説明

圧延工場のレイアウト構造

【課題】予備圧延機6、8が容易にメンテナンスされる、圧延工場のレイアウト構造2の提供。
【解決手段】レイアウト構造2は、多数の水平圧延機6、多数の垂直圧延機8、切削用スペース10、ロールショップ12及びホイスト14(搬送装置)を備えている。水平圧延機6は、チョック16と一対の水平ロール18とを供えている。垂直圧延機8は、チョック16と一対の垂直ロール20とを備えている。切削用スペース10には、旋盤22と保持台24とが配置されている。ロールショップ12には、スタンド26が配置されている。水平圧延機6における水平ロール18の軸方向、保持台24に保持された水平ロール18の軸方向及びスタンド26に置かれた水平ロール18の軸方向は、一致している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の予備圧延機を備えた圧延工場のレイアウト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
丸棒鋼の製造方法として、圧延による方法が広く知られている。この製造方法では、まず精錬、造塊、分塊圧延等の工程を経て、鋼からなるビレットが得られる。このビレットは、加熱炉によって加熱される。次に、この鋼が多数の圧延機を通される。各圧延機には、一対のロールが取り付けられている。このロールは、カリバーを有している。鋼は、カリバーを通される。多段の圧延により、鋼は徐々に細径化し且つ長尺化して、丸棒鋼が得られる。
【0003】
繰り返しの圧延により、カリバーが徐々に摩耗する。摩耗が進行したカリバーでは、寸法精度に優れた丸棒鋼が得られない。カリバーの摩耗が進行したロールは切削され、カリバーが再生される。
【0004】
圧延機には、チョックが取り付けられている。チョックは、ベアリングを内蔵している。繰り返しの圧延により、このベアリングに不具合が生じることがある。この不具合が生じると、高品質な丸棒鋼が得られない。定期的なベアリングの点検が必要である。
【0005】
このように、圧延工場では、ロールの切削、ベアリングのチェック等のメンテナンスが必要である。圧延ラインの稼働率の観点から、圧延工場には、2セットの圧延機群が用意される。第一の圧延機群が稼働中、第二の圧延機群にメンテナンスがなされる。第一の圧延機群による稼働が所定時間に達すると、この第一の圧延機群がラインからはずされ、ラインに第二の圧延機群が配置される。この第二の圧延機群により、ラインが稼働する。この間、第一の圧延機群にメンテナンスがなされる。ラインからはずれた圧延機は、予備圧延機と称される。
【0006】
メンテナンスでは、予備圧延機からチョック及びロールが取り外され、ロールショップへと搬送される。この搬送には、ホイスト等が用いられる。ロールショップにおいてチョックが分解され、ロールがチョックから取り外される。このロールショップにおいて、ベアリングが点検される。ロールは、切削用スペースへと搬送される。この搬送には、台車等が用いられる。切削用スペースにおいてロールに切削がなされ、カリバーが再生される。ロールの切削に関する提案が、特開平5−38508号公報に開示されている。
【0007】
ロールの切削の間、ロールショップに保管されていた在庫ロールがチョックに取り付けられ、予備圧延機へと搬送される。切削が完了したロールはロールショップへと搬送され、保管される。
【特許文献1】特開平5−38508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のメンテナンスでは、ロールは、予備圧延機からロールショップへと搬送され、さらに切削用スペースへと搬送される。ロールの質量は大きいので、これらの搬送には時間と労力とを要する。しかも、このメンテナンスでは、在庫ロールが必要である。さらに、このメンテナンスでは、在庫ロールの保管スペースが必要である。
【0009】
本発明の目的は、予備圧延機が容易にメンテナンスされる、圧延工場のレイアウト構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る圧延工場のレイアウト構造は、
直線状に並べられており、ロールが取り付けられた複数の予備圧延機、
これら予備圧延機に近接しており、旋盤と保持台とが配置された切削用スペース
及び
上記予備圧延機と切削用スペースとの間でロールを搬送する搬送装置
を備える。この保持台は、保持台に保持されたロールの軸方向が予備圧延機でのロールの軸方向と一致するように、配置されている。
【0011】
好ましくは、保持台は、ロールと共に、このロールが取り付けられたチョックを保持しうるように構成される。
【0012】
好ましくは、このレイアウト構造は、切削用スペースに近接したロールショップをさらに備える。このロールショップには、かつスタンドが配置されている。スタンドは、このスタンドに置かれたロールの軸方向が予備圧延機でのロールの軸方向と一致するように、配置される。
【0013】
本発明の他の観点によれば、レイアウト構造は、
直線状に並べられており、ロールが取り付けられた複数の予備圧延機、
これら予備圧延機に近接しており、旋盤と保持台とが配置された切削用スペース
及び
上記予備圧延機と切削用スペースとの間でロールを搬送する搬送装置
を備える。この切削用スペースは、複数の予備圧延機と直線状に並べられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るレイアウト構造では、予備圧延機から切削用スペースへと、ロールが直接に搬送されうる。このレイアウト構造により、予備圧延機のメンテナンスが容易になされうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る圧延工場のレイアウト構造2が示された模式的平面図であり、図2はその正面図である。このレイアウト構造2は、圧延ライン4、多数の水平圧延機6、多数の垂直圧延機8、切削用スペース10、ロールショップ12及びホイスト14(搬送装置)を備えている。
【0017】
圧延ライン4は、多数の圧延機(図示されず)を備えている。これら圧延機は、直線状に並べられている。これらの圧延機により、鋼に多段の熱間圧延が施される。熱間圧延によって鋼は徐々に細径化し且つ長尺化して、丸棒鋼が得られる。熱間圧延によって線材が得られてもよい。図1及び2において矢印Aで示されているのは、鋼の進行方向である。
【0018】
水平圧延機6及び垂直圧延機8は、圧延ライン4に沿って直線状に並べられている。水平圧延機6及び水平圧延機6は、交互に配置されている。水平圧延機6は、チョック16と一対の水平ロール18とを供えている。垂直圧延機8は、チョック16と一対の垂直ロール20とを備えている。図1における上下方向は、水平ロール18の軸方向である。
【0019】
水平圧延機6及び垂直圧延機8は、本発明にいう予備圧延機である。以下、水平圧延機6及び垂直圧延機8は、予備圧延機6、8とも称される。予備圧延機6、8は圧延ライン4からはずれており、従って稼働していない。予備圧延機6、8は待機又はメンテナンスの状態にある。
【0020】
切削用スペース10は、予備圧延機6、8に近接している。切削用スペース10は、多数の予備圧延機6、8と直線状に配置されている。切削用スペース10には、旋盤22と保持台24とが配置されている。
【0021】
ロールショップ12は、切削用スペース10に近接している。ロールショップ12は、多数の予備圧延機6、8及び切削用スペース10と直線状に配置されている。ロールショップ12には、スタンド26が配置されている。
【0022】
以下、この圧延工場でのメンテナンスの方法が説明される。カリバーが摩耗して圧延ライン4からはずされた水平圧延機6から、チョック16及び水平ロール18が取り外される。このチョック16及び水平ロール18が、一体として、切削用スペース10へと搬送される。搬送には、ホイスト14が用いられる。水平ロール18は、保持台24に保持される。
【0023】
保持台24の上で、水平ロール18は、チョック16に取り付けられたまま、回転させられる。回転は、図示されない駆動手段(例えばモータ)によってなされる。一方、旋盤22が水平ロール18に向けて前進する。この旋盤22は、バイト(図示されず)を備えている。水平ロール18が回転しつつ、この回転ロールにバイトが押し当てられる。水平ロール18はバイトによって切削される。切削により、水平ロール18が再生される。再生された水平ロール18は、所定寸法を備えたカリバーを有している。
【0024】
再生された水平ロール18は、元の水平圧延機6へと搬送される。搬送には、ホイスト14が用いられる。水平ロール18は、元の水平圧延機6に取り付けられる。この水平圧延機6は、圧延ライン4に組み込まれるまで、待機する。
【0025】
図1から明らかなように、水平圧延機6における水平ロール18の軸方向は、鋼の進行方向Aと直交している。さらに、保持台24に保持された水平ロール18の軸方向も、鋼の進行方向Aと直交している。換言すれば、保持台24に保持された水平ロール18の軸方向は、水平圧延機6における水平ロール18の軸方向と一致している。このレイアウト構造2では、水平圧延機6から切削用スペース10へと搬送されるとき、水平ロール18の方向転換が不要である。このレイアウト構造2では、切削用スペース10から水平圧延機6へと搬送されるとき、水平ロール18の方向転換が不要である。このレイアウト構造2では、水平ロール18が容易に搬送されうる。
【0026】
図1から明らかなように、保持台24は複数の水平圧延機6と直線状に並んでいる。このレイアウト構造2では、水平圧延機6から切削用スペース10へと、水平ロール18が直線的に搬送される。このレイアウト構造2では、切削用スペース10から水平圧延機6へと、水平ロール18が直線的に搬送される。このレイアウト構造2では、水平ロール18が容易に搬送されうる。
【0027】
垂直圧延機8のメンテナンスでは、この垂直圧延機8からチョック16及び垂直ロール20が取り外される。このチョック16及び垂直ロール20が、一体として、ロールショップ12へと搬送される。搬送には、ホイスト14が用いられる。ロールショップ12において垂直ロール20は、その軸方向が水平となるように、回転させられる。その後に、チョック16及び垂直ロール20(水平方向に延在している)が、保持台24に保持され、切削がなされる。
【0028】
このレイアウト構造2では、水平圧延機6からはずされた水平ロール18は、切削後直ちにこの水平圧延機6に戻されうる。さらに、垂直圧延機8からはずされた垂直ロール20は、切削後直ちにこの垂直圧延機8に戻されうる。このレイアウト構造2が採用された工場では、在庫ロールが不要である。従って、在庫ロールのための保管スペースが不要である。
【0029】
水平圧延機6のベアリングの点検が必要なときは、この水平圧延機6からはずされたチョック16及び水平ロール18が、ホイスト14でロールショップ12へと搬送される。チョック16及び水平ロール18は、スタンド26に置かれる。このスタンド26においてチョック16が分解され、ベアリングが点検される。必要に応じ、ベアリングの修理又は交換がなされる。垂直圧延機8のベアリングも、同様に、ロールショップ12で点検される。
【0030】
図1から明らかなように、スタンド26に置かれた水平ロール18の軸方向は、鋼の進行方向Aと直交している。換言すれば、スタンド26に置かれた水平ロール18の軸方向は、水平圧延機6における水平ロール18の軸方向と一致している。このレイアウト構造2では、水平圧延機6からロールショップ12へと搬送されるとき、水平ロール18の方向転換が不要である。
【0031】
水平圧延機6から取り外されたチョック16及び水平ロール18が、まず切削用スペース10に搬送され、その後にロールショップ12に搬送されてもよい。この場合、切削用スペース10でロールの切削が行われ、ロールショップ12でベアリングの点検が行われる。水平圧延機6における水平ロール18の軸方向、保持台24に保持された水平ロール18の軸方向及びスタンド26に置かれた水平ロール18の軸方向は一致しているので、搬送は極めて容易である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、棒材、繊細、板材、管材等の圧延工場に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る圧延工場のレイアウト構造が示された模式的平面図である。
【図2】図2は、図1のレイアウト構造が示された模式的正面図である。
【符号の説明】
【0034】
2・・・レイアウト構造
4・・・圧延ライン
6・・・水平圧延機
8・・・垂直圧延機
10・・・切削用スペース
12・・・ロールショップ
14・・・ホイスト
16・・・チョック
18・・・水平ロール
20・・・垂直ロール
22・・・旋盤
24・・・保持台
26・・・スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に並べられており、ロールが取り付けられた複数の予備圧延機、
これら予備圧延機に近接しており、旋盤と保持台とが配置された切削用スペース
及び
上記予備圧延機と切削用スペースとの間でロールを搬送する搬送装置
を備えており、
上記保持台に保持されたロールの軸方向が予備圧延機でのロールの軸方向と一致するように、この保持台が配置されている圧延工場のレイアウト構造。
【請求項2】
上記保持台が、ロールと共にこのロールが取り付けられたチョックを保持しうるように構成された請求項1に記載のレイアウト構造。
【請求項3】
上記切削用スペースに近接しており、かつスタンドが配置されたロールショップをさらに備えており、
このスタンドに置かれたロールの軸方向が予備圧延機でのロールの軸方向と一致するように、このスタンドが配置されている請求項1又は2に記載のレイアウト構造。
【請求項4】
直線状に並べられており、ロールが取り付けられた複数の予備圧延機、
これら予備圧延機に近接しており、旋盤と保持台とが配置された切削用スペース
及び
上記予備圧延機と切削用スペースとの間でロールを搬送する搬送装置
を備えており、
上記切削用スペースが、上記複数の予備圧延機と直線状に並べられた圧延工場のレイアウト構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−101388(P2009−101388A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275894(P2007−275894)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)