圧力交換装置
【課題】処理流量を減らすことなく、さらなるコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提供する。
【解決手段】第1流体が流入及び流出する第1流路41と第2流体が流入及び流出する第2流路42とが回転軸心方向に貫通するように軸心周りに配設された回転体40と、第1流体を第1流路に案内する第1流体流入路21と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路から案内する第2流体流出路22と、第2流体を第2流路に案内する第2流体流入路23と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路から案内する第1流体流出路24とが、厚み方向に形成された第1側方部材20と、第1流路と第2流路を連通して第1流体と第2流体との間で圧力を交換する連通部31,33が形成された第2側方部材30とを備え、第1側方部材と第2側方部材との間で回転体が回転可能に挟持されている。
【解決手段】第1流体が流入及び流出する第1流路41と第2流体が流入及び流出する第2流路42とが回転軸心方向に貫通するように軸心周りに配設された回転体40と、第1流体を第1流路に案内する第1流体流入路21と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路から案内する第2流体流出路22と、第2流体を第2流路に案内する第2流体流入路23と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路から案内する第1流体流出路24とが、厚み方向に形成された第1側方部材20と、第1流路と第2流路を連通して第1流体と第2流体との間で圧力を交換する連通部31,33が形成された第2側方部材30とを備え、第1側方部材と第2側方部材との間で回転体が回転可能に挟持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜装置を用いる海水淡水化施設では、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体である高圧濃縮海水がもつ余剰圧力を、逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である低圧海水の昇圧に利用する圧力交換装置が設けられている。
【0003】
図22に示すように、特許文献1には、管状の圧力伝達部が回転軸心周りに複数本配設されたロータ80を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0004】
該圧力交換装置は、ロータ80の回転に伴って、高圧入口側ポート82へ供給される高圧濃縮海水と低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水とを圧力伝達部で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を、高圧出口側ポート83から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート84から排水するように構成されている。
【0005】
図23に示すように、特許文献2には、一対の回転板91、92と当該回転板91、92を連接する軸93とで構成される回転体90を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0006】
一方の回転板91には、低圧入口側ポート95に供給された低圧海水を圧力伝達部96に案内する流路91aと、圧力伝達部96から排水される高圧海水を高圧出口側ポート97に案内する流路91bが形成されている。
【0007】
他方の回転板92には、高圧入口側ポート94に供給された高圧濃縮海水を圧力伝達部96に案内する流路92bと、圧力伝達部96から排水される低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98に案内する流路92aが形成されている。
【0008】
該圧力交換装置は、回転体90の回転に伴って、高圧入口側ポート94へ供給される高圧濃縮海水と、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水を、管状の圧力伝達部96内で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を高圧出口側ポート97から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98から排水するように構成されている。
【0009】
特許文献1に記載された圧力交換装置では、ロータ80に配設された管状の圧力伝達部の断面積に依存して圧力伝達される処理流量が定まる。従って処理流量を増やす場合には、圧力伝達部の配設本数を増加させるか、圧力伝達部の一本あたりの断面積を大きくする必要があり、何れの場合であってもロータ80が大きくなり、それに伴って圧力交換装置が大型になり重量も増大する。
【0010】
一般的にロータ80は、軽量化、高剛性、耐摩耗性、低摩擦係数等の条件が要求され、セラミックス等の高価な材料で形成されていることが多く、圧力交換装置を大型化するとそれに伴って材料費、製造費が嵩むという問題があった。
【0011】
さらに、そのような大型のロータ80を回転させるために要するトルクも増大し、小型のロータ80を回転させる場合よりも大きなエネルギーが必要になり、効率が低下するという問題もあった。このような理由によって、圧力交換装置1台あたりの処理流量を増加させるのは極めて困難であった。
【0012】
そのため、大量の海水を淡水化処理する大型の海水淡水化施設には、多数の圧力交換装置が設置されていた。しかし、圧力交換装置の設置台数が増加すると、各圧力交換装置を接続する配管の施工及び管理が煩雑になるという問題があった。
【0013】
特許文献2に記載された圧力交換装置では、一方の回転板91に形成された流路91bと他方の回転板92に形成された流路92bの夫々が、回転体内部で軸心方向に沿った流路に円周方向に形成された流路が連通するように構成されているため、回転板91、92に流路を形成するための厚みが必要となる。そのため、回転板91、92が大型になり材料費や加工費が嵩むという問題があった。
【0014】
さらに、回転板91、92の大型化によって重量が増すと、回転体90の回転時に軸部93に作用するねじりや曲げに対する応力が大きくなり、その変形や破損を防止するために軸部93を太くする必要があるばかりでなく、回転のために要するエネルギーが増加し、効率が低下するという問題もあった。
【0015】
そこで、本願出願人は、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提案している(特願2011−003650号)。
【0016】
図24(a),(b)に示すように、当該圧力交換装置10は、一端側から第1流体が流入または流出する第1流路41と前記一端側から第2流体が流入または流出する第2流路42とが連通するように形成された圧力伝達部を、回転軸心周りに配設した回転体40を備えている。
【0017】
さらに、第1流体を第1流路41に案内する第1流体流入路21と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路42から案内する第2流体流出路22、及び、第2流体を第2流路42に案内する第2流体流入路23と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路41から案内する第1流体流出路24とが、厚み方向に形成された第1側方部材20と、回転体40を第1側方部材20との間で保持部材11を介して回転可能に挟持する第2側方部材30とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009180903号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第200710056401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
図24(a),(b)に示す圧力交換装置10によれば、第1流路41と第2流路42と両流路の連通部とで圧力伝達部を構成することにより、回転体40の一端側から当該圧力伝達部へ第1流体または第2流体を流入させて、第1流体と第2流体との間で圧力を交換し、当該一端側から第2流体または第1流体を流出させることができる。
【0020】
従って、特許文献1に記載されたような直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に回転体の軸心方向の長さが短くなり、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができ、また、圧力交換処理の流量を増加させる必要がある場合でも、回転体の軸心方向の長さが短くなることで、装置の極端な大型化を回避することができる。
【0021】
しかし、高圧流体が連通部を介して第1流路41と第2流路42間を通流する際に、回転体40の周方向に隣接して形成される第1流路41間の隔壁41wまたは第2流路42間の隔壁42wに大きな応力が作用して隔壁41w,42wの破損を招く虞がある。そのために、当該隔壁41w,42wを厚肉に形成して十分な強度を確保すると、処理流量がある程度制限され、或いはコンパクト化がある程度制限されることになる。
【0022】
本発明の目的は、処理流量を減らすことなく、さらなるコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の目的を達成するため、本発明による圧力交換装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と前記一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが回転軸心方向に貫通するように前記回転軸心周りに配設された回転体と、第1流体を前記第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第2流路から案内する第2流体流出路と、第2流体を前記第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を前記第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、前記第1流路と前記第2流路を連通して第1流体と第2流体との間で圧力を交換する連通部が形成された第2側方部材と、を備え、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間で前記回転体が回転可能に挟持されている点にある。
【0024】
上述の構成によれば、回転体の一端側から第1流路に流入した第1流体と第2流路に流入した第2流体は、回転体の回転に伴って回転体の他端側に備えた第2側方部材に形成された連通部を介して接触し、圧力交換された後に回転体の一端側から流出する。
【0025】
よって、特許文献1に記載されたような直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に、回転体の軸心方向の長さを短く構成することができ、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができるようになる。また、圧力交換の処理量を増加させるために、回転体に形成される流路断面積を大きくしても、回転体の軸心方向の長さを短くすることができるので、装置の極端な大型化を回避することができる。
【0026】
また、第1流体流入路及び第1流体流出路、第2流体流入路及び第2流体流出路が第1側方部材にのみ形成されているため、各流体の流入路または流出路と接続する各配管を第1側方部材側に纏めて設置すればよい。
【0027】
よって、回転体に形成された流体流入路または流体流出路と接続する各配管を回転体の両端側に設置する必要がある従来の装置と比較して、配管を含めた設置スペースがコンパクトになり、各配管の設置作業やメンテナンス作業等の作業性も良好になる。
【0028】
さらに、第1流路と第2流路の間に形成される流路壁が回転体の軸方向に全長に亘って存在するので、回転体の周方向に隣接形成された第1流路間の隔壁及び第2流路間の隔壁にかかる圧力を、第1流路と第2流路の間の流路壁でも支えることができる。
【0029】
よって、本願発明者らの先の出願(特願2011−003650号)に示された圧力伝達装置のように、回転体に形成された連通部を介して第1流路と第2流路間を高圧流体が通流する際に、第1流路間の隔壁または第2流路間の隔壁に大きな応力が作用して隔壁の破損を招くような虞がない。従って、第1流路間の隔壁及び第2流路間の隔壁を厚肉に形成しなくても、十分な強度を確保でき、処理流量を減らすことなく、さらなるコンパクト化、低コスト化を図ることができる。
【0030】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間に前記回転体を覆う保持部材が設けられ、前記回転体と前記第1側方部材及び前記第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されている点にある。
【0031】
上述の構成によれば、第1側方部材及び第2側方部材と保持部材で仕切られる空間内で回転体が回転することで、第1流体流入路から第1流路に流入した第1流体から圧力伝達された第2流体が第2流路から第2流体流出路へ流出し、第2流体流入路から第2流路に流入した第2流体から圧力伝達された第1流体が第1流路から第1流体流出路へ流出する圧力交換処理が連続的に行なわれる。
【0032】
その際、回転体と第1側方部材の隙間に進入した第1流体または第2流体によって、回転体が第2側方部材に向けて押圧され、回転体と第2側方部材の隙間に進入した第1流体または第2流体によって、回転体が第1側方部材に向けて押圧される。その結果、回転体は、軸心方向に沿って両側から略等しい力で押圧されるようになり、第1側方部材及び第2側方部材の何れか一方向に片寄ることなく圧力バランスが取られる。
【0033】
しかも、各隙間に進入した流体が潤滑剤として機能し、回転体が第1側方部材または第2側方部材と摺動すること無く、安定して円滑に回転するようになる。さらに、回転体と保持部材との隙間に進入した流体が潤滑剤として機能し、回転体が保持部材の内周面と摺動することも回避でき、安定して円滑に回転するようになる。
【0034】
その結果、第1側方部材、第2側方部材、及び保持部材と、回転体との磨耗が低減でき、高価な耐磨耗性材料を用いなくとも耐久性を向上させることができるようになる。さらに、処理流量を増大するために回転体を大径に形成し、第1流路及び第2流路の断面積を大きく構成した場合でも、回転体は安定して円滑に回転するため、回転体を回転駆動するために要するエネルギーが低く抑えられるようになる。尚、各隙間は、狭過ぎると大きな摺動抵抗が発生し、広過ぎると流体の漏れ量が多くなり圧力の交換効率が低下するため、好ましくは1〜100μm程度に設定される。
【0035】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記第1側方部材または前記第2側方部材の少なくとも一方を押圧して、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間隔を調整する押圧機構を備えている点にある。
【0036】
上述の構成によれば、仮に第1側方部材または第2側方部材と回転体との摺動に起因する磨耗で隙間が大きくなり、流体の隙間への漏れ量が増して圧力の交換効率が低下するような場合であっても、押圧機構により第1または第2側方部材の少なくとも一方を押圧することによって、第1及び第2側方部材の間隔が調整できるようになる。これにより、部品交換等の規模の大きな分解を伴うメンテナンスを行なわなくても長期間安定して稼動させることができるようになる。
【0037】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三特徴構成に加えて、前記押圧機構は、前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との対向面とは異なる端面側に夫々配置された第1エンドカバー及び第2エンドカバーと、前記第1エンドカバーと前記第2エンドカバーとを締結する連結部材とで構成されている点にある。
【0038】
上述の構成によれば、第1及び第2側方部材の一対の端面のうち、回転体と対向する端面とは反対側の端面側に、第1エンドカバー及び第2エンドカバーがそれぞれ配置され、第1及び第2側方部材と回転体との隙間に進入した流体によって第1及び第2側方部材にかかる圧力が各エンドカバーで受止められる。そして、第1エンドカバーと第2エンドカバーを締結する連結部材の締結の程度を調整すれば、回転体と第1及び第2側方部材との夫々の隙間を好ましい値に調整することができ、回転体の円滑な回転を維持することができるようになる。
【0039】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第四特徴構成に加えて、少なくとも前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間と、第1流体または第2流体を前記第1閉空間に導くように、前記第1エンドカバーに形成された第1連通路と、少なくとも前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画される第2閉空間と、第1流体または第2流体を前記第2閉空間に導くように、前記第2側方部材に形成された第2連通路と、を備えている点にある。
【0040】
回転体と第1側方部材との隙間に進入した第1流体または第2流体によって、第1側方部材には回転体と離隔する外側方向へ圧力が作用し、特に第1閉空間に面する第1側方部材には大きな圧力が作用する。しかし、第1エンドカバーに形成された第1連通路から第1閉空間に第1流体または第2流体が導かれるので、第1閉空間に面する第1側方部材の両面での圧力バランスが保たれる。その結果、第1側方部材を薄肉化しても流体の圧力によって第1側方部材が回転軸心方向に歪むようなことが回避され、回転体の円滑な回転を維持することができるようになる。
【0041】
同様に、回転体と第2側方部材との隙間に進入した第1流体または第2流体によって、第2側方部材には回転体と離隔する外側方向へ圧力が作用し、特に第2閉空間に面する第2側方部材には大きな圧力が作用する。しかし、第2エンドカバーに形成された第2連通路から第2閉空間に第1流体または第2流体が導かれるので、第2閉空間に面する第2側方部材の両面での圧力バランスが保たれる。その結果、第2側方部材を薄肉化しても流体の圧力によって第2側方部材が回転軸心方向に歪むようなことが回避され、回転体の円滑な回転を維持することができるようになる。
【0042】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第五特徴構成に加えて、前記保持部材を収容する筒状のケーシングを備え、前記第1側方部材及び前記第2側方部材と、前記保持部材の外周面と、前記ケーシングの内周面とで区画された外周閉空間と、前記回転体と前記保持部材との隙間と前記外周閉空間を連通するように、前記保持部材に形成された第3連通路と、を備えている点にある。
【0043】
上述の構成によれば、回転体と第1側方部材及び第2側方部材との隙間を経由して、回転体の外周面と保持部材の内周面との隙間に進入した流体が、保持部材に形成された第3連通路を介して、保持部材の外周面とケーシングの内周面との外周閉空間に進入するようになる。
【0044】
外周閉空間に導かれた流体の圧力と、回転体の外周面と保持部材の内周面との隙間に作用する流体の圧力とがバランスするので、保持部材を薄肉化しても保持部材が径方向に歪むようなことが回避される。その結果、運転中に回転体と保持部材との隙間が変動することなく好ましい値に保持されるので、回転体の円滑な回転を維持することができるようになる。
【0045】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第五または第六特徴構成に加えて、前記第1側方部材と前記第2側方部材に両端を支持された支軸を備え、前記支軸に貫通され、前記回転体の両端部で前記回転体を回転自在に軸支する軸部が、前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との夫々の対向面側へ突出するように、前記第1側方部材及び前記第2側方部材に一体に形成されている点にある。
【0046】
第1側方部材及び第2側方部材に、回転体側に突出するように形成された軸部によって回転体が回転自在に軸支され、さらに軸部を貫通する支軸によって回転体が第1側方部材と第2側方部材の間で回転自在に挟持された状態が維持される。
【0047】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、第1流路の断面積と第2流路の断面積が略等しくなるように形成されている点にある。
【0048】
上述の構成によれば、第1流路の断面積と第2流路の断面積が略等しくなるように形成されているので、流体が第1流路と第2流路を通流するときの圧力損失が低減され、効率の良い圧力伝達が可能となる。
【0049】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記第1側方部材は、第1流路に流入する若しくは第1流路から流出する第1流体のエネルギーまたは第2流路に流入する若しくは第2流路から流出する第2流体のエネルギーにより前記回転体にトルクを付与するトルク付与機構を備えている点にある。
【0050】
上述の構成によれば、第1側方部材に備えたトルク付与機構によって、第1流路に流入する若しくは第1流路から流出する第1流体のエネルギー、または第2流路に流入する若しくは第2流路から流出する第2流体のエネルギーが、回転体を回転させるためのトルクに変換される。従って、外部動力を付与しなくても、圧力変換対象となる流体のエネルギーによって回転体を回転させることができるようになる。そして、回転体の回転に伴って、圧力伝達部への第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構も不要になる。
【0051】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記回転体と前記第1側方部材及び前記第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されるとともに、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間に前記回転体を覆う保持部材が設けられ、前記保持部材の内周面と前記回転体の外周面とで前記回転体を回転可能に支持する軸受部が構成されている点にある。
【0052】
第1側方部材及び第2側方部材に、回転体の両端から回転軸心上で支持する軸部を形成すると、左右の軸部の寸法精度が得られない場合に、回転体の軸心と回転軸に傾きが発生して円滑な回転が損なわれる虞がある。しかし、上述の軸受部によれば、回転軸心に直交する回転体の外周断面及び保持部材の内周断面が円形に形成されているため、回転体の軸心と回転軸が傾くようなことが無く、回転体は回転体の外周面が保持部材の内周面で支持されながら滑らかに回転するようになる。このとき、回転体と第1側方部材及び第2側方部材との間に形成された隙間から進入した各流体が、保持部材の内周面と回転体の外周面との隙間に進入して潤滑剤として機能し、保持部材の内周面と回転体の外周面との摺動が抑制される。
【0053】
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第十特徴構成に加えて、前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との対向面とは異なる端面側に第1エンドカバー及び第2エンドカバーを配置し、前記回転体の中心部に前記回転軸心に沿って貫通形成された挿通部に支軸が挿通され、前記支軸の各端部が前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間、及び前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画される第2閉空間にそれぞれ設けられ、前記第1閉空間と前記挿通部を連通する第4連通路、及び前記第2閉空間と前記挿通部を連通する第5連通路が形成されている点にある。
【0054】
回転体と第1側方部材の隙間を経由して挿通部に進入した流体が、第4連通路を経由して第1閉空間に流入するとともに、回転体と第2側方部材の隙間を経由して挿通部に進入した流体が、第5連通路を経由して第2閉空間に流入し、第1閉空間と第2閉空間と挿通部とが略同じ圧力に維持される。従って、第1側方部材のうち第1閉空間を区画する部位で撓みが生じないように両面の圧力バランスが図られ、第2側方部材のうち第2閉空間を区画する部位で撓みが生じないように両面の圧力バランスが図られる。このような構成を採用すれば、第1側方部材及び第2側方部材を薄肉化することができ、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができる。
【0055】
同第十二の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の第十または第十一特徴構成に加えて、前記第1側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力を受ける第1圧力領域と、前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力を受ける第2圧力領域とが形成され、前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との対向部のうち、前記第1流体流入路の開口部周辺領域であって前記第1圧力領域に略対応する領域に第1調圧領域が区画され、前記第2流体流入路の開口部周辺領域であって前記第2圧力領域に略対応する領域に第2調圧領域が区画されている点にある。
【0056】
回転体の回転に伴って、第1側方部材のうち回転体に対向する端面には、第1流体流入路から進入した第1流体の圧力を受ける第1圧力領域と、前記第2流体流入路から進入した第2流体の圧力を受ける第2圧力領域とが形成される。このとき、第1圧力領域と第2圧力領域に付与される流体の圧力が異なるため、第1側方部材が軸方向に撓み、圧力交換効率が低下する虞がある。しかし、第1エンドカバーと第1側方部材との対向部に区画形成された第1調圧領域に第1流体の圧力が付与されるとともに第2調圧領域に第2流体の圧力が付与されるので、第1側方部材を挟んで第1圧力領域と第1調圧領域で圧力バランスが図られ、第1側方部材を挟んで第2圧力領域と第2調圧領域で圧力バランスが図られるようになり、第1側方部材の軸方向への撓みの発生が抑制されるようになる。
【0057】
同第十三の特徴構成は、同請求項13に記載した通り、上述の第十二特徴構成に加えて、前記第1側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第3圧力領域と、第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第4圧力領域とが形成され、前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との対向部のうち、前記第2流体流出路の開口部周辺領域であって前記第3圧力領域に略対応する領域に第3調圧領域が区画され、前記第1流体流出路の開口部周辺領域であって前記第4圧力領域に略対応する領域に第4調圧領域が区画されている点にある。
【0058】
回転体の回転に伴って、第1側方部材のうち回転体に対向する端面には、圧力交換後の第2流体の圧力を受ける第3圧力領域と、圧力交換後の第1流体の圧力を受ける第4圧力領域とが形成される。このとき、第3圧力領域と第4圧力領域に付与される流体の圧力が異なるため、第1側方部材が軸方向に撓み、圧力交換効率が低下する虞がある。しかし、第1エンドカバーと第1側方部材との対向部に区画形成された第3調圧領域に第2流体の圧力が付与されるとともに第4調圧領域に第1流体の圧力が付与されるので、第1側方部材を挟んで第3圧力領域と第3調圧領域で圧力バランスが図られ、第1側方部材を挟んで第4圧力領域と第4調圧領域で圧力バランスが図られるようになり、第1側方部材の軸方向への撓みの発生が抑制されるようになる。
【0059】
同第十四の特徴構成は、同請求項14に記載した通り、上述の第十二特徴構成に加えて、前記第2側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力及び第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第5圧力領域と、前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力及び第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第6圧力領域と、前記第5圧力領域と第6圧力領域の間に前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力と前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力との間の中間圧力を受ける第7圧力領域とが形成され、前記第2エンドカバーと前記第2側方部材との対向部のうち、前記第5圧力領域に略対応する領域に第5調圧領域が区画され、前記第6圧力領域に略対応する領域に第6調圧領域が区画され、前記第7圧力領域に略対応する領域に第7調圧領域が区画されている点にある。
【0060】
回転体の回転に伴って、第2側方部材のうち回転体に対向する端面には、第1流体流入路から供給された第1流体の圧力及び第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第5圧力領域と、第2流体流入路から供給された第2流体の圧力及び第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第6圧力領域と、第5圧力領域と第6圧力領域の間に第1流体流入路から供給された第1流体の圧力と第2流体流入路から供給された第2流体の圧力との間の中間圧力を受ける第7圧力領域とが形成される。このとき、第5圧力領域と第6圧力領域に付与される流体の圧力が異なるため、第2側方部材が軸方向に撓み、圧力交換効率が低下する虞がある。しかし、第2エンドカバーと第2側方部材との対向部に各圧力領域と対応するように区画形成された第5調圧領域、第6調圧領域及び第7調圧領域にそれぞれ付与される圧力によって、各圧力領域と調圧領域のバランスが図られるようになり、第2側方部材の軸方向への撓みの発生が抑制されるようになる。
【0061】
同第十五の特徴構成は、同請求項15に記載した通り、上述の第十から第十四の何れかの特徴構成に加えて、前記連通部が前記第2側方部材の厚み方向に貫通形成され、前記第2エンドカバーを通して前記回転体が目視できるように、前記第2エンドカバーの一部が光透過部材で構成されている点にある。
【0062】
圧力交換装置の試運転時、点検時、または運転時に、光透過部材で構成された第2エンドカバーを通して、第2側方部材の厚み方向に貫通形成された連通部を目視すると、回転体に形成された第1流路等の流路壁の動きによって回転体が回転しているか否かを極めて容易に確認することができるようになる。
【0063】
同第十六の特徴構成は、同請求項16に記載した通り、上述の第一から第十五の何れかの特徴構成に加えて、前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である点にある。
【0064】
上述の構成によれば、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体の圧力により逆浸透膜装置に供給される被濃縮流体を昇圧することができるので、逆浸透膜装置からの高圧濃縮流体の余剰圧力を捨てることなく有効なエネルギーとして利用することができる。
【発明の効果】
【0065】
以上説明した通り、本発明によれば、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】海水淡水化施設の概略フロー図
【図2】第1の実施形態を示し、圧力交換装置を説明する断面図
【図3】(a)は回転体の正面図、(b)は同断面図、(c)は同背面図
【図4】(a)は第1側方部材の正面図、(b)は同断面概略図、(c)は同背面図
【図5】(a)は第2側方部材の正面図、(b)は図5(a)のE−E線断面図、(c)は同背面図
【図6】(a)は図4(c)に示す第1流体流入路のA−A線断面図、(b)は図4(c)に示す第2流体流出路のB−B線断面図、(c)は図4(c)に示す第2流体流入路のC−C線断面図、(d)は図4(c)に示す第1流体流出路のD−D線断面図
【図7】回転体に形成された各流路と第1側方部材に形成された各流入路及び各流出路の位置を示す説明図
【図8】(a)は封止板の正面図、(b)は同断面概略図、(c)は同背面図
【図9】第2の実施形態を示し、圧力交換装置を説明する断面図
【図10】(a)は圧力交換装置の正面図、(b)は同背面図
【図11】(a)は回転体の正面図、(b)は同断面図
【図12】(a)は第1封止板の正面図、(b)は図12(c)に示すE−E線断面図、(c)は同背面図
【図13】(a)は第1側方部材の正面図、(b)は同断面図、(c)は同背面図
【図14】(a)は第1ガスケットの説明図、(b)は第2ガスケットの説明図、(c)は図14(a)に示すF−F線端面図
【図15】(a)は第2側方部材の正面図、(b)は図15(a)に示すG−G線断面図、(c)は同背面図
【図16】(a)は第2封止板の正面図、(b)は図16(a)に示すH−H線断面図
【図17】(a)は第3の実施形態を示し、圧力交換装置の正面図、(b)は同側断面図
【図18】(a)は第1側方部材の正面図、(b)は図18(a)のI−I線断面図、(c)は同背面図
【図19】(a)は第2側方部材の正面図、(b)は図19(a)のJ−J線断面図、(c)は同背面図
【図20】(a)は第1エンドカバーの正面図、(b)は図20(a)のK−K線断面図、(c)は同背面図
【図21】(a)は第2エンドカバーの正面図、(b)は図21(a)のL−L線断面図、(c)は同背面図
【図22】従来の圧力交換装置の説明図
【図23】従来の圧力交換装置の説明図
【図24】(a)は圧力交換装置の説明図、(b)は回転体の背面図
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下に、本発明による圧力交換装置の好ましい実施形態を説明する。
図1に示すように、海水淡水化施設は、海水を淡水化する施設であって、前処理装置1と、ろ過海水槽2と、供給ポンプ3と、保安フィルター4と、昇圧ポンプ5と、逆浸透膜装置6等を備えている。
【0068】
前処理装置1で夾雑物が取り除かれた海水は、ろ過水槽2に貯留され、供給ポンプ3で保安フィルター4に供給され、そこで海水に含まれる微細な異物が除去される。後段に設置された逆浸透膜装置6の逆浸透膜の詰まりを防止するためである。その後、海水は、昇圧ポンプ5によって浸透圧以上の所定の圧力に昇圧されて逆浸透膜装置6に供給される。
【0069】
逆浸透膜装置6に供給された高圧の海水は、逆浸透膜でろ過されることにより、各種塩類が除去されて淡水となる。こうして得られた淡水が飲料用水や工業用水等として利用される。
【0070】
逆浸透膜装置6は、逆浸透膜の一方側の海水に圧力をかけることにより、逆浸透膜の他方側に海水中の各種塩類が除去された淡水を染み出させる装置であり、海水をろ過するために、海水を浸透圧以上の所定の圧力に昇圧する必要がある。
【0071】
逆浸透膜装置6に供給された海水の全てが淡水化されるのではなく、例えば、逆浸透膜装置6に供給される海水のうち40%が淡水化されて取り出され、残りの60%は淡水化されることなく逆浸透膜装置6から排水される。この淡水化されなかった60%の濃縮海水は非常に高い圧力を保持している。
【0072】
そこで、逆浸透膜装置6から排水された非常に高い圧力の濃縮海水(以下「高圧濃縮海水Hi」と記す)の圧力を利用して逆浸透膜装置6に供給する海水を昇圧する圧力交換装置10を海水淡水化施設に備えて、海水淡水化施設全体のエネルギー効率の向上を図っている
【0073】
例えば、保安フィルター4から逆浸透膜装置6に供給される海水のうち40%の海水が、高圧ポンプ5によって浸透圧以上の6.9MPaの圧力に昇圧され、残りの60%の海水(以下、「低圧海水Li」と記す)が、圧力交換装置10とブースターポンプ7によって6.9MPaの圧力に昇圧される。
【0074】
ろ過対象となる低圧海水Liと、逆浸透膜装置6から排水された高圧濃縮海水Hiとが、圧力交換装置10に供給されて圧力交換され、高圧濃縮海水Hiによって6.75MPaに昇圧された低圧海水Liが高圧海水Hoとして圧力交換装置10から排水される。
【0075】
この高圧海水Hoがブースターポンプ7によって6.9MPaに昇圧されて、逆浸透膜装置6に供給される。尚、圧力交換装置10で低圧海水Liに圧力を伝達した高圧濃縮海水Hiは低圧濃縮海水Loとして圧力交換装置10から排水される。
【0076】
以下に説明する実施形態では、高圧濃縮海水Hiと低圧濃縮海水Loが第1流体となり、低圧海水Liと高圧海水Hoが第2流体となる。また、低圧海水Liが被濃縮流体となる。
【0077】
以下に圧力交換装置の第1の実施形態を説明する。
図2に示すように、圧力交換装置10は、回転体40と、回転体40を挟むように回転体40の両側に配置され、回転体40を回転可能に挟持する第1側方部材20及び第2側方部材30と、第1側方部材20及び第2側方部材30の間で回転体40の周部を覆うように配置された筒状の保持部材11を備えている。
【0078】
さらに、第1側方部材20、第2側方部材30、及び保持部材11を収容する筒状のケーシング13が設けられ、ケーシング13のうち第1側方部材20側の一端面を封止する第1エンドカバー14と、第2側方部材30側の他端面を封止する第2エンドカバー15等を備えている。
【0079】
図2及び図3(a),(b),(c)に示すように、回転体40は、一端側から第1流体が流入及び流出する複数本の第1流路41と、同じく一端側から第2流体が流入及び流出する複数本の第2流路42とが、回転軸心周りに配設されるように回転軸心方向に貫通形成された円柱状部材で構成されている。
【0080】
具体的に、回転体40には、16組の第1流路41と第2流路42が回転軸心周りに放射状に配置されている。そして、第1流路41と第2流路42は各断面積が略等しくなるように形成されている。これにより、流体が第1流路と第2流路を通流するときの圧力損失が低減され、効率のよい圧力伝達が可能となる。尚、本発明は、第1流路41と第2流路42の断面積が多少異なる値に設定されていてもよい。
【0081】
第1流路41と第2流路42の間に形成される流路壁40wが回転体40の軸方向に全長に亘って存在するので、回転体40の周方向に隣接形成された第1流路41間の隔壁41w及び第2流路42間の隔壁42wにかかる圧力を、第1流路41と第2流路42の間の流路壁40wでも支えることができる。
【0082】
図2及び図4(a),(b),(c)に示すように、第1側方部材20は、第1流体流入路21と、第2流体流出路22と、第2流体流入路23と、第1流体流出路24との四本の流路が厚み方向に形成された円盤状部材で構成されている。
【0083】
第1流体流入路21は、第1エンドカバー14側から供給される第1流体を第1流路41に案内する流路であり、第2流体流入路23は、第1エンドカバー14側から供給される第2流体を第2流路42に案内する流路である。
【0084】
第2流体流出路22は、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路42から第1エンドカバー14側に案内する流路であり、第1流体流出路24は、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路41から第1エンドカバー14側に案内する流路である。
【0085】
図2及び図5(a),(b),(c)に示すように、第2側方部材30は、第1流路41と第2流路42とを連通して第1流体と第2流体との間で圧力を交換する連通部31,32,33,34が形成された円盤状部材である。第1流路41と第2流路42及びそれらを連通する連通部31,32,33,34によって圧力交換部が構成される。
【0086】
第1側方部材20、第2側方部材30、回転体40、保持部材11のそれぞれは、アルミナ等のセラミックス、FRP、または、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等のように、海水に対する耐食性があり、十分に強度のある材料を用いることができる。
【0087】
二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼を用いた場合には、回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との対向面、及び保持部材11の内周面を窒化処理し、或はアルミナ等のセラミックを溶射し、肉盛溶接し、或はHIP処理して摩擦係数を低減する耐磨耗層を形成することが好ましい。
【0088】
また、回転体40と保持部材11は、温度変化による熱膨張を考慮すると、熱膨張率が同等の素材を選択して構成することが好ましい。
【0089】
ケーシング13は、樹脂材料、FRPまたは、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等の金属材料のように、海水に対する耐食性があり、ある程度強度を備えた材料を用いることができる。
【0090】
ステンレス鋼等の高強度の金属管を樹脂材料やセラミックスで被覆して耐食性を付加して構成してもよい。これにより、耐食性に劣る安価な材料を利用することができコストダウンが図れる。
【0091】
図2に戻り、回転体40の中心部に回転軸心に沿って挿通部44が貫通形成されている。挿通部44の両端側に、中央部よりも拡径された軸受部47a,47bが形成され、第1側方部材20と第2側方部材30の夫々に、軸受部47a,47bに向けて突出するように形成された軸部48a,48bが一体に形成されている。
【0092】
回転体40の軸受部47a,47bに、第1側方部材20及び第2側方部材30の軸部48a,48bが挿入されることにより、回転体40が回転可能に軸支される。
【0093】
軸部48a,48bを貫通するように、挿通部44に支軸43が挿通され、支軸43の各端部が第1側方部材20及び第2側方部材30で支持されている。支軸43は先端にねじ部が形成された六角ボルトで構成され、当該六角ボルトが第2側方部材30側から第1側方部材20へ挿通され、第1側方部材20側でねじ部がダブルナットで締め付けられている。
【0094】
第1エンドカバー14には、第1流体流入路21と連通する第1流体流入口25と、第2流体流出路22と連通する第2流体流出口26と、第2流体流入路23と連通する第2流体流入口27と、第1流体流出路24と連通する第1流体流出口28が形成されている。
【0095】
さらに、第1エンドカバー14とケーシング13はボルトで螺着され、第1エンドカバー14のケーシング13との接触面には、円周方向にシールが配設され、ケーシング13の外部への流体の漏れが防止されている。
【0096】
ケーシング13が第1エンドカバー14とボルトで螺着されて一体となっているので、回転体40を第2エンドカバー15側から抜き出してメンテナンスする際に、ケーシング13が回転体40に付随して、外れることが無く、メンテナンス性が向上する。
【0097】
第1エンドカバー14及び第2エンドカバー15は、両端にねじが切られた複数本のボルト12aと、両端のねじに螺合するナット12b,12cで構成された連結部材12によって締結されている。
【0098】
第1側方部材20には、第1流路41に流入する第1流体のエネルギーや第1流路41から流出する第1流体のエネルギー、または第2流路42に流入する第2流体のエネルギーや第2流路42から流出する第2流体のエネルギーにより回転体40にトルクを付与するトルク付与機構が設けられている。
【0099】
トルク付与機構により付与されるトルクで回転体40が回転軸心周りに回転することにより、第1流体流入路21から第1流路41に流入する高圧の第1流体(高圧濃縮海水Hi)と、第2流体流入路23から第2流路42に流入する低圧の第2流体(低圧海水Li)とが、第2側方部材30の連通部31,32を介して圧力交換され、高圧の第2流体(高圧海水Ho)が第2流体流出路22から流出する。
【0100】
同じく、トルク付与機構により付与されるトルクで回転体40が回転軸心周りに回転することにより、第1流体流入路21から第1流路41に流入する高圧の第1流体(高圧濃縮海水Hi)と、第2流体流入路23から第2流路42に流入する低圧の第2流体(低圧海水Li)とが、第2側方部材30の連通部33,34を介して圧力交換され、低圧の第1流体(低圧濃縮海水Lo)が第1流体流出路24から流出する。
【0101】
つまり、第1側方部材20及び第2側方部材30と保持部材11で仕切られる空間内で回転体40が回転することで、第1流体流入路21から第1流路41に流入した第1流体から圧力伝達された第2流体が第2流路42から第2流体流出路22へ流出し、第2流体流入路23から第2流路42に流入した第2流体から圧力伝達された第1流体が第1流路41から第1流体流出路24へ流出する圧力交換処理が連続的に行なわれる。
【0102】
回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との間に各流体が進入する隙間が形成されている。
【0103】
回転体40と第1側方部材20の隙間に進入した第1流体または第2流体によって、回転体40が第2側方部材30に向けて押圧され、回転体40と第2側方部材30の隙間に進入した第1流体または第2流体によって、回転体40が第1側方部材20に向けて押圧される。第1側方部材20及び第2側方部材30にかかる押圧力は、第1エンドカバー14及び第2エンドカバー15で受け止められる。
【0104】
その結果、回転体40は、軸心方向に沿って両側から略等しい力で押圧されるようになり、第1側方部材20及び第2側方部材30の何れか一方向に片寄ることなく圧力バランスが取られる。しかも、各隙間に進入した流体が潤滑剤として機能し、回転体40が第1側方部材20または第2側方部材30と摺動すること無く、安定して円滑に回転するようになる。
【0105】
さらに、回転体40と保持部材11との間にも隙間が形成され、当該隙間に進入した流体が潤滑剤として機能し、回転体40が保持部材11の内周面と摺動することも回避でき、安定して円滑に回転するようになる。
【0106】
具体的に、保持部材11の内径が回転体40の外径より僅かに大きく設定され、保持部材11の長さが回転体40の回転軸心方向長さより僅かに長く設定されている。また、保持部材11の周面には、複数の第3連通路45が周方向に対称な位置に貫通形成されている。
【0107】
回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との隙間を介して、回転体40の外周面と保持部材11の内周面との隙間に進入した流体が、拡径領域11a及び第3連通路45を介して保持部材11の外周面とケーシング13の内周面との外周閉空間46に進入する。
【0108】
外周閉空間46に導かれた流体の圧力は、回転体40と保持部材11の内周面との隙間に作用する流体の圧力と略等しく、保持部材11の内周面と外周面の両面に作用する押圧力が釣り合う。このような構成が採用されるので、保持部材11が径方向に歪むようなことが無く、保持部材11を薄肉化することが可能になる。
【0109】
つまり、第1側方部材20、第2側方部材30、及び保持部材11と、回転体40との磨耗が低減でき、高価な耐磨耗性材料を用いなくても耐久性を向上させることが可能になる。
【0110】
このような構成によれば、圧力交換装置10の処理量を増大するために、回転体40を大径に形成し、第1流路41及び第2流路42の断面積を大きく構成した場合でも、回転体40を回転駆動するためにトルク付与機構に要するエネルギーが低く抑えられるようになる。
【0111】
尚、各隙間は、狭過ぎると大きな摺動抵抗が発生して回転に必要なエネルギーが増加し、広過ぎると流体の漏れ量が多くなり圧力の交換効率が低下するため、好ましくは1〜100μm程度に設定される。各隙間は、回転体40と保持部材11の軸方向の長さの差によって設定されるが、摺動の発熱により膨張しても隙間が変動しないように同じ素材で形成することが好ましい。
【0112】
圧力交換装置10には、第1側方部材20または第2側方部材30の少なくとも一方を押圧して、第1側方部材20と第2側方部材30との間隔を調整する押圧機構が設けられ、当該押圧機構により隙間が良好に調整可能に構成されている。
【0113】
具体的に、第1エンドカバー14と第2エンドカバー15を連結する連結部材12が押圧機構として機能し、ナット12b,12cの締付力を調整することによって、第1エンドカバー14と第2エンドカバー15の間隔が調整され、これにより、第1側方部材20及び第2側方部材30が、第1エンドカバー14及び第2エンドカバー15で押圧されて、第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との間隙が調整される。
【0114】
また、第1側方部材20及び第2側方部材30で支持された支軸43も押圧機構として機能し、ダブルナットの締付力を調整することによって、第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との間隙が調整される。
【0115】
連結部材12により、主に第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との周縁領域の間隙が調整され、支軸43により、主に第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との中心部分の間隔が調整される。
【0116】
仮に第1側方部材20または第2側方部材30と回転体40の端面が磨耗して隙間が大きくなり、流体が漏れて圧力の交換効率の低下を招くような場合であっても、押圧機構により第1側方部材20または第2側方部材30と回転体40との間隔が調整できるので、回転体40などの主要部品の磨耗等による交換頻度を減らすことができるようになる。
【0117】
さらに、第1側方部材20と第1エンドカバー14とで区画される第1閉空間16が形成され、少なくとも第1流体または第2流体を第1閉空間16に導くように、第1エンドカバー14に第1連通路17が形成されている。
【0118】
具体的に、第1エンドカバー14の中心部に凹部が形成され、該凹部と第1側方部材20とで第1閉空間16が区画されている。当該第1閉空間16が、支軸43を締付けるダブルナットの収容空間となる。
【0119】
第1エンドカバー14には、第1流体または第2流体を第1閉空間16に導く第1連通路17が形成されている。本実施形態では、第1連通路17の一端が第1流体流入口25に開口するように構成され、第1連通路17を介して第1流体(高圧濃縮海水Hi)が第1閉空間16に流入する。
【0120】
回転体40と第1側方部材20との隙間に進入した第1流体または第2流体によって、第1側方部材20には回転体40と離隔する外側方向へ圧力が作用する。特に第1閉空間16に面する第1側方部材20の中心領域には、挿通部44に流入した流体の大きな圧力がかかる。
【0121】
しかし、第1エンドカバーに形成された第1連通路から第1閉空間に第1流体または第2流体が導かれるので、第1閉空間16に面する第1側方部材20の両面で圧力バランスが保たれるようになる。
【0122】
第2側方部材30と第2エンドカバー15とで区画される第2閉空間38a,38bが形成され、少なくとも第1流体または第2流体を第2閉空間38a,38bに導くように、第2側方部材30に第2連通路39a,39bが形成されている。
【0123】
具体的に、図2、図5及び図8に示すように、第2側方部材30と第2エンドカバー15の間には封止板35が配設されている。封止板35の一端面に形成された隔壁38cと第2側方部材30とで第2閉空間38a,38bが区画されている。
【0124】
封止板35のうち第2側方部材30と接触する一端面にシール36aが備えられ、封止板35の外周面にシール36bが備えられている。当該封止板35は第2エンドカバーにボルトで固定されている。従って、連結部材12のナット12b,12cを締め付けることによって、封止板35が第2側方部材30へと押圧される。
【0125】
第2側方部材30に形成された連通部31,32には、高圧流体を第2閉空間38aへと導く第2連通路39aが厚み方向に貫通形成され、第2側方部材30に形成された連通部33,34には、低圧流体を第2閉空間38bへと案内する第2連通路39bが厚み方向に貫通形成されている。
【0126】
第2閉空間38aには、連通部31,32の流体が第2連通路39aを介して流入し、第2閉空間38bには、連通部33,34の流体が第2連通路39bを介して流入する。第2閉空間38a,38bに流入した流体の圧力は、第2側方部材30を回転体40に向けて押圧するように作用する。
【0127】
回転体40の第1流路41及び第2流路42を流れる高圧濃縮海水Hi及び高圧海水Hoが第2側方部材30に作用する押圧力と、第2閉空間38aから第2側方部材30に作用する押圧力とがバランスする。
【0128】
また、回転体40の第1流路41及び第2流路42を流れる低圧濃縮海水Lo及び低圧海水Liが第2側方部材30に作用する押圧力と、第2閉空間38bから第2側方部材30に作用する押圧力とがバランスする。
【0129】
上述の例で、封止板35と第2エンドカバー15が一体に形成されていてもよい。この場合は、第2側方部材30と、第2エンドカバーとで第2閉空間38が区画される。また、第2閉空間38a,38bが隔壁38cにより2等分された例を説明したが、圧力バランスが保たれる限り、4等分など第2閉空間の区画数が増えてもよい。
【0130】
以上の通り、第1側方部材20及び第2側方部材30ともに、両面に作用する圧力のバランスが確保でき、回転軸心方向に歪みが発生するようなことが無くなるので、第1側方部材20及び第2側方部材30を薄肉化することができる。しかも、回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との隙間が全面で一定に保たれるようになり、回転体40の円滑な回転が可能となる。
【0131】
尚、撓みが生じると回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との隙間に広狭が生じ、隙間が狭くなると回転抵抗が増加して回転体に必要なエネルギーが増大し、隙間が広がると流体の漏れが増大して効率が低下する。
【0132】
回転体、第1及び第2側方部材、第1及び第2エンドカバーの作用する圧力のバランスや流体の流れを考慮し、第1及び第2側方部材、第1及び第2エンドカバー、封止板の周方向の位置関係が周方向に変動しないように、それぞれピンやボルトなどで固定することが好ましい。
【0133】
次に、図2、図4(a),(b),(c)及び図6(a),(b),(c),(d)に基づいて、トルク付与機構について詳述する。
図4(a),(b),(c)に示すように、第1流体流入路21は、第1側方部材20の入口側開口部21aから出口側開口部21bにかけて、回転体40の周方向に配列された複数の第1流路41と同時に連通するように、周方向に拡径して形成された第1傾斜部としての流路壁21cを備えて構成されている。
【0134】
第2流体流出路22は、第1側方部材20の出口側開口部22aから入口側開口部22bにかけて、回転体40の周方向に沿って複数の第2流路42と同時に連通するように拡径して形成された第2傾斜部としての流路壁22cを備えて構成されている。
【0135】
第2流体流入路23は、第1側方部材20の入口側開口部23aから出口側開口部23bにかけて、回転体40の周方向に沿って複数の第2流路42と連通するように拡径して形成された第2傾斜部としての流路壁23cを備えて構成されている。
【0136】
第1流体流出路24は、第1側方部材20の出口側開口部24aから入口側開口部24bにかけて、回転体40の周方向に沿って複数の第1流路41と同時に連通するように拡径して形成された第1傾斜部としての流路壁24cを備えて構成されている。
【0137】
このような形状をした各流入路21,23及び流出路22,24により、回転体40に対するトルク付与機構が構成されている。
【0138】
図6(a),(c)に示すように、流路壁21cの傾斜方向と流路壁23cの傾斜方向は円周方向に対して同じ向きに設定されている。
図6(a),(b)に示すように、流路壁21cの傾斜方向と流路壁22cの傾斜方向が円周方向に対して逆になるように設定されている。
図6(c),(d)に示すように、流路壁23cの傾斜方向と流路壁24cの傾斜方向が円周方向に対して逆になるように設定されている。
【0139】
第1側方部材20の入口側開口部20aから第1流体流入路21に流入した高圧濃縮海水Hiは、第1傾斜部としての流路壁21cに沿って流れて、出口側開口部20bから複数の第1流路41に分散して流入する。
【0140】
このとき、回転体40の周方向に沿って第1流体流入路21を流れる高圧濃縮海水Hiは、第1流路41間に形成された壁面(隔壁41w)へ圧力を付与し、この圧力が回転体40を回転させるトルクとなる。
【0141】
また、複数の第2流路42を流れる高圧海水Hoが合流して第1側方部材20の入口側開口部22bから第2流体流出路22に流入した高圧海水Hoは、第2傾斜部としての流路壁22cに沿って流れて出口側開口部22aから流出する。
【0142】
このとき、第2流路42から第2流体流出路22に流入する高圧海水Hoは、通流断面積が広くなる向きに流れるため、第2流路42間に形成された壁面(隔壁42w)へ圧力を付与し、この圧力が回転体40を回転させるトルクとなる。
【0143】
流路壁21cの傾斜方向と流路壁22cの傾斜方向が逆向きに設定されているので、高圧濃縮海水Hiが第1流体流入路21から第1流路41に流入するときに発生するトルクと、高圧海水Hoが第2流路42から第2流体出路22へと流出するときに発生するトルクは同じ向きになる。
【0144】
つまり、トルク付与機構は、回転体40に流入する高圧濃縮海水Hiと回転体40から流出する高圧海水Hoのエネルギーにより、回転体40を回転させるトルクを発生させる。このとき、何れか一方のエネルギーのみで回転体40を回転させる場合よりも大きなトルクを発生させることができる。
【0145】
同様に、低圧海水Liが第2流体流入路23の流路壁23cに沿って第2流路42に流入するときのエネルギーにより回転体40を回転させるトルクが発生し、低圧濃縮海水Loが第1流路41から第1流体流出路24の流路壁24cへ流出するときのエネルギーにより回転体40を回転させるトルクが発生する。そしてこれらのトルクも同じ向きになる。
【0146】
従って、外部動力を付与しなくても、圧力変換対象となる流体のエネルギーによって回転体40を回転させることができるようになる。そして、回転体40の回転に伴って、圧力伝達部への第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構も不要になる。
【0147】
尚、回転軸心から径方向に大きく離隔した流路に流入する流体のエネルギー、または回転軸心から径方向に大きく離隔した流路から流出する流体のエネルギーを利用する方が、同じエネルギーで大きなトルクを発生させることができるのでエネルギー効率がよい。
【0148】
図2及び図5(a),(b)に基づいて、第2側方部材30に形成された連通部31,32,33,34について詳述する。
圧力交換時には、第1流体流入路21から高圧濃縮海水Hiが流入する周方向に隣接する複数の第1流路41が、連通部31,32を介して、同じく周方向に隣接する複数の第2流路42と同時に連通し、圧力交換後の高圧海水Liが第2流体流出路22を介して流出する。
【0149】
このとき、トルク付与機構の作用に起因して、複数の第1流路41及び第2流路42で発生する圧損が周方向でそれぞれ異なる。そのため、第1流路41から連通部31に流入した流体が、連通部32を経由して圧損の低い第2流路42に流出すると、トルク付与機構が適正に機能せず、回転力が低下する虞がある。同様の現象が連通部33,34でも発生する虞がある。
【0150】
圧損の低い流路とは、流入路から流出路へと直線的に連通している流路をいい、例えば、図7の第1流路41b,41j、第2流路42o,42gのことである。
【0151】
そこで、トルク付与機構による適正なトルクが維持されるように、連通部31,32及び連通部33,34の中央部には、それぞれ第2側方部材30の表面よりも僅かに低い高さの隔壁wが形成されている。
【0152】
この隔壁wにより周方向への流れ、つまり圧損の低い流路への流れ(例えば、図7の第1流路41bから第2流路42oへの流れや、第2流路42jから第1流路41gへの流れ)が阻害される。
【0153】
その結果、径方向に隣接する第1流路41から第2流路42への流れ、または第2流路42から第1流路41への流れ(例えば、第1流路41bから第2流路42bへの流れや、第2流路42jから第1流路41jへの流れ)が確保されて、トルク付与機構が適正に機能するようになる。
【0154】
さらに、第2側方部材30の連通部31,32,33,34が形成された面に、2本の連通溝37a,37bが形成されている。連通溝37a,37bは、例えば数ミリ程度の溝で形成され、連通部34と連通部31の間、及び連通部32と連通部33の間に配置されている。
【0155】
回転体40の第1流路41内または第2流路42内の高圧流体が低圧流体の連通路へと進入する際に、連通溝37a,37bを介して段階的に圧力が低下するので大きな圧力変動が緩和され、低圧流体が高圧流体の連通路へと進入する際に、連通溝37b,37aを介して段階的に圧力が上昇するので大きな圧力変動が緩和される。
【0156】
このような構成によって、高圧流体が低圧流体の連通路へと進入したときの圧力の急変によるキャビテーション等の不都合な事態の発生を防止することができる。また、回転体40の隔壁41w,42wへ掛かる水圧差が減少して、回転体40の破損の虞が減るとともに、隔壁41w,42wを薄肉化することができ、軽量化や大容量化に対応することができる。
【0157】
以上のように構成された圧力交換装置10の具体的な圧力交換処理について説明する。
図7に示すように、回転体40には、第1流路41a〜41pと第2流路42a〜42pとで構成される16組の圧力伝達部が、回転軸心周りに放射状に配設されている。
【0158】
図7中、二点鎖線で示す領域は、第1側方部材20に形成された第1流体流入路21の出口側開口部21bと、第2流体流出路22の入口側開口部22bと、第2流体流入路23の出口側開口部23bと、第1流体流出路24の入口側開口部24bに対応する領域を表している。
【0159】
第1流体流入路21には、回転体40の周方向に隣接する第1流路41c,41b,41a,41p,41o,41nの6本が同時に連通し、第2流体流出路22には、同じく回転体40の周方向に隣接する第2流路42c,42b,42a,42p,42o,42nの6本が同時に連通する。
【0160】
第1流路41c,41b,41a,41p,41o,41nと第2流路42c,42b,42a,42p,42o,42nは、第2側方部材30に形成された連通部31,32で互いに連通している。
【0161】
第2流体流入路23には、回転体40の周方向に隣接する第2流路42f,42g,42h,42i,42j,42kの6本が同時に連通し、第1流体流出路24には、同じく回転体40の周方向に隣接する第1流路41f,41g,41h,41i,41j,41kの6本が同時に連通する。
【0162】
第2流路42f,42g,42h,42i,42j,42kと第1流路41f,41g,41h,41i,41j,41kは、第2側方部材30に形成された連通部33,34で互いに連通している。
【0163】
第1流体流入路21に流入した高圧濃縮海水Hiは、第1流路41c,41b,41a,41p,41o,41nの夫々に分散して流入する際に、流路壁21cに沿って流れ、図7中一点鎖線の矢印で示すように、回転体40には時計回りのトルクが付与される。
【0164】
第1流路41c,41b,41a,41p,41o,41nに流入した高圧濃縮海水Hiの圧力が、夫々第2側方部材30内で連通した第2流路42c,42b,42a,42p,42o,42nの海水に伝達されて、高圧海水Hoが第2流路42c,42b,42a,42p,42o,42nから第2流体流出路22へ流出する。
【0165】
高圧海水Hoが第2流路42c,42b,42a,42p,42o,42nから第2流体流出路22へと流出する際に、その流れが広くなるように流路壁22cに沿って流れ、図7中一点鎖線の矢印で示すように、回転体40には時計回りのトルクが付与される。
【0166】
第2流体流入路23に流入した低圧海水Liが、第2流路42f,42g,42h,42i,42j,42kの夫々に分散して流入するときに、低圧海水Liは、流路壁23cに沿って流れ、回転体40には、図7中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与される。
【0167】
第2流路42f,42g,42h,42i,42j,42kに流入した低圧海水Liの圧力が、夫々第2側方部材30内で連通した第1流路41f,41g,41h,41i,41j,41kの濃縮海水に伝達されて、低圧濃縮海水Loが第1流路41f,41g,41h,41i,41j,41kから第1流体流出路24へ流出する。
【0168】
低圧濃縮海水Loが第1流路41f,41g,41h,41i,41j,41kから第1流体流出路24へ流出する際に、流れを広くするように流路壁24cに沿って流れ、図7中一点鎖線の矢印で示すように、回転体40には時計回りのトルクが付与される。
【0169】
以上のように、高圧濃縮海水Hiが回転体40に与えるトルクと、高圧海Hoが回転体40に与えるトルクと、低圧海水Liが回転体40に与えるトルクと、低圧濃縮海水Loが回転体40に与えるトルクの全てが同一方向となり、回転体40は時計周りに回転する。
【0170】
回転体40の回転に伴って、第1流体流入路21及び第2流体流出路22と、第2流体流入路23及び第1流体流出路24とに、それぞれ連通する第1流路41及び第2流路42の組が切り替わる。
【0171】
そして、高圧濃縮海水Hiから高圧海水Hoへの圧力の伝達、及び、低圧海水Liから低圧濃縮海水Loへの圧力の伝達、つまり第1流体と第2流体との間の圧力交換処理が連続的に行なわれる。
【0172】
第1流路41及び第2流路42内で濃縮海水と海水が混在するが、各々の流体は塩分濃度差があるため、拡散により一定量が常に混ざった混合領域が境界部分に形成されるだけで、全体が混合されることは無い。当該混合領域は、ピストンのような役目を果たしながら、第1流路41と連通部31,32,33,34と第2流路42で形成される流路内部の一定範囲で往復移動することになる。
【0173】
回転体40の回転時に、第1流体流入路21、第2流体流出路22、第2流体流入路23、または第1流体流出路24の何れにも連通しない第1流路41d,41e,41l,41m、及び第2流路42d,42e,42l,42mでは圧力の交換は行なわれることはない。
【0174】
本実施形態では、第1流体流入路21、第2流体流出路22、第2流体流入路23、または第1流体流出路24に、回転体の回転に伴って第1流路及び第2流路が同時に5本または6本連通する例を説明したが、同時に連通する本数はこの値に制限されることはなく、適宜設定される。
【0175】
同時に連通する第1流路及び第2流路の本数が少なく、何れにも連通しない第1流路及び第2流路の本数が多いと、装置から排水される水の脈動が大きくなる。また、流体流入路及び流体流出路の何れにも連通しない本数が少ないと、高圧の流体から低圧の流体への漏れ量が増加する。
【0176】
回転体40に流入する高圧濃縮海水Hi及び低圧海水Li、回転体40から流出する高圧海水Ho及び低圧濃縮海水Loのエネルギーによって回転体40が回転するように構成されているため、回転体40に流入する各流体のエネルギーのみで回転する場合より大きなトルクを付与することができる。
【0177】
流路壁21c,22c,23c,24cの形状が変わると、流入路から各流路に流入する流体及び各流路から流出路に流出する流体の流れが変わり、回転体に付与されるトルクが変わり、回転体の回転数が変わる。
【0178】
つまり、回転体40の回転数は、流路壁21c,22c,23c,24cの形状に依存する。圧力交換装置10の処理流量は、回転体40の回転数に依存するため、流路壁21c,22c,23c,24cの形状を変更することにより回転体40の回転数を調整し、圧力交換装置10の処理流量を調整することができる。例えば、当該形状の異なる第1側方部材を複数準備しておき、何れかを選択することで容易に処理流量を調整できる。
【0179】
次に、圧力交換装置の第2の実施形態を説明する。
以下の説明では、主に第1の実施形態と異なる構成について詳しく説明し、第1の実施形態と同一の構成については説明を簡略する。尚、第2の実施形態を示す図9から図16(a),(b)では、第1の実施形態と同一の部材は同一の符号を付している。
【0180】
図9に示すように、第2の実施形態の圧力交換装置200も第1実施形態と同様に、回転体40と、回転体40を挟むように回転体40の両側に配置され、回転体40を回転可能に挟持する第1側方部材20及び第2側方部材30と、第1側方部材20及び第2側方部材30の間で回転体40の周部を覆うように配置された筒状の保持部材11を備えている。
【0181】
さらに、第1側方部材20、第2側方部材30、及び保持部材11を収容する筒状のケーシング13が設けられ、ケーシング13のうち第1側方部材20側の一端面を封止する第1エンドカバー14と、第2側方部材30側の他端面を封止する第2エンドカバー15等を備えている。
【0182】
図9及び図10(a),(b)に示すように、高圧濃縮海水Hiの流入配管51、高圧海水Hoの流出配管52、低圧海水Liの流入配管53、及び低圧濃縮海水Loの流出配管54が第1エンドカバー14に接続されている。
【0183】
流入配管51から第1流体流入路21を経由して回転体40の第1流路41に流入した高圧濃縮海水Hiと、流入配管53から第2流体流入路23を経由して回転体40の第2流路42に流入し、第1流路41の中にある低圧濃縮海水Loと圧力交換を終了した低圧海水Liとが、連通路31,32(図15(a)参照)で連通して圧力交換される。その結果、高圧海水Hoが第2流体流出路22を経由して流出配管52から流出する。
【0184】
同様に、流入配管53から第2流体流入路23を経由して回転体40の第2流路42に流入した低圧海水Liと、流入配管51から第1流体流入路21を経由して回転体40の第1流路41に流入し、第2流路42の中にある低圧海水Liと圧力交換を終了した低圧濃縮海水Loとが、連通路33,34(図15(a)参照)で連通して圧力交換される。その結果、低圧濃縮海水Loが第1流体流出路24を経由して流出配管54から流出する。
【0185】
図9及び図12(a),(b),(c)に示すように、ケーシング13の端部を封止する円盤状の第1封止板50aが第1エンドカバー14にボルト固定されている。第1封止板50aは、その直径がケーシング13の内周より僅かに小さく設定されており、その外周にケーシング13の内周との隙間のシール50e(図9参照)を嵌入するための溝50iが形成されている。尚、第1エンドカバー14の一部を構成する第1封止板50aは、第1エンドカバー14に一体に形成されていてもよい。
【0186】
第1封止板50aの厚み方向に第1流体流入口25、第2流体流出口26、第2流体流入口27、及び第1流体流出口28が貫通形成されている。第1エンドカバー14と対向する端面の開口部が、上述した各配管51、52、53、54の端部を挿入できるように円形に形成され、第1側方部材20と対向する端面の開口部が第1流体流入路21、第2流体流出路22、第2流体流入路23、及び第1流体流出路24と対応する形状に形成されている。
【0187】
第1封止板50aが第1側方部材20に対向配置されると、第1流体流入口25と第1流体流入路21とが連通し、同様に、第2流体流出口26と第2流体流出路22とが連通し、第2流体流入口27と第2流体流出路23とが連通し、第1流体流出口28と第1流体流出路24とが連通する。
【0188】
図9及び図10(a),(b)に示すように、各配管51、52、53、54には、それぞれ端部近傍の所定位置に、周方向に沿って切欠部55が形成されている。各配管51、52、53、54の端部が第1エンドカバー14に形成された各開口部に挿通され、さらに第1エンドカバー14の一部を構成する第1封止板50aに形成された第1流体流入口25、第2流体流出口26、第2流体流入口27、及び第1流体流出口28の開口部(図12(a)参照)に挿入される。さらにその後、各切欠部55に嵌合された状態のポート押え56が第1エンドカバー14にボルト固定される。
【0189】
このようにして、各配管51、52、53、54が圧力交換装置200に接続されている。本実施形態では、合計4つのポート押え56が、隣接する二本の配管の間に設けられ、各ポート押え56が隣接する二本の配管の夫々の切欠部55に嵌入されている。
【0190】
図9及び図16(a),(b)に示すように、ケーシング13の端部を封止する円盤状の第2封止板50bが第2エンドカバー15にボルト固定されている。第2封止板50bは、その直径がケーシング13の内周より僅かに小さく設定されており、その外周にケーシング13の内周との隙間のシール50fを嵌入するための溝50jが形成されている。尚、第2エンドカバー15の一部を構成する第2封止板50bは、第2エンドカバー15に一体に形成されていてもよい。
【0191】
第2側方部材30に形成された連通部31,32,33,34から、第2側方部材30の厚み方向に貫通された第2連通路39a,39bが形成されている(図15参照)。さらに、第2エンドカバー15に形成された覗き孔19を通して回転体40が目視できるように、第2エンドカバー15の一部を構成する第2封止板50bが光透過部材で構成されている。
【0192】
具体的に、第2封止板50bとしてアクリルやポリカーボネート等で構成される透明または半透明の樹脂板を用いることができる。尚、第2封止板50bを全て光透過部材で構成してもよいし、覗き孔19に対応する部分のみを光透過部材で構成してもよい。
【0193】
また、覗き孔19は、連通部31,32,33,34及び第2連通路39bまたは第2連通路39aと円周方向に一致する位置に形成されている。尚、本実施形態では覗き孔19が、低圧側の第2連通路39bと一致する位置に形成されている。これは、別部材で構成される覗き孔19に掛かる圧力を抑えるためである。
【0194】
さらに、本実施形態では、回転体40を容易に目視でき、そして回転の確認ができるように、第2連通路39a,39bは、第1の実施形態の圧力交換装置10の第2連通路39a,39bに比べて大径に形成されている。
【0195】
図9及び図11(a),(b)に示すように、回転体40は、一端側から第1流体が流入及び流出する複数本の第1流路41と、同じく一端側から第2流体が流入及び流出する複数本の第2流路42とが、回転軸心周りに配設されるように回転軸心方向に貫通形成された円柱状部材で構成されている。第1の実施形態と異なり、第1流路41が回転体40の径方向内側に配置され、第2流路42が回転体40の径方向外側に配置されている。
【0196】
保持部材11の内周面と回転体40の外周面とで軸受部が構成され、当該軸受部によって回転体40が回転可能に支持されている。そのため、第1の実施形態と異なり第1側方部材20及び第2側方部材30には軸部48a,48b(図2参照)が形成されておらず、回転体40には、軸受部47a,47b(図2参照)が形成されていない。軸受部とは、回転体を回転可能に支持する部分のことであり、回転体の回転軸心だけでなく回転体の外周面等、他の部分に形成することができる。
【0197】
保持部材11の周面に形成された第3連通路45の開口部と対向するように、回転体40の外周面には周方向に溝40aが形成されている。第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との隙間に進入した第1流体及び第2流体が、保持部材11と回転体40の隙間から溝40a及び第3連通路45を経由して保持部材11とケーシング13の隙間に進入する。
【0198】
これにより、保持部材11の内周面と回転体40の外周面との間が第1流体及び第2流体で満たされる。この流体が潤滑剤として機能するため、回転体40は、保持部材11の内周面と回転体40の外周面とが直接に摺動することなく、間隔を隔てた状態で円滑に回転する。
【0199】
また、保持部材11の内周面と外周面には同じ圧力の流体が満たされるので、径方向に撓むことなく、保持部材11の内周面と回転体40の外周面とが摺動することなく円滑に回転する。
【0200】
回転体40の中心部に回転軸心に沿って貫通形成された挿通部44に支軸43が挿通され、支軸43の各端部に形成されたネジ部を固定する固定部としてのナット43a,43bが、第1側方部材20と第1エンドカバー14の第1封止板50aとで区画される第1閉空間16、及び第2側方部材30と第2エンドカバー15の一部を構成する第2封止板50bとで区画される第2閉空間18にそれぞれ設けられている。
【0201】
第1閉空間16と挿通部44を連通する第4連通路49a、及び第2閉空間18と挿通部44を連通する第5連通路49bが、支軸43に形成されている。
【0202】
回転体40と第1側方部材20との隙間を経由して挿通部44に進入した流体と、回転体40と第2側方部材30との隙間を経由して挿通部44に進入した流体が、第4連通路49aを経由して第1閉空間16に流入するとともに、第5連通路49bを経由して第2閉空間18に流入し、第1閉空間16と第2閉空間18と挿通部44とが略同じ圧力に維持される。
【0203】
従って、第1側方部材20のうち第1閉空間16を区画する部位で両面の圧力バランスが保たれて撓みが生じない。第2側方部材30のうち第2閉空間18を区画する部位で両面の圧力バランスが保たれて撓みが生じない。
【0204】
支軸43に形成された第4連通路49aは、一端が支軸43の軸心方向の端部において第1閉空間16に開放され、他端が支軸43の外周部の径方向で挿通部44に開放され、第4連通路49aの一端と他端は、支軸43内部で連通されて構成されている。支軸43に形成された第5連通路49bも同様に構成されている。
【0205】
第4連通路49a及び第5連通路49bは、必ずしも支軸43に形成される必要は無く、第1閉空間16と挿通部44及び第2閉空間18と挿通部44を連通できれば、図17(b)に示したように、第1側方部材20及び第2側方部材30にその厚み方向に形成した貫通路で構成されてもよい。
【0206】
図13(a),(b),(c)に示すように、第1側方部材20のうち回転体40に対向する端面には、第1圧力領域61aと、第2圧力領域62aと、第3圧力領域63aと、第4圧力領域64aとが形成される。
【0207】
第1圧力領域61aは、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力を受ける領域であり、第2圧力領域62aは、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力を受ける領域である。
【0208】
また、第3圧力領域63aは、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoの圧力を受ける領域であり、第4圧力領域64aは、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loの圧力を受ける領域である。
【0209】
それら圧力領域61a,62a,63a,64aにかかる圧力と対抗するために、第1封止板50a(第1エンドカバー14)と第1側方部材20との対向部には、第1調圧領域61bと、第2調圧領域62bと、第3調圧領域63bと、第4調圧領域64bとがそれぞれ区画されている(図12(c)参照)。
【0210】
第1調圧領域61bは、第1流体流入路21の開口部周辺領域であって第1圧力領域61aに略対応する領域に区画され、第2調圧領域62bは、第2流体流入路23の開口部周辺領域であって第2圧力領域62aに略対応する領域に区画されるように、第1封止板50aに凹部が形成されている。
【0211】
また、第3調圧領域63bは、第2流体流出路22の開口部周辺領域であって第3圧力領域63aに略対応する領域に区画され、第4調圧領域64bは、第1流体流出路24の開口部周辺領域であって第4圧力領域64aに略対応する領域に区画されるように、第1封止板50aに凹部が形成されている。
【0212】
図13(a)には、第1調圧領域61b、第2調圧領域62b、第3調圧領域63b、及び第4調圧領域64bに対応する扇状の領域が、夫々一点鎖線で示されている。図13(c)には、第1圧力領域61a、第2圧力領域62a、第3圧力領域63a、及び第4圧力領域64aに対応する領域が、夫々一点鎖線で扇状に示されている。
【0213】
尚、各圧力領域61a,62a,63a,64aは、実際には図中の一点鎖線で示した扇状のように、その領域が明確に区画されるものではないが、凡そ図13(a)に一点鎖線で示した各調圧領域61b,62b,63b,64bの扇状に区画された領域に対応した領域となる。
【0214】
図12(a),(b),(c)に示すように、第1封止板50aのうち第1側方部材20との対向面には、第1流体流入口25、第2流体流出口26、第2流体流入口27、及び第1流体流出口28の夫々の開口部及び、中央に形成された凹部16aを区画するための第1ガスケット50cを嵌入するための溝50gが形成されている。
【0215】
図14(a)には、第1ガスケット50cが示されている。図14(c)に示すように、第1ガスケット50cは断面が蒲鉾形(hog-backed shape)に構成されている。これは、ケーシング13と第1エンドカバー14の中に第1側方部材20を含む回転体ユニットを組み入れたときの、第1ガスケット50cからの反力を小さくして、第1側方部材20や第1エンドカバー14の変形を抑制するためである。
【0216】
第1ガスケット50cの矩形底部が第1封止板50aの溝50gに嵌入され、上方の円弧側が第1側方部材20に接触するように配置される。尚、反力を低下させることができれば、第1ガスケット50cの断面の形状は蒲鉾形に限らず、円形、円弧、または多角形等の形状を採用することができる。また、ガスケットはシート状であってもよい。
【0217】
第1封止板50aと第1側方部材20とを対向配置すると、第1ガスケット50cによって、第1調圧領域61b、第2調圧領域62b、第3調圧領域63b、第4調圧領域64b、及び第1閉空間16が相互に密封した状態で区画形成される。
【0218】
圧力交換装置200が作動すると、第1側方部材20の第1圧力領域61aに、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力が作用し、第2圧力領域62aに、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力が作用する。また、第3圧力領域63aには、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoの圧力が作用し、第4圧力領域64aには、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loの圧力が作用する。つまり、第1側方部材20には第1エンドカバー14に向けた付勢力が作用する。
【0219】
この付勢力に対抗するように、第1ガスケット50cで仕切られる第1調圧領域61b、第2調圧領域62b、第3調圧領域63b、及び第4調圧領域64bに流体の圧力が作用するように構成されている。
【0220】
図15(a),(b),(c)に示すように、第2側方部材30のうち回転体40と対向する端面には、第5圧力領域65aと、第6圧力領域66aと、第7圧力領域67aとが形成されている。
【0221】
第5圧力領域65aは、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力及び高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoの圧力を受ける領域である。
【0222】
第6圧力領域66aは、第5圧力領域65aと、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力及び圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loの圧力を受ける領域である。
【0223】
第7圧力領域67aは、第5圧力領域65aと第6圧力領域66aの間に第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力と第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力との間の中間圧力を受ける領域である。
【0224】
具体的に、第2側方部材30に形成された連通部31,32とそれらの間の隔壁wを含む領域が第5圧力領域65aとなり、連通部33,34とそれらの間の隔壁wを含む領域が第6圧力領域66aとなる。
【0225】
それら圧力領域65a,66a,67aにかかる圧力と対抗するために、第2封止板50bと第2側方部材30との対向部には、第5調圧領域65bと、第6調圧領域66bと、第7調圧領域67bとがそれぞれ区画されるように、第2封止板50bに凹部か形成されている。
【0226】
第5調圧領域65bは、第5圧力領域65aに略対応する領域に区画され、第6調圧領域66bは、第6圧力領域66aに略対応する領域に区画され、第7調圧領域67bは、第7圧力領域67aに略対応する領域に区画されている。
【0227】
図15(c)では、第5調圧領域65b、第6調圧領域66b、及び第6調圧領域66bに対応する扇状の領域が、夫々一点鎖線で示されている。図15(a)では、第5圧力領域65a、第6圧力領域66a、及び第7圧力領域67a対応する領域が、夫々一点鎖線で扇状に示されている。
【0228】
尚、各圧力領域65a,66a,67aは、実際には図中の一点鎖線で示した扇状のように、その領域が明確に区画されるものではないが、凡そ図15(c)に一点鎖線で示した各調圧領域65b,66b,67bの扇状に区画された領域に対応した領域となる。
【0229】
図16(a),(b)に示すように、第2封止板50bのうち第2側方部材30との対向面には、第5調圧領域65b、第6調圧領域66b、第7調圧領域67b、及び凹部18aを区画するための第2ガスケット50dを嵌入するための溝50hが形成されている。また、第5調圧領域65bと第6調圧領域66bの部分は浅く凹状に形成されている。
【0230】
尚、本実施形態では凹状部とガスケットで第1調圧領域から第6調圧領域を区画したが、凹状部をなくして、ガスケットのみで第1調圧領域から第6調圧領域を区画してもよい。
【0231】
図14(b)には、第2ガスケット50dが示されている。第2ガスケット50dの断面も、図14(c)に示す第1ガスケット50cの断面と同じ蒲鉾形(hog-backed shape)に構成されている。これは、ケーシング13と第1エンドカバー14の中に第2側方部材30を含む回転体ユニットを組み入れ、第2エンドカバーを組立てたときの、第2ガスケット50dからの反力を小さくして、第2側方部材30や第2エンドカバー15の変形を抑制するためである。
【0232】
第2ガスケット50dは矩形底部が第2封止板50bの溝50hに嵌入され、上方の円弧側が第2側方部材30に接触するように配置される。尚、反力を低下させることができれば、第2ガスケット50dの断面の形状は蒲鉾形に限らず、円形、円弧、または多角形等の形状を採用することができる。また、ガスケットはシート状であってもよい。
【0233】
第2封止板50bが第2側方部材30に対向配置されると、第2ガスケット50dによって、第5調圧領域65b、第6調圧領域66b、第7調圧領域67b、及び第2閉空間18が区画形成される。
【0234】
第5調圧領域65bには、第2側方部材30の連通部31、32に形成された第2連通路39aを介して、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力及び高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoが進入する。第5調圧領域66bには、連通部33、34に形成された第2連通路39bを介して、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力及び圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loが進入する。尚、本実施形態では、第2連通路39a,39bをそれぞれ2箇所に形成したが、1箇所のみに形成してもよいし、3箇所以上の複数個所に形成してもよい。
【0235】
第2側方部材30の直径は、ケーシング13の内径に対して幾らか小さく設定されている。従って、第7調圧領域67bには、第2側方部材30の外周とケーシング13の内周にできた隙間から、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力と第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力との間の中間圧力の流体が進入する。
【0236】
圧力交換装置200が作動すると、第2側方部材30の第5圧力領域65aに、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力及び高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoの圧力が作用する。
【0237】
同様に、第6圧力領域66aに、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力及び圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loの圧力が作用する。
【0238】
また、第7圧力領域67aに、第5圧力領域65aと第6圧力領域66aの間に第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力と第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力との間の中間圧力が作用する。つまり、第2側方部材30には第2エンドカバー15に向けた付勢力が作用する。
【0239】
この付勢力に対抗するように、第2ガスケット50dで仕切られる第5調圧領域65b、第6調圧領域66b、第7調圧領域67bに流体の圧力が作用するように構成されている。
【0240】
図15(a),(b),(c)に示すように、第2側方部材30の端面には、連通部31,34の間及び連通部32,33の間にそれぞれ連通溝68,69が形成されている。連通溝68,69は、幅数ミリ、深さ数ミリ程度の溝で形成されている。
【0241】
連通溝68,69は、連通部31と連通部34の間、及び連通部32と連通部33の間に配置され、回転体40の回転に伴い、第1流路41や第2流路42にある高圧流体が低圧流体の連通部へと進入する際の大きな圧力変動や、低圧流体が高圧流体の連通部へと進入する際の大きな圧力変動が緩和される。従って、圧力の急変によるキャビテーションを防止することができる。
【0242】
また、回転体40の隔壁41w,42w(図11(a),(b)参照)へ掛かる水圧差が減少し、回転体40の破損の虞が低減されるとともに隔壁41w,42w(図11(a),(b)参照)を薄肉化することができ、軽量化や大容量化に対応できるようになる。これは、連通溝68,69を介して回転体40の第1流路41と第2流路42の径方向反対側にある高圧流体と低圧流体が連通して圧力が平均化されることによる。
【0243】
連通溝68,69には、回転体40の第1流路41に対応する位置であって、回転体40の回転方向に対向する方向に延出した溝68a,69aが形成されている。同様に、連通溝68,69には、回転体40の第2流路42に対応する位置であって、回転体40の回転方向に対向する方向に延出した溝68b,69bが形成されている。
【0244】
回転体40の第1流路41及び第2流路42は、連通溝68,69と連通する前に溝68a,69a、及び溝68b,69bと連通し始め、圧力変動が幾らか緩和された後に連通溝68,69と連通する。従って、第1流路41及び第2流路42がいきなり連通溝68,69と連通する構成よりも、スムーズに圧力変動を緩和することができる。
【0245】
図13で説明した第1圧力領域61a及び第3圧力領域63aの高圧の圧力領域と、第2圧力領域62a及び第4圧力領域64aの低圧の圧力領域との間に、第2側方部材30に形成されたような中間圧力となる第7圧力領域67aを想定し、それに対応して第7調圧領域67bに相当する中間圧の調圧領域を区画形成してもよい。
【0246】
この場合、図13(a)で示した第1封止板50a(第1エンドカバー14)と第1側方部材20との対向部に区画された調圧領域61b,63b及び調圧領域62b,64bの間に、図15(c)の調圧領域67bと略同一形状の中間圧の調圧領域が区画され、それに対応した第1ガスケット50cが用いられ、当該第1ガスケット50cを嵌入するための溝50gが第1封止板50a(第1エンドカバー14)に形成される。
【0247】
第1側方部材20の直径がケーシング13の内径に対して幾らか小さく設定されているので、第1側方部材20の外周とケーシング13内周との隙間から、当該中間圧の調圧領域に高圧と低圧を平均化した中間圧力の流体が進入するようになる。
【0248】
また、第1側方部材20及び第2側方部材30の外周部及びケーシングの内周部に、第7調圧領域67b及び/または当該中間圧の調圧領域と連通する連通溝を形成し、当該連通溝を介して第7調圧領域67b及び/または当該中間圧の調圧領域に中間圧力の流体を導くように構成してもよい。
【0249】
このような圧力交換装置200の組み立て、調整、点検の手順を説明する。
圧力交換装置200は回転体40の回転軸心が水平または垂直姿勢となるように据付されるが、組み立て時には第1エンドカバー14側が底面側となり、回転体40の回転軸心が鉛直方向を向く姿勢で、第1エンドカバー14から順に構成部品を積み上げるように組み立てられる。
【0250】
具体的に、先ず、第1封止板50aがボルト固定された第1エンドカバー14に、ケーシング13をボルト固定し、第1エンドカバー14の周部にナット12bで固定された複数本のボルト12aを立設する。
【0251】
回転体40を収容した保持部材11の両端に、第1側方部材20と第2側方部材30を配置して、回転体40の挿通部44に支軸43を挿通し、その支軸43の両端をナット43a、43bで締め付けて回転体ユニットを構成する。
【0252】
回転体ユニットを構成する第2側方部材30の第2連通路39b及び連通部33に棒状の治具を挿通して、回転体40が円滑に回転することを確認する。もし円滑に回転しない場合には、再度回転体ユニットの組み立て調整を行なう。尚、第1の実施形態では第2連通路39bは孔が小さいため、治具を挿通して回転体40の回転を確認することができないが、第2の実施形態では孔が十分に大きいため、回転体40の回転を確認することができる。
【0253】
調整が終了した回転体ユニットをホイストで吊り上げて、先に組み立てておいたケーシング13の上部開口からケーシング13内部に収容し、ケーシング13の上部の開口端面を第2封止板50bでシールし、その上に第2エンドカバー15を載せる。
【0254】
最後に、第2封止板50bと第2エンドカバー15をボルト固定し、第1エンドカバー14の周部に立設したボルト12aを、第2エンドカバー15の周部に形成されたボルト孔に通してナット12bで締め付けて圧力交換装置200が完成する。
【0255】
圧力交換装置200の作動時には、圧力交換装置200の外部から、第2エンドカバー15に形成された覗き孔19、第2封止板50b、第2側方部材30に形成された連通部33、第2連通路39bを通して回転体40の回転の様子が目視できるようになる。従って、回転体40の回転不良等の不具合が極めて容易に発見できる。
【0256】
本実施形態では、保持部材11の内周面と回転体40の外周面とで軸受部を構成しているため、支軸43は無くてもよい。但し、支軸43により回転体ユニットとして事前に組み立て調整し、ケーシング13に収容できるため、組立及び調整作業の作業性が向上している。
【0257】
尚、第2の実施形態で説明を簡略した構成については、第1の実施形態と同様の形態を採用している。さらに、第1の実施形態の各部の構成と第2の実施形態の各部の構成を組み合わせて圧力交換装置を構成することも可能である。
【0258】
次に、圧力交換装置の第3の実施形態を説明する。
以下の説明では、主に第1及び第2の実施形態と異なる構成について詳しく説明し、第1または第2の実施形態と同一の構成については説明を簡略する。尚、第3の実施形態を示す図17(a),(b)から図21(a),(b),(c)では、第1または第2の実施形態と同一の部材は同一の符号を付している。
【0259】
図17(a),(b)に示すように、第3の実施形態の圧力交換装置300も第1の実施形態と同様に、回転体40と、回転体40を挟むように回転体40の両側に配置され、回転体40を回転可能に挟持する第1側方部材20及び第2側方部材30と、第1側方部材20及び第2側方部材30の間で回転体40の周部を覆うように配置された筒状の保持部材11を備えている。
【0260】
さらに、第1側方部材20、第2側方部材30、及び保持部材11を収容する筒状のケーシング13が設けられ、ケーシング13のうち第1側方部材20側の一端面を封止する第1エンドカバー14と、第2側方部材30側の他端面を封止する第2エンドカバー15等を備えている。
【0261】
そして、高圧濃縮海水Hiの流入配管51、高圧海水Hoの流出配管52、低圧海水Liの流入配管53、及び低圧濃縮海水Loの流出配管54が第1エンドカバー14に接続されている。
【0262】
流入配管51から第1流体流入路21を経由して回転体40の第1流路41に流入した高圧濃縮海水Hiと、流入配管53から第2流体流入路23を経由して回転体40の第2流路42に流入し、第1流路41の中にある低圧濃縮海水Loと圧力交換を終了した低圧海水Liとが、連通路31,32(図19(a)参照)で連通して圧力交換される。その結果、高圧海水Hoが第2流体流出路22を経由して流出配管52から流出する。
【0263】
同様に、流入配管53から第2流体流入路23を経由して回転体40の第2流路42に流入した低圧海水Liと、流入配管51から第1流体流入路21を経由して回転体40の第1流路41に流入し、第2流路42の中にある低圧海水Liと圧力交換を終了した低圧濃縮海水Loとが、連通路33,34(図19(a)参照)で連通して圧力交換される。その結果、低圧濃縮海水Loが第1流体流出路24を経由して流出配管54から流出する。
【0264】
つまり、第2の実施形態と異なり、第1流路41が回転体40の径方向外側に配置され、第2流路42が回転体40の径方向内側に配置されている。
【0265】
図18(a),(b),(c)には第1側方部材20が示されている。本実施形態では、第1側方部材20のうち回転体40に対向する端面に第1圧力領域61a、第2圧力領域62a、第3圧力領域63a、及び第4圧力領域64aが形成され、さらに第1圧力領域61a及び第3圧力領域63aと、第2圧力領域62a及び第4圧力領域64aとの間に、中間圧力領域67cが形成される。
【0266】
第2の実施形態と同様に、第1圧力領域61aは、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力を受ける領域であり、第2圧力領域62aは、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力を受ける領域である。
【0267】
また、第3圧力領域63aは、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoの圧力を受ける領域であり、第4圧力領域64aは、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loの圧力を受ける領域である。
【0268】
中間圧力領域67cは、高圧の圧力領域61a,63aに作用する高圧流体と、圧力領域62a,64aに作用する低圧流体とが混ざった中間圧力が作用する領域である。
【0269】
それら圧力領域61a,62a,63a,64a,67cにかかる圧力と対抗するために、第1封止板50a(第1エンドカバー14)と第1側方部材20との対向部には、第1調圧領域61bと、第2調圧領域62bと、第3調圧領域63bと、第4調圧領域64bと、中間調圧領域67dとがそれぞれ区画されている。
【0270】
図20(a),(b),(c)には、第1エンドカバー14、及び第1封止板50aに形成された溝50gに嵌入される第1ガスケット50c等が示されている。尚、第1ガスケット50cを嵌入する溝部50gが第1側方部材20に形成される態様であってもよく、何れにも溝部50gが形成されない態様であってもよい。
【0271】
第1ガスケット50cによって、第1調圧領域61bと、第2調圧領域62bと、第3調圧領域63bと、第4調圧領域64bと、中間調圧領域67dとが区画される。また、第1ガスケット50cのうち中間調圧領域67dに対応する部位が径方向に開放されており、このようなガスケット50cによって第1封止板50a(第1エンドカバー14)と第1側方部材20との対向部に第1開放空間270が形成される。尚、調圧領域の圧力を確保するために、ガスケット内周側に凹部を形成してもよい。
【0272】
図18(a),(b),(c)に示すように、第1側方部材20の外周部に、第6連通路86が厚み方向に形成されている。また、図17(b)に示すように、保持部材11の開口端面に、第6連通路86と連通するように第8連通路85が形成されている。
【0273】
第1側方部材20と回転体40との隙間に形成される中間圧力領域67cの流体が、上述の第8連通路85と第6連通路86を経由して第1開放空間270となる中間調圧領域67dに導かれ、中間圧力領域67cと中間調圧領域67dで圧力バランスが保たれる。
【0274】
尚、中間圧力領域67cの流体が第1側方部材20と回転体40との隙間から第6連通路86に導かれる場合には、保持部材11に第8連通路85を形成する必要はない。また、第1側方部材20の外周部に第6連通路86が溝状に形成される態様に替えて、第1側方部材20に中間圧力領域67cと中間調圧領域67dとを連通する孔状の第6連通路86を形成してもよく、さらには、ケーシング13の内周面に溝状の第6連通路86を形成してもよい。
【0275】
図19(a),(b),(c)には、第2側方部材30が示され、図21(a),(b),(c)には、第2エンドカバー15、及び第2封止板50bに形成された溝50hに嵌入される第2ガスケット50b等が示されている。尚、第2ガスケット50bを嵌入する溝部50hが第2側方部材30に形成される態様であってもよく、何れにも溝部50hが形成されない態様であってもよい。
【0276】
尚、第2側方部材30に形成された連通溝37a,37bにも、第2の実施形態の図15(a)で示した回転体40の回転方向に対向する方向に延出した溝68b,69b,69a,69bと同様の溝が形成されていてもよい。
【0277】
本実施形態では、第2側方部材30に形成される連通路31,32,33,34がその厚み方向に完全に貫通形成されている。
【0278】
また、第2の実施形態と同様に、第2側方部材30のうち回転体40と対向する端面には、第5圧力領域65aと、第6圧力領域66aと、第7圧力領域67aとが形成される。それら圧力領域65a,66a,67aにかかる圧力と対抗するために、第2封止板50bと第2側方部材30との対向部には、第5調圧領域65bと、第6調圧領域66bと、第7調圧領域67bとがそれぞれ区画されている。
【0279】
第2ガスケット50bによって、第5調圧領域65bと、第6調圧領域66bと、第7調圧領域67bとが区画される。また、第2ガスケット50bのうち第7調圧領域67bに対応する部位が径方向に開放されており、このようなガスケット50bによって第2封止板50b(第2エンドカバー15)と第2側方部材30との対向部に第2開放空間380が形成される。
【0280】
さらに、第2封止板50bには、連通部31,32及び連通部33,34から流入する流体を受止めて第2側方部材30の端面に圧力をかけるために、第5調圧領域65b及び第6調圧領域66bのそれぞれに対応する領域に凹部320,330(図21(a)参照)が形成されている。凹部320,330の厚みは任意である。尚、第2ガスケット50bによって、第2封止板50bと第2側方部材30との対向部に十分な空間が形成される場合には、凹部320,330が形成されなくてもよい。
【0281】
本実施形態では、第2の実施形態と異なり、第2側方部材30の外周部に、第7連通路87が厚み方向に形成されている。また、図17(b)に示すように、保持部材11の開口端面に、第7連通路87と連通するように第8連通路85が形成されている。
【0282】
第2側方部材30と回転体40との隙間に形成される第7圧力領域67aの流体が、上述の第8連通路85と第7連通路87を経由して第2開放空間380となる第7調圧領域67bに導かれ、第7圧力領域67aと第7調圧領域67bで圧力バランスが保たれる。
【0283】
尚、第7圧力領域67aの流体が第2側方部材30と回転体40との隙間から第7連通路87に導かれる場合には、保持部材11に第8連通路85を形成する必要はない。また、第2側方部材30の外周部に第7連通路87が溝状に形成される態様に替えて、第2側方部材30に第7圧力領域67aと第7調圧領域67bとを連通する孔状の第7連通路87を形成してもよく、さらには、ケーシング13の内周面に溝状の第7連通路87を形成してもよい。
【0284】
図17(b)に示すように、保持部材11の開口端部より内側の内周面に、開口部の径より大きな拡径領域11aが形成されている。拡径領域11aは、保持部材11の周面に径方向に貫通形成された第3連通路45と連通されている。
【0285】
第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との隙間に進入した第1流体及び第2流体が、回転体40の外周面と保持部材11の内周面との隙間を経由して拡径領域11aに進入し、或いは保持部材11の外周面とケーシング13の内周面との隙間及び第3連通路45を経由して拡径領域11aに進入する。拡径領域11aに進入した流体が、回転体40と保持部材11との間の潤滑剤として機能するため、回転体40は、保持部材11の内周面と回転体40の外周面とが直接に摺動することなく間隔を隔てた状態で円滑に回転する。
【0286】
以下、他の実施形態を説明する。
第1の実施形態で説明した押圧機構を、第2及び第3の実施形態の圧力交換装置に適用することができることはいうまでもない。
【0287】
第1の実施形態で説明したトルク付与機構を、第2及び第3の実施形態の圧力交換装置に適用することができることはいうまでもない。
【0288】
当該トルク付与機構は、少なくとも第1流路41に流入する若しくは第1流路41から流出する濃縮海水のエネルギー、及び/または、第2流路42に流入する若しくは第2流路42から流出する海水のエネルギーにより回転体40にトルクを付与するように構成すればよい。
【0289】
何れか一方の流体のエネルギーのみをトルク生成のために利用する場合、第1流路41に流入する高圧流体のエネルギーを主に利用すると、大きなトルクが発生するのでエネルギー効率がよい。
【0290】
当該トルク付与機構に代えて、或いは当該トルク付与機構に加えて、回転体40に駆動軸を連結して、駆動機等の外部動力で回転体40を回転する他のトルク付与機構を備えてもよい。外部動力で回転体40を回転駆動すると、常時安定した回転を得ることができるので装置の信頼性が向上する。
【0291】
第2の実施形態で説明したような回転体40を回転可能に支持する軸受部の構造、即ち、保持部材11の内周面と回転体40の外周面とで構成される軸受部を第1または第3の実施形態に採用してもよい。
【0292】
第1流路41と第2流路42の断面積を等しくすれば、流路断面積の変化による余分な圧力損失が低減できる点で好ましい。しかし、第1流路41と第2流路42の断面積を完全に一致させる必要はない。
【0293】
第1流路41及び第2流路42の断面形状は特に限定されず、真円や楕円等の円形状、三角、四角等の多角形状であってもよい。
【0294】
図3(a)に示した第1流路41及び第2流路42の断面形状は、回転体の断面に対して大きな開口率が得られる点で好ましい。
【0295】
第1流路41及び第2流路42の本数や断面形状を変更することで、圧力交換装置の処理流量を変更することができる。
【0296】
第1から第3の実施形態では、保持部材11と第2側方部材30を別体で構成する例を説明したが、保持部材11と第2側方部材30をカップ状に一体形成してもよい。その場合、カップ状の第2側方部材30と第1側方部材20とで形成される閉空間内に回転体40が配置されるように構成すればよい。同様に保持部材11と第1側方部材20をカップ状に一体形成してもよい。同様に保持部材11と第1側方部材20をカップ状にいったい形成してもよい。
【0297】
第1から第3の実施形態では、第1エンドカバー14及び第2エンドカバー15とケーシング13を別体で構成した例を説明したが、第1エンドカバー14または第2エンドカバー15とケーシング13を一体で構成してもよい。
【0298】
第1から第3の実施形態では、保持部材11とケーシング13を別体で構成した例を説明したが、保持部材11とケーシング13を一体に構成してもよい。また、ケーシング13を備えずに、保持部材をケーシングとして機能させてもよい。
【0299】
第1から第3の実施形態では、第1側方部材20に高圧流体と低圧流体の流入路と流出路がそれぞれ一対形成された例を説明したが、それぞれ二対以上形成されていてもよい。その場合、回転体40に流入または回転体40から流出する流体の圧力バランスを確保するため、各流入路及び各流出路は、回転軸心周りに点対称に配置されることが好ましい。
【0300】
第2または第3の実施形態で説明した第1側方部材及び第2側方部材の圧力バランスを保つ構成を第1の実施形態に採用可能なことはいうまでもない。即ち、第1側方部材と回転体との対向面、及び第2側方部材と回転体との対向面に形成される各圧力領域に対応して、第1側方部材または第2側方部材の対向面側に各調圧領域を区画形成することで、第1側方部材及び第2側方部材の圧力バランスを保つ構成である。
【0301】
第1から第3の実施形態では、第1流体流入路21に高圧濃縮海水を流入させ、第2流体流入路23に被濃縮流体である低圧海水を流入させる構成を説明したが、第1流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させ、第2流体流入路に高圧濃縮海水を流入させてもよい。
【0302】
本発明の作用効果が奏される範囲で、第1から第3の実施形態で説明した圧力交換装置の各部の構成を互いに組み合わせることも可能である。
【0303】
以上説明した圧力交換装置の具体的構成は、上述した実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において、各部の形状、サイズ、素材等は適宜選択可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0304】
6:逆浸透膜装置、10:圧力交換装置、11:保持部材、13:ケーシング、14:第1エンドカバー、15:第2エンドカバー、16:第1閉空間、17:第1連通路、18:第2閉空間、19:覗き孔、20:第1側方部材、21:第1流体流入路、22:第2流体流出路、23:第2流体流入路、24:第1流体流出路、30:第2側方部材、31,32,33,34:連通部、40:回転体、41:第1流路、42:第2流路、43:支軸、44:挿通部、45:第3連通路、61a〜67a:第1〜第7圧力領域、61b〜67b:第1〜第7調圧領域、67c:中間圧力領域、67d:中間調圧領域、Hi:高圧濃縮海水(濃縮流体)、Li:低圧海水(被濃縮流体)、Ho:高圧海水(被濃縮流体)、Lo:低圧濃縮海水(濃縮流体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜装置を用いる海水淡水化施設では、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体である高圧濃縮海水がもつ余剰圧力を、逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である低圧海水の昇圧に利用する圧力交換装置が設けられている。
【0003】
図22に示すように、特許文献1には、管状の圧力伝達部が回転軸心周りに複数本配設されたロータ80を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0004】
該圧力交換装置は、ロータ80の回転に伴って、高圧入口側ポート82へ供給される高圧濃縮海水と低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水とを圧力伝達部で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を、高圧出口側ポート83から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート84から排水するように構成されている。
【0005】
図23に示すように、特許文献2には、一対の回転板91、92と当該回転板91、92を連接する軸93とで構成される回転体90を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0006】
一方の回転板91には、低圧入口側ポート95に供給された低圧海水を圧力伝達部96に案内する流路91aと、圧力伝達部96から排水される高圧海水を高圧出口側ポート97に案内する流路91bが形成されている。
【0007】
他方の回転板92には、高圧入口側ポート94に供給された高圧濃縮海水を圧力伝達部96に案内する流路92bと、圧力伝達部96から排水される低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98に案内する流路92aが形成されている。
【0008】
該圧力交換装置は、回転体90の回転に伴って、高圧入口側ポート94へ供給される高圧濃縮海水と、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水を、管状の圧力伝達部96内で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を高圧出口側ポート97から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98から排水するように構成されている。
【0009】
特許文献1に記載された圧力交換装置では、ロータ80に配設された管状の圧力伝達部の断面積に依存して圧力伝達される処理流量が定まる。従って処理流量を増やす場合には、圧力伝達部の配設本数を増加させるか、圧力伝達部の一本あたりの断面積を大きくする必要があり、何れの場合であってもロータ80が大きくなり、それに伴って圧力交換装置が大型になり重量も増大する。
【0010】
一般的にロータ80は、軽量化、高剛性、耐摩耗性、低摩擦係数等の条件が要求され、セラミックス等の高価な材料で形成されていることが多く、圧力交換装置を大型化するとそれに伴って材料費、製造費が嵩むという問題があった。
【0011】
さらに、そのような大型のロータ80を回転させるために要するトルクも増大し、小型のロータ80を回転させる場合よりも大きなエネルギーが必要になり、効率が低下するという問題もあった。このような理由によって、圧力交換装置1台あたりの処理流量を増加させるのは極めて困難であった。
【0012】
そのため、大量の海水を淡水化処理する大型の海水淡水化施設には、多数の圧力交換装置が設置されていた。しかし、圧力交換装置の設置台数が増加すると、各圧力交換装置を接続する配管の施工及び管理が煩雑になるという問題があった。
【0013】
特許文献2に記載された圧力交換装置では、一方の回転板91に形成された流路91bと他方の回転板92に形成された流路92bの夫々が、回転体内部で軸心方向に沿った流路に円周方向に形成された流路が連通するように構成されているため、回転板91、92に流路を形成するための厚みが必要となる。そのため、回転板91、92が大型になり材料費や加工費が嵩むという問題があった。
【0014】
さらに、回転板91、92の大型化によって重量が増すと、回転体90の回転時に軸部93に作用するねじりや曲げに対する応力が大きくなり、その変形や破損を防止するために軸部93を太くする必要があるばかりでなく、回転のために要するエネルギーが増加し、効率が低下するという問題もあった。
【0015】
そこで、本願出願人は、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提案している(特願2011−003650号)。
【0016】
図24(a),(b)に示すように、当該圧力交換装置10は、一端側から第1流体が流入または流出する第1流路41と前記一端側から第2流体が流入または流出する第2流路42とが連通するように形成された圧力伝達部を、回転軸心周りに配設した回転体40を備えている。
【0017】
さらに、第1流体を第1流路41に案内する第1流体流入路21と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路42から案内する第2流体流出路22、及び、第2流体を第2流路42に案内する第2流体流入路23と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路41から案内する第1流体流出路24とが、厚み方向に形成された第1側方部材20と、回転体40を第1側方部材20との間で保持部材11を介して回転可能に挟持する第2側方部材30とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009180903号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第200710056401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
図24(a),(b)に示す圧力交換装置10によれば、第1流路41と第2流路42と両流路の連通部とで圧力伝達部を構成することにより、回転体40の一端側から当該圧力伝達部へ第1流体または第2流体を流入させて、第1流体と第2流体との間で圧力を交換し、当該一端側から第2流体または第1流体を流出させることができる。
【0020】
従って、特許文献1に記載されたような直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に回転体の軸心方向の長さが短くなり、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができ、また、圧力交換処理の流量を増加させる必要がある場合でも、回転体の軸心方向の長さが短くなることで、装置の極端な大型化を回避することができる。
【0021】
しかし、高圧流体が連通部を介して第1流路41と第2流路42間を通流する際に、回転体40の周方向に隣接して形成される第1流路41間の隔壁41wまたは第2流路42間の隔壁42wに大きな応力が作用して隔壁41w,42wの破損を招く虞がある。そのために、当該隔壁41w,42wを厚肉に形成して十分な強度を確保すると、処理流量がある程度制限され、或いはコンパクト化がある程度制限されることになる。
【0022】
本発明の目的は、処理流量を減らすことなく、さらなるコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の目的を達成するため、本発明による圧力交換装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と前記一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが回転軸心方向に貫通するように前記回転軸心周りに配設された回転体と、第1流体を前記第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第2流路から案内する第2流体流出路と、第2流体を前記第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を前記第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、前記第1流路と前記第2流路を連通して第1流体と第2流体との間で圧力を交換する連通部が形成された第2側方部材と、を備え、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間で前記回転体が回転可能に挟持されている点にある。
【0024】
上述の構成によれば、回転体の一端側から第1流路に流入した第1流体と第2流路に流入した第2流体は、回転体の回転に伴って回転体の他端側に備えた第2側方部材に形成された連通部を介して接触し、圧力交換された後に回転体の一端側から流出する。
【0025】
よって、特許文献1に記載されたような直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に、回転体の軸心方向の長さを短く構成することができ、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができるようになる。また、圧力交換の処理量を増加させるために、回転体に形成される流路断面積を大きくしても、回転体の軸心方向の長さを短くすることができるので、装置の極端な大型化を回避することができる。
【0026】
また、第1流体流入路及び第1流体流出路、第2流体流入路及び第2流体流出路が第1側方部材にのみ形成されているため、各流体の流入路または流出路と接続する各配管を第1側方部材側に纏めて設置すればよい。
【0027】
よって、回転体に形成された流体流入路または流体流出路と接続する各配管を回転体の両端側に設置する必要がある従来の装置と比較して、配管を含めた設置スペースがコンパクトになり、各配管の設置作業やメンテナンス作業等の作業性も良好になる。
【0028】
さらに、第1流路と第2流路の間に形成される流路壁が回転体の軸方向に全長に亘って存在するので、回転体の周方向に隣接形成された第1流路間の隔壁及び第2流路間の隔壁にかかる圧力を、第1流路と第2流路の間の流路壁でも支えることができる。
【0029】
よって、本願発明者らの先の出願(特願2011−003650号)に示された圧力伝達装置のように、回転体に形成された連通部を介して第1流路と第2流路間を高圧流体が通流する際に、第1流路間の隔壁または第2流路間の隔壁に大きな応力が作用して隔壁の破損を招くような虞がない。従って、第1流路間の隔壁及び第2流路間の隔壁を厚肉に形成しなくても、十分な強度を確保でき、処理流量を減らすことなく、さらなるコンパクト化、低コスト化を図ることができる。
【0030】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間に前記回転体を覆う保持部材が設けられ、前記回転体と前記第1側方部材及び前記第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されている点にある。
【0031】
上述の構成によれば、第1側方部材及び第2側方部材と保持部材で仕切られる空間内で回転体が回転することで、第1流体流入路から第1流路に流入した第1流体から圧力伝達された第2流体が第2流路から第2流体流出路へ流出し、第2流体流入路から第2流路に流入した第2流体から圧力伝達された第1流体が第1流路から第1流体流出路へ流出する圧力交換処理が連続的に行なわれる。
【0032】
その際、回転体と第1側方部材の隙間に進入した第1流体または第2流体によって、回転体が第2側方部材に向けて押圧され、回転体と第2側方部材の隙間に進入した第1流体または第2流体によって、回転体が第1側方部材に向けて押圧される。その結果、回転体は、軸心方向に沿って両側から略等しい力で押圧されるようになり、第1側方部材及び第2側方部材の何れか一方向に片寄ることなく圧力バランスが取られる。
【0033】
しかも、各隙間に進入した流体が潤滑剤として機能し、回転体が第1側方部材または第2側方部材と摺動すること無く、安定して円滑に回転するようになる。さらに、回転体と保持部材との隙間に進入した流体が潤滑剤として機能し、回転体が保持部材の内周面と摺動することも回避でき、安定して円滑に回転するようになる。
【0034】
その結果、第1側方部材、第2側方部材、及び保持部材と、回転体との磨耗が低減でき、高価な耐磨耗性材料を用いなくとも耐久性を向上させることができるようになる。さらに、処理流量を増大するために回転体を大径に形成し、第1流路及び第2流路の断面積を大きく構成した場合でも、回転体は安定して円滑に回転するため、回転体を回転駆動するために要するエネルギーが低く抑えられるようになる。尚、各隙間は、狭過ぎると大きな摺動抵抗が発生し、広過ぎると流体の漏れ量が多くなり圧力の交換効率が低下するため、好ましくは1〜100μm程度に設定される。
【0035】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記第1側方部材または前記第2側方部材の少なくとも一方を押圧して、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間隔を調整する押圧機構を備えている点にある。
【0036】
上述の構成によれば、仮に第1側方部材または第2側方部材と回転体との摺動に起因する磨耗で隙間が大きくなり、流体の隙間への漏れ量が増して圧力の交換効率が低下するような場合であっても、押圧機構により第1または第2側方部材の少なくとも一方を押圧することによって、第1及び第2側方部材の間隔が調整できるようになる。これにより、部品交換等の規模の大きな分解を伴うメンテナンスを行なわなくても長期間安定して稼動させることができるようになる。
【0037】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三特徴構成に加えて、前記押圧機構は、前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との対向面とは異なる端面側に夫々配置された第1エンドカバー及び第2エンドカバーと、前記第1エンドカバーと前記第2エンドカバーとを締結する連結部材とで構成されている点にある。
【0038】
上述の構成によれば、第1及び第2側方部材の一対の端面のうち、回転体と対向する端面とは反対側の端面側に、第1エンドカバー及び第2エンドカバーがそれぞれ配置され、第1及び第2側方部材と回転体との隙間に進入した流体によって第1及び第2側方部材にかかる圧力が各エンドカバーで受止められる。そして、第1エンドカバーと第2エンドカバーを締結する連結部材の締結の程度を調整すれば、回転体と第1及び第2側方部材との夫々の隙間を好ましい値に調整することができ、回転体の円滑な回転を維持することができるようになる。
【0039】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第四特徴構成に加えて、少なくとも前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間と、第1流体または第2流体を前記第1閉空間に導くように、前記第1エンドカバーに形成された第1連通路と、少なくとも前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画される第2閉空間と、第1流体または第2流体を前記第2閉空間に導くように、前記第2側方部材に形成された第2連通路と、を備えている点にある。
【0040】
回転体と第1側方部材との隙間に進入した第1流体または第2流体によって、第1側方部材には回転体と離隔する外側方向へ圧力が作用し、特に第1閉空間に面する第1側方部材には大きな圧力が作用する。しかし、第1エンドカバーに形成された第1連通路から第1閉空間に第1流体または第2流体が導かれるので、第1閉空間に面する第1側方部材の両面での圧力バランスが保たれる。その結果、第1側方部材を薄肉化しても流体の圧力によって第1側方部材が回転軸心方向に歪むようなことが回避され、回転体の円滑な回転を維持することができるようになる。
【0041】
同様に、回転体と第2側方部材との隙間に進入した第1流体または第2流体によって、第2側方部材には回転体と離隔する外側方向へ圧力が作用し、特に第2閉空間に面する第2側方部材には大きな圧力が作用する。しかし、第2エンドカバーに形成された第2連通路から第2閉空間に第1流体または第2流体が導かれるので、第2閉空間に面する第2側方部材の両面での圧力バランスが保たれる。その結果、第2側方部材を薄肉化しても流体の圧力によって第2側方部材が回転軸心方向に歪むようなことが回避され、回転体の円滑な回転を維持することができるようになる。
【0042】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第五特徴構成に加えて、前記保持部材を収容する筒状のケーシングを備え、前記第1側方部材及び前記第2側方部材と、前記保持部材の外周面と、前記ケーシングの内周面とで区画された外周閉空間と、前記回転体と前記保持部材との隙間と前記外周閉空間を連通するように、前記保持部材に形成された第3連通路と、を備えている点にある。
【0043】
上述の構成によれば、回転体と第1側方部材及び第2側方部材との隙間を経由して、回転体の外周面と保持部材の内周面との隙間に進入した流体が、保持部材に形成された第3連通路を介して、保持部材の外周面とケーシングの内周面との外周閉空間に進入するようになる。
【0044】
外周閉空間に導かれた流体の圧力と、回転体の外周面と保持部材の内周面との隙間に作用する流体の圧力とがバランスするので、保持部材を薄肉化しても保持部材が径方向に歪むようなことが回避される。その結果、運転中に回転体と保持部材との隙間が変動することなく好ましい値に保持されるので、回転体の円滑な回転を維持することができるようになる。
【0045】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第五または第六特徴構成に加えて、前記第1側方部材と前記第2側方部材に両端を支持された支軸を備え、前記支軸に貫通され、前記回転体の両端部で前記回転体を回転自在に軸支する軸部が、前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との夫々の対向面側へ突出するように、前記第1側方部材及び前記第2側方部材に一体に形成されている点にある。
【0046】
第1側方部材及び第2側方部材に、回転体側に突出するように形成された軸部によって回転体が回転自在に軸支され、さらに軸部を貫通する支軸によって回転体が第1側方部材と第2側方部材の間で回転自在に挟持された状態が維持される。
【0047】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、第1流路の断面積と第2流路の断面積が略等しくなるように形成されている点にある。
【0048】
上述の構成によれば、第1流路の断面積と第2流路の断面積が略等しくなるように形成されているので、流体が第1流路と第2流路を通流するときの圧力損失が低減され、効率の良い圧力伝達が可能となる。
【0049】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記第1側方部材は、第1流路に流入する若しくは第1流路から流出する第1流体のエネルギーまたは第2流路に流入する若しくは第2流路から流出する第2流体のエネルギーにより前記回転体にトルクを付与するトルク付与機構を備えている点にある。
【0050】
上述の構成によれば、第1側方部材に備えたトルク付与機構によって、第1流路に流入する若しくは第1流路から流出する第1流体のエネルギー、または第2流路に流入する若しくは第2流路から流出する第2流体のエネルギーが、回転体を回転させるためのトルクに変換される。従って、外部動力を付与しなくても、圧力変換対象となる流体のエネルギーによって回転体を回転させることができるようになる。そして、回転体の回転に伴って、圧力伝達部への第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構も不要になる。
【0051】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記回転体と前記第1側方部材及び前記第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されるとともに、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間に前記回転体を覆う保持部材が設けられ、前記保持部材の内周面と前記回転体の外周面とで前記回転体を回転可能に支持する軸受部が構成されている点にある。
【0052】
第1側方部材及び第2側方部材に、回転体の両端から回転軸心上で支持する軸部を形成すると、左右の軸部の寸法精度が得られない場合に、回転体の軸心と回転軸に傾きが発生して円滑な回転が損なわれる虞がある。しかし、上述の軸受部によれば、回転軸心に直交する回転体の外周断面及び保持部材の内周断面が円形に形成されているため、回転体の軸心と回転軸が傾くようなことが無く、回転体は回転体の外周面が保持部材の内周面で支持されながら滑らかに回転するようになる。このとき、回転体と第1側方部材及び第2側方部材との間に形成された隙間から進入した各流体が、保持部材の内周面と回転体の外周面との隙間に進入して潤滑剤として機能し、保持部材の内周面と回転体の外周面との摺動が抑制される。
【0053】
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第十特徴構成に加えて、前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との対向面とは異なる端面側に第1エンドカバー及び第2エンドカバーを配置し、前記回転体の中心部に前記回転軸心に沿って貫通形成された挿通部に支軸が挿通され、前記支軸の各端部が前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間、及び前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画される第2閉空間にそれぞれ設けられ、前記第1閉空間と前記挿通部を連通する第4連通路、及び前記第2閉空間と前記挿通部を連通する第5連通路が形成されている点にある。
【0054】
回転体と第1側方部材の隙間を経由して挿通部に進入した流体が、第4連通路を経由して第1閉空間に流入するとともに、回転体と第2側方部材の隙間を経由して挿通部に進入した流体が、第5連通路を経由して第2閉空間に流入し、第1閉空間と第2閉空間と挿通部とが略同じ圧力に維持される。従って、第1側方部材のうち第1閉空間を区画する部位で撓みが生じないように両面の圧力バランスが図られ、第2側方部材のうち第2閉空間を区画する部位で撓みが生じないように両面の圧力バランスが図られる。このような構成を採用すれば、第1側方部材及び第2側方部材を薄肉化することができ、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができる。
【0055】
同第十二の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の第十または第十一特徴構成に加えて、前記第1側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力を受ける第1圧力領域と、前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力を受ける第2圧力領域とが形成され、前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との対向部のうち、前記第1流体流入路の開口部周辺領域であって前記第1圧力領域に略対応する領域に第1調圧領域が区画され、前記第2流体流入路の開口部周辺領域であって前記第2圧力領域に略対応する領域に第2調圧領域が区画されている点にある。
【0056】
回転体の回転に伴って、第1側方部材のうち回転体に対向する端面には、第1流体流入路から進入した第1流体の圧力を受ける第1圧力領域と、前記第2流体流入路から進入した第2流体の圧力を受ける第2圧力領域とが形成される。このとき、第1圧力領域と第2圧力領域に付与される流体の圧力が異なるため、第1側方部材が軸方向に撓み、圧力交換効率が低下する虞がある。しかし、第1エンドカバーと第1側方部材との対向部に区画形成された第1調圧領域に第1流体の圧力が付与されるとともに第2調圧領域に第2流体の圧力が付与されるので、第1側方部材を挟んで第1圧力領域と第1調圧領域で圧力バランスが図られ、第1側方部材を挟んで第2圧力領域と第2調圧領域で圧力バランスが図られるようになり、第1側方部材の軸方向への撓みの発生が抑制されるようになる。
【0057】
同第十三の特徴構成は、同請求項13に記載した通り、上述の第十二特徴構成に加えて、前記第1側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第3圧力領域と、第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第4圧力領域とが形成され、前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との対向部のうち、前記第2流体流出路の開口部周辺領域であって前記第3圧力領域に略対応する領域に第3調圧領域が区画され、前記第1流体流出路の開口部周辺領域であって前記第4圧力領域に略対応する領域に第4調圧領域が区画されている点にある。
【0058】
回転体の回転に伴って、第1側方部材のうち回転体に対向する端面には、圧力交換後の第2流体の圧力を受ける第3圧力領域と、圧力交換後の第1流体の圧力を受ける第4圧力領域とが形成される。このとき、第3圧力領域と第4圧力領域に付与される流体の圧力が異なるため、第1側方部材が軸方向に撓み、圧力交換効率が低下する虞がある。しかし、第1エンドカバーと第1側方部材との対向部に区画形成された第3調圧領域に第2流体の圧力が付与されるとともに第4調圧領域に第1流体の圧力が付与されるので、第1側方部材を挟んで第3圧力領域と第3調圧領域で圧力バランスが図られ、第1側方部材を挟んで第4圧力領域と第4調圧領域で圧力バランスが図られるようになり、第1側方部材の軸方向への撓みの発生が抑制されるようになる。
【0059】
同第十四の特徴構成は、同請求項14に記載した通り、上述の第十二特徴構成に加えて、前記第2側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力及び第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第5圧力領域と、前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力及び第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第6圧力領域と、前記第5圧力領域と第6圧力領域の間に前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力と前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力との間の中間圧力を受ける第7圧力領域とが形成され、前記第2エンドカバーと前記第2側方部材との対向部のうち、前記第5圧力領域に略対応する領域に第5調圧領域が区画され、前記第6圧力領域に略対応する領域に第6調圧領域が区画され、前記第7圧力領域に略対応する領域に第7調圧領域が区画されている点にある。
【0060】
回転体の回転に伴って、第2側方部材のうち回転体に対向する端面には、第1流体流入路から供給された第1流体の圧力及び第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第5圧力領域と、第2流体流入路から供給された第2流体の圧力及び第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第6圧力領域と、第5圧力領域と第6圧力領域の間に第1流体流入路から供給された第1流体の圧力と第2流体流入路から供給された第2流体の圧力との間の中間圧力を受ける第7圧力領域とが形成される。このとき、第5圧力領域と第6圧力領域に付与される流体の圧力が異なるため、第2側方部材が軸方向に撓み、圧力交換効率が低下する虞がある。しかし、第2エンドカバーと第2側方部材との対向部に各圧力領域と対応するように区画形成された第5調圧領域、第6調圧領域及び第7調圧領域にそれぞれ付与される圧力によって、各圧力領域と調圧領域のバランスが図られるようになり、第2側方部材の軸方向への撓みの発生が抑制されるようになる。
【0061】
同第十五の特徴構成は、同請求項15に記載した通り、上述の第十から第十四の何れかの特徴構成に加えて、前記連通部が前記第2側方部材の厚み方向に貫通形成され、前記第2エンドカバーを通して前記回転体が目視できるように、前記第2エンドカバーの一部が光透過部材で構成されている点にある。
【0062】
圧力交換装置の試運転時、点検時、または運転時に、光透過部材で構成された第2エンドカバーを通して、第2側方部材の厚み方向に貫通形成された連通部を目視すると、回転体に形成された第1流路等の流路壁の動きによって回転体が回転しているか否かを極めて容易に確認することができるようになる。
【0063】
同第十六の特徴構成は、同請求項16に記載した通り、上述の第一から第十五の何れかの特徴構成に加えて、前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である点にある。
【0064】
上述の構成によれば、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体の圧力により逆浸透膜装置に供給される被濃縮流体を昇圧することができるので、逆浸透膜装置からの高圧濃縮流体の余剰圧力を捨てることなく有効なエネルギーとして利用することができる。
【発明の効果】
【0065】
以上説明した通り、本発明によれば、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】海水淡水化施設の概略フロー図
【図2】第1の実施形態を示し、圧力交換装置を説明する断面図
【図3】(a)は回転体の正面図、(b)は同断面図、(c)は同背面図
【図4】(a)は第1側方部材の正面図、(b)は同断面概略図、(c)は同背面図
【図5】(a)は第2側方部材の正面図、(b)は図5(a)のE−E線断面図、(c)は同背面図
【図6】(a)は図4(c)に示す第1流体流入路のA−A線断面図、(b)は図4(c)に示す第2流体流出路のB−B線断面図、(c)は図4(c)に示す第2流体流入路のC−C線断面図、(d)は図4(c)に示す第1流体流出路のD−D線断面図
【図7】回転体に形成された各流路と第1側方部材に形成された各流入路及び各流出路の位置を示す説明図
【図8】(a)は封止板の正面図、(b)は同断面概略図、(c)は同背面図
【図9】第2の実施形態を示し、圧力交換装置を説明する断面図
【図10】(a)は圧力交換装置の正面図、(b)は同背面図
【図11】(a)は回転体の正面図、(b)は同断面図
【図12】(a)は第1封止板の正面図、(b)は図12(c)に示すE−E線断面図、(c)は同背面図
【図13】(a)は第1側方部材の正面図、(b)は同断面図、(c)は同背面図
【図14】(a)は第1ガスケットの説明図、(b)は第2ガスケットの説明図、(c)は図14(a)に示すF−F線端面図
【図15】(a)は第2側方部材の正面図、(b)は図15(a)に示すG−G線断面図、(c)は同背面図
【図16】(a)は第2封止板の正面図、(b)は図16(a)に示すH−H線断面図
【図17】(a)は第3の実施形態を示し、圧力交換装置の正面図、(b)は同側断面図
【図18】(a)は第1側方部材の正面図、(b)は図18(a)のI−I線断面図、(c)は同背面図
【図19】(a)は第2側方部材の正面図、(b)は図19(a)のJ−J線断面図、(c)は同背面図
【図20】(a)は第1エンドカバーの正面図、(b)は図20(a)のK−K線断面図、(c)は同背面図
【図21】(a)は第2エンドカバーの正面図、(b)は図21(a)のL−L線断面図、(c)は同背面図
【図22】従来の圧力交換装置の説明図
【図23】従来の圧力交換装置の説明図
【図24】(a)は圧力交換装置の説明図、(b)は回転体の背面図
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下に、本発明による圧力交換装置の好ましい実施形態を説明する。
図1に示すように、海水淡水化施設は、海水を淡水化する施設であって、前処理装置1と、ろ過海水槽2と、供給ポンプ3と、保安フィルター4と、昇圧ポンプ5と、逆浸透膜装置6等を備えている。
【0068】
前処理装置1で夾雑物が取り除かれた海水は、ろ過水槽2に貯留され、供給ポンプ3で保安フィルター4に供給され、そこで海水に含まれる微細な異物が除去される。後段に設置された逆浸透膜装置6の逆浸透膜の詰まりを防止するためである。その後、海水は、昇圧ポンプ5によって浸透圧以上の所定の圧力に昇圧されて逆浸透膜装置6に供給される。
【0069】
逆浸透膜装置6に供給された高圧の海水は、逆浸透膜でろ過されることにより、各種塩類が除去されて淡水となる。こうして得られた淡水が飲料用水や工業用水等として利用される。
【0070】
逆浸透膜装置6は、逆浸透膜の一方側の海水に圧力をかけることにより、逆浸透膜の他方側に海水中の各種塩類が除去された淡水を染み出させる装置であり、海水をろ過するために、海水を浸透圧以上の所定の圧力に昇圧する必要がある。
【0071】
逆浸透膜装置6に供給された海水の全てが淡水化されるのではなく、例えば、逆浸透膜装置6に供給される海水のうち40%が淡水化されて取り出され、残りの60%は淡水化されることなく逆浸透膜装置6から排水される。この淡水化されなかった60%の濃縮海水は非常に高い圧力を保持している。
【0072】
そこで、逆浸透膜装置6から排水された非常に高い圧力の濃縮海水(以下「高圧濃縮海水Hi」と記す)の圧力を利用して逆浸透膜装置6に供給する海水を昇圧する圧力交換装置10を海水淡水化施設に備えて、海水淡水化施設全体のエネルギー効率の向上を図っている
【0073】
例えば、保安フィルター4から逆浸透膜装置6に供給される海水のうち40%の海水が、高圧ポンプ5によって浸透圧以上の6.9MPaの圧力に昇圧され、残りの60%の海水(以下、「低圧海水Li」と記す)が、圧力交換装置10とブースターポンプ7によって6.9MPaの圧力に昇圧される。
【0074】
ろ過対象となる低圧海水Liと、逆浸透膜装置6から排水された高圧濃縮海水Hiとが、圧力交換装置10に供給されて圧力交換され、高圧濃縮海水Hiによって6.75MPaに昇圧された低圧海水Liが高圧海水Hoとして圧力交換装置10から排水される。
【0075】
この高圧海水Hoがブースターポンプ7によって6.9MPaに昇圧されて、逆浸透膜装置6に供給される。尚、圧力交換装置10で低圧海水Liに圧力を伝達した高圧濃縮海水Hiは低圧濃縮海水Loとして圧力交換装置10から排水される。
【0076】
以下に説明する実施形態では、高圧濃縮海水Hiと低圧濃縮海水Loが第1流体となり、低圧海水Liと高圧海水Hoが第2流体となる。また、低圧海水Liが被濃縮流体となる。
【0077】
以下に圧力交換装置の第1の実施形態を説明する。
図2に示すように、圧力交換装置10は、回転体40と、回転体40を挟むように回転体40の両側に配置され、回転体40を回転可能に挟持する第1側方部材20及び第2側方部材30と、第1側方部材20及び第2側方部材30の間で回転体40の周部を覆うように配置された筒状の保持部材11を備えている。
【0078】
さらに、第1側方部材20、第2側方部材30、及び保持部材11を収容する筒状のケーシング13が設けられ、ケーシング13のうち第1側方部材20側の一端面を封止する第1エンドカバー14と、第2側方部材30側の他端面を封止する第2エンドカバー15等を備えている。
【0079】
図2及び図3(a),(b),(c)に示すように、回転体40は、一端側から第1流体が流入及び流出する複数本の第1流路41と、同じく一端側から第2流体が流入及び流出する複数本の第2流路42とが、回転軸心周りに配設されるように回転軸心方向に貫通形成された円柱状部材で構成されている。
【0080】
具体的に、回転体40には、16組の第1流路41と第2流路42が回転軸心周りに放射状に配置されている。そして、第1流路41と第2流路42は各断面積が略等しくなるように形成されている。これにより、流体が第1流路と第2流路を通流するときの圧力損失が低減され、効率のよい圧力伝達が可能となる。尚、本発明は、第1流路41と第2流路42の断面積が多少異なる値に設定されていてもよい。
【0081】
第1流路41と第2流路42の間に形成される流路壁40wが回転体40の軸方向に全長に亘って存在するので、回転体40の周方向に隣接形成された第1流路41間の隔壁41w及び第2流路42間の隔壁42wにかかる圧力を、第1流路41と第2流路42の間の流路壁40wでも支えることができる。
【0082】
図2及び図4(a),(b),(c)に示すように、第1側方部材20は、第1流体流入路21と、第2流体流出路22と、第2流体流入路23と、第1流体流出路24との四本の流路が厚み方向に形成された円盤状部材で構成されている。
【0083】
第1流体流入路21は、第1エンドカバー14側から供給される第1流体を第1流路41に案内する流路であり、第2流体流入路23は、第1エンドカバー14側から供給される第2流体を第2流路42に案内する流路である。
【0084】
第2流体流出路22は、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路42から第1エンドカバー14側に案内する流路であり、第1流体流出路24は、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路41から第1エンドカバー14側に案内する流路である。
【0085】
図2及び図5(a),(b),(c)に示すように、第2側方部材30は、第1流路41と第2流路42とを連通して第1流体と第2流体との間で圧力を交換する連通部31,32,33,34が形成された円盤状部材である。第1流路41と第2流路42及びそれらを連通する連通部31,32,33,34によって圧力交換部が構成される。
【0086】
第1側方部材20、第2側方部材30、回転体40、保持部材11のそれぞれは、アルミナ等のセラミックス、FRP、または、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等のように、海水に対する耐食性があり、十分に強度のある材料を用いることができる。
【0087】
二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼を用いた場合には、回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との対向面、及び保持部材11の内周面を窒化処理し、或はアルミナ等のセラミックを溶射し、肉盛溶接し、或はHIP処理して摩擦係数を低減する耐磨耗層を形成することが好ましい。
【0088】
また、回転体40と保持部材11は、温度変化による熱膨張を考慮すると、熱膨張率が同等の素材を選択して構成することが好ましい。
【0089】
ケーシング13は、樹脂材料、FRPまたは、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等の金属材料のように、海水に対する耐食性があり、ある程度強度を備えた材料を用いることができる。
【0090】
ステンレス鋼等の高強度の金属管を樹脂材料やセラミックスで被覆して耐食性を付加して構成してもよい。これにより、耐食性に劣る安価な材料を利用することができコストダウンが図れる。
【0091】
図2に戻り、回転体40の中心部に回転軸心に沿って挿通部44が貫通形成されている。挿通部44の両端側に、中央部よりも拡径された軸受部47a,47bが形成され、第1側方部材20と第2側方部材30の夫々に、軸受部47a,47bに向けて突出するように形成された軸部48a,48bが一体に形成されている。
【0092】
回転体40の軸受部47a,47bに、第1側方部材20及び第2側方部材30の軸部48a,48bが挿入されることにより、回転体40が回転可能に軸支される。
【0093】
軸部48a,48bを貫通するように、挿通部44に支軸43が挿通され、支軸43の各端部が第1側方部材20及び第2側方部材30で支持されている。支軸43は先端にねじ部が形成された六角ボルトで構成され、当該六角ボルトが第2側方部材30側から第1側方部材20へ挿通され、第1側方部材20側でねじ部がダブルナットで締め付けられている。
【0094】
第1エンドカバー14には、第1流体流入路21と連通する第1流体流入口25と、第2流体流出路22と連通する第2流体流出口26と、第2流体流入路23と連通する第2流体流入口27と、第1流体流出路24と連通する第1流体流出口28が形成されている。
【0095】
さらに、第1エンドカバー14とケーシング13はボルトで螺着され、第1エンドカバー14のケーシング13との接触面には、円周方向にシールが配設され、ケーシング13の外部への流体の漏れが防止されている。
【0096】
ケーシング13が第1エンドカバー14とボルトで螺着されて一体となっているので、回転体40を第2エンドカバー15側から抜き出してメンテナンスする際に、ケーシング13が回転体40に付随して、外れることが無く、メンテナンス性が向上する。
【0097】
第1エンドカバー14及び第2エンドカバー15は、両端にねじが切られた複数本のボルト12aと、両端のねじに螺合するナット12b,12cで構成された連結部材12によって締結されている。
【0098】
第1側方部材20には、第1流路41に流入する第1流体のエネルギーや第1流路41から流出する第1流体のエネルギー、または第2流路42に流入する第2流体のエネルギーや第2流路42から流出する第2流体のエネルギーにより回転体40にトルクを付与するトルク付与機構が設けられている。
【0099】
トルク付与機構により付与されるトルクで回転体40が回転軸心周りに回転することにより、第1流体流入路21から第1流路41に流入する高圧の第1流体(高圧濃縮海水Hi)と、第2流体流入路23から第2流路42に流入する低圧の第2流体(低圧海水Li)とが、第2側方部材30の連通部31,32を介して圧力交換され、高圧の第2流体(高圧海水Ho)が第2流体流出路22から流出する。
【0100】
同じく、トルク付与機構により付与されるトルクで回転体40が回転軸心周りに回転することにより、第1流体流入路21から第1流路41に流入する高圧の第1流体(高圧濃縮海水Hi)と、第2流体流入路23から第2流路42に流入する低圧の第2流体(低圧海水Li)とが、第2側方部材30の連通部33,34を介して圧力交換され、低圧の第1流体(低圧濃縮海水Lo)が第1流体流出路24から流出する。
【0101】
つまり、第1側方部材20及び第2側方部材30と保持部材11で仕切られる空間内で回転体40が回転することで、第1流体流入路21から第1流路41に流入した第1流体から圧力伝達された第2流体が第2流路42から第2流体流出路22へ流出し、第2流体流入路23から第2流路42に流入した第2流体から圧力伝達された第1流体が第1流路41から第1流体流出路24へ流出する圧力交換処理が連続的に行なわれる。
【0102】
回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との間に各流体が進入する隙間が形成されている。
【0103】
回転体40と第1側方部材20の隙間に進入した第1流体または第2流体によって、回転体40が第2側方部材30に向けて押圧され、回転体40と第2側方部材30の隙間に進入した第1流体または第2流体によって、回転体40が第1側方部材20に向けて押圧される。第1側方部材20及び第2側方部材30にかかる押圧力は、第1エンドカバー14及び第2エンドカバー15で受け止められる。
【0104】
その結果、回転体40は、軸心方向に沿って両側から略等しい力で押圧されるようになり、第1側方部材20及び第2側方部材30の何れか一方向に片寄ることなく圧力バランスが取られる。しかも、各隙間に進入した流体が潤滑剤として機能し、回転体40が第1側方部材20または第2側方部材30と摺動すること無く、安定して円滑に回転するようになる。
【0105】
さらに、回転体40と保持部材11との間にも隙間が形成され、当該隙間に進入した流体が潤滑剤として機能し、回転体40が保持部材11の内周面と摺動することも回避でき、安定して円滑に回転するようになる。
【0106】
具体的に、保持部材11の内径が回転体40の外径より僅かに大きく設定され、保持部材11の長さが回転体40の回転軸心方向長さより僅かに長く設定されている。また、保持部材11の周面には、複数の第3連通路45が周方向に対称な位置に貫通形成されている。
【0107】
回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との隙間を介して、回転体40の外周面と保持部材11の内周面との隙間に進入した流体が、拡径領域11a及び第3連通路45を介して保持部材11の外周面とケーシング13の内周面との外周閉空間46に進入する。
【0108】
外周閉空間46に導かれた流体の圧力は、回転体40と保持部材11の内周面との隙間に作用する流体の圧力と略等しく、保持部材11の内周面と外周面の両面に作用する押圧力が釣り合う。このような構成が採用されるので、保持部材11が径方向に歪むようなことが無く、保持部材11を薄肉化することが可能になる。
【0109】
つまり、第1側方部材20、第2側方部材30、及び保持部材11と、回転体40との磨耗が低減でき、高価な耐磨耗性材料を用いなくても耐久性を向上させることが可能になる。
【0110】
このような構成によれば、圧力交換装置10の処理量を増大するために、回転体40を大径に形成し、第1流路41及び第2流路42の断面積を大きく構成した場合でも、回転体40を回転駆動するためにトルク付与機構に要するエネルギーが低く抑えられるようになる。
【0111】
尚、各隙間は、狭過ぎると大きな摺動抵抗が発生して回転に必要なエネルギーが増加し、広過ぎると流体の漏れ量が多くなり圧力の交換効率が低下するため、好ましくは1〜100μm程度に設定される。各隙間は、回転体40と保持部材11の軸方向の長さの差によって設定されるが、摺動の発熱により膨張しても隙間が変動しないように同じ素材で形成することが好ましい。
【0112】
圧力交換装置10には、第1側方部材20または第2側方部材30の少なくとも一方を押圧して、第1側方部材20と第2側方部材30との間隔を調整する押圧機構が設けられ、当該押圧機構により隙間が良好に調整可能に構成されている。
【0113】
具体的に、第1エンドカバー14と第2エンドカバー15を連結する連結部材12が押圧機構として機能し、ナット12b,12cの締付力を調整することによって、第1エンドカバー14と第2エンドカバー15の間隔が調整され、これにより、第1側方部材20及び第2側方部材30が、第1エンドカバー14及び第2エンドカバー15で押圧されて、第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との間隙が調整される。
【0114】
また、第1側方部材20及び第2側方部材30で支持された支軸43も押圧機構として機能し、ダブルナットの締付力を調整することによって、第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との間隙が調整される。
【0115】
連結部材12により、主に第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との周縁領域の間隙が調整され、支軸43により、主に第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との中心部分の間隔が調整される。
【0116】
仮に第1側方部材20または第2側方部材30と回転体40の端面が磨耗して隙間が大きくなり、流体が漏れて圧力の交換効率の低下を招くような場合であっても、押圧機構により第1側方部材20または第2側方部材30と回転体40との間隔が調整できるので、回転体40などの主要部品の磨耗等による交換頻度を減らすことができるようになる。
【0117】
さらに、第1側方部材20と第1エンドカバー14とで区画される第1閉空間16が形成され、少なくとも第1流体または第2流体を第1閉空間16に導くように、第1エンドカバー14に第1連通路17が形成されている。
【0118】
具体的に、第1エンドカバー14の中心部に凹部が形成され、該凹部と第1側方部材20とで第1閉空間16が区画されている。当該第1閉空間16が、支軸43を締付けるダブルナットの収容空間となる。
【0119】
第1エンドカバー14には、第1流体または第2流体を第1閉空間16に導く第1連通路17が形成されている。本実施形態では、第1連通路17の一端が第1流体流入口25に開口するように構成され、第1連通路17を介して第1流体(高圧濃縮海水Hi)が第1閉空間16に流入する。
【0120】
回転体40と第1側方部材20との隙間に進入した第1流体または第2流体によって、第1側方部材20には回転体40と離隔する外側方向へ圧力が作用する。特に第1閉空間16に面する第1側方部材20の中心領域には、挿通部44に流入した流体の大きな圧力がかかる。
【0121】
しかし、第1エンドカバーに形成された第1連通路から第1閉空間に第1流体または第2流体が導かれるので、第1閉空間16に面する第1側方部材20の両面で圧力バランスが保たれるようになる。
【0122】
第2側方部材30と第2エンドカバー15とで区画される第2閉空間38a,38bが形成され、少なくとも第1流体または第2流体を第2閉空間38a,38bに導くように、第2側方部材30に第2連通路39a,39bが形成されている。
【0123】
具体的に、図2、図5及び図8に示すように、第2側方部材30と第2エンドカバー15の間には封止板35が配設されている。封止板35の一端面に形成された隔壁38cと第2側方部材30とで第2閉空間38a,38bが区画されている。
【0124】
封止板35のうち第2側方部材30と接触する一端面にシール36aが備えられ、封止板35の外周面にシール36bが備えられている。当該封止板35は第2エンドカバーにボルトで固定されている。従って、連結部材12のナット12b,12cを締め付けることによって、封止板35が第2側方部材30へと押圧される。
【0125】
第2側方部材30に形成された連通部31,32には、高圧流体を第2閉空間38aへと導く第2連通路39aが厚み方向に貫通形成され、第2側方部材30に形成された連通部33,34には、低圧流体を第2閉空間38bへと案内する第2連通路39bが厚み方向に貫通形成されている。
【0126】
第2閉空間38aには、連通部31,32の流体が第2連通路39aを介して流入し、第2閉空間38bには、連通部33,34の流体が第2連通路39bを介して流入する。第2閉空間38a,38bに流入した流体の圧力は、第2側方部材30を回転体40に向けて押圧するように作用する。
【0127】
回転体40の第1流路41及び第2流路42を流れる高圧濃縮海水Hi及び高圧海水Hoが第2側方部材30に作用する押圧力と、第2閉空間38aから第2側方部材30に作用する押圧力とがバランスする。
【0128】
また、回転体40の第1流路41及び第2流路42を流れる低圧濃縮海水Lo及び低圧海水Liが第2側方部材30に作用する押圧力と、第2閉空間38bから第2側方部材30に作用する押圧力とがバランスする。
【0129】
上述の例で、封止板35と第2エンドカバー15が一体に形成されていてもよい。この場合は、第2側方部材30と、第2エンドカバーとで第2閉空間38が区画される。また、第2閉空間38a,38bが隔壁38cにより2等分された例を説明したが、圧力バランスが保たれる限り、4等分など第2閉空間の区画数が増えてもよい。
【0130】
以上の通り、第1側方部材20及び第2側方部材30ともに、両面に作用する圧力のバランスが確保でき、回転軸心方向に歪みが発生するようなことが無くなるので、第1側方部材20及び第2側方部材30を薄肉化することができる。しかも、回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との隙間が全面で一定に保たれるようになり、回転体40の円滑な回転が可能となる。
【0131】
尚、撓みが生じると回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との隙間に広狭が生じ、隙間が狭くなると回転抵抗が増加して回転体に必要なエネルギーが増大し、隙間が広がると流体の漏れが増大して効率が低下する。
【0132】
回転体、第1及び第2側方部材、第1及び第2エンドカバーの作用する圧力のバランスや流体の流れを考慮し、第1及び第2側方部材、第1及び第2エンドカバー、封止板の周方向の位置関係が周方向に変動しないように、それぞれピンやボルトなどで固定することが好ましい。
【0133】
次に、図2、図4(a),(b),(c)及び図6(a),(b),(c),(d)に基づいて、トルク付与機構について詳述する。
図4(a),(b),(c)に示すように、第1流体流入路21は、第1側方部材20の入口側開口部21aから出口側開口部21bにかけて、回転体40の周方向に配列された複数の第1流路41と同時に連通するように、周方向に拡径して形成された第1傾斜部としての流路壁21cを備えて構成されている。
【0134】
第2流体流出路22は、第1側方部材20の出口側開口部22aから入口側開口部22bにかけて、回転体40の周方向に沿って複数の第2流路42と同時に連通するように拡径して形成された第2傾斜部としての流路壁22cを備えて構成されている。
【0135】
第2流体流入路23は、第1側方部材20の入口側開口部23aから出口側開口部23bにかけて、回転体40の周方向に沿って複数の第2流路42と連通するように拡径して形成された第2傾斜部としての流路壁23cを備えて構成されている。
【0136】
第1流体流出路24は、第1側方部材20の出口側開口部24aから入口側開口部24bにかけて、回転体40の周方向に沿って複数の第1流路41と同時に連通するように拡径して形成された第1傾斜部としての流路壁24cを備えて構成されている。
【0137】
このような形状をした各流入路21,23及び流出路22,24により、回転体40に対するトルク付与機構が構成されている。
【0138】
図6(a),(c)に示すように、流路壁21cの傾斜方向と流路壁23cの傾斜方向は円周方向に対して同じ向きに設定されている。
図6(a),(b)に示すように、流路壁21cの傾斜方向と流路壁22cの傾斜方向が円周方向に対して逆になるように設定されている。
図6(c),(d)に示すように、流路壁23cの傾斜方向と流路壁24cの傾斜方向が円周方向に対して逆になるように設定されている。
【0139】
第1側方部材20の入口側開口部20aから第1流体流入路21に流入した高圧濃縮海水Hiは、第1傾斜部としての流路壁21cに沿って流れて、出口側開口部20bから複数の第1流路41に分散して流入する。
【0140】
このとき、回転体40の周方向に沿って第1流体流入路21を流れる高圧濃縮海水Hiは、第1流路41間に形成された壁面(隔壁41w)へ圧力を付与し、この圧力が回転体40を回転させるトルクとなる。
【0141】
また、複数の第2流路42を流れる高圧海水Hoが合流して第1側方部材20の入口側開口部22bから第2流体流出路22に流入した高圧海水Hoは、第2傾斜部としての流路壁22cに沿って流れて出口側開口部22aから流出する。
【0142】
このとき、第2流路42から第2流体流出路22に流入する高圧海水Hoは、通流断面積が広くなる向きに流れるため、第2流路42間に形成された壁面(隔壁42w)へ圧力を付与し、この圧力が回転体40を回転させるトルクとなる。
【0143】
流路壁21cの傾斜方向と流路壁22cの傾斜方向が逆向きに設定されているので、高圧濃縮海水Hiが第1流体流入路21から第1流路41に流入するときに発生するトルクと、高圧海水Hoが第2流路42から第2流体出路22へと流出するときに発生するトルクは同じ向きになる。
【0144】
つまり、トルク付与機構は、回転体40に流入する高圧濃縮海水Hiと回転体40から流出する高圧海水Hoのエネルギーにより、回転体40を回転させるトルクを発生させる。このとき、何れか一方のエネルギーのみで回転体40を回転させる場合よりも大きなトルクを発生させることができる。
【0145】
同様に、低圧海水Liが第2流体流入路23の流路壁23cに沿って第2流路42に流入するときのエネルギーにより回転体40を回転させるトルクが発生し、低圧濃縮海水Loが第1流路41から第1流体流出路24の流路壁24cへ流出するときのエネルギーにより回転体40を回転させるトルクが発生する。そしてこれらのトルクも同じ向きになる。
【0146】
従って、外部動力を付与しなくても、圧力変換対象となる流体のエネルギーによって回転体40を回転させることができるようになる。そして、回転体40の回転に伴って、圧力伝達部への第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構も不要になる。
【0147】
尚、回転軸心から径方向に大きく離隔した流路に流入する流体のエネルギー、または回転軸心から径方向に大きく離隔した流路から流出する流体のエネルギーを利用する方が、同じエネルギーで大きなトルクを発生させることができるのでエネルギー効率がよい。
【0148】
図2及び図5(a),(b)に基づいて、第2側方部材30に形成された連通部31,32,33,34について詳述する。
圧力交換時には、第1流体流入路21から高圧濃縮海水Hiが流入する周方向に隣接する複数の第1流路41が、連通部31,32を介して、同じく周方向に隣接する複数の第2流路42と同時に連通し、圧力交換後の高圧海水Liが第2流体流出路22を介して流出する。
【0149】
このとき、トルク付与機構の作用に起因して、複数の第1流路41及び第2流路42で発生する圧損が周方向でそれぞれ異なる。そのため、第1流路41から連通部31に流入した流体が、連通部32を経由して圧損の低い第2流路42に流出すると、トルク付与機構が適正に機能せず、回転力が低下する虞がある。同様の現象が連通部33,34でも発生する虞がある。
【0150】
圧損の低い流路とは、流入路から流出路へと直線的に連通している流路をいい、例えば、図7の第1流路41b,41j、第2流路42o,42gのことである。
【0151】
そこで、トルク付与機構による適正なトルクが維持されるように、連通部31,32及び連通部33,34の中央部には、それぞれ第2側方部材30の表面よりも僅かに低い高さの隔壁wが形成されている。
【0152】
この隔壁wにより周方向への流れ、つまり圧損の低い流路への流れ(例えば、図7の第1流路41bから第2流路42oへの流れや、第2流路42jから第1流路41gへの流れ)が阻害される。
【0153】
その結果、径方向に隣接する第1流路41から第2流路42への流れ、または第2流路42から第1流路41への流れ(例えば、第1流路41bから第2流路42bへの流れや、第2流路42jから第1流路41jへの流れ)が確保されて、トルク付与機構が適正に機能するようになる。
【0154】
さらに、第2側方部材30の連通部31,32,33,34が形成された面に、2本の連通溝37a,37bが形成されている。連通溝37a,37bは、例えば数ミリ程度の溝で形成され、連通部34と連通部31の間、及び連通部32と連通部33の間に配置されている。
【0155】
回転体40の第1流路41内または第2流路42内の高圧流体が低圧流体の連通路へと進入する際に、連通溝37a,37bを介して段階的に圧力が低下するので大きな圧力変動が緩和され、低圧流体が高圧流体の連通路へと進入する際に、連通溝37b,37aを介して段階的に圧力が上昇するので大きな圧力変動が緩和される。
【0156】
このような構成によって、高圧流体が低圧流体の連通路へと進入したときの圧力の急変によるキャビテーション等の不都合な事態の発生を防止することができる。また、回転体40の隔壁41w,42wへ掛かる水圧差が減少して、回転体40の破損の虞が減るとともに、隔壁41w,42wを薄肉化することができ、軽量化や大容量化に対応することができる。
【0157】
以上のように構成された圧力交換装置10の具体的な圧力交換処理について説明する。
図7に示すように、回転体40には、第1流路41a〜41pと第2流路42a〜42pとで構成される16組の圧力伝達部が、回転軸心周りに放射状に配設されている。
【0158】
図7中、二点鎖線で示す領域は、第1側方部材20に形成された第1流体流入路21の出口側開口部21bと、第2流体流出路22の入口側開口部22bと、第2流体流入路23の出口側開口部23bと、第1流体流出路24の入口側開口部24bに対応する領域を表している。
【0159】
第1流体流入路21には、回転体40の周方向に隣接する第1流路41c,41b,41a,41p,41o,41nの6本が同時に連通し、第2流体流出路22には、同じく回転体40の周方向に隣接する第2流路42c,42b,42a,42p,42o,42nの6本が同時に連通する。
【0160】
第1流路41c,41b,41a,41p,41o,41nと第2流路42c,42b,42a,42p,42o,42nは、第2側方部材30に形成された連通部31,32で互いに連通している。
【0161】
第2流体流入路23には、回転体40の周方向に隣接する第2流路42f,42g,42h,42i,42j,42kの6本が同時に連通し、第1流体流出路24には、同じく回転体40の周方向に隣接する第1流路41f,41g,41h,41i,41j,41kの6本が同時に連通する。
【0162】
第2流路42f,42g,42h,42i,42j,42kと第1流路41f,41g,41h,41i,41j,41kは、第2側方部材30に形成された連通部33,34で互いに連通している。
【0163】
第1流体流入路21に流入した高圧濃縮海水Hiは、第1流路41c,41b,41a,41p,41o,41nの夫々に分散して流入する際に、流路壁21cに沿って流れ、図7中一点鎖線の矢印で示すように、回転体40には時計回りのトルクが付与される。
【0164】
第1流路41c,41b,41a,41p,41o,41nに流入した高圧濃縮海水Hiの圧力が、夫々第2側方部材30内で連通した第2流路42c,42b,42a,42p,42o,42nの海水に伝達されて、高圧海水Hoが第2流路42c,42b,42a,42p,42o,42nから第2流体流出路22へ流出する。
【0165】
高圧海水Hoが第2流路42c,42b,42a,42p,42o,42nから第2流体流出路22へと流出する際に、その流れが広くなるように流路壁22cに沿って流れ、図7中一点鎖線の矢印で示すように、回転体40には時計回りのトルクが付与される。
【0166】
第2流体流入路23に流入した低圧海水Liが、第2流路42f,42g,42h,42i,42j,42kの夫々に分散して流入するときに、低圧海水Liは、流路壁23cに沿って流れ、回転体40には、図7中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与される。
【0167】
第2流路42f,42g,42h,42i,42j,42kに流入した低圧海水Liの圧力が、夫々第2側方部材30内で連通した第1流路41f,41g,41h,41i,41j,41kの濃縮海水に伝達されて、低圧濃縮海水Loが第1流路41f,41g,41h,41i,41j,41kから第1流体流出路24へ流出する。
【0168】
低圧濃縮海水Loが第1流路41f,41g,41h,41i,41j,41kから第1流体流出路24へ流出する際に、流れを広くするように流路壁24cに沿って流れ、図7中一点鎖線の矢印で示すように、回転体40には時計回りのトルクが付与される。
【0169】
以上のように、高圧濃縮海水Hiが回転体40に与えるトルクと、高圧海Hoが回転体40に与えるトルクと、低圧海水Liが回転体40に与えるトルクと、低圧濃縮海水Loが回転体40に与えるトルクの全てが同一方向となり、回転体40は時計周りに回転する。
【0170】
回転体40の回転に伴って、第1流体流入路21及び第2流体流出路22と、第2流体流入路23及び第1流体流出路24とに、それぞれ連通する第1流路41及び第2流路42の組が切り替わる。
【0171】
そして、高圧濃縮海水Hiから高圧海水Hoへの圧力の伝達、及び、低圧海水Liから低圧濃縮海水Loへの圧力の伝達、つまり第1流体と第2流体との間の圧力交換処理が連続的に行なわれる。
【0172】
第1流路41及び第2流路42内で濃縮海水と海水が混在するが、各々の流体は塩分濃度差があるため、拡散により一定量が常に混ざった混合領域が境界部分に形成されるだけで、全体が混合されることは無い。当該混合領域は、ピストンのような役目を果たしながら、第1流路41と連通部31,32,33,34と第2流路42で形成される流路内部の一定範囲で往復移動することになる。
【0173】
回転体40の回転時に、第1流体流入路21、第2流体流出路22、第2流体流入路23、または第1流体流出路24の何れにも連通しない第1流路41d,41e,41l,41m、及び第2流路42d,42e,42l,42mでは圧力の交換は行なわれることはない。
【0174】
本実施形態では、第1流体流入路21、第2流体流出路22、第2流体流入路23、または第1流体流出路24に、回転体の回転に伴って第1流路及び第2流路が同時に5本または6本連通する例を説明したが、同時に連通する本数はこの値に制限されることはなく、適宜設定される。
【0175】
同時に連通する第1流路及び第2流路の本数が少なく、何れにも連通しない第1流路及び第2流路の本数が多いと、装置から排水される水の脈動が大きくなる。また、流体流入路及び流体流出路の何れにも連通しない本数が少ないと、高圧の流体から低圧の流体への漏れ量が増加する。
【0176】
回転体40に流入する高圧濃縮海水Hi及び低圧海水Li、回転体40から流出する高圧海水Ho及び低圧濃縮海水Loのエネルギーによって回転体40が回転するように構成されているため、回転体40に流入する各流体のエネルギーのみで回転する場合より大きなトルクを付与することができる。
【0177】
流路壁21c,22c,23c,24cの形状が変わると、流入路から各流路に流入する流体及び各流路から流出路に流出する流体の流れが変わり、回転体に付与されるトルクが変わり、回転体の回転数が変わる。
【0178】
つまり、回転体40の回転数は、流路壁21c,22c,23c,24cの形状に依存する。圧力交換装置10の処理流量は、回転体40の回転数に依存するため、流路壁21c,22c,23c,24cの形状を変更することにより回転体40の回転数を調整し、圧力交換装置10の処理流量を調整することができる。例えば、当該形状の異なる第1側方部材を複数準備しておき、何れかを選択することで容易に処理流量を調整できる。
【0179】
次に、圧力交換装置の第2の実施形態を説明する。
以下の説明では、主に第1の実施形態と異なる構成について詳しく説明し、第1の実施形態と同一の構成については説明を簡略する。尚、第2の実施形態を示す図9から図16(a),(b)では、第1の実施形態と同一の部材は同一の符号を付している。
【0180】
図9に示すように、第2の実施形態の圧力交換装置200も第1実施形態と同様に、回転体40と、回転体40を挟むように回転体40の両側に配置され、回転体40を回転可能に挟持する第1側方部材20及び第2側方部材30と、第1側方部材20及び第2側方部材30の間で回転体40の周部を覆うように配置された筒状の保持部材11を備えている。
【0181】
さらに、第1側方部材20、第2側方部材30、及び保持部材11を収容する筒状のケーシング13が設けられ、ケーシング13のうち第1側方部材20側の一端面を封止する第1エンドカバー14と、第2側方部材30側の他端面を封止する第2エンドカバー15等を備えている。
【0182】
図9及び図10(a),(b)に示すように、高圧濃縮海水Hiの流入配管51、高圧海水Hoの流出配管52、低圧海水Liの流入配管53、及び低圧濃縮海水Loの流出配管54が第1エンドカバー14に接続されている。
【0183】
流入配管51から第1流体流入路21を経由して回転体40の第1流路41に流入した高圧濃縮海水Hiと、流入配管53から第2流体流入路23を経由して回転体40の第2流路42に流入し、第1流路41の中にある低圧濃縮海水Loと圧力交換を終了した低圧海水Liとが、連通路31,32(図15(a)参照)で連通して圧力交換される。その結果、高圧海水Hoが第2流体流出路22を経由して流出配管52から流出する。
【0184】
同様に、流入配管53から第2流体流入路23を経由して回転体40の第2流路42に流入した低圧海水Liと、流入配管51から第1流体流入路21を経由して回転体40の第1流路41に流入し、第2流路42の中にある低圧海水Liと圧力交換を終了した低圧濃縮海水Loとが、連通路33,34(図15(a)参照)で連通して圧力交換される。その結果、低圧濃縮海水Loが第1流体流出路24を経由して流出配管54から流出する。
【0185】
図9及び図12(a),(b),(c)に示すように、ケーシング13の端部を封止する円盤状の第1封止板50aが第1エンドカバー14にボルト固定されている。第1封止板50aは、その直径がケーシング13の内周より僅かに小さく設定されており、その外周にケーシング13の内周との隙間のシール50e(図9参照)を嵌入するための溝50iが形成されている。尚、第1エンドカバー14の一部を構成する第1封止板50aは、第1エンドカバー14に一体に形成されていてもよい。
【0186】
第1封止板50aの厚み方向に第1流体流入口25、第2流体流出口26、第2流体流入口27、及び第1流体流出口28が貫通形成されている。第1エンドカバー14と対向する端面の開口部が、上述した各配管51、52、53、54の端部を挿入できるように円形に形成され、第1側方部材20と対向する端面の開口部が第1流体流入路21、第2流体流出路22、第2流体流入路23、及び第1流体流出路24と対応する形状に形成されている。
【0187】
第1封止板50aが第1側方部材20に対向配置されると、第1流体流入口25と第1流体流入路21とが連通し、同様に、第2流体流出口26と第2流体流出路22とが連通し、第2流体流入口27と第2流体流出路23とが連通し、第1流体流出口28と第1流体流出路24とが連通する。
【0188】
図9及び図10(a),(b)に示すように、各配管51、52、53、54には、それぞれ端部近傍の所定位置に、周方向に沿って切欠部55が形成されている。各配管51、52、53、54の端部が第1エンドカバー14に形成された各開口部に挿通され、さらに第1エンドカバー14の一部を構成する第1封止板50aに形成された第1流体流入口25、第2流体流出口26、第2流体流入口27、及び第1流体流出口28の開口部(図12(a)参照)に挿入される。さらにその後、各切欠部55に嵌合された状態のポート押え56が第1エンドカバー14にボルト固定される。
【0189】
このようにして、各配管51、52、53、54が圧力交換装置200に接続されている。本実施形態では、合計4つのポート押え56が、隣接する二本の配管の間に設けられ、各ポート押え56が隣接する二本の配管の夫々の切欠部55に嵌入されている。
【0190】
図9及び図16(a),(b)に示すように、ケーシング13の端部を封止する円盤状の第2封止板50bが第2エンドカバー15にボルト固定されている。第2封止板50bは、その直径がケーシング13の内周より僅かに小さく設定されており、その外周にケーシング13の内周との隙間のシール50fを嵌入するための溝50jが形成されている。尚、第2エンドカバー15の一部を構成する第2封止板50bは、第2エンドカバー15に一体に形成されていてもよい。
【0191】
第2側方部材30に形成された連通部31,32,33,34から、第2側方部材30の厚み方向に貫通された第2連通路39a,39bが形成されている(図15参照)。さらに、第2エンドカバー15に形成された覗き孔19を通して回転体40が目視できるように、第2エンドカバー15の一部を構成する第2封止板50bが光透過部材で構成されている。
【0192】
具体的に、第2封止板50bとしてアクリルやポリカーボネート等で構成される透明または半透明の樹脂板を用いることができる。尚、第2封止板50bを全て光透過部材で構成してもよいし、覗き孔19に対応する部分のみを光透過部材で構成してもよい。
【0193】
また、覗き孔19は、連通部31,32,33,34及び第2連通路39bまたは第2連通路39aと円周方向に一致する位置に形成されている。尚、本実施形態では覗き孔19が、低圧側の第2連通路39bと一致する位置に形成されている。これは、別部材で構成される覗き孔19に掛かる圧力を抑えるためである。
【0194】
さらに、本実施形態では、回転体40を容易に目視でき、そして回転の確認ができるように、第2連通路39a,39bは、第1の実施形態の圧力交換装置10の第2連通路39a,39bに比べて大径に形成されている。
【0195】
図9及び図11(a),(b)に示すように、回転体40は、一端側から第1流体が流入及び流出する複数本の第1流路41と、同じく一端側から第2流体が流入及び流出する複数本の第2流路42とが、回転軸心周りに配設されるように回転軸心方向に貫通形成された円柱状部材で構成されている。第1の実施形態と異なり、第1流路41が回転体40の径方向内側に配置され、第2流路42が回転体40の径方向外側に配置されている。
【0196】
保持部材11の内周面と回転体40の外周面とで軸受部が構成され、当該軸受部によって回転体40が回転可能に支持されている。そのため、第1の実施形態と異なり第1側方部材20及び第2側方部材30には軸部48a,48b(図2参照)が形成されておらず、回転体40には、軸受部47a,47b(図2参照)が形成されていない。軸受部とは、回転体を回転可能に支持する部分のことであり、回転体の回転軸心だけでなく回転体の外周面等、他の部分に形成することができる。
【0197】
保持部材11の周面に形成された第3連通路45の開口部と対向するように、回転体40の外周面には周方向に溝40aが形成されている。第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との隙間に進入した第1流体及び第2流体が、保持部材11と回転体40の隙間から溝40a及び第3連通路45を経由して保持部材11とケーシング13の隙間に進入する。
【0198】
これにより、保持部材11の内周面と回転体40の外周面との間が第1流体及び第2流体で満たされる。この流体が潤滑剤として機能するため、回転体40は、保持部材11の内周面と回転体40の外周面とが直接に摺動することなく、間隔を隔てた状態で円滑に回転する。
【0199】
また、保持部材11の内周面と外周面には同じ圧力の流体が満たされるので、径方向に撓むことなく、保持部材11の内周面と回転体40の外周面とが摺動することなく円滑に回転する。
【0200】
回転体40の中心部に回転軸心に沿って貫通形成された挿通部44に支軸43が挿通され、支軸43の各端部に形成されたネジ部を固定する固定部としてのナット43a,43bが、第1側方部材20と第1エンドカバー14の第1封止板50aとで区画される第1閉空間16、及び第2側方部材30と第2エンドカバー15の一部を構成する第2封止板50bとで区画される第2閉空間18にそれぞれ設けられている。
【0201】
第1閉空間16と挿通部44を連通する第4連通路49a、及び第2閉空間18と挿通部44を連通する第5連通路49bが、支軸43に形成されている。
【0202】
回転体40と第1側方部材20との隙間を経由して挿通部44に進入した流体と、回転体40と第2側方部材30との隙間を経由して挿通部44に進入した流体が、第4連通路49aを経由して第1閉空間16に流入するとともに、第5連通路49bを経由して第2閉空間18に流入し、第1閉空間16と第2閉空間18と挿通部44とが略同じ圧力に維持される。
【0203】
従って、第1側方部材20のうち第1閉空間16を区画する部位で両面の圧力バランスが保たれて撓みが生じない。第2側方部材30のうち第2閉空間18を区画する部位で両面の圧力バランスが保たれて撓みが生じない。
【0204】
支軸43に形成された第4連通路49aは、一端が支軸43の軸心方向の端部において第1閉空間16に開放され、他端が支軸43の外周部の径方向で挿通部44に開放され、第4連通路49aの一端と他端は、支軸43内部で連通されて構成されている。支軸43に形成された第5連通路49bも同様に構成されている。
【0205】
第4連通路49a及び第5連通路49bは、必ずしも支軸43に形成される必要は無く、第1閉空間16と挿通部44及び第2閉空間18と挿通部44を連通できれば、図17(b)に示したように、第1側方部材20及び第2側方部材30にその厚み方向に形成した貫通路で構成されてもよい。
【0206】
図13(a),(b),(c)に示すように、第1側方部材20のうち回転体40に対向する端面には、第1圧力領域61aと、第2圧力領域62aと、第3圧力領域63aと、第4圧力領域64aとが形成される。
【0207】
第1圧力領域61aは、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力を受ける領域であり、第2圧力領域62aは、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力を受ける領域である。
【0208】
また、第3圧力領域63aは、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoの圧力を受ける領域であり、第4圧力領域64aは、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loの圧力を受ける領域である。
【0209】
それら圧力領域61a,62a,63a,64aにかかる圧力と対抗するために、第1封止板50a(第1エンドカバー14)と第1側方部材20との対向部には、第1調圧領域61bと、第2調圧領域62bと、第3調圧領域63bと、第4調圧領域64bとがそれぞれ区画されている(図12(c)参照)。
【0210】
第1調圧領域61bは、第1流体流入路21の開口部周辺領域であって第1圧力領域61aに略対応する領域に区画され、第2調圧領域62bは、第2流体流入路23の開口部周辺領域であって第2圧力領域62aに略対応する領域に区画されるように、第1封止板50aに凹部が形成されている。
【0211】
また、第3調圧領域63bは、第2流体流出路22の開口部周辺領域であって第3圧力領域63aに略対応する領域に区画され、第4調圧領域64bは、第1流体流出路24の開口部周辺領域であって第4圧力領域64aに略対応する領域に区画されるように、第1封止板50aに凹部が形成されている。
【0212】
図13(a)には、第1調圧領域61b、第2調圧領域62b、第3調圧領域63b、及び第4調圧領域64bに対応する扇状の領域が、夫々一点鎖線で示されている。図13(c)には、第1圧力領域61a、第2圧力領域62a、第3圧力領域63a、及び第4圧力領域64aに対応する領域が、夫々一点鎖線で扇状に示されている。
【0213】
尚、各圧力領域61a,62a,63a,64aは、実際には図中の一点鎖線で示した扇状のように、その領域が明確に区画されるものではないが、凡そ図13(a)に一点鎖線で示した各調圧領域61b,62b,63b,64bの扇状に区画された領域に対応した領域となる。
【0214】
図12(a),(b),(c)に示すように、第1封止板50aのうち第1側方部材20との対向面には、第1流体流入口25、第2流体流出口26、第2流体流入口27、及び第1流体流出口28の夫々の開口部及び、中央に形成された凹部16aを区画するための第1ガスケット50cを嵌入するための溝50gが形成されている。
【0215】
図14(a)には、第1ガスケット50cが示されている。図14(c)に示すように、第1ガスケット50cは断面が蒲鉾形(hog-backed shape)に構成されている。これは、ケーシング13と第1エンドカバー14の中に第1側方部材20を含む回転体ユニットを組み入れたときの、第1ガスケット50cからの反力を小さくして、第1側方部材20や第1エンドカバー14の変形を抑制するためである。
【0216】
第1ガスケット50cの矩形底部が第1封止板50aの溝50gに嵌入され、上方の円弧側が第1側方部材20に接触するように配置される。尚、反力を低下させることができれば、第1ガスケット50cの断面の形状は蒲鉾形に限らず、円形、円弧、または多角形等の形状を採用することができる。また、ガスケットはシート状であってもよい。
【0217】
第1封止板50aと第1側方部材20とを対向配置すると、第1ガスケット50cによって、第1調圧領域61b、第2調圧領域62b、第3調圧領域63b、第4調圧領域64b、及び第1閉空間16が相互に密封した状態で区画形成される。
【0218】
圧力交換装置200が作動すると、第1側方部材20の第1圧力領域61aに、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力が作用し、第2圧力領域62aに、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力が作用する。また、第3圧力領域63aには、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoの圧力が作用し、第4圧力領域64aには、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loの圧力が作用する。つまり、第1側方部材20には第1エンドカバー14に向けた付勢力が作用する。
【0219】
この付勢力に対抗するように、第1ガスケット50cで仕切られる第1調圧領域61b、第2調圧領域62b、第3調圧領域63b、及び第4調圧領域64bに流体の圧力が作用するように構成されている。
【0220】
図15(a),(b),(c)に示すように、第2側方部材30のうち回転体40と対向する端面には、第5圧力領域65aと、第6圧力領域66aと、第7圧力領域67aとが形成されている。
【0221】
第5圧力領域65aは、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力及び高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoの圧力を受ける領域である。
【0222】
第6圧力領域66aは、第5圧力領域65aと、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力及び圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loの圧力を受ける領域である。
【0223】
第7圧力領域67aは、第5圧力領域65aと第6圧力領域66aの間に第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力と第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力との間の中間圧力を受ける領域である。
【0224】
具体的に、第2側方部材30に形成された連通部31,32とそれらの間の隔壁wを含む領域が第5圧力領域65aとなり、連通部33,34とそれらの間の隔壁wを含む領域が第6圧力領域66aとなる。
【0225】
それら圧力領域65a,66a,67aにかかる圧力と対抗するために、第2封止板50bと第2側方部材30との対向部には、第5調圧領域65bと、第6調圧領域66bと、第7調圧領域67bとがそれぞれ区画されるように、第2封止板50bに凹部か形成されている。
【0226】
第5調圧領域65bは、第5圧力領域65aに略対応する領域に区画され、第6調圧領域66bは、第6圧力領域66aに略対応する領域に区画され、第7調圧領域67bは、第7圧力領域67aに略対応する領域に区画されている。
【0227】
図15(c)では、第5調圧領域65b、第6調圧領域66b、及び第6調圧領域66bに対応する扇状の領域が、夫々一点鎖線で示されている。図15(a)では、第5圧力領域65a、第6圧力領域66a、及び第7圧力領域67a対応する領域が、夫々一点鎖線で扇状に示されている。
【0228】
尚、各圧力領域65a,66a,67aは、実際には図中の一点鎖線で示した扇状のように、その領域が明確に区画されるものではないが、凡そ図15(c)に一点鎖線で示した各調圧領域65b,66b,67bの扇状に区画された領域に対応した領域となる。
【0229】
図16(a),(b)に示すように、第2封止板50bのうち第2側方部材30との対向面には、第5調圧領域65b、第6調圧領域66b、第7調圧領域67b、及び凹部18aを区画するための第2ガスケット50dを嵌入するための溝50hが形成されている。また、第5調圧領域65bと第6調圧領域66bの部分は浅く凹状に形成されている。
【0230】
尚、本実施形態では凹状部とガスケットで第1調圧領域から第6調圧領域を区画したが、凹状部をなくして、ガスケットのみで第1調圧領域から第6調圧領域を区画してもよい。
【0231】
図14(b)には、第2ガスケット50dが示されている。第2ガスケット50dの断面も、図14(c)に示す第1ガスケット50cの断面と同じ蒲鉾形(hog-backed shape)に構成されている。これは、ケーシング13と第1エンドカバー14の中に第2側方部材30を含む回転体ユニットを組み入れ、第2エンドカバーを組立てたときの、第2ガスケット50dからの反力を小さくして、第2側方部材30や第2エンドカバー15の変形を抑制するためである。
【0232】
第2ガスケット50dは矩形底部が第2封止板50bの溝50hに嵌入され、上方の円弧側が第2側方部材30に接触するように配置される。尚、反力を低下させることができれば、第2ガスケット50dの断面の形状は蒲鉾形に限らず、円形、円弧、または多角形等の形状を採用することができる。また、ガスケットはシート状であってもよい。
【0233】
第2封止板50bが第2側方部材30に対向配置されると、第2ガスケット50dによって、第5調圧領域65b、第6調圧領域66b、第7調圧領域67b、及び第2閉空間18が区画形成される。
【0234】
第5調圧領域65bには、第2側方部材30の連通部31、32に形成された第2連通路39aを介して、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力及び高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoが進入する。第5調圧領域66bには、連通部33、34に形成された第2連通路39bを介して、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力及び圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loが進入する。尚、本実施形態では、第2連通路39a,39bをそれぞれ2箇所に形成したが、1箇所のみに形成してもよいし、3箇所以上の複数個所に形成してもよい。
【0235】
第2側方部材30の直径は、ケーシング13の内径に対して幾らか小さく設定されている。従って、第7調圧領域67bには、第2側方部材30の外周とケーシング13の内周にできた隙間から、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力と第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力との間の中間圧力の流体が進入する。
【0236】
圧力交換装置200が作動すると、第2側方部材30の第5圧力領域65aに、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力及び高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoの圧力が作用する。
【0237】
同様に、第6圧力領域66aに、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力及び圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loの圧力が作用する。
【0238】
また、第7圧力領域67aに、第5圧力領域65aと第6圧力領域66aの間に第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力と第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力との間の中間圧力が作用する。つまり、第2側方部材30には第2エンドカバー15に向けた付勢力が作用する。
【0239】
この付勢力に対抗するように、第2ガスケット50dで仕切られる第5調圧領域65b、第6調圧領域66b、第7調圧領域67bに流体の圧力が作用するように構成されている。
【0240】
図15(a),(b),(c)に示すように、第2側方部材30の端面には、連通部31,34の間及び連通部32,33の間にそれぞれ連通溝68,69が形成されている。連通溝68,69は、幅数ミリ、深さ数ミリ程度の溝で形成されている。
【0241】
連通溝68,69は、連通部31と連通部34の間、及び連通部32と連通部33の間に配置され、回転体40の回転に伴い、第1流路41や第2流路42にある高圧流体が低圧流体の連通部へと進入する際の大きな圧力変動や、低圧流体が高圧流体の連通部へと進入する際の大きな圧力変動が緩和される。従って、圧力の急変によるキャビテーションを防止することができる。
【0242】
また、回転体40の隔壁41w,42w(図11(a),(b)参照)へ掛かる水圧差が減少し、回転体40の破損の虞が低減されるとともに隔壁41w,42w(図11(a),(b)参照)を薄肉化することができ、軽量化や大容量化に対応できるようになる。これは、連通溝68,69を介して回転体40の第1流路41と第2流路42の径方向反対側にある高圧流体と低圧流体が連通して圧力が平均化されることによる。
【0243】
連通溝68,69には、回転体40の第1流路41に対応する位置であって、回転体40の回転方向に対向する方向に延出した溝68a,69aが形成されている。同様に、連通溝68,69には、回転体40の第2流路42に対応する位置であって、回転体40の回転方向に対向する方向に延出した溝68b,69bが形成されている。
【0244】
回転体40の第1流路41及び第2流路42は、連通溝68,69と連通する前に溝68a,69a、及び溝68b,69bと連通し始め、圧力変動が幾らか緩和された後に連通溝68,69と連通する。従って、第1流路41及び第2流路42がいきなり連通溝68,69と連通する構成よりも、スムーズに圧力変動を緩和することができる。
【0245】
図13で説明した第1圧力領域61a及び第3圧力領域63aの高圧の圧力領域と、第2圧力領域62a及び第4圧力領域64aの低圧の圧力領域との間に、第2側方部材30に形成されたような中間圧力となる第7圧力領域67aを想定し、それに対応して第7調圧領域67bに相当する中間圧の調圧領域を区画形成してもよい。
【0246】
この場合、図13(a)で示した第1封止板50a(第1エンドカバー14)と第1側方部材20との対向部に区画された調圧領域61b,63b及び調圧領域62b,64bの間に、図15(c)の調圧領域67bと略同一形状の中間圧の調圧領域が区画され、それに対応した第1ガスケット50cが用いられ、当該第1ガスケット50cを嵌入するための溝50gが第1封止板50a(第1エンドカバー14)に形成される。
【0247】
第1側方部材20の直径がケーシング13の内径に対して幾らか小さく設定されているので、第1側方部材20の外周とケーシング13内周との隙間から、当該中間圧の調圧領域に高圧と低圧を平均化した中間圧力の流体が進入するようになる。
【0248】
また、第1側方部材20及び第2側方部材30の外周部及びケーシングの内周部に、第7調圧領域67b及び/または当該中間圧の調圧領域と連通する連通溝を形成し、当該連通溝を介して第7調圧領域67b及び/または当該中間圧の調圧領域に中間圧力の流体を導くように構成してもよい。
【0249】
このような圧力交換装置200の組み立て、調整、点検の手順を説明する。
圧力交換装置200は回転体40の回転軸心が水平または垂直姿勢となるように据付されるが、組み立て時には第1エンドカバー14側が底面側となり、回転体40の回転軸心が鉛直方向を向く姿勢で、第1エンドカバー14から順に構成部品を積み上げるように組み立てられる。
【0250】
具体的に、先ず、第1封止板50aがボルト固定された第1エンドカバー14に、ケーシング13をボルト固定し、第1エンドカバー14の周部にナット12bで固定された複数本のボルト12aを立設する。
【0251】
回転体40を収容した保持部材11の両端に、第1側方部材20と第2側方部材30を配置して、回転体40の挿通部44に支軸43を挿通し、その支軸43の両端をナット43a、43bで締め付けて回転体ユニットを構成する。
【0252】
回転体ユニットを構成する第2側方部材30の第2連通路39b及び連通部33に棒状の治具を挿通して、回転体40が円滑に回転することを確認する。もし円滑に回転しない場合には、再度回転体ユニットの組み立て調整を行なう。尚、第1の実施形態では第2連通路39bは孔が小さいため、治具を挿通して回転体40の回転を確認することができないが、第2の実施形態では孔が十分に大きいため、回転体40の回転を確認することができる。
【0253】
調整が終了した回転体ユニットをホイストで吊り上げて、先に組み立てておいたケーシング13の上部開口からケーシング13内部に収容し、ケーシング13の上部の開口端面を第2封止板50bでシールし、その上に第2エンドカバー15を載せる。
【0254】
最後に、第2封止板50bと第2エンドカバー15をボルト固定し、第1エンドカバー14の周部に立設したボルト12aを、第2エンドカバー15の周部に形成されたボルト孔に通してナット12bで締め付けて圧力交換装置200が完成する。
【0255】
圧力交換装置200の作動時には、圧力交換装置200の外部から、第2エンドカバー15に形成された覗き孔19、第2封止板50b、第2側方部材30に形成された連通部33、第2連通路39bを通して回転体40の回転の様子が目視できるようになる。従って、回転体40の回転不良等の不具合が極めて容易に発見できる。
【0256】
本実施形態では、保持部材11の内周面と回転体40の外周面とで軸受部を構成しているため、支軸43は無くてもよい。但し、支軸43により回転体ユニットとして事前に組み立て調整し、ケーシング13に収容できるため、組立及び調整作業の作業性が向上している。
【0257】
尚、第2の実施形態で説明を簡略した構成については、第1の実施形態と同様の形態を採用している。さらに、第1の実施形態の各部の構成と第2の実施形態の各部の構成を組み合わせて圧力交換装置を構成することも可能である。
【0258】
次に、圧力交換装置の第3の実施形態を説明する。
以下の説明では、主に第1及び第2の実施形態と異なる構成について詳しく説明し、第1または第2の実施形態と同一の構成については説明を簡略する。尚、第3の実施形態を示す図17(a),(b)から図21(a),(b),(c)では、第1または第2の実施形態と同一の部材は同一の符号を付している。
【0259】
図17(a),(b)に示すように、第3の実施形態の圧力交換装置300も第1の実施形態と同様に、回転体40と、回転体40を挟むように回転体40の両側に配置され、回転体40を回転可能に挟持する第1側方部材20及び第2側方部材30と、第1側方部材20及び第2側方部材30の間で回転体40の周部を覆うように配置された筒状の保持部材11を備えている。
【0260】
さらに、第1側方部材20、第2側方部材30、及び保持部材11を収容する筒状のケーシング13が設けられ、ケーシング13のうち第1側方部材20側の一端面を封止する第1エンドカバー14と、第2側方部材30側の他端面を封止する第2エンドカバー15等を備えている。
【0261】
そして、高圧濃縮海水Hiの流入配管51、高圧海水Hoの流出配管52、低圧海水Liの流入配管53、及び低圧濃縮海水Loの流出配管54が第1エンドカバー14に接続されている。
【0262】
流入配管51から第1流体流入路21を経由して回転体40の第1流路41に流入した高圧濃縮海水Hiと、流入配管53から第2流体流入路23を経由して回転体40の第2流路42に流入し、第1流路41の中にある低圧濃縮海水Loと圧力交換を終了した低圧海水Liとが、連通路31,32(図19(a)参照)で連通して圧力交換される。その結果、高圧海水Hoが第2流体流出路22を経由して流出配管52から流出する。
【0263】
同様に、流入配管53から第2流体流入路23を経由して回転体40の第2流路42に流入した低圧海水Liと、流入配管51から第1流体流入路21を経由して回転体40の第1流路41に流入し、第2流路42の中にある低圧海水Liと圧力交換を終了した低圧濃縮海水Loとが、連通路33,34(図19(a)参照)で連通して圧力交換される。その結果、低圧濃縮海水Loが第1流体流出路24を経由して流出配管54から流出する。
【0264】
つまり、第2の実施形態と異なり、第1流路41が回転体40の径方向外側に配置され、第2流路42が回転体40の径方向内側に配置されている。
【0265】
図18(a),(b),(c)には第1側方部材20が示されている。本実施形態では、第1側方部材20のうち回転体40に対向する端面に第1圧力領域61a、第2圧力領域62a、第3圧力領域63a、及び第4圧力領域64aが形成され、さらに第1圧力領域61a及び第3圧力領域63aと、第2圧力領域62a及び第4圧力領域64aとの間に、中間圧力領域67cが形成される。
【0266】
第2の実施形態と同様に、第1圧力領域61aは、第1流体流入路21から供給された高圧濃縮海水Hiの圧力を受ける領域であり、第2圧力領域62aは、第2流体流入路23から供給された低圧海水Liの圧力を受ける領域である。
【0267】
また、第3圧力領域63aは、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoの圧力を受ける領域であり、第4圧力領域64aは、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loの圧力を受ける領域である。
【0268】
中間圧力領域67cは、高圧の圧力領域61a,63aに作用する高圧流体と、圧力領域62a,64aに作用する低圧流体とが混ざった中間圧力が作用する領域である。
【0269】
それら圧力領域61a,62a,63a,64a,67cにかかる圧力と対抗するために、第1封止板50a(第1エンドカバー14)と第1側方部材20との対向部には、第1調圧領域61bと、第2調圧領域62bと、第3調圧領域63bと、第4調圧領域64bと、中間調圧領域67dとがそれぞれ区画されている。
【0270】
図20(a),(b),(c)には、第1エンドカバー14、及び第1封止板50aに形成された溝50gに嵌入される第1ガスケット50c等が示されている。尚、第1ガスケット50cを嵌入する溝部50gが第1側方部材20に形成される態様であってもよく、何れにも溝部50gが形成されない態様であってもよい。
【0271】
第1ガスケット50cによって、第1調圧領域61bと、第2調圧領域62bと、第3調圧領域63bと、第4調圧領域64bと、中間調圧領域67dとが区画される。また、第1ガスケット50cのうち中間調圧領域67dに対応する部位が径方向に開放されており、このようなガスケット50cによって第1封止板50a(第1エンドカバー14)と第1側方部材20との対向部に第1開放空間270が形成される。尚、調圧領域の圧力を確保するために、ガスケット内周側に凹部を形成してもよい。
【0272】
図18(a),(b),(c)に示すように、第1側方部材20の外周部に、第6連通路86が厚み方向に形成されている。また、図17(b)に示すように、保持部材11の開口端面に、第6連通路86と連通するように第8連通路85が形成されている。
【0273】
第1側方部材20と回転体40との隙間に形成される中間圧力領域67cの流体が、上述の第8連通路85と第6連通路86を経由して第1開放空間270となる中間調圧領域67dに導かれ、中間圧力領域67cと中間調圧領域67dで圧力バランスが保たれる。
【0274】
尚、中間圧力領域67cの流体が第1側方部材20と回転体40との隙間から第6連通路86に導かれる場合には、保持部材11に第8連通路85を形成する必要はない。また、第1側方部材20の外周部に第6連通路86が溝状に形成される態様に替えて、第1側方部材20に中間圧力領域67cと中間調圧領域67dとを連通する孔状の第6連通路86を形成してもよく、さらには、ケーシング13の内周面に溝状の第6連通路86を形成してもよい。
【0275】
図19(a),(b),(c)には、第2側方部材30が示され、図21(a),(b),(c)には、第2エンドカバー15、及び第2封止板50bに形成された溝50hに嵌入される第2ガスケット50b等が示されている。尚、第2ガスケット50bを嵌入する溝部50hが第2側方部材30に形成される態様であってもよく、何れにも溝部50hが形成されない態様であってもよい。
【0276】
尚、第2側方部材30に形成された連通溝37a,37bにも、第2の実施形態の図15(a)で示した回転体40の回転方向に対向する方向に延出した溝68b,69b,69a,69bと同様の溝が形成されていてもよい。
【0277】
本実施形態では、第2側方部材30に形成される連通路31,32,33,34がその厚み方向に完全に貫通形成されている。
【0278】
また、第2の実施形態と同様に、第2側方部材30のうち回転体40と対向する端面には、第5圧力領域65aと、第6圧力領域66aと、第7圧力領域67aとが形成される。それら圧力領域65a,66a,67aにかかる圧力と対抗するために、第2封止板50bと第2側方部材30との対向部には、第5調圧領域65bと、第6調圧領域66bと、第7調圧領域67bとがそれぞれ区画されている。
【0279】
第2ガスケット50bによって、第5調圧領域65bと、第6調圧領域66bと、第7調圧領域67bとが区画される。また、第2ガスケット50bのうち第7調圧領域67bに対応する部位が径方向に開放されており、このようなガスケット50bによって第2封止板50b(第2エンドカバー15)と第2側方部材30との対向部に第2開放空間380が形成される。
【0280】
さらに、第2封止板50bには、連通部31,32及び連通部33,34から流入する流体を受止めて第2側方部材30の端面に圧力をかけるために、第5調圧領域65b及び第6調圧領域66bのそれぞれに対応する領域に凹部320,330(図21(a)参照)が形成されている。凹部320,330の厚みは任意である。尚、第2ガスケット50bによって、第2封止板50bと第2側方部材30との対向部に十分な空間が形成される場合には、凹部320,330が形成されなくてもよい。
【0281】
本実施形態では、第2の実施形態と異なり、第2側方部材30の外周部に、第7連通路87が厚み方向に形成されている。また、図17(b)に示すように、保持部材11の開口端面に、第7連通路87と連通するように第8連通路85が形成されている。
【0282】
第2側方部材30と回転体40との隙間に形成される第7圧力領域67aの流体が、上述の第8連通路85と第7連通路87を経由して第2開放空間380となる第7調圧領域67bに導かれ、第7圧力領域67aと第7調圧領域67bで圧力バランスが保たれる。
【0283】
尚、第7圧力領域67aの流体が第2側方部材30と回転体40との隙間から第7連通路87に導かれる場合には、保持部材11に第8連通路85を形成する必要はない。また、第2側方部材30の外周部に第7連通路87が溝状に形成される態様に替えて、第2側方部材30に第7圧力領域67aと第7調圧領域67bとを連通する孔状の第7連通路87を形成してもよく、さらには、ケーシング13の内周面に溝状の第7連通路87を形成してもよい。
【0284】
図17(b)に示すように、保持部材11の開口端部より内側の内周面に、開口部の径より大きな拡径領域11aが形成されている。拡径領域11aは、保持部材11の周面に径方向に貫通形成された第3連通路45と連通されている。
【0285】
第1側方部材20及び第2側方部材30と回転体40との隙間に進入した第1流体及び第2流体が、回転体40の外周面と保持部材11の内周面との隙間を経由して拡径領域11aに進入し、或いは保持部材11の外周面とケーシング13の内周面との隙間及び第3連通路45を経由して拡径領域11aに進入する。拡径領域11aに進入した流体が、回転体40と保持部材11との間の潤滑剤として機能するため、回転体40は、保持部材11の内周面と回転体40の外周面とが直接に摺動することなく間隔を隔てた状態で円滑に回転する。
【0286】
以下、他の実施形態を説明する。
第1の実施形態で説明した押圧機構を、第2及び第3の実施形態の圧力交換装置に適用することができることはいうまでもない。
【0287】
第1の実施形態で説明したトルク付与機構を、第2及び第3の実施形態の圧力交換装置に適用することができることはいうまでもない。
【0288】
当該トルク付与機構は、少なくとも第1流路41に流入する若しくは第1流路41から流出する濃縮海水のエネルギー、及び/または、第2流路42に流入する若しくは第2流路42から流出する海水のエネルギーにより回転体40にトルクを付与するように構成すればよい。
【0289】
何れか一方の流体のエネルギーのみをトルク生成のために利用する場合、第1流路41に流入する高圧流体のエネルギーを主に利用すると、大きなトルクが発生するのでエネルギー効率がよい。
【0290】
当該トルク付与機構に代えて、或いは当該トルク付与機構に加えて、回転体40に駆動軸を連結して、駆動機等の外部動力で回転体40を回転する他のトルク付与機構を備えてもよい。外部動力で回転体40を回転駆動すると、常時安定した回転を得ることができるので装置の信頼性が向上する。
【0291】
第2の実施形態で説明したような回転体40を回転可能に支持する軸受部の構造、即ち、保持部材11の内周面と回転体40の外周面とで構成される軸受部を第1または第3の実施形態に採用してもよい。
【0292】
第1流路41と第2流路42の断面積を等しくすれば、流路断面積の変化による余分な圧力損失が低減できる点で好ましい。しかし、第1流路41と第2流路42の断面積を完全に一致させる必要はない。
【0293】
第1流路41及び第2流路42の断面形状は特に限定されず、真円や楕円等の円形状、三角、四角等の多角形状であってもよい。
【0294】
図3(a)に示した第1流路41及び第2流路42の断面形状は、回転体の断面に対して大きな開口率が得られる点で好ましい。
【0295】
第1流路41及び第2流路42の本数や断面形状を変更することで、圧力交換装置の処理流量を変更することができる。
【0296】
第1から第3の実施形態では、保持部材11と第2側方部材30を別体で構成する例を説明したが、保持部材11と第2側方部材30をカップ状に一体形成してもよい。その場合、カップ状の第2側方部材30と第1側方部材20とで形成される閉空間内に回転体40が配置されるように構成すればよい。同様に保持部材11と第1側方部材20をカップ状に一体形成してもよい。同様に保持部材11と第1側方部材20をカップ状にいったい形成してもよい。
【0297】
第1から第3の実施形態では、第1エンドカバー14及び第2エンドカバー15とケーシング13を別体で構成した例を説明したが、第1エンドカバー14または第2エンドカバー15とケーシング13を一体で構成してもよい。
【0298】
第1から第3の実施形態では、保持部材11とケーシング13を別体で構成した例を説明したが、保持部材11とケーシング13を一体に構成してもよい。また、ケーシング13を備えずに、保持部材をケーシングとして機能させてもよい。
【0299】
第1から第3の実施形態では、第1側方部材20に高圧流体と低圧流体の流入路と流出路がそれぞれ一対形成された例を説明したが、それぞれ二対以上形成されていてもよい。その場合、回転体40に流入または回転体40から流出する流体の圧力バランスを確保するため、各流入路及び各流出路は、回転軸心周りに点対称に配置されることが好ましい。
【0300】
第2または第3の実施形態で説明した第1側方部材及び第2側方部材の圧力バランスを保つ構成を第1の実施形態に採用可能なことはいうまでもない。即ち、第1側方部材と回転体との対向面、及び第2側方部材と回転体との対向面に形成される各圧力領域に対応して、第1側方部材または第2側方部材の対向面側に各調圧領域を区画形成することで、第1側方部材及び第2側方部材の圧力バランスを保つ構成である。
【0301】
第1から第3の実施形態では、第1流体流入路21に高圧濃縮海水を流入させ、第2流体流入路23に被濃縮流体である低圧海水を流入させる構成を説明したが、第1流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させ、第2流体流入路に高圧濃縮海水を流入させてもよい。
【0302】
本発明の作用効果が奏される範囲で、第1から第3の実施形態で説明した圧力交換装置の各部の構成を互いに組み合わせることも可能である。
【0303】
以上説明した圧力交換装置の具体的構成は、上述した実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において、各部の形状、サイズ、素材等は適宜選択可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0304】
6:逆浸透膜装置、10:圧力交換装置、11:保持部材、13:ケーシング、14:第1エンドカバー、15:第2エンドカバー、16:第1閉空間、17:第1連通路、18:第2閉空間、19:覗き孔、20:第1側方部材、21:第1流体流入路、22:第2流体流出路、23:第2流体流入路、24:第1流体流出路、30:第2側方部材、31,32,33,34:連通部、40:回転体、41:第1流路、42:第2流路、43:支軸、44:挿通部、45:第3連通路、61a〜67a:第1〜第7圧力領域、61b〜67b:第1〜第7調圧領域、67c:中間圧力領域、67d:中間調圧領域、Hi:高圧濃縮海水(濃縮流体)、Li:低圧海水(被濃縮流体)、Ho:高圧海水(被濃縮流体)、Lo:低圧濃縮海水(濃縮流体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、
一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と前記一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが回転軸心方向に貫通するように前記回転軸心周りに配設された回転体と、
第1流体を前記第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第2流路から案内する第2流体流出路と、第2流体を前記第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を前記第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、
前記第1流路と前記第2流路を連通して第1流体と第2流体との間で圧力を交換する連通部が形成された第2側方部材と、
を備え、
前記第1側方部材と前記第2側方部材との間で前記回転体が回転可能に挟持されている圧力交換装置。
【請求項2】
前記第1側方部材と前記第2側方部材との間に前記回転体を覆う保持部材が設けられ、前記回転体と前記第1側方部材及び前記第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されている請求項1記載の圧力交換装置。
【請求項3】
前記第1側方部材または前記第2側方部材の少なくとも一方を押圧して、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間隔を調整する押圧機構を備えている請求項1または2記載の圧力交換装置。
【請求項4】
前記押圧機構は、前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との対向面とは異なる端面側に夫々配置された第1エンドカバー及び第2エンドカバーと、前記第1エンドカバーと前記第2エンドカバーとを締結する連結部材とで構成されている請求項3記載の圧力交換装置。
【請求項5】
少なくとも前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間と、第1流体または第2流体を前記第1閉空間に導くように、前記第1エンドカバーに形成された第1連通路と、
少なくとも前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画される第2閉空間と、第1流体または第2流体を前記第2閉空間に導くように、前記第2側方部材に形成された第2連通路と、
を備えている請求項4記載の圧力交換装置。
【請求項6】
前記保持部材を収容する筒状のケーシングを備え、
前記第1側方部材及び前記第2側方部材と、前記保持部材の外周面と、前記ケーシングの内周面とで区画された外周閉空間と、
前記回転体と前記保持部材との隙間と前記外周閉空間を連通するように、前記保持部材に形成された第3連通路と、
を備えている請求項5記載の圧力交換装置。
【請求項7】
前記第1側方部材と前記第2側方部材に両端を支持された支軸を備え、
前記支軸に貫通され、前記回転体の両端部で前記回転体を回転自在に軸支する軸部が、前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との夫々の対向面側へ突出するように、前記第1側方部材及び前記第2側方部材に一体に形成されている請求項5または6記載の圧力交換装置。
【請求項8】
第1流路の断面積と第2流路の断面積が略等しくなるように形成されている請求項1から7の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項9】
前記第1側方部材は、第1流路に流入する若しくは第1流路から流出する第1流体のエネルギー、または第2流路に流入する若しくは第2流路から流出する第2流体のエネルギーにより、前記回転体にトルクを付与するトルク付与機構を備えている請求項1から8の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項10】
前記回転体と前記第1側方部材及び前記第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されるとともに、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間に前記回転体を覆う保持部材が設けられ、
前記保持部材の内周面と前記回転体の外周面とで前記回転体を回転可能に支持する軸受部が構成されている請求項1記載の圧力交換装置。
【請求項11】
前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との対向面とは異なる端面側に第1エンドカバー及び第2エンドカバーを配置し、
前記回転体の中心部に前記回転軸心に沿って貫通形成された挿通部に支軸が挿通され、前記支軸の各端部が前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間、及び前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画される第2閉空間にそれぞれ設けられ、
前記第1閉空間と前記挿通部を連通する第4連通路、及び前記第2閉空間と前記挿通部を連通する第5連通路が形成されている請求項10記載の圧力交換装置。
【請求項12】
前記第1側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力を受ける第1圧力領域と、前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力を受ける第2圧力領域とが形成され、
前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との対向部のうち、前記第1流体流入路の開口部周辺領域であって前記第1圧力領域に略対応する領域に第1調圧領域が区画され、前記第2流体流入路の開口部周辺領域であって前記第2圧力領域に略対応する領域に第2調圧領域が区画されている請求項10または11記載の圧力交換装置。
【請求項13】
前記第1側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第3圧力領域と、第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第4圧力領域とが形成され、
前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との対向部のうち、前記第2流体流出路の開口部周辺領域であって前記第3圧力領域に略対応する領域に第3調圧領域が区画され、前記第1流体流出路の開口部周辺領域であって前記第4圧力領域に略対応する領域に第4調圧領域が区画されている請求項12記載の圧力交換装置。
【請求項14】
前記第2側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力及び第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第5圧力領域と、前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力及び第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第6圧力領域と、前記第5圧力領域と第6圧力領域の間に前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力と前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力との間の中間圧力を受ける第7圧力領域とが形成され、
前記第2エンドカバーと前記第2側方部材との対向部のうち、前記第5圧力領域に略対応する領域に第5調圧領域が区画され、前記第6圧力領域に略対応する領域に第6調圧領域が区画され、前記第7圧力領域に略対応する領域に第7調圧領域が区画されている請求項12記載の圧力交換装置。
【請求項15】
前記連通部が前記第2側方部材の厚み方向に貫通形成され、前記第2エンドカバーを通して前記回転体が目視できるように、前記第2エンドカバーの一部が光透過部材で構成されている請求項10から14の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項16】
前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である請求項1から15の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項1】
第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、
一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と前記一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが回転軸心方向に貫通するように前記回転軸心周りに配設された回転体と、
第1流体を前記第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第2流路から案内する第2流体流出路と、第2流体を前記第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を前記第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、
前記第1流路と前記第2流路を連通して第1流体と第2流体との間で圧力を交換する連通部が形成された第2側方部材と、
を備え、
前記第1側方部材と前記第2側方部材との間で前記回転体が回転可能に挟持されている圧力交換装置。
【請求項2】
前記第1側方部材と前記第2側方部材との間に前記回転体を覆う保持部材が設けられ、前記回転体と前記第1側方部材及び前記第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されている請求項1記載の圧力交換装置。
【請求項3】
前記第1側方部材または前記第2側方部材の少なくとも一方を押圧して、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間隔を調整する押圧機構を備えている請求項1または2記載の圧力交換装置。
【請求項4】
前記押圧機構は、前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との対向面とは異なる端面側に夫々配置された第1エンドカバー及び第2エンドカバーと、前記第1エンドカバーと前記第2エンドカバーとを締結する連結部材とで構成されている請求項3記載の圧力交換装置。
【請求項5】
少なくとも前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間と、第1流体または第2流体を前記第1閉空間に導くように、前記第1エンドカバーに形成された第1連通路と、
少なくとも前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画される第2閉空間と、第1流体または第2流体を前記第2閉空間に導くように、前記第2側方部材に形成された第2連通路と、
を備えている請求項4記載の圧力交換装置。
【請求項6】
前記保持部材を収容する筒状のケーシングを備え、
前記第1側方部材及び前記第2側方部材と、前記保持部材の外周面と、前記ケーシングの内周面とで区画された外周閉空間と、
前記回転体と前記保持部材との隙間と前記外周閉空間を連通するように、前記保持部材に形成された第3連通路と、
を備えている請求項5記載の圧力交換装置。
【請求項7】
前記第1側方部材と前記第2側方部材に両端を支持された支軸を備え、
前記支軸に貫通され、前記回転体の両端部で前記回転体を回転自在に軸支する軸部が、前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との夫々の対向面側へ突出するように、前記第1側方部材及び前記第2側方部材に一体に形成されている請求項5または6記載の圧力交換装置。
【請求項8】
第1流路の断面積と第2流路の断面積が略等しくなるように形成されている請求項1から7の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項9】
前記第1側方部材は、第1流路に流入する若しくは第1流路から流出する第1流体のエネルギー、または第2流路に流入する若しくは第2流路から流出する第2流体のエネルギーにより、前記回転体にトルクを付与するトルク付与機構を備えている請求項1から8の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項10】
前記回転体と前記第1側方部材及び前記第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されるとともに、前記第1側方部材と前記第2側方部材との間に前記回転体を覆う保持部材が設けられ、
前記保持部材の内周面と前記回転体の外周面とで前記回転体を回転可能に支持する軸受部が構成されている請求項1記載の圧力交換装置。
【請求項11】
前記第1側方部材及び前記第2側方部材の前記回転体との対向面とは異なる端面側に第1エンドカバー及び第2エンドカバーを配置し、
前記回転体の中心部に前記回転軸心に沿って貫通形成された挿通部に支軸が挿通され、前記支軸の各端部が前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間、及び前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画される第2閉空間にそれぞれ設けられ、
前記第1閉空間と前記挿通部を連通する第4連通路、及び前記第2閉空間と前記挿通部を連通する第5連通路が形成されている請求項10記載の圧力交換装置。
【請求項12】
前記第1側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力を受ける第1圧力領域と、前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力を受ける第2圧力領域とが形成され、
前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との対向部のうち、前記第1流体流入路の開口部周辺領域であって前記第1圧力領域に略対応する領域に第1調圧領域が区画され、前記第2流体流入路の開口部周辺領域であって前記第2圧力領域に略対応する領域に第2調圧領域が区画されている請求項10または11記載の圧力交換装置。
【請求項13】
前記第1側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第3圧力領域と、第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第4圧力領域とが形成され、
前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との対向部のうち、前記第2流体流出路の開口部周辺領域であって前記第3圧力領域に略対応する領域に第3調圧領域が区画され、前記第1流体流出路の開口部周辺領域であって前記第4圧力領域に略対応する領域に第4調圧領域が区画されている請求項12記載の圧力交換装置。
【請求項14】
前記第2側方部材のうち前記回転体に対向する端面に、前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力及び第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第5圧力領域と、前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力及び第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第6圧力領域と、前記第5圧力領域と第6圧力領域の間に前記第1流体流入路から供給された第1流体の圧力と前記第2流体流入路から供給された第2流体の圧力との間の中間圧力を受ける第7圧力領域とが形成され、
前記第2エンドカバーと前記第2側方部材との対向部のうち、前記第5圧力領域に略対応する領域に第5調圧領域が区画され、前記第6圧力領域に略対応する領域に第6調圧領域が区画され、前記第7圧力領域に略対応する領域に第7調圧領域が区画されている請求項12記載の圧力交換装置。
【請求項15】
前記連通部が前記第2側方部材の厚み方向に貫通形成され、前記第2エンドカバーを通して前記回転体が目視できるように、前記第2エンドカバーの一部が光透過部材で構成されている請求項10から14の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項16】
前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である請求項1から15の何れかに記載の圧力交換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−83248(P2013−83248A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210526(P2012−210526)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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