説明

土質改良材

【課題】一般廃棄物、産業廃棄物を処理して得られるエコスラグからなるゴルフ場の目土として使用できる土質改良材を提供すること。
【解決手段】少なくとも一般廃棄物や産業廃棄物を処理される廃棄物原料の一部として使用し、熱処理炉で助燃材としてコークス又は炭素系炭材を使用せず、酸素含有ガスを該廃棄物原料に吹き付けることによって該廃棄物原料を直接燃焼させて溶融スラグ化して得られる、Sが2000ppm以下であり、微量肥料成分として少なくともKが1000ppm以上および/またはPが1000ppm以上含まれるエコスラグからなる土質改良材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場の目土などに適したエコスラグからなる土質改良材に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみなどの一般廃棄物や産業廃棄物(以下、本願明細書では両者を併せて「廃棄物」という)は、廃棄物処理場において焼却処理されて減容化され、最終的に排出される焼却残渣等の固形物は埋め立て処分場で埋め立て処分されている。しかしながら、このような処分方法は埋め立て処分場を必要とし、近年ではこのような処分場の確保が非常に困難となってきている。
【0003】
このため、近年では、このような廃棄物の低減や再資源化の必要性が高まっている。廃棄物の低減化技術や再資源化のための技術は多数提案されており、例えば、溶融処理してスラグ化し、土壌改良材等に使用することが提案されている。
【0004】
特許文献1には、鋳物製造に使用した廃珪砂に、高炉スラグ、下水汚泥焼却灰、カリウム化合物、マグネシウム化合物の少なくとも1種を添加して造粒し、850〜1300℃で焼成して得られる肥料および土壌改良剤として有用な成分を含む粒状物を土壌添加材として使用することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、CAを10〜40重量%およびCS、CSの一種以上を含む焼成物と石膏からなる水硬性組成物に、都市ごみ焼却灰及び/又は下水汚泥焼却灰を溶融してなるブレーン比表面積4500cm/g以上のスラグを加えた混合物を緑化用地盤改良材として用いることが記載されている。
【0006】
特許文献3には、溶鉱炉発生する鉱滓は、その粒度が1〜2mmのものが64%、2〜2.8mmのものが25%であり、また、比重が1.15〜1.2位であることから、これをゴルフ場におけるバンカー用の砂として利用することが記載されている。
【0007】
特許文献4には、従来、芝生用目土として海砂や真砂土が使用されてきたが、真砂土には肥料分がなく、窒素、リン酸、カリの植物育成三要素を別途補給して芝生の管理を行ってきたが、この真砂土は固結化して通気・透水性が悪くなり芝生の生育を悪くする原因となることに鑑みて、溶鉱炉で発生する鉱滓と真砂土と完熟堆肥とを配合したものを芝生用目土として用いることを提案している。その効果としては、芝生用目土に鉱滓を用いることにより肥料成分の補給ができ、また完熟堆肥を配合しているため、芝地用地の通気・透水性および固結防止に役立つことを挙げている。
【0008】
特許文献5には、MgO・SiOを主成分とするNi鉱滓をニューマチックリクレーマ又はインパクトスクラバー等の磨鉱機を用いて磨鉱処理を行って粒度分布が0.05〜2mmの範囲で、粒径係数が1.5以下であり、色調が黒緑色を呈する砂状鉱滓をゴルフ場や公園などの芝用土壌剤として用いることが記載されており、この砂状鉱滓は粒径係数が1.5以下であるので、表面の清浄化と透水性、通気性が向上し、色調が黒緑色を呈するので、炭等の添加を必要とすることなく、土壌の保温性を向上させることができるという効果があると記載されている。
【0009】
特許文献6には、中性ないし微酸性の非銅系鉱滓の粒子の外面に、樹脂をバインダーとする暗色着色料の層を被覆したものをゴルフ場、牧場、農場などで散布して用いる融雪剤として用いることが記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平 6− 93260号公報
【特許文献2】特開平11−189771号公報
【特許文献3】特開平 2−114978号公報
【特許文献4】特開平 3− 19619号公報
【特許文献5】特開平 6−125641号公報
【特許文献6】特開昭59−108080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、廃棄物を処理して得られるスラグ(以下、エコスラグという)からなる土壌改良材を提供することを目的とする。さらに詳細には、エコスラグをゴルフ場の目土として使用できる土質改良材を提供することを目的とする。なお、
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)Sが2000ppm以下(好ましくは1000ppm以下)であり、微量肥料成分として少なくともKが1000ppm以上および/またはPが1000ppm以上含まれることを特徴とするエコスラグからなる土質改良材。
(2)Sが2000ppm以下(好ましくは1000ppm以下)であり、FeOが3%以上であり、微量肥料成分として少なくともKが1000ppm以上および/またはPが1000ppm以上含まれることを特徴とするエコスラグからなる土質改良材。
(3)少なくとも一般廃棄物を被処理廃棄物原料の一部として使用し、熱処理炉で助燃材としてコークス又は炭素系炭材を使用せず、酸素含有ガスを該廃棄物原料に吹き付けることによって該廃棄物原料を直接燃焼させて溶融スラグ化するエコスラグの製造方法によって得られたことを特徴とする上記(1)、(2)の土質改良材。
【0013】
(4)前記エコスラグのSiO組成が15〜50%、CaO組成が10〜35%であることを特徴とする上記(1)〜(3)の土質改良材。
(5)前記エコスラグの色が着色剤を添加しない状態で黒色であることを特徴とする上記(2)〜(4)の土質改良材からなる融雪材。
(6)前記平均粒子径が0.3〜2.5mmであることを特徴とする上記(1)〜(4)の土質改良材からなるゴルフ場グリーン用又はゴルフ場フィールド用の目土。
(7)木酢液処理がなされていることを特徴とする上記(6)のゴルフ場グリーン用又はゴルフ場フィールド用の目土。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
近年、焼却処理、溶融処理に代わる廃棄物処理方法として廃棄物を還元性熱処理炉で熱処理することが行われている。このような処理方法の例としてガス化改質方式(サーモセレクト方式)によるガス化溶融プロセスが注目されている。ガス化改質方式の一つの例を図1に基づいて説明する。
【0015】
ガス化改質方式は次のプロセスから構成されている。
1.プレス・脱ガスチャンネル
(1)ごみの圧縮、(2)乾燥・熱分解
2.高温反応炉・均質化炉
(3)ガス化溶融、(4)スラグ均質化、(5)ガス改質
3.ガス精製
(6)急冷(急冷・酸洗浄、酸洗浄)、(7)ガス精製(アルカリ洗浄、脱硫。除湿)
4.水処理
(8)水処理(沈殿、脱塩等)
【0016】
この方式をフローに沿って説明すると次の通りである。
ピットに集積された都市ごみ等の廃棄物はプレス機で圧縮された後、乾燥熱分解工程で間接加熱により加熱乾留されて高温反応炉内に送られる。高温反応炉の下部にはバーナーが配置され、このバーナーによって炉内に燃料ガスと酸素とが導入され、この酸素ガスが乾留物中の炭素をガス化し、一酸化炭素と二酸化炭素が生成する。また、高温水蒸気が存在する場合には炭素と水蒸気とによる水性ガス化反応が生じて一酸化炭素と水素とが生成される。更に、有機化合物は熱分解して一酸化炭素と水素が生成する。
上記の反応の結果、高温反応炉の塔頂部から粗合成ガスが排出される。
【0017】
一方、高温反応炉下部で生成した溶融物は高温反応炉から均質化炉へ流れ出る。この溶融物には炭素や微量の重金属等が含まれており、均質化炉において炭素は十分な酸素と水蒸気によってガス化されて二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を生成する。均質化炉において金属溶融物は比重が大きいため、スラグの下部に溜まる。溶融物は水砕システムへ流れ落ちて、冷却固化され、メタル−スラグの混合物は、磁選によりメタルとスラグとに分離される。
本発明は、上記のスラグ(以下、「サーモスラグ」という)を土質改良材として有効利用するものである。
表1にサーモスラグの組成分析値を示す。
【0018】
【表1】

【0019】
サーモスラグは次に記載するような特徴を有しており、土質改良材としての使用に適している。
(1)雑草が生えにくい
サーモスラグは高温で製造されるため、雑草の種が混在しない。
(2)アルカリ障害がない
燃料としてコークスを用いないため、CaO添加が不要であるためアルカリ障害がない。
【0020】
(3)S成分が低い(硫酸化することが少ない)
燃料としてコークスを用いないため、燃料中のSがスラグに入ってこない。サーモスラグに含まれるSは130〜1000ppm(平均320ppm)と低いので、好ましく、また、S含有量が低いため、硫酸化することが少ない。
土質改良材として用いられる場合、そのS含有量は2000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000ppm以下である。これは、例えば酸性雨が透過する際に、スラグ中のアルカリ分(例えばCa)がこれと反応して低pHを抑止するという作用があるが、S含有量が高いとS分がCaSという形で安定化するため、アルカリ分が硝酸酸性分を緩和する機能がスポイルされる。
サーモスラグは、他のスラグ製造装置(ガス化溶融分離型、ガス化溶融一体型、灰溶融)で得られるスラグと比較すると、S含有量が少ないため土質改良材としての使用に適している。
【0021】
(4)植物の育成に必須な微量肥料成分が多く含まれる。
一般廃棄物処理で生成するスラグの場合、一般廃棄物中には生ごみも含まれるので、P及びK等の肥料成分が豊富に含まれる。
表2に、植物の生育に必要な栄養分を示す。
【0022】
【表2】

【0023】
表1に示した分析値からわかるように、サーモスラグは、珪酸(SiO)、苦土(MgO)、石灰(CaO)、マンガン(MnO)、リン(P)、カリ(KO)、亜鉛(ZnO)、銅(CuO)、鉄、硫黄等の植物の栄養分となる多数の元素を含有している。
【0024】
表3、4として、サーモスラグ及びその他のスラグ(キューポラスラグ、水砕スラグ)について、成分及び肥料成分を比較した表を示した。この表3、4から、サーモスラグは他のスラグよりもリン(P)の含有量が高く、また、植物が吸収・利用できる形態で存在する肥料成分が多いので植物の育成に適していることがわかる。
【0025】
【表3】

【0026】
【表4】

【0027】
なお、スラグにはP、Kはそれぞれが1000ppm以上含まれていることが好ましい。
表1に示されているスラグ中のKO、Pの含有割合に基づいて、サーモスラグ中のK及びPの含有量を計算すると次のようになる。
0=0.75%DS×39.1×2/(39.1×2+16)×0.5=0.31 (3100ppm)
=1.70%DS×31.0×2/(31.0×2+16×5)×0.5=0.37 (3700ppm)
【0028】
(5)FeOを多く含むため、土壌の固化を防ぐ
炉底滞留スラグはC(コークス)じゃぼ漬けではないため、FeOが還元されずに残り、このFeOには土壌の固化を防ぐ作用がある(スラグ中のFeOxの還元は、スラグとコークス又は炭素系炭材との接触又はスラグ中に溶融したCとスラグ中のFeOxとの接触が考えられる)。また、FeOが3%未満であると、スラグの融点が上昇し、炉から排出される際に未溶融のものが発生したりして物性が不安定になる可能性がある。
【0029】
(6)気泡が少なく緻密である。
水さいスラグは砂状のガラス質となるので気泡がなく、緻密なものとなる。
コークス又は炭素系炭材を溶融スラグ化燃料として使用した場合は、該スラグが常にコークス又は炭素系炭材と接することになり、Cがスラグ中に炭化物として溶融し、それが水さい時にガス化し水さいを多孔質化する可能性がある。これに対して、ガス化改質方式(サーモセレクト方式)で得られるサーモスラグはコークス又は炭素系炭材を用いないため、水さいが多孔質化することがなく緻密なものとなる。そして、緻密であることによって、土質改良材としての粒度を確保する際の摩砕工程において細粒化しにくい。
【0030】
(7)その他の特徴
1)FeOリッチであるため比重が高い。このため、風等で飛散して散逸することがなく、また、仮にスラグに病原虫が付着していても風で舞い上がることがないので身体にも安全である。
2)FeOリッチであるため色調が黒くなり、融雪材として使用する場合に、着色剤を添加する必要がない。FeOが3%以上であると好ましい黒色となる。
3)一般廃棄物は地方においても発生するため、原料が地域分散型である。
4)成分が天然土壌と異なって、植物の育成に必要な微量肥料成分を多く含むというメリットがある。
5)土質改良機能を有するので公害問題などが起こらない。
【0031】
スラグの平均粒子径は使用目的によって異なるが、0.3から2.5mmであることが好ましい。
ゴルフ場で用いる場合、グリーン用の目土とフィールド用の目土とでは好ましい粒径が異なる。スラグの平均粒子径の使い分けは主に芝の状態、芝の種類により区分される。グリーンは芝が密の状態であるのに対し、フィールドは芝が粗の状態である。またグリーンの芝は高麗及びベントを短く刈り込むに対し、フィールドは野芝及び洋芝及び高麗をグリーンより長目に刈り込んでいる。目土はこれらの芝間に目立たなくまたプレーに害にならない様、上記の条件にあった粒子径のものを使用されている。つまりグリーン用はフィールドより小径のもの(0.3〜1.2mm)が使用される。
【0032】
また、水砕で得られるサーモスラグはガラス質であり、粒型、粒度を調整するのに粉砕機を用いると粒型を確保するのが困難であり、また、粒度については細部が異常に増加し、品質(粒度分布)が不安定となる。このため、粒度調整には摩砕機を用いて粒子同士をすり合わせて整粒し、細粒化するのを防ぐ。
【0033】
サーモスラグは、木酢液処理がなされていることが好ましい。
木酢液で処理したスラグを土質改良材として使用すると、濃度が高い状態ではセンチュウや土壌病害を減らし、濃度が薄くなると有用な微生物を増やすことができ、また、発根が良くなる。また、サーモスラグは低アルカリであり、木酢液を浸透すると散布が困難となるため、目土施工後に木酢液を散布した方がよい。また、木酢液を薄めて葉面散布すると葉の活力が高まり、ダニ等の害虫や各種の病気が出にくくなるという効果もある。
また、サーモスラグを土質改良材として用いるためには、サーモスラグから有害な物質が溶出しないことが必要であるが、サーモスラグについて溶出試験を行ったところ、表5に示す結果が得られ、スラグの利用基準項目を満足していた。
【0034】
【表5】

【実施例1】
【0035】
サーモスラグをゴルフクラブの芝試験ヤード(ホ場を兼ねる)で目土として使用し、平成13年6月から1年間試験した。
試験は種類別に1区画10mとし、サーモスラグの単体及び木酢液浸透品と従来の目土(焼き砂)を使用して比較試験を実施した。結果いずれも病気に犯されず、従来品使用と比べても同等と評価された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のエコスラグからなる土質改良材は植物の育成に必要な栄養分を含んでおり、ゴルフ場のグリーン用又はフィールド用の目土、融雪剤として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ガス化改質方式による廃棄物処理工程の概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sが2000ppm以下であり、微量肥料成分として少なくともKが1000ppm以上および/またはPが1000ppm以上含まれることを特徴とするエコスラグからなる土質改良材。
【請求項2】
Sが2000ppm以下であり、FeOが3%以上であり、微量肥料成分として少なくともKが1000ppm以上および/またはPが1000ppm以上含まれることを特徴とするエコスラグからなる土質改良材。
【請求項3】
少なくとも一般廃棄物を被処理廃棄物原料の一部として使用し、熱処理炉で助燃材としてコークス又は炭素系炭材を使用せず、酸素含有ガスを該廃棄物原料に吹き付けることによって該廃棄物原料を直接燃焼させて溶融スラグ化するエコスラグの製造方法によって得られたことを特徴とする請求項1または2記載の土質改良材。
【請求項4】
前記エコスラグのSiO組成が15〜50%、CaO組成が10〜35%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の土質改良材。
【請求項5】
前記エコスラグの色が着色剤を添加しない状態で黒色であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の土質改良材からなる融雪材。
【請求項6】
前記平均粒子径が0.3〜2.5mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の土質改良材からなるゴルフ場グリーン用又はゴルフ場フィールド用の目土。
【請求項7】
木酢液処理がなされていることを特徴とする請求項6記載のゴルフ場グリーン用又はゴルフ場フィールド用の目土。

【図1】
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【公開番号】特開2006−28380(P2006−28380A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211036(P2004−211036)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】