説明

土塊群を整斉する処理機。

【課題】
稲作田や一般的作物圃場を栽培植物にとって望ましい作土構造に整斉する。それを螺旋状の刃を利用した処理機で行うことで化石燃料等の無駄な消費を抑える。また、農業の大規模経営を可能にする。この処理機で雪面や砂浜、堆積物、地覆物を解して整斉することも可能とする。
【解決手段】
螺旋状に連続した刃を突設した軸をアッパーカット方向に駆動回転させながら進行させ、荒起し等で生成された土塊群の一定高以上を剪断して分離し、その一定高の処に基本的に均平な基面を形成する。また同時併行で分離した土片を螺旋状の刃の側面で集め、軸周面に突設した突起、あるいは刃側面に概ね垂直に突設した翼状処理板による砕破・攪拌・放擲等作用で均質で空気を多く含んだ細粒土あるいは流動性のある泥を生成し、それを基面より下の乱されていない土塊群の上に水平・均平に一定厚で載置して整斉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は望ましい栽培用作土構造の提案とそれを実現する整斉法とそれを実施する処理機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我国の稲作の方法は種々の技術革新とともに変化してきた。動力の面では人力から牛馬になり、エンジンによる動力に変わって数十年が経とうとしている。農業の分野での機械化は全般的に進み概ね行き渡った感がある。一方では我国を含め先進国における化石燃料の浪費が社会の全般で止まらず問題になっているところであり、限りある資源の消費抑制や地球環境の保全のためにもあらゆる面で早急の対策が課題となっている。
【0003】
稲作圃場の耕耘・整斉法に関しては、地域によって多少の違いがあるものの秋の荒起こし、春の再起こし、荒代掻き、植代掻きと4回にわたって行われる例が多い。しかも荒代掻き、植代掻きは圃場を縦と横方向に2回掻くことが多い。これでは生産される収量に比してそのために消費される化石燃料が多過ぎるきらいがある。
【0004】
一般的に荒代掻き、植代掻きに使用される機械は砕土・均平用ロータリやカゴロータである。前者は爪軸に取り付けた爪が回転により、前もって荒起し等で耕耘された土塊を砕き、練り、土塊と水を掻き混ぜて泥を生成する方式である。効果としては元肥等の全層混和、苗の植え付けを安定させるための泥の生成、圃場からの漏水の防止等である。
【0005】
しかしこの方式には弱点があり、過度に土を掻き過ぎると図13のようになって全体的に糊のように練られたようになり土中の酸素が散逸して稲の活着や生育に支障をきたす。植壌土では1回の代掻きによって縦透水量が5分の1に、3回では10分の1に、それ以上だと100分の1に低下すると言われている。また、耕耘層の深部まで練るため爪軸に回転抵抗が大きくかかり燃料を多く消費して経済的でない。これでは貴重な化石燃料を多く消費してしまう。排気ガス等で地球環境に負荷をかける。また、その回転抵抗があるため爪軸に多数の爪を配置することが出来ない。
【0006】
また、これまでは元肥、根付肥、穂肥等をそれぞれの適切な時期に施してきたが、近年は一括肥料が開発され、田面下数センチメートルのところに刈取り期までに必要とする量を春にまとめて埋め込んでおけばその後の土中の積算温度に応じて、必要な時期に必要な成分が必要な量だけ徐々に溶け出しこれを根が吸収するようになっている。すなわち一括肥料を使用すれば必ずしも元肥を全層に混和する必要が無くなっている。
【0007】
また、適宜少しずつ溶け出し、根がそれに呼応して吸収してしまうため、肥料分の散逸の恐れがある漏水の多い田でも充分収量を確保出来るようになった。むしろ適度な漏水田の方が水の縦浸透によって土中に酸素が常に供給されるため、根を丈夫に発育させ収量も多くなる。耕盤の上の作土は均質な土の層ではなく土塊が積層した状態の団粒積層構造の方が収量が良い。昔から「ゴロ田は根張りが良い。」、「水もちがよ過ぎて腐敗した水では、米は増収できない。」と言われている。これは縦透水で供給される酸素が根の伸長を促し根の養分吸収を助けるためである。
【0008】
次にカゴロータはカゴ枠が回転して枠ひだが土塊を砕破し、水と土とを混合し、残った土塊を下方へ鎮圧する方式であるが、細砕性能が低く田面表面部に大小の土塊が残るように混じるため田面の均平が悪いだけでなく根と泥との馴染みが悪く田植では浮き苗を生じさせたりする。
【特許文献1】特開平7−123801
【特許文献2】特開平6−125617
【特許文献3】実公昭31−017134
【特許文献4】特公昭40−013163
【特許文献5】実開昭62−094702
【0009】
そこで近年の施肥技術に適合しつつ化石燃料の消費が少ない整斉法として、耕耘爪によるこれまでの全層撹拌方式ではなく次項以降に記述の表層上半分離細砕型の代掻き法を提案する。また、その処理機としてスクリュー状の連続刃を利用することを提案する。
【0010】
既に螺旋状の処理板を利用したものが畑地圃場の表面均平用として実用化されている。しかし、これは幅の細いリボン状の板を大径の螺旋状に加工して処理板としたもので、その螺旋状の処理板を軸から伸びるアームで軸に保持しているものである。
リボン状で細い幅にしているのは螺旋回転によって土片が片側に一方的に寄せられて圃場面が傾くのを防ぐため、寄せられる土片の一部をリボンの内径側の空いた空間を利用して隣の元の条へ戻させるためである。また隣の条へ戻すように逃すことで螺旋の回転抵抗を減じている。
この処理機はあくまでも乾いた畑等の表面の凹凸を均すために開発されたもので作土構造を形成するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、ハローなど整斉機として特に改良が求められることを整理すると、次のような点が挙げられ本発明はこれらを解決するためのものである。
作土の下層部は団粒積層構造で存置する。
作土の上層部は細粒土となるようにする。代掻きでは流動性の均質な泥を必要量生成して存置する。
処理機による燃料消費が少ないこと。
作業が効率的に行われること。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらを実現するためには、先ずこれまでの整斉法を抜本的に変える必要がある。荒起し等でせっかく生成した土塊の団粒積層構造を壊さないこと、すなわち化石燃料の消費を抑える意味も込めて耕耘爪による全層混和を止めることを提案する。
そして、図1のように土塊群の表層部を必要量だけ剪断等で剥離して、それを細砕して細粒土を生成し団粒積層構造の上に載置することを提案する。
なお、本申請において整斉とは対象物に作用し加工を加えて構造的に目的とする状態に整えることである。
【0013】
実施の手段としては、軸周面に螺旋状に突設して成る連続した刃を利用し、前もって荒起し等で生成した土塊群の表層部土塊の一定高以上を剪断したり削ったりして分離し、次にその分離した土片を集め、それを切断や切り刻みや砕破や撹拌して細粒土あるいは水とそれとの混合物を生成して載置することである。
処理としてはその切断や切り刻みや砕破や撹拌を繰り返し行えるように当該軸を進行前方側に向けてアッパーカット方向に回転させながら前進させることである。
【0014】
先ず、提案する処理機の基本的構成および作用は次に示すとおりである。
図3に例示するように、これは処理機を前から見たものであるが、回転軸1の周面に螺旋状に連続した板を突設して刃2としたものに、さらに回転軸1の周面に板あるいは棒あるいはピン等の突起3を複数突設して配置し、これを軸中心線Kが処理対象面に概ね平行あるいは水平になるように配備して進行前方側に向けてアッパーカット方向Fに駆動回転可能なようにしたもので、この軸の刃2を処理対象面に喰い込ませて前進させる。
なお、ここで突起3は板・ピン・棒以外でも対象物の中に分け入ることができる形状のものであればよい。
また、刃の周縁に硬い材質の爪を埋め込んでおくことも考えられる。この場合は爪は土塊を削ることになる。
【0015】
回転する螺旋状の刃2が土塊を切削したり剪断したりして剥離分離することで土塊群表層部の一定高で分列状に基面を造成する。そして剥離分離等した土片を刃2の側面が押土板の役目をしながら処理面接触部に位置する刃の刃先の縁を繋ぐ線に対して直角の方向Aに押し集める。次に、回転軸1に配置した突起3がその堆く盛り上がっている土片群Mを切断や刻み込みや砕破や撹拌する。
【0016】
軸1がアッパーカット方向Fに回転しているため突起3もアッパーカット方向Fに回転するため土片群Mや田面の水を常に突起が処理対象物に当る面に概ね垂直すなわち概ね前方へ蹴り戻す。こうしてサッカーゲームで選手が走りながら繰り返しボールを前へ蹴り出すようにして破砕、撹拌、切断、切り刻みをしているうちに土片は細かくなる。水田では水とも充分混合し、生じた泥は流動性も良くなり突起3と突起3の間や突起3の仮想回転体と螺旋刃2による土塊切取り基面との間等を擦り抜けて通過する。乾いた圃場では仮想回転体と切取り基面との間に出来る空間等から後方へ逃される。こうして図2のように、螺旋刃で一定高Tに揃えられた土塊群の上に一定厚で均質な泥や細粒土の層を造成することが出来る。
【0017】
しかし、これだけではまだ欠陥があって汎用的利用には耐えられない。螺旋状の刃2が連続しているため、またアッパーカット方向に回転するため剥離等した土片を刃2の側面が回転によっていつまでもどんどん進行方向前方へ擦りながら送り更に刃先の縁を繋ぐ線に対し直角の方向に押しながら一方的に片端へ移動させてしまうために結果として土の片寄りが生じてしまう。右ネジの螺旋はアッパーカットの回転で土片を左側へ移動させる。左ネジの螺旋は土片を右側へ移動させる。積極的に移動させる場合はともかくとして、水平や均平な圃場面にはならない。また、刃の側面前に堆くなる土片群は刃の回転に抵抗する。
【0018】
そこで図4は軸1、刃2、突起3等については説明が容易なように図1のDの方向に軸の中心線より下半分を図示したものであるが、軸1の配備を軸中心線Kが躯体進行方向Hに対して所用の交差角度Pを持つようにすることを提案する。
螺旋状の刃2は土片を処理面接触部に位置する刃の刃先を繋ぐ線に対して直角の方向Aの方向へ押す。突起3は土片群を軸中心線Kに対して概ね直角の方向Bに放擲する。
図のように、所用の交差角度Pを持たせば、軸に突設した突起3は螺旋状の刃2が側面で集めた土片群Mを躯体進行方向Hの線を境にして土片が元位置していた処の側へ蹴り戻すことが可能になり、土片が元に戻されることで圃場面の片寄りを解消することが出来る。
但し、この効果は螺旋の捻りの右捻り・左捻り、軸の配備の右側先行・左側先行によって違ってくる。螺旋のピッチの間隔にもよるがアッパーカット回転で右捻りなら図4のように軸の左側が先行する方が効果が確実である。逆に右側が先行すると突起3が蹴り戻すのは右の方向の戻す方向ではなくAと同じような片寄らせる方向へ放擲作用をする。
【0019】
次に、一方的押し遣りによる土の片寄りを確実に解消し回転抵抗を軽減することに重きをおいた機構を提案する。螺旋状に突設された刃2の側面に板状又は棒状又はピン状等の突起を概ね垂直方向に固着又は付装して翼状の突起とし、本申請では翼状の処理板4という、排土板や攪拌等の機能を持たせることを提案する。螺旋にはピッチがあるため螺旋状になっている刃の刃先部の縁の線は回転軸中心線に対して平面視で直角でなく一定の角度で斜めに交差している。刃側面に対し概ね垂直方向に固着又は付装された処理板の面や、棒やピンの長手の線は、刃の刃先すなわち刃周縁の線の見通しの方向を向く。
図5に例示のようにアッパーカット方向に回転しながら一回転ごとに翼状の処理板4は刃側面前に集められている土片群の土片を板面に垂直、棒やピンの長手に垂直の方向すなわち概ね刃先の縁の線の見通しの方向C、すなわち土片が元位置していた処の側の方向へ戻すように斜め前方へ放り出すことが出来る。あるいは押し出したり、弾き出したりすることが出来る。そして、翼状の処理板4は1回転ごとに土片群を破砕や攪拌もする。
【0020】
この提案は回転軸中心線Kが躯体の進行方向Hに対して直角すなわちPが90度になるように配備しても充分元へ戻す効果を発揮することが出来る特性がある。もっとも図4のように軸を左側先行にして進行方向と斜交させた状態で前進させる方が、その斜交させた分土片を元へ戻す角度を強くするため効果が更に大きくなる。
【0021】
次に図9で例示のように、更に刃2の側面に凹凸が付加されるようにすることも提案する。これにより刃側面前に集めた土片を刃側面部のその凹凸と土片との接触摩擦でアッパーカット方向すなわち前の方へ擦りやろうとするとともに同時に土片の破砕や水との攪拌・砕破も行う。また、これは先述の翼状処理板と同様の放擲機能も持つことになる。
【0022】
何れの提案も軸がアッパーカット方向に回転しながら前進した後には破砕等されて出来た細砕土は図3、図5に例示のように処理機の後方に分列状の島になって残るので、図1のようにこれを処理機の後方に配備する均平板6が弾圧して均平にすることを想定している。
【0023】
次に本発明の駆動と交差角度の調整に関する実施例を図6で説明する。当該整斉軸部9は三点リンク12等のリンク装着手段を介してトラクタ等の動力車に昇降自在で、水平回動手段を介して機体軸との交差角度自在で保持されている。
【0024】
当該整斉軸部9はその中心部に動力受入軸14を内臓する伝動ケース13を備え、整斉作用を実行する整斉の軸1は、伝動ケース13から左右に伸長し伝動軸16を内臓する上部伝動機枠15の左右のサイドフレーム21と回転反転手段18a、巻掛伝動手段19aを内臓した側部伝動ケース17aとの両下部に軸受手段20を介して軸架されている。当該整斉の軸1には螺旋状の刃2のほかに、複数の突起3を周面に突設したり、刃2側面に翼状の処理板4を固着等したりしている。
【0025】
駆動動力は動力車のPTO軸10から自在接手軸11a,11bにより当該整斉機の伝動ケース13内の動力受入軸14に伝えられ、これが上部伝動機枠15内の伝動軸16で側部へ伝えられた後、側面の側部伝動ケース17a内の回転反転手段18aで回転方向を逆転させ、それが巻掛伝動手段19aを介して最下部に位置する整斉の軸1をアッパーカット方向Fに駆動回転させる動力となっている。
また、軸1の軸中心線の躯体進行方向に対する角度の調整は運転席等からのレバー操作で、アーム23a,23bヒンジ25a,25b,25c,25d、伸縮アーム24で構成されるヒンジ手段を利用した水平回動手段を構成する伸縮アーム24の伸縮によって行っている。
【発明の効果】
【0026】
本螺旋回転刃2を土塊に深く喰い込ませて回転させれば剪断や切削や破砕や攪拌等の処理量が増える。浅くすれば少なくなる。これにより本提案は泥や細砕土を必要な量だけ生成することが可能であり、無駄がない点で合理的なものである。
【0027】
本申請の機構によれば、まず螺旋状の刃2が作土基本部分である土塊層の表層部を分列状に一定の高さで剪断等して基本的に均平な面を造成するため水平・均平性が圃場の全体にわたって基本的に確保される。
【0028】
圃場面の表面仕上げに関しては、先述の回転軸1を躯体進行方向に対して所用の交差角度に調整する機構、翼状処理板や突起や刃側面凹凸による蹴り戻しの作用で均平や水平の問題を解消する。なお、角度の調整は機体が処理面や処理片から受ける一方向的抵抗反作用の力の方向を変えることも可能とし、機体の走行を安定させることを可能とする。
【0029】
また、本発明は突起3や翼状の処理板4や刃側面凹凸が土片を攪拌等するだけでなく土片を放擲して、滞留した土片群を排除する機能を持つため分離等した土片を軸心方向に押すこと等による軸の回転抵抗がその分減じられる効果がある。軸の回転抵抗の減少により化石燃料の消費が抑えられる。地球に親しいことになる。
【0030】
また、土の塊は一定の大きさ以下になるまで、また一定の流動性が出るまで軸1の下や突起3と突起3の間を通過出来ないので常に一定の流動性をもった泥や一定の粒径以下の細砕土を後方に凸状・分列状に載置することができる。
基礎部分である土塊層の表面は基本的に概ね水平で均平となること、その上の泥や細砕土の層は均質あるいは一定の流動性一定の厚さが保証された層になるため本機に別途装着することが考えられる均平板6の均平作用も確実になる。
【0031】
生成した泥は時間の経過とともに下に温存された団粒積層構造の土塊群の間隙の中に沈み込み適度の縦透水の径路を確保する。田植え後40日程すると一度田を干すのが近年の稲作法だが、このようにして拵えた田は団粒部土塊と沈み込んだ泥のそれぞれの乾燥収縮率の違いが望ましいひび割れ乃ち少々の干しでも一定の間隔で確かなひび割れや空隙を容易に作ってくれて稲の健全な生育に資することにもなる。大小様々な孔隙やひび割れは透水を容易にし保水力を持つ。また、反対に乾きの良い田にもなり秋のコンバイン等による収穫時も作業機械の走行が安定する。
【0032】
また回転する爪で土塊層を練り混ぜる方式ではないため、土塊層の下部にまで刃を貫入させることがないため軸の回転抵抗が非常に小さい。加えて、表層のみの処理であることから螺旋の回転円の径を小さくすることも可能であり、その場合は燃料消費が更に少なくなり結果として地球環境に優しい方法である。
【0033】
図7の例のように翼状の処理板4はCの方向すなわち土片を螺旋回転による一方的押し遣りの方向Aとは逆の方向すなわち元へ戻す方向へ放り出すことが可能である。さらに処理板の面積を大きくしたり板面の向きを外向きにすれば元へ戻す量が多くなり戻す角度が更に強くなる。このように回転軸を進行方向に対し直角に配備してもこの翼状の処理板4は土の移動による田面の傾がりを生じさせない作用をする。
【0034】
アッパーカットの回転は本発明においては重要な要素である。反対のダウンカット回転でも一定の効果はあるが、処理機が通過した跡には刃が削った痕の半円の筒状凹みと、削られて後方へ残置された土片の島が斜めの分列様に残るのみである。土片が刃で集められることがなく、また突起等による破砕は1回限りである。すなわち繰り返し処理されることがないため効果が薄い。但し、何度も機体を往復させてこの処理を繰り返し行えば略同じような効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
固結していない土壌や長い間水浸して充分膨軟化した土では翼状処理板4や刃側面凹凸による砕破・攪拌作用程度で充分整斉できるが、荒起し直後の圃場等では土塊が固く締まっているため周面突起3による処理も加える必要がある。
【0036】
図4の例のように刃の回転軸中心線Kを躯体の進行方向Hに対して直角でなく所用の角度Pをもたせて配備すれば、軸に突設した破砕や撹拌用等の突起3や刃の側面に付装等した翼状の処理板4が刃による土の一方的押し遣り方向Aとは反対の側へ戻すように土片を放り出す作用を更に角度を強くして行わせることが出来る。
【0037】
図7や図8の例のように刃の螺旋の捻りの方向を軸の左右で対称にして、圃場の土塊や田面の表面水を中央に集めて撹拌等したり、走行機体の車輪跡の凹みを埋めたりするために更に細かく分割して対称にしたりして、積極的に土片等を移動させることも可能である。また処理面から受ける反力の方向が軸の中の左右で打ち消し合って走行機本体にまで及ばない効果もある。
【0038】
軸を図8に例示のように捻りの向きを左右で対称にしてV字型に配備すると走行機体の進行に伴い回転軸の軸周面自身が田面の水を中央に集めるように押すだけでなく、土片も水も刃の螺旋の回転で強制的に中央に集められる。そしてこれを翼状の処理板が両外側へ向けて散らすことになる。これは十分水を張った田での代掻きに利用できる。逆にこれをハの字型にすると、刃は土片を中央に寄せ、突起と翼状処理板、刃側面部凹凸がそれを両端側へ向けて散らすことになり、畑等で利用出来る。
【0039】
圃場の土質や作業目的に応じて螺旋の捻りのピッチ間隔、周面突起の配置密度、突設角度、突起が処理物に当る面の角度や形状、翼状処理板の形状や広さや取着位置や配置密度、土片群への進入角度、土片を放り出す方向と角度、刃側面の凹凸の程度等を効果的でバランスのとれた構成にする。また、螺旋を多条螺旋にしたり回転速度をあげると処理面への作用は密になる。
【0040】
軸1の進行高、回転速度、走行方向に対する配備角度、田面や水平に対する配備角度を何時でも調節できるようにすれば、土片や田面水が寄せられる量や周面突起3や翼状の処理板4がそれを切断・切り刻み・破砕・撹拌する効率や程度、放擲して元へ戻す方向及び量、水平や均平や傾斜の程度を調整することが出来る。
【0041】
また、翼状処理板4を刃2と軸1の隅角部に固設して、刃2が土塊等から受ける曲げのモーメントに対する補強を兼ねることも可能である。
【0042】
処理軸から後方へ逃がす土量は突起の身長や配置密度にもよるが回転軸の進行高さを上げ回転を弱め、軸の角度については接地部の刃先の縁の線の見通しの方向を躯体進行方向に一致させるようにすれば多くなる。またその逆にすれば田面水も土片も多量に前方へ戻され破砕や撹拌等の作用を強く受ける。
このように本発明は処理作業中において、本処理軸の調整操作で団粒上部基面高、圃場面の均平度、水平度、生成する泥や細粒土の量、泥の軟弱度、泥の均質度、細粒土の粒径、作業効率等についての調節機能を持つことが出来る。実際には運転席から処理中の圃場面等の状態を観ながら角度や走行高、回転速度等を調整することになる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
適度な粒径の土塊で前もって転耕しておき、何日間か水浸した後田植え直前に本提案処理機で整斉すれば少ない処理回数、すなわち少ない燃費で本発明提案の作土構造の植田の準備が出来る。また、代掻きを省略して田植や直播きが出来れば農業の大規模経営も可能になる。
図11例示のように直播機の種子や肥料の埋込み部26の前部または後部、図12例示のように田植機植付け部27の前部に本発明の整斉軸を配備することも提案する。軸の通過後に造成される作土構造が既に説明したように苗及びその後の稲の生育にとって望ましいものになる効果がある。また、田面の粗い土片はアッパーカット回転で全て前方へ戻され後方の埋め込み部や植付け部には静水面と均質な泥が確保されて確実な植付け等の作業となる。さらに田植や直播き作業と合わせてその際に田面を攪乱することは、伸長しかかっている雑草の芽をその際に破損することにもなり確実な除草計画遂行に役立つ。また、軸で生成される泥は流動性があるためコーティング種子の覆土や苗の根の包み込みがしっかり行われ苗立ちが良くなる。さらに、直播においては、透水量が多い作土となることから酸素の供給が十分で、前日から落水しなくても播種が可能であり安定した出芽が得られる。
【0044】
畑作物圃場でも排水性が良い作土、通気性が良い作土は多くの作物栽培で求められる。ダイコン、ニンジンなど根菜類は商品としての形や肌の風合いの点から細かく単一粒径構造の作土が良い場合もあるが、一般的には孔隙が多く排水が良く且つ酸素含有が充分な作土は収量が多く良質の作物が獲れる。下が通気性・排水性の良い団粒構造、上が植付け時に作物の根を包み肥料分や水を供給する細粒の作土層の構成は一般に求められているものである。
【0045】
本提案は一般的畑作物栽培用や乾田直播き用の圃場造成にも利用可能である。下部は土塊が骨格となり長期に多くの深い孔隙を維持する。処理軸が通過した後にはその上に解された細かい土粒子からなる一定厚の層が形成されて作物に好ましい土構造となる。突起等で何度も砕破され解されて出来た細粒土が空気を多く取り込んだ表層を形成する。直播きは種籾が発芽する際に多量の酸素を要求するため発芽率が安定する効果がある。
【0046】
本処理機は圃場ばかりでなく海水浴場の砂浜、スキー場の雪面、その他のところで利用できる。図10で例示のように堆積物、地覆物の凹凸面を所用の厚さ、一定の高さで剪断分離等してそれを解し、空気を混入したり表面を均平に仕上げる機能を持っている。また、処理面の表層部に混じっている空き瓶等の異物を掘り出してくれる。
【0047】
砂や雪のように固結していないものを処理する場合は、突起3の身長を長くして深部まで解すことが可能にもなる。
【0048】
また、突起3の身長を刃2の身長より長くしたり翼状処理板4を刃周縁からはみ出るように付装等すれば、それらは処理面を削って剥離する作用を行うため螺旋の刃2が剪断作用で処理面から受ける抵抗が減じられて軸の回転が容易になる効果が生じるので、固く締った処理面に対してはこのような形状にすることも提案できる。この場合は突起が刃の摩耗を遅らす。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本申請の処理機が進行しながら土塊を処理する状況を表す装置部側面図。
【図2】本申請で提案する作土構造の概念図。
【図3】本申請処理機の構成とその作用を表す、処理機正面の要部斜視図。
【図4】軸の配備の例とその効果を表す図で、左の破断切開部分で処理の前と後の圃場の状況を表す省略全体平面図。
【図5】本申請が提案する翼状処理板の作用を表す、処理機正面の要部斜視図。
【図6】本発明の構成例を示す概念的な平面図で、アッパーリンクアーム等は省略して表している。
【図7】軸の配備の例とその効果を表す省略全体平面図。
【図8】軸の配備の例とその効果を表す省略全体平面図。
【図9】刃側面に凹凸を付加した例の要部破断斜視図。
【図10】雪面や砂浜や堆積物や地覆物を処理する状況を表す装置側面図。
【図11】直播機の種子又は肥料埋込み部の進行方向前方に提案の整斉軸を配備した例の側面図。
【図12】田植機植付け部の進行方向前方に提案の整斉軸を配備した例の側面図。
【図13】従来の処理機による作土構造の概念図。
【符号の説明】
【0050】
1 軸
2 刃
3 突起
4 翼状の処理板
6 均平板
7 土塊
8 細砕土
9 整斉軸部
10 PTO軸
11a,11b,11c,11d 自在接手軸
14 動力受入軸
16 伝動軸
18a 回転反転手段
19a,19b,19c 巻掛伝動手段
23a,23b,23c,23d アーム
24 伸縮アーム
25a,25b,25c,25d ヒンジ手段
26 直播機種子・肥料埋込み部
27 田植機植付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土塊群の一定高以上を分離して其処に基面を形成し、分離した土片を集めて切断あるいは砕破あるいは攪拌し、それによって生成した細粒土又は泥の層をその基面の上に片寄りなく載置して栽培用の作土構造を形成することを特徴とする整斉法。
【請求項2】
螺旋状に連続した刃を周面に突設した軸において、複数の板状または棒状またはピン状の突起を周面に突設して配置し、その軸を軸中心線が処理対象面に概ね平行あるいは水平、且つ機体の進行方向に対して概ね直角あるいは所用の角度をもつことが出来るようにして配備し、これを進行前方側に向けてアッパーカット方向に駆動回転させる機構を備え、軸の回転と機体の進行により処理対象物に作用して処理と整斉を行うことを特徴とする整斉機。
【請求項3】
螺旋状に連続した刃を周面に突設した軸において、刃の側面に板状または棒状またはピン状の突起を概ね垂直に固着又は付装して翼状の処理板とし、その軸を軸中心線が処理対象面に概ね平行あるいは水平、且つ機体の進行方向に対して概ね直角あるいは所用の角度をもつことが出来るようにして配備し、これを進行前方側に向けてアッパーカット方向に駆動回転させる機構を備え、刃の回転に伴うその翼状の処理板の回転で刃の側面部に滞留させている処理対象物を概ね刃周縁の線の見通しの方向へ押し出したり、掬ってそれをその見通しの方向へ放擲したり、弾き出したりしながら、同時に処理対象物を破砕や攪拌することで処理と整斉を行うことを特徴とする整斉機。
【請求項4】
刃側面部に凹凸を付加した請求項第2項または第3項に記載の整斉機。
【請求項5】
刃の螺旋の捻りの向きを軸の左右で対称にした請求項第2項から第4項のいずれかに記載の整斉機。
【請求項6】
動力車と整斉軸部の間に水平回動装置を介し、軸中心線と機体の進行方向との交差角度を自在に調整することが可能となるようにした請求項第2項から第5項のいずれかに記載の整斉機。
【請求項7】
請求項第2項から第6項のいずれかに記載の整斉機を田植機植付け部の進行方向前方に配備した田植機。
【請求項8】
請求項第2項から第6項のいずれかに記載の整斉機を直播機の肥料又は種子の埋め込み部の進行方向前方又は後方に配備した直播機。
【請求項9】
請求項第1項において、土を雪又は砂又は堆積物又は地覆物に読み替えてそれらを整斉する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−253142(P2008−253142A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74663(P2007−74663)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(303048330)
【Fターム(参考)】