説明

圧延機の零調方法

【課題】少なくとも上下一方のロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、各分割バックアップロールに夫々独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機において、ワークロール水平たわみが十分小さくなる最適な零調方法を提供する。
【解決手段】零調のための分割バックアップロール合計荷重を仮定し、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる目標となる分割バックアップロール荷重分布を予め求めておき、圧延機のキスロール状態で前記合計荷重まで締め込み、締込み時の分割バックアップロール荷重を測定し、前記目標となる分割バックアップロール荷重分布との差から分割バックアップロール位置を修正し、当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および分割バックアップロール圧下位置を零点とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも上下一方のロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法に関する
【背景技術】
【0002】
圧延機の無負荷時のロール間隙を精度よく知ることは、板厚制御や荷重予測の観点から非常に重要である。通常、無負荷時の間隙は主圧下シリンダの油柱高さや圧下ねじの移動量で測定するが、ロール組換え時や、ロールの磨耗や熱膨張によるロール径変化は検出できないため、キスロールや板がある状態での締め込みによってロール間隙の零点を調整する方法が用いられる。この作業は一般に零調といわれ、これまで零調の精度を高めるための検討がなされてきた。
【0003】
例えば特許文献1では、上ワークロールと上バックアップロールを接触し、下ワークロールと下バックアップロールを接触し、かつ上下ワークロールを接触しない状態で回転させ、しかる後にワークロールの回転を停止させて、レベリング零調を行うことで、上下ワークロールチョックのオフセットを本来零調に望ましい位置に安定させ、零調の精度を上げることを特徴としている。
【0004】
一方で、従来から圧延材の板クラウン・形状を精度よく制御できるような技術が求められており、この要求を満足する圧延機として、分割バックアップロールの位置検出機構と荷重検出機構を有する圧延機が開発され(例えば、特許文献2参照)、圧延中の板クラウン・形状を時間遅れなく高精度に検出・制御できるようになった。
【0005】
さらに、このような圧延機における分割バックアップロール系の変形特性を同定する手法が開発されてきた(例えば、特許文献3参照)。
この方法では、キスロール締め込み状態での分割バックアップロール圧下方向の変位と荷重分布を測定し、これを基準状態とし、さらに上下のワークロールがロール胴長全域にわたって接触する状態で各分割バックアップロールを個々または複数個を同時に変化させた場合の分割バックアップロール圧下方向の荷重と変位を、分割されたバックアップロールの数以上の水準数検出し、検出されたこれらの分割バックアップロールの荷重及び変位との差を求め、これらの差を用いて分割バックアップロール系の変形マトリクスを求めている。
【0006】
ところが、このような圧延機の変形特性同定中に、上下ワークロール間のスキュー(クロス角)の影響によるスラスト力(ロール軸心方向の力)が原因となり、ミル変形特性同定中に検出されるバックアップロール荷重に誤差が生じるという問題があることや、ワークロールのスラスト力を受けるスラストベアリング等の設備に損傷を与えるという問題が生じていた。
【0007】
この問題を解決する手法として、上記スラスト力を監視しながら、上もしくは下または上下のワークロールのスキューを変化させることで、ワークロール全体に作用する合力としてのスラスト力増減を一定に保つ方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平15−290806号公報
【特許文献2】特開平6−262213号公報
【特許文献3】特開平8−192205号公報
【特許文献4】特開平17−118844号公報
【非特許文献1】一井次郎、ヘルツ圧力式の解説に関する一寄与(2)、潤滑、7(1962)3、p123
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように分割バックアップロールの圧下位置を任意に設定できる圧延機の場合、分割バックアップロールの圧下位置によって主圧下荷重もしくは分割バックアップロール合計荷重が変化するため、このような圧延機の零調を行う際には、主圧下の位置に加え分割バックアップロールの圧下位置も零調の対象とする必要がある。しかしながら、これまでそのような検討はなされておらず、零調の精度が悪化するという問題が生じていた。
【0009】
また、零調の際のキスロール締込み時または板締込み時に、分割バックアップロール荷重分布によっては、ワークロールが水平方向にたわんだ状態となるため、上下ワークロール同士の接触位置にずれが生じ、零調精度が悪化すると同時に、ワークロール水平たわみによって、上下ワークロール間もしくはワークロールとバックアップロール間にスラスト力が働き、バップアップロールの支持部やスラストベアリング等の設備損傷への影響がこれまで問題となっていた。
【0010】
すなわち、主圧下位置に加え、分割バックアップロール位置の零調も必要となるが、この場合の分割バックアップロール位置は、スラスト力や荷重誤差が問題とならない程度にワークロールの水平たわみができるだけ小さく抑えられた状態とする必要がある。しかしながら、零調時に分割バックアップロール位置を上記のような最適な位置へ調整する方法はこれまで行われてこなかった。
【0011】
そこで、本発明は上記のような分割バックアップロールの圧下装置を持つ圧延機において、ワークロール水平たわみが十分小さくなるような最適な零調方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上下一方のロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される分割バックアップロールのあるアセンブリ側のワークロール軸心たわみの変形マトリクスであるワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための分割バックアップロール合計荷重を決定し、
前記分割バックアップロール合計荷重を用い、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
上下一方の分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定して圧延機のキスロール状態で所定の分割バックアップロール合計荷重まで締め込み、
締込み時の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる分割バックアップロール荷重分布との差から分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および分割バックアップロール圧下位置を零点として、分割バックアップロール合計荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法である。
【0013】
(2)上下一方のロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される分割バックアップロールのあるアセンブリ側のワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための主圧下荷重を決定し、
前記主圧下荷重を用いて、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
上下一方の分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定して圧延機のキスロール状態で所定の主圧下荷重まで締め込み、
締込み時の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる分割バックアップロール荷重分布との差から分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および分割バックアップロール圧下位置を零点として、主圧下荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法である。
【0014】
(3)上下ともにロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、上下一方の前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される前記各装置を備えた側のワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための分割バックアップロール合計荷重を決定し、
前記分割バックアップロール合計荷重を用い、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定し、圧延機のキスロール状態で所定の分割バックアップロール合計荷重まで締め込み、
締込み時の上下一方の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる上下一方の分割バックアップロール荷重分布との差から求めた分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該分割バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および上下一方の分割バックアップロール圧下位置を零点として、分割バックアップロール合計荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法である。
【0015】
(4)上下ともにロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、上下一方の前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される前記各装置を備えた側のワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための主圧下荷重を決定し、
前記主圧下荷重を用いて、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定し、圧延機のキスロール状態で所定の主圧下荷重まで締め込み、
締込み時の上下一方の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる上下一方の分割バックアップロール荷重分布との差から求めた分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該分割バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および上下一方の分割バックアップロール圧下位置を零点として、主圧下荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法である。
【0016】
(5)上下ともにロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、上下ともに前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される上下両方のロールアセンブリのワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための分割バックアップロール合計荷重を決定し、
前記分割バックアップロール合計荷重を用い、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる上下分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
上下分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定し、圧延機のキスロール状態で所定の分割バックアップロール合計荷重まで締め込み、
締込み時の上下の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる上下の分割バックアップロール荷重分布との差から分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該分割バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および上下の分割バックアップロール圧下位置を零点として、分割バックアップロール合計荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法である。
【0017】
(6)上下ともにロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、上下ともに前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される上下両方のロールアセンブリのワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための主圧下荷重を決定し、
前記主圧下荷重を用いて、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる上下分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
上下分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定し、圧延機のキスロール状態で所定の主圧下荷重まで締め込み、
締込み時の上下の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる上下の分割バックアップロール荷重分布との差から分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該分割バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および上下の分割バックアップロール圧下位置を零点として、主圧下荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法である。
【0018】
(7)ワークロールの水平たわみ量の上下ワークロール径和に対する割合が0.3%以内となるような分割バックアップロールの荷重分布をあらかじめワークロール変形マトリクスを用いて求めておき、この目標となる分割バックアップロール荷重分布になるように、分割バックアップロール荷重を測定しながら圧下位置を調整し、目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現する主圧下位置および分割バックアップロール圧下位置を零点として、主圧下荷重もしくは分割バックアップロール合計荷重と共に記憶することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の圧延機の零調方法である。
【0019】
(8)前記分割バックアップロール位置を修正する際に、バックアップロール位置修正量をバックアップロール荷重の目標値と測定値との差、ワークロール変形マトリクスとともに、仮定したバックアップロール系変形マトリクスに基づいて算出することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の圧延機の零調方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、分割バックアップロールの位置検出機構と荷重検出機構を有する圧延機の零調において、全ての分割バックアップロールの圧下位置を油柱の中心高さなどの機械的な中立位置にあわせておき、この状態で目標の主圧下荷重もしくは分割バックアップロール合計荷重となるまで締め込み、この作業によって、分割バックアップロールの圧下位置が起因となる荷重誤差を小さくすることができる。
【0021】
さらに、ワークロール水平面内たわみを起因とするバックアップロール荷重の変化によって零調精度が悪化することや、個々のバックアップロール位置におけるスラスト力による荷重測定誤差や設備損傷への影響がこれまで問題となっていたが、本発明においては、ワークロールの水平たわみを起因とする上下ワークロール接触位置変化により、バックアップロール荷重が変化して、零調精度の悪化を回避することができ、さらには、上下ワークロール間でのスキューの減少やワークロールと分割バックアップロール間でのスキューの減少によるスラスト力を削減することが可能となるので、本発明方法を採用することが特に有効である。すなわち、本発明方法によれば、圧延時の分割バックアップロール測定荷重精度が向上し、さらには、設備損傷を未然に防ぐことができるという顕著な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、この発明を実施する上側のロールアセンブリが軸方向に7分割に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を持つ圧延機の側面図であり、図2は分割バックアップロールの配置を示した平面図である。一方、図3は、上下のロールアセンブリが軸方向に7分割に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を持つ圧延機の側面図である。
なお、図1〜3に例示する板圧延機は、ロールアセンブリが軸方向に7分割に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を持つ圧延機であるが、本発明に係る圧延機の零調方法は、これに限定されず、ロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を持つ圧延機について広く適用することができる。
【0023】
図1における上分割バックアップロール型の板圧延機8は、主圧下装置17および主荷重測定装置18がハウジング9に設けられている。ハウジング9内に上インナーハウジング15および下インナーハウジング45が設けられている。上インナーハウジング15は、主圧下装置17により昇降可能に配されている。
上インナーハウジング15には、上ロールアセンブリ10が設けられている。上ロールアセンブリ10には分割バックアップロール21〜27が配され、上ワークロール13を支持している。
上ワークロールと分割バックアップロールの接触角は、図1におけるX軸のマイナス方向(出側)と分割バックアップロールとの角θとして定義する。つまり、圧延機出側に配置された分割バックアップロール角の余弦は正値をとり、逆に圧延機入側の分割バックアップロール角の余弦は負値をとる。
【0024】
また、各々の分割バックアップロール21〜27には独立した荷重測定装置321〜327および圧下位置検出装置341〜347が配備されている。図中301〜307は、各分割バックアップロール21〜27に独立に配した圧下装置の例である。図2に示すように、3個の入側分割バックアップロール22、24、26と4個の出側分割バックアップロール21、23、25、27とがロール軸方向に交互に配置されている。
そして、下インナーハウジング45には、一体型の下バックアップロール40が設けられ、下ワークロール43を支持している。
【0025】
一方、図3の上下分割バックアップロール型の板圧延機218では、上下が対称で図1の上ロールアセンブリと同様の構造となっており、下インナーハウジング145にも同様に下ロールアセンブリ140が設けられ、下ワークロール143を支持している。
下ロールアセンブリ140は、分割バックアップロール151〜157を備えている。入側分割バックアップロール152、154、156と出側分割バックアップロール151、153、155、157の配置は、図1における上インナーハウジング15および図3における上インナーハウジング115のものと同じである。また、上分割バックアップロール121〜127と下分割バックアップロール151〜157とは上下対称となっている。
【0026】
図1および2のように構成された板圧延機において、本発明の一連の動作をフローチャート化したものを図4に示し、その流れに沿って本発明について説明する。
図4のS01ステップとして、圧延機の寸法から弾性計算を介してワークロール変形マトリクスKijを作成しておく。通常、ワークロール変形マトリクスKijは、第i分割バックアップロールの軸方向位置におけるワークロール垂直方向たわみyとして、以下のように表される。


ただし、qは分割バックアップロールがワークロール垂直方向に作用する荷重、aはワークロールの垂直方向剛体変位一次成分、bはワークロールの垂直方向剛体変位定数項である。
【0027】
ここで、ワークロールは等方弾性体であるため、水平方向の軸心たわみについても同様に表すことができる。つまり、ワークロールの水平方向剛体変位一次成分をc、ワークロールの水平方向剛体変位定数項をdとすると、ワークロールの水平面内軸心たわみxは以下の式で表される。


ただし、qは、分割バックアップロールに作用する水平方向荷重である。
【0028】
この後、S02ステップとして、所定の分割バックアップロール合計荷重もしくは主圧下荷重をあらかじめ設定する。分割バックアップロール合計荷重を用いる方法は請求項1に相当し、主圧下荷重を用いる方法は請求項2に相当する。このとき、主圧下荷重には摩擦等の影響があるため、好ましくは分割バックアップロール合計荷重を用いる方がよく、ここでは、この分割バックアップロール合計荷重をQとおく。

【0029】
次に、S03ステップとしてqtgを求める。この前提条件として、バックアップロールからワークロールに作用する水平方向力とモーメントは釣り合っていなければならない。すなわち、バックアップロール水平方向荷重は以下の条件を満足する。




ただし、qは第i(i=1〜n)分割バックアップロールがワークロールに作用する水平方向(圧延方向、出側のワークロールから作用する力の向きが正)荷重、zは第i分割バックアップロールの軸方向位置である。式(4)はワークロールに作用する力の釣り合いを示し、式(5)はワークロールに作用するモーメントの釣り合いを意味する。
【0030】
ここで、式(3),(4)および(5)を満たし、かつ、ワークロール水平たわみが小さくなるような分割バックアップロール荷重分布を求める。
は、第i番目の分割バックアップロール荷重をq、ワークロールとの接触角をθとすると、以下の式で表される。


ただし、

【0031】
好ましくは、入出側対称となるような分割バックアップロール角とするため、
cosθ=−cosθ=cosθ=−cosθ=…=cosθ
となる。
ここでは、上下ワークロールの水平方向たわみを小さくすることを目的としているため、上下ワークロール間に作用する水平方向力は無視できるとしている。
【0032】
上記式(3)、(4)および(5)の条件下で、式(2)におけるワークロールの水平たわみxを最小とする分割バックアップロール水平方向荷重分布qを求める。算出方法としては、例えばラグランジュの未定定数法で条件付極値問題を解く方法が挙げられる。このようにして得られた分割バックアップロール水平方向荷重分布qから分割バックアップロール圧下方向の荷重分布目標値qtgは、次の式によって(6)式と同様に求まる。


ただし、

【0033】
ここで、ワークロールの水平たわみ量の上下ワークロール径和に対する割合がS08で0.3%以内とする根拠を述べる。上下一方のワークロールが他方のワークロールと相対的に水平方向に移動した場合、ワークロール間の軸心接近量が変化するためにバックアップロール荷重が減少し、これがバックアップロール荷重誤差の要因となる。ワークロールの水平たわみによって変化する上下ワークロール間の単位幅あたりの接触力qは、Fopplの式を用いると下記のように表される(例えば、非特許文献1参照)。

【0034】
ただし、aは上下ワークロール間の軸心接近量で、D1、D2、ν1、ν2、E1、E2はそれぞれ、上ワークロール径、下ワークロール径、上ワークロールポアッソン比、下ワークロールポアッソン比、上ワークロールヤング率、下ワークロールヤング率である。式(10)で表される軸心接近量が変化するため、ワークロール間に作用する荷重qも変化する。
ここで、この荷重変化と軸心接近量aから算出されるワークロールの規格化水平たわみとの関係を(10)、(11)、(12)式および三平方の定理を用いて求めたものを表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
ここで、前記上下ワークロール間の荷重変化は、分割バックアップロール合計荷重の変化で代用することが可能である。
許容されるワークロール水平たわみは必要とする荷重測定精度によって変化するが、例えば測定されるバックアップロール荷重誤差を3%以内に抑える必要がある場合、表1から水平たわみ量は上下ワークロール径の和の割合として、0.3%以内を目標としたバックアップロール圧下方向荷重分布qtgを設定することになる。
【0037】
続いて図4のS04ステップの説明をする。目標となる分割バックアップロール荷重分布qtgを求めた後、分割バックアップロールを事前に規定した圧下位置、好ましくは圧下位置を圧下ストロークの中心などの機械的な中立位置に固定する。しかる後、主圧下でキスロールさせ分割バックアップロール合計荷重Qまで締めこむ。
【0038】
ここでS05ステップとしてqを測定する。この締め込み位置で下記の方法でバックアップロール位置を修正することで、分割バックアップロール荷重qを修正して目標分割バックアップロール荷重を実現する。
目標は(2)のワークロールの水平面内軸心たわみxを小さくすることであるが、xは分割バックアップロール水平方向圧下位置と同義ではない。なぜなら、ワークロールと分割バックアップロールは接触しているため、xは分割バックアップロールの空間位置と同義であるが、分割バックアップロール空間位置は、分割バックアップロール圧下位置から分割バックアップロールに作用する荷重による変形分だけ移動するからである。
【0039】
したがって、この分割バックアップロール系変形マトリクスをKijとおくと、目標となる分割バックアップロール位置は、現在の分割バックアップロール位置を基準とした水平方向の位置修正量Δuとして、以下の式で表される。

【0040】
また、分割バックアップロール圧下方向の位置修正量は、以下の式で表される。


ここで、式(13)右辺のcとdは、左辺の剛体変位成分がゼロとなるように選ぶものとする。この操作は、主圧下荷重もしくは分割バックアップロール合計荷重の大幅な増減を防ぐとともに、Δuの剛体変位成分、つまりワークロール全体の平均的なオフセット(平行移動成分)とスキュー(回転成分)とを最小化するプロセスに相当する。
【0041】
ただし、一般的には分割バックアップロール系変形マトリクスKijは未知である。そこで、Kijが未知の場合は、あるKijをあらかじめ仮定し、分割バックアップロール荷重が目的の誤差範囲内に収束するまで上記の作業を繰返す。Kijについては、実施する圧延機の剛性次第で変化する。
ここで、このマトリクス成分が未知である場合には、次式に示すように各テンソルの対角要素が同一の値を持つものを仮に使用することも可能である。各テンソル要素の単位はmm/KNである。

【0042】
図4のS07ステップとして、式(13)および(14)によって導かれる分割バックアップロール位置修正量uに従い、式(16)のuに従い分割バックアップロール圧下位置を調整することで、各分割バックアップロール荷重は目標荷重qtgとなり、ワークロール水平たわみを最小に抑えることができる。

【0043】
ここで、ステップS08として、目標分割バックアップロール荷重と現状との誤差が0.3%以内となっているかを調べ、目標の荷重に到達したところでステップS09として、この点での主圧下荷重もしくは分割バックアップロール荷重・主圧下位置・分割バックアップロール圧下位置を保存することで、高精度な零調が可能となる。目標に未到達の場合は、図4のS05ステップ、つまり分割バックアップロール荷重測定から上記プロセスを再実行する。
【実施例】
【0044】
使用した圧延機は図1、図2に示すタイプと同じ型であり、その仕様を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
この圧延機の零調において、まず上ワークロールの変形マトリクスKijを作成する。
ここで、分割バックアップロール荷重の測定精度を3%程度の誤差に抑えるため、上下ワークロール径の和140mmと表1における規格化水平たわみから、目標となるバックアップロール荷重qtgをワークロールの水平たわみが0.42mm以内となるように、キスロール締込み水準毎にあらかじめ計算しておく。
【0047】
バックアップロール位置をシリンダストロークの中点にセットし、目標バックアップロール合計荷重になるまで主圧下で締込む。
ここで、締込み時の分割バックアップロール荷重分布を測定する。
現状の分割バックアップロール荷重分布qおよび目標分割バックアップロール荷重分布から、式(13)および(14)を用いて分割バックアップロール位置補正量Δuを求める。ここで、Kijは未知であったため、式(15)と同様のテンソルを仮定した。
分割バックアップロール位置修正量Δuに従い、分割バックアップロール位置を変える。
【0048】
現在の分割バックアップロール荷重qと目標値qtgとの誤差が2乗平均誤差で1%以内となるまで上記作業を繰返したところ、3回の作業で誤差が範囲内となり、ワークロールの水平たわみ量を0.42mm以内に抑えた状態を分割バックアップロール圧下位置の基準とし、さらにこのときの主圧下位置、分割バックアップロール合計値から零調を行ったところ、零調時の荷重バラツキが12%程度向上した。
上記の形態は請求項1および2に係る形態であり、請求項3および4についても全く同様の操作方法となる。
【0049】
また、請求項5および6については、上下どちらかの分割バックアップロールを動作させる場合は、請求項1および2と同様の操作になる。一方、請求項5および6において、上下分割バックアップロールを同時に動作させることにより、上下共にワークロール水平たわみを小さく抑えることが出来る。このとき、ワークロール変形マトリクスは上下を結合させた形となり、以下の式で表すことが出来る。


ただし、Kは上ワークロール変形マトリクスで、Kは下ワークロール変形マトリクスである。同様に、バックアップロール荷重qおよびバックアップロール位置uは、上バックアップロール荷重および位置ベクトルの下に、下バックアップロール荷重および位置ベクトルを配置すればよく、目標となる上下バックアップロール圧下位置が同時に求まる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明における上分割バックアップロールを備えた圧延機の側面図である。
【図2】図1に示す分割バックアップロールの配置を示す平面図である。
【図3】本発明における上下分割バックアップロールを備えた圧延機の側面図である。
【図4】本発明実施例のフローを示したものである。
【符号の説明】
【0051】
8 上分割バックアップロール型板圧延機
9 ハウジング
10 ロールアセンブリ
13、43 ワークロール
15、45 インナーハウジング
17 主圧下装置
18 主荷重測定装置
21〜27 上分割バックアップロール
301〜307 上分割バックアップロール圧下装置
321〜327 上分割バックアップロール荷重測定装置
341〜347 上分割バックアップロール圧下位置測定装置
40 下分割バックアップロール
218 上下分割バックアップロール型板圧延機
219 ハウジング
110、140 ロールアセンブリ
113、143 ワークロール
115、145 インナーハウジング
117 主圧下装置
118 主荷重測定装置
121〜127 上分割バックアップロール
401〜407 上分割バックアップロール圧下装置
421〜427 上分割バックアップロール荷重測定装置
441〜447 上分割バックアップロール圧下位置測定装置
151〜157 下分割バックアップロール
601〜607 下分割バックアップロール圧下装置
621〜627 下分割バックアップロール荷重測定装置
641〜647 下分割バックアップロール圧下位置測定装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一方のロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される分割バックアップロールのあるアセンブリ側のワークロール軸心たわみの変形マトリクスであるワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための分割バックアップロール合計荷重を決定し、
前記分割バックアップロール合計荷重を用い、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
上下一方の分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定して圧延機のキスロール状態で所定の分割バックアップロール合計荷重まで締め込み、
締込み時の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる分割バックアップロール荷重分布との差から分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および分割バックアップロール圧下位置を零点として、分割バックアップロール合計荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法。

【請求項2】
上下一方のロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される分割バックアップロールのあるアセンブリ側のワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための主圧下荷重を決定し、
前記主圧下荷重を用いて、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
上下一方の分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定して圧延機のキスロール状態で所定の主圧下荷重まで締め込み、
締込み時の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる分割バックアップロール荷重分布との差から分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および分割バックアップロール圧下位置を零点として、主圧下荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法。

【請求項3】
上下ともにロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、上下一方の前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される前記各装置を備えた側のワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための分割バックアップロール合計荷重を決定し、
前記分割バックアップロール合計荷重を用い、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定し、圧延機のキスロール状態で所定の分割バックアップロール合計荷重まで締め込み、
締込み時の上下一方の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる上下一方の分割バックアップロール荷重分布との差から求めた分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該分割バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および上下一方の分割バックアップロール圧下位置を零点として、分割バックアップロール合計荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法。

【請求項4】
上下ともにロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、上下一方の前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される前記各装置を備えた側のワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための主圧下荷重を決定し、
前記主圧下荷重を用いて、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定し、圧延機のキスロール状態で所定の主圧下荷重まで締め込み、
締込み時の上下一方の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる上下一方の分割バックアップロール荷重分布との差から求めた分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該分割バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および上下一方の分割バックアップロール圧下位置を零点として、主圧下荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法。

【請求項5】
上下ともにロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、上下ともに前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される上下両方のロールアセンブリのワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための分割バックアップロール合計荷重を決定し、
前記分割バックアップロール合計荷重を用い、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる上下分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
上下分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定し、圧延機のキスロール状態で所定の分割バックアップロール合計荷重まで締め込み、
締込み時の上下の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる上下の分割バックアップロール荷重分布との差から分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該分割バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および上下の分割バックアップロール圧下位置を零点として、分割バックアップロール合計荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法。

【請求項6】
上下ともにロールアセンブリが軸方向に3分割以上に分割された分割バックアップロールによってワークロールを支持する機構を有し、上下ともに前記各分割バックアップロールにそれぞれ独立した圧下装置、荷重測定装置及び圧下位置測定装置を備えた圧延機における零調方法において、
圧延機の寸法から規定される上下両方のロールアセンブリのワークロール変形マトリクスを作成し、
零調のための主圧下荷重を決定し、
前記主圧下荷重を用いて、力とモーメントのつり合いを保ち、かつ、ワークロールの水平面内たわみが十分小さくなる、目標となる上下分割バックアップロールの荷重分布を、前記ワークロール変形マトリクスを用いてあらかじめ求めておき、
上下分割バックアップロールの圧下位置を事前に決定した位置に仮固定し、圧延機のキスロール状態で所定の主圧下荷重まで締め込み、
締込み時の上下の分割バックアップロール荷重を測定し、
前記目標となる上下の分割バックアップロール荷重分布との差から分割バックアップロール位置修正量を求めて、当該分割バックアップロール位置修正量に従い分割バックアップロール位置を修正し、
当該ロール位置修正によって目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現させた主圧下位置および上下の分割バックアップロール圧下位置を零点として、主圧下荷重と共に記憶することを特徴とする圧延機の零調方法。

【請求項7】
ワークロールの水平たわみ量の上下ワークロール径和に対する割合が0.3%以内となるような分割バックアップロールの荷重分布をあらかじめワークロール変形マトリクスを用いて求めておき、この目標となる分割バックアップロール荷重分布になるように、分割バックアップロール荷重を測定しながら圧下位置を調整し、目標となる分割バックアップロール荷重分布を実現する主圧下位置および分割バックアップロール圧下位置を零点として、主圧下荷重もしくは分割バックアップロール合計荷重と共に記憶することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧延機の零調方法。

【請求項8】
前記分割バックアップロール位置を修正する際に、バックアップロール位置修正量をバックアップロール荷重の目標値と測定値との差、ワークロール変形マトリクスとともに、仮定したバックアップロール系変形マトリクスに基づいて算出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧延機の零調方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate