説明

圧力容器

【課題】圧力容器内を、高温および減圧環境のいずれの環境をも提供可能であり、簡易な装置構成であって、かつ、低コストでの製造か可能な圧力容器を提供すること。
【解決手段】内部空間22に物品を載置可能に形成された内筒20と、内筒20を収容し、内筒20の内部空間22を含む内側空間の温度および圧力を任意の温度および圧力に設定可能な温度調整部40および圧力調整部である加圧ポンプおよび減圧ポンプと、を有する缶体30を具備し、温度調整部40の温度調節手段にペルチェ素子44が用いられていることを特徴とする圧力容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の耐久性や信頼性を確認するための試験の一例として、加圧試験が広く知られている。このような加圧試験にはいわゆる圧力容器とよばれる試験装置が用いられる。このような加圧試験に用いられる圧力容器としては、例えば特許文献1,2に開示されているようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−213590号公報
【特許文献2】特開2001−355730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示されている圧力容器はいずれも内部空間を高温・高圧環境にするものである。このように内部空間を高温にする場合には、圧力容器には加熱手段が配設されていれば十分であった。
これに対して、圧力容器内を低温にするためには冷却装置が必要になるが、従来の圧力容器に冷却装置を別途装着すると、圧力容器の装置構成が複雑になってしまうと共に、圧力容器が高コストになってしまうという課題がある。
【0005】
そこで本願発明は、圧力容器内を、高温および低温のいずれの環境についても提供可能であり、簡易な装置構成であって、かつ、低コストでの製造が可能な圧力容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため本願発明は以下の構成を有する。
すなわち、内部空間に物品を載置可能に形成された内筒と、前記内筒を収容し、前記内筒の内部空間を含む内側空間の温度および圧力を任意の温度および圧力に設定可能な温度調整部および圧力調整部と、を有する缶体を具備し、前記温度調整部の温度調節手段にペルチェ素子が用いられていることを特徴とする圧力容器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる圧力容器によれば、簡易な構造でありながらも圧力容器の内部空間を高温および低温のいずれであっても容易に提供することが可能になる。また、圧力容器の構成が簡易であるから圧力容器を安価で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態における圧力容器の一部透視側面図である。
【図2】本実施形態における圧力容器の一部透視正面図である。
【図3】本実施形態における圧力容器の一部透明背面図である。
【図4】本実施形態における温度調整部の拡大図である。
【図5】冷媒用通路を示す図4内のA−A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明にかかる圧力容器の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態における圧力容器の一部透視側面図である。図2は、本実施形態における圧力容器の一部透視正面図である。図3は、本実施形態における圧力容器の一部透明背面図である。図4は、本実施形態における温度調整部の拡大図である。図5は、冷媒用通路を示す図4内のA−A線における断面図である。
本実施形態における圧力容器10は、内部空間22に試験対象物TPが載置可能であって、試験用環境を提供するための内筒20と、内筒20を収容する缶体30と、を有している。図1,2に示すように、本実施形態における圧力容器10は、脚部110を有する本体フレーム100に搭載された筐体90に収容されている。
【0010】
筐体90は、内筒20と温度調整部40が取り付けられた缶体30を収容する箱状体に形成されている。筐体90の前面側には缶体30の開口部を閉塞する閉塞扉31と一体に形成された筐体90の閉塞扉91が取り付けられている。また、筐体90には吸気口92と排気口94とが形成され、排気口94には排気ファン96が配設されている。温度調整部40および圧力センサとの通信コードは、圧力制御部60に電気的に接続されている。また、温度センサおよび冷媒供給部70の通信コードは温度制御部50に接続されている。筐体90は、脚部110を有する本体フレーム100に取り付けられている。本体フレーム100には、筐体90の他に温度制御部50、圧力制御部60、冷媒供給部70が搭載されている。本体フレーム100の底部にはストッパ付きキャスターが配設されているので、圧力容器10の移動および固定は容易である。
【0011】
缶体30には、内筒20の内部空間を含む缶体30の内側空間の空気(雰囲気)を、内筒20と缶体30との隙間32で温度調整する温度調整部40および、缶体30の内側空間の空気(雰囲気)の圧力を調整する圧力調整部である加圧ポンプ62および減圧ポンプ64が配設されている。また、温度調整部40と加圧ポンプ62および減圧ポンプ64の動作はそれぞれ、温度制御部50および圧力制御部60により制御されている。温度制御部50は、制御プログラムが記憶されている記憶手段と、制御プログラムに基づいて温度調整部40および冷媒供給部70に動作制御信号を発するCPUを具備している。また、圧力制御部60は、制御プログラムが記憶されている記憶手段と、制御プログラムに基づいて加圧ポンプ62および減圧ポンプ64に制御信号を発するCPUを具備している。これら温度制御部50および圧力制御部60は、制御プログラムが予め記憶されたパーソナルコンピュータ等により構成することもできる。
【0012】
内筒20は、一方側の端部が開口し、他方側の端部に壁部24を有する円筒状に形成されている。このように形成された内筒20は、壁部24が奥側になるように横向き配置で内筒20と缶体30との間に形成された隙間32に収容されている。
内筒20には、内筒20の内部空間22に試験対象物TPを載置するための載置部26が配設されている。壁部24には、内部空間22と隙間32とを連通する連通部28が配設されている。内筒20の開口部は常時開口し、この開口部分および連通部28により、内筒20の内部空間22と隙間32とが常に連通されている。また、内筒20の外表面には、内筒20の連通部28から循環ファン36によって内部空間22から排出された雰囲気を内筒20の外表面の所定位置に誘導するための導風板29が取り付けられている。
【0013】
缶体30は、内筒20と同様に一方側の端部が開口し、他方側の端部に壁部34を有する円筒状に形成されている。缶体30の開口部側には、開口部を気密に閉塞するための閉塞扉31が配設されている。閉塞扉31を閉塞すると、缶体30の開口部のみが気密に閉塞される。本実施形態における閉塞扉31は、筐体90の閉塞扉91と一体に形成されている。缶体30もまた、内筒20と同様に壁部34が奥側になるように横向き配置で配設されている。壁部34には、内筒20と缶体30との間に形成された隙間32の雰囲気を循環させるための循環ファン36が配設されている。缶体30の内周面下側部分には、内筒20を支持するための支持台33が内周面に沿って配設されている。支持台33は、隙間32に収容した内筒20の連通部28の高さ位置が循環ファン36の高さ位置と同じ高さ位置になる寸法に形成されている。
【0014】
缶体30には、隙間32の雰囲気温度を調整するための温度調整部40が配設されている。缶体30には、内筒20と缶体30との隙間32と外側空間とを連通した連通孔35が配設されており、連通孔35には温度調整部40を装着するためのガイド体37が接続部分の気密を維持した状態で取り付けられている。ガイド体37への温度調整部40の取り付け方法については後述する。缶体30の側面にはサービスホール38が配設されている。サービスホール38は、内筒20の載置部26に載置した試験対象物TPへの電源供給や通信を行うための電源線や通信線(共に図示せず)を内部缶体20の載置部26に敷設するためのものである。これらの電源線や通信線はサービスホール38の開口部形状に合わせて気密に装着可能に形成されたキャップ体39に収容されている。
また、ここでは図示していないが、サービスホール38と重複する内筒20の部位にも、缶体30と同様にしてサービスホールおよびキャップ体を配設してもよいのはもちろんである。
【0015】
本実施形態における温度調整部40は、図4に示すように、内筒20の内部空間22を含む隙間32内で循環された雰囲気を熱交換するためのヒートシンク42と、ヒートシンク42と熱的に接続され、ヒートシンク42の温度調整を行う温度調整手段であるペルチェ素子44とを有している。ヒートシンク42とペルチェ素子44とは、熱伝導板41のねじ部41Aにより連結されている。このねじ部41Aは、ヒートシンク42の下側面(ここでは冷却面)との間の熱伝導板41と一体形成されている。この熱伝導板41は、ガイド体37の開口部を覆うことができる大きさに形成されている。このようなねじ部41Aおよび熱伝導板41は、銅柱から削り出し加工により形成した。このように、ねじ部41Aと熱伝導板41Aとを一体成形することにより、熱伝導効率の点において好都合である。
【0016】
まず、温度調整部40のねじ部41Aを缶体30の外方側からガイド体37に挿入し、缶体30の内側から突出した部分を締付ナットNTで締め付けることでねじ部41Aを缶体30(ガイド体37)に取り付ける。ガイド体37の上下両端部は、温度調整部40の締付ナットNTと熱伝導板41とで挟持されていて、ガイド体37と熱伝導板41との間にはシール部材39が配設され、ガイド体37と熱伝導板41とは気密にシールされた状態で接続されている。ヒートシンク42は、ねじ部41Aの先端部にねじ止めすることで取り付けられている。
【0017】
ガイド体37にねじ部41Aと熱伝導板41を取り付けた後、熱伝導板41の上面にペルチェ素子44が配設される。熱伝導板41には、ペルチェ素子44の外周縁よりも外方側部分にペルチェ素子44を囲む配置にねじ孔41Bが配設されている。熱伝導板41の上面にペルチェ素子44を載置した後、ペルチェ素子44の上面(ここでは放熱面)に熱交換器47が載置される。断熱素材からなるスペーサ45は両端開口の筒体に形成されていて、熱伝導板41のねじ孔41Bの位置に立設される。熱交換器47は図4に示すように、正面視形状が下向きの凸型状をなす銅板により形成されている。熱交換器47の下側凸部の先端面は、ペルチェ素子44の上面の平面形状よりもわずかに大きい平面形状に形成されている。また、熱交換器47にも熱伝導板41のねじ孔41Bと同一平面位置に貫通孔47Aが形成されていて、貫通孔47Aと締付ねじ49Bとの熱伝導を防ぐ熱絶縁体46が挿入されている。
【0018】
熱交換器47の貫通孔47Aに断熱素材からなるワッシャ49Aを配し、締付ねじ49Bを差し込み、締付ねじ49Bを熱交換器47およびスペーサ45に挿通し、先端部を熱伝導板41のねじ孔41Bに螺着させる。ワッシャ49Aと締付ねじ48Bの頭部との間には、付勢部材であるばね49Cが配設されているので、熱交換器47は、ばね49Cによる付勢力によりペルチェ素子44に適切な力で押圧されている。ペルチェ素子44とスペーサ45は、熱伝導板41と熱交換器47とにより挟持されているが、スペーサ45の介在により、熱伝導板41と熱交換器47とによるペルチェ素子44の過度な締め付け(熱伝導板41と熱交換器47との離間距離)が規制されている。
【0019】
以上のようにして缶体30に温度調整部40が取り付けられる。
このようにして缶体30に取り付けられた温度調整部40は図1に示すように、缶体30を側面から臨んだ際に、缶体30の奥行き方向において逆く字状をなす配列になっている。また、高さ方向においては図3に示すように、缶体30を背面から臨んだ際に、缶体30の上側に位置する溶接線位置を除く外表面(図3内における缶体30の側面部分)に沿って所要間隔をあけた配列で取り付けられている。
【0020】
ペルチェ素子44の放熱面側に装着された熱交換器47には、図5に示すように、熱交換器47を冷却する冷媒を供給するための冷媒供給部70に連通するパイプライン78が接続されている。冷媒供給部70から供給された冷媒は、熱交換器47の厚み内にドリルによる孔あけ加工することにより形成された冷媒用通路48内を通過することで、熱交換器47の熱交換(ここでは冷却)を行う。冷媒用通路48は、熱交換器47の平面外周縁の対向する2辺に平行な第1ドリル孔48A,48Aを形成し、第1ドリル孔48A,48Aに直交する方向から第1ドリル孔48A,48Aどうしを連通する第2ドリル孔48Bを形成し、平面視略コ字型の冷媒用通路48を形成している。第2ドリル孔48Bの開口部は止水プラグ48Cにより閉塞されている。ここでは止水プラグ48Cとして止水性ペーストが充てんされている。冷媒用通路48の入り口側と出口側の開口部には、それぞれ接続プラグ48Dが取り付けられている。
【0021】
冷媒用通路48を通過した冷媒は、図3に示すように筐体90の背面側に配設された冷却フィンを有する冷媒用熱交換部72を通過した後、本体フレーム100に搭載されたキャッチタンク74に収容される。冷媒用熱交換部72は、排気ファン96と排気口94の中間位置に配設されていて、排気ファン96により排気口94から排出される筐体90内の空気により冷媒を冷却している。キャッチタンク74に収容された冷媒は、循環ポンプ76、パイプライン、冷媒用通路48、冷媒用熱交換部72を経由した後、再びキャッチタンク74に戻り、冷媒供給部70内で循環使用されている。本実施形態における冷媒は、所定濃度に調製されたエチレングリコールを用いているが、他の冷媒を用いることもできる。キャッチタンク74には、冷媒の収容量を確認するための確認用窓74Aが配設されている。
【0022】
このような温度調整部40の構成を採用することで、ペルチェ素子44の放熱面に取り付けられた熱交換器47の熱交換が促進される。これにより、ペルチェ素子44の冷却面の冷却が促進され、熱伝導板41の冷却もまた促進されることになる。以上のことからヒートシンク42の冷却も促進され、内筒20の内部空間22を含む隙間32内を循環する雰囲気の冷却が迅速になされ、内筒20の内部空間を含む缶体30の内側空間の温度調整(冷却)に必要なエネルギーの削減が可能になる。
【0023】
また、缶体30には加圧ポンプ62および減圧ポンプ64が接続されている。このように加圧ポンプ52と減圧ポンプ54のそれぞれを具備しているので、内筒20の内部空間22を高圧環境および大気圧以下の圧力環境(以下、大気圧以下の圧力環境を減圧環境という)のいずれの圧力環境に設定することができる。加圧ポンプ62と減圧ポンプ64は、本体フレーム100に配設されている。
内筒20または缶体30のいずれかには、内筒20の内部空間22を含む隙間32内の雰囲気の温度および圧力値を検出する温度センサおよび圧力センサ(共に図示せず)が配設されている。これらの温度センサおよび圧力センサの検出値は、随時温度制御部50および圧力制御部60の記憶部に送信されている。センサにより検出および送信された温度情報および圧力情報はそれぞれの表示部に表示される。使用者はそれぞれの表示部を確認することで、圧力容器10の内部空間の状態を随時把握することができる。
【0024】
次に、本実施形態における圧力容器10の使用方法の一例について説明する。ここでは、内部空間22を含む隙間32を低温減圧環境に設定する使用方法について説明を行う。このような低温減圧環境は、電子機器の性能試験の一部に適用することができる。
【0025】
まず、内筒20内に設けられた載置部26に試験対象物TPである電子機器を収容し、筐体90の閉塞扉91を閉塞し、筐体90と缶体30の開口部をそれぞれ閉塞する。ついで使用者が温度制御部50および圧力制御部60に設けられた入力手段を操作し、性能試験で要求されている温度条件及び圧力条件を温度制御部60に入力し、図示しない起動スイッチをオンにする。すると、温度制御部50により、循環ファン36、温度調整部40、冷媒供給部70のそれぞれの動作が、圧力制御部60により減圧ポンプ64の動作がそれぞれ制御される。
具体的には、内筒20に配設された温度センサおよび圧力センサの検出値が随時温度制御部50および圧力制御部60に送信される。それぞれの制御部が各センサによる検出値を受信すると、各制御部は検出値と設定条件とを比較し、検出値を設定値に接近させるように、循環ファン36、温度調整部40、加圧ポンプ62、減圧ポンプ64、冷媒供給部70の動作制御を行うのである。各センサによる検出値は、それぞれの制御部に設けられた表示部に表示されるので、使用者も現在の圧力容器10内の環境を把握することができる。
【0026】
循環ファン36が連通部28から内筒20の内部空間22内の雰囲気を内部空間22の開口部側に向けて送風すると、圧力容器10内の雰囲気は、内筒20の開口部から内筒20と缶体30との隙間32に供給されることになる。内筒20の外表面には、導風板29が配設されているので、内筒20と缶体30との隙間32に供給される雰囲気は、導風板29により誘導された方向に供給されることになる。導風板29は隙間32に配設されているヒートシンク42の位置に圧力容器10内の雰囲気を誘導しているから、ヒートシンク42と圧力容器10内の雰囲気との接触が促進される。
ヒートシンク42には、ペルチェ素子44と熱的に接続されたねじ部41Aが連結されているので、ヒートシンク42が吸収した熱は、ねじ部41Aを経由して熱伝導板41に熱伝導される。熱伝導板41にはペルチェ素子44の冷却面が当接しているので、熱伝導板41はペルチェ素子44により冷却されることになる。本実施形態においては、内筒20の内部空間22を含む隙間32を低温減圧環境にするため、ペルチェ素子44の熱伝導板41側の面が冷却面となるようにペルチェ素子44に供給される電流の向きが温度制御部50により制御されている。
【0027】
ペルチェ素子44の放熱面には熱交換器47が配設されており、熱交換器47に形成された冷媒用通路48に冷媒供給部70に接続されたパイプライン78から冷媒(エチレングリコール)が供給され、熱交換器47による放熱を促進させている。冷媒供給用通路48に供給される冷媒は、キャッチタンク74から循環ポンプ76によりそれぞれの温度調整部40における熱交換器47に供給されている。本実施形態においては、各温度調整部40,40,40,・・・の熱交換器47,47,47,・・・に対してシリアル接続となるように冷媒を供給しているが、循環ポンプ76の冷媒吐出能力によっては、パラレル接続にすることもできる。缶体30に取り付けられているすべての熱交換器47,47,47,・・・を通過した冷媒は、排出口94の近傍位置に配設された冷媒用熱交換部72で冷却処理された後にキャッチタンク74に貯留される。このように、熱交換器47に供給する冷媒は、冷媒供給部70のパイプラインの体積以上の体積の冷媒を用い、かつ、冷却処理しながら冷媒供給部70内を循環させているので、冷却効果をきわめて高くすることができる。
【0028】
このようにしてヒートシンク42を通過して熱交換された内筒20の内部空間22を含む隙間32内の雰囲気は、再び循環ファン36により連通部28から内部空間22に供給される。このように試験対象物TPが配設された内筒20の内部空間22を含む隙間32とからなる閉塞空間(缶体30の内側空間すなわち、圧力容器10の内部空間)内で熱交換をしながら雰囲気が循環されることになるから短時間での温度調整が可能である。
【0029】
隙間32の温度調整と同時または前後して、内筒20の内部空間22を含む隙間32の圧力調整が行われる。圧力制御部60が圧力センサの検出値を受信すると、圧力制御部60に入力されている設定条件の気圧(ここでは減圧環境としている)になるよう、圧力調整手段である減圧ポンプ64を駆動させ、内筒20の内部空間22と隙間32の気圧を下げ、圧力センサの検出値が圧力制御部60に入力された設定条件値となるまで減圧ポンプ64を稼動させる。圧力制御部60により内筒20の内部空間22を含む隙間32の圧力調整が完了した後は、圧力制御部60は図示しない弁を閉じ、隙間32内(すなわち圧力容器10内)の圧力状態を維持する。
【0030】
以上、温度制御部50および圧力制御部60による処理によって、圧力容器10内の状態が予め設定された条件になった後も、温度制御部50および圧力制御部60は、温度センサおよび圧力センサの検出値に基づいて、圧力容器10内の状態が設定温度および設定圧力を維持するのはもちろんである。
内部空間22を含む隙間32が設定温度および設定圧力に調整されたら、試験対象物TPの動作確認が行われる。このときの試験対象物TPの動作状況データの収集は、先に説明したサービスホール38の部分を介して行うことができる。動状況データの収集が終了した後、使用者が入力手段またはオンオフスイッチを用いて温度制御部50および圧力制御部60に試験完了信号を送信すると、圧力制御部60は弁を開き、内筒20の内部空間22を含む隙間32内の圧力を大気圧に戻す大気開放処理を行う。この後、試験対象物TPを取り出すことができる。
【0031】
以上に本願発明を実施形態に基づいて詳細に説明したが、本願発明の技術的範囲は以上に示した実施形態に限定されるものではない。例えば、以上に説明した実施形態においては、内筒20の内部空間22を含む隙間32(圧力容器10内)を低温減圧環境に設定した実施形態について説明しているが、低温高圧環境や、高温減圧環境、高温高圧環境のいずれの環境であっても対応することができる。隙間32(圧力容器10内)の温度環境については、ペルチェ素子44の冷却面と放熱面とを入れ替わるように、温度制御部50がペルチェ素子44への電力供給を制御すればよい。また、冷媒供給部70の冷媒用熱交換部72に加熱手段を配設し、冷媒を加熱処理する構成にすればよい。そして、隙間32(圧力容器10内)の圧力環境については、加圧ポンプ62または減圧ポンプ64のうち適切なポンプを適宜稼動させればよい。
【0032】
また、本実施形態においては、圧力容器10内の温度および圧力をそれぞれ調整する制御部として、温度制御部50と圧力制御部60とを別体に設けた形態について説明しているが、温度制御部50および圧力制御部60を一体にした制御部を採用することももちろん可能である。
【0033】
さらに、以上に説明した実施形態においては、内筒20と缶体30との隙間32にヒートシンク42を配設し、ヒートシンク42に熱的に接続させたペルチェ素子44を缶体30の外側(大気中)にガイド体37により保持されているが、この形態に限定されるものではない。ペルチェ素子44を缶体30の外表面に貼付し、缶体30を直接冷却し、隙間32内の空気を缶体30の冷却表面上を通過させることによっても温度調整は可能ではある。この構成を採用することによりヒートシンク42の配設が省略可能になり、以上の実施形態に比較して圧力容器10の内部空間内の温度調整効率は低下するが、製造工程の短縮や部品数の低減が可能になり、低コストでの圧力容器10の提供が可能になる。
【符号の説明】
【0034】
10 圧力容器
20 内筒
22 内部空間
29 導風板
30 缶体
32 隙間
36 循環ファン
40 温度調整部
42 ヒートシンク
44 ペルチェ素子
47 熱交換器
48 冷媒用通路
50 温度制御部
60 圧力制御部
64 減圧ポンプ
70 冷媒供給部
72 冷媒用熱交換部
74 キャッチタンク
90 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に物品を載置可能に形成された内筒と、
前記内筒を収容し、前記内筒の内部空間を含む内側空間の温度および圧力を任意の温度および圧力に設定可能な温度調整部および圧力調整部と、を有する缶体を具備し、
前記温度調整部の温度調節手段にペルチェ素子が用いられていることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記ペルチェ素子と熱的に接続されたヒートシンクが前記缶体と前記内筒との隙間に配設されていることを特徴とする請求項1記載の圧力容器。
【請求項3】
前記ヒートシンクは、前記缶体の奥行き方向に所要間隔をあけた配置で取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の圧力容器。
【請求項4】
前記内筒には前記内筒の内部と、前記缶体と前記内筒との隙間とに連通する連通部が形成され、
前記缶体には、前記連通部から前記内筒の内部空間の雰囲気を前記缶体と前記内筒との隙間に循環させるための循環ファンが配設され、
前記内筒の外側面には、前記内筒の内部空間から排出された雰囲気を前記ヒートシンクの取り付け位置に誘導するための導風板が装着されていることを特徴とする請求項2または3記載の圧力容器。
【請求項5】
前記ペルチェ素子には、放熱面に熱交換器が、冷却面に熱伝導板がそれぞれ装着されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項6】
前記ペルチェ素子の放熱面側に装着された熱交換器と、前記ペルチェ素子の冷却面側に装着された熱伝導板と、の離間距離は、スペーサにより規制されていることを特徴とする請求項5記載の圧力容器。
【請求項7】
前記ペルチェ素子の放熱面側に装着された熱交換器は、付勢手段により前記ペルチェ素子の放熱面側に付勢されていることを特徴とする請求項5または6記載の圧力容器。
【請求項8】
前記ペルチェ素子の放熱面に装着された前記熱交換器には、前記熱交換器を冷却する冷媒を通過させるための冷媒用通路が設けられていることを特徴とする請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項9】
前記冷媒用通路には、冷媒用熱交換部が配設されていることを特徴とする請求項8記載の圧力容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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