説明

圧延機のロール仕様自動入力システム

【目的】ロール仕様自動入力システムにおいて、オペレーターが補修研削後のロール仕様を入力する際の人為的なミスによる不具合をなくすとともに、安全でロール仕様に合った信頼性の高い圧延を行うことができるようにする。
【構成】ロール研削装置3と、パスライン調整制御装置8と、圧下制御装置17と、圧延制御装置23とを有する圧延機のロール仕様自動入力システムにおいて、ロール研削機3aに設置され、ロール径Di、ロール粗度Ri、及びロール記号Niを読み取る手段4,5,6と、圧延機スタンド21にロール2を組み込む直前にNjを読み取る手段7と、Di,Ri,Niを記憶し、手段7によって読み取ったNjに対応するDjを8および17に、またNjに対応するDjとRjを装置23に出力するロール仕様自動入力装置1とを有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、圧延機スタンド内に組み込まれる補修研削後の個々のロール仕様を、パスライン調整制御装置、圧下制御装置、及び圧延制御装置に自動的に入力する、圧延機のロール仕様自動入力システムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、圧延設備の連続化の要求はますます高まり、圧延ラインでのロール組替時間の短縮が必要になってきた。そこで、圧延機スタンド内に組み込む補修研削後のロール仕様、すなわち該ロールのロール径やロール粗度などのデータを、パスライン調整制御装置、圧下制御装置、及び圧延制御装置に正確かつ迅速に入力することが要求されてきた。
【0003】このような要求を満足するパスライン調整装置はないが、無段階式の調整量の大きいパスライン調整装置としては、特開昭53−28065号公報に記載のような装置がある。これは、ロールハウジングと上補強ロールとの間に設置されたくさび式ロッカープレートと階段式ロッカープレートとの組み合わせでパスラインを無段階に調整可能な構成とし、オペレーターが新規に圧延機スタンド内に組み込むロール径を手動で入力してパスライン高さを調整するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、補修研削後のロール仕様を、パスライン調整制御装置、圧下制御装置、及び圧延制御装置に正確かつ迅速に入力することが可能な圧延設備は従来なかった。
【0005】また、上記特開昭53−28065号公報に記載の装置では、該ロールのロール径やロール粗度などのロール仕様データをオペレーターが一々手動で入力するため、入力ミスにより適切な圧延スケジュールによる圧延が行われない恐れがあり、このため計画通りの製品が生産できないという問題があった。また、オペレーターのロール径入力ミスにより誤った高さにパスラインが設定され、ロールチョックとロールスタンドに取り付けられたプロジェクトブロックとが接触して、ロールチョックを破損する事故が発生するという恐れもあった。
【0006】本発明の目的は、上記問題点に鑑み、オペレーターが補修研削後のロール仕様を入力する際の人為的なミスによる不具合をなくすとともに、安全でロール仕様に合った信頼性の高い圧延を行うことができるロール仕様自動入力システムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を解決するため、本発明は、ロールを補修研削するロール研削装置と、圧延機スタンド内に組み込むロール径に合わせてパスライン高さを調整するパスライン調整制御装置と、前記圧延機スタンド内に組み込むロール径及び圧下力に合わせて圧下位置を調整する圧下制御装置と、事前に計画された圧延スケジュールにより圧延速度を制御する圧延制御装置とを有する圧延機のロール仕様自動入力システムにおいて、前記ロール研削装置に設置され、補修研削した該ロールのロール径とロール粗度及び該ロールにマーキングされたロール記号とを読み取る第1の読み取り手段と、前記第1の読み取り手段によって読み取ったロール径とロール粗度とロール記号とを自動的に記憶する記憶手段と、前記圧延機スタンドに該ロールを組み込む直前に該ロールのロール記号を読み取る第2の読み取り手段と、前記第2の読み取り手段によって読み取った該ロールのロール記号に対応するロール径を前記パスライン調整制御装置に出力する手段とを有することを特徴とする。
【0008】好ましくは、上記圧延機のロール仕様自動入力システムは、さらに、前記第2の読み取り手段によって読み取った該ロールのロール記号に対応するロール径を前記圧下制御装置に出力する手段を有する。
【0009】また、好ましくは、上記圧延機のロール仕様自動入力システムは、さらに、前記第2の読み取り手段によって読み取ったロール記号に対応するロール径及びロール粗度を前記圧延制御装置に出力する手段を有する。
【0010】また、前記第2の読み取り手段は、該ロールを前記圧延スタンドに運搬するロール組替台車に備えてもよいし、前記ロール組替台車上にロールを自動的に搭載するよう構成したロール搬送装置に備えてもよい。
【0011】
【作用】ロールの補修研削後にロール径とロール粗度とロール記号とを読み取って自動的に記憶し、圧延機スタンドに該ロールを組み込む直前に前記ロール記号を読み取り、このロール記号に対応するロール径またはロール粗度をパスライン調整制御装置、圧下制御装置、及び前記圧延制御装置に出力する手段を有するので、パスラインや圧下位置(圧下量)を適切な位置に、迅速かつ正確に設定することができる。従って、オペレーターの人為的な入力ミスにより、誤ったロール仕様が入力されて不具合が生じるようなことがなく、適切な条件及びスケジュールで圧延を行なうことができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の一実施例による圧延機のロール仕様自動入力システムの構成を図1により説明する。図1に示すように、本システムは、大まかにロール仕様自動入力装置1、パスライン調整制御装置8、圧下制御装置17、圧延制御装置23、及びこれらの装置間のデータ転送手段によって構成されている。さらにロールの補修研削装置3、ロール記号自動読み取り装置7、パスライン調整制御装置8からの指令によってパスラインを調整する機構、圧下制御装置17からの指令によって圧下位置(圧下量)を設定する機構、圧延制御装置23からの指令によって圧延速度を設定する機構等を備える。
【0013】このうち、ロールの補修研削装置3は、ロール研削機3a、ロール径Diを読み取るロール径自動測定装置4、ロール粗度Riを読み取るロール粗度自動測定装置5、ロールにマーキングされたロール記号Niを読み取る自動読み取り装置6、及びロール径Di、ロール粗度Ri、ロール記号Ni等のロール仕様のデータをロール仕様自動入力装置1に転送する転送手段によって構成されている。このような構成のもとで、ロール2はロール研削機3aによって補修研削され、その後オペレーターの指示により、ロール径自動測定装置4によりロール径Diが、ロール粗度自動測定装置5によりロール粗度Riが測定され、また自動読み取り装置6によりロールにマーキングされたロール記号Niが読み取られ、ロール仕様自動入力装置1に出力及び記憶される。
【0014】また、ロール記号自動読み取り装置7はロール組替台車22に設置されており、圧延機スタンド21にロールを組み込む直前に、ロールチョックにアセンブリーされロール組替台車22に搭載されたロール2のロール記号Njを、オペレーターの指示によって読み取り、ロール仕様自動入力装置1に転送する。これを受けてロール仕様自動入力装置1は、ロール記号自動読み取り装置7により読み取られたロール記号Njと、前述のロール補修研削後に記憶されたロール径Di、ロール粗度Ri、ロール記号Niとを照合し、ロール径Djを選択してパスライン調整制御装置8および、圧下制御装置17に出力し、またロール径Dj及びロール粗度Rjを圧延制御装置23に出力する。
【0015】パスライン調整制御装置8は、ロール仕様自動入力装置1により入力されたロール径Djによりパスラインの調整を行う。即ち、ウェッジ11、段付きロッカープレート12の設定値Sw(j),Sr(j)を演算し、この値に対応して電磁弁13及び14、シリンダー15及び16、検出機9及び10によりウェッジ11、段付きロッカープレート12をセットする。
【0016】また、圧延制御装置23は、ロール仕様自動入力装置1により入力されたロール径Dj及びロール粗度Rjにより圧延荷重Pjを演算して圧下制御装置17に出力する。さらに、ロール径Djと、ロール粗度Rjは、事前に計画された圧延スケジュールのロール仕様と照合され、事前に計画された圧延スケジュールと異なるロール仕様が入力されると、圧延制御装置23は入力されたロール仕様に合わせて圧延スケジュールを変更して圧延を開始するように、圧延速度Vjを演算して、ロール駆動機構として設置された駆動モータ23aの回転速度を制御する。
【0017】また、圧下制御装置17はロール仕様自動入力装置1により入力されたロール径Djと、圧延制御装置23により入力された圧延荷重Pjとから圧下量δjを演算し、さらにこの値とロール径Djとから圧下位置Sjw(j),Sjd(j)を演算する。このSjw(j),Sjd(j)の値によってサーボバルブ18が駆動され、検出器19を備えた圧下ラム20はこのサーボバルブ18の動作によりセットされる。
【0018】以上のような構成を備えた本システムの動作を図2により説明する。図2は、オペレーターがロール仕様の読み取り指示を与えてから圧延機構諸条件が設定されるまでのフローチャートである。まず、図2のステップ101において、ロール2の補修研削後にオペレーターが、ロール径Di、ロール粗度Ri、ロール記号Ni等のロール仕様の読み取り指示を行うと、これらのデータがステップ102でロール仕様自動入力装置に記憶される。
【0019】その後、ステップ103でオペレーターがロール記号Njの読み取り指示を行うと、ロールチョックにアセンブリーされたロール2のロール記号Njがロール記号自動読み取り装置7によって読み取られ、ロール仕様自動入力装置1に入力される。ステップ4では、ステップ102でロール仕様自動入力装置1に記憶されたロール径Di、及びロール粗度RiのうちNjに対応するものが読み出され、パスライン調整制御装置8及び圧下制御装置17にロール径Djが、またロール径Djとロール粗度Rjが圧延制御装置23に出力される。ステップ5では、パスライン調整制御装置8に入力されたロール径Djによってウェッジ11の設定値Sw(j)及び断付きロッカープレート12の設定値Sr(j)が演算される。ステップ6では、圧延制御装置23に入力されたロール径Dj及びロール粗度Rjによって圧延荷重Piが演算され、圧下制御装置17に出力される。ステップ7では、圧延制御装置23に入力されたロール径Djによって圧延速度Vjが演算される。ステップ8では、圧下制御装置17に入力されたロール径Dj及び圧延荷重Pjによってワークロール及びドライブロールのそれぞれの圧下量δw(j)及びδd(j)が演算され、さらにこの値とロール径Djとからワークロール及びドライブロールのそれぞれの圧下位置Sjw(j),Sjd(j)が演算される。
【0020】その後、ステップ109でオペレーターが作業開始指示を行うと、ステップ110でウェッジ11の設定値Sw(j)及び断付きロッカープレート12の設定値Sr(j)が出力され、この値に対応してステップ111においてウェッジ12及び断付きロッカープレート11を設定することによりパスラインの調整が実施される。パスラインの調整が完了すると、ステップ112でワークロールの圧下位置Sjw(j)とドライブロールの圧下位置Sjd(j)が出力され、この値に対応してサーボバルブ20、従って圧下ラム19の位置が設定される。また、ステップ113で圧延速度Vjが出力され、この値に対応して駆動モータ23aの制御が実施される。以上のようにして、ロール仕様に対応した圧延緒条件の設定及び圧延動作が行われる。
【0021】次に、本発明の他の実施例による圧延機のロール仕様自動入力システムについて図3により説明する。本実施例において、ロール記号自動読み取り装置7の設置位置以外は図1に示す実施例と同一である。図3において、補修研削を終えたロール2はロールチョックにアセンブリーされた後、ロール搬送装置24によりロール組替え台車22に搬送される。ロール記号自動読み取り装置7はこのロール搬送装置24に設置されており、圧延機スタンド21にロールを組み込む直前に、ロール2のロール記号Njを、オペレーターの指示によって読み取り、ロール仕様自動入力装置1に転送する。以下、前記第1図で説明したのと同様の構成及び方法で、ロール記号Njに対応するロール径Djとロール粗度Rjをロール仕様自動入力システムからパスライン調整制御装置8、圧下制御装置17、及び前記圧延制御装置23に送り、各データを演算した後に出力することにより、パスラインの調整や圧下位置(圧下量)の設定を行う。
【0022】尚、本実施例においては、図2中ステップ101及びステップ103において、オペレータが手動で各データの読み取り指示を与える構成としたが、ロールの補修研削終了後あるいはロールのロールチョックへのアセンブリー終了後に、図2中ステップ101及びステップ103に相当する読み取り指示を自動的に行なうような構成としてもよい。
【0023】本実施例によれば、ロールの補修研削後にロール径Diとロール粗度Riとロール記号Niとをロール仕様自動入力システム1に記憶し、圧延機スタンド21に該ロールを組み込む直前にロール記号Njを読み取り、このロール記号に対応するロール径Djまたはロール粗度Rjをパスライン調整制御装置8、圧下制御装置17、及び前記圧延制御装置23に出力することによって、パスラインや圧下位置(圧下量)を適切な位置に、迅速かつ正確に設定することができる。従って、オペレーターの人為的な入力ミスにより、誤ったロール仕様が入力されて不具合が生じるようなことがなく、適切な条件及びスケジュールで圧延を行なうことができる。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、ロールの補修研削後にロール仕様をロール仕様自動入力システムに記憶し、圧延機スタンドに該ロールを組み込む直前にロール記号を読み取り、このロール記号に対応する正しいロール仕様を圧延を制御する各装置に出力することによって、パスラインや圧下位置(圧下量)を適切な位置に、迅速かつ正確に設定することができる。従って、オペレーターの人為的な入力ミスによる不具合がなくなり、安全でロール仕様に合った信頼性の高い圧延を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による圧延機のロール仕様自動入力システムを示す概念図である。
【図2】オペレーターがロール仕様の読み取り指示を与えてから圧延機構の諸条件が設定されるまでのフローチャートである。
【図3】本発明の他の実施例による圧延機のロール仕様自動入力システムを示す概念図である。
【符号の説明】
1 ロール仕様自動入力装置
2 ロール
3 ロール研削装置
3a ロール研削機
4 ロール径自動測定装置
5 ロール粗度自動測定装置
6 自動読み取り装置
7 ロール記号自動読み取り装置
8 パスライン調整制御装置
17 圧下制御装置
21 圧延機スタンド
22 ロール組替台車
23 圧延制御装置
24 ロール搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロールを補修研削するロール研削装置と、圧延機スタンド内に組み込むロール径に合わせてパスライン高さを調整するパスライン調整制御装置と、前記圧延機スタンド内に組み込むロール径及び圧下力に合わせて圧下位置を調整する圧下制御装置と、事前に計画された圧延スケジュールにより圧延速度を制御する圧延制御装置とを有する圧延機のロール仕様自動入力システムにおいて、前記ロール研削装置に設置され、補修研削した該ロールのロール径とロール粗度及び該ロールにマーキングされたロール記号とを読み取る第1の読み取り手段と、前記第1の読み取り手段によって読み取ったロール径とロール粗度とロール記号とを記憶する記憶手段と、前記圧延機スタンドに該ロールを組み込む直前に該ロールのロール記号を読み取る第2の読み取り手段と、前記第2の読み取り手段によって読み取った該ロールのロール記号に対応するロール径を前記パスライン調整制御装置に出力する手段とを有することを特徴とする圧延機のロール仕様自動入力システム。
【請求項2】 さらに、前記第2の読み取り手段によって読み取った該ロールのロール記号に対応するロール径を前記圧下制御装置に出力する手段を有することを特徴とする請求項1記載の圧延機のロール仕様自動入力システム。
【請求項3】 さらに、前記第2の読み取り手段によって読み取ったロール記号に対応するロール径及びロール粗度を前記圧延制御装置に出力する手段とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の圧延機のロール仕様自動入力システム。
【請求項4】 前記第2の読み取り手段を、該ロールを前記圧延スタンドに運搬するロール組替台車に備えたことを特徴とする請求項1から3のうちいづれか一項に記載の圧延機のロール仕様自動入力システム。
【請求項5】 前記第2の読み取り手段を、請求項4に記載のロール組替台車上にロールを自動的に搭載するよう構成したロール搬送装置に備えたことを特徴とする請求項1から3のうちいづれか一項に記載の圧延機のロール仕様自動入力システム。
【請求項6】 ロールを補修研削するロール研削装置と、圧延機スタンド内に組み込むロール径に合わせてパスライン高さを調整するパスライン調整制御装置と、前記圧延機スタンド内に組み込むロール径及び圧下力に合わせて圧下位置を調整する圧下制御装置と、事前に計画された圧延スケジュールにより圧延速度を制御する圧延制御装置とを有する圧延機のロール仕様自動入力システムにおいて、前記ロール研削装置に設置され、補修研削した該ロールのロール径とロール粗度及び該ロールにマーキングされたロール記号とを読み取る第1の読み取り手段と、前記第1の読み取り手段によって読み取ったロール径とロール粗度とロール記号とを記憶する記憶手段と、前記圧延機スタンドに該ロールを組み込む直前に該ロールのロール記号を読み取る第2の読み取り手段と、前記第2の読み取り手段によって読み取った該ロールのロール記号に対応するロール径を前記圧下制御装置に出力する手段とを有することを特徴とする圧延機のロール仕様自動入力システム。
【請求項7】 ロールを補修研削するロール研削装置と、圧延機スタンド内に組み込むロール径に合わせてパスライン高さを調整するパスライン調整制御装置と、前記圧延機スタンド内に組み込むロール径及び圧下力に合わせて圧下位置を調整する圧下制御装置と、事前に計画された圧延スケジュールにより圧延速度を制御する圧延制御装置とを有する圧延機のロール仕様自動入力システムにおいて、前記ロール研削装置に設置され、補修研削した該ロールのロール径とロール粗度及び該ロールにマーキングされたロール記号とを読み取る第1の読み取り手段と、前記第1の読み取り手段によって読み取ったロール径とロール粗度とロール記号とを記憶する記憶手段と、前記圧延機スタンドに該ロールを組み込む直前に該ロールのロール記号を読み取る第2の読み取り手段と、前記第2の読み取り手段によって読み取ったロール記号に対応するロール径及びロール粗度を前記圧延制御装置に出力する手段とを有することを特徴とする圧延機のロール仕様自動入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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