説明

圧力測定用材料

【課題】低圧(特に3MPa以下の圧力)領域で良好に発色させることができ、濃度読み取りが良好に行なえる圧力測定用材料を提供する。更には、低圧(特に3MPa以下の圧力)領域で広い発色面積が得られ、スキャン等で発色濃度を読み取る際の繰り返し読み取り精度を高める。
【解決手段】プラスチック製の基材を備え、電子供与性無色染料前駆体及び電子受容性化合物の発色反応を利用した圧力測定用材料であって、前記電子供与性無色染料前駆体をウレタン結合を含むマイクロカプセルに内包し、前記電子受容性化合物の少なくとも1種を置換基を有するサリチル酸金属塩とし、前記マイクロカプセルが、δ/D=1.0×10−3〜2.0×10−2〔δ:マクロカプセルの数平均壁厚(μm)、D:マイクロカプセルの体積標準のメジアン径(μm)〕の関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面圧などの圧力又は圧力分布を測定する圧力測定用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力測定用の材料は、液晶ガラスの貼合せ工程、プリント基板へのハンダ印刷、ローラ間の圧力調整などの用途に使われている。
このような圧力測定用の材料には、例えば、富士フイルム(株)から提供されているプレスケール(商品名)に代表される圧力測定フィルムがある。圧力測定フィルムは、測定部位に合わせてフィルムを任意の大きさに裁断して使用できる特徴を有するほか、筆圧による高い線圧によって発色反応を起こさせる、いわゆる感圧複写紙とは異なり、面圧を測定することができる特徴を有している。
【0003】
この圧力測定フィルムの例として、電子供与性無色染料前駆体と電子受容性化合物との発色反応を利用した圧力測定用シートが開示されており(例えば、特許文献1参照)、0.1MPa〜20MPa程度の圧力範囲で測定することができるとされている。また、圧力測定フィルムの基材には、一般に、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックスフィルムが用いられている。
【0004】
近年、製品の高機能化、高精細化により、微小な圧力の分布を測定する必要性が増加している。例えば、液晶やプラズマディスプレイなどの加圧方式利用のパネルの貼り合わせでは、大面積でかつ3MPa以下の圧力領域で実施することが多く、3MPa以下の圧力分布測定が重要になってきている。
【0005】
一方、顕色剤として置換サリチル酸金属塩を用い、染料をポリウレア樹脂/ポリウレタン樹脂壁膜カプセルに内包した感圧複写シートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、アミド系化合物を用いた感圧記録紙は従来から知られており(例えば、特許文献3〜5参照)、アミド系化合物として、アクリルアミド共重合体、スルホンアミド、(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いたものが提案されている。
【特許文献1】特公昭57−24852号公報
【特許文献2】特開平7−96662号公報
【特許文献3】特許第2786510号
【特許文献4】特許第3019163号
【特許文献5】特許第3074891号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来の感圧複写シートは、そのカプセルの径や壁厚では使用する電動タイプライターのインパクト強度を強圧とした場合でしか発色し得ないものであり、一定面積の圧力(面圧)を計る用途には適さない。また、上記のアミド系化合物を用いた感圧記録紙は、筆圧による高い線圧によって局部的に強い着色(発色反応)を発現させるものであり、例えば3MPaに満たないような微少な局部圧や弱い面圧を与えて圧力状態を捉える必要のある分野では、圧力状態が計れる程度の着色(発色)は得られない。
そのため、上記のように僅かな圧力変化が製品の品質バラツキに影響を与えるような分野では、微弱な圧力変化を捉えることができず、あるいは着色が得られても、それをスキャン等により読み込めなかったり、濃度データとして読み込む際の読み取り精度が悪くなり、細かい濃度分析や制御ができない等の課題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、下記目的を達成することを課題とする。
本発明の第1の目的は、低圧(特に3MPa以下の圧力)領域で良好に発色させることができ、濃度読み取りが良好に行なえる圧力測定用材料を提供することにある。
本発明の第2の目的は、低圧(特に3MPa以下の圧力)領域で発色させた際に、広い発色面積が得られ、スキャン等で発色濃度を読み取る際の繰り返し読み取り精度を高めた圧力測定用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための鋭意検討の結果、プラスチック製の基材上に設けられた電子供与性無色染料前駆体と電子受容性化合物との発色反応を利用した発色記録系において、特定のサリチル酸金属塩を顕色剤とし、発色剤を内包するウレタン結合を含むマイクロカプセルの膜厚と粒径との比を特定の範囲に調整することが、低圧領域で圧力を与えて発色させたときの着色度を高めるのに有効であるとの知見、さらにアミド化合物や(メタ)アクリル酸エステル化合物は、顕色剤と共に用いると発色部の面積が増し、濃度スキャン等する際の濃度読取り精度の向上に有効であるとの知見が得られ、本発明はかかる知見に基づいて達成されたものである。
【0009】
上記の課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> プラスチック製の基材と電子供与性無色染料前駆体を含む発色剤層と電子受容性化合物を含む顕色剤層とを有し、前記電子供与性無色染料前駆体及び前記電子受容性化合物の発色反応を利用した圧力測定用材料であって、前記電子供与性無色染料前駆体がウレタン結合を含むマイクロカプセルに内包されており、前記電子受容性化合物の少なくとも1種が置換基を有するサリチル酸金属塩であり、前記マイクロカプセルが、δ/D=1.0×10−3〜2.0×10−2〔δ:マクロカプセルの数平均壁厚(μm)、D:マイクロカプセルの体積標準のメジアン径(μm)〕の関係を満たす圧力測定用材料である。
【0010】
<2> 3MPa以下の圧力で発色することを特徴とする前記<1>に記載の圧力測定用材料である。
【0011】
<3> 前記マイクロカプセルの体積標準のメジアン径が10μm以上であることを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載の圧力測定用材料である。
【0012】
<4> 前記顕色剤層は、更に、アミド化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の圧力測定用材料である。
【0013】
<5> 前記アミド化合物が、(メタ)アクリルアミド系重合体又はスルホンアミド化合物であり、前記(メタ)アクリル酸エステル化合物が(メタ)アクリル酸エステル系重合体であることを特徴とする前記<4>に記載の圧力測定用材料である。
【0014】
<6> 前記顕色剤層は、置換基を有するサリチル酸金属塩と、アミド化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物より選ばれる少なくとも1種とを含有する水分散液を前記基材上に塗布することにより形成されたことを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の圧力測定用材料である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低圧(特に3MPa以下の圧力)領域で良好に発色させることができ、濃度読み取りが良好に行なえる圧力測定用材料を提供することができる。
さらに、本発明によれば、低圧(特に3MPa以下の圧力)領域で発色させた際に、広い発色面積が得られ、スキャン等で発色濃度を読み取る際の繰り返し読み取り精度を高めた圧力測定用材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の圧力測定用材料について、詳細に説明する。
本発明の圧力測定用材料は、プラスチック製の基材と、電子供与性無色染料前駆体を含む発色剤層と、電子受容性化合物を含む顕色剤層とを設けると共に、ウレタン結合を含むマイクロカプセルに電子供与性無色染料前駆体を内包し、前記電子受容性化合物の少なくとも1種を置換基を有するサリチル酸金属塩とし、電子供与性無色染料前駆体を内包するマイクロカプセルが、δ/D=1.0×10−3〜2.0×10−2〔δ:マクロカプセルの数平均壁厚(μm)、D:マイクロカプセルの体積標準のメジアン径(μm)〕の関係を満たすように構成したものである。
本発明の圧力測定用材料は、加圧時の、発色剤層中に含まれる電子供与性無色染料前駆体と顕色剤層中に含まれる電子受容性化合物との発色反応により着色を得ることができる。
【0017】
ここで、圧力測定用材料の構成について説明する。
本発明の圧力測定用材料は、電子供与性無色染料前駆体を(好ましくは溶媒と共に)内包したウレタン結合を含むマイクロカプセルを含む発色剤層と、前記電子供与性無色染料前駆体と反応して発色させる電子受容性化合物(以下、「顕色剤」ともいう。)を含む顕色剤層と、をプラスチック製の単一の基材あるいは別個の基材に設ける(好ましくは塗工する)ことにより構成することができる。
【0018】
本発明の圧力測定用材料が、マイクロカプセルと電子受容性化合物とが単一の基材に塗工等して設けられた、いわゆるモノシートタイプの場合、シートやフィルム等の基材と、基材上に該基材側から順に設けられた顕色剤含有の顕色剤層及びマイクロカプセル含有の発色剤層とを有してなり、これを単独で圧力あるいは圧力分布を測定したい部位に挟んで加圧する。
また、本発明の圧力測定用材料が、マイクロカプセルと電子受容性化合物とが別個の基材に塗工等して設けられた、いわゆる2シートタイプの場合、シートやフィルム等の基材上に顕色剤含有の顕色剤層を有する材料Aと、シートやフィルム等の基材上にマイクロカプセル含有の発色剤層を有する材料Bとを有して構成されており、材料Bのマイクロカプセルが存在する面(発色剤層表面)と、材料Aの電子受容性化合物が存在する面(顕色剤層表面)とが互いに向き合うように両材料を重ね、重ねた状態で圧力あるいは圧力分布を測定したい部位に挟んで加圧する。
【0019】
加圧は、任意の方法により点、線、又は面で圧力(点圧、線圧、又は面圧等)を与えることにより行なうことができる。本発明では、特に3MPa以下の低圧領域において、微小な圧力差を識別するための発色部の濃度差が小さく、差圧が捉えにくい面圧が与えられる場合に有効である。
【0020】
上記のように加圧されることで、マイクロカプセルが破壊されて電子供与性無色染料前駆体を含む内包物が放出され、電子供与性無色染料前駆体と電子受容性化合物が反応することによって着色が見られるものである。このとき、加圧する圧力に対応して電子供与性無色染料前駆体を含む内包物がより多く放出されるようになり、電子受容性化合物との反応量が増えるため、反応量に伴なって濃い発色(着色)が得られる。
本発明においては、プラスチック製の基材上に設けられた電子供与性無色染料前駆体と電子受容性化合物との発色反応系において、特定のサリチル酸金属塩を顕色剤とし、発色剤を内包するウレタン結合を含むマイクロカプセルの膜厚と粒径との比を以下に示す特定範囲に調整することで、低圧領域(好ましくは3MPa以下の圧力領域)で加圧された場合に良好な発色(着色)が得られるものである。さらに、後述のアミド化合物及び/又は(メタ)アクリル酸エステル化合物を併用したときには、広い発色(着色)面積が得られ、スキャン等で発色濃度を読み取る際に繰り返し読み取り精度をより高めることができる。本発明の圧力測定材料を適用するのにより好適な圧力領域は、2MPa以下であり、更には1MPa以下である。
【0021】
上記のうち、本発明の圧力測定用材料としては、その保存性や取扱い性の観点から、電子供与性無色染料前駆体を内包するマイクロカプセルと電子受容性化合物とが別個の基材に塗工等して設けられた2シートタイプに構成されることがより好ましい。
【0022】
(基材)
本発明の圧力測定用材料は、プラスチック製の基材を用いて構成される。プラスチック製の基材としては、シート状、フィルム状、板状等のいずれであってもよい。圧力測定用材料がモノシートタイプ及び2シートタイプのいずれの形態であっても同様である。
【0023】
プラスチック製の基材の例としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリスチレン等のフィルムもしくはシートや、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等を二軸延伸してミクロボイドを多数形成したもの(ユポ等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどの合成繊維からなるもの、並びにこれらを紙の一部、一面、両面に積層したもの、などを挙げることができる。紙の具体例としては、上質紙、中質紙、更紙、中性紙、酸性紙、再生紙、コート紙、マシンコート紙、アート紙、キャストコート紙、微塗工紙、トレーシングペーパー、再生紙等を挙げることができる。
但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明の圧力測定材料を構成する発色剤層は、電子供与性無色染料前駆体を内包するマイクロカプセルを少なくとも含んでなり、好ましくは溶媒を含んでなり、必要に応じて他の成分を用いて構成することができる。
【0025】
(マイクロカプセル)
本発明における発色剤層は、ウレタン結合を含むマイクロカプセルを含有し、このマイクロカプセルに電子供与性無色染料前駆体(及び好ましくは溶媒)を内包する。本発明においては、発色剤である電子供与性無色染料前駆体を内包するためのマイクロカプセルとして、ウレタン結合を含むカプセルを選択するので、低圧領域(好ましくは3MPa以下の圧力領域)での加圧でも発色しやすい発色系を形成することができる。
【0026】
ウレタン結合を含むマイクロカプセルは、ウレタン・ウレア樹脂(ポリウレタン・ウレア)を壁材として形成されたものであり、低圧領域(好ましくは3MPa以下の圧力領域)で良好な発色が得られる。
【0027】
電子供与性無色染料前駆体を内包するマイクロカプセルは、下記式1に示す関係を満たす。この関係式を満たすマイクロカプセルに構成することで、低圧領域(好ましくは3MPa以下の圧力領域)での加圧でも発色しやすい発色系を形成することができる。下記式1において、δはマクロカプセルの数平均壁厚(μm)を表し、Dはマイクロカプセルの体積標準のメジアン径(μm)を表す。
1.0×10−3 ≦ δ/D ≦ 2.0×10−2 ・・・式1
【0028】
ここで、壁厚とは、マイクロカプセルのカプセル粒を形成する樹脂膜(いわゆるカプセル壁)の厚みをいい、数平均壁厚(μm)とは、5個のマイクロカプセルの個々のカプセル壁の厚みを走査型電子顕微鏡により求めて平均した平均値をいう。
また、体積標準のメジアン径は、マイクロカプセル全体を体積累計が50%となる粒子径を閾値に2つに分けたときに、大径側と小径側での粒子の体積の合計が等量となる径D50である。この体積標準のメジアン径は、マイクロカプセル液を支持体に塗布し、その表面を光学顕微鏡により150倍で撮影して、2cm×2cmの範囲にある全てのマイクロカプセルの大きさを計測して算出される値である。
【0029】
上記のδ/D値は、1.0×10−3未満であると、カプセルサイズは大きいがカプセル壁が薄すぎて経時でカプセルの中身のモレが発生してしまい、逆に2.0×10−2を超えると、カプセルサイズが小さくあるいはカプセル壁が厚すぎて、低圧領域(好ましくは3MPa以下の圧力領域)では良好な発色が得られない。
【0030】
上記のδ/D値の範囲のうち、低圧領域(好ましくは3MPa以下の圧力領域)で良好な発色(着色)を得る点で、δ/D値は、2.0×10−3〜1.5×10−2が好ましく、3.0×10−3〜1.3×10−2がより好ましい。
【0031】
電子供与性無色染料前駆体(及び好ましくは溶媒)を内包するマイクロカプセルは、それ自体公知の任意の方法、例えば、界面重合法、内部重合法、相分離法、外部重合法、コアセルベーション法等の方法により製造することができる。
【0032】
電子供与性無色染料前駆体を内包する、ポリウレタン・ウレア壁のマイクロカプセルの分散液の調製は、感圧複写紙用途において公知の方法を使用することができる。例えば、電子供与性無色染料前駆体と多価イソシアネートとを溶媒に溶解した溶液(油相)を、水溶性高分子(ポリオール、ポリアミンなどのカプセル壁形成用物質)を含有する親水性溶液(例えば水など;水相)に乳化分散させ、得られた乳化分散液中の油滴をポリウレタン・ウレアで被覆してマイクロカプセル化する方法が挙げられる。このとき、加温することによって油滴界面で高分子形成反応が進み、マイクロカプセル壁を形成できる。
【0033】
マイクロカプセル化する工程途中には、多価ヒドロキシ化合物と多価アミンなどの反応調整剤を添加してもよい。多価ヒドロキシ化合物の具体例としては、脂肪族又は芳香族の多価アルコール、ヒドロキシポリエステル、ヒドロキシポリアルキレンエーテル、多価アミンのアルキレンオキサイド付加物等を挙げることができる。中でも、脂肪族又は芳香族の多価アルコール、多価アミンのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、より好ましくは、多価アミンのアルキレンオキサイド付加物である。
【0034】
多価アミンとしては、分子中に2個以上の−NH基または−NH基を有するものであれば、いずれも使用可能である。具体的な化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族多価アミン;脂肪族多価アミンのエポキシ化合物付加物;ピペラジン等の脂環式多価アミン;3,9−ビス−アミノプロピル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)ウンデカンなどの複素環式ジアミンなどを挙げることができる。
【0035】
多価ヒドロキシ化合物や多価アミンの添加量は、使用する多価イソシアネートの種類及び量、さらには所望のカプセル膜硬度などにより適宜決定される。多価ヒドロキシ化合物や多価アミンを添加する場合、「多価ヒドロキシ化合物及び/又は多価アミンの総量:多価イソシアネートの量」の比(質量比)は、0.1:99.9〜30:70であることが好ましく、1:99〜25:75であることがより好ましい。また、多価ヒドロキシ化合物の添加量としては、多価イソシアネート:多価ヒドロキシ化合物が質量比で99.9:0.1〜70:30であることが好ましく、99:1〜75:25であることがより好ましく、98:2〜80:20であることがさらに好ましい。
【0036】
多価ヒドロキシ化合物や多価アミンの添加時期は、電子供与性無色染料前駆体を溶解する溶媒や補助溶媒中にあらかじめ添加しておいてもよいし、乳化分散前あるいは乳化分散後に添加してもよい。
【0037】
親水性溶液中には、乳化剤として、種々の両性高分子、イオン系高分子、非イオン系高分子、例えばゼラチン、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン硫酸塩、ポリオキシアルキルエーテルやその変性体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等を添加してもよい。
【0038】
前記多価イソシアネートとしては、感圧複写紙用途において公知のものを使用することができる。例えば、水添キシリレンジイソシアネート(一般に水添XDIと称される)のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート(一般にIPDIと称される)のイソシアヌレート体、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体にウレタン結合により脂肪族ジオール(例、アルキレンジオール)が結合した化合物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、水添キシリレンジイソシネートとトリメチロールプロパンとの付加体、イソホロンジイソシネートとトリメチロールプロパンとの付加体、キシリレンジイソシアネートのビュレット体及びトリス−(p−イソシアネートフェニル)チオホスファイトを挙げることができる。多価イソシアネートは、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
また、マイクロカプセルには、上記の電子供与性無色染料前駆体、溶媒、及び補助溶媒以外に、必要に応じて、添加剤を内包してもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、臭気抑制剤などを挙げることができる。
【0040】
マイクロカプセルに内包される溶媒と電子供与性無色染料前駆体との質量比(溶媒:前駆体)としては、発色性の点で、98:2〜30:70の範囲が好ましく、97:3〜40:60の範囲がより好ましく、95:5〜50:50の範囲が更に好ましい。
【0041】
マイクロカプセルの体積標準のメジアン径としては、低圧(好ましくは3MPa以下の圧力(好ましくは面圧))での発色濃度を高め、視認性、スキャニング時の読取り性を向上させる点で、10μm以上が好ましく、10〜40μmがより好ましく、13〜30μmが更に好ましく、16〜25μmが特に好ましい。
【0042】
マイクロカプセルのカプセル壁の壁厚については、カプセル壁材の種類やカプセル径など種々の条件にも依存するが、低圧(好ましくは3MPa以下)での加圧で破壊可能な範囲であれば、制限なく任意に選択することができる。中でも、3MPa以下の低圧で良好な発色性を得る観点から、好ましい壁厚は0.005〜2.0μmの範囲であり、より好ましくは、マイクロカプセルのメジアン径Aを10〜40μmとした場合において0.01〜1μmである。
【0043】
(電子供与性無色染料前駆体)
本発明の圧力測定用材料の発色剤層に含有されるマイクロカプセルは、電子供与性無色染料前駆体の少なくとも一種を内包する。
マイクロカプセルに内包される電子供与性無色染料前駆体は、感圧複写紙あるいは感熱記録紙の用途において公知のものを使用することができる。例えば、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物など各種の化合物を使用することができる。
これら化合物の詳細については、特開平1−20189号公報、特開平5−257272号公報、特開2004−195869号公報、特開2007−1064号公報などに記載されており、電子供与性無色染料前駆体は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
電子供与性無色染料前駆体は、低圧(好ましくは3MPa以下の圧力(好ましくは面圧))での発色性を高め、低圧で高い濃度を得る(圧力変化に対する濃度変化(濃度勾配)を高める)観点から、モル吸光係数(ε)の高いものが好ましい。電子供与性無色染料前駆体のモル吸光係数(ε)は、10000 mol−1・cm−1・L以上であることが好ましく、15000 mol−1・cm−1・L以上あることがより好ましく、更には25000mol−1・cm−1・L以上あることが好ましい。
εが前記範囲の電子供与性無色染料前駆体の好ましい例としては、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物等が挙げられる。
【0045】
モル吸光係数εが前記範囲の電子供与性無色染料前駆体を1種単独で用い、あるいはモル吸光係数εが前記範囲の電子供与性無色染料前駆体を含む2種以上を混合して用いる場合、電子供与性無色染料前駆体の合計量に占める、モル吸光係数(ε)が10000 mol−1・cm−1・L以上の電子供与性無色染料前駆体の割合は、低圧(好ましくは3MPa以下の圧力(好ましくは面圧))での発色性を高め、低圧で高い濃度を得る(圧力変化に対する濃度変化(濃度勾配)を高める)観点から、10〜100質量%の範囲が好ましく、20〜100質量%の範囲がより好ましく、更には30〜100質量%の範囲が好ましい。
2種以上の電子供与性無色染料前駆体を用いる場合、εがそれぞれ10000 mol−1・cm−1・L以上のものを2種以上併用するのが好ましい。
【0046】
モル吸光係数(ε)は、電子供与性無色染料前駆体を95%酢酸水溶液中に溶解したときの吸光度から算出することができる。具体的には、吸光度が1.0以下となるように濃度を調節した電子供与性無色染料前駆体の95%酢酸水溶液において、測定用セルの長さをAcm、電子供与性無色染料前駆体の濃度をB mol/L、吸光度をCとしたときに、下記式によって算出することができる。
モル吸光係数(ε)= C/(A×B)
【0047】
電子供与性無色染料前駆体の量(例えば塗布量)は、低圧(好ましくは3MPa以下)での発色性を高める観点から、乾燥後の質量で0.1〜5g/mであることが好ましく、0.1〜4g/mであることがより好ましく、0.2〜3g/mであることがさらに好ましい。
【0048】
(溶媒)
本発明におけるマイクロカプセルは、電子供与性無色染料前駆体と共に溶媒の少なくとも一種を内包することが好ましい。
マイクロカプセルに内包される溶媒としては、感圧複写紙用途において公知のものを使用することができる。例えば、ジイソプロピルナフタレン等のアルキルナフタレン類、1−フェニル−1−キシリルエタン等のジアリールアルカン類、イソプロピルビフェニル等のアルキルビフェニル類、その他トリアリールメタン類、アルキルベンゼン類、ベンジルナフタレン類、ジアリールアルキレン類、アリールインダン類等の芳香族炭化水素;フタル酸ジブチル、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素、大豆油、コーン油、綿実油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、ひまし油、魚油等の天然動植物油等、鉱物油等の天然物高沸点留分等が挙げられる。溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
また、必要に応じて、補助溶媒として、メチルエチルケトン等のケトン類や酢酸エチルなどのエステル類、イソプロピルアルコール等のアルコール類等、沸点が130℃以下の溶媒を添加することもできる。
【0050】
(発色剤層形成用の調製液の調製)
マイクロカプセルは、上記のように分散液として得ることができるが、このマイクロカプセルの分散液は、そのまま電子供与性無色染料前駆体を含有する発色剤層を形成するための調製液(特に塗布液)としてもよい。また、上記のように得られたマイクロカプセルの分散液に更に、澱粉又は澱粉誘導体の微粉末、セルロース繊維粉末等の緩衝剤、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子結着剤、酢酸ビニル系、アクリル系、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス等の疎水性高分子結着剤、蛍光増白剤、消泡剤、浸透剤、紫外線吸収剤、防腐剤を添加して調製液(特に塗布液)としてもよい。
このようにして得られた調製液(特に塗布液)を、基材の上に塗工等して付与し、乾燥させることにより、圧力測定用材料を構成する発色剤層を形成することができる。
【0051】
前記発色剤層形成用の調製液を塗布液として用いる場合、塗布液の塗工方法は、通常の塗工機を用いて塗布、乾燥させて行なえる。具体的な塗工機の例としては、エアーナイフコーター、ロッドコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコータ−、エクストルージョンコーター、ダイコーター、スライドビードコーター、ブレードコーター等を挙げることができる。
【0052】
本発明の圧力測定用材料が、電子供与性無色染料前駆体内包のマイクロカプセルと電子受容性化合物とがそれぞれ別個の基材に塗工等されて構成される2シートタイプの場合、例えば、上記塗布液を所望のシート状基材の上に、直接もしくは他の層を介して塗布し、乾燥させることにより、少なくとも発色剤層が形成されたシート材を得ることができる。また、電子供与性無色染料前駆体内包のマイクロカプセルと電子受容性化合物とが単一のシート状基材に塗工等されて構成されるモノシートタイプの場合、例えば、所望の基材上に形成された後述の顕色剤層の上に上記塗布液を重ねて塗布し、乾燥させることにより、圧力測定用材料が得られる。
【0053】
本発明の圧力測定用材料を構成する顕色剤層は、電子受容性化合物(顕色剤)を少なくとも含んでなり、好ましくは、アミド化合物及び/又は(メタ)アクリル酸エステル化合物を含んでなり、必要に応じて他の成分を用いて構成することができる。
【0054】
(電子受容性化合物)
本発明における顕色剤層は、電子受容性化合物(顕色剤)として、置換基を有するサリチル酸金属塩の少なくとも一種を含有する。置換基を有するサリチル酸金属塩を用いることで、より高い発色濃度と低圧領域での面圧読み取り精度の向上とを両立することができる。
【0055】
置換基を有するサリチル酸の前記置換基としては、例えば、炭素数1〜15のアルキル基(例:メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、(ターシャリー)ブチル基、(ターシャリー)アミル基、(ターシャリー)オクチル基、(イソ)ノニル基、(イソ)ドデシル基、(イソ)ペンタデシル基等)、炭素数5〜12のシクロアルキル基(例:シクロペンチル基、シクロヘキシシル基等)、炭素数7〜18のアラルキル基(例:ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等)、炭素数6〜18のアリール基(例:フェニル基、ナフチル基、ターシャリーオクチルフェニル基等)、炭素数1〜15のアルコキシ基(例:メトキシ基、エトキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)などが挙げられる。発色性の点では、アルキル基、アラルキル基が好ましい。
【0056】
また、サリチル酸金属塩としては、サリチル酸の亜鉛塩、ニッケル塩、アルミニウム塩、カルシウム塩などが挙げられ、分散安定化の点で、亜鉛塩が好ましい。
【0057】
前記置換基を有するサリチル酸金属塩の好ましい具体例としては、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−t−オクチルサリチル酸、3,5−ジ−イソ−ノニルサリチル酸、3,5−ジ−イソ−ドデシルサリチル酸、3−イソノニル−5−メトキシサリチル酸、3−イソ−ドデシルサリチル酸、5−イソ−ドデシルサリチル酸、5−シクロヘキシルサリチル酸、3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3,5−ビス(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−メチル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−5−メチルサリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−6−メチルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−6−エチルサリチル酸、3−フェニル−5−(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、カルボキシ変性テルペンフェノール樹脂、3,5−ビス(α−メチルベンジル)サリチル酸とベンジルクロリドとの反応生成物であるサリチル酸樹脂等の、亜鉛塩、ニッケル塩、アルミニウム塩、カルシウム塩等を挙げることができる。
【0058】
本発明の顕色剤層においては、置換基を有するサリチル酸金属塩と共に、他の顕色剤(電子受容性化合物)を併用してもよい。併用可能な顕色剤としては、無機化合物及び有機化合物のいずれも挙げることができる。前記無機化合物の具体例としては、酸性白土、活性白土、アタパルジャイト、ゼオライト、ベントナイト、カオリンのような粘土物質等が挙げられる。前記有機化合物としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、カルボキシル化テンペルフェノール樹脂の金属塩等が挙げられる。中でも、酸性白土、活性白土、カオリンがより好ましい。
【0059】
置換基を有するサリチル酸金属塩の顕色剤層中における量(塗布による場合は塗布量)は、乾燥後の質量で0.1〜30g/mが好ましく、より好ましくは0.5〜15g/mである。該サリチル酸金属塩の量は、0.1g/m以上であると低圧で高い発色濃度が得られ、30g/m以下であるとロール状の形態にした場合に粉落ちのない圧力測定用材料(例えば顕色剤シート)が得られる。
また、置換基を有するサリチル酸金属塩と共に他の顕色剤を併用する場合、他の顕色剤の量は、本発明の効果を損なわない範囲で選択できるが、好ましくは、低圧での発色濃度を高める点から、置換基を有するサリチル酸金属塩を含む顕色剤の全量に対して、1〜50質量%である。
【0060】
(アミド化合物・(メタ)アクリル酸エステル化合物)
本発明における顕色剤層は、アミド化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。アミド化合物及び/又は(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いることで、上記のように低圧(特に3MPa以下の圧力)で発色(着色)する発色系に構成した場合に、発色部分を適度に滲ませることができ、低圧(特に3MPa以下の圧力)での加圧でも広い発色面積が得られ、例えばスキャニング等して発色部を読み取る際の繰り返し読み取り精度を高めることができる。
【0061】
前記アミド化合物としては、例えば、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(例:アクリルアミドが96〜70モルパーセントと(メタ)アクリル酸、イタコン酸またはマレイン酸の炭素数4以下のアルキルまたはアルコキシアルキルエステルが4〜30モルパーセントとの共重合体等)等の(メタ)アクリルアミド系重合体、アルキル基およびアリール基から選ばれる基を少なくとも有するスルホンアミド化合物(例:トルエンスルホンアミド、N,N-ジブチルトルエンスルホンアミド、N,N-ジブチルベンゼンスルホンアミド、N,N-ジオクチルメタンスルホンアミド、N-ブチルベンゼンスルホンアミド、N-(トルエンスルホニル)モルホリン等)等のスルホンアミド化合物が挙げられる。低圧(特に3MPa以下の圧力)での加圧による場合でも広い発色面積が得られ、例えばスキャニング等して発色の濃度を読み取る際の繰り返し読み取り精度を高める点で、(メタ)アクリルアミド系重合体がより好ましい。
【0062】
前記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、炭素数5〜10のアルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリル酸エステルを含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体(例:炭素数5〜10のアルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリル酸エステルを5〜95質量%含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体等)、(メタ)アクリル系エマルジョンなどが挙げられる。
【0063】
上記のうち、低圧(特に3MPa以下の圧力)での発色時に、広い発色(着色)面積が得られ、例えばスキャニング等して発色濃度を読み取る際の繰り返し読み取り精度をより高める点で、(メタ)アクリルアミド系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が好ましく、更には(メタ)アクリルアミド系重合体が好ましい。
【0064】
アミド化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物の顕色剤層中における総含有量としては、低圧(特に3MPa以下の圧力)で発色させたときの発色面積が広く得られ、スキャン等で発色濃度を読み取る際の繰り返し読み取り精度を高める観点から、顕色剤100質量部に対して、0.2〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましい。
【0065】
(顕色剤分散液の調製)
顕色剤分散液は、電子受容性化合物が上記の無機化合物である場合、無機化合物を機械的に水系で分散処理することにより調製することができ、また、電子受容性化合物が有機化合物である場合、有機化合物を機械的に水系で分散処理するか、又は有機溶媒に溶解することにより調製することができる。
詳細は、特開平8−207435号公報に記載された方法を参照することができる。
【0066】
(顕色剤層形成用の調製液の調製)
上記のようにして調製された電子受容性化合物分散液は、そのまま電子受容性化合物を含有する顕色剤層を形成するための調製液(特に塗布液)としてもよい。また、顕色剤層を形成するための調製液(特に塗布液)には、バインダーとして、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、アクリル酸エステル系ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、無水マレイン酸−スチレン−共重合体、デンプン、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの合成又は天然高分子物質を添加してもよい。また、顔料として、カオリン、焼成カオリン、カオリン凝集体、重質炭酸カルシウム、種々の形態(米粒状、角状、紡錘状、イガ状、球状、アラゴナイト系柱状、無定形等)の軽質炭酸カルシウム、タルク、ルチル型またはアナターゼ型の二酸化チタン等を添加してもよい。更には、所望により蛍光増白剤、消泡剤、浸透剤、防腐剤を添加することもできる。
【0067】
本発明における顕色剤層としては、特に、置換基を有するサリチル酸金属塩と、アミド化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物より選ばれる少なくとも1種とを含有する水分散液を調製し、これをプラスチック製の基材上に塗布することにより形成された層であることが、低圧領域での面内圧力読み取り適性や低圧領域での圧力面内均一性の点で好ましい。
【0068】
顕色剤層形成用の調製液を塗布液として用いる場合、塗布液の塗工方法としては、通常の塗工機を用いて塗布、乾燥させて行なえる。具体的な塗工機の例としては、ブレードコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、バーコーター、ロールコーター、エクストルージョンコーター、ダイコーター、スライドビードコーター、ブレードコーター等を挙げることができる。
【0069】
本発明の圧力測定用材料が、電子供与性無色染料前駆体内包のマイクロカプセルと電子受容性化合物とがそれぞれ別個の基材に塗工等されて構成される2シートタイプの場合、例えば、顕色剤含有の塗布液を所望のシート状基材の上に、直接もしくは他の層を介して塗布し、乾燥させることにより、少なくとも顕色剤層が形成されたシート材を得ることができる。また、電子供与性無色染料前駆体内包のマイクロカプセルと電子受容性化合物とが単一のシート状基材に塗工等されて構成されるモノシートタイプの場合、例えば、所望のシート状基材の上に直接もしくは他の層を介して、顕色剤含有の塗布液を塗布し、乾燥させることにより、圧力測定用材料を構成する顕色剤層を形成することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0071】
(実施例1)
−電子供与性無色染料前駆体内包マイクロカプセル液(A)の調製−
ジアリールエタン70部に、電子供与性無色染料前駆体として下記化合物(A)18部を溶解し、溶液Aを得た。次に、メチルエチルケトン1部に溶解したエチレンジアミンのブチレンオキシド付加物0.4部を、攪拌している溶液Aに加えて溶液Bを得た。さらに、メチルエチルケトン1部に溶解したトリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加物2部を、攪拌している溶液Bに加えて溶液Cを得た。そして、水150部にポリビニルアルコール6部を溶解した溶液中に、上記より得た溶液Cを加え、乳化分散した。さらに、乳化分散後の乳化液に水250部を加え、攪拌しながら80℃まで加温し、1時間攪拌後冷却した。水を加えて濃度を調整し、電子供与性無色染料前駆体内包ポリウレタン・ウレア壁マイクロカプセルのマイクロカプセル液(A)を得た。
【0072】
得られたマイクロカプセルの数平均壁厚(δ)は0.11μmであり、その体積標準でのメジアン径D50は20μmであった。数平均壁厚は、5個のマイクロカプセルのカプセル壁の厚みを走査型電子顕微鏡により求めて平均した平均値とし、メジアン径は、マイクロカプセル液を所望の支持体に塗布して、光学顕微鏡により150倍で撮影し、2cm×2cmの範囲にある全てのマイクロカプセルの大きさを計測して算出した。δ/Dは、0.006であった。
【0073】
【化1】

【0074】
−電子供与性無色染料シートの作製−
上記より得たマイクロカプセル(A)を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートの上に、乾燥後の質量が5.0g/mとなるように、カーテン塗布機により塗布、乾燥させて発色剤層を形成し、電子供与性無色染料シートを得た。
【0075】
−顕色剤含有液(A)の調製−
3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛(置換サリチル酸金属塩;顕色剤)100部、及びトルエン80部を混合溶解し、これをアクリルアミドとアクリル酸ブチルの共重合体(アミド化合物((メタ)アクリルアミド系重合体);モル比9:1)の25%水溶液16部、炭酸ナトリウム0.2部、及び水200部と混合し、ホモジナイザーで分散し、これにさらに水60部を添加した。この分散液を加熱し、トルエンを留出後、反応機を室温まで冷却した。分散物の濃度は40%であり、顕色剤の平均粒径0.95μmの顕色剤分散液(A)を調製した。この顕色剤分散液(A)24部、炭酸カルシウム100部、酸化亜鉛6部、及び水100部を混合分散し、次いでこれに、ポリビニルアルコールの10%水溶液100部、スチレン-ブタジエンラテックスを固形分換算で10部、及び水450部を添加して、顕色剤含有液(A)を調製した。
【0076】
−顕色剤シートの作製−
得られた顕色剤含有液(A)を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートの上に固形分塗布量が6g/mになるように、カーテン塗布機により塗布、乾燥させて顕色剤層を形成し、顕色剤シートを得た。
【0077】
以上のようにして、電子供与性無色染料シート及び顕色剤シートからなる2シートタイプの本発明の圧力測定用材料を作製した。
【0078】
−評価・測定−
得られたマイクロカプセル液(A)及び圧力測定用材料について、下記の評価、測定を行なった。評価、計測の結果は下記表1に示す。
【0079】
(1)発色濃度
得られた圧力測定用材料を5cm×5cmのサイズに裁断し、電子供与性無色染料シートと顕色剤シートとを、電子供与性無色染料シートの発色剤層の表面と顕色剤シートの顕色剤層の表面とが向き合うようにして重ね合わせ、0.3MPaの圧力で加圧し、発色させた。その後、重ね合わせた両シートを剥離し、濃度計RD−19(グレタグマクベス社製)を用いて、顕色剤シートに形成された発色部の濃度(D)を測定した。また、これとは別に、未使用の顕色剤シートについて同様の方法で初期濃度(D)を測定した。そして、濃度Dから初期濃度Dを減算し、発色濃度ΔDを求め、下記の評価基準にしたがって評価した。なお、「○」以上が実使用上許容できる範囲である。
−評価基準−
◎(ΔD>0.7):発色が明確に認められ、濃度は高かった。
○(0.5≦ΔD≦0.7):発色が明確に認められ、濃度はやや高かった。
△(0.3≦ΔD<0.5):発色が微かに認められたが、濃度は低かった。
×(ΔD<0.3):発色が微かに認められた。
【0080】
(2)濃度読取り精度
得られた電子供与性無色染料シート及び顕色剤シートを、20cm×20cmのサイズに裁断し、電子供与性無色染料シートの発色剤層の表面と顕色剤シートの顕色剤層の表面とが向き合うようにして重ね合わせ、ガラス板を介して0.15MPaで全面を加圧し、全面を発色させた。そして、圧力画像解析システム(FPD−9210、富士フイルム(株)製)により圧力の面内分布を解析して、下記の評価基準にしたがって評価した。
−評価基準−
○:濃度ムラがなく、着色は一様であった。
△:僅かに濃度ムラがみられたものの、実用上許容できる範囲であった。
×:濃度ムラが顕著であった。
【0081】
(実施例2)
実施例1の電子供与性無色染料前駆体内包マイクロカプセル液(A)の調製において、トリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加物2部を3部とし、乳化の強度を強めることによりマイクロカプセルのδ/Dを0.017に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電子供与性無色染料シートを作製し、同様の評価、計測を行なった。評価、計測の結果は下記表1に示す。
【0082】
(実施例3)
実施例1において、顕色剤として用いた3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛を3−イソドデシルサリチル酸亜鉛(置換サリチル酸金属塩)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、顕色剤シートを作製し、同様の評価、計測を行なった。評価、計測の結果は下記表1に示す。
【0083】
(実施例4)
実施例1において、アミド化合物(アクリルアミドとアクリル酸ブチルの共重合体(モル比9:1)の25%水溶液16部を、アクリル酸−2−エチルヘキシルとアクリル酸の共重合体〔(メタ)アクリル酸エステル化合物;モル比1:4〕25%水溶液16部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、顕色剤シートを作製し、同様の評価、計測を行なった。評価、計測の結果は下記表1に示す。
【0084】
(実施例5)
実施例1において、顕色剤含有液(A)を下記の顕色剤含有液(C)に変更し、顕色剤の塗布量を同じにして塗布、乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして、顕色剤シートを作製し、同様の評価、計測を行なった。評価、計測の結果は下記表1に示す。
−顕色剤含有液(C)−
3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛(置換サリチル酸金属塩;顕色剤)10部、炭酸カルシウム100部、ヘキサメタリン酸ナトリウム1部、及び水200部を、サンドグラインダーを用いて平均粒径3μmになるように分散させて分散液を調製した。次いで、この分散液に、ポリビニルアルコールの10%水溶液100部、スチレン−ブタジエンラテックスを固形分換算で10部、及び水450部を添加して、顕色剤含有液(C;アミド化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物無添加)を調製した。
【0085】
(比較例1)
実施例1において、電子供与性無色染料前駆体内包マイクロカプセル液(A)を下記の方法により得られた電子供与性無色染料前駆体内包マイクロカプセル液(B)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の電子供与性無色染料シートを作製し、同様の評価、計測を行なった。評価、計測の結果は下記表1に示す。
【0086】
−電子供与性無色染料前駆体内包マイクロカプセル液(B;メラミン樹脂壁カプセル)の調製−
エチレン無水マレイン酸共重合体の3%水溶液150部を用意し、これをジアリールエタン70部と電子供与性無色染料前駆体である前記化合物(A)18部の溶解液に混合して乳化分散し、電子供与性無色染料前駆体乳化分散液を得た。次に、ホルマリン30部にメラミン10部を加え、60℃に加温して調製したメラミン−ホルムアルデヒドプレポリマー液を、前記電子供与性無色染料前駆体乳化分散液に加え、70℃で3時間反応させた。これを室温まで冷却し、電子供与性無色染料前駆体内包メラミン樹脂壁マイクロカプセルのマイクロカプセル液(B)を得た。
得られたマイクロカプセルの数平均壁厚(δ)は0.23μmであり、その体積標準でのメジアン径D50は15μmであった。数平均壁厚及びメジアン径は実施例1と同様にして求めた。
【0087】
(比較例2)
実施例1のマイクロカプセル液(A)の調製において、トリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加物2部を0.2部とすることにより、マイクロカプセルのδ/Dを0.0006に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の電子供与性無色染料シートを作製し、同様の評価、計測を行なった。評価、計測の結果は下記表1に示す。
【0088】
(比較例3)
実施例1のマイクロカプセル液(A)の調製において、トリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加物2部を4部とし、乳化の強度を強めることによりマイクロカプセルのδ/Dを0.024に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の電子供与性無色染料シートを作製し、同様の評価、計測を行なった。評価、計測の結果は下記表1に示す。
【0089】
(比較例4)
実施例1において、顕色剤として用いた3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛をフェノールレジン化合物に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の顕色剤シートを作製し、同様の評価、計測を行なった。評価、計測の結果は下記表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
前記表1に示すように、実施例では、面圧を与え、加圧が3MPa以下の低圧となる場合でも良好な発色(着色)濃度が得られた。また、発色部における濃度読取り性及びその繰り返し読み取り精度も良好であり、低圧(好ましくは3MPa以下)の局部圧や面圧を与えて圧力状態をみる分野に適用できる性能を得ることができた。
これに対し、比較例では、与えられた面圧が低すぎて発色が少なく、濃度読み取り性に劣っており、繰り返し読み取った際の精度も低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製の基材と電子供与性無色染料前駆体を含む発色剤層と電子受容性化合物を含む顕色剤層とを有し、前記電子供与性無色染料前駆体及び前記電子受容性化合物の発色反応を利用した圧力測定用材料であって、
前記電子供与性無色染料前駆体がウレタン結合を含むマイクロカプセルに内包されており、前記電子受容性化合物の少なくとも1種が置換基を有するサリチル酸金属塩であり、前記マイクロカプセルが、δ/D=1.0×10−3〜2.0×10−2〔δ:マクロカプセルの数平均壁厚(μm)、D:マイクロカプセルの体積標準のメジアン径(μm)〕の関係を満たす圧力測定用材料。
【請求項2】
3MPa以下の圧力で発色することを特徴とする請求項1に記載の圧力測定用材料。
【請求項3】
前記マイクロカプセルの体積標準のメジアン径が10μm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力測定用材料。
【請求項4】
前記顕色剤層は、更に、アミド化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の圧力測定用材料。
【請求項5】
前記アミド化合物が、(メタ)アクリルアミド系重合体又はスルホンアミド化合物であり、前記(メタ)アクリル酸エステル化合物が(メタ)アクリル酸エステル系重合体であることを特徴とする請求項4に記載の圧力測定用材料。
【請求項6】
前記顕色剤層は、置換基を有するサリチル酸金属塩と、アミド化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物より選ばれる少なくとも1種とを含有する水分散液を前記基材上に塗布することにより形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の圧力測定用材料。

【公開番号】特開2009−14674(P2009−14674A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179969(P2007−179969)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】