応を行った。次いで、製造例3に述べた方法に準じ、親水性スペーサーを有するFK506結合型樹脂〔TOYO+(HyT)−FK506〕を合成した。TOYOパール樹脂とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は16、HBD数は11である。尚、TOYOパール樹脂のリンカーに由来するHBA数およびHBD数を考慮しなければ、当該親水性スペーサーのHBA数は12、HBD数は8である。
製造例59:親水性スペーサー分子の合成(8−1)
3,5−ビス−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−フェノール(化合物43)の合成

氷冷したベンゼン−1,3,5−トリオール(化合物42;10g,79.3mmol)のDMF(150ml)溶液へ、イミダゾール(16.2g,238mmol)及びtert−ブチルジメチルシリルクロリド(23.8g,158mmol)のDMF(150ml)溶液を加え、氷浴を取り除き室温にて終夜攪拌した。これを水へ注ぎ、反応を停止させた後、エーテルから抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Biotage、溶出液(n−ヘキサン:酢酸エチル 19:1〜9:1))にて精製し、化合物43(白色固体9.8g,35%)を得た。
MS(m/z):355.2 MHH−NMR(CDCl)δ:0.18(12H,s),0.96(18H,s),4.58(1H,s),5.94−5.97(1H,m),5.97−5.98(2H,m).
製造例60:親水性スペーサー分子の合成(8−2)
1,3−ビス−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−5−[2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−ベンゼン(化合物44)の合成

化合物2(4.3g,8.9mmol)のトルエン(20ml)溶液へ、トリブチルフォスフィン(2.35g,8.92mmol)を室温で加え、1時間攪拌した。これを化合物43(3.3g,11.6mmol)と、1,1’−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)(2.0g,11.6mmol)のトルエン(20ml)溶液へゆっくりと加え、室温にて終夜攪拌した。酢酸エチル(100ml)を加え、生じた不溶物をセライトろ過によって取り除き、酢酸エチルにより洗浄を行った。合わせた有機相を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(n−ヘキサン:酢酸エチル 3:1〜2:1))にて精製し、化合物44(無色オイル2.8g,39%)を得た
H−NMR(CDCl)δ:0.18(12H,S),0.96(18H,S),3.23(2H,t,J=5Hz),3.65−3.69(m,14H),3.79(2H,t,J=5Hz),4.04(2H,t,J=5Hz),5.95−5.965(1H,m),6.04−6.05(2H,m),7.22−7.31(9H,m),7.45−7.47(6H,m).
製造例61:親水性スペーサー分子の合成(8−3)
5−[2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−ベンゼン−1,3−ジオール(化合物45)の合成

氷冷した化合物44(2.81g,3.44mmol)のTHF(30ml)溶液へ1MテトラブチルアンモニウムフルオライドTHF溶液(4ml)を加えた。添加終了後、氷浴を外し室温にて1時間攪拌した。これを水へ注ぎ、反応を停止させた後、酢酸エチルから抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(n−ヘキサン:酢酸エチル 1:1〜1:2〜1:3))にて精製し、化合物45(淡黄色オイル 1.95g,96%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.25(2H,t,J=5Hz),3.62−3.76(16H,m),4.02−4.04(2H,m),5.80(2H,s),5.95(1H,t,J=2Hz),6.03(2H,d,J=2Hz),7.19−7.30(9H,m),7.43−7.46(6H,m).
製造例62:親水性スペーサー分子の合成(8−4)
1,3−ビス−[2−(2−{2−[2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−5−[2−(2−{2−[2−(2−トリチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−ベンゼン(化合物46)の合成

氷冷した水素化ナトリウム(350mg,8.8mmol;60% in mineral oil)のTHF(4.5ml)、DMF(1.5ml)懸濁混合溶液へ、化合物45(1.0g,1.7mmol)のTHF(4.5ml)、DMF(1.5ml)混合溶液をゆっくりと加え、30分間攪拌した。ここへ化合物20(2.7g,6.8mmol)のTHF(4ml)溶液を加え20分間攪拌した。氷浴を外した後、更に4時間室温にて攪拌した。再び氷浴に浸した後、注意深く水を加えて反応を停止させ、減圧下濃縮した。酢酸エチルから抽出し、合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(酢酸エチル〜酢酸エチル:メタノール 19:1))にて精製し、化合物46(淡黄色オイル 1.22g,59%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.23(2H,t,J=5Hz),3.61−3.71(46H,m),3.78−3.82(6H,m),4.02−4.05(6H,m),4.56(4H,s),6.09(3H,s),7.20−7.34(m,19H),7.44−7.47(6H,m).
製造例63:親水性スペーサー分子の合成(8−5)
2−(2−{2−[2−(2−{3,5−ビス−[2−(2−{2−[2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エタノール(化合物47)の合成

氷冷した化合物46(1.22g,1.01mmol)の塩化メチレン(15ml)溶液へ、10%トリフルオロ酢酸を含む塩化メチレン溶液(7ml)を加え、さらにここへ水(650μl)を加えた後、氷浴を外し室温にて30分間攪拌した。反応液へトリエチルアミンを注ぎ、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(酢酸エチル〜酢酸エチル:メタノール 9:1))に供し、化合物47(淡黄色オイル 977mg,Y.quant.)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.56−3.73(48H,m),3.80−3.84(6H,m),4.04−4.09(6H,m),4.56(4H,s),6.10(3H,s),7.28−7.32(10H,m).
製造例64:親水性スペーサー分子の合成(8−6)
[2−(2−{2−[2−(2−{3,5−ビス−[2−(2−{2−[2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−酢酸 tert−ブチルエステル(化合物48)の合成

氷冷した水素化ナトリウム(175mg,4.4mmol;60% in mineral oil)のTHF/DMF(4/1混液5ml)懸濁溶液へ、化合物47(1.05g,1.09mmol)のTHF(5ml)溶液をゆっくりと加え、30分間攪拌した。ここへブロモ酢酸tert−ブチルエステル(847mg,4.3mmol)のTHF(6ml)溶液を加えた。氷浴を外した後、更に2時間室温にて攪拌した。注意深く水を加えて反応を停止させて後、酢酸エチルから抽出し、合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液(酢酸エチル〜5%メタノールを含む酢酸エチル溶液))にて精製し、化合物48(淡黄色オイル 530mg,45%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.63−3.71(48H,m),3.80−3.83(6H,m),4.02(2H,s),4.04−4.06(6H,m),4.56(2H,s),6.09(3H,s),7.27−7.34(10H,m).
製造例65:親水性スペーサー分子の合成(8−7)
[2−(2−{2−[2−(2−{3,5−ビス−[2−(2−{2−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−酢酸 tert−ブチルエステル(化合物49)の合成

窒素雰囲気下、水酸化パラジウム(20重量%;90mg)のメタノール(2.7ml)懸濁溶液へ化合物48(500mg,0.462mmol)のメタノール(3.6ml)溶液を加え、水素雰囲気に置換した後、室温で約6時間攪拌した。再び窒素雰囲気とした後、酢酸エチル(約20ml)を加え、シリカゲル上でろ過し、10%メタノールを含む酢酸エチル溶液で洗浄した。減圧濃縮後、化合物49の粗精製物を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.59−3.73(48H,m),3.81−3.84(6H,m),4.02(2H,s),4.05−4.08(6H,m),6.10(3H,s).
製造例66:親水性スペーサー分子の合成(8−8)
(2−{2−[2−(2−{2−[3,5−ビス−(2−{2−[2−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−フェノキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−酢酸tert−ブチルエステル(化合物50)の合成

化合物49(146mg,0.138mmol)のピリジン(0.8ml)溶液へ、4−ジメチルアミノピリジン(5.1mg,0.041mmol)を加え氷冷した後、p−トルエンスルホニルクロライド(158mg,0.828mmol)を加え、30℃〜40℃に加温しつつ約2時間攪拌した。ここへ氷を加えて反応を停止させた後、酢酸エチル、水を加えた。酢酸エチルから抽出し、合わせた有機相を飽和硫酸水素カリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧下濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液;10%メタノールを含む酢酸エチル溶液)にて精製し、化合物50(無色オイル 133mg,80%、2steps)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.58−3.83(54H,m),4.02(2H,s),4.04−4.06(6H,m),6.09(3H,s),7.33(4H,d,J=8Hz),7.79(4H,d,J=8Hz).
製造例67:親水性スペーサー分子の合成(8−9)
[2−(2−{2−[2−(2−{3,5−ビス−[2−(2−{2−[2−(2−アジド−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−フェノキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−酢酸 tert−ブチルエステル(化合物51)の合成

化合物50(155mg,0.128mmol)をDMF(0.5ml)に溶解し、ここへアジ化ナトリウム(125mg,1.9mmol)を加えた。約60℃に加温し、90分間攪拌した。オイルバスを外し室温まで放冷した後、酢酸エチル(10ml)で希釈した。更に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルから抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧下濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液;5%メタノールを含む酢酸エチル溶液)にて精製し、化合物51(無色オイル 127mg,Y.quant)を得た。H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.38(4H,t,J=5Hz),3.66−3.73(44H,m),3.82(6H,t,J=5Hz),4.02(2H,s),4.06(6H,t,J=5Hz),6.10(3H,s).
製造例68:親水性スペーサー分子の合成(8−10)
(2−{2−[2−(2−{2−[3,5−ビス−{2−[2−(2−{2−[2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−フェノキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−酢酸 tert−ブチルエステル(化合物52)の合成

窒素雰囲気下、水酸化パラジウム(20重量%;15mg)のメタノール(0.5ml)懸濁溶液へ化合物51(122mg,0.323mmol)のメタノール(0.7ml)溶液を加え、水素雰囲気に置換した後、室温で1時間攪拌した。再び窒素雰囲気とした後、セライト上で不溶物をろ別し、メタノールで洗浄した。減圧下濃縮し中間体の粗精製物を得た。
得られた中間体の粗精製物THF(0.75ml)溶液を氷冷し、ここへ炭酸9−フルオレニルメチルスクシンイミジル(91mg,0.27mmol)のTHF(0.5ml)溶液を加え、更にトリエチルアミン(49mg,0.49mmol、68μl)を加え55分間攪拌した。ここへ水を加えて反応を停止させた後、酢酸エチルから抽出し、合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過減圧下濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液;酢酸エチル〜10%メタノールを含む酢酸エチル溶液)にて精製し、化合物52(無色オイル 111mg,67%、2steps)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.38−3.39(4H,m),3.55−3.83(50H,m),4.01(2H,s),4.01−4.06(6H,m),4.21(2H,t,J=7Hz),4.40(4H,d,J=7Hz),5.43(2H,brs),6.08−6.10(3H,m),7.29−7.33(4H,m),7.39(2H,m,t,J=7Hz),7.60(2H,d,J=7Hz),7.75(2H,d,J=7Hz).
製造例69:親水性スペーサー分子の合成(8−11)
(2−{2−[2−(2−{2−[3,5−ビス−{2−[2−(2−{2−[2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−フェノキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−酢酸(化合物53)の合成

化合物52(106mg,0.079mmol)へ5%含水トリフルオロ酢酸(0.54ml)を室温で加え、5分間攪拌した。トルエン(約1ml)を加え、減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(山善 YFLC Gel、溶出液;2%メタノールを含むクロロホルム溶液〜3%メタノールを含むクロロホルム溶液〜5%メタノールを含むクロロホルム溶液)にて精製し、化合物53(淡黄色オイル 79mg,78%)を得た。
MS(m/z):1287.4MHH−NMR(CDCl)δ:3.38−3.39(4H,m),3.55−3.83(50H,m),4.01−4.06(6H,m),4.02−4.07(4H,m),4.12(2H,s),4.21(2H,d,J=7Hz),4.40(4H,d,J=7Hz),5.46(2H,brs),6.08(3H,m),7.29−7.33(4H,m),7.39(4H,m,t,J=7Hz),7.60(4H,d,J=7Hz),7.75(4H,d,J=7Hz).
製造例70:親水性スペーサー分子の合成(9−1)

ポリエチレングリコール(化合物54:平均分子量2000;15g、7.5mmol)をピリジン(75ml)に溶解し、トリフェニルメチルクロリド(2.1g、7.5mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.2g、1.6mmol)を室温で加えた後、40℃で終夜攪拌した。これを減圧濃縮して得られた残渣をベンゼン(600ml)に溶解し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水、及び飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、ベンゼンで洗浄し、ろ液と洗液は合わせて減圧濃縮し、モノトリチル誘導体、及びジトリチル誘導体の混合物(7.6g)を得た。このうち5.8gを採り、テトラヒドロフラン/N,N−ジメチルホルムアミド混合液(4/1;40ml)に溶解し、水素化ナトリウム(60% oil suspension;210mg)を室温で加えて30分間攪拌した。これにブロモ酢酸tert−ブチル(3.9ml、15.1mol)を室温で加えて2時間攪拌した。これを0℃に冷却し、水(1−2ml)を少しずつ加えた後、反応液にベンゼン(350ml)を加えてから有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、ベンゼンで洗浄し、ろ液と洗液は合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学 60N;200ml)に供し、溶出液(10:1 CHCl−MeOH)にてモノトリチル−モノ酢酸tert−ブチルエステル誘導体、及びジトリチル誘導体の混合物を5.2g得た。これをエタノール(80ml)に溶解し、10%水酸化パラジウムを加えて接触水素添加(0.3MPa)を5時間行った。固形物をセライトろ過にて除去し、エタノールで洗浄し、ろ液と洗液は合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をベンゼン(250ml)に溶解し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、ベンゼンで洗浄し、ろ液と洗液は合わせて減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学 60N;200ml)に供し、溶出液(10:1 CHCl−MeOH)にて化合物55(2.7g、24%、3steps)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.48(9H,s),3.46−3.83(m),4.02(2H,s).
製造例71:親水性スペーサー分子の合成(9−2)

化合物55(2.4g、1.2mmol)を塩化メチレン(30ml)に溶解し、モレキュラーシブス4A(2g)を加えて終夜攪拌し、これにp−トルエンスルホニルクロリド(2.16g、11.3mmol)及び、4−ジメチルアミノピリジン(0.72g、5.9mmol)を室温で加えて終夜攪拌した。この反応液をそのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学 60N;250ml)に供し、溶出液(20:1 CHCl−MeOH)にてトシル誘導体を得た。溶媒を留去後に得られた残渣をDMSO(24ml)に溶解し、アジ化ナトリウム(2.5g、38.5mmol)、及びヨウ化ナトリウム(0.4g、2.7mmol)を加えて、70℃で5時間攪拌した。反応液にベンゼン(350ml)を加え、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、ベンゼンで洗浄し、ろ液と洗液は合わせて減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学60N;150ml)に供し、溶出液(10:1 CHCl−MeOH)にて化合物56(1.85g、75%、2steps)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.39(2H,t),3.45−3.83(m),4.02(2H,s).
製造例72:親水性スペーサー分子の合成(9−3)

化合物56(1.23g、0.62mmol)をエタノール(45ml)に溶解し、10%水酸化パラジウム(250mg)を加えて、水浴中35℃で2時間接触水素添加を行った。固形物をセライトろ過にて除去し、エタノールで洗浄し、ろ液と洗液は合わせて減圧濃縮してアミン体を得た。これを10%炭酸ナトリウム水(15ml)、及びアセトン(15ml)の混合溶媒に溶解し、9−フルオレニルメチル スクシンイミジル カーボネート(2g、5.9mmol)を加えて、室温で1時間攪拌した。反応液にベンゼン(150ml)を加え、有機相を飽和硫酸水素カリウム溶液、及び飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。固形物を綿ろ過にて除去し、ベンゼンで洗浄し、ろ液と洗液は合わせて減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学60N;60ml)に供し、溶出液(酢酸エチル→10:1 CHCl−MeOH)にて化合物57(852mg、63%、2steps)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.47(9H,s),3.39(2H,t),3.45−3.83(m),4.02(2H,s),4.23(1H,m),4.39(2H,d),7.28−7.77(8H,m).
製造例73:親水性スペーサー分子の合成(9−4)

化合物57(840mg、0.38mmol)を95%トリフルオロ酢酸溶液(8ml)に溶解し、室温で1時間攪拌した。反応溶媒を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学60N;60ml)に供し、溶出液(酢酸エチル→4:1 CHCl−MeOH)にて化合物58(689mg、82%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.39(2H,t),3.41−3.83(m),4.16(2H,s),4.22(1H,m),4.40(2H,d),7.26−7.77(8H,m).
製造例74:親水性スペーサー付金膜の合成
ヘキサエチレングリコール誘導体付金膜(高純度化学研究所社;純金、純度99.9%up、形状10mm×10mm×0.01mm(t))の合成

Piranha溶液(30%過酸化水素:濃硫酸=1:4混合溶液)に数時間浸した金膜(約1cm)をミリQ水(ミリポアの純水製造装置で濾過した水)、エタノールで洗浄した。これを(6−メルカプト−ヘキシル)−カルバミックアシッド9H−フルオレン−9−イル−メチル エステルの1.5mMエタノール溶液(0.5ml)に終夜浸した。反応終了後、金膜をエタノール、アセトニトリルで十分に洗浄した後、ピペリジン/アセトニトリル(1/4)の混合溶液(1ml)を加えて室温で30分間振とうした。金膜をアセトニトリル(約1ml)で洗浄し、この洗浄液と回収した反応液を合わせ、この溶液中のフルオレン誘導体を定量することにより金膜上にアミンが約250pmol存在することを確認した。
この金膜にアセトニトリル(0.25ml)に溶解した{2−[2−(2−{2−[2−(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}酢酸(製造例11で得られた化合物8;12.5mg,0.024mmol)を加え、更にアセトニトリル(0.25ml)に溶解したベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP;13mg,0.025mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(8.9μl,0.50mmol)を加え、室温で終夜振とうした。反応液を除き、金膜をアセトニトリルで洗浄後、同様の条件で終夜反応を行なった。反応終了後、金膜をアセトニトリルで十分に洗浄した後、アセトニトリル(0.25ml)に溶解した酢酸(0.3μl,0.005mmol)を加え、更にアセトニトリル(0.25ml)に溶解したベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP;2.6mg,0.005mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.7μl,0.010mmol)を加え、室温で3時間振とうした。金膜をアセトニトリルで十分に洗浄した後、上述のようにピペリジン/アセトニトリル(1/4)の混合溶液(1ml)で処理し、フルオレン誘導体を定量することにより縮合率を定量した(約90%)。
製造例75:FK506誘導体結合型親水性スペーサー付金膜の合成

製造例74で得られたヘキサエチレングリコール誘導体付金膜を用い、製造例2で調整した17−アリル−14−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−1−ヒドロキシ−12−{2−[4−(7−カルボキシ−ヘプタノイル−オキシ)−3−メトキシ−シクロヘキシル]−1−メチル−ビニル}−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザ−トリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン(4.8mg,0.005mmol)、EDC/HCl(1.0mg,0.005mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt;0.7mg,0.005mmol)およびジメチルホルムアミド(DMF;0.5ml)の混合物を室温で終夜撹拌した。反応終了後、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリルで十分に洗浄し、親水性スペーサーを有するFK506結合型金膜〔金膜+(PEG)−FK506〕を合成した。金膜とFK506の間に介在する親水性スペーサー部分のHBA数は7、HBD数は1である。
実施例1:結合実験(樹脂)
(1)lysateの調製
ラットの脳(2.2g)を混合液A(0.25Mシュクロース,25mM Trisバッファー(pH7.4),22ml)に混ぜ、ホモジネートを作成後、9500rpmで10分間遠心分離した。遠心分離上清を取り、50000rpmでさらに30分間遠心分離した。こうして得られた上清をlysateとして使用した。なお、実験はすべて4℃あるいは氷上で行った。
(2)結合実験
上記したFK506を結合させた各種アフィニティー樹脂を用いて以下の手順でlysateとの結合実験を行った。なお、lysateは混合液Aで1/2に希釈して使用した。FK506を結合させた各種アフィニティー樹脂をそれぞれ10μlを使用した。
尚、FK506を結合させた各種アフィニティー樹脂としては、ヘキサエチレングリコール誘導体の繰り返し構造の数をそれぞれ変えて調製した製造例13〜18までのFK506誘導体結合型親水性スペーサー付樹脂を用いた。また、比較例として製造例3のFK506付TOYOパール樹脂を用いた。
FK506結合アフィニティー樹脂とlysate(1ml)を4℃で終夜、静かに振とうした。その後、上清を除き、残ったFK506結合アフィニティー樹脂を混合液Aで4回十分に洗浄してFK506結合アフィニティー樹脂表面を十分に洗浄した。
こうして得られたFK506結合アフィニティー樹脂に20μlのSDS用loading buffer(nakalai cat.NO=30566−22、電気泳動用sample buffer solution with 2−ME(2−mercaptoethanol)(2x)for SDS PAGE)を加え、25℃で10分間加熱した。こうして得られたサンプル液を市販のSDSゲル(BioRad readyGel J,15%SDS,cat.NO=161−J341)で分離し、そのSDSゲルを解析した。比較例である製造例3のFK506付TOYOパール樹脂に結合(吸着)した分子の内、代表的な10種類のバンドを選択し、そのピークの量を各製造例および比較例の樹脂について測定し、定量化した(図1)。別に行ったウエスタンブロットによりバンド10がFK506のターゲット分子、FKBP12であることを確認した。
結果、親水性スペーサーを導入したものに非特異的な相互作用に基づくと思われるバンドの減少あるいは消失が認められた。これらの傾向は、ヘキサエチレングリコールの繰り返し構造の数が多くなるにつれて顕著であった。一方で、特異的な相互作用に基づいてFK506結合アフィニティー樹脂に結合したFKBP12のバンド(バンド10)については、親水性スペーサーの導入によるバンドの減少や消失は認められなかった。
同様な実験を他の親水性スペーサーについても行ったところ、バンドによって程度の違いはあったが非特異的な吸着を抑制することができた。
実験例1:固相表面の疎水的性質と非特異的な相互作用の相関性
CLOGPの異なる種々の化合物を固相表面に固定化することによって固相表面の疎水的性質を変え、非特異的な相互作用との関係を調べた。使用した化合物を以下に示す。

括弧内の数字はLOGP値(CLOGP値)を示している。
また、種々の化合物のTOYOパール樹脂への固定化は以下のようにして行った。
(1)酢酸固定化樹脂〔TOYO+酢酸〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)に酢酸を固定化した。
TOYOパール樹脂100μlに20%無水酢酸−DMF溶液を0.5ml加え、室温で4時間撹拌した。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した。ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約100%)。
(2)酪酸固定化樹脂〔TOYO+酪酸〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)に酪酸を固定化した。
TOYOパール樹脂100μlに、DMF(0.25ml)とジクロロメタン(0.25ml)の混合溶媒に溶解した酪酸(3.40μl,0.04mmol)を加え、更にベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP;26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約98%)。
(3)オクタン酸固定化樹脂〔TOYO+オクタン酸〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)にオクタン酸を固定化した。TOYOパール樹脂100μl相当に、DMF(0.25ml)とジクロロメタン(0.25ml)の混合溶媒に溶解したオクタン酸(6.34μl,0.04mmol)を加え、PyBOP(26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約97%)。
(4)ミリスチン酸固定化樹脂〔TOYO+ミリスチン酸〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)にミリスチン酸を固定化した。TOYOパール樹脂100μlに、DMF(0.25ml)とジクロロメタン(0.25ml)の混合溶媒に溶解したミリスチン酸(9.13mg,0.04mmol)を加え、更にPyBOP(26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約95%)。
(5)ステアリン酸固定化樹脂〔TOYO+ステアリン酸〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)にステアリン酸を固定化した。TOYOパール樹脂100μlに、DMF(0.25ml)とジクロロメタン(0.25ml)の混合溶媒に溶解したステアリン酸(11.38mg,0.04mmol)を加え、更にPyBOP(26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約91%)。
(6)フェニルプロピオン酸固定化樹脂〔TOYO+フェニルプロピオン酸〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)にフェニルプロピオン酸を固定化した。TOYOパール樹脂100μlに、DMF(0.25ml)とジクロロメタン(0.25ml)の混合溶媒に溶解したフェニルプロピオン酸(6.0mg,0.04mmol)を加え、更にPyBOP(26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約97%)。
(7)グルタラニリック酸固定化樹脂〔TOYO+グルタラニリック酸〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)にグルタラニリック酸を固定化した。TOYOパール樹脂100μlに、DMF(0.25ml)とジクロロメタン(0.25ml)の混合溶媒に溶解したグルタラニリック酸(8.3mg,0.04mmol)を加え、更にPyBOP(26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約97%)。
(8)3−ピリジル酢酸固定化樹脂〔TOYO+3−ピリジル酢酸〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)に3−ピリジル酢酸を固定化した。TOYOパール樹脂100μlに、DMF(0.25ml)とジクロロメタン(0.25ml)の混合溶媒に溶解した3−ピリジル酢酸(6.9mg,0.04mmol)を加え、更にPyBOP(26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約96%)。
(9)サクシニルサルファチアゾール固定化樹脂〔TOYO+サクシニルサルファチアゾール〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)にサクシニルサルファチアゾールを固定化した。TOYOパール樹脂100μlに、DMF(0.25ml)とジクロロメタン(0.25ml)の混合溶媒に溶解したサクシニルサルファチアゾール(14.2mg,0.04mmol)を加え、更にPyBOP(26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約75%)。
(10)インドメタシン固定化樹脂〔TOYO+インドメタシン〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)にインドメタシンを固定化した。TOYOパール樹脂100μlに、DMF(0.25ml)とジクロロメタン(0.25ml)の混合溶媒に溶解したインドメタシン(14.3mg,0.04mmol)を加え、更にPyBOP(26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約93%)。
(11)N−アセチルトリプトファン固定化樹脂〔TOYO+N−アセチルトリプトファン〕の合成

TOYOパール樹脂(TSKgel AF−amino)にN−アセチルトリプトファンを固定化した。TOYOパール樹脂100μlに、DMF(0.25ml)とジクロロメタン(0.25ml)の混合溶媒に溶解したN−アセチルトリプトファン(9.9mg,0.04mmol)を加え、更にPyBOP(26mg,0.05mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17μl,0.10mmol)を加え、室温で4時間振とうした。反応終了後、樹脂をDMFで十分に洗浄した後、ニンヒドリンテストにより縮合収率を測定した(約90%)。
尚、FK506固定化樹脂〔TOYO+FK506〕は製造例3で調整したものを用いた。
それぞれの化合物付TOYOパール樹脂を用いてlysateとの結合実験を行った。lysateは実施例1(1)で調製したものを用いた。
結合実験についても、固相担体を、各種化合物が固定化されたTOYOパール樹脂を用いること以外は実施例1(2)に準じて行った。
非特異的な相互作用による非特異的な吸着に基づくと思われるバンドを6種類選択し、そのピークの量を各化合物付樹脂について測定し、定量化した。各化合物の疎水性パラメーターとしてCLOGPを用い、非特異的な結合に基づくバンドのピーク量との関係を調べ、定量化した(図2)。CLOGPが大きくなるにつれ非特異的な結合が増した。この結果は固相表面の疎水的な性質が強まるにつれ、非特異的な相互作用による吸着が増加することを示している。
【産業上の利用可能性】
疎水的な性質を有する固相表面と検討対象のリガンドとの結合に親水性のスペーサーを導入することにより、非特異的な相互作用を抑制することが出来る。親水性スペーサーの導入は僅かな導入でも効果がある。また、この効果は親水性スペーサーの導入の量に比例して増大させることが出来る。
低分子−低分子、低分子−高分子、高分子−高分子の相互作用を、片方の分子を固相担体に固定し、相互作用を測定、あるいは相互作用をベースとして目的とするターゲットを精製する研究において、本願発明の技術により非特異的な相互作用を人為的に抑制することが可能である。すなわち、本技術は低分子−高分子、低分子−低分子、高分子−高分子相互作用を片方の分子を固相担体に固定し、相互作用を測定、あるいは相互作用をベースとして目的とするターゲットを精製する研究を容易にするものである。これらの成果は生命科学全般、特に創薬研究、ポストゲノム研究、プロテオミクス、ケミカルジェノミクス、ケミカルプロテオミクス等に広く応用できるものである。
本出願は、日本で出願された特願2002−222226を基礎としておりそれらの内容は本明細書に全て包含されるものである。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相担体における固相表面の疎水的性質を調節することを特徴とする、分子の固相表面への非特異的な吸着を調節する方法。
【請求項2】
分子Aを固相担体に固定化し、当該固相上での分子Aと該分子Aと特異的に相互作用する分子Bとの間での特異的な相互作用を解析する過程において、固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理を行うことを特徴とする、分子Aおよび/または固相担体と分子B以外の分子との非特異的な相互作用を抑制する方法。
【請求項3】
分子Aを固相担体に固定化し、当該固相上での分子Aと該分子Aと特異的に相互作用する分子Bとの間での特異的な相互作用を用いて分子Bを選別する過程において、固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理を行うことを特徴とする、分子Aおよび/または固相担体と分子B以外の分子との非特異的な相互作用を抑制する方法。
【請求項4】
分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および低分子化合物、低分子化合物および高分子化合物、ならびに高分子化合物および高分子化合物のいずれかである請求の範囲2または3記載の方法。
【請求項5】
分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および高分子化合物、または高分子化合物および高分子化合物である請求の範囲2または3記載の方法。
【請求項6】
固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理が、分子Aの固相担体への固定化の際にそれらの間に親水性スペーサーを導入することである、請求の範囲2または3記載の方法。
【請求項7】
親水性スペーサーが、固相担体および分子Aと結合した状態で以下の特徴のいずれかを少なくとも有するものである、請求の範囲6記載の方法:
(i)水素結合アクセプター数が6以上である、
(ii)水素結合ドナー数が5以上である、
(iii)水素結合アクセプター数および水素結合ドナー数の総計が9以上である。
【請求項8】
さらに、該親水性スペーサーがその分子中にカルボニル基を1以上有するものである、請求の範囲7記載の方法。
【請求項9】
さらに、該親水性スペーサーが水溶液中で電荷的に陽性あるいは陰性になる官能基を有さないことを特徴とする、請求の範囲7または8記載の方法。
【請求項10】
分子Aを固相担体に固定化し、当該固相上での分子Aと該分子Aと特異的に相互作用する分子Bとの間での特異的な相互作用を解析する方法であって、固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理を行うことにより分子Aおよび/または固相担体と分子B以外の分子との非特異的な相互作用を抑制することを特徴とする方法。
【請求項11】
分子Aを固相担体に固定化し、当該固相上での分子Aと該分子Aと特異的に相互作用する分子Bとの間での特異的な相互作用を用いて、分子Bを選別する方法であって、固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理を行うことにより分子Aおよび/または固相担体と分子B以外の分子との非特異的な相互作用を抑制することを特徴とする方法。
【請求項12】
分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および低分子化合物、低分子化合物および高分子化合物、ならびに高分子化合物および高分子化合物のいずれかである請求の範囲10または11記載の方法。
【請求項13】
分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および高分子化合物、または高分子化合物および高分子化合物である請求の範囲10または11記載の方法。
【請求項14】
固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる処理が、分子Aの固相担体への固定化の際にそれらの間に親水性スペーサーを導入することである、請求の範囲10または11記載の方法。
【請求項15】
親水性スペーサーが、固相担体および分子Aと結合した状態で以下の特徴のいずれかを少なくとも有するものである、請求の範囲14記載の方法:
(i)水素結合アクセプター数が6以上である、
(ii)水素結合ドナー数が5以上である、
(iii)水素結合アクセプター数および水素結合ドナー数の総計が9以上である。
【請求項16】
さらに、該親水性スペーサーがその分子中にカルボニル基を1以上有するものである、請求の範囲15記載の方法。
【請求項17】
さらに、該親水性スペーサーが水溶液中で電荷的に陽性あるいは陰性になる官能基を有さないことを特徴とする、請求の範囲15または16記載の方法。
【請求項18】
分子Aに対して特異的な相互作用を有する分子Bのスクリーニング方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法:
(i)分子Aを固相担体に親水性スペーサーを介して固定化する工程、
(ii)分子Bを含むかまたは含まない試料を上記(i)で得られた分子Aが固定化された固相担体に接触させる工程、
(iii)分子Aに特異的な相互作用を示したか、または示さなかった分子を同定し、解析する工程、および
(iv)上記(iii)で得られた解析結果に基づいて分子Aに対して特異的な相互作用を有する分子を分子Bと判断する工程。
【請求項19】
分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および低分子化合物、低分子化合物および高分子化合物、ならびに高分子化合物および高分子化合物のいずれかである請求の範囲18記載の方法。
【請求項20】
分子Aおよび分子Bの組み合わせが、低分子化合物および高分子化合物、または高分子化合物および高分子化合物である請求の範囲18記載の方法。
【請求項21】
親水性スペーサーが、固相担体および分子Aと結合した状態で以下の特徴のいずれかを少なくとも有するものである、請求の範囲18記載の方法:
(i)水素結合アクセプター数が6以上である、
(ii)水素結合ドナー数が5以上である、
(iii)水素結合アクセプター数および水素結合ドナー数の総計が9以上である。
【請求項22】
さらに、該親水性スペーサーがその分子中にカルボニル基を1以上有するものである、請求の範囲21記載の方法。
【請求項23】
さらに、該親水性スペーサーが水溶液中で電荷的に陽性あるいは陰性になる官能基を有さないことを特徴とする、請求の範囲21または22記載の方法。
【請求項24】
固相担体における固相表面の疎水的性質を低減させる為の親水性スペーサーであって、固相担体および分子Aと結合した状態で以下の特徴のいずれかを少なくとも有するものである親水性スペーサー:
(i)水素結合アクセプター数が6以上である、
(ii)水素結合ドナー数が5以上である、
(iii)水素結合アクセプター数および水素結合ドナー数の総計が9以上である。
【請求項25】
さらに、該親水性スペーサーがその分子中にカルボニル基を1以上有するものである、請求の範囲24記載の親水性スペーサー。
【請求項26】
さらに、該親水性スペーサーが水溶液中で電荷的に陽性あるいは陰性になる官能基を有さないことを特徴とする、請求の範囲24または25記載の親水性スペーサー。
【請求項27】
固相担体および請求の範囲24〜26のいずれか1項に記載の親水性スペーサーを含む複合体。
【請求項28】
請求の範囲24〜26のいずれか1項に記載の親水性スペーサーおよび分子Aを含む複合体。
【請求項29】
固相担体、請求の範囲24〜26のいずれか1項に記載の親水性スペーサーおよび分子Aを含む複合体。
【請求項30】
下記式(Ia)〜(Ie)からなる群より選択されるいずれか1つの式で表される部分構造を少なくとも1つ有する、請求の範囲24〜26のいずれか1項に記載の親水性スペーサー:

(式(Ia)中、
Aは適当な連結基であり、
〜Xはそれぞれ同一または異なって単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
〜Rはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOHあるいは水酸基であり、
mは0〜2の整数であり、m’は0〜10の整数であり、m”は0〜2の整数であり、
〜Rが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Xが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(Ib)中、
nおよびn’はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(Ic)中、
p、p’およびp”はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(Id)中、
は単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
〜R10はそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOHあるいは水酸基であり、
qは1〜7の整数であり、
が複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Xが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(Ie)中、
11〜R16はそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOHあるいは水酸基であり、
rは1〜10の整数であり、r’は1〜50の整数であり、
11〜R16がそれぞれ複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)。
【請求項31】
式(Ia)〜(Ie)からなる群より選択されるいずれか1つの式で表される部分構造を2つ以上有する請求の範囲30記載の親水性スペーサー。
【請求項32】
固相担体および請求の範囲30または31記載の親水性スペーサーを含む複合体。
【請求項33】
請求の範囲30または31記載の親水性スペーサーおよび分子Aを含む複合体。
【請求項34】
固相担体、請求の範囲30または31記載の親水性スペーサーおよび分子Aを含む複合体。
【請求項35】
式(Ia)〜(Ie)からなる群より選択されるいずれか1つの式で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物、
但し以下の化合物は除く。

【請求項36】
式(Ia)〜(Ie)からなる群より選択されるいずれか1つの式で表される部分構造を2つ以上有する請求の範囲35記載の化合物。
【請求項37】
下記式(IIa)〜(IIe)からなる群より選択されるいずれか少なくとも1つの式で表される化合物:

(式(IIa)中、
Yaは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zaは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
Wa、Wa’およびWa”はそれぞれ同一または異なって水素原子または水酸基の保護基(これらの保護基は、隣り合う保護基同士で結合してジアルキルメチレン基を形成してもよい)であり、
Bは適当な連結基であり、
1a〜X3aはそれぞれ同一または異なって単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
1a〜R7aはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOH(式中、水酸基は保護されていてもよい)あるいは保護されていてもよい水酸基であり、
は0〜2の整数であり、m’は0〜10の整数であり、m”は0〜2の整数であり、
3a〜R7aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X3aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(IIb)中、
Ybは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zbは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
およびn’はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(IIc)中、
YcおよびYc’はそれぞれ同一または異なって水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zcは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
、p’およびp”はそれぞれ同一または異なって1〜1000の整数であり;
式(IId)中、
Ydは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zdは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
Wdは水素原子または水酸基の保護基であり、
4aは単結合あるいは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基であり、
8a〜R10aはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOH(式中、水酸基は保護されていてもよい)あるいは保護されていてもよい水酸基であり、
は1〜7の整数であり、
8aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X4aが複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい;
式(IIe)中、
Yeは水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Zeは水素原子またはカルボキシル基の保護基であり、
11a〜R16aはそれぞれ同一または異なって水素原子、炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基、−CHOH(式中、水酸基は保護されていてもよい)および保護されていてもよい水酸基であり、
は1〜10の整数であり、r1’は1〜50の整数であり、
11a〜R16aがそれぞれ複数個存在する場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、
但し以下の化合物は除く。

【請求項38】
式(IIa)〜(IIe)からなる群より選択される少なくとも1つの式で表される化合物を重合してなるポリマー化合物。
【請求項39】
固相担体および請求の範囲35〜38のいずれか1項に記載の化合物を含む複合体。
【請求項40】
請求の範囲35〜38のいずれか1項に記載の化合物および分子Aを含む複合体。
【請求項41】
固相担体、請求の範囲35〜38のいずれか1項に記載の化合物および分子Aを含む複合体。

【国際公開番号】WO2004/025297
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535864(P2004−535864)
【国際出願番号】PCT/JP2003/009640
【国際出願日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【出願人】(501260082)株式会社リバース・プロテオミクス研究所 (15)
【Fターム(参考)】