説明

圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法

【課題】処理流量を増加させても、コンパクト化、低コスト化が可能な圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法を提供する。
【解決手段】圧力交換装置10は、一端側から第1流体が流入または流出する第1流路21と、一端側から第2流体が流入または流出する第2流路22とが、他端側で連通するように形成された圧力伝達部23を備えた第1支持体20と、第1流体を第1流路21に案内する第1流体流入路41aと、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路22から案内する第2流体流出路42a、及び、第2流体を第2流路22に案内する第2流体流入路43bと、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路21から案内する第1流体流出路44bとが、回転軸心周りに形成された回転体40と、回転体40を第1支持体20との間で回転可能に支持する第2支持体30と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜装置を用いる海水淡水化施設では、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体である高圧濃縮海水がもつ余剰圧力を、逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である低圧海水の昇圧に利用する圧力交換装置が設けられている。
【0003】
図16に示すように、特許文献1には、管状の圧力伝達部が回転軸心周りに複数本配設されたロータ80を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0004】
該圧力交換装置は、ロータ80の回転に伴って、高圧入口側ポート82へ供給される高圧濃縮海水と低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水とを圧力伝達部で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を、高圧出口側ポート83から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート84から排水するように構成されている。
【0005】
図17に示すように、特許文献2には、一対の回転板91、92と該回転板91、92を連接する軸93とで構成される回転体90を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0006】
一方の回転板91には、低圧入口側ポート95に供給された低圧海水を圧力伝達部96に案内する流路91aと、圧力伝達部96から排水される高圧海水を高圧出口側ポート97に案内する流路91bが形成されている。
【0007】
他方の回転板92には、高圧入口側ポート94に供給された高圧濃縮海水を圧力伝達部96に案内する流路92bと、圧力伝達部96から排水される低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98に案内する流路92aが形成されている。
【0008】
該圧力交換装置は、回転体90の回転に伴って、高圧入口側ポート94へ供給される高圧濃縮海水と、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水を、管状の圧力伝達部96内で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を高圧出口側ポート97から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98から排水するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009180903号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第200710056401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された圧力交換装置では、ロータ80に配設された管状の圧力伝達部の断面積に依存して圧力伝達される処理流量が定まるので、処理流量を増やすためには、圧力伝達部の配設本数を増加させるか、圧力伝達部の一本あたりの断面積を大きくする必要があり、何れの場合であってもロータ80が大きくなり、それに伴って圧力交換装置が大型になり重量も増大する。
【0011】
一般的にロータ80は、軽量化、高剛性、耐摩耗性、低摩擦係数等の条件を満足させるために、セラミックス等の高価な材料で形成されているため、圧力交換装置を大型化するとそれに伴って材料費、製造費が嵩むという問題があった。
【0012】
さらに、大型のロータ80を回転させるために要するトルクも増大し、小径のロータ80を回転させる場合よりも大きなエネルギーが必要になるという問題もあった。このような理由によって、圧力交換装置1台あたりの処理流量を増加させるのは極めて困難であった。
【0013】
そのため、大量の海水を淡水化処理する大型の海水淡水化施設には、多数の圧力交換装置が設置されていた。しかし、圧力交換装置の設置台数が増加すると、各圧力交換装置を接続する配管の施工及び管理が煩雑になるという問題があった。
【0014】
特許文献2に記載された圧力交換装置では、一方の回転板91に形成された流路91bと他方の回転板92に形成された流路92bの夫々が、回転体内部で軸心方向に沿った流路に円周方向に形成された流路が連通するように構成されているため、回転板91、92に流路を形成するための厚みが必要となる。そのため、回転板91、92が大型になり材料費や加工費が嵩むという問題があった。
【0015】
さらに、回転板91、92の大型化によって重量が増すと、回転体90の回転時に軸部93に作用するねじりや曲げ応力が大きくなり、その変形や破損を防止するために軸部93を太くする必要があるばかりでなく、回転のために要するエネルギーが増加し、効率が低下するという問題もあった。
【0016】
本発明の目的は、処理流量を増加させても、コンパクト化、低コスト化が可能な圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明による圧力交換装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と、一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが、他端側で連通するように形成された圧力伝達部を備えた第1支持体と、第1流体を第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路から案内する第2流体流出路、及び、第2流体を第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路から案内する第1流体流出路とが、回転軸心周りに形成された回転体と、前記回転体を第1支持体との間で回転可能に支持する第2支持体と、を備えている点にある。
【0018】
上述の構成によれば、回転体に形成された第1流体流入路を介して装置の外部から第1支持体に形成された第1流路へと案内された第1流体の圧力が、第1流路と連通された第2流路内の第2流体に伝達され、昇圧された第2流体が、回転体に形成された第2流体流出路を介して装置の外部へ排水される。
【0019】
また、回転体に形成された第2流体流入路を介して装置の外部から第1支持体に形成された第2流路へと案内された第2流体の圧力が、第2流路と連通された第1流路内の第1流体に伝達され、第1流体が回転体に形成された第1流体流出路を介して装置の外部へ排水される。
【0020】
このように、第1流路と第2流路と両流路の連通部とで圧力伝達部を構成することにより、第1支持体の一端側から該圧力伝達部へ第1流体または第2流体を流入させて、第1流体と第2流体との間で圧力を交換し、該一端側から第2流体または第1流体を流出させることができるので、特許文献2に記載されたような直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に第1支持体の軸心方向の長さが短くなり、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができ、また、圧力交換処理の流量を増加させる必要がある場合でも、回転体の軸心方向の長さが短くなることで、装置の極端な大型化を回避することができる。
【0021】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と、一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが、他端側で連通するように形成された圧力伝達部を備えた第1支持体と、一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と、一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが、他端側で連通するように形成された圧力伝達部を備えた第2支持体と、第1流体を前記第1支持体と第2支持体の夫々に形成された第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第1支持体と第2支持体の夫々に形成された第2流路から案内する第2流体流出路と、第2流体を前記第1支持体と第2支持体の夫々に形成された第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を前記第1支持体と第2支持体の夫々に形成された第1流路から案内する第1流体流出路とが、回転軸心周りに形成された回転体とを備え、前記回転体は前記第1支持体と前記第2支持体との間で回転可能に支持されている点にある。
【0022】
上述の構成によれば、第1支持体のみならず第2支持体にも一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と、一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが、他端側で連通するように形成された圧力伝達部が備えられているため、第2支持体の圧力伝達部でも第1支持体に備えられた圧力伝達部と同様の圧力伝達を行なうことができ、上述の第一特徴構成と同様の作用効果を奏することができる。第1支持体の圧力伝達部と第2支持体の圧力伝達部の両方で圧力伝達ができるため、第1支持体のみに圧力伝達部が形成されている場合に比べて容量が増加するので、単位時間あたりの処理流量を増加させることができる。
【0023】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記第1支持体と前記第2支持体の夫々に備えられる圧力伝達部の形状及び位置が前記回転体に対して対称に構成されている点にある。
【0024】
上述の構成によれば、第1流体は回転体の第1流体流入路から第1支持体及び第2支持体の夫々の第1流路に同時に流入して第1支持体及び第2支持体の夫々の第2流路内の第2流体を昇圧し、昇圧された第2流体は第1支持体及び第2支持体の夫々の第2流路から回転体の第2流体流出路へ同時に流入する。第2流体は回転体の第2流体流入路から第1支持体及び第2支持体の夫々の第2流路へ同時に流入し第1支持体及び第2支持体の夫々の第1流路の第1流体を昇圧し、昇圧された第1流体は、第1支持体及び第2支持体の夫々の第1流路から回転体の第1流体流出路へ同時に流出することになる。
【0025】
さらに、前記第1支持体と前記第2支持体の夫々に備えられる圧力伝達部の形状及び位置が前記回転体に対して対称に構成されているので、回転体と第1及び第2支持体の間にかかる回転に伴う圧力変動も対称となり、回転体と夫々の支持体との間で生じる軸方向の力が略同一で方向が逆になる。よって、回転体の軸方向にかかる力がバランスし、回転体が一方の支持体側へと片寄ることなく円滑に回転し、効率よく圧力回収することができる。
【0026】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記回転体は、第1及び第2支持体とで区画される空間に収容されるとともに、少なくとも第1流体または第2流体のうち何れかの流体の流体流入路及び流体流出路が前記回転体を貫通するように形成され、前記回転体の回転軸心方向の両端面と第1及び第2支持体との間に各流体が進入する隙間が形成されている点にある。
【0027】
上述の構成によれば、少なくとも第1流体または第2流体のうち何れかの流体の流体流入路及び流体流出路が回転体を貫通するように形成されているので、第1及び第2支持体とで区画される空間内で回転体が回転するときに、回転体の端面と第2支持体との間に形成された隙間に第1または第2流体が進入して、該流体によって回転体を第1支持体に向けて押圧する力が働く。また、回転体の端面と第1支持体との間に形成された隙間に第1または第2流体が進入して、該流体によって回転体を第2支持体に向けて押圧する力が働く。
【0028】
両側から略等しい力で押圧される回転体は、第1及び第2支持体の間で一方向に片寄ることなくバランスするため、第1支持体または第2支持体の何れか一方と常時摺動しながら回転するようなことがなく、円滑に回転できるようになる。その結果、第1支持体及び第2支持体の磨耗が低減できるので、高価な耐磨耗性材料を用いなくとも耐久性を向上させることができる。
【0029】
さらに、回転体は両側から略等しい力で押圧されるため、第1及び第2支持体と回転体との摩擦が減少し回転抵抗が低減する。そのため、処理流量を稼ぐために回転体を大径に形成し、第1流体または第2流体のうち何れかの流体の流体流入路及び流体流出路の断面積を大きくした場合でも、回転体を回転駆動するために要するエネルギーの損失が低く抑えられるようになる。
【0030】
尚、回転体と第1及び第2支持体との間に形成される隙間は、狭すぎると回転体が支持体に押し付けられて大きな摺動抵抗が発生し、広すぎると流体の漏れ量が多くなり圧力の交換効率が低下するため、好ましくは1〜100μm程度に設定される。
【0031】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第四特徴構成に加えて、少なくとも一方の支持体を押圧して、第1及び第2支持体の間隔を調整する押圧機構を備えている点にある。
【0032】
上述の構成によれば、仮に各支持体と回転体の端面が磨耗して隙間が大きくなり、流体が漏れて圧力の交換効率の低下を招くような場合であっても、押圧機構により少なくとも一方の支持体を押圧して、第1及び第2支持体の間隔が調整できるようになるので、回転体と支持体との間に形成される隙間を適正に調整できるので、部品交換等の規模の大きな分解を伴うメンテナンスを行なわずに長期間安定して稼動させることができるようになる。
【0033】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、回転体外周を保持する保持部を有し、前記保持部は、少なくとも前記第1流体流入路に連通する第1流体流入口と、前記第2流体流出路に連通する第2流体流出口とを備えている点にある。
【0034】
上述の構成によれば、保持部は回転体の外周を保持するので、回転体は保持部の中で円滑に回転することができる。保持部は少なくとも第1流体流入路に連通する第1流体流入口と、第2流体流出路に連通する第2流体流出口を備えているので、第1流体流入口から第1流体流入路に第1流体を流入させることができ、第2流体流出路から第2流体流出口へ第2流体を流出させることができる。
【0035】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第六特徴構成に加えて、前記保持部は、さらに前記第2流体流入路に連通する第2流体流入口と、前記第1流体流出路に連通する第1流体流出口を備え、前記回転体の回転軸心方向に沿って、前記第1流体流出口と前記第2流体流入口との間に前記第1流体流入口と第2流体流出口とが配設されている点にある。
【0036】
上述の構成によれば、上述の第六特徴構成と同じ作用効果を奏しながら、さらに保持部に形成された第2流体流入口から第2流体流入路に第2流体を流入させることができ、第1流体流出路から第1流体流出口へ第1流体を流出させることができる。
【0037】
さらに、保持部には回転体の回転軸心方向に沿って、前記第1流体流出口と前記第2流体流入口との間に前記第1流体流入口と第2流体流出口とが配設されているので、第1流体流入口から第1支持体の第1流路と第2流路の連通部までの距離と、第1流体流入口から第2支持体の第1流路と第2流路の連通部までの距離の差を小さくすることができる。
【0038】
つまり、第1流体流入口から第1支持体の第1流路と第2流路の連通部までの圧力損失と、第1流体流入口から第2支持体の第1流路と第2流路の連通部までの圧力損失の差を小さくすることができるので、第1流体流入口から第1流体流入路に流入した第1流体の第1支持体の第1流路側への流量と、第2支持体の第1流路側への流量の差を小さくすることができる点で好ましい。
【0039】
また、前記第1流体流出口と前記第2流体流入口との間に前記第1流体流入口と第2流体流出口とが配設されている、つまり、回転体の軸心方向の中央部に、高圧の第1流体が流入する第1流体流入路と昇圧された第2流体が流出する第22流体流出路を配設しているため、回転体の軸心方向の一端部に前記第1流体流入口と第2流体流出口が配設される場合に比べて回転体に作用するトルクのバランスがよいので回転体の回転を円滑にすることができる。
【0040】
さらに、第1流体流入口、第2流体流出口、第2流体流入口、第1流体流出口は、全てが保持部に形成されているので、各流入口及び流出口に接続する配管を保持部の周囲に配設すればよいため、配管を含めた設置スペースの省スペースが図れる。さらに、配管を外すことなく、配管のない箇所からメンテナンスが可能となり、メンテナンス作業性が良くなる。
【0041】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第六または第七特徴構成に加えて、前記第1流体流入口は、第1流体流入口から第1流体流入路に流入する第1流体のエネルギーにより前記回転体が回転するように、前記回転体の接線方向に平行な方向に沿って形成され、第1流路に流入する第1流体の圧力が、第2流路に流入する第2流体の圧力より高い圧力に設定されている点にある。
【0042】
上述の構成によれば、前記第1流体流入口から第1流体流入路に第1流体が流入するときに、第1流体は前記回転体の半径方向に交差する方向に沿って流入するので前記回転体が回転するようなトルクを付与する。よって、外部動力がなくても回転体を回転させることができるようになる。そして、回転体の回転に伴って、圧力伝達部への第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構が不要となる。
【0043】
尚、第1流路に流入する第1流体の圧力が、第2流路に流入する第2流体の圧力より高い圧力に設定されているので、第1流路を第2流路より径方向外側に配置するほうが、回転軸心から径方向に大きく離隔した流路に流入する流体のエネルギーを利用でき、同じエネルギーでより大きなトルクを発生させることができるのでエネルギー効率がよい。
【0044】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第八特徴構成に加えて、前記回転体の円周方向に前記第1流体流入口と第1流体流入路を連通する連通溝が形成され、前記連通溝に前記第1流体の圧力を受けて前記回転体を回転させる受圧部が形成されている点にある。
【0045】
第1流体が第1流体流入口から連通溝を介して第1流体流入路に流入する際に、連通溝に形成された受圧部が第1流体の圧力を受けて、回転体は回転させられる。
【0046】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一から第九の何れかの特徴構成に加えて、前記第1支持体に、複数組の圧力伝達部が放射状に配設されている点にある。
【0047】
上述の構成によれば、圧力伝達部は回転体の回転軸心周りに回転軸心を中心として放射状に複数配設されているので、圧力伝達部の総断面積が多くなり、圧力交換装置の処理流量を増加させることができる。
【0048】
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第十特徴構成に加えて、隣接する複数の圧力伝達部が、前記回転体の回転に伴って、少なくとも1つの第1流体流入路と第2流体流出路、または、1つの第2流体流入路と第1流体流出路と同時に連通する点にある。
【0049】
上述の構成によれば、隣接する複数の圧力伝達部が、回転体の回転に伴って、少なくとも1つの第1流体流入路と第2流体流出路、または、1つの第2流体流入路と第1流体流出路と同時に連通することで、回転体の回転に伴う第1流体または第2流体の流入出時の流量変動を低減し、流体の脈動、装置の脈動等の悪影響を防止することができる。
【0050】
同第十二の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の第十または第十一の特徴構成に加えて、前記複数の圧力伝達部のうち、前記回転体の回転に伴って、第1流体流入路と第2流体流出路、及び、第1流体流出路と第2流体流入路の何れにも連通しない圧力伝達部が存在する点にある。
【0051】
上述の構成によれば、前記複数の圧力伝達部のうち、前記回転体の回転に伴って、第1流体流入路と第2流体流出路、及び、第1流体流出路と第2流体流入路の何れにも連通しない圧力伝達部では、第1流体及び第2流体の流入、流出を一旦停止させることができるので、第1流路及び第2流路内の各流体の流れ方向の切り替えを円滑にすることができる。
【0052】
同第十三の特徴構成は、同請求項13に記載した通り、上述の第六から第十二の何れかの構成に加えて、前記保持部に、複数組の第1流体流入口と第2流体流出口が回転軸心周りに点対称に配置されている点にある。
【0053】
上述の構成によれば、保持部に複数組の第1流体流入口と第2流体流出口が回転体の回転軸心周りに点対称に配置されているので、回転体には第1流体流入路口から第1流体流入路に流入する第1流体のエネルギーがバランスよく作用し、回転体が傾くことなく、回転体を円滑に回転させることができる。
【0054】
同第十四の特徴構成は、同請求項14に記載した通り、上述の第一から第十三の何れかの特徴構成に加えて、第1流路の断面積と第2流路の断面積が等しくなるように形成されている点にある。
【0055】
上述の構成によれば、第1流路の断面積と第2流路の断面積が等しくなるように形成されているので、第1流路の断面積と第2流路の断面積が異なる場合に比べて、流体が第1流路と第2流路を通流するときの圧力損失が低減され、効率の良い圧力伝達が可能となる。
【0056】
同第十五の特徴構成は、同請求項15に記載した通り、上述の第一から第十四の何れかの構成に加えて、前記回転体を外部動力で回転させる駆動軸が前記回転体に連結されている点にある。
【0057】
上述の構成によれば、流体の流れが不安定である等の何らかの要因により回転体の回転が安定しないような場合でも、駆動軸に連結された駆動機等の外部動力で回転体を回転させることにより、安定した圧力交換処理が可能となる。
【0058】
同第十六の特徴構成は、同請求項16に記載した通り、上述の第一から第十五の何れかの構成に加えて、前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である点にある。
【0059】
上述の構成によれば、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体の圧力により逆浸透膜装置に供給される被濃縮流体を昇圧するので、余剰圧力を捨てることなく有効なエネルギーとして利用することができる。
【0060】
本発明による圧力交換装置の性能調整方法の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項17に記載した通り、上述の第九特徴構成を備えた圧力交換装置の性能調整方法であって、前記保持部の第1流体流入口の配置、角度、または回転体の受圧部の形状を変更することで、処理流量を調整する点にある。
【0061】
回転体の回転数は、保持部の第1流体流入口の配置、角度、または回転体の受圧部の形状を変更に依存する。よって、保持部の第1流体流入口の配置、角度、または回転体の受圧部の形状を変更するだけで、処理流量に合わせて回転体の回転数を変更できるため、圧力交換装置の処理流量を容易に調整できる。
【発明の効果】
【0062】
以上説明した通り、本発明によれば、処理流量を増加させても、コンパクト化、低コスト化が可能な圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】海水淡水化施設の概略フロー図
【図2】圧力交換装置の説明図
【図3】第1支持体の説明図であって、(a)は正面図、(b)は正面図のA―A線断面図、(c)は背面図
【図4】回転体の説明図であって(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は正面図のB―B線断面図、(e)は側面図のC−C線断面図、(f)は側面図のD−D線断面図
【図5】保持部の説明図であって、(a)は正面図、(b)は部分断面図、(c)は背面図
【図6】圧力交換装置による圧力交換の説明図であって、(a)は図6(b)のE−E線矢視図、(b)は断面の概略図
【図7】圧力交換装置による圧力交換の説明図であって、(a)は図7(b)のF−F線矢視図、(b)は断面の概略図
【図8】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図9】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図10】別実施形態による圧力交換装置の説明図であって、(a)は図9のG−G線断面図、(b)は図9のH−H線断面図
【図11】別実施形態による圧力交換装置の説明図であって、(a)は図9のI−I線断面図、(b)は図9のJ−J線断面図
【図12】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図13】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図14】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図15】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図16】従来の圧力交換装置の説明図
【図17】従来の圧力交換装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に、本発明による圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法の好ましい実施形態を説明する。
【0065】
図1に示すように、海水淡水化施設は、海水中の夾雑物を取り除く前処理部1と、前処理部1で前処理された海水を貯留するろ過海水槽2と、ろ過海水槽2に貯留された海水を保安フィルターに供給する供給ポンプ3と、逆浸透膜装置6の詰まりを防止するため海水中の微細な異物を除去する保安フィルター4と、保安フィルター4を通過した海水を昇圧する高圧ポンプ5と、昇圧された海水が供給される逆浸透膜装置6を備えている。逆浸透膜装置6によって海水中の各種塩類が除去され、飲料用水や工業用水等として利用できるように淡水化される。
【0066】
逆浸透膜装置6は、浸透膜の一方側の海水に圧力をかけることにより、逆浸透膜の他方側に海水中の各種塩類が除去された淡水を染み出させる装置であり、ろ過するためには、海水を浸透圧以上の所定の圧力にする必要がある。
【0067】
しかし、逆浸透膜装置6は、供給された海水の全てを淡水化できるものではない。例えば、逆浸透膜装置6に供給される海水のうち40%は淡水化されて排水されるが、残りの60%は淡水化されずに非常に圧力の高い高圧濃縮海水として排水される。
【0068】
そこで、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水のもつ余剰圧力を有効なエネルギーとして回収して利用する圧力交換装置10を備えている。
【0069】
ろ過海水槽2から逆浸透膜装置6に供給される海水のうち、40%は高圧ポンプ5で浸透圧以上の所定の圧力、例えば、6.9MPaまで昇圧される。逆浸透膜装置6に供給される残りの60%の海水(以下、「低圧海水」と記す)は、圧力交換装置10が逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水から回収した余剰圧力(6.75MPa)と、ブースターポンプ7により6.9MPaまで昇圧される。
【0070】
つまり、圧力交換装置10は、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水Hi(高圧濃縮流体)の圧力により、圧力交換装置10に供給される低圧海水Li(被濃縮流体)を昇圧して、浸透膜装置6に供給し、圧力交換装置10に供給される低圧海水Liによって、前記圧力が回収された後の低圧濃縮海水Loを排水する圧力交換処理を行なう。
【0071】
このように、圧力交換装置10は、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水Hiの余剰圧力を捨てることなく逆浸透膜装置6に供給される低圧海水Liの昇圧に利用して、逆浸透膜装置6でのろ過に必要な圧力の一部を補うので、海水淡水化施設全体のエネルギー効率が向上する。
【0072】
図2に示すように、圧力交換装置10は、第1支持体20と、第2支持体30と、エンドカバー25と、各支持体20、30との間で回転可能に支持された回転体40と、回転体40の外周を保持する保持部11と、押圧部材50を備えている。
【0073】
保持部11、各支持体20、30、回転体40は、アルミナ等のセラミックス、または、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等のように、海水に対する耐食性があり、十分に強度のある材料を用いることができる。二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼を用いた場合には、回転体40と各支持体20、30、及び、保持部11との対向面を窒化処理し、或は、アルミナ等のセラミックスを溶射し、肉盛溶接し、或はHIP処理して摩擦係数を低減する耐磨耗層を形成することが好ましい。
【0074】
エンドカバー25や押圧部材50は、樹脂材料、または、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等の金属材料のように、海水に対する耐食性があり、ある程度強度を備えた材料で形成すればよい。安価な鋼やステンレス鋼等の高強度であるが、耐食性に劣る金属を樹脂材料で被覆して部材を構成するとコストダウンが図れる。
【0075】
図2及び図3(a)、(b)、(c)に示すように、第1支持体20には、その一端側の端面20aから第1流体としての高圧濃縮海水Hiが流入し、圧力が交換された後の低圧濃縮海水Loが流出する第1流路21と、同じく一端側の端面20aから第2流体としての低圧海水Liが流入し、圧力が交換された後の高圧海水Hoが流出する第2流路22とが、第1支持体20の他端側の端面20b側で連通するように形成された圧力伝達部23が設けられている。
【0076】
本実施形態では、圧力伝達部23は回転体40の回転軸心周りに回転軸心を中心として放射状に18組配設され、各第1流路21の断面積と第2流路22の断面積は等しくなるように形成されている。断面の形状は、配管抵抗が少なくなるように円形や楕円形、丸みを帯びた多角形が好ましい。
【0077】
第1支持体20の他端側の端面20bには、シール24を介してエンドカバー25がボルト28aとナット28bで取り付けられている。エンドカバー25の中央には、第2流体流入口27が形成され、図示しない配管が接続され、低圧海水Liが供給される。第1支持体20の中央には、第2流体流入口27から流入した低圧海水Liを回転体40に導く連通路26が形成されている。
【0078】
尚、本実施形態では、第1流路21に流入する高圧濃縮海水Hiの圧力は、第2流路22に流入する低圧海水Liの圧力より高い圧力に設定されている。
【0079】
図2及び図4(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)に示すように、回転体40には、高圧濃縮海水Hiを第1支持体20の第1流路21に案内する第1流体流入路41a、41bと、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoを第1支持体20の第2流路22から案内する第2流体流出路42a、42b、及び、第1支持体20に貫通形成された連通路26から流入する低圧海水Liを第1支持体20の第2流路22に案内する第2流体流入路43a、43bと、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loを第1流路21から第2支持体30に形成された連通路31へと案内する第1流体流出路44a、44bとが、回転軸心周りに形成されている。
【0080】
第1流体流入路41a、41bと第2流体流出路42a、42bは夫々回転体40を厚み方向(回転軸心方向)に貫通するように形成されている。
【0081】
第1流体流入路41a、41bと第1流体流出路44a、44b及び第2流体流出路42a、42bと第2流体流入路43a、43bは夫々通水断面積が等しくなるように、回転体40の周方向に沿って円弧状に形成されている。
【0082】
第1流体流入路41a、41bと第1流体流出路44a、44b及び第2流体流出路42a、42bと第2流体流入路43a、43bには同時に夫々同数の、例えば2〜3本の第1流路21及び第2流路22が連通する。尚、同数でなくてもよいが、同数とすることで、回転体にかかる力の変動が減少し、回転体がバランスよく回転する。
【0083】
回転体40の円周方向には、連通溝41cと連通溝42cが形成され、第1流体流入路41a、41bと連通溝41cは、夫々連通口41d、41eを介して連通され、第2流体流出路42a、42bと連通溝42cは、夫々連通口42d、42eを介して連通されている。
【0084】
保持部11に備えられた第1流体流入口12には、図示しない配管が接続され、高圧濃縮海水Hiが供給され、該高圧濃縮海水Hiが第1流体流入路41a、41bから第1流路21に流入する。圧力伝達部23内で昇圧された高圧海水Hoは、第2流路22から第2流体流出路42a、42bを経て保持部11に形成された第2流体流出口13から流出される。第2流体流出口13には、図示しない配管が接続され、該高圧海水Hoがブースターポンプ7を経て逆浸透膜装置6へ供給される。
【0085】
連通溝41cには、4本のボルト46が正面視で回転軸心に対して点対称の位置に配置されている。ボルト46は、高圧濃縮海水Hiの圧力を受けて回転体40を回転させる受圧部として機能する。尚、ボルト46は、4本に限らず、1本でもよく、本数が増えるほど、受圧部が増え回転に寄与する。
【0086】
第2流体流入路43a、43bは、第1支持体20に貫通形成された連通路26と連通する中央部43cとが回転体40の一端側の端面40bで連通するように構成されている。
【0087】
連通路26から中央部43cへと流入した低圧海水Liは、第2流体流入路43a、43bへと分散し、夫々連通する第2流路22へと流入する。尚、低圧海水Liの流れる第2流体流入路43a、43b、中央部43cの通水断面積を連通路26の通水断面積と等しく構成することで、圧力損失の低減が図られる。
【0088】
第1流体流出路44a、44bは、夫々回転体40を厚み方向に貫通するように形成され、回転体40の他端側の端面40aの中央部44cで連通するように構成され、その中央部44cが第2支持体30に貫通形成された連通路31と連通するように構成されている。
【0089】
第1流路21から第1流体流出路44a、44bへと流入した低圧濃縮海水Loは、中央部44cで集中され、連通路31へ排出される。尚、低圧濃縮海水Loの流れる第1流体流出路44a、44b、中央部44cの通水断面積を連通路31の通水断面積と等しく構成することで圧力損失の低減が図られる。
【0090】
これにより、連通路26から回転体40の中央部43cに流入した低圧海水Liは第2流体流入路43a、43bから夫々第1支持体20の第2流路22に流入し、第1流路21の低圧濃縮海水Loは第1流体流入路44a、44bに流出し、中央部44cから第2支持体30に貫通形成された連通路31へと流出する。
【0091】
本実施形態では、図4(a)に示すように、第1流体流入路41a及び第2流体流出路42aと、第1流体流入路41b及び第2流体流出路42bとは、回転体40の正面視で回転軸心に対して点対称の位置に配置されている。
【0092】
さらに、これらと90度位相が回転した位置に、第2流体流入路43の周辺部43a及び第1流体流出路44aと、第2流体流入路43b及び第1流体流出路44bとが、正面視で回転軸心に対して点対称の位置に配置されている。
【0093】
以上のように、回転体40の端面40a、40bの形状が略等しくなるように各流体の各流入路及び流出路が形成されている。
【0094】
図2及び図5(a)、(b)、(c)に示すように、保持部11は、円筒状の部材に回転体40の外周を保持する保持面14と、第2支持体30が嵌合される嵌合部15が形成されている。
【0095】
保持部11に形成された一対の第1流体流入口12は、正面視で回転軸心に対して回転体40の半径方向に交差する方向に沿って点対称の位置に配置され、内部に収容される回転体40に形成された連通溝41cと連通するように構成され、一対の第2流体流出口13は、正面視で回転軸心高さに左右対称に配置され、内部に収容される回転体40に形成された連通溝42cと連通するように構成されている。
【0096】
このように、第1流体流入口12は、回転軸の中心に向かうことなく回転体40の半径方向に交差する方向(回転体40の接線方向に平行な方向)に沿って形成されているので、高圧濃縮海水Hiが第1流体流入口12から連通溝41cを介して第1流体流入路41a、41bに流入するときに、その圧力が連通溝41cに配設されたボルト46、及び、連通口41d、41eに作用し、回転体40は回転させられる。尚、高圧濃縮海水Hiの流入方向と回転体40の回転効率を考慮すると、第1流体流入口12は、回転体40の接線方向に向けて形成することが最もよい。
【0097】
一対の第1流体流入口12は、正面視で回転軸心に対して回転体40の半径方向に交差する方向に沿って点対称の位置に配置されているので、回転体40にはバランスよくトルクが付与されて保持部11内で片寄ることなく円滑に回転する。高圧濃縮海水Hiの圧力は、回転体40の径方向の側面で、半径方向のなるべく外側から高圧濃縮海水Hiの圧力を作用させるので、少ないエネルギーでより大きなトルクを発生させることができ、装置の高効率化が図れる。
【0098】
このように、回転体40は、高圧濃縮海水Hiのエネルギーにより回転させられるので、別途に回転のための外部動力が不要となる。また、回転体40の回転に伴って、第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構が不要となる。
【0099】
図2に示すように、嵌合部15には、回転体40の直径より大径の円柱状に形成された第2支持体30の外周が嵌合される。第2支持体30の嵌合部15と接触面にはシール18が配設され、シール18により保持部11の外部に流体が漏れるのが防止される。尚、図2では、第2支持体30の外周部にシール18を設けているが、第2支持体30と保持部11との接触面であればどこに設けてもよい。
【0100】
保持部11の一端側の端面11bはボルト16により第1支持体20の端面20aと接合されている。第1支持体20の保持部11との接触面にはシール19が配設され、シール19により保持部11の外部に流体が漏れるのが防止される。
【0101】
回転体40は第1支持体20と第2支持体30と保持部11で区画される空間に収容される。回転体40の回転軸心方向の両端面40b、40aと第1支持体20及び第2支持体30との間に各流体が進入する隙間が形成されている。
【0102】
第1支持体20及び第2支持体30とで区画される空間内で回転体40が回転することにより、第1流路21に流入した高圧濃縮海水Hiから圧力伝達された高圧海水Hoが第2流路22から流出し、第2流路22に流入する低圧海水Liによって低圧濃縮海水Loが第1流路21から流出する動作が繰り返される。
【0103】
このとき、少なくとも第1流体流入路41a、41b及び第2流体流入路42a、42bが回転体40を貫通するように形成されているので、回転体40の端面40aと第2支持体30との間に形成された隙間に高圧濃縮海水Hi及び高圧海水Hoが進入して、該流体によって回転体40を第1支持体20に向けて押圧する力が働く。
【0104】
また、回転体40の端面40bと第1支持体20との間に形成された隙間に高圧濃縮海水Hi及び高圧海水Hoが進入して、該流体によって回転体40を第2支持体30に向けて押圧する力が働く。
【0105】
回転体40は、両端面の隙間に進入した流体により両側から略等しい力で押圧されて第1支持体20及び第2支持体30の間で回転軸心方向でバランスするため、第1支持体20または第2支持体30と常時摺動しながら回転するようなことがなく、円滑に回転できるようになる。その結果、第1支持体20及び第2支持体30の磨耗が低減できるので、高価な耐磨耗性材料を用いなくとも耐久性を向上させることができる。
【0106】
さらに、第1支持体20及び第2支持体30と回転体40との間で常時摺動しないため回転抵抗が低減するので、処理流量を稼ぐために回転体を大径に形成し、第1流体流入路41a、41bや第2流体流入路42a、42bの断面積を大きくした場合でも、該回転体を回転駆動するために要するエネルギーの損失が低く抑えられるようになる。
【0107】
尚、前記隙間は、狭すぎると少しの圧力変動による軸心方向への動きにより大きな摺動抵抗が発生し、広すぎると流体の漏れ量が多くなり圧力の交換効率が低下するため、押圧部材50により調整できるように構成され、好ましくは1〜100μm程度に設定される。
【0108】
押圧部材50は、中央に第2支持体30と当接して押圧する押圧部51を備え、周辺部52を保持部11の他端側の端面11aに弾性部材53を介してボルト17により締め付けることで押圧機構を構成する。
【0109】
図2に示すように、押圧部51は、第2支持部30の端面30aに当接するように、保持部11の嵌合部15の直径より小径の突出部で構成され、中央には、第2支持体30に形成された連通路31と連通する第1流体流出口54が貫通形成されている。第1流体流入口54には、図示しない配管が接続され、低圧濃縮海水Loが排出される。
【0110】
ボルト17を締め付けると、押圧部51が第2支持体30を第1支持体20側へ押圧して、第2支持体30が僅かに変形して、回転体40の両端面40a、40bと各支持体20、30の間に形成される前記隙間が狭くなる。逆に、ボルト17を緩めると、弾性部材53の弾性力によって、第2支持体30は第1支持体20から離隔する方向へ移動し、前記間隔が広くなる。
【0111】
例えば、回転体40の両端面が第1支持体20または第2支持体30と摺動して摩耗し、前記隙間が広くなったとしても、押圧部材50により第2支持体30を押圧して第1支持体20及び第2支持体30の間隔を調整することで、前記隙間を適当な間隔にして、前記隙間に進入する流体の量を調整することができるので、圧力の交換効率の低下を防止することができる。尚、弾性部材53の代わりに、厚さの異なるスペーサを複数用意しておき、該スペーサを交換することで隙間を調整することもできる。
【0112】
図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)に基づいて、本発明による圧力変換装置10の具体的な圧力変換の様子について説明する。
【0113】
図6(a)、(b)に示すように、回転体40の第1流体流入路41aが第1流路21aに連通し、第2流体流出路42aが第2流路22aに連通しているとき、第1流体流入口12から第1流体流入路41aを介して第1流路21aに流入した高圧濃縮海水Hiの圧力は、第2流路22a内の海水に伝達されて高圧海水Hoとなり、高圧海水Hoが第2流体流出路42aを介して、第2流体流出口13から排出される。
【0114】
このとき、回転体40の第2流体流入路43bは第2流路22bと連通し、第1流体流出口44bは第1流路21bと連通する。第2流体流入口27から連通路26を介して、回転体40の第2流体流入路43a、43bの中央部43cへと流入した低圧海水Liは、第2流路22bへ流入する。
【0115】
該低圧海水Liの圧力により第1流路21b内の低圧濃縮海水Lo(海水に圧力の伝達をした高圧濃縮海水Hi)は第1流体流出路44b、中央部44c、連通路31を経て第1流体流出口54へと排出される。
【0116】
第1流体流入口12から連通溝41cを介して第1流体流入路41a、41bに流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーが回転体40の連通溝41cの壁面や連通口41d、41eの壁面に作用して、回転体40が回転させられると、図7(a)、(b)に示すように、回転体40の第2流体流入路43bが第2流路22aに連通し、第1流体流出路44bが第2流路21aに連通する。
【0117】
第2流体流入口27から連通路26を介して、回転体40の第2流体流入路43a、43bの中央部43cへと流入した低圧海水Liは、第2流路22aへ流入し、該低圧海水Liの圧力により第1流路21a内の低圧濃縮海水Loが第1流体流出路44b、中央部44c、連通路31を経て第1流体流出口54から排出される。
【0118】
このとき、回転体40の第1流体流入路41aは第1流路21bと連通し、第2流体流出口42aは第2流路22bと連通する。第1流体流入口12から第1流体流入路41aを介して第1流路21bに流入した高圧濃縮海水Hiの圧力は、第2流路22b内の海水に伝達されて高圧海水Hoとなり、高圧海水Hoが第2流体流出路42aを介して、第2流体流出口13から排出される。
【0119】
尚、回転体40の第1流体流入路41b、第2流体流出路42b、第2流体流入路43a、第1流体流出路44a、及び、夫々連通する第1流路21、第2流路22でも上述と同様の圧力交換が行われている。
【0120】
回転体40の第1流体流入路41a、41b、第2流体流出路42a、42b、第2流体流入路43a、43b、第1流体流出路44a、44bの何れとも連通しない第1流路21、第2流路22では、第1流体と第2流体との間で圧力の交換が行われない。
【0121】
以上のように、回転体40の回転によって、ある圧力伝達部23を構成する第1流路21と第2流路22の組と、夫々連通する第1流体流入路41a、41bと第2流体流出路42a、42b、第2流体流入路43a、43bと第1流体流出路44a、44bとが切り替わり、高圧濃縮海水Hiから高圧海水Hoへの圧力の伝達と低圧海水Liから低圧濃縮海水Loへの圧力の伝達が連続的に行われ、つまり、第1流体と第2流体の圧力交換処理が連続的に行われる。
【0122】
尚、第1流路21及び第2流路22内では、濃縮海水と海水が混在することになるが、各々の流体は塩分濃度差があるため境界部分は拡散によりある一定量が常に混ざった領域となるだけで、該領域は、ピストンのような役目をしながら第1流路21及び第2流路22の内部で揺動することになる。
【0123】
以上のように構成された圧力交換装置10の性能調整方法について説明する。
【0124】
保持部11の第1流体流入口12の配置、角度を変更すると、回転体40に流入する高圧濃縮海水Hiの流入方向が変わり、回転体40に作用する力の方向が変わる。回転体40の連通溝41cに形成された受圧部としてのボルトの形状を変更すると、回転体40に流入する高圧濃縮海水Hiから受ける圧力の大きさが変わる。
【0125】
回転体40は保持部11の第1流体流入口12から流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーにより回転するので、その回転数は保持部11の第1流体流入口12の配置、角度、または回転体40の連通溝41cに形成された受圧部としてのボルトの形状に依存し、これらを変更することで装置に大掛かりな変更をすることなく処理流量を容易に調整することができるのである。
【0126】
尚、上述の実施形態では、連通溝41cに配設したボルト46により受圧部を構成したが、ボルト46を備えずに連通溝41cに受圧部を構成してもよい。
【0127】
第1流体流入口12は、保持部11の半径方向に交差する方向に沿って形成されているので、第1流体流入口12から連通溝41cを介して第1流体流入路41a、41bに流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーは、連通溝41cや連通口41d、41eや第1流体流入路41a、41bの壁面に作用して回転体40は回転させられる。連通溝41cの壁面や連通口41d、41eの壁面が、連通溝41cに形成された高圧濃縮海水Hiの圧力を受けて回転体40を回転させる受圧部を構成する。よって、連通口41d、41eや、連通溝41cの形状の異なる回転体を用意し、交換することで、処理流量を調整することもできる。
【0128】
以下に、本発明による圧力交換装置の別実施形態について説明する。尚、上述の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し説明を省略する。
【0129】
図8に示すように、圧力交換装置100は、回転体40に駆動軸32を連結し、駆動機等の外部動力で回転体40を回転できるように構成してもよい。駆動軸32は、押圧部材50、第2支持体30の中央部に形成した開口に挿通され、回転体40とキー33とボルト34で固定される。
【0130】
押圧部材50には径方向に第1流体流出口54と連通する排出路55が形成され、排出路55には、図示しない配管が接続されている。第1流体流出口54に排出された低圧濃縮海水Loは排出路55から装置外部へと排出される。連通路31及び第1流体流出口54には駆動軸32が挿通されるので、通水断面積を維持するために連通路31及び第1流体流出口54は拡径して形成されている。
【0131】
このように構成することで、流体の流れが不安定である等により回転体40の回転が安定しないような場合でも、駆動軸32に連結された駆動機等の外部動力で回転体40を回転駆動できるため、安定した回転を得ることができるので装置の信頼性が向上する。
【0132】
さらに、別実施形態を説明する。図9に示すように、圧力交換装置110は、第1支持体56、第2支持体57、エンドカバー58、59、各支持体56、57との間で回転可能に支持された回転体60、回転体60の外周を保持する保持部61、押圧機構62を備えている。
【0133】
本実施形態では、回転体60は、各支持体56、57とで挟持された保持部61とで区画される空間に収容され、押圧機構62としてのボルト62aとナット62bの締め付けを調整することにより、第1支持体57と第2支持体58の間隔が調整され、その結果、第1支持体57、第2支持体58と回転体60の両端の各隙間を調整できるように構成されている。
【0134】
第1支持体56には、その一端側から高圧濃縮海水Hiが流入し、圧力が交換された低圧濃縮海水Loが流出する第1流路63と、同じく一端側から低圧海水Liが流入し、圧力が交換された高圧海水Hoが流出する第2流路64とが貫通形成されている。尚、第1流路63の断面積と第2流路64の断面積は等しくなるように形成されている。
【0135】
第1支持体57の他端側には、エンドカバー58がボルト28aとナット28bで取り付けられている。エンドカバー58には、第1流路63と第2流路64を連通する連通流路65が形成されており、第1流路63及び第2流路64とを連通する連通流路65とで圧力伝達部66を構成する。本実施形態では圧力伝達部は回転軸心周りに放射状に18組配設されている。
【0136】
回転体60には、夫々一対の第1流体流入路67、第2流体流出路68、第2流体流入路69、第1流体流出路70が厚み方向に貫通形成されている。各流入路及び流出路の径方向外周面には連通溝75、76、77、78が形成されている。
【0137】
保持部61には、回転体60に形成された、連通溝75、76、77、78と連通する、夫々一対の第1流体流入口71、第2流体流出口72、第2流体流入口73、第1流体流出口74が夫々回転軸心に対して点対称となるように配置されている。
【0138】
本実施形態では、第1及び第2流体の回転体60への流入及び回転体60からの流出は以下のように行われる。
【0139】
図10(a)に示すように、高圧濃縮海水Hiは、保持部61に形成された第1流体流入口71から、回転体60の外周面に形成された連通溝75を介して第1流体流入路67に案内される。尚、連通溝75には、周方向に沿って複数の受圧面75aが形成され、該受圧面75aが高圧濃縮海水Hiの圧力が作用して回転体60を回転させる受圧部として機能する。
【0140】
尚、受圧部の構成はこれに限らず、図12に示すように、連通溝75の周方向に多数の受圧凹部75bを設け、該受圧凹部75bに高圧濃縮海水Hiの圧力を作用させることで回転体60を回転させる構成でもよい。また、連通溝76に受圧部を設けて、低圧海水Liの圧力のみ、または、高圧濃縮海水Hi及び低圧海水Liの両方の圧力により回転体60を回転させる構成でもよい。高圧濃縮海水Hi及び低圧海水Liの両方の圧力を利用することで、より大きなトルクを付与することができる。
【0141】
図10(b)に示すように、高圧海水Hoは、第2流体流出路68から回転体60の外周面に形成された連通溝76を介して保持部61の第2流体流出口72へ排出される。
【0142】
図11(a)に示すように、低圧海水Liは、保持部61に形成された第2流体流入口73から、回転体60の外周面に形成された連通溝77を介して第2流体流入路69に案内される。
【0143】
図11(b)に示すように、低圧濃縮海水Loは、第1流体流出路70から回転体60の外周面に形成された連通溝78を介して保持部61の第1流体流出口74へ排出される。
【0144】
このように、各流体の流入配管、流出配管を保持部61に備えられた各流入口及び流出口に接続すればよいので、従来の装置のように回転体の両端側に夫々流体の流入路または流出路と接続する配管を設置する場合と比較して、配管設置作業の作業性が良好になる。また、各配管を保持部61側にまとめることができるので、配管を含めた設置スペースの省スペース化が図れる。さらに、配管を外すことなく、配管のない箇所からメンテナンスが可能となり、メンテナンス作業性が良くなる。
【0145】
さらに、本発明による圧力交換装置の別実施形態を説明する。図13に示すように、圧力交換装置120は、第1支持体80と、第2支持体81と、エンドカバー82、83と、各支持体80、81との間で回転可能に支持された回転体60と、回転体60の外周を保持する保持部61を備えている。
【0146】
尚、本実施形態による圧力交換装置は、図9に示した実施形態による圧力交換装置110と、第1支持体80と、第2支持体81と、エンドカバー82、83の形状が主に異なり、特に第2支持体81にも圧力伝達部を備える点で大きく異なる構成となっているが、回転体や保持部は、圧力交換装置110と同様の構成である。よって、回転体及び保持部には同一の符号を付して説明を省略する。
【0147】
第1支持体80には、その一端側から高圧濃縮海水Hiが流入し、圧力が交換された低圧濃縮海水Loが流出する第1流路86と、同じく一端側から低圧海水Liが流入し、圧力が交換された高圧海水Hoが流出する第2流路87とが第1支持体80の他端側の端面側で連通するように形成された圧力伝達部が設けられている。第1支持体80の他端側の端面には、シールを介してエンドカバー82が取り付けられている。尚、エンドカバー82と第1支持体80は一体に形成してもよい。
【0148】
第2支持体81は、第1支持体80と同一の構成となっている。つまり、その一端側から高圧濃縮海水Hiが流入し、圧力が交換された低圧濃縮海水Loが流出する第1流路86と、同じく一端側から低圧海水Liが流入し、圧力が交換された高圧海水Hoが流出する第2流路87とが第2支持体81の他端側の端面側で連通するように形成された圧力伝達部が設けられている。第2支持体81の他端側の端面には、シールを介してエンドカバー83が取り付けられている。尚、エンドカバー83と第2支持体81は一体に形成してもよい。
【0149】
第1支持体80と第2支持体81の夫々には、図3に示す実施形態と同様に、18組の圧力伝達部が回転体60の回転軸心周りに回転軸心を中心として放射状に配設されている。各第1流路86の断面積と第2流路87の断面積は等しくなるように形成され、かつ、回転体60に形成された各流入路及び流出路に対して同じ位相となる位置に配置されている。つまり、第1支持体80と第2支持体81の夫々に備えられる圧力伝達部の形状及び位置は回転体60に対して対称となるように構成されている。尚、第1流路86と第2流路87の断面の形状は、配管抵抗が少なくなるように円形や楕円形、丸みを帯びた多角形が好ましい。
【0150】
保持部61には、回転体60の回転軸心方向に沿って、第1流体流出口74と第1流体流入口71と第2流体流出口72と第2流体流入口73とが、図中左からこの順で配設されているが、これに限るものではない。
【0151】
高圧濃縮海水Hiが流入する第1流体流入口71と、高圧海水Hoが流出する第2流体流出口72とを、低圧濃縮海水Loが流出する第1流体流出口74と、低圧海水Liが流入する第2流体流入口73の間に配設することで、第1流体流入口71から第1支持体80の第1流路86と第2流路87の連通部までの距離と、第1流体流入口71から第2支持体81の第1流路86と第2流路87の連通部までの距離の差を小さくすることができる。
【0152】
つまり、第1流体流入口から第1支持体の第1流路と第2流路の連通部までの圧力損失と、第1流体流入口から第2支持体の第1流路と第2流路の連通部までの圧力損失の差を小さくすることができるので、第1流体流入口71から第1流体流入路67に流入した高圧濃縮海水Hiの第1支持体80の第1流路86側への流量と、第2支持体81の第1流路86側への流量の差を小さくすることができる点で好ましい。
【0153】
また、回転体60の軸心方向の中央部に、高圧である高圧濃縮海水Hiが流入する第1流体流入口71と高圧海水Hoが流出する第2流体流出口72が配設されているため、回転体60の軸心方向の一端部に第1流体流入口71と第2流体流出口72を配設する場合に比べて、回転体60に作用するトルクの軸方向におけるバランスがよいので回転体60の回転を円滑にすることができる。
【0154】
回転体60の外周面と保持部61の内周面には回転体60が回転できるように僅かな隙間が形成されているので、第1流体及び第2流体は該隙間に進入する。よって、高圧濃縮海水Hiが高圧海水Hoと混ざり、第2流体流出口72から逆浸透膜装置6へ再び供給されると、逆浸透膜装置6のろ過効率が低下するという問題がある。
【0155】
しかし、高圧濃縮海水Hiが流入する第1流体流入口71と、高圧海水Hoが流出する第2流体流出口72とを回転体60の回転軸心方向に沿って隣に配設しているので、前記隙間に侵入した高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoとは圧力差がない、または、少ないため混合する虞が少ない。
【0156】
また、高圧濃縮海水Hiが流入する第1流体流入口71と、低圧海水Liが流入する第2流体流入路73の間には、回転体60の回転軸心方向に沿って第2流体流出口72が隣に配設されているので、高圧濃縮海水Hiが第2流体流入路73側へ流入する虞が極めて少なく、低圧海水Liに高圧濃縮海水Hiが混合する虞が極めて少ない。
【0157】
尚、高圧濃縮海水Hiが流入する第1流体流入口71と、低圧濃縮海水Loが流出する第1流体流出口74とは回転体60の回転軸心方向に沿って隣に配設されているが、高圧濃縮海水Hiが前記隙間を介して第1流体流出口74側へ進入して低圧濃縮海水Loと混合されても、濃縮海水同士が混合されて圧力交換装置から排水されるだけであるので問題はない。
【0158】
このように、保持部61には、回転体60の回転軸心方向に沿って、第1流体流出口74と第1流体流入口71と第2流体流出口72と第2流体流入口73とをこの順で配設することで、ろ過効率が低下する虞を解決している。
【0159】
さらに、第1流体流入口71と、第2流体流出口72と、第2流体流入口73と、第1流体流出口74は、全てが保持部61に形成されているので、各流入口及び流出口に接続する配管を保持部61の周囲に配設すればよいため、配管を含めた設置スペースの省スペースが図れる。さらに、配管を外すことなく、配管のない箇所からメンテナンスが可能となり、メンテナンス作業性が良くなる。
【0160】
以下に、圧力変換装置120の具体的な圧力変換の様子について説明する。図10(a)に示す実施形態と同様に、高圧濃縮海水Hiは、保持部61に形成された第1流体流入口71から、回転体60の外周面に形成された連通溝75を介して第1流体流入路67に案内される。尚、連通溝75には、周方向に沿って複数の受圧面75aが形成され、該受圧面75aが高圧濃縮海水Hiの圧力が作用して回転体60を回転させる受圧部として機能する。
【0161】
第1流体流入路67に案内された高圧濃縮海水Hiは、第1流体流入路67に連通する第1支持体80と第2支持体81の夫々に形成された第1流路86に案内される。第1支持体80と第2支持体81の夫々の圧力伝達部では、第1流路86に流入した高圧濃縮海水Hiの圧力が、圧力伝達部内の海水に伝達されて高圧海水Hoとなり、高圧海水Hoが回転体60の第2流体流出路68に流入する。
【0162】
図10(b)に示す実施形態と同様に、高圧海水Hoは、第2流体流出路68から回転体60の外周面に形成された連通溝76を介して保持部61の第2流体流出口72へ排出される。
【0163】
図11(a)に示す実施形態と同様に、低圧海水Liは、保持部61に形成された第2流体流入口73から、回転体60の外周面に形成された連通溝77を介して第2流体流入路69に案内される。
【0164】
第2流体流入路69に案内された低圧海水Liは、第2流体流入路69に連通する第1支持体80と第2支持体81の夫々に形成された第2流路87に案内される。第1支持体80と第2支持体81の夫々の圧力伝達部では、第2流路87に流入した低圧海水Liが、圧力伝達部内の海水に圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水Loを回転体60の第1流体流出路70に押し出す。
【0165】
図11(b)に示す実施形態と同様に、第1流体流出路70に押し出された低圧濃縮海水Loは、第1流体流出路70から回転体60の外周面に形成された連通溝78を介して保持部61の第1流体流出口74へ排出される。
【0166】
以上のように、圧力交換装置120では、各支持体80、81とで挟持された保持部61とで区画される空間内で回転体60が回転することにより、第1支持体80と第2支持体81の夫々の第1流路86と第2流路87と連通する第1流体流入路67と第2流体流出路68及び第2流体流入路69と第1流体流出路70とが切り替わり、高圧濃縮海水Hiから高圧海水Hoへの圧力の伝達と低圧海水Liから低圧濃縮海水Loへの圧力の伝達が連続的に行われ、つまり、第1流体と第2流体の圧力交換処理が連続的に行われる。
【0167】
回転体60と第2支持体81との対向面間に形成された隙間に高圧濃縮海水Hi及び高圧海水Hoが進入して、該流体によって回転体60を第1支持体80に向けて押圧する力が働く。
【0168】
また、回転体60と第1支持体80との対向面間に形成された隙間に高圧濃縮海水Hi及び高圧海水Hoが進入して、該流体によって回転体60を第2支持体81に向けて押圧する力が働く。
【0169】
回転体60は、両端面の隙間に進入した流体により両側から略等しい力で押圧されて第1支持体80及び第2支持体81の間で回転軸心方向でバランスするため、第1支持体80または第2支持体81と常時摺動しながら回転するようなことがなく、円滑に回転できるようになる。その結果、第1支持体80及び第2支持体81及び回転体60の磨耗が低減できるので、高価な耐磨耗性材料を用いなくとも耐久性を向上させることができる。
【0170】
さらに、第1支持体80及び第2支持体81と回転体60との間で常時摺動しないため回転抵抗が低減するので、処理流量を稼ぐために回転体を大径に形成し、第1流体流入路67や第2流体流入路70の断面積を大きくした場合でも、該回転体60を回転駆動するために要するエネルギーの損失が低く抑えられるようになる。
【0171】
前記隙間は、狭すぎると少しの圧力変動による軸心方向への動きにより大きな摺動抵抗が発生し、広すぎると流体の漏れ量が多くなり圧力の交換効率が低下するため、好ましくは1〜100μm程度に設定される。
【0172】
回転体60の回転によって第1流体流入路67と、第2流体流出路68と、第2流体流入路69と、第1流体流出路70の何れとも連通しないときは第1支持体80及び第2支持体81の第1流路86、第2流路87では、第1流体と第2流体との間で圧力の交換が行われない。
【0173】
第1流路86及び第2流路87内では、濃縮海水と海水が混在することになるが、各々の流体は塩分濃度差があるため境界部分は拡散によりある一定量が常に混ざった領域となるだけで、該領域は、ピストンのような役目をしながら第1流路86及び第2流路87の内部で揺動することになる。
【0174】
このように構成することで、圧力交換装置120は、第1支持体80の圧力伝達部と第2支持体81の圧力伝達部の両方で圧力伝達ができるため、圧力交換装置10のように、第1支持体20のみに圧力伝達部が形成されている場合に比べて容量が増加するので、単位時間あたりの処理流量を増加させることができる。
【0175】
図14には、さらなる別実施形態による圧力交換装置130が示されている。尚、図13に示した圧力交換装置120の各部の構成と対応する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0176】
圧力交換装置130は、第1支持体88と、第2支持体89と、各支持体88、89との間で回転可能に支持された回転体60を備え、第1支持体88と第2支持体89は、夫々の対向面側に回転体60を収容する空間部が形成され、第1支持体88と第2支持体89を螺着したときに、空間で回転体60を回転可能に保持する。このように構成することで、圧力交換装置130を構成する部品点数を低減でき、第1支持体88と第2支持体89を同形状に構成すると量産効果によってコストダウンが図れる。
【0177】
このように構成することで、圧力交換装置130は、第1支持体88の圧力伝達部と第2支持体89の圧力伝達部の両方で圧力伝達ができるため、圧力交換装置10のように、第1支持体20のみに圧力伝達部が形成されている場合に比べて容量が増加するので、単位時間あたりの処理流量を増加させることができる。
【0178】
図15には、さらなる別実施形態による圧力交換装置140が示されている。尚、図2に示した圧力交換装置10及び図13に示した圧力交換装置120の各部の構成と対応する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0179】
第1支持体80と、第2支持体81と、エンドカバー82、83と、各支持体80、81との間で回転可能に支持された回転体40と、回転体40の外周を保持する保持部11を備えている。
【0180】
第1支持体80の中央には、図2に示す圧力交換装置10と同様に、エンドカバー82に形成された第2流体流入口27から流入した低圧海水Liを回転体40に導く連通路26が形成されている。第2支持体81の中央には、図13に示す圧力交換装置120と異なり、回転体40から流出する低圧濃縮海水Loをエンドカバー83に形成された第1流体流出口73まで導く連通路77が形成されている。
【0181】
図2に示す圧力交換装置10と異なり、第1流体流出路44a、44bは、回転体40の第2支持体81側の端面から第1支持体80側へ離隔した位置に形成された連通路により中央部44cに連通するように構成されている。
【0182】
このように構成することで、圧力交換装置140は、第1支持体80の圧力伝達部と第2支持体81の圧力伝達部の両方で圧力伝達ができるため、圧力交換装置10のように、第1支持体20のみに圧力伝達部が形成されている場合に比べて容量が増加するので、単位時間あたりの処理流量を増加させることができる。
【0183】
上述の何れの実施形態でも、第1流体流入路に濃縮流体である高圧濃縮海水を流入させ、第2流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させる構成について説明したが、第1流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させ、第2流体流入路に高圧濃縮海水を流入させてもよい。
【0184】
例えば、図2に示す、高圧濃縮海水Hiを第2流体流入口27から流入させて圧力伝達部23内で圧力交換し、第1流体流出口54から高圧海水Hoを排出させ、低圧海水Liを第1流体流入口12から流入させて圧力伝達部23内で圧力交換し、第2流体流出口13から低圧濃縮海水Loを排出させる。
【0185】
上述の何れの実施形態でも、第1支持体、保持部、エンドカバーを別に構成したが、保持部、または、エンドカバー、さらには、保持部とエンドカバーを第1支持体と一体に構成してもよい。
【0186】
上述の何れの実施形態でも、第2支持体、保持部、押圧部材を別に構成したが、押圧部材、または、保持部、さらには押圧部材と保持部とを第2支持体と一体に構成してもよい。また、構成によっては、第1支持体と第2支持体との間にスペーサを設け、第1支持体及び第2支持体の間隔を調整することで、回転体の回転軸心方向の両端面と第1及び第2支持体との間に形成される隙間を調整することもできる。
【0187】
上述の何れの実施形態でも、圧力伝達部の連通部は、第1流路と第2流路の回転体から最も離れた支持体の一端部で説明したが、一端部から回転体側(他端)によった一端側であってもよい。このように構成することで、一端側に壁が形成され、支持体の強度が向上する。
【0188】
以上説明した圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法の具体的構成は実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0189】
6:逆浸透膜装置
10:圧力交換装置
11:保持部
12:第1流体流入口
13:第2流体流出口
20:第1支持体
21:第1流路
22:第2流路
23:圧力伝達部
25:エンドカバー
26:連通路
27:第2流体流入口
30:第2支持体
31:連通路
32:駆動軸
40:回転体
41a、41b:第1流体流入路
41c:連通溝
42a、42b:第2流体流出路
42c:連通溝
43a、43b:第2流体流入路
44a、44b:第1流体流出路
46:ボルト(受圧部)
50:押圧部材
54:第1流体流出口
Hi:高圧濃縮海水(濃縮流体)
Li:低圧海水(被濃縮流体)
Ho:高圧海水(被濃縮流体)
Lo:低圧濃縮海水(濃縮流体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、
一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と、一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが、他端側で連通するように形成された圧力伝達部を備えた第1支持体と、
第1流体を第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路から案内する第2流体流出路、及び、第2流体を第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路から案内する第1流体流出路とが、回転軸心周りに形成された回転体と、
前記回転体を第1支持体との間で回転可能に支持する第2支持体と、
を備えている圧力交換装置。
【請求項2】
第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、
一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と、一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが、他端側で連通するように形成された圧力伝達部を備えた第1支持体と、
一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と、一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが、他端側で連通するように形成された圧力伝達部を備えた第2支持体と、
第1流体を前記第1支持体と第2支持体の夫々に形成された第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第1支持体と第2支持体の夫々に形成された第2流路から案内する第2流体流出路と、第2流体を前記第1支持体と第2支持体の夫々に形成された第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を前記第1支持体と第2支持体の夫々に形成された第1流路から案内する第1流体流出路とが、回転軸心周りに形成された回転体とを備え、
前記回転体は前記第1支持体と前記第2支持体との間で回転可能に支持されている圧力交換装置。
【請求項3】
前記第1支持体と前記第2支持体の夫々に備えられる圧力伝達部の形状及び位置が前記回転体に対して対称に構成されている請求項2記載の圧力交換装置。
【請求項4】
前記回転体は、第1及び第2支持体とで区画される空間に収容されるとともに、少なくとも第1流体または第2流体のうち何れかの流体の流体流入路及び流体流出路が前記回転体を貫通するように形成され、前記回転体の回転軸心方向の両端面と第1及び第2支持体との間に各流体が進入する隙間が形成されている請求項1から3の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項5】
少なくとも一方の支持体を押圧して、第1及び第2支持体の間隔を調整する押圧機構を備えている請求項4記載の圧力交換装置。
【請求項6】
回転体外周を保持する保持部を有し、前記保持部は、少なくとも前記第1流体流入路に連通する第1流体流入口と、前記第2流体流出路に連通する第2流体流出口とを備えている請求項1から5の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項7】
前記保持部は、さらに前記第2流体流入路に連通する第2流体流入口と、前記第1流体流出路に連通する第1流体流出口を備え、前記回転体の回転軸心方向に沿って、前記第1流体流出口と前記第2流体流入口との間に前記第1流体流入口と第2流体流出口とが配設されている請求項6記載の圧力交換装置。
【請求項8】
前記第1流体流入口は、第1流体流入口から第1流体流入路に流入する第1流体のエネルギーにより前記回転体が回転するように、前記回転体の接線方向に平行な方向に沿って形成され、
第1流路に流入する第1流体の圧力が、第2流路に流入する第2流体の圧力より高い圧力に設定されている請求項6または7記載の圧力交換装置。
【請求項9】
前記回転体の円周方向に前記第1流体流入口と第1流体流入路を連通する連通溝が形成され、前記連通溝に前記第1流体の圧力を受けて前記回転体を回転させる受圧部が形成されている請求項8記載の圧力交換装置。
【請求項10】
前記第1支持体に、複数組の圧力伝達部が放射状に配設されている請求項1から9の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項11】
隣接する複数の圧力伝達部が、前記回転体の回転に伴って、少なくとも1つの第1流体流入路と第2流体流出路、または、1つの第2流体流入路と第1流体流出路と同時に連通する請求項10記載の圧力交換装置。
【請求項12】
前記複数の圧力伝達部のうち、前記回転体の回転に伴って、第1流体流入路と第2流体流出路、及び、第1流体流出路と第2流体流入路の何れにも連通しない圧力伝達部が存在する請求項10または11記載の圧力交換装置。
【請求項13】
前記保持部に、複数組の第1流体流入口と第2流体流出口が回転軸心周りに点対称に配置されている請求項6から12の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項14】
第1流路の断面積と第2流路の断面積が等しくなるように形成されている請求項1から13の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項15】
前記回転体を外部動力で回転させる駆動軸が前記回転体に連結されている請求項1から14の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項16】
前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である請求項1から15の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項17】
請求項9記載の圧力交換装置の性能調整方法であって、
前記保持部の第1流体流入口の配置、角度、または回転体の受圧部の形状を変更することで、処理流量を調整する圧力変換装置の性能調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−166184(P2012−166184A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71391(P2011−71391)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】