説明

土壌温度調節システム

【課題】屋外に植えた芝生等の植物の土壌の温度を、少ない設備費や運転費で調節することを可能な土壌温度調節システムを提供する。
【解決手段】植物2を植えた土壌3の温度を調節する土壌温度調節システム1であり、土壌3中に埋設された地下水供給埋設管11と、地下水供給埋設管11の中に地下水を流すための地下水供給装置20と、土壌3中に埋設されて地下水供給埋設管11から排出される地下水を貯留する地下水貯留タンク30とを備え、また土壌3中に埋設されて地下水供給埋設管11から排出される地下水を地下に戻す地下水戻し装置50と、を備え、また土壌3中に埋設されて地下水貯留タンク30から地下水を地下に戻す地下水戻し装置50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植物を植えた土壌の温度を調節する土壌温度調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、園芸施設では、室温調節のために、冷房と暖房の機能を兼ね備えたヒートポンプ等が使われ、このヒートポンプは、冷房サイクルと暖房サイクルを選択的に切り換えることにより、熱交換器から冷風又は温風を選択的に放出させて園芸施設の室温を調節するようになっている。
【0003】
従来のヒートポンプでは、設備費や運転費が比較的高価になるという問題があったため、ヒートポンプを使用した場合と比べて少ない設備費や運転費で一年を通じて室温を一定に調節することを可能とした園芸施設の室温調節装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−211763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、ガラス等で覆われたハウスの中で所要植物を栽培する園芸施設では、園芸用施設を所定室温に維持して通年使用するには、夏場は室温を下げ、冬場は室温を上げることが行なわれているが、園芸施設以外の例えば屋外の公園に植えた芝生等では、土壌の温度を夏場と冬場とで調節することができなかった。
【0006】
この発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、屋外に植えた芝生等の植物の土壌の温度を、少ない設備費や運転費で調節することを可能な土壌温度調節システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、植物を植えた土壌の温度を調節する土壌温度調節システムであり、
前記土壌中に埋設された地下水供給埋設管と、
前記地下水供給埋設管の中に地下水を流すための地下水供給装置と、
前記土壌中に埋設されて前記地下水供給埋設管から排出される地下水を貯留する地下水貯留タンクと、
を備えることを特徴とする土壌温度調節システムである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、植物を植えた土壌の温度を調節する土壌温度調節システムであり、
前記土壌中に埋設された地下水供給埋設管と、
前記地下水供給埋設管の中に地下水を流すための地下水供給装置と、
前記土壌中に埋設されて前記地下水供給埋設管から排出される地下水を地下に戻す地下水戻し装置と、
を備えることを特徴とする土壌温度調節システムである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、植物を植えた土壌の温度を調節する土壌温度調節システムであり、
前記土壌中に埋設された地下水供給埋設管と、
前記地下水供給埋設管の中に地下水を流すための地下水供給装置と、
前記土壌中に埋設されて前記地下水供給埋設管から排出される地下水を貯留する地下水貯留タンクと、
前記土壌中に埋設されて前記地下水貯留タンクから地下水を地下に戻す地下水戻し装置と、
を備えることを特徴とする土壌温度調節システムである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記地下水貯留タンクに貯留された地下水を前記植物に対して散水する散水装置を有することを特徴とする請求項1に記載の土壌温度調節システムである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記地下水供給埋設管は、植物を植えた土壌中に地下水を供給する供給孔を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の土壌温度調節システムである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記地下水供給埋設管は、供給する地下水の温度を調節する温度調節手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の土壌温度調節システムである。
【発明の効果】
【0014】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0015】
請求項1に記載の発明では、土壌中に埋設された地下水供給埋設管の中に地下水を流すことで、地下水の熱を利用して植物を植えた土壌の温度を、夏場は下げ、冬場は上げ、少ない設備費や運転費で調節することが可能である。また、地下水供給埋設管から排出される地下水を地下水貯留タンクに貯留し、地下水が大量に排出することを防止できる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、土壌中に埋設された地下水供給埋設管の中に地下水を流すことで、地下水の熱を利用して植物を植えた土壌の温度を、夏場は下げ、冬場は上げ、少ない設備費や運転費で調節することが可能である。また、地下水供給埋設管から排出される地下水を地下に戻すことで、地下水を循環させて利用することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、土壌中に埋設された地下水供給埋設管の中に地下水を流すことで、地下水の熱を利用して植物を植えた土壌の温度を、夏場は下げ、冬場は上げ、少ない設備費や運転費で調節することが可能である。また、地下水供給埋設管から排出される地下水を地下水貯留タンクに貯留し、地下水貯留タンクから
地下に戻すことで、地下水の流量を調節して循環させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、地下水貯留タンクに貯留された地下水を有効に利用して植物に対して散水することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、地下水供給埋設管の供給孔から植物を植えた土壌中に地下水を供給することで、土壌の温度を効率的に調節することができると共に、植物に水を与えることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明では、地下水供給埋設管の温度調節手段によって、供給する地下水の温度を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態の土壌温度調節システムの概略構成図である。
【図2】地下水供給埋設管の埋設部分の断面図である。
【図3】地下水供給埋設管の配置状態を示す平面図である。
【図4】第2の実施の形態の土壌温度調節システムの概略構成図である。
【図5】第3の実施の形態の土壌温度調節システムの概略構成図である。
【図6】地下水供給埋設管の一部の拡大図である。
【図7】地下水供給埋設管の配置状態を示す平面図である。
【図8】地下水供給埋設管の一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の土壌温度調節システムの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。また、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明は、これに限定されない。
【0023】
[第1の実施の形態]
この実施の形態を、図1乃至図3に基づいて説明する。図1は土壌温度調節システムの概略構成図、図2は地下水供給埋設管の埋設部分の断面図、図3は地下水供給埋設管の配置状態を示す平面図である。
【0024】
この実施の形態の土壌温度調節システム1は、屋外で植物2を植えた土壌3の温度を調節するシステムであり、植物2としては例えば高麗芝などの芝生、花、野菜等が好ましい。この土壌温度調節システム1は、地下水供給埋設管10と、地下水供給装置20と、地下水貯留タンク30と、散水装置40とを有する。
【0025】
この地下水供給埋設管10は、土壌2中に埋設され、例えば熱伝導性の良い金属製の管や合成樹脂性のパイプなどで成形され、図2に示すように、植物2が根を張る部分の深さに埋設される。また、地下水供給埋設管10は、図3に示すように、所定の矩形の領域に、所定間隔で平行になるように埋設する。
【0026】
地下水供給装置20は、供給ポンプ21と、汲み上げパイプ22等から構成され、汲み上げパイプ22の下端部は井戸4の地下水に入っている。供給ポンプ21が駆動することで、汲み上げパイプ22によって井戸4から地下水を汲み上げて地下水供給埋設管10に供給する。
【0027】
地下水貯留タンク30は、土壌3中に全体が埋設されているが、一部を埋設していても良く、あるいは単に置いた状態で設置したものでも良く、地下水供給埋設管10から排出される地下水を貯留する。地下水貯留タンク30が土壌3中に埋設されている場合には、土壌3の温度によって貯留されている地下水の温度を調節することができる。地下水貯留タンク30を土壌3中に埋設する場合には、地下水貯留タンク30を熱伝導性の良い金属製の板材で成形することが好ましい。
【0028】
散水装置40は、散水支柱41、散水器42等から構成される。この散水支柱41は散水器42の駆動によって地下水貯留タンク30に貯留されている地下水を植物に散水する。
【0029】
このように、土壌3中に埋設された地下水供給埋設管10の中に地下水を流すことで、地下水の熱を利用して植物2を植えた土壌3の温度を、夏場は下げ、冬場は上げ、少ない設備費や運転費で調節することが可能である。また、地下水貯留タンク30に貯留された地下水を有効に利用して植物2に対して散水することができる。
【0030】
[第2の実施の形態]
この実施の形態を、図4に基づいて説明する。図4は土壌温度調節システムの概略構成図である。この実施の形態の土壌温度調節システム1は、図1乃至図3と同じ構成は同じ符号を付して説明を省略する。
【0031】
この実施の形態の土壌温度調節システム1では、散水装置40に代えて地下水戻し装置50を備える。この地下水戻し装置50は、地下水戻しパイプ51を有し、地下水供給埋設管10に地下水戻しパイプ51の一端を接続し、この地下水戻しパイプ51の他端を井戸4に接続し、地下水戻しパイプ51を介して地下水を井戸4に戻す。この地下水戻し装置50によって、地下水供給埋設管10から排出された地下水を地下に戻し、地下水を循環させて地下水供給埋設管10を通すことで、夏場は地下水の温度が上がるが、この地下水の温度を下げることができ、また冬場は地下水の温度が下がるが、この地下水の温度を上げることができる。
【0032】
[第3の実施の形態]
この実施の形態を、図5に基づいて説明する。図5は土壌温度調節システムの概略構成図である。この実施の形態の土壌温度調節システム1は、図1乃至図3と同じ構成は同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
この実施の形態の土壌温度調節システム1では、この散水装置40に代えて地下水戻し装置50を備える。この地下水戻し装置50は、地下水戻しパイプ51を有し、地下水貯留タンク30に地下水戻しパイプ51の一端を接続し、この地下水戻しパイプ51の他端を井戸4に接続し、地下水戻しパイプ51を介して地下水を井戸4に戻す。この地下水戻し装置50によって、地下水貯留タンク30に貯留された地下水を地下に戻し、地下水を循環させることで、地下水貯留タンク30から地下に戻す地下水の水量を調節し、これにより夏場は地下水の温度が上がるが、この地下水の温度を下げることができ、また冬場は地下水の温度が下がるが、この地下水の温度を上げることができる。
【0034】
[地下水供給埋設管の構成]
次に、地下水供給埋設管の構成を、図6乃至図8に基づいて説明する。図6は地下水供給埋設管の一部の拡大図である。図6(a)の実施の形態では、地下水供給埋設管10が円形パイプであり、パイプ軸方向に沿って所定間隔で供給孔10aを形成し、図6(b)の実施の形態では、ランダムに供給孔10aを形成し、供給孔10a によって植物2を植えた土壌3中に地下水を供給する。このように、地下水供給埋設管10の供給孔10aから植物2を植えた土壌3中に地下水を供給することで、土壌3の温度を効率的に調節することができると共に、植物2に水を与えることができる。
【0035】
図7は地下水供給埋設管の配置状態を示す平面図である。この実施の形態では、地下水供給埋設管10を2本用いたもので、一本の地下水供給埋設管10は、図3の実施の形態と同様に配置され、他の一本の地下水供給埋設管10は、図3の実施の形態の地下水供給埋設管10に対して所定間隔で直交するように配置され、土壌3の温度を効率的に調節することができる。
【0036】
図8は地下水供給埋設管の一部の拡大図である。この実施の形態の地下水供給埋設管10には、温度調節手段60が設けられている。この温度調節手段60は、加熱コイルを有する加熱シート61と、この加熱シート61に電流を流す電源62とを有し、加熱シート61によって地下水供給埋設管10を加熱することで供給する地下水の温度を調節する。この電源62のオン、オフは、例えば土壌2の温度を検出し、温度が所定温度より低いときにはオンし、温度が所定温度より高いときにはオフし、地下水供給埋設管11を加熱することで供給する地下水の温度を調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、植物を植えた土壌の温度を調節する土壌温度調節システムに適用可能であり、屋外に植えた芝生等の植物の土壌の温度を、少ない設備費や運転費で調節することを可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 土壌温度調節システム
2 植物
3 土壌
4 井戸
10 地下水供給埋設管
10a 供給孔
20 地下水供給装置
21 供給ポンプ
22 汲み上げパイプ
30 地下水貯留タンク
40 散水装置
41 散水支柱
42 散水器
50 地下水戻し装置
51 地下水戻しパイプ
60 温度調節手段
61 加熱シート
62 電源



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を植えた土壌の温度を調節する土壌温度調節システムであり、
前記土壌中に埋設された地下水供給埋設管と、
前記地下水供給埋設管の中に地下水を流すための地下水供給装置と、
前記土壌中に埋設されて前記地下水供給埋設管から排出される地下水を貯留する地下水貯留タンクと、
を備えることを特徴とする土壌温度調節システム。
【請求項2】
植物を植えた土壌の温度を調節する土壌温度調節システムであり、
前記土壌中に埋設された地下水供給埋設管と、
前記地下水供給埋設管の中に地下水を流すための地下水供給装置と、
前記土壌中に埋設されて前記地下水供給埋設管から排出される地下水を地下に戻す地下水戻し装置と、
を備えることを特徴とする土壌温度調節システム。
【請求項3】
植物を植えた土壌の温度を調節する土壌温度調節システムであり、
前記土壌中に埋設された地下水供給埋設管と、
前記地下水供給埋設管の中に地下水を流すための地下水供給装置と、
前記土壌中に埋設されて前記地下水供給埋設管から排出される地下水を貯留する地下水貯留タンクと、
前記土壌中に埋設されて前記地下水貯留タンクから地下水を地下に戻す地下水戻し装置と、
を備えることを特徴とする土壌温度調節システム。
【請求項4】
前記地下水貯留タンクに貯留された地下水を前記植物に対して散水する散水装置を有することを特徴とする請求項1に記載の土壌温度調節システム。
【請求項5】
前記地下水供給埋設管は、植物を植えた土壌中に地下水を供給する供給孔を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の土壌温度調節システム。
【請求項6】
前記地下水供給埋設管は、供給する地下水の温度を調節する温度調節手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の土壌温度調節システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−78362(P2011−78362A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234024(P2009−234024)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(506099982)シュウ インコーポレーション (6)
【Fターム(参考)】