説明

圧力脈動によるタービン高温ガス通路堆積物のオンライン清浄方法

【課題】圧力パルスによりシステム(10)からの高温ガス堆積物(18)を除去する方法を提供すること。
【解決手段】本方法は、膨張チャンバ(30)へのデトネーション流体(36)及び酸化剤(38)の混合気の流れを調節する段階と、膨張チャンバ(30)においてデトネーション流体(36)及び酸化剤(38)の混合気を点火することにより膨張チャンバ(30)内でデトネーションを発生させて、高圧力波を生成する段階と、を含み、システム(10)が燃焼運転をしている間、システム(10)の流体通路に沿って超音速度で伝播する高圧力波が、流体通路内の高温ガス堆積物(18)を除去し、膨張チャンバ(30)が、高圧力波を前記システム(10)の流体通路に向けて配向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスデトネーションにより発生する高圧パルスを用いて、オンラインタービン高温ガス通路の堆積物を燃焼運転中のシステムの高温流体通路から除去することを可能にする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭及び他の灰分含有燃料で燃焼する大型蒸気ボイラーによるスス及び灰分蓄積物を取り除くデトネーション波ベースのスス吹き出し装置に関して、多くの開発がなされてきた。重液で燃焼するガスタービンはまた、スス及び灰分堆積物による高温ガス通路の汚染が生じることになり、これは、オフライン水洗によって定期的に除去しなければならない。水及び溶剤を噴射する前にタービンを冷却し、更にオフライン洗浄を実施するのに必要とされる時間は、重油(HFO)で燃焼するこれらのガスタービンの可用性を制限する。
【0003】
原油、重油、又は他の灰分含有燃料で燃焼する産業用ガスタービンは、高温ガス通路の高温腐食を回避するために、燃料中に酸化マグネシウム(MgO)又は別の化合物をバナジウムゲッターとして混合する必要がある。これらの燃料中のMgO及び他の化合物、並び不活性物(シリカ)は、高温ガス通路上にスラグ及び灰分堆積物を生成する。これらの堆積物があまり頻繁には除去されない場合、タービンの空気力学は、システムを動作不能にするほど変化し、すなわち、文字通り堆積物で閉塞される。現在の手法は、堆積物を除去するために毎日又は少なくとも毎週の頻度でオフライン水洗を利用するものである。タービンは、オフラインにされ、水により金属部品に熱衝撃を与えるのを避けるために周囲温度付近まで大幅に冷却され、次いで、水及び溶剤で水洗浄しなければならない。空気圧によってシステムに小物体及び他の比較的脆弱な物品が注入される場合があるが、ロータは、高温ガス通路(HGP)堆積物を吹き飛ばすよう高速でクランク駆動される。
【0004】
従って、システムが燃焼運転している間に、システムの流体通路から灰分堆積物を除去することが望ましい。更に、システムが、大気圧よりも高い圧力で動作している間に、水又は溶剤の使用を必要とせずに、システムの流体通路から灰分堆積物を除去できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7360508号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、圧力パルスによりシステムからの高温ガス堆積物を除去する方法が提供される。本方法は、膨張チャンバへのデトネーション流体及び酸化剤の混合気の流れを調節する段階と、膨張チャンバにおいてデトネーション流体及び酸化剤の混合気を点火することにより膨張チャンバ内でデトネーションを発生させて、高圧力波を生成する段階と、を含み、システムが燃焼運転をしている間、システムの流体通路に沿って超音速度で伝播する高圧力波が流体通路内の高温ガス堆積物を除去し、膨張チャンバが高圧力波をシステムの流体通路に向けて配向する。
【0007】
本発明の別の態様によれば、圧力パルスによりシステムからの高温ガス堆積物を除去するための装置が提供される。本装置は、デトネーション流体及び酸化剤の混合気を受け取るよう構成された膨張チャンバと、膨張チャンバにおいてデトネーション流体及び酸化剤の混合気を点火して、膨張チャンバ内でデトネーションを発生させて、高圧力波を生成するよう構成されたイニシエータと、を備え、システムが燃焼運転をしている間、システムの流体通路に沿って超音速度で伝播する高圧力波が流体通路内の高温ガス堆積物を除去し、膨張チャンバが高圧力波をシステムの流体通路に向けて配向する。
【0008】
本発明の更に別の態様によれば、圧力パルスによりガスタービンの流体通路から高温ガス堆積物を除去するためのシステムが提供される。本システムは、ガスタービンの燃焼室内に配置され、且つデトネーション流体及び酸化剤の混合気を受け取るよう構成された膨張チャンバと、デトネーション流体及び酸化剤の混合気を点火して、膨張チャンバ内でデトネーションを発生させて、高圧力波を生成するよう構成されたイニシエータと、を含み、ガスタービンが大気圧よりも高い圧力で作動している間、ガスタービンの流体通路に沿って超音速度で伝播する前記高圧力波が、流体通路内の高温ガス通路堆積物を除去し、高圧力波は、膨張チャンバによってガスタービンの流体通路を通って燃焼室内に配向される。
【0009】
これら及び他の利点並びに特徴は、図面を参照しながら以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1つの例示的な実施形態による、ガスタービンの高温ガス通路からタービン高温ガス通路堆積物を除去するための装置を備えたガスタービンの断面図。
【図2】本発明の1つの例示的な実施形態による、ガスタービンの高温ガス通路からタービン高温ガス通路堆積物を除去するための装置の概略図。
【図3】本発明の1つの例示的な実施形態による、ガスタービンの燃焼室内に配置された装置の断面斜視図。
【図4】本発明の1つの例示的な実施形態による、1つの燃焼室内に装置を組み込んだガスタービンの燃焼器組立体の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、本明細書と共に提出した特許請求の範囲に具体的に指摘し且つ明確に特許請求している。本発明の上記及び他の特徴並びに利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明から明らかである。
【0012】
この詳細な説明は、例証として図面を参照し、利点及び特徴と共に本発明の例示的な実施形態を説明している。
【0013】
例示的な実施形態は、パルスデトネーションにより発生する高圧力波又はパルスによって、オンライン高温ガス堆積物、より具体的にはタービン高温ガス通路の堆積物(スス、クリンカー、灰分、スラグ、並びに他の燃料及び浮遊燃焼副生成物、以後、「灰分堆積物」とする)をシステム(例えば、ガスタービン)の高温流体通路から除去できるようにする装置に関する。本明細書で記載されるシステムは、重油、粉炭、又は他の灰分含有燃料を燃焼させる何れかのタイプのシステムとすることができる。例示的な実施形態は更に、デトネーション液体(例えば、エチレン)と酸化剤(例えば、加圧空気)の混合気の周期的デトネーションにより発生する高圧パルスによって、システムの高温流体通路から灰分堆積物を取り除き又は除去するよう周期的又は清浄モードで動作することができ、或いは、連続モードで動作することにより点火システム又は拡散パイロットとして動作することができる装置に関する。例示的な実施形態はまた、パルスデトネーションからの高圧パルスにより灰分堆積物をオンライン除去するこれらの例示的な装置を組み込んだシステムに関する。更に、これらの実施形態において、システムは、本装置をクリーナ並びに始動用トーチ点火システムとして、或いは部分負荷での作動性を向上させるための拡散火炎パイロットとして動作できるようにするプロセッサを含む。
【0014】
1つの例示的な実施形態によれば、装置は、周期的圧力ゲイン燃焼又はパルスデトネーションにより発生する高圧力波又は圧力パルスを用いて、重油、粉炭、又は他の灰分含有燃料を燃焼させるシステムの高温ガス通路からオンラインで灰分を除去することを可能にする。1つの非限定的で例示的な実施形態では、装置は、燃料燃焼システムの燃焼組立体内に配置される。例えば、装置は、ガスタービンの燃焼室内に配置することができる。この実施例において、装置は、燃料/空気計量装置に関連付けられ、デトネーション管又は膨張チャンバへの燃料/空気の流れを調節するため燃焼室の外部に配置されるソレノイド又はロータリーバルブを備え、ガスタービンの高温ガス通路に効果的に沿って高圧力波を燃焼室内に案内又は配向する。この実施例を使用すると、装置は、第1の動作モード(例えば、燃料及び空気の周期的供給)又は第2の動作モード(燃料及び/又は空気の連続供給)で該装置を作動可能にする処理システムにより制御することができる。
【0015】
ここで図面を参照すると、図1は、1つの例示的な実施形態による、ガスタービンの流体通路又は高温ガス通路から灰分堆積物を除去するためのシステム10を示す概略図である。システム10は一般に、ガスタービン16の燃焼器組立体14内に組み込まれ、ガスタービン16の高温ガス通路(全体的に破線の矢印18で示される)からの灰分堆積物を除去する用構成された装置12を含む。高温ガス通路18は、1つの例示的な実施形態に従って、燃焼器組立体14とガスタービン16の出力端部との間に定められる。1つの例示的な実施形態によれば、装置12は、多目的装置(トーチ点火装置、パイロット火炎、及びパルスジェットクリーナ)として動作することができるパルス発生器である。
【0016】
本発明の例示的な実施形態によるパルス発生器12は、様々な構成を有する燃焼器組立体14に組み込むことができ、図1に示す構成に限定されるものではない。一般に、高圧ガスが燃焼器組立体14に供給され、ノズル20において燃料(例えば、プロセスガス及び/又は合成ガス)と混合される。燃料/空気又は可燃性混合気が燃焼室22を通り、スパークプラグ22により点火されて、高圧高温の燃焼ガスストリームを形成する。しかしながら、本発明の1つの実施形態によれば、パルス発生器12を用いて、燃焼室22内で燃料/空気混合気を点火し、又は燃焼室22内で燃焼プロセスを開始することができ、これは、以下で詳細に説明する。この実施形態は、燃焼器組立体における燃焼室を点火又は再点火するのに使用される従来のスパークプラグ、並びに燃焼器組立体の他の燃焼室を点火するのに従来使用されているクロスファイア管の必要性を排除する。
【0017】
次に、図2を参照すると、パルス発生器12の基本要素は、一般に、膨張チャンバ30、第1の入力ポート32、第2の入力ポート34、及びイニシエータ36を含む。チャンバ30には、1つの実施形態に従って、第1の入力ポート32及び第2の入力ポート34それぞれを介してデトネーション流体及び酸化剤(例えば、空気)の混合気が供給される。デトネーション流体は、1つの実施形態による、第1のソース36(例えば、計量燃料供給源)から供給され、酸化剤は、第2のソース38(例えば、加圧空気供給源)から供給される。1つの代替の実施形態において、デトネーション流体は、燃焼器組立体に燃料を供給する同じソースから供給される。1つの実施形態において、膨張チャンバ30に供給されるデトネーション流体の量は、例えば、主タービン燃料流のほぼ1パーセントなど、燃焼器組立体に供給される燃料の量よりも少ない。換言すると、膨張チャンバ内のデトネーションをサポートするのに必要なデトネーション流体は、ガスタービンの主燃焼をサポートするのに必要な燃料の量よりも少ない。
【0018】
装置12は更に、第1のバルブ40及び第2のバルブ42を含み、チャンバ22へのデトネーション流体及び酸化剤の流れをそれぞれ調節し、1つの実施形態に従って圧力波の周波数及び振幅を変化させる。図2に示すように、各供給源に1つだけのバルブが関連付けられているが、様々な位置にあるバルブの組み合わせを用いて、チャンバ22へのデトネーション流体及び酸化剤の流れを調節又は変更することができる点を理解されたい。1つの実施形態において、第1のバルブ40及び第2のバルブ42は、チャンバ22の外部に位置付けられる。第1のバルブ40及び第2のバルブ42は各々、膨張チャンバ30へのデトネーション流体及び酸化剤の流れを調節するよう構成された何れかのタイプのバルブ又は制御デバイスとすることができる。例えば、第1のバルブ40及び第2のバルブ42は、例えば、可変電気モータにより駆動される回転ドラムを備えた従来の回転バルブである。第1のバルブ40は、チャンバ22へのデトネーション流体の流れを作動モードに応じて周期的又は連続的にすることができる。同様に、第2のバルブ42は、チャンバ22への酸化剤の流れを作動モードに応じて選択的に阻止することができ、これは以下で更に詳細に説明する。
【0019】
1つの例示的な実施形態によれば、イニシエータ36は、膨張チャンバ30においてデトネーション流体と酸化剤との混合気を点火し、該膨張チャンバ30内でデトネーション事象を発生させるよう構成される。膨張チャンバ30内のデトネーションは、該膨張チャンバ30内の圧力を急激に増大させ、高圧力波を生成する。膨張チャンバ30内の圧力ゲイン燃焼事象(デトネーション)により発生した高圧力波は、膨張チャンバ30の一方端に定められるノズル44を通って燃焼室22に入り、ガスタービン16の高温ガス通路18に沿って超音速で伝播し、灰分堆積物を取り除き、ガスタービン16の排気出力端部から出る。次いで、灰分堆積物は、バルク流によりタービンから外に送られる。高圧力波は、高温ガス通路18から、並びにガスタービンの静止構成部品(例えば、第1段ノズル)から効果的に灰分堆積物又は不要なススを取り除き又は除去する。1つの非例示的な実施形態によれば、イニシエータ36はスパークプラグである。別の非限定的な実施形態では、イニシエータ36はプラズマトーチである。勿論、イニシエータ36は、他の例示的な実施形態による膨張チャンバ30においてデトネーション流体及び酸化剤の混合気を開始するよう構成されたあらゆるデバイスとすることができる。
【0020】
1つの例示的な実施形態によれば、膨張チャンバ30は、燃焼室22に高圧力波を誘導する円筒型管体であり、1つの例示的な実施形態に従って膨張チャンバ30内に定められる内側中空スペース又は反応ゾーン46においてデトネーションを発生するよう構成される。1つの例示的な実施形態において、パルス発生器12の膨張チャンバ30は、図3及び4に示すように燃焼室22内に軸方向に配置される。1つの非限定的な例示的実施形態において、膨張チャンバ30は、燃焼室22の中心線に配置され、燃焼室22の幾つかの燃料噴射境界部50により囲まれる。勿論、膨張チャンバ30は、様々な構成で燃焼室22内に挿入することができ、図示の構成には限定されるものではない。膨張チャンバ30を受け入れる燃焼室22は、缶型の環状燃焼室又はその他とすることができる。
【0021】
1つの非限定的な例示的実施形態によれば、膨張チャンバ30の直径サイズは1インチである。勿論、膨張チャンバ30の直径サイズは、用途に応じて1インチよりも大きいか、又は小さくてもよい。膨張チャンバ30は、他の例示的な実施形態によるあらゆるサイズ又は構成のものとすることができ、本明細書で記載される構成に限定されるものではない。1つの実施形態において、膨張チャンバ30は、該膨張チャンバ30の一方の端部(イニシエータに近接した閉鎖端部)と、膨張チャンバ30の他方の端部又は膨張チャンバ30のノズル端部44との間に定められるチョークポイント48を含む。チョーク48は、流体流の制約を可能にし、膨張チャンバ30内の圧力を増大させ、該圧力により高圧力波が1つの実施形態に従って超音速に到達できるようになる。膨張チャンバ30の構成は、該膨張チャンバ30にデトネーション流体及び酸化剤の混合気が噴射されて、イニシエータが該混合気を点火させると、デトネーション又はデトネーション事象が膨張チャンバ30内で発生し、膨張チャンバ30の反応ゾーンにおけるエネルギー放出に起因して、膨張チャンバ30における流体を介して伝播する高圧力波を生成する。高圧力波は、ガスタービン16の高温ガス通路18に沿って燃焼室22内に超音速度で伝播し、高温ガス通路18から灰分堆積物を取り除く。
【0022】
再度図2を参照すると、コントローラ60は、パルス発生器12と連通し、該パルス発生器12が清浄デバイスとして使用される第1の動作モード(周期的モード)、或いは、パルス発生器12がトーチ点火システム又はパイロット火炎として使用される第2の動作モード(連続モード)でパルス発生器12が作動することができるようにする。1つの実施形態において、コントローラ60は、膨張チャンバ30の外部にあり、1つの例示的な実施形態に従ってケーブルを介して第1のバルブ40、第2のバルブ42、及びイニシエータ36に結合される。他の例示的な実施形態では、コントローラ60は、バルブ及びイニシエータ又は他のデバイスと無線通信し、パルス発生器12が一体型点火装置又は拡散パイロットとして使用される清浄モード又は連続モードの何れかでパルス発生器12が作動可能にするよう構成されることが企図される。
【0023】
第1の動作モード中、パルス発生器12は、周期的デトネーションにより発生した周期的高圧パルス又は波を介してガスタービンの高温ガス通路から灰分堆積物を取り除き又は除去する。周期的デトネーションは、パルス発生器12の膨張チャンバ30にデトネーション流体及び空気を間欠的に供給し、チャンバ30において供給燃料/空気を周期的に点火することによって発生する。第1のバルブ40及び第2のバルブ42により、第1の動作モード中にデトネーション流体及び酸化剤をチャンバ30内にそれぞれ周期的に流すことが可能になり、パルスデトネーションにより発生する圧力波の生成が可能になる。この燃料/空気の発振的供給及びこれらの周期的又はパルスデトネーション事象の発生により、ガスタービン16の高温ガス通路18から灰分堆積物を取り除くのに使用される高圧力波が生成される。1つの例示的な実施形態によれば、ガスタービン16は、第1の動作モード中、第2の動作モード中、又は両方で燃焼運転状態にある。1つの非限定的な例示的実施形態において、ガスタービン16は、清浄モード又は連続モード中の大気圧よりも大きな圧力で作動している。従って、デトネーション清浄化は、ガスタービンが負荷状態で稼働中に行うことができ、これにより事実上、システム停止時間を大幅に低減することができる。
【0024】
1つの例示的な実施形態によれば、コントローラ60は、燃焼室22において、並びに1つの実施形態に従ってそれぞれ固有のパルス発生器を利用するガスタービンの他の燃焼室(図示せず)において、灰分除去のために可変周波数脈動を生成することができる。換言すると、コントローラ60は、1つの例示的な実施形態に従って、コヒーレントな脈動を避けるためにガスタービンエンジンの各燃焼室においてパルス周波数を独立して制御するよう構成される。コントローラ60は、バルブ40、42及びイニシエータ36の作動を制御することによって燃焼室22内のパルス周波数を制御する。1つの実施形態において、コントローラ60は、圧力振動又は波を変化させ、燃焼室22内の動的圧力振動と増加的に干渉してより効果的な清浄化のために振幅を増大させ、或いは、圧力振動の周波数及び位相を調整し、動的圧力振動と減殺的に干渉して振幅を減少させる。圧力振動の可変周波数を用いて、高温ガス通路に沿った下流側部品に損傷を与える可能性がある周波数を回避しながら、高温ガス通路の清浄化を最適にすることができる。
【0025】
例えば、コントローラ60は、圧力振動の周波数を調整し、高温ガス通路における構成部品(例えば、第1段ノズル)の共振周波数と一致させて、構成部品上の灰分/ススの除去を可能にすることができる。
【0026】
第2の動作モード中、パルス発生器12は連続モードで動作している。第2の動作モードにおいて、パルス発生器12は、ガスタービンの始動又はブローアウト燃焼室の再点火を行うトーチ点火装置として、或いは燃焼室を安定化するためのパイロット火炎として用いることができる。パルス発生器12がトーチ点火装置として使用される場合、第1のバルブ40及び第2のバルブ42は、連続流位置で固定され、デトネーション流体及び酸化剤をチャンバ30に連続的に流すことができる。イニシエータ36は、パルス発生器12が始動トーチとしてしようされるときには、チャンバ30においてデトネーション流体及び酸化剤の混合気を点火させる。これは、1つの実施形態に従って燃焼室22内で燃焼プロセスを開始し、従来のスパークプラグを使用することなくガスタービンを始動させる。パルス発生器12が一定デフラグレーション(定常火炎)モードでパイロット火炎として使用される場合、第1のバルブ40は、デトネーション流体がチャンバ30に連続的に流れることを可能にし、第2のバルブ42は、より希薄混合気にするために酸化剤がチャンバ30内に連続的に流れるのを可能にするか、或いは図2に破線で示唆されるように、酸化剤がチャンバ30内に流れるのを選択的に阻止する。パイロット火炎は、作動しているとみなされる燃焼室22を安定化させる。その結果として、これによりイニシエータの必要性が排除される。換言すると、第2の動作モード中のイニシエータは、デトネーション流体及び酸化剤の混合気を最初に点火し、次いで、イニシエータが混合気を点火すると、デトネーション流体の連続流により火炎を安定化することができるので、イニシエータはもはや必要とはされない。
【0027】
1つの例示的な実施形態によれば、コントローラ60は、ガスタービンエンジンのオペレーティングシステム(図示せず)又は、用途に応じてオペレーティングシステムの一体部分と信号通信した状態にすることができる。1つの例示的な実施形態において、コントローラ60は、燃焼組立体又はガスタービンの正常性、ステータス、及び/又は状態に関連する入力データに基づいて、パルス発生器12を選択的に周期的清浄モードにする。例えば、ガスタービンの出力が低い場合、パルス発生器12は第1の動作モードに設定することができる。同様に、ガスタービンが始動する必要があるか、又は燃焼室が再点火する必要がある場合、パルス発生器12は、第2の動作モードに設定することができる。
【0028】
1つの実施形態によれば、コントローラは、種々のソース(例えば、センサ)から種々の入力データを受け取り、バルブ40、42の速度(周波数)及びイニシエータ36の動作/機能(例えば、タイミング、電流、電圧、その他)を制御することができる。コントローラによって受け取られる入力データは、例えば、負荷、燃焼温度、圧縮機排出圧力及び温度、燃焼器静圧、動圧振幅及び周波数、膨張チャンバ壁温度、主火炎検出器ステータス、膨張チャンバ火炎検出器ステータス、膨張チャンバステータス圧力、燃焼器動作モード、最後の清浄サイクルからの燃焼時間、或いはこれらの組み合わせを含むことができる。勿論、コントローラは、燃焼器組立体又はガスタービンの正常性、ステータス、及び/又は状態に関連する他のタイプの入力データを受け取ることができ、上述の実施例に限定されるものではない。
【0029】
1つの例示的な実施形態によれば、パルス発生器12において使用されるデトネーション流体は、種々の揮発性液体燃料の1つ又はこれらの組み合わせを含む。より具体的には、膨張チャンバ30には、揮発性液体燃料、或いは、水素、天然ガス、プロパン、ブタン、及びガソリン並びにボトルガスなどのガス状燃料の1つ又はこれらの組み合わせを供給することができる。勿論、他の例示的な実施形態に従って、他の揮発性燃料(例えば、エチレン、メタノール、又はプロパン)を用いて、膨張チャンバ30にデトネーション流体を供給することができ、本明細書で記載される実施例に限定されるものではない。液体形態で容易に蓄えることができる他の炭化水素ガスを、他の例示的な実施形態によるパルス発生器用にデトネーション流体として用いることができる点は企図される。
【0030】
パルス発生器12の例示的な実施形態は、より頻度の高い清浄化を可能にし、正味性能を向上させて、より高い燃焼温度、出力、及び効率を可能にすることができる。パルス発生器12の例示的な実施形態は、上述のように点火トーチ及び高温パイロットとして有用とすることができ、従来のディーゼル油ほど揮発性ではなく、また引火性スプレーへの霧化も容易ではない残留油で作動させようとするときに有用な特徴とすることができる。本明細書で記載されるパルス発生器12の例示的な実施形態は、ガスタービンにおいて灰分堆積物を清浄化するのに一般的に使用される水又は溶剤の必要性を排除又は低減する。本明細書で記載されるパルス発生器の例示的な実施形態は更に、ガスタービンが燃焼運転中である間に圧力パルスによってタービンを清浄にすることを可能にする。装置によって使用されるデトネーション燃料の量は少なく(例えば、タービン燃料流の1/50)、放出される清浄化エネルギーは、ガスタービンにおいて部分的に回収することができる。
【0031】
連続モードでの清浄化プロセスは、デトネーション流体により放出されるエネルギーをガスタービン及び関連の複合サイクルにおいて部分的に回収することを可能にする点を理解されたい。
【0032】
限られた数の実施形態のみに関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明はこのような開示された実施形態に限定されないことは理解されたい。むしろ、本発明は、上記で説明されていない多くの変形、改造、置換、又は均等な構成を組み込むように修正することができるが、これらは、本発明の技術的思想及び範囲に相応する。加えて、本発明の種々の実施形態について説明してきたが、本発明の態様は記載された実施形態の一部のみを含むことができる点を理解されたい。従って、本発明は、上述の説明によって限定されるとみなすべきではなく、添付の請求項の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0033】
10 システム
12 パルス発生器
14 燃焼器組立体
16 ガスタービン
18 高温ガス通路
20 ノズル
22 燃焼室
30 膨張チャンバ
32 第1の入力ポート
34 第2の入力ポート
37 第1のソース
38 第2のソース
40 第1のバルブ
42 第2のバルブ
44 ノズル端部
46 反応ゾーン
48 チョークポイント
50 燃料噴射インタフェース
60 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力パルスによりシステム(10)からの高温ガス堆積物(18)を除去する方法であって、当該方法が、
膨張チャンバ(30)へのデトネーション流体(36)及び酸化剤(38)の混合気の流れを調節する段階と、
前記膨張チャンバ(30)において前記デトネーション流体(36)及び酸化剤(38)の混合気を点火することにより前記膨張チャンバ(30)内でデトネーションを発生させて、高圧力波を生成する段階と
を含んでいて、前記システム(10)が燃焼運転をしている間、前記システム(10)の流体通路に沿って超音速度で伝播する前記高圧力波が、前記流体通路内の高温ガス堆積物(18)を除去し、前記膨張チャンバ(30)が、前記高圧力波を前記システム(10)の流体通路に向けて配向する、方法。
【請求項2】
第1の制御デバイス(40)及び第2の制御デバイス(42)が、前記膨張チャンバ(30)への前記デトネーション流体(36)及び酸化剤(38)の混合気の流れをそれぞれ調節し、前記第1の制御デバイス(40)及び第2の制御デバイス(42)が、第1の動作モード及び第2の動作モードで選択的に作動する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
パルスデトネーション事象により発生する高圧力波の生成を可能にする第1の動作モードの間、前記第1の制御デバイス(40)を利用して前記チャンバ(30)内にデトネーション流体(36)を周期的に流すことを可能にし、前記第2の制御デバイス(42)を利用して前記チャンバ(30)内に酸化剤(38)を周期的に流すことを可能にする段階を更に含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第2の動作モードの間、前記第1の制御デバイス(40)を利用して前記チャンバ(30)内にデトネーション流体(36)を連続的に流すことを可能にし、前記チャンバ(30)内に酸化剤(38)を連続的に流すことを可能にするか、或いは、前記酸化剤(38)が前記チャンバ(30)内に流れるのを選択的に阻止する段階を更に含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記システム(10)が、燃焼運転の間大気圧よりも大きな圧力で作動するガスタービン(16)である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
圧力パルスによりシステム(10)からの高温ガス堆積物(18)を除去するための装置であって、当該装置が、
デトネーション流体(36)及び酸化剤(38)の混合気を受け取るよう構成された膨張チャンバ(30)と、
前記膨張チャンバ(30)において前記デトネーション流体(36)及び酸化剤(38)の混合気を点火して、前記膨張チャンバ(30)内でデトネーションを発生させて、高圧力波を生成するよう構成されたイニシエータと、
を備えており、前記システム(10)が燃焼運転をしている間、前記システム(10)の流体通路に沿って超音速度で伝播する前記高圧力波が、前記流体通路内の高温ガス堆積物(18)を除去し、前記膨張チャンバ(30)が、前記高圧力波を前記システム(10)の流体通路に向けて配向する、装置。
【請求項7】
前記膨張チャンバ(30)への前記デトネーション流体(36)及び酸化剤(38)の混合気の流れをそれぞれ調節するよう構成された第1の制御デバイス(40)及び第2の制御デバイス(42)を更に備え、前記第1の制御デバイス(40)及び第2の制御デバイス(42)が、第1の動作モード及び第2の動作モードで選択的に作動する、請求項6記載の装置。
【請求項8】
パルスデトネーション事象により発生する高圧力波の生成を可能にする前記第1の動作モードの間、前記第1の制御デバイス(40)が前記チャンバ(30)内にデトネーション流体(36)を周期的に流すことを可能にし、前記第2の制御デバイス(42)が前記チャンバ(30)内に酸化剤(38)を周期的に流すことを可能にする、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記第1の制御デバイス(40)及び前記第2の制御デバイス(42)が、前記高圧力波の周波数及び振幅を動作可能に変える、請求項7記載の装置。
【請求項10】
前記第2の動作モードの間、前記第1の制御デバイス(40)が前記チャンバ(30)内にデトネーション流体(36)を連続的に流すことを可能にし、前記第2の制御デバイス(42)が前記チャンバ(30)内に酸化剤(38)を連続的に流すことを可能にするか、或いは、酸化剤(38)が前記チャンバ(30)内に流れるのを選択的に阻止する、請求項7記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−261438(P2010−261438A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−98351(P2010−98351)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY