説明

圧力センサ

【課題】圧力センサにおいて、ボンディングワイヤが台座押さえに接触する可能性を低減する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】圧力センサは、軸線方向に延びるハウジングと、圧力検出素子と、台座と、回路部が配置された中間部材と、中間部材の先端側周囲を囲むように配置され、ハウジングに固定された台座押さえであって、台座の面のうち素子載置面とは反対側に位置する台座後端面と当接することで台座の軸線方向についての動きを規制する台座押さえと、ハウジングに収容され、圧力検出素子と回路部とを電気的に接続するための電気配線路と、を備える。また、電気配線路は、ボンディングワイヤを含む。台座押さえには、ボンディングワイヤを受入れるための空間部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室などの圧力を検出するための圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力センサを用いて内燃機関の燃焼室内の燃焼圧力を検出し、検出値に基づいて燃焼状態を制御することが行われている。このような圧力センサは、軸線方向に延びる筒状のハウジング内に圧力を検出するための種々の構成部品が収容されている。詳細には、ハウジング内には、圧力を検出するための検出信号を出力する圧力検出素子と、圧力検出素子を配置するための台座と、ハウジング内における台座の位置を固定するための環状の台座押さえと、検出信号を処理する回路部が配置された中間部材とが主に収容されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような特許文献1に記載の圧力センサは、さらに圧力検出素子と回路部とを電気的に接続するための電気配線路を有する。電気配線路は、台座側面に形成された台座配線路や、中間側面に形成された中間配線路だけでなく、台座と中間部材とに段差が生じるために設けられた、台座配線路と中間配線路とを電気的に接続するためのボンディングワイヤを含む。この台座と中間部材との段差は、台座をハウジング内に固定するために台座押さえを台座後端面に当接させるために生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−197142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の圧力センサにおいて、台座押さえは、中間部材の先端側部分を囲むように配置されている。このため、台座上に形成された電気配線路と、中間部材上に形成された電気配線路とを電気的に接続するボンディングワイヤが台座押さえに接触する場合があった。ボンディングワイヤが台座押さえに接触すると、圧力検出素子から誤った検出信号が出力される場合があり、圧力センサの検出精度が低下する場合があった。
【0006】
従って本発明は、圧力センサにおいて、ボンディングワイヤが台座押さえに接触する可能性を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[適用例1]軸線方向に延び、先端側が底部を形成する有底筒状のハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、前記底部を介した圧力を検出するための圧力検出素子と、
前記圧力検出素子よりも後端側の前記ハウジング内に収容され、前記圧力検出素子と当接する台座であって、前記底部と対向し前記圧力検出素子と当接する素子載置面と、前記素子載置面から後端側に延びる台座側面と、を有する台座と、
前記台座よりも後端側の前記ハウジング内に収容され、前記圧力検出素子の検出信号を処理するための回路部が配置された中間部材であって、前記底部と対向する中間先端面と、前記中間先端面から後端側に延びると共に前記台座側面と段差を有する中間側面と、を有する中間部材と、
前記中間部材の先端側周囲を囲むように配置され、前記ハウジングに固定された台座押さえであって、前記台座の面のうち前記素子載置面とは反対側に位置する台座後端面と当接することで前記台座の前記軸線方向についての動きを規制する台座押さえと、
前記ハウジング内に収容され、前記圧力検出素子と前記回路部とを電気的に接続するための電気配線路と、を備える圧力センサにおいて、
前記電気配線路は、前記台座側面に形成された台座配線路と、前記中間側面に形成された中間配線路と、前記台座配線路と前記中間配線路とを電気的に接続するためのボンディングワイヤとを含み、
前記台座押さえには、前記ボンディングワイヤを受入れるための空間部が形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
適用例1に記載の圧力センサによれば、台座押さえがボンディングワイヤを受け入れるための空間部を有することで、ボンディングワイヤが台座押さえに接触する可能性を低減できる。その結果、圧力検出素子からの検出信号を回路部に正確に出力させることができ、圧力センサの検出精度が低下することを防止できる。
【0008】
[適用例2]適用例1に記載の圧力センサにおいて、
前記空間部は、前記台座押さえの部分のうち前記台座が位置する側である台座押さえ先端側部分のみに形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
適用例2に記載の圧力センサによれば、台座押さえの部分のうちボンディングワイヤと接触する可能性の高い台座押さえ先端側部分のみに空間部を設けることで、台座押さえ先端側部分よりも後端側に位置する台座押さえ後端側部分によって台座押さえの強度低下を抑制しつつ、且つ、ボンディングワイヤが台座押さえに接触する可能性を低減できる。
【0009】
[適用例3]適用例1に記載の圧力センサにおいて、
前記空間部は、前記台座押さえの前記軸線方向全域に亘って形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
適用例3に記載の圧力センサによれば、ボンディングワイヤが台座押さえに接触する可能性をより低減できる。
【0010】
[適用例4]適用例1乃至適用例3のいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記空間部は、前記台座押さえの一部分の厚みを他の部分の厚みよりも薄くすることで形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
適用例4に記載の圧力センサによれば、台座押さえの部分のうちボンディングワイヤと接触する可能性が高い台座押さえの一部分の厚みを変更することで容易に空間部を形成できるとともに、他の部分である残部によって台座押さえの強度低下を抑制することができる。
【0011】
[適用例5]適用例1乃至適用例3のいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記空間部は、前記台座押さえの一部分が前記軸線方向と直交する径方向に開口することで形成されている、ことを特徴とする圧力センサ
適用例5に記載の圧力センサによれば、台座押さえの一部分を開口させることで容易に空間部を形成できる。
【0012】
[適用例6]適用例1乃至適用例5のいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記空間部は、前記台座押さえに切り欠きを施すことで形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
適用例6に記載の圧力センサによれば、切欠きを施すことで容易に空間部を形成できる。
【0013】
[適用例7]適用例1乃至適用例6のいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記台座押さえは、前記軸線方向について、前記空間部と前記ボンディングワイヤが重なる位置になるように、前記台座に対する位置を決定するための位置決め部を有する、ことを特徴とする圧力センサ。
適用例7に記載の圧力センサによれば、位置決め部を有することで、空間部とボンディングワイヤとを容易に所望の位置関係になるように配置できる。
【0014】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、圧力センサ、圧力センサの製造方法及び圧力センサを装備した内燃機関等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施例の圧力センサ100の一部切欠き斜視図である。
【図2】電気配線路30について説明するための図である。
【図3】台座押さえ7の詳細構成を説明するための図である。
【図4】第2実施例の圧力センサ100aを説明するための図である。
【図5】第3実施例の圧力センサ100bを説明するための図である。
【図6】第4実施例の圧力センサ100cを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A〜D.各種実施例:
E.変形例:
【0017】
A.第1実施例:
A−1.圧力センサの構成:
図1は、第1実施例の圧力センサ100を説明するための図である。図1の中央の図は圧力センサ100の一部切欠き斜視図である。また、右上に示す丸で囲まれた図は、複数の構成部材のうち、台座6と中継基板8の外観斜視図を示している。図1には、理解の容易のために、XYZ軸を示している。なお、他の図面においても必要に応じてXYZ軸を示している。ここで、図1において、Y軸正方向側を先端側とする。圧力センサ100は、軸線CL方向(Y軸方向)に延びる筒状のハウジング20と、圧力伝達機構3と、圧力検出素子5と、台座6と、回路部10が配置された中間部材11と、環状の台座押さえ7と、圧力検出素子5と回路部10とを電気的に接続するための電気配線路30を備える。圧力伝達機構3、圧力検出素子5、台座6、中間部材11、台座押さえ7、電気配線路30は、ハウジング20の内側に収容されている。
【0018】
ハウジング20は、筒状のセンサボディ1と、先端側が底部2aを形成する有底筒状の先端ケース2とを備える。センサボディ1と先端ケース2は金属材料により形成されている。センサボディ1の外側面には図示しないネジが形成されており、センサボディ1を回転させることによって、エンジンヘッド等に設けられた取り付け孔に圧力センサ100を取り付けることができる。先端ケース2の底部2aは、エンジンの燃焼室に向けて配置される。そして、底部2aが燃焼室内の燃焼圧に応じて軸線CL方向に撓むことによって、圧力検出素子5に燃焼圧が伝達される。また、先端ケース2の後端側は、センサボディ1の内側に挿入され、溶接等でセンサボディ1に固定されている。
【0019】
圧力伝達機構3は、棒状部材3aと半球部材3bとを備える。棒状部材3aは、セラミック材料により形成されている。また、棒状部材3aは、燃焼室の熱によって圧力検出素子5に不具合が発生する可能性を低減するために軸線CL方向に所定長さ延びている。棒状部材3aの先端は、底部2aに当接している。また、棒状部材3aの後端は、半球部材3bに当接している。
【0020】
半球部材3bは、金属材料により形成された中実(高密度)の部材である。半球部材3bは、棒状部材3aから伝達される圧力が圧力検出素子5に偏って伝達されることを抑制する。半球部材3bは、棒状部材3aと圧力検出素子5との間に配置されている。また、半球部材3bは棒状部材3aと圧力検出素子5に当接されている。
【0021】
圧力検出素子5は、Si素子、SOI素子等のピエゾ抵抗素子から構成され、圧力が加わった際の歪みに応じた電気信号を出力する。このような圧力検出素子5を構成する場合、ガラス、金属等からなる基板に、Si素子、SOI素子等の素子を接合した構造とすることができる。素子の表面にはピエゾ抵抗体が形成され、素子が歪み変形された際の抵抗値の変化から圧力を検出する。なお、圧力検出素子5は、シリコンウエハからダイシングによって切り出される関係から矩形状に形成されている。圧力検出素子5としては、この他に、PZT、水晶等の圧電素子を使用することもできる。
【0022】
台座6は、圧力検出素子5に接合され、圧力検出素子5の後端側に配置されている。台座6は、圧力検出素子5をハウジング20内に安定して設置するための部材である。台座6は、絶縁性セラミック(例えば、アルミナ)等の絶縁性材料により形成されている。右上の図に示すように、台座6は、底部2aと対向し圧力検出素子5と当接する素子載置面60と、素子載置面から後端側に延びる台座側面61と、素子載置面60とは反対側に位置する台座後端面67と、を有する。なお、素子載置面60と台座側面61には、台座配線路62,63が形成されている。台座配線路62,63の詳細は後述する。
【0023】
中間部材11は、アルミナ等の絶縁性材料により形成された、中継基板8及び回路基板9を備える。中継基板8は、台座6の後端側に配置され、台座6に接合されている。右上の図に示すように、中継基板8は、底部2aと対向し台座6と当接する中継基板先端面81と、中継基板先端面81から後端側に延びると共に、台座側面61と段差を有するように配置される中継基板側面87とを有する。中継基板側面87には、中継基板配線路82,83が形成されている。なお、中継基板配線路82,83の詳細は後述する。ここで、中継基板先端面81が課題を解決するための手段に記載の「中間先端面」に相当し、中継基板側面87が課題を解決するための手段に記載の「中間側面」に相当する。
【0024】
ここで、中継基板8は、台座6と回路基板9を中継するために設けられている。すなわち、中継基板8は、台座6と回路基板9との所定の面(軸線CL方向と直交する面である側面)の高低差を緩和するために設けられている。それぞれの所定の面(側面)が階段状になるように各部材6,8,9がハウジング20内に配置されている。なお、軸線CL方向に直交する断面の大きさは、中継基板8は台座6よりも小さい。これにより、台座後端面67に、中継基板8の先端側周囲を囲むように配置された略環状の台座押さえ7を当接させることができる。
【0025】
回路基板9は、中継基板8の後端側に配置され、中継基板8に当接されている。回路基板9は、圧力検出素子5の検出信号を処理(例えば、増幅処理)するための回路部10を備える。回路部10によって処理された検出信号は、圧力センサ100の後端から外部に向かって延びる出力ケーブル(図示せず)を介して、外部の制御機器に伝達される。そして、エンジン内における燃焼圧の変化が検知され、制御機器によって燃焼圧の制御が行われる。なお、中継基板8と回路基板9とを当接させる構成に代えて、中継基板8と回路基板9とを離間させて配置しても良い。
【0026】
台座押さえ7は、中継基板8の先端側周囲を囲むように配置され、略円環状の形状を有する。台座押さえ7は、金属材料により形成されている。本実施例では、中継基板8と台座6との熱膨張差を緩和するために、台座押さえ7はコバールにより形成されている。台座押さえ7の外周面は先端ケース2の後端側内周面と溶接等によって接合されている。また、台座押さえ7の先端面の一部は、台座6の台座後端面67に当接している。これにより、台座6のハウジング20内の位置が固定される。なお、台座押さえ7の詳細構造は後述する。
【0027】
図2は、電気配線路30について説明するための図である。図2は、図1に示す圧力センサ100のうちハウジング20及び台座押さえ7の図示を省略した図である。電気配線路30は、導電性材料(例えばAu,Al)により形成され、2本配置されている。本実施例では、電気配線路30は、Auによって形成されている。電気配線路30は、第1のボンディングワイヤ72,73と、台座配線路62,63と、第2のボンディングワイヤ102,103と、中継基板配線路82,83と、第3のボンディングワイヤ112,113と、回路基板配線路92,93と、第4のボンディングワイヤ122,123と、を備える。各ボンディングワイヤ72,73,102,103,112,113,122,123は、キャピラリ(ワイヤボンディングツール)を用いたワイヤボンディングによって形成される。なお、中継基板8の表面上に示した破線RGは、台座押さえ7(図1)によって囲われる境界線を示している。すなわち、中継基板8のうち、破線RGより先端側(台座6側)部分が台座押さえ7によって囲われる。
【0028】
まず、各部材6,8,9の外表面上に形成された配線路62,63,82,83,92,93について説明する。各配線路62〜93は、印刷、メッキ、蒸着、スパッタ等の方法によって形成される。台座配線路62,63は、台座6の外表面のうち、素子載置面60と、台座側面61とに亘って形成されている。ここで、台座側面61上の配線路は軸線CL方向全域に亘って形成されている。中継基板配線路82,83は、中継基板8の外表面のうち台座側面61と同じ側に位置し、台座側面61と略平行な中継基板側面87に形成されている。中継基板配線路82,83の一端は、台座6と接する中継基板8の中継基板先端面81(図1)近傍に位置する。また、中継基板配線路82,83の他端は、回路基板9と接する中継基板後端面近傍に位置する。回路基板配線路92,93は、回路基板9の外表面のうち中継基板側面87と同じ側に位置し、中継基板側面87と略平行な回路基板側面96に形成されている。回路基板配線路92,93の一端は、中継基板8と接する回路基板9の先端面近傍に位置する。回路基板配線路92,93の他端は、回路部10近傍に位置する。
【0029】
次に、各配線路62,63,82,83,92,93を電気的に接続する各ボンディングワイヤ72〜123について説明する。第1のボンディングワイヤ72,73は圧力検出素子5(詳細には、圧力検出素子5の表面に露出する電極パッド)と台座配線路62,63とを電気的に接続する。第2のボンディングワイヤ102,103は、台座配線路62,63と中継基板配線路82,83とを電気的に接続する。詳細には、第2のボンディングワイヤ102,103は、台座配線路62,63の後端側部分(中継基板8側部分)と中継基板配線路82,83の先端側部分(台座6側部分)とに接続される。第3のボンディングワイヤ112,113は、中継基板配線路82,83と回路基板配線路92,93とを電気的に接続する。詳細には、第3のボンディングワイヤ112,113は、中継基板配線路82,83の後端側部分(回路基板9側部分)と、回路基板配線路92,93の先端側部分(中継基板8側部分)とに接続される。第4のボンディングワイヤ122,123は、回路基板配線路92,93と回路部10とを電気的に接続する。なお、第4のボンディングワイヤ122,123に代えて、回路基板9内に内部配線を形成し、回路基板配線路92,93と回路基板9とを電気的に接続しても良い。
【0030】
図3は、台座押さえ7の詳細構成を説明するための図である。図3(A)は、図2に台座押さえ7を加えた図である。図3(B)は、台座押さえ7のA−A断面図である。台座押さえ7は略環状であり、一定の厚みを有する。台座押さえ7は、本体部75と、2つの第2のボンディングワイヤ102,103を受け入れるための1つの空間部78を有する。空間部78は、軸線CL方向と直交する径方向に開口することで形成されている。また、空間部78は、台座押さえ7のうち、軸線CL方向全域に亘って形成されている。すなわち、図3(B)に示すように、第2のボンディングワイヤ102,103を受け入れるために、台座押さえ7の周方向における一端76と他端77が所定の間隔をあけて対向することで空間部78が規定されている。言い換えれば、台座押さえ7を形成する部材(本体部75)によって空間部78が規定されている。このような空間部78を有する台座押さえ7は、平板状の金属製部材を準備し、該部材を折り曲げて加工することで形成しても良いし、環状に鋳造した部材の一部に切欠きを施して形成しても良い。例えば、切欠きを施すことで空間部78を有する台座押さえ7が容易に形成できる。
【0031】
図3(A)に示すように、台座押さえ7は、軸線CL方向について、空間部78が第2のボンディングワイヤ102,103と重なるように配置されている。すなわち、台座配線路62,63が形成された台座側面61が見える方向であって、台座側面61と直交する方向から台座側面61を見たときに、第2のボンディングワイヤ102,103と空間部78が重なるように台座押さえ7は配置される。なお、台座押さえ7は、台座配線路62,63と中継基板配線路82,83とを第2のボンディングワイヤ102,103によって電気的に接続した後に、図3(A)に示す位置に配置される。そして、先端ケース2(図1)の内周面と台座押さえ7の外周面とが溶接等により接合される。
【0032】
上記のように、第1実施例の圧力センサ100は、台座押さえ7が第2のボンディングワイヤ102,103を受け入れるための空間部78を有する。よって、第2のボンディングワイヤ102,103が台座押さえ7の本体部75に接触する可能性を低減できる。これにより、第2のボンディングワイヤ102,103が台座押さえ7と接触することで導通し、誤った検出信号を圧力検出素子5が出力する可能性を低減できる。すなわち、電気配線路30によって、圧力検出素子5の検出信号を精度良く回路部10に伝達することができ、圧力センサ100の信頼性を向上できる。ここで、台座押さえ7が空間部78を有することで、第2のボンディングワイヤ102,103が台座押さえ7に接触する可能性を低減するために、台座押さえ7の内径を大きくし、中継基板8と台座押さえ7との間に大きな隙間を形成する必要が無い。よって、圧力センサ100が径方向に大型化することを抑制しつつ、圧力センサ100の信頼性を向上できる。また、空間部78は、台座押さえ7の本体部75の一部分を開口させることで容易に形成できる。
【0033】
B.第2実施例:
図4は、第2実施例の圧力センサ100aを説明するための図である。図4(A)は図3(A)に相当する図であり、図4(B)は図4(A)のB−B断面図である。第1実施例の圧力センサ100との違いは、台座押さえ7aの構成である。その他の構成(例えば、圧力検出素子5)は第1実施例と同様の構成であるため、同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。また、図示しないハウジング20(図1)についても第1実施例と同様の構成である。
【0034】
第2実施例の台座押さえ7aには、本体部75aの周方向における一部分を他の部分の厚みよりも薄くした薄肉部79を設けることで空間部78aが形成されている。すなわち、空間部78aは、本体部75aの内周面に形成された溝状の部位とも言える。また、空間部78aは、軸線CL方向全域に亘って台座押さえ7aに形成されている。なお、第1実施例と同様に、軸線CL方向について、空間部78aが第2のボンディングワイヤ102,103と重なるように配置されている。このような空間部78aを有する台座押さえ7aは、例えば、一定の厚みを有する板状の本体部75aを環状になるように加工し、加工品の内周面の一部に切欠きを施すことによって作製できる。また、例えば、予め用意した型を用いた鋳造によって空間部78aが形成された台座押さえ7aを作製しても良い。
【0035】
上記のように、第2実施例の圧力センサ100aは、台座押さえ7aが第2のボンディングワイヤ102,103を受け入れるための空間部78aを有する。よって、第1実施例と同様に、第2のボンディングワイヤ102,103が台座押さえ7aの本体部75aに接触する可能性を低減できる。また、台座押さえ7aの空間部78aは、台座押さえ7aの一部分の厚みを変更すること容易に形成できる。また、台座押さえ7aの本体部75aが円周方向について連続しているため、強度低下を抑制できる。よって、台座6を介した荷重や振動等の外力によって台座押さえ7aが破損する可能性を低減できる。これにより、圧力センサ100aの信頼性をより向上できる。
【0036】
C.第3実施例:
図5は、第3実施例の圧力センサ100bを説明するための図である。図5(A)は図3(A)に相当する図であり、図5(B)は図5(A)のC−C断面図である。また、図5(C)は、図5(A)に示す圧力センサ100bの台座押さえ7bをZ軸正方向側から見た図である。第1実施例の圧力センサ100との違いは、台座押さえ7bの構成である。その他の構成(例えば、圧力検出素子5)は第1実施例と同様の構成であるため、同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。また、図示しないハウジング20(図1)についても第1実施例と同様の構成である。
【0037】
第3実施例の台座押さえ7bには、空間部78bが形成されている。図5(C)に示すように、空間部78bは、台座押さえ7bの部分のうち、台座6が位置する側である台座押さえ先端側部分74fに形成されており、前記先端側部分よりも後端側である台座押さえ後端側部分74bには形成されていない。すなわち、本体部75bの周方向における一部分には、台座6と接する端面から台座6から離れる方向に所定長さ延びる開口が空間部78bとして形成され、軸線CL方向について空間部78bよりも台座6から離れた部分には空間部78bは形成されていない。なお、第1実施例と同様に、軸線CL方向について、空間部78bが第2のボンディングワイヤ102,103と重なるように台座押さえ7bは配置されている。ここで、空間部78bの大きさ(軸線CL方向の長さや周方向の長さ)は、第2のボンディングワイヤ102,103を受入れ可能な程度に設定すれば良い。このような空間部78bを有する台座押さえ7bは、例えば、一定の厚みを有する板状の本体部75bを環状になるように加工し、加工品の一部分に切欠きを施すことで作製できる。また、例えば、予め用意した型を用いた鋳造によって空間部78bが形成された台座押さえ7bを作製しても良い。
【0038】
上記のように、第3実施例の圧力センサ100bは、台座押さえ7bが第2のボンディングワイヤ102,103を受け入れるための空間部78aを台座押さえ先端側部分74fのみに有する。ここで、台座押さえ先端側部分74fは、台座押さえ7bのうち第2のボンディングワイヤ102,103と接触する可能性が高い部分である。よって、第1実施例と同様に、第2のボンディングワイヤ102,103が台座押さえ7bの本体部75bに接触する可能性を低減できる。また、台座押さえ後端側部分74bでは本体部75bが円周方向に連続しているため、第2実施例と同様に、台座押さえ7bの強度低下を抑制できる。さらに、空間部78bは開口であることから、第2のボンディングワイヤ102,103のネック高さが大きい場合でも、本体部75bに第2のボンディングワイヤ102,103が接触する可能性を第2実施例に比べ低減できる。
【0039】
D.第4実施例:
図6は、第4実施例の圧力センサ100cを説明するための図である。図6(A)は、圧力センサ100cが備える台座押さえ7cの外観斜視図である。また、図6(B)は、台座押さえ7cのD−D断面図である。なお、図6(A)において、空間部78が占める領域には破線を付している。また、理解の容易のために、圧力センサ100cとして各構成部材が組み付けられた場合の、台座6を一点鎖線で示している。上記第1実施例の台座押さえ7との違いは、本体部75cに位置決め部としての2つの凹状部位71を設けている点である。その他の構成については上記第1実施例と同様の構成であるため、同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
【0040】
図6(A),(B)に示すように、台座押さえ7cは、台座6に対向する側部分に2つの凹状部位71が形成されている。凹状部位71は、例えば、台座6と対向する先端面faに切欠きを施すことで形成できる。圧力センサ100cとして台座押さえ7cを組み付ける場合に、軸線CL方向について、空間部78と第2のボンディングワイヤ102,103とが重なる位置になるように、台座押さえ7cを設置するために凹状部位71は利用される。具体的には、図6(B)に示すように、第2のボンディングワイヤ102,103が形成された台座側面61と同じ側に空間部78を位置させると共に、台座6の一部分を凹状部位71に挿入するように台座押さえ7cが配置される。
【0041】
上記のように、第4実施例の圧力センサ100cは、台座押さえ7cが凹状部位71を有することで、台座押さえ7cと台座6とを組み付ける場合に、空間部78と第2のボンディングワイヤ102,103とをより精度良く所望の位置関係になるように配置できる。これにより、圧力センサ100cを作製する場合に、第2のボンディングワイヤ102,103が台座押さえ7cの本体部75cに接触する可能性をより一層低減できる。なお、第4実施例の台座押さえ7cが有する凹状部位71は、第2、3実施例の台座押さえ7a,7b(図4,5)に設けることもできる。このようにしても、圧力センサ100a,100bを作製する場合に、第2のボンディングワイヤ102,103が台座押さえ7の本体部75a,75bに接触する可能性をより一層低減できる。
【0042】
E.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0043】
E−1.第1変形例:
上記実施例では、中間部材11は回路基板9に加え中継基板8を有していたが(例えば、図1)、中継基板8を有さなくても良い。このようにしても、上記実施例と同様に、台座押さえ7〜7cが空間部78を有することで、圧力センサ100が径方向に大型化することを抑制しつつ、第2のボンディングワイヤ102,103が台座押さえ7〜7cの本体部75に接触する可能性を低減できる。
【0044】
E−2.第2変形例:
上記実施例では、回路部10はハウジング20内に設けられていたが、回路部10をハウジング20の外側位置であって軸線CL方向についてハウジング20よりも後端側位置に設けても良い。こうすることで、回路部10を被圧力検出体であるエンジンの燃焼室からより遠ざけることができるため、燃焼室の熱(例えば、300℃以上の熱)により回路部10がダメージを受ける可能性をより低減できる。よって、圧力センサ100〜100cの信頼性をより向上できる。
【0045】
E−3.第3変形例:
上記実施例では、2つの第2のボンディングワイヤ102,103に対して、台座押さえ7〜7cは1つの(単一の)空間部78を有していたが(例えば、図3)、これに限定されるものではない。例えば、第2のボンディングワイヤ102,103の数に対応させて2つの空間部78を台座押さえ7〜7cに設けても良い。このようにしても上記実施例と同様に、圧力センサ100が径方向に大型化することを抑制しつつ、第2のボンディングワイヤ102,103が台座押さえ7〜7cの本体部75に接触する可能性を低減できる。
【0046】
E−4.第4変形例:
上記実施例では、圧力センサ100〜100cは、それぞれに第2のボンディングワイヤ102,103を有する2本の電気配線路30を備えていたが、電気配線路30の本数はこれに限定されるものではない。すなわち、出力信号の種類や用途に応じて電気配線路30の本数を適宜設定すれば良い。この場合、形成された第2のボンディングワイヤを受け入れることが可能なように、空間部78,78a,78bの形状や数を設定すれば良い。
【0047】
E−5,第5変形例:
上記第2実施例では、空間部78aは軸線CL方向全域に亘って台座押さえ7aに形成されていたが(図4)、空間部78aが形成される範囲はこれに限定されるものではない。少なくとも軸線CL方向について第2のボンディングワイヤ102,103と重なる範囲において空間部78aが台座押さえ7aに形成されていれば良い。すなわち、空間部78aが台座押さえ7aの部分のうち台座6が位置する側である台座押さえ先端側部分に形成されており、先端側部分よりも後端側である台座押さえ後端側部分には形成されていない台座押さえ7aとしても良い。こうすることで、空間部78aの容積を低減させ、台座押さえ7aの強度低下を抑制できる。また、このようにしても、第2実施例と同様に、第2のボンディングワイヤ102,103が台座押さえ7aの本体部75aに接触する可能性を低減できる。
【0048】
E−6.第6変形例:
上記第4実施例では、台座押さえ7cは位置決め部として凹状部位71を有していたが、位置決め部はこれに限定されるものではない。例えば、凹状部位71に代えて、台座6の台座後端面67に当接する位置を目印として設けても良い。このようにしても、上記第4実施例と同様の効果を奏する。
【0049】
E−7.第7変形例:
上記実施例では、内燃機関(本実施例では自動車)のエンジン燃焼室の燃焼圧を検知するために圧力センサ100〜100dを用いる例を説明したが、圧力センサ100〜100dは他の内燃機関(航空機や船舶等)に用いることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1…センサボディ
2…先端ケース
2a…底部
3…圧力伝達機構
3a…棒状部材
3b…半球部材
5…圧力検出素子
6…台座
7〜7c…台座押さえ
8…中継基板
9…回路基板
10…回路部
11…中間部材
20…ハウジング
30…電気配線路
60…素子載置面
61…台座側面
62,63…台座配線路
67…台座後端面
71…凹状部位
72、73…第1のボンディングワイヤ
74b…台座押さえ後端側部分
74f…台座押さえ先端側部分
75〜75c…本体部
76…一端
77…他端
78〜78b…空間部
79…薄肉部
81…中継基板先端面
82,83…中継基板配線路
87…中継基板側面
92,93…回路基板配線路
96…回路基板側面
100〜100c…圧力センサ
102,103…第2のボンディングワイヤ
112,113…第3のボンディングワイヤ
122,123…第4のボンディングワイヤ
CL…軸線
fa…先端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、先端側が底部を形成する有底筒状のハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、前記底部を介した圧力を検出するための圧力検出素子と、
前記圧力検出素子よりも後端側の前記ハウジング内に収容され、前記圧力検出素子と当接する台座であって、前記底部と対向し前記圧力検出素子と当接する素子載置面と、前記素子載置面から後端側に延びる台座側面と、を有する台座と、
前記台座よりも後端側の前記ハウジング内に収容され、前記圧力検出素子の検出信号を処理するための回路部が配置された中間部材であって、前記底部と対向する中間先端面と、前記中間先端面から後端側に延びると共に前記台座側面と段差を有する中間側面と、を有する中間部材と、
前記中間部材の先端側周囲を囲むように配置され、前記ハウジングに固定された台座押さえであって、前記台座の面のうち前記素子載置面とは反対側に位置する台座後端面と当接することで前記台座の前記軸線方向についての動きを規制する台座押さえと、
前記ハウジング内に収容され、前記圧力検出素子と前記回路部とを電気的に接続するための電気配線路と、を備える圧力センサにおいて、
前記電気配線路は、前記台座側面に形成された台座配線路と、前記中間側面に形成された中間配線路と、前記台座配線路と前記中間配線路とを電気的に接続するためのボンディングワイヤとを含み、
前記台座押さえには、前記ボンディングワイヤを受入れるための空間部が形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記空間部は、前記台座押さえの部分のうち前記台座が位置する側である台座押さえ先端側部分のみに形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記空間部は、前記台座押さえの前記軸線方向全域に亘って形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記空間部は、前記台座押さえの一部分の厚みを他の部分の厚みよりも薄くすることで形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記空間部は、前記台座押さえの一部分が前記軸線方向と直交する径方向に開口することで形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記空間部は、前記台座押さえに切り欠きを施すことで形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記台座押さえは、前記軸線方向について、前記空間部と前記ボンディングワイヤが重なる位置になるように、前記台座に対する位置を決定するための位置決め部を有する、ことを特徴とする圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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