説明

圧力検知装置

【課題】圧力検知部の状態をより正確に判定することができる圧力検知装置を提供する。
【解決手段】圧力検知装置101は、印加された荷重に基づいて信号を出力する感圧抵抗体31と、自身の一端側に加えられた内燃機関の燃焼室内の圧力により、自身の他端部から感圧抵抗体31に荷重を印加する伝達部5と、伝達部5をハウジング2に対して相対変位可能な状態で支持する支持部11と、ハウジング2に対する伝達部5の相対変位方向と同一の方向に沿って、任意の荷重を感圧抵抗体31に対して印加可能な加圧機構とを備える。さらに、圧力検知装置101は、内燃機関の停止時に加圧機構を制御することで、加圧機構から感圧抵抗体31に対して所定量の荷重を印加する加圧機構制御部103と、所定量の荷重を印加した際の感圧抵抗体31からの出力信号に基づいて、感圧抵抗体31の状態を判定する状態判定部108とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室内の圧力を検知するための圧力検知部を備えてなる圧力検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼圧等の圧力を検知するための圧力検知装置は、一般に、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状の筐体と、前記軸孔内に配置され、先端側から後方へ向けて圧力を伝達する圧力伝達体と、圧力伝達体から加えられる圧力に基づいて信号を出力する圧力検知部(センサ素子)とを備えている。
【0003】
ところで、使用に伴う熱や衝撃により、圧力検知部に故障・劣化といった異常が生じてしまうことがある。圧力検知部に異常が生じてしまうと、信号が出力されなくなってしまったり、正常時に比べてずれた信号が出力されてしまったりするおそれがある。ここで、圧力検知部の状態を判定する手法としては、エンジンが所定の運転状態(例えば、アイドリング状態)にあるときの圧力検知部から出力された信号と、予め設定された基準信号とから劣化係数を算出し、当該劣化係数に基づいて圧力検知部の状態を判定する手法が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。尚、信号の出力とは、例えば、圧電素子のように自身に加えられた圧力に対応して生じる電荷や、定電流が流された、自身に加えられた圧力により自身の抵抗値が変化する素子(歪みゲージやピエゾ抵抗体)の両端電圧などを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−281522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記手法では、圧力検知部の状態によることなく、圧力検知部から出力される信号が大きく変動してしまうおそれがある。すなわち、エンジンは、例えばアイドリング状態であれば、比較的安定した駆動状態ではあるが、必ずしも安定するわけではなく、圧力が常に一様なものであるかの保証はない。このため、エンジンが駆動しているときに圧力検知部の状態を正確に判定することは困難であり、その信頼性を確保することができないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、圧力検知部の状態をより正確に判定することができる圧力検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
【0008】
構成1.本構成の圧力検知装置は、筐体と、
前記筐体に固定され、自身に印加された荷重に基づいて信号を出力する圧力検知部と、
自身の一端側に加えられた内燃機関の燃焼室内の圧力により、自身の他端部から前記圧力検知部に荷重を印加する伝達部と、
前記筐体に固定され、前記伝達部を前記筐体に対して相対変位可能な状態で支持する支持部と、
前記筐体に対する前記伝達部の相対変位方向と同一の方向に沿って、任意の荷重を前記圧力検知部に対して印加可能な加圧機構と
を備えた圧力検知装置であって、
前記内燃機関の停止時に前記加圧機構を制御することで、前記加圧機構から前記圧力検知部に対して所定量の荷重を印加する加圧機構制御部と、
前記所定量の荷重を印加した際の前記圧力検知部からの出力信号に基づいて、前記圧力検知部の状態を判定する状態判定部と
を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成1によれば、圧力検知装置は、任意の荷重を圧力検知部に対して印加可能な加圧機構と、加圧機構を制御することにより、圧力検知部に所定量の荷重を印加する加圧機構制御部とを備えている。そして、内燃機関の停止時(つまり、燃焼室内の圧力変動がないとき)に、加圧機構から所定量の荷重を圧力検知部に印加し、その際に圧力検知部から出力される信号に基づいて、圧力検知部の状態を判定するようになっている。従って、内燃機関の動作状態による出力信号の変動といった事態が生じることはなく、圧力検知部の状態を正確に反映した出力信号を得ることができる。その結果、圧力検知部の状態を極めて正確に判定することができる。
【0010】
尚、加圧機構制御部や状態判定部を前記筐体と一体に構成しなくてもよい(すなわち、加圧機構制御部や状態判定部を前記筐体に必ずしも固定する必要はない)。従って、例えば、加圧機構を制御する信号や圧力検知部からの出力信号は、前記筐体の外側の装置において処理することとし、その外部の装置とのインターフェース(I/F)を設ける構成としてもよい。またその際のインターフェースは有線/無線を問わない。
【0011】
さらに、加圧機構から圧力検知部に対する所定量の荷重の印加は、内燃機関の停止時であればいつ行ってもよく、例えば、自動車ドアの開錠から内燃機関を始動するまでの間や、エンジンキーのオンから内燃機関を始動するまでの間などに行うことができる。
【0012】
構成2.本構成の圧力検知装置は、上記構成1において、前記加圧機構と前記伝達部とが一体とされることを特徴とする。
【0013】
上記構成2によれば、圧力検知部に対して荷重を印加するという機能の点で共通する加圧機構及び伝達部が一体とされている。従って、部品点数の削減を図ることができ、ひいては製造コストの抑制及び装置の小型化を図ることができる。
【0014】
構成3.本構成の圧力検知装置は、上記構成1又は2において、前記加圧機構は、通電により発熱し、前記燃焼室内を加熱するヒータであることを特徴とする。
【0015】
上記構成3によれば、加圧機構は、燃焼室内を加熱するヒータにより構成されている。換言すれば、ヒータは、燃焼室内を加熱するヒータの本来的な機能に加えて、熱膨張を利用して所定量の荷重を圧力検知部に印加する加圧機構としての機能をも具備している。従って、燃焼室内を加熱する機構と加圧機構とをそれぞれ別々に設ける場合と比較して、部品点数の削減を図ることができ、製造コストや装置の小型化を図ることができる。
【0016】
また、自身が発熱するヒータを加圧機構として用いることで、加圧機構を機械的な手段により実現する場合と比較して、加圧機構は十分な耐熱性を有することとなる。そのため、圧力検知部の異常判定を長期間に亘って精度よく行うことができる。
【0017】
構成4.本構成の圧力検知装置は、上記構成1乃至3のいずれかにおいて、前記伝達部のうちその他端部から前記支持部に支持された部位までの前記筐体に対する前記伝達部の相対変位方向に沿ったバネ定数をka(N/mm)とし、
前記筐体のうち前記支持部が固定された部位から前記圧力検知部が固定された部位までの前記相対変位方向に沿ったバネ定数をkb(N/mm)とし、
両バネ定数ka、kbの合成バネ定数であるka・kb/(ka+kb)をk1(N/mm)とし、
前記支持部の前記相対変位方向に沿ったバネ定数をk2(N/mm)としたとき、
0.025≦k1/k2≦3.0
を満たすことを特徴とする。
【0018】
燃焼室内の圧力を精度よく検知するためには、伝達部を支持する支持部のバネ定数k2を小さくすることで、筐体に対して伝達部を相対変位しやすくしたり、伝達部のうちその他端部(圧力検知部に圧力を加える部位)から支持部に支持された部位までのバネ定数kaと、筐体のうち支持部が固定された部位から圧力検知部が固定された部位までのバネ定数kbとの合成バネ定数k1を大きくすることで、伝達部の圧縮変形や筐体に対する圧力検知部の相対移動を抑制したりすることが好ましい。しかしながら、前記合成バネ定数k1を過度に大きくしたり、支持部のバネ定数k2を過度に小さくしたりすることで、バネ定数k2に対する合成バネ定数k1の割合が増大してしまうと、加圧機構から圧力検知部に対して荷重を加える際に、支持部が大きく変形してしまい、圧力検知部に加えられる荷重が不十分となってしまうおそれがある。その結果、圧力検知部からの出力信号が低下してしまい、圧力検知部の状態の判定精度が低下してしまうおそれがある。
【0019】
この点、上記構成4によれば、0.025≦k1/k2≦3.0を満たすように支持部や伝達部等が構成されており、燃焼室内の圧力と加圧機構からの圧力とをそれぞれ十分に圧力検知部に加えることができる。従って、燃焼室内の圧力を精度よく検知することができるとともに、圧力検知部の状態をより確実に精度よく判定することができる。
【0020】
構成5.本構成の圧力検知装置は、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、前記状態判定部は、
前記所定量の荷重を印加した際の前記圧力検知部からの出力信号と、予め設定された所定の故障判定閾値とを比較して、前記圧力検知部の故障を判定する故障判定部を備えることを特徴とする。
【0021】
上述のように、所定量の荷重を印加した際の圧力検知部からの出力信号は、例えば、k1/k2=0.2に設計した構造体にヒータ加熱を加えた際、故障していない場合は事前に想定した圧力印加時の信号と同等の量となり、故障している場合は異なる量となる。すなわち、所定量の荷重を印加した際の圧力検知部からの出力信号は、自身の状態を正確に反映したものである。そのため、上記構成5のように、圧力検知部からの出力信号と所定の故障判定閾値とを比較することで、圧力検知部の故障を非常に正確に判定することができる。
【0022】
構成6.本構成の圧力検知装置は、上記構成1乃至5のいずれかにおいて、前記燃焼室内の圧力に基づき前記圧力検知部から出力される信号を増幅する信号増幅部と、
前記所定量の荷重を印加した際に前記圧力検知部からの出力される信号の時間変化率を特定する変化率特定部と、
前記変化率特定部により特定された時間変化率に基づいて、前記信号増幅部による出力信号の増幅率を設定する増幅率設定部と
を備えることを特徴とする。
【0023】
上記構成6によれば、変化率特定部により所定量の荷重を印加した際の出力信号の時間変化率を特定することで、圧力検知部の劣化による出力信号の減少分を特定することができ、時間変化率(つまり、劣化による出力信号の減少分)に基づいて設定された増幅率の分だけ、燃焼室内の圧力を検知する際に圧力検知部から出力される信号が増幅される。従って、圧力検知部の劣化による出力信号の減少分が補完されることとなり、圧力検知部が劣化した場合であっても、燃焼室内の圧力を非常に精度よく検知することができる。
【0024】
構成7.本構成の圧力検知装置は、上記構成6において、前記圧力検知部の温度を測定可能な温度測定部を備え、
前記温度測定部により測定された前記圧力検知部の温度が、前記内燃機関が冷却状態にあるときの前記圧力検知部の温度に対応する予め設定された所定の基準温度を含む、予め設定された所定の許容温度の範囲内にある場合に、前記増幅率設定部により前記増幅率が設定されることを特徴とする。
【0025】
圧力検知部が極端に高温又は低温である場合には、所定量の荷重を加えた際に圧力検知部から出力される信号の時間変化率が極端に小さくなってしまったり、極端に大きくなってしまったりして、時間変化率に基づく増幅率を正確に設定することができないおそれがある。
【0026】
この点、上記構成7によれば、圧力検知部の温度が所定の許容温度の範囲内にある場合(つまり、圧力検知部が極端に高温又は低温ではない場合)に、増幅率が設定されるようになっている。従って、より正確な増幅率を設定することができ、ひいては燃焼室内の圧力を一層精度よく検知することができる。
【0027】
構成8.本構成の圧力検知装置は、上記構成6において、前記圧力検知部の温度を測定可能な温度測定部を備え、
前記温度測定部により測定された前記圧力検知部の温度に基づいて、前記所定量の荷重を印加した際の前記圧力検知部からの出力信号が調節されることを特徴とする。
【0028】
上記構成8によれば、圧力検知部の温度に基づいて、所定量の荷重を印加した際の圧力検知部からの出力信号が調節され、当該調節された出力信号に基づいて時間変化率の特定ひいては増幅率の設定が行われる。つまり、温度の影響を補正した出力信号に基づいて、増幅率が設定される。そのため、増幅率の設定タイミングが特段限定されることなく、より正確な増幅率を随時設定することができる。その結果、燃焼室内の圧力をより一層精度よく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】圧力検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、グロープラグの断面図であり、(b)は、グロープラグの正面図である。
【図3】センサ構造体等の構成を示す部分拡大断面図である。
【図4】センサ構造体の構成を示す部分拡大平面図である。
【図5】セラミックヒータ等の構成を示す部分拡大断面図である。
【図6】バネ定数ka等の測定対象位置を説明するためのハウジング等の断面模式図である。
【図7】出力信号の時間変化率の特定手法を説明するための出力信号を示すグラフである。
【図8】圧力検知装置における処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図9】増幅率設定処理を行う際の処理を示すフローチャートである。
【図10】初期化設定処理を行う際の処理を示すフローチャートである。
【図11】圧力検知処理を行う際の処理を示すフローチャートである。
【図12】k1/k2に対する、燃焼圧感度及び加圧機構感度を示すグラフである。
【図13】別の実施形態における制御処理部等の概略構成を示すブロック図である。
【図14】別の実施形態における検知時期設定部の概略構成を示すブロック図である。
【図15】別の実施形態における検知時期設定部の概略構成を示すブロック図である。
【図16】別の実施形態における、出力信号の時間変化率の特定手法を説明するための出力信号を示すグラフである。
【図17】別の実施形態における、出力信号の時間変化率の特定手法を説明するための出力信号を示すグラフである。
【図18】別の実施形態における変化率特定部の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、圧力検知装置の一例を示すブロック図である。
【0031】
図1に示すように、圧力検知装置101は、エンジンENに組付けられる燃焼圧センサ付きグロープラグ(以下、「グロープラグ」と称す)1と、グロープラグ1からの出力信号の処理等を行う制御処理部102とを備える。
【0032】
グロープラグ1は、図2に示すように、筐体としてのハウジング2、センサ構造体3、中軸4、及び、加圧機構をなすヒータとしてのセラミックヒータ51を有する伝達部5などを備えている。
【0033】
前記ハウジング2は、所定の金属材料(例えば、S45C等の鉄系素材)によって形成されるとともに、軸線CL1方向に沿って延びる軸孔21を有するハウジング本体22と、ハウジング本体22の先端部に接合された先端スリーブ23とを備えている。
【0034】
ハウジング本体22の長手方向略中央の外周部分には、グロープラグ1を内燃機関のシリンダヘッドの取付孔(図示略)に取付けるためのねじ部24が形成されている。さらに、ハウジング本体22の後端部には、断面六角形状の工具係合部25が接合されており、グロープラグ1を内燃機関に組付ける際には、工具係合部25に対して所定の工具(例えば、スパナ、レンチ等)が係合されるようになっている。
【0035】
加えて、前記工具係合部25の後端部には、端子ピン6が接続されている。端子ピン6は、セラミックヒータ51への電力供給やセンサ構造体3と制御処理部102との間の通信に用いられるコネクタ(図示せず)が取付けられるものであり、外観上、外径の異なる円柱が軸線CL1方向に積み重なる形状をなしている。
【0036】
加えて、図3に示すように、先端スリーブ23は、円筒状をなす筒状部23Aと、当該筒状部23Aの先端から径方向外側へと膨出形成された鍔部23Bとを有している。そして、鍔部23Bとハウジング本体22の先端面との当接部分に対してレーザ溶接等を施すことにより、ハウジング本体22と先端スリーブ23とが接合されている。
【0037】
また、筒状部23Aの後端側には、筒状のストッパ部材26が圧入接合されるとともに、当該ストッパ部材26に係止された状態で、板状の台座27が筒状部23Aに挿入されている。さらに、前記台座27の先端側の面にはセンサ構造体3が固定されている〔すなわち、センサ構造体3は、台座27を介して先端スリーブ23(ハウジング2)に固定されている〕。センサ構造体3は、図4に示すように、圧力検知部としての感圧抵抗体31と、感温素子32とを備えている。
【0038】
感圧抵抗体31は、軸線CL1方向(図4の手前奥方向)に沿った圧力が加えられることで、自身の抵抗値が比較的大きく変化するもの(例えば、ピエゾ抵抗体や歪みゲージなど)であり、その抵抗値変化の信号(定電流が流された感圧抵抗体31の両端電圧)は、中軸4等の内側に設けられた信号線7(図3参照)及び端子ピン6を介して制御処理部102へと出力されるようになっている。尚、感圧抵抗体31に代えて、自身に加えられた圧力に対応して電荷が生じる圧電素子を用いてもよい。
【0039】
感温抵抗体32は、温度変化を検出可能な感温素子として機能するものであり、感圧抵抗体31とほぼ同一の抵抗温度係数(TCR)を有している。感温抵抗体32は、感圧抵抗体31が配設される面と同一の面に配設されており、ひいては感圧抵抗体31と略同一の温度環境下に置かれるようになっている。従って、温度変化に伴って感圧抵抗体31の抵抗値が変化したとき、感温抵抗体32の抵抗値についても、感圧抵抗体31の抵抗値変化に対応して変化する。そして、感温抵抗体32の抵抗値変化の信号は、信号線7や端子ピン6を介して制御処理部102に出力されるようになっている。
【0040】
図2に戻り、前記ハウジング2の軸孔21には、導電性の金属材料からなる円筒状の前記中軸4が収容されている。中軸4は、セラミックヒータ51への通電経路となる部位であり、自身の先端側が端子ピン6と接続されるとともに、自身の後端側がそれぞれ環状の絶縁性材料からなるOリング28及び絶縁ブッシュ29に挿通されている。そして、Oリング28により中軸4とハウジング2との間の気密性が確保されるとともに、絶縁ブッシュ29を介して中軸4がハウジング2により支持されている。
【0041】
さらに、前記中軸4の先端部は、図3に示すように、所定の導電性の金属材料(例えば、SUS等の鉄系素材)によって形成された筒状の接続部材8を介して、筒状の給電部材9に電気的に接続されている。また、給電部材9は、自身の後端側に、軸線CL1方向に沿って延び、周方向に沿って間欠的に形成された複数の延出部9Aを備えており、当該延出部9Aは、台座27と先端スリーブ23との間に設けられた隙間(図示せず)を通過して後端側に延びるように構成されている。さらに、給電部材9の先端側には、セラミックヒータ51の後端側が圧入されており、中軸4とセラミックヒータ51とが接続部材8及び給電部材9を介して電気的に接続されている。
【0042】
加えて、ハウジング2の先端部には、自身の内周において、セラミックヒータ51を支持する筒状の支持スリーブ10が接合されており、支持スリーブ10は、自身の後端側に、径方向内側に向けて突出する支持部11を備えている。支持部11は、比較的薄肉に形成されており、その結果、軸線CL1方向に沿って撓み変形しやすい構造となっている。また、支持部11が変形しやすい構造とされることで、伝達部5(セラミックヒータ51)は、ハウジング2に対して軸線CL1方向に沿って相対移動可能となっている。すなわち、支持部11は、伝達部5(セラミックヒータ51)をハウジング2に対して軸線CL1に沿って相対変位可能な状態で支持している。
【0043】
伝達部5は、燃焼圧などの圧力をセンサ構造体3(感圧抵抗体31)に対して伝達するものであり、セラミックヒータ51、中間部材52、及び、半球部材53を備えている。
【0044】
セラミックヒータ51は、図5に示すように、絶縁性セラミックによって構成されるとともに、軸線CL1方向に延びる略同径で丸棒状の基体54と、その内部に埋設され、導電性セラミックからなる長細いU字状の発熱体55とを備えている。また、発熱体55は、それぞれ棒状をなす一対のリード部55A,55Bと、各リード部55A,55Bの先端部同士を連結する連結部55Cとを備えている。連結部55Cのうち特に先端側の部分が、いわゆる発熱抵抗体として機能する部位であり、曲面状に形成されたセラミックヒータ51の先端部分において、その曲面に沿うようにして断面U字状をなしている。加えて、連結部55Cの先端側の部分の断面積は各リード部55A,55Bの断面積よりも小さくなるようにして形成されており、通電時には、連結部55Cの先端側の部分において積極的に発熱が行われるようになっている。
【0045】
また、各リード部55A,55Bは、それぞれセラミックヒータ51の後端側に向けて互いに略平行に延設されている。加えて、リード部55Aの後端寄り位置には、電極取出部56が外周方向に突設されており、電極取出部56は、セラミックヒータ51の外周面に露出している。また、リード部55Bの後端寄りの位置には、電極取出部57が外周方向に突設されており、電極取出部56と同様に、電極取出部57は、セラミックヒータ51の外周面に露出している。尚、電極取出部56は、軸線CL1方向に沿って、電極取出部57よりも後端側に位置している。
【0046】
加えて、電極取出部56は、給電部材9の先端側内周面に対して接触している。これにより、給電部材9に対して電気的に接続された中軸4とリード部55Aとの間における電気的導通が図られている。また、電極取出部57は、支持スリーブ10を介してハウジング2の先端部に接合された筒状の外筒12に対して電気的に接続されている。これにより、外筒12の接合されたハウジング2とリード部55Bとの間の電気的導通が図られている。すなわち、本実施形態では、中軸4とハウジング2とが、グロープラグ1において、セラミックヒータ51に通電するための陽極・陰極として機能するようになっている。
【0047】
前記中間部材52は、高剛性で、かつ、中実(高密度)の金属材料によって円板状に形成されている。中間部材52は、自身の先端面が前記半球部材53に対して当接する一方で、自身の後端面の大部分が、センサ構造体3の先端面に対して当接した状態で配設されている。
【0048】
加えて、前記半球部材53は、中実(高密度)のセラミック材料によって形成されている。半球部材53は、給電部材9に対して圧入固定されており、平坦状に形成された半球部材53の先端面は、セラミックヒータ51の後端面に対して当接している。
【0049】
さらに、本実施形態では、伝達部5や支持部11のバネ定数が次のように設定されている。すなわち、図6に示すように(図6は、バネ定数ka等の測定対象位置を説明するためのハウジング2等の断面模式図である)、伝達部5のうちその後端部(他端部)から支持部11に支持された部位まで(図6中、散点模様を付した部位)のハウジング2に対する伝達部5の相対変位方向(軸線CL1方向)に沿ったバネ定数をka(N/mm)とし、ハウジング2のうち支持部11が固定された部位から感圧抵抗体31(センサ構造体3)が固定された部位まで(図6中、斜線を付した部位)の前記相対変位方向に沿ったバネ定数をkb(N/mm)とする。そして、両バネ定数ka、kbの合成バネ定数であるka・kb/(ka+kb)をk1(N/mm)とし、支持部11の前記相対変位方向に沿ったバネ定数をk2(N/mm)としたとき、0.025≦k1/k2≦3.0を満たすように構成されている。尚、バネ定数の比率k1/k2は、例えば、セラミックヒータ51に任意の荷重を加えた際における、センサ構造体3にかかる荷重から測定することができる。
【0050】
さらに、本実施形態においては、前記制御処理部102が、グロープラグ1(端子ピン6)に対して所定の信号線を介して電気的に接続されている。
【0051】
制御処理部102は、図1に示すように、加圧機構制御部103と、検知時期設定部104と、オフセット補正部105と、温度測定部106と、変化率特定部107と、状態判定部108と、増幅率設定部110と、信号増幅部111と、信号処理部112とを備えている。
【0052】
加圧機構制御部103は、エンジンENの停止時において、エンジンキーがオンとされたタイミングから所定の時間内に、電圧供給用の電源装置121を制御することにより、所定量の電力をセラミックヒータ51に投入する。そして、セラミックヒータ51を熱膨張させることで、感圧抵抗体31に対して、ハウジング2に対する伝達部5の相対変位方向と同一の方向(軸線CL1方向)に沿って所定量の荷重を印加する。すなわち、本実施形態において、セラミックヒータ51は、通電により発熱し、燃焼室内を加熱する機能に加えて、感圧抵抗体31に対して所定量の荷重を印加する加圧機構としての機能を有している。また、セラミックヒータ51は、伝達部5の一部を構成しており、加圧機構(セラミックヒータ51)と伝達部5とは一体とされている。尚、電源装置121からセラミックヒータ51に対する電力投入のオン・オフは、ECU(電子制御装置)122から電源装置121に出力される通電信号によって切り替えられる。
【0053】
検知時期設定部104は、後述する変化率特定部107における処理を行う時期を設定するものである。本実施形態では、所定量の荷重を感圧抵抗体31に印加するにあたりECU122から電源装置121へと出力される通電信号に基づいて、変化率特定部107による処理の開始時期が設定される。具体的には、エンジンキーがオンとされたタイミングが、変化率特定部107による処理の開始時期とされる。一方で、前記処理の開始時期から所定の時間x(例えば、2秒間)を経過したときが、変化率特定部107による処理の終期に設定される。
【0054】
オフセット補正部105は、感圧抵抗体31からの出力信号に対してオフセット値を加算することで、出力信号の補正を行うものである。具体的には、オフセット補正部105は、燃焼室内が予め設定された基準圧力(例えば、1Bar)となったタイミングのそれぞれにおいて、感圧抵抗体31の出力信号を検出するとともに、前のタイミングで検出した出力信号に対する今回のタイミングで検出された出力信号の変化量を測定する。そして、測定された変化量をそれぞれ積算したものを、オフセット値として設定する。尚、最初の検出タイミングにおいては、当該タイミングで検出された出力信号と、所定の基準電圧(例えば、0V)との変化量が測定される。すなわち、オフセット補正部105によって、感圧抵抗体31からの出力信号は、前記基準電圧を基準とした信号にオフセットされる。
【0055】
温度測定部106は、感温抵抗体32からの出力信号に基づいて感圧抵抗体31の温度を測定するものである。
【0056】
変化率特定部107は、前記所定量の荷重を印加した際の感圧抵抗体31からの出力信号の時間変化率を特定するものである。本実施形態において、変化率特定部107は、温度測定部106により測定された感圧抵抗体31の温度TEが、エンジンENが冷却状態にあるときの感圧抵抗体31の温度に対応する予め設定された所定の基準温度〔例えば、室温(23℃)〕から、予め設定された所定の許容温度(例えば、±25℃)の範囲内にある場合(すなわち、エンジンが十分に冷えた状態にある場合)であって、検知時期設定部104により設定された処理時間の間に限って、出力信号の時間変化率を特定する。本実施形態では、時間変化率として、図7に示すように、出力信号の電圧値が予め設定された所定の第1の閾値V1(例えば、1.2V)を超えてから予め設定された所定の第2の閾値V2(例えば、1.5V)を超えるまでの経過時間tにより、第1の閾値V1及び第2の閾値V2の差分(V2−V1)を除算したもの〔(V2−V1)/t〕が特定されるように構成されている。
【0057】
また、変化率特定部107により時間変化率を特定するに際は、オフセット補正部105により、感圧抵抗体31からの出力信号がオフセット補正される。尚、前記オフセット値の分だけ閾値V1,V2をずらしてもよい。
【0058】
状態判定部108は、所定量の荷重を印加した際の感圧抵抗体31からの出力信号に基づいて感圧抵抗体31の状態を判定するものであり、故障判定部109を備えている。
【0059】
故障判定部109は、所定量の荷重を印加した際の感圧抵抗体31からの出力信号に基づく情報と、予め設定された所定の故障判定閾値とを比較して、感圧抵抗体31の故障を判定するものである。本実施形態では、エンジンキーがオンとされてから予め設定された所定の時間xが経過するまでに、出力信号が第1の閾値V1や第2閾値V2を超えない場合に、故障判定部109は、感圧抵抗体31に故障が生じているものと判定する。
【0060】
増幅率設定部110は、温度測定部106で測定された感圧抵抗体31の温度に基づいて温度変化に対する補正率を設定し、また、変化率特定部107により特定された時間変化率に基づいて増幅率を設定する。
【0061】
前記補正率は、感圧抵抗体31からの出力信号に対して乗算されることで、温度変化による感圧抵抗体31の出力信号の変動を補正するものである。補正率は、予め取得され所定の記憶装置123に記憶された感圧抵抗体31の温度と補正率とのテーブルに基づいて設定される。補正率の分だけ感圧抵抗体31からの出力信号が補正されることで、感圧抵抗体31に印加された荷重のみに基づく出力信号が得られる。
【0062】
前記増幅率は、感圧抵抗体31から出力される信号に乗算されることで、感圧抵抗体31の劣化等による出力信号の低下を補完するものである。具体的には、正常な感圧抵抗体31において、前記所定量の荷重を加えた際に出力される信号の時間変化率(基準変化率)が予め記憶装置123に記憶されており、前記変化率特定部107により特定された時間変化率に対する前記基準変化率の割合が増幅率として設定される。例えば、所定量の荷重を加えた際に出力される信号の基準変化率がΔA(例えば、1.0)であるのに対して、変化率特定部107により特定された時間変化率がΔB(例えば、0.8)であった場合、増幅率はΔA/ΔB(例えば、1.0/0.8=1.25)に設定される。尚、増幅率は、エンジンキーが再度オンとされるまでの間、更新されることなく保持される。
【0063】
信号増幅部111は、燃焼室内の圧力を検知する際に、補正率及び増幅率に基づいて感圧抵抗体31からの出力信号を増幅するものである。尚、変化率特定部107により出力信号の時間変化率を特定する際には、信号増幅部111による出力信号の増幅は行われず、燃焼室内の圧力を検知する際に限って出力信号の増幅が行われる。
【0064】
信号処理部112は、変化率特定部107による時間変化率の特定処理を行う時期に、所定の電圧(例えば、0V)を出力し、時間変化率の特定処理を行う時期以外の時期(つまり、燃焼室内の圧力を検知する時期)に、信号増幅部111により増幅された出力信号を出力する。すなわち、信号処理部112は、燃焼室内の圧力による出力信号を選択して出力し、この出力に基づいて所定の処理装置(図示せず)により燃焼室内の圧力が検知される。
【0065】
次いで、上述した圧力検知装置101の動作について、フローチャートを参照しつつ説明する。
【0066】
図8に示すように、まず、S1において、エンジンキーがオンであるか否かが判定される。ここで、エンジンキーがオフである場合には(S1;No)、S2において、初回フラグが0に設定される。尚、「初回フラグ」は、エンジンキーがオンの場合に繰り返し実行される初期化設定処理(後述するS4)の実行を、エンジンキーがオフからオンとされた時にのみ実行させるため、その判定条件に用いられるフラグである。初回フラグは初期状態では0とされている。
【0067】
エンジンキーがオンとされると(S1;Yes)、初期化設定処理を行うか否かを判定すべく、初回フラグがチェックされる(S3)。初回フラグが非成立(0)である場合には(S3;No)、初期化設定処理(S4)が行われる。初期化設定処理では、図10に示すように、増幅率設定フラグが0にセットされるとともに(S41)、増幅率が初期値(例えば、1.0)に設定される(S42)。尚、「増幅率設定フラグ」は、増幅率設定処理(後述するS10)の処理を行うか否かの判断に用いられるフラグである。
【0068】
また、初期化設定処理(S4)に続いて、次回以降のS3ではスキップしてS6に進むことができるように、S5で初回フラグが1にセットされる。
【0069】
次いで、S6において、キーオンから予め設定された所定の時間x秒以内か否か(変化率特定部107における処理を行う時期にあるか否か)が判定される。つまり、S6において、増幅率を設定する処理(増幅率設定モード)、又は、燃焼圧を検知する処理(燃焼圧検知モード)のいずれかに分岐する。
【0070】
キーオンからx秒以内である場合には(S6;Yes)、増幅率設定モードに移行し、増幅率設定フラグがチェックされ、エンジンキーがオンとされてから既に増幅率が設定されているかが判定される(S7)。増幅率設定フラグが非成立(0)である場合には(S7;No)、感圧抵抗体31の温度TEが、予め設定された所定の基準温度を含む予め設定された所定の許容温度の範囲であるか否か(本実施形態では、温度TEが閾値温度TE1と閾値温度TE2の間にあるか否か)が判定される(S8,9)。温度TEが、閾値温度TE1と閾値温度TE2との間にある場合には(S8;Yes、かつ、S9;Yes)、S10に移行し、増幅率設定処理が行われる。一方で、増幅率設定フラグが成立していたり(S7;Yes)、温度TEが閾値温度TE1,TE2の間になかったり(S8;No、又は、S9;No)する場合には、S1に戻ることとなる。
【0071】
増幅率設定処理(S10)においては、図9に示すように、加圧機構が作動され(本実施形態では、セラミックヒータ51へ給電され発熱される)、感圧抵抗体31に対して所定量の荷重が印加される(S20)。このとき、感圧抵抗体31に印加される荷重は既知(予め設定している)である。そして、この荷重に対応して感圧抵抗体31から出力される信号(レベル)を一定のものとするために、所定量の荷重を印加した際の感圧抵抗体31からの出力信号に対して、オフセット補正部105により補正がなされる(S21)。これにより、出力信号は、前記基準電圧を基準とした信号にオフセットされる。
【0072】
オフセット補正の後、変化率特定部107により、出力信号の時間変化率が特定される。すなわち、まず、S22において、出力信号の電圧値Vが、第1の閾値V1よりも大きいか否かが判定される。そして、出力信号の電圧値Vが、第1の閾値V1を超えると(S22;Yes)、出力信号の電圧値Vが、第1の閾値V1を超えてから第2の閾値V2を超えるまでの経過時間tを測定すべく、経過時間tの計測が開始される(S23)。
【0073】
次いで、S24において、出力信号の電圧値Vが、第2の閾値V2よりも大きいか否かが判定される。そして、出力信号の電圧値Vが、第2の閾値V2を超えたときに(S24;Yes)、経過時間tが取得される(S25)。
【0074】
尚、出力信号の電圧値Vが、キーオンからx秒以内に、第1の閾値V1や第2の閾値V2を超えない場合には(S22;No→S26;Yes、又は、S24;No→S27;Yes)、感圧抵抗体31に故障が発生したものを判定される(S28)。また、経過時間tの計測が停止されるとともに、経過時間tが初期値(0秒)にリセットされる(S29)。
【0075】
S25において経過時間tを取得した後、当該経過時間tと、前記閾値V1,V2とに基づいて、出力信号の時間変化率〔(V2−V1)/t〕が特定される(S30)。次いで、特定された時間変化率と、正常な感圧抵抗体31に対して所定量の荷重を加えた際に出力される信号の時間変化率(基準変化率)とに基づいて、増幅率が設定される(S31)。また、エンジンキーが再度オンとされるまでの間に、増幅率が再度設定されてしまうことを防止すべく、増幅率設定フラグが1にセットされる(S32)。増幅率設定フラグが1にセットされることで、S7で増幅率設定処理(S10)がスキップされることとなる。
【0076】
図8に戻り、S6において、キーオンからx秒が経過している場合には(S6;No)、圧力検知モードに移行し、圧力検知処理(S11)が行われる。
【0077】
圧力検知処理においては、図11に示すように、温度測定部106により測定された感圧抵抗体31の温度に基づいて、補正率が設定される(S51)。また、感圧抵抗体31からの出力信号がオフセット補正される(S52)。
【0078】
次いで、得られた補正率と増幅率とに基づいて、感圧抵抗体31からの出力信号が増幅される(S53)とともに、信号処理部112から増幅された信号に出力される。そして、この増幅された出力信号に基づいて、前記所定の処理装置(図示せず)により燃焼室内の圧力が検知される(S54)。
【0079】
以上詳述したように、本実施形態によれば、エンジンENの停止時(つまり、燃焼室内の圧力変動がないとき)に、セラミックヒータ51から所定量の荷重を感圧抵抗体31に印加し、その際に感圧抵抗体31から出力される信号に基づいて、感圧抵抗体31の状態が判定されるようになっている。従って、エンジンENの動作状態による出力信号の変動といった事態が生じることはなく、感圧抵抗体31の状態を正確に反映した出力信号を得ることができる。その結果、感圧抵抗体31の故障や劣化を極めて正確に判定することができる。
【0080】
また、セラミックヒータ51は、感圧抵抗体31に対して所定量の荷重を印加する機能と、燃焼圧を感圧抵抗体31に伝達する機能との双方を備えており、さらに、燃焼室内を加熱する機能をも有している。つまり、本実施形態においては、1つのセラミックヒータ51により、加圧機構、伝達部、及び、ヒータ機能のそれぞれが実現されている。従って、部品点数の削減を図ることができ、ひいては製造コストの抑制や装置の小型化を図ることができる。
【0081】
加えて、自身が発熱するセラミックヒータ51を加圧機構として用いることで、加圧機構は十分な耐熱性を有することとなる。そのため、そのため、感圧抵抗体31の異常判定を長期間に亘って精度よく行うことができる。
【0082】
さらに、合成バネ定数k1、及び、支持部11のバネ定数k2について、0.025≦k1/k2≦3.0を満たすように構成されている。従って、燃焼室内の圧力とセラミックヒータ51(加圧機構)からの圧力とを十分に感圧抵抗体31に加えることができる。その結果、燃焼室内の圧力を精度よく検知することができるとともに、感圧抵抗体31の状態をより確実に精度よく判定することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、変化率特定部107により所定量の荷重を印加した際の出力信号の時間変化率を特定することで、感圧抵抗体31の劣化による出力信号の減少分を特定することができ、時間変化率に基づいて設定された増幅率の分だけ、燃焼室内の圧力を検知する際に感圧抵抗体31から出力される信号が増幅される。従って、感圧抵抗体31の劣化による出力信号の減少分を補完することができ、感圧抵抗体31が劣化した場合であっても、燃焼室内の圧力を非常に精度よく検知することができる
加えて、感圧抵抗体31の温度が所定の許容温度の範囲内にある場合(つまり、感圧抵抗体31が極端に高温又は低温ではない場合)に、増幅率が設定されるようになっている。従って、より正確な増幅率を設定することができ、ひいては燃焼室内の圧力を一層精度よく検知することができる。
【0084】
次いで、上記実施形態による作用効果を確認すべく、前記合成バネ定数k1、及び、支持部のバネ定数k2を変更することで、両バネ定数の比(k1/k2)を種々変更した圧力検知装置のサンプルを複数作製し、各サンプルについて燃焼室内の圧力を所定値(20MPa)とした場合における感圧抵抗体の感度(燃焼圧感度)と、セラミックヒータから所定量の荷重(60N)を加えた際の感圧抵抗体の感度(加圧機構感度)とを測定した。図12に、両バネ定数の比(k1/k2)に対する、燃焼圧感度及び加圧機構感度を表すグラフを示す。尚、図12においては、燃焼圧感度を実線で示し、加圧機構感度を点線で示す。また、感度とあるのは、感圧抵抗体に圧力を加えた際の感圧抵抗体の抵抗値の変化率をいう。
【0085】
図12に示すように、k1/k2を0.025以上3.0以下とすることで、燃焼圧感度及び加圧機構感度が0.1%以上となり、燃焼圧による出力信号の変化、及び、加圧機構から荷重を加えた際の出力信号の変化の双方を十分に精度よく検知できることが確認された。
【0086】
以上の結果より、燃焼室内の圧力を精度よく検知可能としつつ、圧力検知部の状態の判定精度をより確実に向上させるためには、0.025≦k1/k2≦3.0を満たすように構成することが好ましいといえる。
【0087】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0088】
(a)上記実施形態における圧力検知装置101は、感圧抵抗体31からの出力信号の劣化に対応すべく、信号増幅部111等を備えているが、図13に示すように、出力信号の増幅機能を設けることなく、圧力検知装置201を構成することとしてもよい。すなわち、感圧抵抗体31からの出力信号と予め設定された所定の故障判定閾値とを比較することで感圧抵抗体31の故障を検知する故障判定部203を有する状態判定部202と、所定量の荷重を感圧抵抗体31に加えたときに限って故障判定部203による処理を実行可能とする検知時期設定部204とを具備するように圧力検知装置201を構成することとしてもよい。
【0089】
(b)上記実施形態において、検知時期設定部104は、ECU122の通電信号に基づいて、変化率特定部107による処理の開始時期を設定しているが、セラミックヒータ51へと印加される電圧の電位に基づいて、変化率特定部107による処理の開始時期を設定することとしてもよい。この場合には、例えば、図14に示すように、抵抗212,213、RS−フリップフロップ(RS−FF)回路214、タイマ回路215、及び、クロック回路216等を備え、RS−FF回路214からの出力が変化率特定部107へと出力される回路を、検知時期設定部211として用いることができる。また、グロープラグ1へと流れる電流によって発生する電磁波に基づいて、変化率特定部107による処理の開始時期を設定することとしてもよい。この場合には、図15に示すように、グロープラグ1と電源装置121とを電気的に接続する導電線222の電界変化を検知可能なコイル223や抵抗224、RS−FF回路225等を有する回路を、検知時期設定部221として用いることができる。
【0090】
(c)上記実施形態において、感圧抵抗体31の出力信号の時間変化率は、出力信号の電圧値Vが、第1の閾値V1を超えてから第2の閾値V2を超えるまでの経過時間tにより、両閾値V1,V2の差分(V2−V1)を除算することで特定されているが、時間変化率の特定手法は、これに限定されるものではない。従って、例えば、図16に示すように、出力信号が予め設定された所定の閾値V3を超えたときから予め設定された所定の待機時間T1が経過するまでの出力信号の変化量ΔVを、待機時間T1で除算することにより、時間変化率を特定することとしてもよい。また、変化率特定部をデジタル回路により構成する場合には、図17に示すように、予め設定された所定時間T2毎における出力信号の変化量を計測し、当該変化量に基づいて出力信号の時間変化率を特定することとしてもよい。さらに、変化率特定部をアナログ回路により構成する場合には、図18に示すような微分回路231を変化率特定部として用いることとしてもよい。
【0091】
(d)上記実施形態において、変化率特定部107は、温度測定部106により測定された感圧抵抗体31の温度が、所定の基準温度から予め設定された所定の許容温度の範囲内にある場合に、出力信号の時間変化率を特定するように構成されている。これに対して、感圧抵抗体31の温度に基づいて、所定量の荷重を印加した際の感圧抵抗体31からの出力信号を調節(補正)する(すなわち、前記補正率に基づいて感圧抵抗体31からの出力信号を補正する)ことで、感圧抵抗体31の温度に関わらず、出力信号の時間変化率を特定することとしてもよい。この場合には、増幅率の設定タイミングが特段限定されることなく、より正確な増幅率を随時設定することができる。その結果、燃焼室内の圧力をより一層精度よく検知することができる。
【0092】
(e)上記実施形態では、セラミックヒータ51が、燃焼室内の圧力を感圧抵抗体31に伝達する伝達部としての機能と、所定量の荷重を感圧抵抗体31に加える加圧機構としての機能とを備えているが、例えば、燃焼室内の圧力を伝達する伝達部5と感圧抵抗体31に荷重を印加する加圧機構とを別々に設けることとしてもよい。また、加圧機構は、任意の荷重を感圧抵抗体31に対して印加可能なものであればよい。従って、加圧機構を発熱により膨張するもの(セラミックヒータ51)により構成することなく、例えば、通電により動作するソレノイド等の機械的手段により構成することとしてもよい。また、セラミックヒータ51に代えて、通電により発熱する金属製の発熱コイルを備えたヒータを設けることとしてもよい。さらに、上記実施形態における圧力検知装置101は、燃焼室内を加熱可能に構成されているが、圧力検知装置が、燃焼室内を加熱するヒータを具備しないものであってもよい。
【0093】
(f)上記実施形態では、制御処理部102が、グロープラグ1に対して所定の信号線を介して電気的に接続されており、制御処理部102は、グロープラグ1の外部に設けられている。これに対して、制御処理部102の全部又は一部をグロープラグ1(ハウジング2)の内部に配置してもよい。従って、例えば、制御処理部102のうち、加圧機構制御部103を除く回路をグロープラグ1の内部に設けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…グロープラグ(燃焼圧センサ付きグロープラグ)、2…ハウジング(筐体)、5…伝達部、11…支持部、31…感圧抵抗体(圧力検知部)、51…セラミックヒータ(加圧機構、ヒータ)、101…圧力検知装置、103…加圧機構制御部、106…温度測定部、107…変化率特定部、108…状態判定部、109…故障判定部、110…増幅率設定部、111…信号増幅部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に固定され、自身に印加された荷重に基づいて信号を出力する圧力検知部と、
自身の一端側に加えられた内燃機関の燃焼室内の圧力により、自身の他端部から前記圧力検知部に荷重を印加する伝達部と、
前記筐体に固定され、前記伝達部を前記筐体に対して相対変位可能な状態で支持する支持部と、
前記筐体に対する前記伝達部の相対変位方向と同一の方向に沿って、任意の荷重を前記圧力検知部に対して印加可能な加圧機構と
を備えた圧力検知装置であって、
前記内燃機関の停止時に前記加圧機構を制御することで、前記加圧機構から前記圧力検知部に対して所定量の荷重を印加する加圧機構制御部と、
前記所定量の荷重を印加した際の前記圧力検知部からの出力信号に基づいて、前記圧力検知部の状態を判定する状態判定部と
を有することを特徴とする圧力検知装置。
【請求項2】
前記加圧機構と前記伝達部とが一体とされることを特徴とする請求項1に記載の圧力検知装置。
【請求項3】
前記加圧機構は、通電により発熱し、前記燃焼室内を加熱するヒータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力検知装置。
【請求項4】
前記伝達部のうちその他端部から前記支持部に支持された部位までの前記筐体に対する前記伝達部の相対変位方向に沿ったバネ定数をka(N/mm)とし、
前記筐体のうち前記支持部が固定された部位から前記圧力検知部が固定された部位までの前記相対変位方向に沿ったバネ定数をkb(N/mm)とし、
両バネ定数ka、kbの合成バネ定数であるka・kb/(ka+kb)をk1(N/mm)とし、
前記支持部の前記相対変位方向に沿ったバネ定数をk2(N/mm)としたとき、
0.025≦k1/k2≦3.0
を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧力検知装置。
【請求項5】
前記状態判定部は、
前記所定量の荷重を印加した際の前記圧力検知部からの出力信号と、予め設定された所定の故障判定閾値とを比較して、前記圧力検知部の故障を判定する故障判定部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧力検知装置。
【請求項6】
前記燃焼室内の圧力に基づき前記圧力検知部から出力される信号を増幅する信号増幅部と、
前記所定量の荷重を印加した際に前記圧力検知部からの出力される信号の時間変化率を特定する変化率特定部と、
前記変化率特定部により特定された時間変化率に基づいて、前記信号増幅部による出力信号の増幅率を設定する増幅率設定部と
を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧力検知装置。
【請求項7】
前記圧力検知部の温度を測定可能な温度測定部を備え、
前記温度測定部により測定された前記圧力検知部の温度が、前記内燃機関が冷却状態にあるときの前記圧力検知部の温度に対応する予め設定された所定の基準温度を含む、予め設定された所定の許容温度の範囲内にある場合に、前記増幅率設定部により前記増幅率が設定されることを特徴とする請求項6に記載の圧力検知装置。
【請求項8】
前記圧力検知部の温度を測定可能な温度測定部を備え、
前記温度測定部により測定された前記圧力検知部の温度に基づいて、前記所定量の荷重を印加した際の前記圧力検知部からの出力信号が調節されることを特徴とする請求項6に記載の圧力検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−68539(P2013−68539A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207734(P2011−207734)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】