説明

圧力変動吸着式ガス分離方法及び分離装置

【課題】半導体製造装置からの排ガスに含まれるXeなどを高濃度、高回収率で回収するに際し、XeなどをNなどと同時に高濃度に濃縮できるようにする。
【解決手段】XeとNを含むガスを原料ガス貯留槽1から加圧して活性炭が充填された下部筒10B、上部筒10Uに流し、Nを難吸着成分貯留槽3に回収する工程1、易吸着成分低圧貯留槽2からのガスを加圧して下部筒10B、上部筒10Uに流し、上部筒10UからのNを回収する工程2、下部筒11BからのXeを易吸着成分高圧貯留槽5に回収し、ついで易吸着成分低圧貯留槽2に回収する工程3、上部筒11U、下部筒11Bからのガスを原料ガス貯留槽1に回収する工程4、難吸着成分貯留槽3からのNを上部筒11U、下部筒11Bを経て原料ガス貯留槽1に回収する工程5および工程2でのNを上部筒11Uと下部筒11Bに充填する工程6を順次繰り返して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリプトン、キセノンなど高付加価値ガスを含む混合ガスから、高濃度、高回収率で高付加価値ガスを分離回収する方法および装置であって、例えば、プラズマスパッタリング装置、プラズマ酸化装置、プラズマ窒化装置、プラズマCVD装置、リアクティブイオンエッチング装置等の半導体製造装置、表示装置(液晶ディスプレイ等)の製造設備から排出される排ガス中の高付加価値ガスを回収、分離するための圧力変動吸着式ガス分離方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路、液晶パネル、太陽電池パネル、磁気ディスク等の半導体製品を製造する工程では、希ガス雰囲気中で高周波放電により発生させたプラズマによって各種処理が行われる。このような処理において、従来はアルゴンが用いられてきたが、近年はより高度な処理を行うためにクリプトンやキセノンが注目されてきている。
【0003】
しかし、クリプトンやキセノンは、大気中の存在比及び分離工程の複雑さから極めて高価なガスであり、雰囲気ガスとして使用した後、外部に放出することは、コストが著しく増大する問題があった。このような高価なガスが使用されるプロセスを経済的に成り立たせるためには、使用済みの希ガスを回収率99%以上で回収し、循環使用することが極めて重要となる。更に、回収した希ガスを再利用するためには、少なくとも99.9%以上の濃度が求められる。
【0004】
半導体製品、表示装置等の製造設備からの排ガスは、主として雰囲気ガスと該製造設備の真空排気時に導入されるパージガスとからなる。さらに、上記ガスに加えて、半導体の製造方法に応じて添加されるガス、例えば、酸化膜形成であれば酸素、窒化膜形成であれば窒素および水素あるいはアンモニア、プラズマCVDであれば金属水素化物系ガス、リアクティブイオンエッチングであればハロゲン化炭化水素系ガス、ヘリウム、窒素などが含まれる。さらに、プラズマ処理による反応副生成物として、水分、二酸化炭素、水素、NOx、炭化水素などが含まれる。
【0005】
一般に、混合ガスから目的成分を回収する方法として、圧力変動吸着分離(PSA)法が知られている。圧力変動吸着分離法を利用した典型的な装置として、酸素PSA装置、窒素PSA装置がある。これら典型的なPSA装置は、易吸着成分を吸着除去し、難吸着成分を製品として回収する。酸素PSA装置では、ゼオライトを吸着剤として用い、易吸着成分である窒素を除去し、難吸着成分である酸素を回収する。窒素PSA装置では、CMS(カーボンモレキュラーシーブ)などを吸着剤として用い、易吸着成分である酸素を除去し、難吸着成分である窒素を回収する。
【0006】
これら典型的なPSA装置では、目的成分(難吸着成分)を高濃度にすることができるが、脱着工程において、吸着剤空隙、あるいは共吸着成分として吸着剤に残存する難吸着成分が、易吸着成分とともに排気されるため、目的成分(難吸着成分)を高回収率で回収することができない。目的成分を高濃度、高回収率で回収するためには、目的成分を濃縮するのみでなく、排ガス中に含まれる目的成分もできる限り少なくする必要がある。すなわち、二成分からなる混合ガスならば、各成分を高濃度、高回収率で回収できるガス分離方法が必要となる。
【0007】
2以上の目的成分を高濃度、高回収率で回収する方法として、平衡分離型PSA法と速度分離型PSA法を組み合わせたPSA法が、川井らの特開2002−126435号公報に提案されている。
この圧力変動吸着ガス分離方法では、難吸着成分を濃縮する典型的なPSA法を二つ組み合わせることによって、2つの成分を製品として回収することができる。例えば、クリプトンと窒素の混合ガスを原料ガスとした場合、クリプトンを易吸着成分、窒素を難吸着成分とする平衡分離型PSAによって、難吸着成分である窒素を回収する。また、クリプトンを難吸着成分、窒素を易吸着成分とする速度分離型PSAによって、難吸着成分であるクリプトンを回収する。
【0008】
このように特性の異なる吸着剤を使用し、易吸着成分と難吸着成分をクロスさせることで、窒素、クリプトンを同時に高濃度で採取することができる。さらに、各PSA装置からの排ガスは、全てバッファータンクに回収し、原料ガスと混合されて再び各PSA装置に供給されるため、川井らの方法では、クリプトンと窒素の混合ガスを、クリプトン濃度99.9〜99.99%、窒素濃度97〜99.9%で回収できることが示されている。
【特許文献1】特開2002−126435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2002−126435号公報記載の発明では、速度分離型PSA法において難吸着成分であるキセノン、クリプトンを製品として回収し、平衡分離型PSA法において難吸着成分である窒素、酸素を排気することで、キセノン、クリプトンを回収している。
しかしながら、半導体製造装置等から排出される排ガス中に例えばヘリウム、水素が混入した場合には、製品ガスであるキセノン、クリプトン中にヘリウム、水素が混入することを防ぐことができない不都合があった。半導体製造装置から排気されるガス成分は、前述した通り多岐にわたるため、キセノン、クリプトンのみを難吸着成分として回収することが困難である。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みて考えられたものであり、半導体製造装置などからの排ガスに含まれるキセノン、クリプトンなどの高付加価値ガスを高濃度、高回収率で回収するに際し、キセノンなどの易吸着成分と窒素などの難吸着成分を同時に高濃度に濃縮できる新たなPSAプロセスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、吸着剤および
この吸着剤に対して易吸着性である易吸着成分と、前記吸着剤に対して難吸着性の難吸着成分とを含む原料ガスを用い、
前記吸着剤を充填した下部筒および上部筒と、少なくとも前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、前記下部筒からの易吸着成分を貯留する易吸着成分低圧貯留槽と、前記原料ガス貯留槽または易吸着成分貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に送る圧縮機と、前記下部筒からの易吸着成分を貯留する易吸着成分高圧貯留槽と、前記上部筒からの難吸着成分を貯留する難吸着成分貯留槽を備えた分離装置を使用し、原料ガス中の易吸着成分と難吸着成分を分離し、それぞれを回収する分離方法であって、
(a)原料ガス貯留槽からのガスを加圧して下部筒に導入して、前記ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、下部筒からの前記易吸着成分が減少したガスを上部筒に導入し、前記ガス中に含まれる易吸着成分を上部筒の吸着剤に吸着して、上部筒から流出してくる前記難吸着成分を前記難吸着成分貯留槽に回収する工程と、
(b)易吸着成分貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、下部筒の吸着剤に共吸着された難吸着成分と前記吸着剤の空隙に残存する難吸着成分を上部筒に導出し、下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を上部筒の吸着剤に吸着させて、上部筒から難吸着成分を流出させると同時に、流出させた難吸着成分を後記(e)工程が終了した上部筒に導出することで下部筒、上部筒を減圧する工程と、
(c)下部筒を減圧して、下部筒の吸着した易吸着成分を脱着させ、脱着してきた易吸着成分を易吸着成分高圧貯留槽に回収したのち、さらに易吸着成分を脱着させ、これを易吸着成分低圧貯留槽に回収する工程と、
(d)上部筒を減圧して、上部筒の吸着剤に吸着したガスを脱着させ、脱着してきたガスを下部筒に導入し、下部筒から流出してきたガスを原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(e)上記工程(a)において回収した難吸着成分を向流パージガスとして上部筒に導入し、上部筒の前記吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、上部筒から流出してくるガスを下部筒に導入し、下部筒に導入したガスによって下部筒の前記吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、下部筒から流出してくるガスを原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(f)上記工程(b)において導出した難吸着成分を上部筒に導入することで下部筒と上部筒を加圧する工程を有し、
上記工程(a)−(f)をあらかじめ定められたシーケンスに基づいて順次繰り返し行うことによって前記原料ガス中の易吸着成分および難吸着成分を同時に回収することを特徴とする圧力変動吸着式ガス分離方法。
【0012】
請求項2にかかる発明は、前記(b)または(f)の工程時間をサイクルタイムの10〜50%とすることを特徴とする請求項1記載の圧力変動吸着式ガス分離方法である。
【0013】
請求項3にかかる発明は、吸着剤および
この吸着剤に対して易吸着性である易吸着成分と、前記吸着剤に対して難吸着性の難吸着成分とを含む原料ガスを用い、
前記吸着剤を充填した下部筒および上部筒と、少なくとも前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、前記下部筒からの易吸着成分を貯留する易吸着成分低圧貯留槽と、前記原料ガス貯留槽または易吸着成分貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に送る圧縮機と、前記下部筒からの易吸着成分を貯留する易吸着成分高圧貯留槽と、前記上部筒からの難吸着成分を貯留する難吸着成分貯留槽と、制御部を備え、原料ガス中の易吸着成分と難吸着成分を分離し、回収する分離装置であって、
前記制御部は、以下の工程(a)ないし(f)の各工程を、予め定められたシーケンスによって制御するものであることを特徴とする圧力変動吸着式ガス分離装置である。
(a)原料ガス貯留槽からのガスを加圧して下部筒に導入して、前記ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、下部筒からの前記易吸着成分が減少したガスを上部筒に導入し、前記ガス中に含まれる易吸着成分を上部筒の吸着剤を用いて吸着して、上部筒から流出してくる前記難吸着成分を前記難吸着成分貯留槽に回収する工程と、
(b)易吸着成分貯留槽のガスを加圧して前記下部筒に導入して、下部筒の吸着剤に共吸着された難吸着成分と前記吸着剤の空隙に残存する難吸着成分を上部筒に導出し、下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を上部筒の吸着剤を用いて吸着して、上部筒から難吸着成分を流出させると同時に、流出させた難吸着成分を後記(e)工程が終了した上部筒に導出することで下部筒、上部筒を減圧する工程と、
(c)下部筒を減圧して、下部筒の吸着した易吸着成分を脱着させ、脱着してきた易吸着成分を易吸着成分貯留槽に回収したのち、さらに脱着させ、これを易吸着成分低圧貯留槽に回収する工程と、
(d)上部筒を減圧して、上部筒の吸着剤に吸着したガスを脱着させ、脱着してきたガスを下部筒に導入し、下部筒から流出してきたガスを原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(e)上記工程(a)において回収した難吸着成分を向流パージガスとして上部筒に導入し、上部筒の前記吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、上部筒から流出してくるガスを下部筒に導入し、下部筒に導入したガスによって下部筒の前記吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、下部筒から流出してくるガスを原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(f)上記工程(b)において導出した難吸着成分を上部筒に導入することで下部筒と上部筒を加圧する工程。
【0014】
請求項4にかかる発明は、前記制御部が、前記(b)または(f)の工程時間をサイクルタイムの10〜50%とするように制御するものであることを特徴とする請求項3記載の圧力変動吸着式ガス分離装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧力変動吸着式ガス分離方法および分離装置よれば、半導体製造装置などから排出される混合ガスから、高価な目的成分を高濃度、高回収率で効率良く回収することができる。従って、半導体製造装置などで使用される雰囲気ガスとして再利用が可能となって、コストを大幅に低減することができる。さらに、装置の初期コストを低減することができる。
【0016】
また、易吸着成分を易吸着成分高圧貯留槽から製品ガスとして導出すようにしているため、易吸着成分高圧貯留槽の容量を適切に定めることにより、追加の圧縮機を用いなくとも、供給先から求められる製品ガス圧力を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の圧力変動吸着式ガス分離方法を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の圧力変動吸着式ガス分離方法を実施するための圧力変動吸着式ガス分離装置を示す概略構成図である。
【0018】
この圧力変動吸着式ガス分離装置は、ある吸着剤に対して易吸着性を示す易吸着成分とこの吸着剤に対して難吸着性を示す難吸着成分を少なくとも含む原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽1と、易吸着成分を貯留する易吸着成分低圧貯留槽2と、難吸着成分を貯留する難吸着成分貯留槽3と、原料ガス貯留槽1あるいは易吸着成分低圧貯留槽2のガスを圧縮する圧縮機4と、易吸着成分を貯留する易吸着成分高圧貯留槽5と、前記吸着剤が充填された下部筒10B、11B、上部筒10U、11Uの4つの吸着筒と、制御部20を備えている。
【0019】
圧力変動吸着式ガス分離法は、吸着剤の選択性を利用したガス分離方法であり、吸着剤の被吸着ガスの選択性には、平衡吸着量もしくは吸着速度の違いによるものがある。平衡分離型吸着剤(平衡吸着量の相違による選択性を有する吸着剤)である活性炭は、キセノンを窒素よりも10倍以上多く吸着する(298K、100kPa)。また、速度分離型吸着剤(吸着速度の相違による選択性を有する吸着剤)のカーボンモレキュラーシーブス(CMS)では、酸素と窒素の吸着速度比は15前後である。
本発明において、吸着剤に対して易吸着性を示す易吸着成分とは、活性炭におけるキセノン、CMSにおける酸素のことを示し、難吸着性を示す難吸着成分とは、活性炭における窒素、CMSにおける窒素のことを示す。
【0020】
また、易吸着成分および難吸着成分は、使用する吸着剤に応じて異なり、吸着剤が異なると易吸着成分が難吸着成分となり、難吸着成分が易吸着成分となることがある。例えば、吸着剤として活性炭、Na−X型ゼオライト、Ca−X型ゼオライト、Ca−A型ゼオライト、Li−X型ゼオライトなどの平衡分離型を用いた場合には、易吸着成分としては、キセノン、クリプトンなどが、難吸着成分としては、窒素、水素、ヘリウム、アルゴン、酸素などがある。また、Na−A型ゼオライト、CMSなどの速度分離型吸着剤を吸着剤とした場合には、易吸着成分としては、窒素、酸素、アルゴンなどが、難吸着成分としてはクリプトン、キセノンなどがある。
【0021】
また、図1において、
符号L1は、原料ガスを原料ガス貯留槽1に導入する経路である。
符号L2は、原料ガス貯留槽1のガスを圧縮機4へ導出する経路である。
符号L3は、易吸着成分貯留槽(低圧)2のガスを圧縮機4へ導出する経路である。
符号L4、L5は、圧縮機4からのガスを下部筒10B、11Bに導入する経路である。
【0022】
符号L6は、上部筒10U、11Uからのガスを難吸着成分貯留槽3に導入する経路である。
符号L7は、難吸着成分貯留槽3からの難吸着成分を装置系外に供給する経路である。
符号L8は、難吸着成分貯留槽3からの難吸着成分を向流パージガスとして上部筒10U、11Uに導入する経路である。
符号L9、L10は下部筒10B、11Bからのガスを、原料ガス貯留槽1あるいは易吸着成分貯留槽(低圧)2に返送する経路である。
【0023】
符号L11は、下部筒10B、11Bからのガスを、原料ガス貯留槽1に返送する経路である。
符号L12は、下部筒10B、11Bからのガスを、易吸着成分貯留槽2に返送する経路である。
符号L13は、易吸着成分貯留槽(高圧)5からの易吸着成分を製品ガスとして供給する経路である。
符号L14は、上部筒10Uと11Uの間で均圧を行う均圧ラインである。
【0024】
そして、下部筒10B、11B、及び上部筒10U、11Uには、原料ガス中の目的成分に対して易吸着性あるいは難吸着性を有し、目的成分以外の成分に対して難吸着性あるいは易吸着性を有する上述の吸着剤が充填されている。
【0025】
また、制御部20は、以下に説明する各工程を、予め定められたシーケンスによって実行するシーケンサーを内蔵するもので、図1に示した各バルブの開閉、圧縮機4の作動、停止などをシーケンシャルに制御するものである。
【0026】
次に、上記圧力変動吸着式ガス分離装置を用いて、本発明の圧力変動吸着式ガス分離方法の実施形態の一例を説明する。この実施形態の圧力変動吸着式ガス分離方法では、主要成分であるキセノンと、その他の主要成分として窒素が含まれている場合について例示する。
【0027】
また、下部筒10B、11B、及び上部筒10U、11Uに充填される吸着剤としては、平衡分離型吸着剤である活性炭を使用する場合を示す。活性炭は、平衡吸着量としてキセノンの吸着量が多く(易吸着性)、窒素の吸着量が少ない(難吸着性)という性質を持つ。
図2は、この圧力変動吸着式ガス分離方法の半サイクルの工程を示したものであり、以下に示すように、<吸着工程>−<均圧減圧工程>の2工程で構成される。各工程におけるバルブの開閉状態は表1に表示するように操作される。
【0028】
【表1】

【0029】
(1)<吸着工程>
原料ガス貯留槽1からの混合ガスを圧縮機4で圧縮し、経路L2、L4を介して、下部筒10Bに供給する。下部筒10Bと上部筒10Uとの間は、バルブV5を開放することで流通されているため、下部筒10Bと上部筒10Uは、ほぼ同様に圧力上昇する。なお、原料ガス貯留槽1の混合ガスは、経路L1から導入された原料ガスと後述する上部筒減圧工程、パージ再生工程で下部筒10Bもしくは11Bから排出されたガスとの混合ガスである。
【0030】
下部筒10Bに供給された混合ガスは、下部筒10B上部に進むにつれて、キセノンが優先的に吸着され、気相中に窒素が濃縮される。濃縮された窒素は、下部筒10Bから上部筒10Uに導入され、上部筒10Uにおいて、窒素中に含まれる微量のキセノンがさらに吸着される。上部筒10Uの圧力が難吸着成分貯留槽3の圧力より高くなった後、上部筒10Uにおいてさらに濃縮された窒素は、経路L6を介して、難吸着成分貯留槽3へ導出される。難吸着成分貯留槽3の窒素は、原料ガス中に含まれる窒素の流量に応じた流量が、経路L7から装置系外に排出され、残りのガスはパージ再生工程における向流パージガスとして使用される。
【0031】
(2)<均圧減圧工程>
バルブV1を閉止、バルブV2を開放することで、下部筒10Bに導入するガスを易吸着成分貯留槽2のキセノンに変更する。易吸着成分貯留槽2からのキセノンを下部筒10Bに導入することによって、下部筒10Bの吸着剤充填層に共吸着された窒素と、吸着剤空隙に存在する窒素を上部筒10Uへ押し出し、下部筒10B内をキセノンで吸着飽和とする。
【0032】
この間、上部筒10Uから均圧ラインL14を介して、もう一方の上部筒11Uに窒素を導出することで下部筒10B、上部筒10Uを減圧し、パージ再生工程を終了した下部筒11B、上部筒11Uと均圧する。この時、上部筒10Uから流出させる均圧ガスの流量は、均圧減圧工程が終了時点で均圧が完了するように流量調整バルブ、オリフィスなどを用いて調整する。
【0033】
図3は、この圧力変動吸着式ガス分離方法の他方の半サイクルの工程を示したものであり、以下に示すように、<下部筒減圧工程>−<上部筒減圧工程>−<パージ再生工程>−<均圧加圧工程>の4工程で構成される。なお、下部筒10Bと上部筒10Uが図2に示した先の2工程を行っている間、下部筒11Bと上部筒11Uでは図3に示した4工程が行われる。そして、この図3の各工程におけるバルブの開閉状態は、表1に表示するように操作される。
【0034】
(3)<下部筒減圧工程1>
バルブV4、V6を閉止し、バルブV17を開放する。これにより、前記(1)〜(2)の工程間に下部筒11Bに吸着されたキセノンは、下部筒11Bと易吸着成分貯高圧留槽5の差圧によって脱着し、経路L5、バルブV17を介して、易吸着成分高圧貯留槽5へ回収される。この操作によって、易吸着成分高圧貯留槽5は下部筒11Bと同じ圧力まで昇圧される。
【0035】
易吸着成分高圧貯留槽5に回収されたキセノンは、原料ガス中に含まれるキセノンに応じた流量が、経路L13から製品として採取される。この製品ガスの供給によって、易吸着成分高圧貯留槽5の圧力は低下するが、製品ガスとして要求される圧力を維持できるような貯留槽5の容量を選択することで、特に追加のコンプレッサーを用いなくとも、客先から求められる製品圧力を常に維持することができる。
【0036】
<下部筒減圧工程2>
次に、バルブV10、V17を閉止し、バルブV11、V13を開放する。これにより、下部筒11Bに吸着された残りのキセノンは、易吸着成分低圧貯留槽2に回収される。易吸着成分低圧貯留槽2に回収されたキセノンは並流パージガスとして(2)の<均圧減圧工程>で使用される。この間、上部筒11Uは、バルブV6、V8、V9が閉止されていることにより休止状態となる。
【0037】
(4)<上部筒減圧工程>
バルブV11を閉止し、バルブV6、V10を開放する。すると、(3)の<下部筒減圧工程>において休止していた上部筒11Uと減圧を行った下部筒11Bの間に圧力差が生じることから、上部筒11U内のガスは下部筒11Bに流入する。下部筒11Bに導入されたガスは、下部筒11B内をパージしながら、経路L10、L11を介して、原料ガス貯留槽1に回収される。原料ガス貯留槽1に回収されたガスは、経路L1から導入される原料ガスと再混合されて、(1)の<吸着工程>時に再び下部筒に供給される。
【0038】
(5)<パージ再生工程>
バルブV15を開放する。難吸着成分貯留槽3に貯留した窒素は、向流パージガスとして、経路L8を介して、上部筒11Uに導入される。上部筒11Uに導入された窒素は、上部筒下部に進むにつれて、吸着していたキセノンを置換脱着させる。脱着された比較的キセノンを多く含んだガスは、下部筒11B、経路L10、L11を介して、原料ガス貯留槽1に回収される。
【0039】
原料ガス貯留槽1に回収されたガスは、(4)<上部筒減圧工程>と同様に、経路L1から導入される原料ガスと混合されて、(1)<吸着工程>時に再び下部筒に供給される。
ここで、向流パージガスに使用される窒素は、(1)<吸着工程>において上部筒10Uから導出された窒素を、難吸着成分貯留槽3を介さず、直接(5)<パージ再生工程>を行っている上部筒に導入しても良い。
【0040】
(6)<均圧加圧工程>
バルブV13、V15を閉止し、バルブV9を開放する。これによって、上部筒10U内のガスは、上部筒11Uに導入される(均圧加圧操作)。上部筒11Uに導入されるガスは窒素濃度が高いため、上部筒11U内のキセノンを上部筒下部および下部筒11Bへ押し下げることができる。
【0041】
以上説明した6つの工程を下部筒10Bと上部筒10U、下部筒11Bと上部筒11Uで順次繰り返し行うことで、窒素の濃縮と、キセノンの濃縮を連続的に行うことができる。また、下部筒10Bと上部筒10Uで(1)<吸着工程>〜(2)<均圧減圧工程>の工程を行っている間、下部筒11Bと上部筒11Uでは(3)<下部筒減圧工程>〜(6)<均圧加圧工程>の工程が行われる。
【0042】
また、一方、下部筒10Bと上部筒10Uで(3)<下部筒減圧工程>〜(6)<均圧加圧工程>の工程を行っている間、下部筒11Bと上部筒11Uでは(1)<吸着工程>〜(2)<均圧減圧工程>の工程が行われる。
また、経路L1からの原料ガスの導入、経路L7からの窒素の排出、経路L13からのキセノンの導出は、工程に依らず連続的に行われる。
【0043】
表2は、上述の各工程における工程時間の占める割合の一例を示すもので、この例では1サイクルタイムを300秒とした場合の各工程が占める工程時間(秒)を示している。
【0044】
【表2】

【0045】
また、この分離方法においては、易吸着成分の純度を高く保ったまま回収率を高めるためには、均圧減圧工程、すなわち均圧加圧工程の時間が1サイクルタイムに占める割合が重要である。そして、後述の実施例の結果からも明らかなように、均圧時間が1サイクルタイムの10〜50%を占めることで、高純度を維持しつつ高い回収率が達成できる。
【0046】
本圧力変動吸着式ガス分離方法の目的は、目的成分を高濃度、高回収率で連続的に回収できる圧力変動吸着式ガス分離方法を提供することにある。以下、この目的に対する本ガス分離方法の有効性についてさらに詳細に説明する。
【0047】
本圧力変動吸着式ガス分離方法では、まず<吸着工程>において、原料ガス貯留槽1のガスを圧縮機4により加圧し、下部筒に供給する。加圧下で行うことにより、供給ガス中に含まれる易吸着成分は下部筒の吸着剤に吸着される。すなわち、原料ガス貯留槽1に導入された原料ガス中の易吸着成分と、<上部筒減圧工程>、<パージ再生工程>の間に返送された易吸着成分は下部筒の吸着剤に吸着される。
【0048】
<吸着工程>は、図4に示したように、原料ガス貯留槽1のガス濃度で形成される第1の吸着帯が、下部筒から上部筒に移動するまで行われる。なお、図4における縦軸は、吸着筒内の気相中の易吸着成分の濃度(体積)を示し、この場合には、原料ガス貯留槽1のガス中のキセノン濃度が約60%である。
次いで、圧縮機4から供給するガスを、易吸着成分を貯留する易吸着成分低圧貯留槽2内のガスに切り替え、易吸着成分を下部筒に供給すると同時に、上部筒のガスを再生工程が行われていたもう一方の上部筒へ供給する<均圧減圧工程>を行う。
【0049】
易吸着成分の供給により、下部筒の吸着剤に共吸着した難吸着成分と吸着剤空隙に残存する難吸着成分は上部筒へ押し出される。均圧配管には流量調整バルブあるいはオリフィスなどを設け、均圧ガスの流量を制御することで、下部筒、上部筒は緩やかに減圧され、再生工程が終了した下部筒、上部筒と均圧される。この<均圧減圧工程>は、図5に示したように、易吸着成分の供給で形成される第2の吸着帯が、下部筒を完全に通過するまで継続される。この<均圧減圧工程>によって、下部筒を易吸着成分で完全に満たすことができる。
【0050】
この時、難吸着成分の製品ガスは、吸着工程において上部筒の上部から難吸着成分貯留槽3に回収される。難吸着成分の製品ガスを高濃度で回収するには、常に上部筒上部を易吸着成分が存在しない状態、すなわち吸着工程、均圧減圧工程で吸着塔内に形成される第1、第2の吸着帯が上部筒上部に到達しないような操作が望ましい。
【0051】
一方、易吸着成分の製品ガスは、均圧減圧工程によって易吸着成分で満たされた下部筒を減圧することで回収される。従って、易吸着成分の製品ガスを高濃度で回収するには、下部筒内を完全に易吸着成分で満たした状態、すなわち吸着工程、均圧減圧工程で吸着筒内に形成される第1、第2の吸着帯が完全に上部筒に移動した状態が望ましい。
【0052】
すなわち、難吸着成分の濃度を高めるためには、吸着帯の進行を遅くし、上部筒の上部に第1、第2の吸着帯が到達しない操作が望ましく、易吸着成分の濃度を高めるためには、吸着帯の進行を速くし、下部筒から吸着帯が完全に上部筒に移動する操作が望ましい。従って、易吸着成分と難吸着成分の濃度を同時に高めることは困難であった。
【0053】
この問題に対して、本発明のガス分離方法では、均圧減圧工程において、易吸着成分貯留槽からのガス供給を行うと同時に、上部筒から再生工程を終了した上部筒へガスを流出させることで、上部筒、下部筒を緩やかに減圧する。易吸着成分の供給を減圧下で行うことで、下部筒内を進行する第2吸着帯の進行速度を速めることができるため、下部筒内を易吸着成分で吸着飽和させることが容易となる。
【0054】
また、上部筒上部からのガス流出は、バルブ、オリフィスなどで流量制御されるため、下部筒、上部筒内には急激な上昇流が形成されない。従って、吸着筒内に形成される第1、第2吸着帯が常に乱されることがないため、難吸着成分、易吸着成分を高濃度で同時に採取することが可能となる。
【0055】
また、易吸着成分は、均圧減圧工程終了時に下部筒に濃縮された下部筒を減圧して回収される。下部筒内の易吸着成分を全て易吸着成分低圧貯留槽2に回収した場合、易吸着成分を製品ガスとして供給するためには、コンプレッサーなど別途加圧手段が必要となるが、本発明のガス分離方法では、易吸着成分高圧貯留槽5を設け、均圧減圧工程終了時の下部筒と易吸着成分高圧貯留槽5を均圧する工程を加えることで、コンプレッサーなど別途加圧手段を不要にすることができる。
【0056】
この方法は、原料ガス中に含まれる易吸着成分が少ない場合に特に有効であり、製品ガスとして供給する易吸着成分が少ないため、小型の貯留槽5を追加するのみで製品圧力を維持することが可能である。
本実施例では、下部筒減圧工程において、易吸着成分高圧貯留槽5に回収する例を例示したが、均圧減圧工程時に易吸着成分高圧貯留槽5に易吸着成分を回収することもできる。これは、易吸着成分低圧貯留槽2のガスを圧縮機4で加圧し、下部筒に供給している間にバルブ16、あるいはバルブ17を開放することで、圧縮機4で加圧された易吸着成分を易吸着成分高圧貯留槽5に回収することができる。
【0057】
以上説明したように、本圧力変動吸着式ガス分離方法においては、易吸着成分と難吸着成分が同時に高濃度で採取できることがわかる。また、易吸着成分を装置系外に供給するための加圧手段を不要とすることができる。従って、易吸着成分、難吸着成分が同時に極めて高回収率で回収できると共に、装置の初期コストを低減することができる。
【0058】
なお、吸着剤にCMSなどの速度分離型吸着剤を使用した場合には、易吸着成分高圧貯留槽5には窒素などが、難吸着成分貯留槽3にはキセノンなどが回収されることになる。
また、原料ガス中に、CO、HO、CFなどが含まれている場合には、予め別のPSA装置などによってこれらを前処理して除去するか、もしくはこれらガスは、製品キセノンに混じって導出されるので、後処理によって除去することが好ましい。後処理によるものでは、除去設備に小型の装置を用いることができる。
【0059】
(実施例1)
実施例1として、図1に示す圧力変動吸着式ガス分離装置により、キセノンと窒素を含む混合ガスを原料ガスとして、キセノンを分離する実験を行った。
下部筒10B、11B及び上部筒10U、11Uとして、内径83.1mm、充填高さ500mmの円筒状の容器に活性炭1.5kg充填したものを使用した。圧縮機4は25L/min.(流量[L/min.]は0℃、1気圧換算値、以下同じ。)の容量のもの、易吸着成分高圧貯留槽5は2.5Lの容量のものを使用した。装置はサイクルタイム600秒で運転され、各工程の時間は表2に示したタイムシーケンスで行った。
【0060】
原料ガス貯留槽1に導入される原料ガスの流量は3L/min.であり、ガス濃度は、キセノン10容量%、窒素90容量%である。又、易吸着成分高圧貯留槽5より採取されるキセノン流量は0.3L/min、難吸着成分貯留槽3より採取される窒素流量は2.7L/min.とした。
【0061】
上記運転条件において、約24時間の連続運転を行ったところ、経路L7から導出される窒素濃度、経路L13から導出されるキセノン濃度がほぼ一定に落ち着き、即ち、ほぼ循環定常状態に達することを確認した。この時、窒素中のキセノン濃度は110ppm、キセノン中の窒素濃度は1000ppmであった。これは、製品キセノン濃度99.9%においてキセノン回収率が99.9%であることを示す。
【0062】
また、易吸着成分高圧貯留槽5の圧力は、380kPa(下部筒減圧工程(1)の開始時)〜435kPa(下部筒減圧工程(1)終了時)の範囲で維持された。
以上より、本ガス分離方法を用いることで極めて高回収率でキセノン回収できることが確認できた。また、易吸着成分の製品ガスである製品キセノン圧力も380kPa以上で維持することが確認できた。
【0063】
(実施例2)
実施例2として、実施例1と同じ設備を用いて均圧減圧工程時間と均圧加圧工程時間との影響について検討した。サイクルタイムは全ての条件で600秒とし、均圧時間をパラメータとした実験を行った。なお、均圧時間が短い場合、易吸着成分低圧貯留槽2からの並流パージガスが少なくなり過ぎる(下部筒内部を易吸着成分で飽和させることができない)ため、吸着工程の途中で原料ガス貯留槽1からの供給をストップし、易吸着成分低圧貯留槽2のガスを用いた並流パージに適宜切り替えた。
【0064】
製品キセノン純度99.8%におけるキセノン回収率の実験結果を表3に示す。均圧時間を短時間で行った場合、キセノン回収率は大幅に低下することが明らかであり、キセノンを高回収率で回収するためには均圧時間を長くする、すなわち1サイクルタイムの10〜50%とすることが重要である。
【0065】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の圧力変動吸着式ガス分離方法及び装置は、半導体製品、もしくは表示装置の製造設備に供給し、使用した後に排出される混合ガスから、キセノン等の高付加価値ガスを高濃度、高回収率で効率良く回収し、循環利用するための方法として有効活用することができる。そして、本圧力変動吸着式ガス分離装置と、前記半導体製品、もしくは表示装置の製造設備で形成される循環サイクルとの結合によって、半導体製造装置などで使用される高価な雰囲気ガスのコストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の圧力変動吸着式ガス分離方法を実施するための圧力変動吸着式ガス分離装置の概略構成図。
【図2】本発明の圧力変動吸着式ガス分離方法の一方の半サイクルを示す工程図。
【図3】本発明の圧力変動吸着式ガス分離方法の他方の半サイクルを示す工程図。
【図4】吸着工程終了時における吸着剤充填層のキセノン濃度分布を示す模式図。
【図5】均圧減圧工程終了時における吸着剤充填層のキセノン濃度分布を示す模式図。
【符号の説明】
【0068】
1・・原料ガス貯留槽、2・・易吸着成分低圧貯留槽、3・・難吸着成分貯留槽、4・・圧縮機、5・・易吸着成分高圧貯留槽、10B、11B・・下部筒、10U、11U・・上部筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤および
この吸着剤に対して易吸着性である易吸着成分と、前記吸着剤に対して難吸着性の難吸着成分とを含む原料ガスを用い、
前記吸着剤を充填した下部筒および上部筒と、少なくとも前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、前記下部筒からの易吸着成分を貯留する易吸着成分低圧貯留槽と、前記原料ガス貯留槽または易吸着成分貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に送る圧縮機と、前記下部筒からの易吸着成分を貯留する易吸着成分高圧貯留槽と、前記上部筒からの難吸着成分を貯留する難吸着成分貯留槽を備えた分離装置を使用し、原料ガス中の易吸着成分と難吸着成分を分離し、それぞれを回収する分離方法であって、
(a)原料ガス貯留槽からのガスを加圧して下部筒に導入して、前記ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、下部筒からの前記易吸着成分が減少したガスを上部筒に導入し、前記ガス中に含まれる易吸着成分を上部筒の吸着剤に吸着して、上部筒から流出してくる前記難吸着成分を前記難吸着成分貯留槽に回収する工程と、
(b)易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、下部筒の吸着剤に共吸着された難吸着成分と前記吸着剤の空隙に残存する難吸着成分を上部筒に導出し、下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を上部筒の吸着剤に吸着させて、上部筒から難吸着成分を流出させると同時に、流出させた難吸着成分を後記(e)工程が終了した上部筒に導出することで下部筒、上部筒を減圧する工程と、
(c)下部筒を減圧して、下部筒の吸着した易吸着成分を脱着させ、脱着してきた易吸着成分を易吸着成分高圧貯留槽に回収したのち、さらに易吸着成分を脱着させ、これを易吸着成分低圧貯留槽に回収する工程と、
(d)上部筒を減圧して、上部筒の吸着剤に吸着したガスを脱着させ、脱着してきたガスを下部筒に導入し、下部筒から流出してきたガスを原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(e)上記工程(a)において回収した難吸着成分を向流パージガスとして上部筒に導入し、上部筒の前記吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、上部筒から流出してくるガスを下部筒に導入し、下部筒に導入したガスによって下部筒の前記吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、下部筒から流出してくるガスを原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(f)上記工程(b)において導出した難吸着成分を上部筒に導入することで下部筒と上部筒を加圧する工程を有し、
上記工程(a)−(f)をあらかじめ定められたシーケンスに基づいて順次繰り返し行うことによって前記原料ガス中の易吸着成分および難吸着成分を同時に回収することを特徴とする圧力変動吸着式ガス分離方法。
【請求項2】
前記(b)または(f)の工程時間をサイクルタイムの10〜50%とすることを特徴とする請求項1記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
【請求項3】
吸着剤および
この吸着剤に対して易吸着性である易吸着成分と、前記吸着剤に対して難吸着性の難吸着成分とを含む原料ガスを用い、
前記吸着剤を充填した下部筒および上部筒と、少なくとも前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、前記下部筒からの易吸着成分を貯留する易吸着成分低圧貯留槽と、前記原料ガス貯留槽または易吸着成分貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に送る圧縮機と、前記下部筒からの易吸着成分を貯留する易吸着成分高圧貯留槽と、前記上部筒からの難吸着成分を貯留する難吸着成分貯留槽と、制御部を備え、原料ガス中の易吸着成分と難吸着成分を分離し、回収する分離装置であって、
前記制御部は、以下の工程(a)ないし(f)の各工程を、予め定められたシーケンスによって制御するものであることを特徴とする圧力変動吸着式ガス分離装置。
(a)原料ガス貯留槽からのガスを加圧して下部筒に導入して、前記ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、下部筒からの前記易吸着成分が減少したガスを上部筒に導入し、前記ガス中に含まれる易吸着成分を上部筒の吸着剤に吸着して、上部筒から流出してくる前記難吸着成分を前記難吸着成分貯留槽に回収する工程と、
(b)易吸着成分貯留槽のガスを加圧して前記下部筒に導入して、下部筒の吸着剤に共吸着された難吸着成分と前記吸着剤の空隙に残存する難吸着成分を上部筒に導出し、下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を上部筒の吸着剤を用いて吸着して、上部筒から難吸着成分を流出させると同時に、流出させた難吸着成分を後記(e)工程が終了した上部筒に導出することで下部筒、上部筒を減圧する工程と、
(c)下部筒を減圧して、下部筒の吸着した易吸着成分を脱着させ、脱着してきた易吸着成分を易吸着成分貯留槽に回収したのち、さらに脱着させ、これを易吸着成分低圧貯留槽に回収する工程と、
(d)上部筒を減圧して、上部筒の吸着剤に吸着したガスを脱着させ、脱着してきたガスを下部筒に導入し、下部筒から流出してきたガスを原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(e)上記工程(a)において回収した難吸着成分を向流パージガスとして上部筒に導入し、上部筒の前記吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、上部筒から流出してくるガスを下部筒に導入し、下部筒に導入したガスによって下部筒の前記吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、下部筒から流出してくるガスを原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(f)上記工程(b)において導出した難吸着成分を上部筒に導入することで下部筒と上部筒を加圧する工程。
【請求項4】
前記制御部が、前記(b)または(f)の工程時間をサイクルタイムの10〜50%とするように制御するものであることを特徴とする請求項3記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−130611(P2007−130611A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328582(P2005−328582)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】