説明

土壌改質剤および土壌改質剤を用いた土壌改質方法

【課題】従来の微生物や浄化剤をカプセルに封入した土壌改良剤および土壌改質方法における不確実性の問題や設備面、コスト面における問題がなく、酸素供給剤や微生物や栄養素を連鎖的に汚染土壌に供給することによって、効率的に土壌改質を行うことができる土壌改質剤および土壌改質方法が望まれていた。
【解決手段】本発明に係る土壌改質剤は、土壌中の水分によって水和反応を起こす物質または/および酸性またはアルカリ性に解離する物質を生分解性材料または/および水溶性材料を有する被覆材によって被覆した第1改質剤と、微生物または/および栄養素を酸溶解性材料、アルカリ溶解性材料、熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料を有する被覆材によって被覆した第2改質剤とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌を改質する土壌改質剤に係り、さらに詳しくは、酸素供給剤や微生物や栄養素を連鎖的に汚染土壌に供給することによって、効率的に土壌改質を行うことができる土壌改質剤および土壌改質方法に関するものである。
【0002】
近年、工場やガソリンスタンドなどの跡地を再利用する際に、跡地の土壌が鉱物油やその他の化学物質などに汚染されている場合があり、これら汚染土壌への対策が必要になっている。
【0003】
従来から、これら汚染土壌に対する一般的な処理方法として、汚染土壌の掘削除去により土壌の入れ替えを行う方法(掘削除去法)、「フェントン法」や「ホットソイル法」などに代表される化学薬品を用いる方法(化学処理法)、汚染物質に対して効果のある微生物を用いる方法(微生物浄化法)などが用いられている。
ここで、「フェントン法」とは、汚染土壌に鉄系物質と過酸化水素などを混合し、これらが反応する際の反応熱を用いて汚染物質を分解する方法であり、「ホットソイル法」とは、水と発熱反応を起こす生石灰などの物質と水を汚染土壌に混合し、これらが反応する際の反応熱を用いて汚染物質を揮発する方法である。
【0004】
しかしながら、掘削除去法は迅速な対応はできるものの、汚染土壌の搬出、廃棄、非汚染土壌の搬入が必要であることからコストが高くなるという問題があり、さらに汚染土壌自体を改質するものではないという欠点がある。
また、化学処理法は汚染土壌自体を改質するという長所はあるものの、激しい発熱反応を伴うことから作業時の安全対策を厳重にする必要があり、また、掘削除去法のような土壌の入れ替え程ではないにせよ、相応のコストがかかるという欠点がある。
さらに、「ホットソイル法」は、反応熱を用いて汚染土壌中の汚染物質を揮発する方法であることから、揮発した物質の臭気による周辺地域などの環境への配慮が必要になるという欠点がある。
【0005】
そこで近年、微生物や浄化剤をカプセルに封入した土壌改良剤やかかる土壌改良剤を用いた土壌改良方法が提案されている。(特許文献1、特許文献2参照)
【0006】
具体的には、特許文献1に記載の浄化剤および汚染土壌浄化方法は、まずFe2+の水溶液をマイクロカプセル内に包含した反応開始剤を作製(段落[0015]参照)し、該マイクロカプセルを汚染土壌に散布(段落[0026]および[図3]参照)する。次に所定時間が経過した後、ラジカル発生剤である過酸化水素水を該汚染土壌に散布することによって、過酸化水素水がマイクロカプセルを破壊するとともに、包含されていたFe2+の水溶液と汚染土壌中にて反応することでヒドロキシラジカルを発生させ、かかるヒドロキシラジカルによって汚染土壌中のハロゲン化有機化合物を浄化するものである(段落[0018]参照)。
【0007】
また、特許文献2に記載の浄化方法は、栄養塩と水と生分解性カプセルに充填した嫌気性微生物とを汚染土壌に添加してスラリー化した後、該スラリーを撹拌することで汚染物質を微生物で分解し、最後に固液分離によって水を分離することで汚染土壌中の有機塩素系化合物を浄化するものである(請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−145129号公報
【特許文献2】特開2005−279398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の浄化剤および汚染土壌浄化方法は、反応開始剤やラジカル発生剤である過酸化水素水を散布することによって汚染土壌に適用するものである。従って、汚染土壌中においてこれらの薬剤は、実際には汚染部位に留まることなく土壌中に存在するいわゆる「みず道」を通じて帯水層に流出してしまうことから、薬剤を汚染部位に過不足なく供給することが困難であり、これに伴って、汚染土壌中において浄化効果にばらつきが生じるという不確実性の欠点がある。
また、Fe2+の水溶液と過酸化水素水は激しい発熱反応を伴うことから土壌に対する環境負荷が大きくなり、また作業時の安全対策を厳重にする必要があるという欠点もある。
【0010】
一方、特許文献2に記載の浄化方法は、汚染土壌のスラリー化工程、撹拌反応工程、固液分離工程など大規模な設備を要することから、相応のコストがかかるという欠点がある。
【0011】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであって、従来の微生物や浄化剤をカプセルに封入した土壌改良剤および土壌改質方法における不確実性の問題や設備面、コスト面における問題がなく、酸素供給剤や微生物や栄養素を連鎖的に汚染土壌に供給することによって、効率的に土壌改質を行うことができる土壌改質剤および土壌改質方法に関するものである。
また、スラリー化などを行うことなく、すぐに建築工事に取りかかることができる土壌改質剤および土壌改質方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る土壌改質剤は、土壌中の水分によって水和反応を起こす物質または/および酸性またはアルカリ性に解離する物質を生分解性材料または/および水溶性材料を有する被覆材によって被覆した第1改質剤と、微生物または/および栄養素を酸溶解性材料、アルカリ溶解性材料、熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料を有する被覆材によって被覆した第2改質剤とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2に係る土壌改質剤は、土壌改質剤が、さらにpH調整剤を酸溶解性材料、アルカリ溶解性材料、熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料を有する被覆材によって被覆した第3改質剤を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3に係る土壌改質剤は、水和反応を起こす物質または/および酸性またはアルカリ性に解離する物質が、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種以上の物質であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4に係る土壌改質剤は、pH調整剤が、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムから選ばれる少なくとも1種以上の物質であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5に係る土壌改質方法は、請求項1から請求項4に記載の土壌改質剤を用いることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項6に係る土壌改質方法は、請求項1から請求項4に記載の土壌改質剤を用いる前に、予め汚染土壌に微生物または/および栄養素を供給しておくことを特徴とする。
【0018】
次に本発明の各構成要件について説明する。
【0019】
(第1改質剤)
本発明の土壌改質剤に用いられる第1改質剤は、土壌中の水分によって水和反応を起こす物質または/および酸性またはアルカリ性に解離する物質を生分解性材料または/および水溶性材料を有する被覆材によって被覆したものである。
【0020】
(水和反応を起こす物質、酸性またはアルカリ性に解離する物質)
ここで、第1改質剤に用いられる内容物である、土壌中の水分によって水和反応を起こす物質とは汚染土壌中の水分と水和反応することで水和熱を発生する物質をいい、酸性またはアルカリ性に解離する物質とは汚染土壌中の水分によって酸性またはアルカリ性に解離する物質をいう。
なお、一般的に水和反応を起こす物質は水分によって酸またはアルカリに解離するものが多いが、本発明においては後記する第2改質剤の被覆材に用いる材料に応じて、水和反応を起こす性質のみを有する物質や酸性またはアルカリ性に解離する性質のみを有する物質を用いることもでき、これらを併用することもできる。また、これらの物質の内容量については汚染度合などに応じて適宜調節することができる。
そして、これら水和反応を起こす物質や酸性またはアルカリ性に解離する物質の例としては、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムなどの過酸化物、酸化カルシウム、水酸化カルシウムなどのカルシウム塩、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウムの過酸化水素付加物などが挙げられる。
そして、これらの中でも酸素供給剤としての性質も有している点から過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムなどの過酸化物を用いることが好ましい。
【0021】
(生分解性材料、水溶性材料を有する被覆材)
第1改質剤に用いられる被覆材には生分解性材料や水溶性材料が用いられる。かかる材料で第1改質剤の被覆材が形成されることによって、土壌中において所定の期間の後に被覆状態が自然に解消されて、内容物である水和反応を起こす物質や酸性またはアルカリ性に解離する物質が土壌中に供給される。
また、かかる材料で被覆材が形成されることによって、被覆材成分が土壌中に残存することによる土壌に対する二次汚染を防止することができる。
【0022】
生分解性材料としては、例えばデンプン、ポリ乳酸、脂肪族エステル、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアリルアミン(PAAm)などが挙げられる。
【0023】
水溶性材料としては、例えばポリエチレンイミンなどのアルキレンイミンポリマー、ポリリジン、ポリアルギニンなどのポリアミノ酸、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、プルラン、水溶性大豆多糖類、ゼラチンなどが挙げられる。
【0024】
(第2改質剤)
本発明の土壌改質剤に用いられる第2改質剤は、微生物または/および栄養素を熱溶解性材料、アルカリ溶解性材料、熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料を有する被覆材によって被覆したものである。
【0025】
(微生物、栄養素)
第2改質剤に用いられる内容物である微生物や栄養素は、改質対象とする汚染土壌の汚染物質の種類に応じて適宜決定されるものであるが、例えば微生物としてはバチルス属、アシネトバクター属、シュードモナス属、ニトロソモナス属、ロドコッカス属、ゴルドニア属、Alcanivorax属、ハロモナス属などの細菌や、キャンディダ属などの酵母などが挙げられ、栄養素としてはLB培地、酵母エキス、イーストエクストラクト、ミネラルなどの栄養剤、窒素、燐、カリウムなどが含まれている有機系または無機系肥料などが挙げられる。
【0026】
ここで、微生物や栄養素については単独で用いても併用してもよい。また、本発明に用いられる微生物や栄養素は形態を問わず、固体、液体、粉体、ゲル状体など各種の形態のものを使用することができる。なお、微生物や栄養素の内容量については汚染度合などに応じて適宜調節することができる。
【0027】
(熱溶解性材料、アルカリ溶解性材料、熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料を有する被覆材)
第2改質剤に用いられる被覆材には熱溶解性材料、アルカリ溶解性材料、熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料が用いられる。かかる材料で第2改質剤の被覆材が形成されることによって、第1改質剤の被覆状態が解消された後、水和反応によって汚染土壌が加温されたり物質の解離によって汚染土壌が酸性またはアルカリ性雰囲気になることで、第2改質剤の被覆材が溶解し内容物である微生物や栄養素が土壌中に供給される。
【0028】
ここで、熱溶解性材料としては、例えばパラフィンやワックスなどの、加温することによって液状となる、常温で固体の硬化油などが挙げられる。
【0029】
アルカリ溶解性材料としては、例えばメタクリル酸のコポリマー、ビスコースレーヨン、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0030】
酸溶解性材料としては、例えばキチン、キトサン、ツェイン、セラック、各種のセルロース誘導体、各種のポリビニル誘導体などが挙げられる。
【0031】
(第3改質剤)
本発明の土壌改質剤は第1改質剤と第2改質剤を主要な構成要件として構成されるものであるが、第1改質剤の内容物に酸性またはアルカリ性に解離する物質を用いた場合には、かかる物質の解離によって第2改質剤の被覆材が溶解して微生物や栄養素が汚染土壌中に供給された後においても、汚染土壌中には酸性またはアルカリ性の物質が残存することになり、かえって汚染度合を悪化させることになる。そこでかかる場合には、さらに第3改質剤を用いることが好ましい。
ここで本発明の土壌改質剤に用いられる第3改質剤は、pH調整剤を酸溶解性材料、アルカリ溶解性材料、熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料を有する被覆材によって被覆したものである。
【0032】
(pH調整剤)
第3改質剤に用いられる内容物であるpH調整剤としては、第1改質剤の内容物に用いられる酸性またはアルカリ性に解離する物質を中和できるものであれば特に限定されず、かかる物質に応じて適宜決定されるものであるが、例えば酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液などの各種の緩衝液や、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどが挙げられる。そして、これらの中でもリン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムを用いることが好ましい。
また、これらの物質については単独で用いても併用してもよく、内容量についても酸性またはアルカリ性に解離する物質の内容量などに応じて適宜調節することができる。
【0033】
(被覆方法)
本発明に用いられる土壌改質剤に採用される被覆方法としては、転動造粒法や流動層造粒法などの公知の造粒方法、内容物に被覆材となる物質を塗布することでコーティングする方法、内容物を被覆材となる物質で作製したマイクロカプセルの中に充填する方法、内容物と被覆材となる物質とを混合した後に粒状やペレット状などに成形する方法などが挙げられる。
【0034】
(被覆形態)
本発明に用いられる土壌改質剤の被覆の形態としては、例えば図2のように内容物4が被覆材5で被覆された繋ぎ目のないシームレスタイプの土壌改質剤6aや、図3のように凹型嵌合部7を有する被覆材5aと凸型嵌合部8を有する被覆材5bを作製し、かかる被覆材5a、5bの中に内容物4を入れて嵌合するカプセルタイプの土壌改質剤6bのようなものが挙げられる。
【0035】
また、土壌改質剤の被覆の形態としては、上記した材料のみを用いた形態だけでなくこれらの材料以外の他の材料が混合されている形態でもよい。なお、その混合比率は対象とする土壌に応じて調節することができる。
具体的には、図2のように被覆材5の全部が上記した材料で形成されている土壌改質剤6a、図4のように上記した材料と他の材料の混合比率を変化させた混合材料9によって被覆材5の全部が形成されている土壌改質剤6c、図5のように上記した材料と他の材料の混合比率を変化させた混合材料9a、9bを層状に配置した土壌改質剤6d、図6のように被覆材5の一の部分10が上記した材料で形成されており、他の部分11が他の材料で形成されている土壌改質剤6e、図7のように図6の一の部分10に用いる上記した材料の代わりに、混合材料9を用いた土壌改質剤6fなどが挙げられる。
なお、図4〜図7については、図示しやすいように図2に示すシームレスタイプによって模式したが、これに限定されず図3のようなカプセルタイプにおいても採用することができる。
【0036】
(粒径)
本発明に用いられる土壌改質剤の粒径については特に限定されず、汚染土壌の状況に応じて適宜設定することができるが、対象土壌への適用のし易さや被覆材が汚染土壌中にて分解した際の内容物の効率的な拡散のためには、1μm〜10000μm程度の粒径とすることが好ましい。
【0037】
(被覆材の厚み)
本発明に用いられる土壌改質剤の被覆材の厚みについては、内容物を土壌の質や深さ、汚染度合などに応じて適正な時期に土壌中に供給できる厚みであれば特に限定されないが、強度や改質効果の発現時期などを考慮すると1mm〜25mmであることが好ましい。
その理由は、被覆材の厚みがあまりにも薄すぎると取扱い時に被覆材が壊れてしまい、土壌に投入する前に内容物が出てしまう恐れがあるからであり、逆にあまりにも厚すぎると改質効果が発現するまでに時間がかかりすぎ、改質効果が不十分になる恐れがあるからである。
【0038】
(土壌改質方法)
本発明の土壌改質方法としては、上記した土壌改質剤を用いる方法であれば特に限定されないが、汚染土壌をより完全に浄化するためには、予め汚染土壌に微生物や栄養素を供給して汚染度合を低下させてから上記土壌改質剤を供給することが好ましい。
【0039】
また、本発明の土壌改質方法としては、改質の対象となる土壌環境に応じて、内容物の量や被覆材の厚みなどを調整した各種の土壌改質剤を使い分けることもできる。
例えば、建造物などが立っておらず、かつ地表面付近に存在する土壌については、地表面から酸素の供給が多く行われることから、汚染土壌中に元来存在している微生物の活動が活発ないわゆる好気的な土壌環境にある。従って、かかる汚染土壌に対しては内容物の量が少なく被覆材の厚みが薄い土壌改質剤を用いることによって改質状態を調節する方法が挙げられる。
一方、地表面上に建造物などが立っている土壌や深度が高い土壌については、地表面からの酸素の供給がほとんど行われない、いわゆる嫌気的な土壌環境にあることから、内容物の量が多く被覆材の厚みが厚い土壌改質剤を用いることによって改質状態を調節する方法が挙げられる。
また、このような嫌気的環境の土壌では、場合によっては継続的な改質を行う必要があることから、被覆材の厚みが段階的に異なる数種の土壌改質剤を混合することによって、被覆材の被覆状態が解消される時期をずらして内容物が途切れることなく土壌中に供給されるようにして、土壌中の微生物の活動を維持する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る土壌改質剤および土壌改質方法によれば、第1改質剤と第2改質剤とを備えることを特徴としているので、汚染土壌において、まず第1改質剤の被覆材が自然に解消されることで第1改質剤の内容物である過酸化物などが汚染土壌中に供給され、次にかかる内容物による汚染土壌の加温効果やpH上昇効果またはpH下降効果によって第2改質剤の被覆材が解消されることで第2改質剤の内容物である微生物や栄養素などが汚染土壌中に供給されることになる。
従って、酸素供給剤や微生物や栄養素などを連鎖的に汚染土壌に供給することができ、効率的に土壌改質を行うことができる。
【0041】
また、第3改質剤として熱溶解性材料などで被覆したリン酸アンモニウムなどを加えておくことで、微生物や栄養素などが汚染土壌中に供給された後の土壌を中和することができ、土壌環境を改善することができる。
【0042】
さらに、予め汚染土壌に微生物などを供給する前処理を行っておくことによって汚染を短期間でほぼ完全に改質にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る土壌改質方法の実施形態の一例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る土壌改質剤の第1の実施形態の断面を示す模式図である。
【図3】本発明に係る土壌改質剤の第2の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明に係る土壌改質剤の第3の実施形態の断面を示す模式図である。
【図5】本発明に係る土壌改質剤の第4の実施形態の断面を示す模式図である。
【図6】本発明に係る土壌改質剤の第5の実施形態の断面を示す模式図である。
【図7】本発明に係る土壌改質剤の第6の実施形態の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の土壌改質剤および土壌改質方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
図1は本発明に係る土壌改質方法の実施形態の一例を示す模式図である。なお、本実施形態においては、第1改質剤1に図3のカプセルタイプのものを、第2改質剤2および第3改質剤3に図2のシームレスタイプのものを用いているが、これに限定されるものではない。
【0045】
まず、汚染土壌Aの汚染度合に応じて改質に必要な微生物や栄養素の量を試算し、第2改質剤2の被覆状態が解消した際に土壌に供給される内容物の総量が試算量となる第2改質剤2を準備する。
次に、準備した第2改質剤2の被覆材5を溶解するのに必要となる水和反応を起こす物質や酸性またはアルカリ性に解離する物質の量を試算し、第1改質剤1の被覆状態が解消した際に土壌に供給される内容物の総量が試算量となる第1改質剤1を準備する。
次に、準備した第1改質剤1の内容物を中和するのに必要となるpH調整剤の量を試算し、第3改質剤3の被覆状態が解消した際に土壌に供給される内容物の総量が試算量となる第3改質剤3を準備する。
【0046】
そして、改質したい範囲の汚染土壌Aを掘削し、第1改質剤1、第2改質剤2、第3改質剤3を汚染土壌Aに混合する。
【0047】
そうすると、まず汚染土壌Aにおいて所定の期間の後に第1改質剤1の被覆状態が自然に解消されて、第1改質剤1の内容物である水和反応を起こす物質や酸性またはアルカリ性に解離する物質が汚染土壌Aに供給される。
次に、生じる水和熱によって汚染土壌Aが加温されたり、物質の解離によって汚染土壌Aが酸性またはアルカリ性雰囲気になることで、第2改質剤2の被覆材が溶解され、第2改質剤2の内容物である微生物や栄養素が汚染土壌Aに供給され、汚染土壌Aの改質が行われることになる。また、第1改質剤1の内容物が過酸化物である場合には、供給された微生物にとって酸素供給剤としても機能することとなる。
最後に、生じる水和熱や物質の解離によって汚染土壌Aが酸性またはアルカリ性雰囲気になることで第3改質剤3の被覆材が溶解され、第3改質剤3の内容物であるpH調整剤が土壌中に供給されることになり、水和反応を起こす物質や酸性またはアルカリ性に解離する物質の中和が行われ、土壌環境の改善が行われることになる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の土壌改質組成物は、汚染土壌の改質に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 第1改質剤
2 第2改質剤
3 第3改質剤
4 内容物
5 被覆材
5a 被覆材
5b 被覆材
6 土壌改質剤
6a 土壌改質剤
6b 土壌改質剤
6c 土壌改質剤
6d 土壌改質剤
6e 土壌改質剤
6f 土壌改質剤
7 凹型嵌合部
8 凸型嵌合部
9 混合材料
9a 混合材料
9b 混合材料
10 一の部分
11 他の部分
12 建造物
A 汚染土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌中の水分によって水和反応を起こす物質または/および酸性またはアルカリ性に解離する物質を生分解性材料または/および水溶性材料を有する被覆材によって被覆した第1改質剤と、
微生物または/および栄養素を酸溶解性材料、アルカリ溶解性材料、熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料を有する被覆材によって被覆した第2改質剤とを備えることを特徴とする土壌改質剤。
【請求項2】
前記土壌改質剤が、
さらにpH調整剤を酸溶解性材料、アルカリ溶解性材料、熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料を有する被覆材によって被覆した第3改質剤を備えることを特徴とする請求項1に記載の土壌改質剤。
【請求項3】
前記水和反応を起こす物質または/および前記酸性またはアルカリ性に解離する物質が、
過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種以上の物質であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の土壌改質剤。
【請求項4】
前記pH調整剤が、
リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムから選ばれる少なくとも1種以上の物質であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の土壌改質剤。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の土壌改質剤を用いることを特徴とする土壌改質方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4に記載の土壌改質剤を用いる前に、
予め汚染土壌に微生物または/および栄養素を供給しておくことを特徴とする請求項5に記載の土壌改質方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−229352(P2012−229352A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99414(P2011−99414)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】