説明

圧縮可能/拡張可能な医療用移植製品および止血方法

止血の適用において有用な拡張されたコラーゲン性の材料が記載される。特定の拡張されたコラーゲン性の材料は、第1のコラーゲン性の材料を拡張させるのに有効な条件下で第1のコラーゲン性の材料をアルカリ性物質で処理すること、その拡張された材料を回復させること、拡張された材料を処理して発泡体を提供すること、および発泡体を化学的に架橋することで、調製することができる。拡張された材料は、移植されると、有益な弾力性、持続性および組織生成特性を示すことができ、圧縮されると元の体積よりも小さくなることでき、その後元の体積を実質的に回復する非常に多孔質の医療用移植体の形成に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
この出願は2008年6月20日に出願された米国仮特許出願第61/074,441号の利益を主張し、ここにその全体を引用により援用する。
【0002】
背景
この発明は、概括的には、改善された細胞外マトリックス材料、およびある局面においては、物理的に改変された細胞外マトリックス材料、それらから調製される医療装置、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
生物材料は、関節修復および置換;歯周部再構築;損傷した、疾患のある、または奇形である骨および組織の修復もしくは置換;創傷治癒;ならびに熱傷および糖尿病性潰瘍の処置を含む、さまざまな医療適用に用いられてきた。細胞外マトリックス(ECM)材料は、粘膜下組織および他の組織由来のものを含んでおり、これらの医療適用に用いられる公知の組織移植片材料である。たとえば、米国特許第4,902,508号、第4,956,178号、第5,281,422号、第5,372,821号、第5,554,389号、第6,099,567号、および第6,206,931号を参照されたい。これらの材料は、典型的には、たとえば、小腸、胃、膀胱、皮膚、心膜、硬脳膜、筋膜などを含むさまざまな生物源に由来する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
収集された動物性ECM材料に由来し、患者に移植された際に必要な物性および生物学的性能特性を有する最終的な医療製品を得ることには、さまざまな課題がある。したがって、改善された、および代替的な生物材料および医療製品、ならびにそれらの調製方法および使用方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
この発明のさまざまな局面のうちのいくつかにおいて、この発明は、移植持続性、組織生成、圧縮性および/または拡張性、および/または他の物性もしくは生物学的特性、ならびにそれらの調製方法および使用方法に関する有益な特性を呈する独自のコラーゲン性のマトリックス材料を特徴とする。望ましいマトリックス材料は、変性し、拡張された細胞外マトリックス材料を含み、移植された時の持続能力を持っており、マトリックス内への血管構造の内部成長を促進する。
【0006】
一実施形態では、この発明は、止血の適用を伴う組織生検方法であって、生検サンプルを患者の中のある位置から除去すること、および止血生検栓をその位置に移植することを含み、生検栓が、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成される弾力のある発泡体本体を含んでいる、方法を提供する。ある形態では、その方法は、生検装置を患者の組織内に前進させること、生検サンプルを組織内のある位置から切断すること、生検サンプルを患者から除去すること、および止血生検栓をその位置に移植することを含むことができる。
【0007】
この発明の別の実施形態は、組織生検部位で受け入れられるようにサイズ決めされた弾力のある止血細胞外マトリックス発泡体本体を含む止血組織生検栓製品であって、発泡体栓が、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成され、発泡体栓は、約5mmを超えない最大断面寸法を有する圧縮状態に圧縮可能であり、かつ少なくとも約10mmの最大断面寸法を有する拡張状態に拡張可能である、止血組織生検栓製品を提供する。好ましくは、この栓は1分未満で圧縮状態から拡張状態に拡張する能力により特徴付けられる。
【0008】
別の実施形態では、この発明は、生検部位を止血するための製品であって、内腔を有する挿管された装置を含み、挿管された装置が組織生検部位に前進可能である、製品を提供する。この製品は、さらに、ここに記載の止血組織生検栓を、その内腔の中に受け入れて、含む。
【0009】
別の実施形態では、この発明は、手術部位の止血方法であって、患者のある部位の組織を、その部位において出血を引起すことになるように外科的に処置すること、および止血細胞外マトリックス発泡体をその部位に適用して止血を引起すことを含み、発泡体が、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成されている、方法を提供する。
【0010】
さらなる実施形態では、この発明は、止血の適用を伴う、患者の実質組織の外科的除去方法であって、患者のそれぞれ腎臓または肝臓において出血を引起すことになるように患者に対して部分的腎切除または肝切除を行なうこと、および止血細胞外マトリックス発泡体を腎臓または肝臓に適用して止血を生じさせることを含み、発泡体が、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成されている、方法を提供する。
【0011】
この発明は、また、圧縮可能な医療用発泡体製品の調製方法であって、アルカリ性媒体を用いて拡張された細胞外マトリックス材料を凍結乾燥させることにより、凍結乾燥させた細胞外マトリックス材料発泡体を形成すること、およびその凍結乾燥させた発泡体を架橋剤と接触させることにより、架橋された発泡体を形成することを含む、方法を提供する。ある実施形態では、そのような方法は、拡張された細胞外マトリックス材料を洗浄する工程、拡張された細胞外マトリックス材料を成形型に投入する工程、拡張された細胞外マトリックス材料を成形型において凍結乾燥させることにより、凍結乾燥させた細胞外マトリックス材料発泡体を形成する工程、凍結乾燥させた細胞外マトリックス材料発泡体を化学架橋剤と接触させることにより、架橋された細胞外マトリックス材料発泡体を形成する工程、および架橋された細胞外マトリックス材料発泡体を乾燥させる工程を含むことができる。
【0012】
拡張された細胞外マトリックスコラーゲン材料を産生するのに有効な条件下でアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス固体材料を用いて形成される、乾燥させた圧縮可能な発泡体本体を含み、この発泡体本体が、発泡体本体の弾力を増大させるのに十分な化学的架橋を導入している、圧縮可能な医療用発泡体製品も、提供される。
【0013】
この発明のさらなる局面ならびに特徴および利点は当業者にはこの明細書から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは、拡張された小腸粘膜下組織材料の表面の100×倍率で撮られた顕微鏡写真を示す。図1Bは、拡張されていない小腸粘膜下組織材料の表面の100×倍率で撮られた顕微鏡写真を示す。図1Cは、拡張された小腸粘膜下組織材料の断面の100×倍率で撮られた顕微鏡写真を示す。図1Dは、拡張されていない小腸粘膜下組織材料の断面の100×倍率で撮られた顕微鏡写真を示す。
【図2A】ここに記載される止血医療製品を送達するのに有用な装置の透視図である。
【図2B】止血製品が装置から部分的に展開されている、図2Aに示される装置の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
この発明のさまざまな局面に対する理解を促す目的で、ここである実施形態を参照し、具体的な文言を用いてそれを記載する。しかしながら、この発明の範囲の限定はそれによっては意図されないことが理解される。ここに記載される例示的な材料、構成物または方法、およびここに記載されるこの発明の原理のさらなる適用における如何なる変更ならびにさらなる改変も、この発明が関連する技術分野の当業者にとっては通常生ずるであろうように企図される。
【0016】
上に開示されるように、この発明のある局面は、止血方法およびその方法に有用な材料、ならびに圧縮状態に圧縮可能でありかつその圧縮状態から弾力的に拡張可能である発泡体またはスポンジ状の装置を含む。その装置の調製方法および使用方法も、ここに開示されるこの発明の局面を構成する。
【0017】
発明的な製品および方法が開示される。それらによって、改変された物理的特性が、制御されたアルカリ性物質との接触によって、細胞外マトリックス材料に与えられる。注目に値することには、そのような処理を用いることで、細胞外マトリックス材料の実質的な拡張(つまり約20%を超える拡張)を促進することができる。この発明のある局面に従うと、この拡張された材料は、さまざまな有用な医療用材料および医療装置に加工される。ある実施形態では、この材料を、その元の容積の少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、またはさらには少なくとも約6倍に拡張させることが好ましい。当業者には、拡張の大きさは、とりわけ、アルカリ性物質の濃度、アルカリ性物質の該材料に対する暴露時間、および温度に、関係することが明らかとなる。ここにおける本開示を考慮して、ルーチンな実験を行うことで、所望のレベルの拡張を有する材料を達成するように、これらの要素を変更することができる。その拡張された材料は、たとえばここでさらに論じられる止血方法ならびに新規な材料および装置形態の調製において用いることができる。
【0018】
コラーゲン細線維は、トロポコラーゲン分子が4分の1ずつずれて配列されたものからなる。トロポコラーゲン分子自体は、3つのポリペプチド鎖が共有分子内結合および水素結合によって結合されて3本鎖螺旋を形成したものから形成される。加えて、共有分子間結合は、コラーゲン細線維内における異なるトロポコラーゲン分子間に形成される。しばしば、複数のコラーゲン細線維が互いに集まってコラーゲン線維を形成する。ここに記載される材料に対するアルカリ性物質の添加は、分子内結合および分子間結合を著しく破壊はしないが、該材料をある程度変性させて、該材料の厚みを、自然の厚みの少なくとも2倍にすると考えられている。この点に関し、コラーゲン性の材料を上記の程度にまで変性させることで、新規なコラーゲン性のマトリックス材料の産生を可能にする。このコラーゲン性のマトリックス材料はコラーゲン性の動物組織層に由来する無菌の処理されたコラーゲン性のマトリックス材料を含む。このコラーゲン性の動物組織層は自然の厚みを有し、自然の分子内架橋および自然の分子間架橋を有するコラーゲン細線維網を含む。自然の分子内架橋および自然の分子間架橋は、無菌の処理されたコラーゲン性のマトリックス材料において十分に保持されて、無菌のコラーゲン性のマトリックス材料が無傷のコラーゲン性のシート材料のように維持される。無傷のコラーゲン性のシート材料の中にあるコラーゲン細線維は、その無傷のコラーゲン性のシート材料の厚さが、コラーゲン性の動物組織層よりも実質的に大きい程度(つまり少なくとも約20%大きい)、好ましくはコラーゲン性の動物組織層の自然の厚みの少なくとも2倍程度になるまで変性される。
【0019】
ここで、図面については、図1A〜図1Dは、コラーゲンの含有量および構造を可視化できるように染色した、拡張された細胞外マトリックス材料シートおよび拡張されていない細胞外マトリックス材料シート(豚の小腸粘膜下組織)の表面および断面を示す。示される4つの顕微鏡写真は以下のとおりである:(1A)拡張されたECMシート材料の表面、(1B)拡張されていないECMシート材料の表面、(1C)拡張されたECMシート材料の断面、および(1D)拡張されていないECMシート材料の断面である。顕微鏡写真に示されるように、拡張されていない材料の表面および断面は緊密に結合したコラーゲン性の網を示し、一方、拡張された材料のものは、変性しているがまだ無傷であるコラーゲン性の網を示しており、その結果、材料が拡張している。
【0020】
再構築可能なコラーゲン性の材料の拡張を引き起こすことに加えて、アルカリ性物質の適用は、図1A〜図1Dに示されるように、材料のコラーゲンパッキング特性を変化させることができる。そのような材料の特性の変化は、少なくとも部分的には、緊密に結合したコラーゲン性の網の破壊によって引き起こされ得る。緊密に結合したコラーゲン性の網を有する拡張されていない再構築可能なコラーゲン性の材料は、典型的には、図に示されるようにたとえば100x倍率で見ても実質的に一様な連続面を有する。対照的に、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、表面が、典型的には、連続しておらず、コラーゲンの鎖または束の間の実質的な間隙によって分離される多くの領域に、そのコラーゲンの鎖または束が存在している点で、非常に異なる表面を、典型的には有する。その結果、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、典型的には、拡張されていない再構築可能なコラーゲン性の材料よりも多孔質であるように見える。さらに、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の有孔率が増大していることは、たとえば、水または他の流体通過に対する透過度を測定することで示され得る。拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料が有する、より泡状でありかつ多孔質の構造によって、医療用材料および医療装置の調製における使用のためのさまざまな泡状形状に、該材料を容易に型に取ることができる。それは、さらに、材料の圧縮およびその後の拡張を可能にし、それは、たとえば、材料を展開装置に装填して患者の中に送達することが必要であるようなときに役立つ。一旦送達されると、材料はその元の形状に拡張し得る。
【0021】
上記のように、拡張されていない再構築可能なコラーゲン性のECM材料は、典型的には、たとえば、増殖因子、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、核酸および脂質を含むさまざまな生理活性成分を含む。材料を、ここに記載される条件下で、アルカリ性物質を用いて処理することにより、これらの生理活性成分を該材料から、完全に除去しないとしても、著しく低減し得る。実際、再構築可能なコラーゲン性の材料をアルカリ性物質を用いて処理することは、増殖因子、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、核酸および脂質を実質的に有さない再構築可能なコラーゲン性の材料をもたらす結果となり得る。したがって、ここに記載されるようにアルカリ性物質を用いた再構築可能なコラーゲン性の材料の処理により、該材料をその元の体積の少なくとも約2倍まで拡張させることができ、該材料の表面および/または有孔率特性を変化させることができ、該材料からある生理活性成分を枯渇させることができる。ある実施形態では、このことを達成する一方で、該材料を無傷のコラーゲン性のシートとして維持し、さらに、このシートを、さまざまな医療用材料および/または医療装置のうちの任意のものに加工し得る。さらに、ECMシート等の再構築可能なコラーゲン性の材料は、ここに記載されるようにそれを拡張させるようアルカリ性媒体で処理され得、その一方で、該材料は、原料組織に生来存在するFGF−2等の増殖因子、またはフィブロネクチンおよび/もしくはヘパリン等の他の生理活性成分を一定量、ECMもしくは他のコラーゲン性の材料のために保持する。
【0022】
ある実施形態では、再構築可能なコラーゲン性の材料から先に除去された生理活性成分のうち選択されたものを、該材料に戻し得る。たとえば、この発明は、核酸および脂質が実質的にないが、1つ以上の増殖因子、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、またはそれらの組合せを補充した、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を提供する。これらの生理活性成分は任意の好適な方法で該材料に戻され得る。たとえば、ある形態では、これらの成分を含有する組織抽出物を調製して、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に適用し得る。一実施形態では、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料形態を組織抽出物において十分な時間インキュベーションすることにより、そこに含有される生理活性成分が、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料と会合する。組織抽出物は、たとえば、拡張材料を調製するのに用いられたものと同じ種類である、拡張されていない再構築可能なコラーゲン性の組織から得てもよい。生理活性成分を拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に戻すかまたは与える他の手段としては、当該技術分野において公知である噴霧、含浸、浸漬などが含まれる。一例として、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2)、形質転換増殖因子β(TGFβ)、上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)および/または軟骨由来成長因子(CDGF)等の増殖因子を1つ以上添加することによって改変してもよい。同様に、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩、ヒアルロン酸、フィブロネクチン等の他の生体成分を補充してもよい。このように、一般的に言えば、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、細胞形態、増殖、成長、タンパク質発現または遺伝子発現における変化等の細胞応答を直接的または間接的に誘導する生体成分を含んでもよい。
【0023】
粘膜下組織抽出物の調製は、たとえば、米国特許第6,375,989号に記載されている。簡潔に言うと、粘膜下組織抽出物の調製は、尿素、グアニジン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムまたは界面活性剤のような抽出賦形剤を粘膜下組織に添加することにより生理活性成分をその組織から単離することによって行なわれ得る。次いで、生理活性成分を抽出賦形剤から分離する。好ましい一実施形態では、粘膜下組織抽出物は、粘膜下組織をリン酸緩衝食塩水(PBS)等のリン酸緩衝溶液と混合して調製される。この混合物を緩衝循環(buffer circulation)としてスラリーに加工し、物理的圧力をかける。組織に存在する生理活性成分は溶液に引込まれ、その後、スラリーから単離される。次いで、溶液内の抽出された生理活性成分を、透析および/またはクロマトグラフィ法等の当該技術分野において認められている手順を用いてスラリーから分離することにより、生理活性粘膜下組織抽出物が形成される。好ましくは、抽出溶液を透析することにより、抽出賦形剤の濃度を低減または除去して、抽出された生理活性成分の溶液を提供する。粘膜下組織抽出物を調製するには、いかなる粘膜下組織供給源も用いることができる。さらに、類似の抽出技法を他の再構築可能ECM材料に適用することでも、この発明に用いるための生理活性のある抽出物を得ることができる。
【0024】
粘膜下組織または他の細胞外マトリックス(ECM)抽出物に含有される生理活性成分の性質および量は、抽出溶液に対して用いられる抽出賦形剤の性質および組成に依存する。したがって、たとえば、pH7.4のバッファ中の2Mの尿素では、塩基性線維芽細胞増殖因子およびフィブロネクチンが富化された抽出された粘膜下組織のフラクションが得られ、一方、同じバッファ中の4Mのグアニジンでは、TGF−βに対してある活性プロファイルを示す化合物が富化された抽出された粘膜下組織のフラクションが得られる。他の抽出賦形剤を用いれば、プロテオグリカン、糖タンパクおよびグリコサミノグリカン、たとえばヘパリン、ヘパリン硫酸塩、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸Aおよびコンドロイチン硫酸Bなどを含む生理活性抽出物が得られる。
【0025】
粘膜下組織または他のECM抽出物において与えられるもの等の天然の生理活性成分を組込みに加えて、またはそれに対する代替物として、組換え技術または他の方法によって合成的に産生されるものを含む非天然の生理活性成分を、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に組込んでもよい。これらの非天然の生理活性成分は、ECM組織に天然に生ずるが恐らくは異なる種のものに対応する、天然由来のタンパク質または組換えにより産生されたタンパク質(たとえば、豚等の他の動物に由来するコラーゲン性のECMに適用されるヒトのタンパク質など)であってもよい。非天然の生理活性成分は医薬物質であってもよい。この発明において用いられる拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の中および/または上に組込まれてもよい例示的薬剤物質には、たとえば、抗生物質、血液凝固因子等の血栓促進物質、たとえばトロンビン、フィブリノゲンなどが含まれる。先に記載された生理活性成分のように、これらの物質は、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に対して、製造前ステップとして、手順の直前に(たとえば、セファゾリンのような好適な抗生物質を含有する溶液に該材料を浸すことにより)、または患者に対する該材料の移植中もしくは移植後に、適用してもよい。
【0026】
拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、血管新生の性質を示してもよく、それによって、該材料を移植された宿主に血管新生を誘導するのに有効になる。血管新生促進因子は当該技術分野において周知であり、たとえば、アンジオゲニン、アンギオポエチン−1、Del−1、線維芽細胞増殖因子(酸性および塩基性の両方)、ホリスタチン、果粒球コロニー刺激因子、肝細胞増殖因子、インターロイキン8(IL−8)、レプチン、ミッドカイン、胎盤増殖因子、血小板由来成長因子(PDGF)、プレイオトロフィン、プロリフェリン、形質転換増殖因子(αおよびβの両方)、腫瘍壊死促進因子および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含む。血管新生は、身体が新たな血管を形成して組織への血液供給を増大させる過程である。したがって、血管新生材料は、宿主細胞と接触すると、新たな血管の形成を促進するかまたは促す。生物材料の移植に応答したin vivo血管新生の測定法が最近開発された。たとえば、1つのそのような方法では、皮下移植モデルを用いて、ある材料の血管新生の性質を測定する。C. Heeschen et al., Nature Medicine 7 (2001), No. 7, 833-839を参照されたい。蛍光微小血管撮影技術と組合せると、このモデルは、生物材料への血管新生の測定結果を定量的および定性的の両方で与え得る。C. Johnson et al., Circulation Research 94 (2004), No. 2, 262-268。
【0027】
ここに記載される拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料および組織抽出物は、たとえば、温血脊椎動物、および特に哺乳類に由来する好適な組織供給源から単離されたコラーゲン性の材料から調製される。そのような単離されたコラーゲン性の材料は、再構築可能な特性を有するために、細胞の浸入および内部成長を促進するために、処理することができる。好適な再構築可能材料は、生体栄養特性(biotropic properties)を有するコラーゲン性の細胞外マトリックス(ECM)材料によって提供され得る。
【0028】
好適な生体再構築可能材料は、ある形態においては血管新生性のコラーゲン性の細胞外マトリックス材料を含む、生体栄養特性を有するコラーゲン性の細胞外マトリックス材料(ECM)によって提供され得る。たとえば、好適なコラーゲン性の材料は、粘膜下組織、腎被膜、真皮コラーゲン、硬脳膜、心膜、大腿筋膜、漿膜、腹膜または肝臓基底膜を含む基底膜層等のECMを含む。これらおよび他の同様の動物由来組織層は、ここに記載されるように拡張および処理され得る。これらの目的に対する好適な粘膜下組織材料は、たとえば、小腸粘膜下組織、胃粘膜下組織を含む消化器官系粘膜下組織、膀胱粘膜下組織、および子宮粘膜下組織を含む。
【0029】
この発明において用いられる粘膜下組織または他のECM組織は、たとえば、Cookらに対する米国特許第6,206,931号に記載されるように、高度に精製されている。したがって、好ましいECM材料は、グラム当り約12内毒素単位(EU)未満、より好ましくはグラム当り約5EU未満、最も好ましくはグラム当り約1EU未満の内毒素レベルを示すことになる。さらなる優先事項として、粘膜下組織または他のECM材料は、グラム当り約1コロニー形成単位(CFU)未満、より好ましくはグラム当り約0.5CFU未満のバイオバーデンを有してもよい。真菌レベルは望ましくは同様に低く、たとえば、グラム当り約1CFU未満、より好ましくはグラム当り約0.5CFU未満である。核酸レベルは、好ましくは、約5μg/mg未満、より好ましくは約2μg/mg未満であり、ウイルスレベルは、好ましくは、グラム当り約50プラーク形成単位(PFU)未満、より好ましくはグラム当り約5PFU未満である。米国特許第6,206,931号に教示される粘膜下組織または他のECM組織のこれらおよびさらなる特性は、この発明において用いられる粘膜下組織の特性であってもよい。
【0030】
拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を調製するために、好ましくは、該材料を殺菌剤で処理して、殺菌された、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を産生する。殺菌剤での処置は、再構築可能なコラーゲン性の材料の組織供給源からの単離前もしくは単離後に行なわれ得るか、または拡張前もしくは拡張後に行なわれ得る。1つの好ましい実施形態では、組織原料を水等の溶媒で洗浄し、その後、薄層に裂く前に殺菌剤で処理する。この殺菌後剥離手順に従うことによって、再構築可能なコラーゲン性の材料を殺菌前に剥離することに比べて、再構築可能なコラーゲン性の材料を、付着組織から分離することがより容易となることがわかった。加えて、粘膜下組織層をまずその供給源から薄層に裂き、次いでその材料を殺菌することにより得られる再構築可能なコラーゲン性の材料と比べて、表面上における付着組織および残渣がより少ないという点で、結果として得られた、その最も好ましい形態における再構築可能なコラーゲン性の材料は、優れた組織像を示すことが見出された。さらに、この処理からは、より一様な再構築可能なコラーゲン性の材料を得ることができ、同じかまたは同様の物性および生化学特性を有する再構築可能なコラーゲン性の材料を、各別々の処理工程から、より一貫して得ることができる。重要なことには、より高度に精製された、実質的に殺菌された再構築可能なコラーゲン性の材料がこの処理によって得られる。この点に関し、この発明の一実施形態は、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の調製方法を提供する。この方法は、再構築可能なコラーゲン性の材料を含む組織供給源を提供すること、その組織供給源を殺菌すること、再構築可能なコラーゲン性の材料をその組織供給源から単離すること、および殺菌された再構築可能なコラーゲン性の材料を、再構築可能なコラーゲン性の材料をその元の体積の少なくとも約2倍に拡張させるのに有効な条件下でアルカリ性物質と接触すること、およびそれによって、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を形成することを含む。拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料が形成されると、その材料は、さらに、医療用材料および/もしくは医療装置に加工するか、または、たとえば後で使用するために4℃で高純水中に保存することができる。
【0031】
好ましい殺菌剤は、望ましくは、過酸化化合物等の酸化剤、好ましくは有機過酸化化合物、より好ましくは過酸である。用いられ得る過酸化合物については、これらは、過酢酸、過プロピオン酸または過安息香酸を含む。過酢酸は、この発明の目的に関し、最も好ましい殺菌剤である。そのような殺菌剤は、望ましくは、pHが約1.5〜約10、より好ましくは約2〜約6、最も好ましくは約2〜約4である液体媒体、好ましくは溶液の中で用いられる。この発明の方法においては、殺菌剤は、一般的には、ここに開示される特徴的な精製された粘膜下組織材料、好ましくはバイオバーデンが本質的に0であり、および/または発熱性物質が本質的に存在しないものの回復を与えるような条件および時間で、用いられることになる。この点に関し、この発明の望ましい処理は、組織供給源または単離された再構築可能なコラーゲン性の材料を、殺菌剤を含有する液体媒体に、少なくとも約5分間、典型的には約5分〜約40時間の範囲、より典型的には約0.5時間〜約5時間の範囲で(たとえば浸けるまたは吹き付けて)浸漬させることを含む。
【0032】
使用の際、過酢酸は、望ましくは、約2体積%〜約50体積%のアルコール、好ましくはエタノールの溶液に希釈される。過酢酸の濃度は、たとえば、約0.05体積%〜約1.0体積%の範囲であってもよい。最も好ましくは、過酢酸の濃度は、約0.1体積%〜約0.3体積%である。過酸化水素を用いる際には、その濃度は約0.05体積%〜約30体積%の範囲であり得る。より望ましくは、過酸化水素濃度は約1体積%〜約10体積%であり、最も好ましくは約2体積%〜約5体積%である。溶液は、約5〜約9のpH、より好ましくは約6〜約7.5のpHに緩衝してもよく、あるいはしなくてもよい。これらの過酸化水素濃度は、水、または約2体積%から約50体積%のアルコール、最も好ましくはエタノールの水溶液で希釈することができる。
【0033】
拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を調製するために用いられるアルカリ性物質に関しては、当該技術分野において一般的に公知であるいかなる好適なアルカリ性物質も用いることができる。好適なアルカリ性物質は、たとえば、水性媒体で水酸化物イオンを与える塩または他の化合物を含み得る。好ましくは、アルカリ性物質は水酸化ナトリウム(NaOH)を含む。該材料に添加されるアルカリ性物質の濃度は約0.5M〜約4Mの範囲であり得る。好ましくは、アルカリ性材料の濃度は約1Mから約3Mの範囲にある。加えて、アルカリ性物質のpHは、典型的には、約8〜約14の範囲となる。好ましい実施形態では、アルカリ性物質は、pHが約10〜14、最も好ましくは約12〜約14である。
【0034】
濃度およびpHに加えて、温度および暴露時間のような他の要素も、拡張の範囲に影響することになる。この点において、アルカリ性物質に対する再構築可能なコラーゲン性の材料の暴露は約4℃〜約45℃の温度で行なわれることが好ましい。好ましい実施形態では、この暴露は約25℃〜約37℃の温度で行なわれ、37℃が最も好ましい。さらに、暴露時間は、約数分から約5時間以上の範囲になり得る。好ましい実施形態では、暴露時間は約1時間〜約2時間である。特に好ましい実施形態では、再構築可能なコラーゲン性の材料は、pH14のNaOHの3M溶液に、約37℃の温度で、約1.5〜2時間の間暴露される。そのような処理の結果、再構築可能なコラーゲン性の材料はその元の体積の少なくとも約2倍に拡張する。上に示したように、これらの処理ステップは所望の拡張レベルを達成するよう変更され得る。
【0035】
アルカリ性物質に加えて、脂質除去剤を、さらに、アルカリ性物質の添加の前、添加と組合せて、または添加の後に、再構築可能なコラーゲン性の材料に添加し得る。好適な脂質除去剤は、たとえば、エーテルおよびクロロホルム等の溶媒、または界面活性剤を含む。他の好適な脂質除去剤は当業者には明らかであろう。したがって、ここに挙げられる脂質除去剤は例示に過ぎず、したがって、いかようにも限定するものではない。
【0036】
好ましい実施形態では、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料、および拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に自由選択で添加され得る生理活性成分を含有する組織抽出物は、グルタルアルデヒドによるタンニング、酸性pHでのホルムアルデヒドによるタンニング、エチレンオキシド処理、プロピレンオキシド処理、ガスプラズマ殺菌、γ線放射および過酢酸殺菌を含む従来の殺菌技術を用いて殺菌される。拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の再構築可能特性を有意には変化させない殺菌技術が好ましく用いられる。さらに、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料が、天然または非天然の生理活性成分を含む実施形態では、殺菌技術は、好ましくは、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の生理活性を有意には変化させない。好ましい殺菌技術は、抽出物を、過酢酸、低線量γ線照射(2.5mRad)およびガスプラズマ殺菌に暴露することを含む。
【0037】
この発明の、およびこの発明に用いるための、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、流動可能な水性組成物(たとえば流体化された組成物)、粉末、ゲル、スポンジ、1つ以上のシート、または成型体を含む、いかなる好適な形態にもできる。一実施形態では、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を、たとえば米国特許第5,275,826号に記載される技術を用いて、流体化した組成物に加工する。この点において、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の溶液または懸濁液は、該材料を可溶化して実質的に均質な溶液を形成するのに十分な時間の間、該材料を粉砕および/またはプロテアーゼ(たとえばトリプシンまたはペプシン)で消化することによって調製できる。拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、望ましくは、引き裂くか、切断するか、すり潰すか、せん断(たとえば液体と組合せてブレンダでせん断)するなどして粉砕される。拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、典型的には、スポンジ状の多孔質構造を有する。したがって、これらの技術は、拡張されていない再構築可能なコラーゲン性の材料を可溶化することが必要とされるほどには必要とされないであろう。該材料を冷凍状態または凍結乾燥状態ですり潰すことは有利であるが、該材料の断片の懸濁液を高速ブレンダで処理し、必要であれば、遠心分離および過剰な廃物のデカントによって脱水することでも十分な結果を得ることができる。粉砕された材料は、乾燥、たとえば凍結乾燥をすることで、粒子を形成することができる。この粒子は、そのままで患者たとえば外傷を治療することができ、または水和させ、すなわち水または緩衝食塩水および自由選択で他の薬学的に受入可能な抽出賦形剤と組合せることで、たとえば25℃で約2〜約300,000cpsの粘性を有する、流体化され、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を形成することもできる。この高粘性移植組成物は、ゲルまたはペーストの粘稠度を有し得る。
【0038】
この発明の一実施形態では、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料とは別に形成される粒子状の再構築可能なコラーゲン性の材料は、流体化され、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料と組合せることができる。そのような粒子状の再構築可能なコラーゲン性の材料の調製は、再構築可能な供給源のコラーゲン性の原料を、切断するか、引き裂くか、すり潰すか、せん断するか、または他の態様で粉砕することによって行われ得る。そのような材料は、拡張された材料または拡張されていない材料であり得る。同様に、拡張された粒子または拡張されていない粒子は、止血を促進するよう1つ以上の添加物を含むことができる。好適なそのような添加物は、たとえば、アルギン酸カルシウムまたはゼオライトを含む。そのような添加物は、粒子が移植後に所望の位置(たとえば組織表面)に付着するような接着特性を含み得る。たとえば、約50ミクロン〜約500ミクロンの平均粒子サイズを有する粒子状ECM材料が、流体化され、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に含まれてもよく、より好ましくは約100ミクロン〜約400ミクロンである。再構築可能なコラーゲン性の粒子は、流体化され、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に対して任意の好適な量で添加することができる。再構築可能なコラーゲン性の粒子と、流体化され、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料との好ましい重量比(乾燥固体に基づく)は、約0.1:1〜約200:1、より好ましくは1:1〜約100:1の範囲にある。これらの実施形態では、再構築可能なコラーゲン性の粒子材料は、流体化され、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に対する注入可能な性質、たとえば18〜31ゲージの範囲にあるサイズ(0.047インチ〜約0.004インチの内径)を有する針を介した注入、を有効に保持するようなサイズおよび量で含めることができる。そのような再構築可能なコラーゲン性の粒子を、最終的な、流体化され、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に含ませることによって、組成物(たとえばそれ自体、ここに論じられるような増殖因子または他の生理活性成分を含む)に対して生理活性を与えるか、組織の内部成長のための骨格材料として働くか、および/または圧縮された再構築可能なコラーゲン性の材料の拡張を促進するよう機能することができる、さらなる材料を与えることができる。さらに、流体化され、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料、および再構築可能なコラーゲン性の粒子材料の両方を含むその材料は、選択肢として、両方の材料を組込む乾燥させた製品、たとえば、止血、閉塞または他の目的のために用いることができ、選択肢として、ここに開示されるように架橋された、乾燥発泡製品を、形成するように処理することができる。
【0039】
市販製品は、これらの形態の、流体化され、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料のうちの任意の形態、たとえば、(i)水性媒体中で再構成されることによりゲルを形成できる包装された無菌粉末、または(ii)拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料成分を含む、包装された無菌水性ゲルまたはペースト組成物を、構成してもよいことが企図される。この発明の一実施形態では、医療用キットは、包装された無菌の乾燥させた(たとえば凍結乾燥した)拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料粉末、および別途包装された無菌の水性再構成媒体を含む。使用に際しては、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料粉末は、再構成媒体とともに再構成されることによりゲルを形成できる。
【0040】
ここに記載されるように、ある拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料から調製される、流体化された組成物を、自由選択的に乾燥させて、スポンジ状固形材料または発泡材料を形成することができる。拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料ゲルを乾燥させて調製されるこの発明の乾燥したスポンジ形態または発泡形態の材料は、たとえば、創傷治癒、組織再建適用、閉塞適用、止血適用で、細胞培養物で、およびここにおいて他に開示されるものを含むさまざまな追加適用で用いることができる。
【0041】
拡張された再構築可能なコラーゲン性のECM材料がシート状で与えられるこの発明の実施形態では、この材料は、約0.2mm〜約2mmの範囲、より好ましくは約0.4mm〜約1.5mm、最も好ましくは約0.5mm〜約1mmの範囲の厚みを有し得る。必要であれば、または所望される場合には、多層積層材料を用いることができる。たとえば、拡張された再構築可能なコラーゲン性のECM材料からなる複数の(つまり2つ以上の)層を結合するか、または他の態様で連結することにより、多層積層構造を形成することができる。例示的に、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料からなる2つの層、3つの層、4つの層、5つの層、6つの層、7つの層、8つの層またはそれより多い層を結合して多層積層材料を提供することができる。ある実施形態では、温血脊椎動物の消化器系組織、特に小腸組織から単離された、2つから6つの拡張された粘膜下組織含有層を結合して医療用材料を提供する。この目的に対しては、豚由来の小腸組織が好ましい。代替的実施形態では、拡張されていないコラーゲン性の材料(たとえば粘膜下組織)の1つ以上のシートを、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の1つ以上のシートに結合するかまたは他の態様で連結することができる。この目的に対しては、いかなる数の層をも用いることができる。拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の任意の数の層に対して、結合される拡張されていない再構築可能なコラーゲン性の材料の任意の数の層という任意の好適な態様で配置することができる。コラーゲン性の組織の層の結合は、ここに記載されるような接着剤、糊もしくは他の結合剤、化学薬品もしくは放射(UV放射を含む)を用いる架橋、またはこれらをこれらもしくは他の好適な方法と任意に組合せたものを用いて、加熱条件下、非加熱条件下または凍結乾燥条件下での脱水加熱結合を含む、任意の好適な態様で行なうことができる。
【0042】
さまざまな脱水誘導結合法を用いて、多層状の医療用材料の部分を融合することができる。1つの好ましい実施形態では、複数層の材料は脱水条件下で圧縮される。「脱水条件」という語は、多層状の医療用材料からの水分の除去を促進または誘導するような任意の物理的条件または環境的条件を含むことができる。圧縮された材料の脱水を促進するために、マトリックス構造を圧縮する2つの層のうちの少なくとも1つは透水性とすることができる。材料の脱水は、自由選択的に、吸い取り材料を適用するか、マトリックス構造を加熱するか、または空気もしくは他の不活性ガスを圧縮表面の外部にわたって吹付けることで、さらに向上させることができる。多層状の医療用材料を脱水結合する1つの特に有用な方法は、凍結乾燥、つまりフリーズドライ条件または蒸発冷却条件である。
【0043】
他の脱水結合法は、アセンブリに対して真空引きを行ない、その一方で同時にそのアセンブリを押圧することを含む。この方法は真空プレスとして公知である。真空プレス中において、多層状の医療用材料を互いに対して強制的に接触させた状態で脱水することは、たとえ結合させる他の作用剤がなくても、材料を互いに対して効果的に結合する。しかし、少なくとも部分的に脱水誘導結合を利用しながらそのような作用物剤を用いることもできる。十分な圧縮および脱水によって、多層状の医療用材料が概して一体的な積層構造を形成することができる。
【0044】
この発明のある局面においては、この発明の多層状の医療用材料、たとえば、存在する天然コラーゲン構造および潜在的生理活性成分に対する有害な影響を最小限にするような相対的に穏やかな温度暴露条件下で乾燥作業を行なうことが有利である。このように、ヒトの体温より高い温度またはそれよりわずかに高い温度(たとえば、約38℃を超えない温度)の暴露期間が全くないかまたは実質的に全くない状態で行なわれる乾燥作業が、この発明のある形態において好ましく用いられる。これらの乾燥作業には、たとえば、約38℃未満の真空プレス動作、約38℃未満の強制空気乾燥、または積極的な加熱を伴わない(ほぼ室温(約25℃)で、または冷却しながら)これらの処理のいずれかが含まれる。相対的に低温の条件には、もちろん、凍結乾燥条件も含まれる。2つ以上の多層状の医療用材料を結合して積層を形成する上記の手段は、1つ以上の層の腹膜または筋膜が互いから独立して単離される場合にそれらの層を結合することに対しても適用され得ることが理解される。
【0045】
上記に加えて、この発明の拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を用いることにより、たとえば、閉塞装置(occluder device)または生検栓(biopsy plug)として有用なスポンジのための成形または形状化された構成物を調製することができる。そのような装置の調製方法は、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を提供すること、その拡張された材料を粉砕すること(たとえば、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の層断片を提供すること)、その粉砕された、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料をある型で成型すること、およびその成型された、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を冷凍および凍結乾燥させて構成物を形成することを含む。冷凍は約−80℃の温度で約1時間〜約4時間の間行なうことができ、凍結乾燥は約8時間〜約48時間の間行なうことができる。典型的には、この構成物を調製するために用いられる材料は、1つ以上の生理活性成分を自由選択的に補充され得る、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料である。拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を任意の所望の型、たとえば、あるサイズおよび形状に成型することにより、閉鎖が必要な特定の領域を閉鎖するか、または止血を促進することができる。ある好ましい実施形態では、生検栓を形成し、たとえば、手術後の組織(たとえば臓器組織)の中の空間を充填するために用いられる。スポンジ形態の構成物を調製する場合には、凍結乾燥された、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を、圧縮して、患者の中に送達するための展開装置の中に装填することができる。送達されると、展開装置は拡張して、それが展開される領域を閉塞または止血することができる。好適な展開装置は当業者には一般的に公知であり、たとえば、デリバリカテーテルなどのような管状装置が含まれる。
【0046】
ある実施形態では、圧縮された材料の再拡張を促進するために、1つ以上の添加物を、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に加えることが望ましいかもしれない。任意の好適な添加物が用いられ得る。好適な添加物は、たとえば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム等の塩類; アルギン酸塩、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等のヒドロゲルおよび水膨潤性ポリマー;ゼラチンおよびSIS粒子等のタンパク質;酢酸およびアスコルビン酸等の酸および塩基;ポリアクリル酸、ペクチン、ポリガラクツロン酸、アクリル酸・アクリルアミド共重合体、イソブチレン・マレイン酸共重合体等の超吸収性ポリマーおよびゲル化剤;デキストラン、グルコース、フルクトース、蔗糖、蔗糖エステル、ラウリン酸スクロース、ガラクトース、キトサン、ポリN−アセチルグルコサミン、ヘパリン、ヒアルロナンおよびコンドロイチン硫酸塩等の単糖類、多糖類およびその誘導体;ならびにグアニジン塩酸塩、尿素、ヒドロキシエチルセルロース、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、イオン性界面活性剤(例えばSDS)および非イオン性界面活性剤(例えばトリトン)等の他の考えられ得る添加物を含む。好ましい実施形態では、1つ以上の添加物は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウム等の生体適合性のある塩;ポリエチレングリコール(例えばMW 6000)、および/またはSISもしくは他のECM粒子を含む。
【0047】
ここに記載される乾燥させた拡張材料を送達するのに有用な例示的展開装置および手順の簡単な概観について、ある局面に関する図2Aおよび図2Bを参照して、説明する。展開システム20は、たとえばカテーテル、外筒またはここに記載される止血栓24を収容および送達するよう用いることができる他の管などの、挿管された装置21を含むことができる。たとえば、栓24が中に収容された挿管された装置21は、別の器具22を介して操作され得る。器具22は、たとえば、腹腔鏡、内視鏡(たとえばネフロスコープを含む)を含むさまざまな手術器具、または外側脈管アクセスもしくは送達外筒のうちのいずれでもよい。器具22が内視鏡器具である実施形態では、器具22は、もちろん、典型的には、その中を通って延在するさらなる通路またはチャネルも含み、たとえば、光ファイバ光入力、視覚機能(たとえばテレスコープまたはカメラを伴う)などを与えることになる。これらの実施形態では、内視鏡の洗浄チャンネルまたは他の作業チャネルを用いて、栓24を標的部位に送達するために、挿管された装置21を送り得る。
【0048】
反対力要素および/または押し出し要素23を、挿管された装置21の内腔内に設けることにより、栓24を、挿管された装置21の開いた遠端から送達することを促進することができる。要素23を装置21内において前進させることにより栓24を装置21から押し出すか、または要素23を栓24に対してそのままの場所に保持して、その間に装置21を後退させて栓24を装置21から送るか、またはこれら2つの機能の組合せを用いることができる。代替的実施形態では、他の方法を用いて栓24を挿管された装置21から送ってもよく、それは、一例として、液体を圧力下で用いることにより栓24を挿管された装置21の開いた端部から押し出すことを含んでもよい。
【0049】
例示的に、栓24を、挿管された装置21内に装填し、止血のための部位(たとえば生検部位、または経皮的接近手順の結果である軟組織を通る針路内)において展開するか、または他の態様では、患者の外部に位置決めされ、挿管された装置21および反対力/押し出し要素23の相対位置を制御する1つ以上のアクチュエータ部材を用いることにより、身体の通路または空隙内で展開することができる。1つ以上のアクチュエータ部材は、装置21および/または要素23に対して直接、または当該技術分野において公知の制御有線(control wired)、ロッドもしくは他の好適な部材を介して接続されてもよい手動で操作可能なトリガ、回転可能ノブまたは他の要素を含むことができる。ある実施形態では、システム20は、栓24を段階的に展開する1つ以上のアクチュエータ部材を有すことができ、それによって、アクチュエータの第1の手動動作は栓24の所定の割合を挿管された装置21の開いた端部から制御可能に送出して、栓24を部分的に送出された状態に留め、アクチュエータの第2の手動動作によって、栓24のさらなる割合が挿管された装置の開いた端部から送出される。システムは、アクチュエータのさらなる複数動作で栓を完全に送出すよう設計されてもよいが、そのさらなる割合は、好ましくは栓24の残りの部分全体である。ある実施形態では、アクチュエータ部材の第1の動作により、挿管された装置21の端部から栓24の全長の約10%から約70%を展開し、アクチュエータの第2の動作により、栓24の残りの部分を挿管された装置から送出す。
【0050】
この発明において用いられる、送達外筒、挿管された装置、および押し出し要素を含む展開装置は、すべて、従来の市販製品かまたはその修正物であり得る。たとえば、外筒は、PTFE(たとえばテフロン(登録商標))、ポリアミド(たとえばナイロン)もしくはポリウレタン材料、またはPTFEからなる内側層、PTFE上に設けられる捩じれ抵抗のための平坦なワイヤコイル、およびポリアミド(ナイロン)外側層を含み、全体構造に統合性を与え、および滑らかな表面を与えるアセンブリのような材料の組合せ(たとえばFlexor外筒(Cook, Inc.)におけるような)であってよい。押し出し要素は、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタンもしくはビニール、ステンレス鋼、またはこれらの材料の任意の組合せ等の従来の材料から形成することができる。カテーテルは、ポリエチレン、ポリアミド、PTFE、ポリウレタンおよび他の材料等の従来の材料から形成することができる。
【0051】
ここに記載される拡張された材料は、送達前に圧縮され、カテーテルからの展開後、それが身体の通路もしくは内腔、生検部位または他の外科的に形成された内腔の内表面に接触するまで拡張することができる。一部の発明的なインプラントは、通路または内腔から、またはその中で、装置の望ましくない移動を軽減するように、1つ以上の固定適合物(図示せず)を組入れることになるが、ある設計では、この拡張および接触は、展開の後、身体の通路または内腔内におけるある特定の位置に材料を維持するよう十分なものとなる。いくつかの例では、拡張された材料の一部は、展開時に、内腔または通路を取囲む組織内に埋込まれてよい。かえし、フック、リブ、突起および/または他の好適な表面修正物等の固定適合物を任意の数、発明的装置に組込むことにより、それらを展開中、および/または展開後に固定し得る。
【0052】
ここに記載される止血製品は、任意の好適な長さであることができ、一般的には、たとえば手術部位など所望の位置で止血を達成するよう十分な寸法のものとなる。ある実施形態では、ある装置は、移植された形態において、少なくとも約0.4cmの長さを有することになり、多くの場合では、約1cm〜約30cm、より典型的には約2cm〜約15cmの範囲の長さを有することになる。
【0053】
上に注記されるように、1つ以上の添加物は、一旦患者に移植されると材料の拡張を促進することを含む、さまざまな機能を与えることができる。たとえば、1つ以上の添加物を含むスポンジ形態の拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、圧縮されて送達装置内に配置することができる。材料の圧縮により、材料は患者により容易に送られる。送達されると、材料は少なくともおよそその圧縮前の元の大きさに拡張し得る。これは、材料が送達前により小さな直径を有し、送達で拡張することが望ましい場合には、典型的には、閉塞装置または生検栓を用いて行なわれる。そのような添加物を再構築可能なコラーゲン性の材料に含ませることにより、その材料を、1つ以上の添加物がない場合に他の態様で達成可能であろうよりも速い速度で拡張させることができる。たとえば、1つ以上の添加物を、圧縮された再構築可能なコラーゲン性の材料とともに含ませて、材料を移植後少なくとも約30秒以内、45秒以内、1分以内、2分以内、3分以内、4分以内、またはさらには少なくとも約5分以内でその元の大きさに再拡張させて戻すことを促進し得る。先に記載された生理活性成分のように、これらの添加物は、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に対して、製造前ステップとして、手順の直前に(たとえば、セファゾリンのような好適な抗生物質を含有する溶液に該材料を浸すことにより)、または患者に対する該材料の移植中もしくは移植後に、適用してもよい。
【0054】
上記のように、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、患者への移植のためにスポンジ構成物に形成することができる。ある実施形態では、スポンジ構成物は、材料が所望の部位(たとえば組織欠損など)への送達後まで完全には拡張しないように、構築されることになる。これらの例では、その意図された送達部位に到達するまで、時期尚早な拡張を防ぐように、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を、部分的または全体的にカプセル化することができる。たとえば、ここに記載される乾燥スポンジ材料を圧縮して、生分解性カプセルに部分的または全体的にカプセル化することができる。その実施形態では、送達中における拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の時期尚早な拡張を防ぐように、カプセルは材料を圧縮状態に保持することができる。これにより、材料は、完全な拡張が生ずる前に、所望の位置に送達される。ある同様の実施形態では、粉末状の拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を、送達のために、生体適合性のある生分解性カプセルに入れて提供することができる。その1つの実施態様では、粉末の部分が意図されない位置に送達されたり浮遊することを防ぐように、粉末をカプセル内に保持する。生分解性カプセルを形成する際に用いるのに好適な生体適合性材料は当該技術分野において一般的に公知であり、たとえば、ゼラチンを含むことができる。
【0055】
ある実施形態では、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、いかなる形態であっても架橋することができる。拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は、それが医療装置に形成される前もしくは後のいずれか、またはその双方で架橋することができる。材料内または材料の2つ以上の層の間での架橋の量(または数)を増加させることにより、その強度を向上させることができる。しかしながら、再構築可能な材料を用いる際、材料内の架橋の導入は、その吸収性または再構築性にも影響し得る。その結果、ある実施形態では、再構築可能なコラーゲン性の材料はその天然の架橋レベルを実質的に保持するか、または医療装置内における追加された架橋の量を所望の治療計画によって賢明に選択することになる。多くの場合、この材料は、再構築プロセスが数日または数週にわたって生ずるような再構築可能特性を示すことになる。ある好ましい実施形態では、再構築プロセスは約5日間〜約12週間内に生ずる。スポンジ形態の構成物に関しては、圧縮された構成物の架橋によって、患者への移植後に構成物の再拡張が促進されてもよい。
【0056】
ここに記載される圧縮可能/拡張可能な栓、スポンジまたは他の構成物に関しては、所望の圧縮/再拡張特性を与えるように、拡張添加剤および/または架橋を用いることができる。好ましい形態では、構成物は、少なくとも10:1の比、より好ましくは少なくとも20:1の比で乾燥すると体積圧縮が可能である(つまり、圧縮された形式ではその元の弛緩した拡張されていない体積の10%以下を占める)。同時に、好ましい形態では、圧縮された構成物は、ある体積の水の中に、それらの乾燥した、圧縮された形態で送達された場合、約30秒以内に実質的にそれらの元の体積(たとえばそれらの元の体積の少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%)に再拡張する能力がある。
【0057】
この発明における使用に関し、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に導入された架橋は、光架橋技術、または化学架橋剤等の架橋剤の適用、または脱水もしくは他の手段によって誘導されるタンパク質架橋によって達成されてもよい。用いられてもよい化学架橋剤は、たとえばグルタルアルデヒド等のアルデヒド、カルボジイミド、たとえば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)等のジイミド、ヘキサメチレン−ジイソシアナート等のジイソシアナート、リボースもしくは他の糖類、アシルアジド、スルホ−N―ヒドロキシスクシンアミド、またはたとえばナガセケミカル株式会社(日本、大阪)から商品名DENACOL EX810で入手可能なエチレングリコールジグリシジルエーテル、および同じくナガセケミカル株式会社から商品名DENACOL EX313で入手可能なグリセロールポリグリセロールエーテル等のポリグリシジルエーテルを含むポリエポキシド化合物を含む。典型的には、使用の際に、ポリグリセロールエーテルまたは他のポリエポキシド化合物は分子当たり2〜約10のエポキシド基を有することになる。
【0058】
多層状の積層材料を企図する場合には、多層状の医療用材料の複数の層を相互に結合させるために、積層体の層を追加的に架橋することができる。多層状の医療用材料の架橋は、さらに、マトリックスをUV放射に暴露することにより、コラーゲンに基づくマトリックスをトランスグルタミナーゼおよびリシルオキシダーゼ等の酵素で処理することにより、および光架橋により、触媒される。このようにして、さらなる架橋を、個々の層に対し、それらが互いと結合する前、結合中、および/または結合後に追加してもよい。
【0059】
この発明の医療用材料、医療構成物および医療装置は、医療用材料および医療装置に好適な殺菌した包装で提供され得る。殺菌は、たとえば、照射、エチレンオキシドガスまたは任意の他の好適な殺菌技術によって達成されてもよく、医療包装の材料および他の特性はそれに従って選択されることになる。
【0060】
ある実施形態では、この発明は、圧縮可能な医療用発泡製品およびそれらの調製方法を提供する。医療用発泡製品は、拡張された細胞外マトリックスコラーゲン材料を産生するのに有効な条件下でアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス固体材料を用いて形成された、乾燥させた圧縮可能な発泡体を含む。発泡体は、発泡体の弾力性を増加させるのに十分な化学架橋を導入している。架橋なしでも、拡張された細胞外マトリックスコラーゲン材料から産生される発泡体は弾力性を持つが、たとえば止血栓適用を含む特定の適用では、より大きな弾力性が望ましいことがわかった。たとえばグルタルアルデヒド、カルボジイミドまたはここに記載の他の化学架橋剤等の化学架橋剤を用いたコラーゲン架橋の導入は、その圧縮可能な製品を送達のために小さなサイズに留めながら、発泡栓の弾力性を有意に向上させることがわかった。増大した弾力性は、発泡栓が圧縮状態で挿入され、次いでin situで患者の止血が望まれる部位で拡張する際に、近接する組織にさらなる圧迫を与える。具体的な発明の適用では、ここに開示される架橋された弾力のある発泡栓を利用することにより、生検部位を含む手術部位を止血し得る。これらの生検部位または他の手術部位は、患者の腎臓、肝臓または脾臓等の実質臓器組織の中に位置し得る。
【0061】
このように、この発明の特定の形態では、肝臓または腎臓等の実質臓器から組織を切除すること、次いで、ここに記載の架橋された弾力のある発泡材料を切除部位に移植して止血を容易にすることを含む手術方法が提供される。切除は、たとえば、癌組織または他の病変組織を取除くための腎切除もしくは肝切除の一部として、または生検針を用いて行なわれる腎生検または肝生検の一部として行われ得る。腹腔鏡切除等の最小限に侵襲的な手術手順、または針生検の場合においては、架橋された弾力のある発泡栓を、針もしくはカテーテルなどのような挿管された装置内から、および/または腹腔鏡装置を介して送達することができる。弾力のある発泡栓は送達中は圧縮状態にすることができ、次いで、手術部位に送達されると、拡張するに任される。栓の拡張は近隣の組織を圧迫して止血を容易にすることができる。これらの目的のため、栓の拡張した寸法は、生検または他の外科的欠損に少なくとも等しいかまたは好ましくはより大きい体積を与えることにより、周囲の組織の圧迫を、送達された拡張した栓によって確実にすることができる。
【0062】
この発明の他の実施形態では、ここに記載の架橋された弾力のある発泡材料を、身体の脈管、たとえば動脈または静脈の中のある部位に展開して、脈管の閉塞を引起し、それによって、脈管内における流体(たとえば血液)の流れを停止させることを含む方法が提供される。経皮的手順等の最小限に侵襲的な外科手順の場合では、架橋された弾力のある発泡栓は、カテーテルまたは外筒等の挿管された装置内から送達され得る。弾力のある発泡栓は、送達中は圧縮状態にすることができ、次いで、挿管された装置内から所望の閉塞部位に送達されると、拡張するに任される。栓の拡張により、脈管の壁部を圧迫して、閉塞させることができる。これらの目的のため、栓の拡張した寸法は所望の閉塞部位における脈管の直径よりも大きくすることができ、送達された拡張した栓による周囲の脈管壁に対する外方向への圧迫を確実にする。血管の他に、この発明に従って閉塞され得る他の脈管は、たとえば、卵管を含む。さらに、患者の組織を通る他の開いた路は、針路(たとえば静脈または動脈への経皮的浸入の結果)、および肛門直腸瘻、腸管皮膚瘻、直腸膣瘻等の瘻を含み、この発明の架橋された弾力のある発泡栓で閉塞され得る。
【0063】
架橋された弾力のある発泡栓は、この発明に従って、以下を含む方法で調製することができる:
(a) 細胞外マトリックス材料をアルカリ性媒体と接触させることにより、拡張された細胞外マトリックス材料を形成すること;
(b) 拡張された細胞外マトリックス材料を洗浄すること;
(c) 拡張された細胞外マトリックス材料を成形型に投入すること;
(d) 拡張された細胞外マトリックス材料を成形型内で凍結乾燥することにより、凍結乾燥させた細胞外マトリックス材料発泡体を形成すること;
(e) 凍結乾燥させた細胞外マトリックス材料発泡体を化学架橋剤と接触させることにより、架橋された細胞外マトリックス材料発泡体を形成すること;および
(f) 架橋された細胞外マトリックス材料発泡体を乾燥させること。
【0064】
この方法では、細胞外マトリックス材料および化学架橋剤は、たとえば、ここに開示されるもののいずれかから選択することができる。洗浄は、食塩水または水等の水性媒体を用いて好適に行なうことができる。乾燥は、たとえば、周囲温度での空気乾燥、加熱乾燥、または凍結乾燥などを含む任意の好適な方法で行なうことができる。凍結乾燥された細胞外マトリックス材料発泡体の形成後に、細胞外マトリックス材料を化学架橋剤に接触させることが好ましい(たとえば成形型に充填された材料に化学架橋剤を組込むのとは反対に)。というのも、そのようにすることによって、伸縮に抵抗する、より一様に形状化された、架橋された栓が提供されることがわかったからである。さらに、この調製方法では、拡張された細胞外マトリックス材料は、成形型への充填前に粉砕されることができる。その粉砕によって、たとえばランダムに生成された、細胞外マトリックス発泡体内に組込まれそれを特徴付けることになる、細胞外マトリックス断片が提供されることになる。より好ましい形態では、この材料の粉砕は、たとえばブレンダにおいて回転するブレードを用いてせん断することにより行なわれる。これらの目的のため、採取され、脱細胞化されたシートである細胞外マトリックス材料を利用する際、そのシートの引張り強さを実質的に低減するのに十分な条件下で、そのシートをアルカリ性媒体と接触させることにより、そのシート材料が回転するブレードで破壊され得ることがわかった。引張り強さの十分な低減がないと、シート材料は回転するブレードの周りに巻付く傾向があり、粉砕プロセスを阻み得る。たとえば、ブレードまたは他の態様で粉砕する前に、シートの引張り強さをその元の引張り強さの約50%未満、より好ましくは約30%未満に低減するのに十分な時間および条件で、シートをアルカリ性媒体で処理することができる。この方法は、たとえば、小腸、胃または膀胱組織、心膜組織、腹膜組織、筋膜、皮膚組織および他のシート状のECM材料から得られる粘膜下組織含有シート等の、採取されたシート状ECM材料を用いて実施され得る。
【0065】
この発明のさらなる実施形態では、生理活性複合細胞外マトリックス材料製品を用いる。複合製品は、拡張された細胞外マトリックス材料を産生するのに有効な条件下でアルカリ性媒体を用いて処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成される乾燥体、および前記乾燥体内に封入される生理活性細胞外マトリックス材料の粒子(その生理活性細胞外マトリックス材料の粒子は、粒子状の細胞外マトリックス材料のための供給源組織に由来する少なくとも1つの増殖因子を保持する)を含む。複合製品は、以下により調製することができる:
(a) 細胞外マトリックス材料をアルカリ性媒体と接触させることにより、拡張された細胞外マトリックス材料を形成する工程;
(b) 拡張された細胞外マトリックス材料を洗浄する工程;
(c) 液体、拡張された細胞外マトリックス材料および粒子状の細胞外マトリックス材料(粒子状の細胞外マトリックス材料は、粒子状の細胞外マトリックス材料のための原料組織に由来する少なくとも1つの増殖因子を一定量保持する)を含む混合物を調製する工程;および
(d) その混合物を乾燥させることにより、生理活性を有する複合細胞外マトリックス材料構成物を形成する工程。
【0066】
この複合製品および調製方法では、拡張された細胞外マトリックス材料および粒子状の細胞外マトリックス材料は、たとえば、ここに開示のもののうちのいずれかから選択することができる。洗浄は、食塩水または水などの水性媒体を用いて好適に行なうことができる。混合物を調製するための液体はいかなる好適な液体であってもよく、好ましくは生体適合性があり、典型的には水または食塩水等の水性液体である。乾燥工程は、たとえば、周囲温度での空気乾燥、加熱乾燥、または凍結乾燥を含むいかなる好適な方法でも行なうことができる。さらに、この調製方法では、拡張された細胞外マトリックス材料は、望ましくは、混合物の形成前または形成中に粉砕される。より好ましい形態では、この材料の粉砕は、単独で、または生理活性粒子状細胞外マトリックス材料の存在下で、たとえばブレンダにおいて回転するブレードを用いてせん断することにより行なわれる。この方法は、たとえば、小腸、胃または膀胱組織、心膜組織、腹膜組織、筋膜、皮膚組織および他のシート状のECM材料から得られる粘膜下組織含有シート等の、採取されたシート状ECM材料を用いて実施することができる。拡張されたECM材料および生理活性粒子状ECM材料は、同じECM原料由来のものでも、または異なるECM原料由来のものでもよい。粒子状ECM材料の組込みは、発泡製品の生理活性を向上させるのみならず、発泡製品の弾力性も向上させる。これらの局面は、ここに記載される止血、閉塞および他の医療処置において有利であるよう用いることができる。
【0067】
さらなる実施形態では、細胞外マトリックスシート材料およびその細胞外マトリックスシート材料に付着される乾燥材料(乾燥材料は、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するようアルカリ性媒体に接触させた細胞外マトリックス材料から形成される)を含む複合細胞外マトリックス材料製品を利用する。この複合製品は以下の工程を含む方法で調製することができる:
(a) 細胞外マトリックス材料をアルカリ性媒体と接触させることにより、拡張された細胞外マトリックス材料を形成する工程;
(b) 拡張された細胞外マトリックス材料を洗浄する工程;
(c) 拡張された細胞外マトリックス材料からなる流動可能な湿った調製物を細胞外マトリックスシートで成型することにより湿った複合物を形成する工程;および、
(d) その湿った複合物を乾燥させて乾燥複合物を形成する工程。
【0068】
この複合シート材料製品および調製方法では、拡張された細胞外マトリックス材料および粒子状の細胞外マトリックス材料は、たとえば、ここに開示のもののいずれかから選択することができる。洗浄は、食塩水または水などの水性媒体を用いて好適に行なうことができる。湿った調製物を調製するための液体はいかなる好適な液体であってもよく、好ましくは生体適合性があり、典型的には水または食塩水のような水性液体である。乾燥工程は、たとえば、周囲温度での空気乾燥、加熱乾燥、または凍結乾燥などを含む任意の好適な方法で行なうことができる。凍結乾燥が好ましい。なぜならば、それにより、空気乾燥または加熱乾燥と比較して、より多孔質で弾力のある発泡材料が形成されるからである。さらに、そのような調製方法では、流動可能な湿った調製物における拡張された細胞外マトリックス材料は望ましくは粉砕される。より好ましい形態では、この材料の粉砕は、たとえばブレンダにおいて回転するブレードを用いてせん断することにより行なわれる。この方法は、たとえば、小腸、胃または膀胱組織、心膜組織、腹膜組織、筋膜、皮膚組織および他のシート状のECM材料から得られる粘膜下組織含有シート等の、採取されたシート状ECM材料を用いて実施することができる。拡張されたECM材料およびシート状ECM材料は、同じECM原料由来ものでも、または異なるECM原料由来のものでもよい。シート状ECM材料の組込みは、製品全体の生理活性を向上させるのみならず、乾燥した拡張されたECM材料(たとえば発泡体)に付着されるバリア材料および/または縫合可能シートも提供できる。例示的に、そのような構成物は、手術部位または他の損傷組織を止血するよう用いることができる。ある実施モードでは、乾燥した、拡張されたECM材料(特に発泡体)が出血組織に接するように、この構成物を出血組織に配置することができる。次いで、シート状ECMによって、さらなるバリアを(拡張されたECM材料に加えて)与えることにより出血組織を保護することができ、および/またはたとえばストランドもしくはステープルの形式での縫合で構成物を適所に固定するよう用いられ得る縫合可能なシート材料を提供できる。具体的な使用法では、この構成物を用いて、外科的に処置された(たとえば切除を受けた)または他の態様で損傷した、肝臓組織または腎臓組織等の実質臓器組織を止血することができる。そうする際に、乾燥した、拡張されたECM材料は望ましくは損傷した実質組織に押し当てられ、自由選択的にシート状ECM材料は構成物を適所に固定するために上述の通り用いることができる。複合シート状構成物を用いたこれらおよび他の実施モードは、この記載から当業者には明らかとなる。
【0069】
他の実施形態では、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成される乾燥させた弾力のある発泡体本体、および乾燥させた弾力のある発泡体本体の少なくとも一部を被覆する生分解性カプセル構成要素を含む、移植可能な医療製品を利用する。乾燥させた弾力のある発泡体本体は、ここに開示されるような任意の本体であることができ、カプセル構成要素内に圧縮された状態で受入れられ得る。ある形態では、カプセル構成要素は発泡体本体の少なくとも前端を被覆し、製品に望ましい配達特性を作ることができる。さらなる形態では、発泡体本体は、カプセル構成要素内に、好ましくは圧縮状態で全体的に受入れられ得る。カプセル構成要素は移植後、分解し、軟化するので、カプセルは圧縮された発泡体本体の力により裂けるかまたは他の態様で壊れて、それによって、発泡体本体を開放して、拡張することができる。その拡張された発泡体本体は、次いで、移植部位において、止血、閉塞および/または別の治療効果を与えることができる。生分解性カプセルは、たとえばゼラチンを含む任意の好適な生分解性材料から形成することができる。
【0070】
さらなる実施形態では、粉末材料およびその粉末材料を封入する生分解性カプセルを含む移植可能な医療製品の使用が含まれる。粉末材料の粒子は、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成される乾燥発泡体を含む。このカプセル装置を用いることにより、粉末状の細胞外マトリックス材料を、有効に配達し、移植部位、たとえばここに記載される止血または閉塞のための部位に保持することができる。粉末材料は、移植部位において、止血、組織内部成長または他の有益な効果を促進することができる。生分解性カプセルは、たとえばゼラチンを含む任意の好適な生分解性材料から形成することができる。
【0071】
この発明の局面のさらなる理解を促す目的のため、以下の具体的な実施例が与えられる。これらの実施例はこの発明を限定するものではないことが理解される。
【実施例1】
【0072】
この実施例は、後で、さまざまな医療用材料および医療装置の調製において用いられ得る殺菌された小腸粘膜下組織(つまり拡張されていないSIS)を調製するために用いられる方法を示す。この材料の表面顕微鏡写真および断面顕微鏡写真を図1Bおよび図1Dに示す。
【0073】
豚の腸全体の10フィート切片を抽出し水で洗浄した。それを水洗した後、この切片の粘膜下組織腸コラーゲン原材料を、0.2体積%過酢酸の5体積%エタノール水溶液中において、攪拌しながら約2時間半処理した。過酢酸溶液を用いたこの処理の後、粘膜下組織層を、殺菌されたケーシングマシンにおいて、腸全体から薄層に裂いた。次いで、得られた粘膜下組織を滅菌水で水洗した。この材料の1cm×1cm切片を抽出し、10mgのダイレクトレッドを100mLの高純水中において混合することにより調製されたダイレクトレッド溶液を用いて染色した。この材料切片は約5分間染色された。染色した材料を高純水で2回洗浄して結合されていないすべてのステインを取除いた。染色した材料をスライドガラス上に置き、カバースリップで覆った。材料の表面の顕微鏡写真を(オリンパス顕微鏡で)100xの倍率で撮影した。次いで、この材料のある断面を準備し、同様の顕微鏡写真を撮った。得られた顕微鏡写真をSpot RTソフトウェアを用いて解析した。表面の顕微鏡写真および断面の顕微鏡写真を図1Bおよび図1Dに示す。表面顕微鏡写真および断面顕微鏡写真の両方とも、拡張を全く伴わない緊密に結合したコラーゲン性のマトリックスを示している。
【実施例2】
【0074】
この実施例は、後で、ここに記載されるさまざまな医療用材料および医療装置の調製において用いられ得る拡張された小腸粘膜下組織(つまり拡張されたSIS)を調製するために用いられる方法を示す。この材料の表面顕微鏡写真および断面顕微鏡写真を図1Aおよび図1Cに示す。
【0075】
豚の腸全体の10フィート切片を抽出し水で洗浄した。それを水洗した後、この切片の粘膜下組織腸コラーゲン原材料を、0.2体積%過酢酸の5体積%エタノール水溶液中において、攪拌しながら約2時間半処理した。過酢酸溶液を用いたこの処理の後、粘膜下組織層を、殺菌されたケーシングマシンにおいて、腸全体から薄層に裂いた。次いで、得られた粘膜下組織を滅菌水で4回水洗した。この材料の300gを1Lの1M NaOH溶液中において攪拌しながら37℃で1時間45分浸漬した。材料を取除いて、高純水の1L溶液中において5分間水洗した。この水洗ステップを8回追加して繰返した。この材料の1cm×1cm切片を抽出し、10mgのダイレクトレッドを100mLの高純水中において混合することにより調製されたダイレクトレッド溶液を用いて染色した。この材料切片は約5分間染色された。染色した材料を高純水で2回洗浄して結合されていないすべてのステインを取除いた。染色した材料をスライドガラス上に置き、カバースリップで覆った。材料の表面の顕微鏡写真を(オリンパス顕微鏡で)100xの倍率で撮影した。次いで、この材料のある断面を準備し、同様の顕微鏡写真を撮った。得られた顕微鏡写真をSpot RTソフトウェアを用いて解析した。表面の顕微鏡写真および断面の顕微鏡写真を図1Aおよび図1Cに示す。表面顕微鏡写真および断面顕微鏡写真の両方ともが、緊密に結合したコラーゲン性のマトリックスの破壊および材料の拡張を示している。
【0076】
図1A〜図1Dから観察され得るように、拡張されていないSISの表面図および断面図の両方ともが、緊密に結合したコラーゲン性のマトリックスを示しており、それにより、コラーゲン含有量が全体にわたって実質的に一様であることを示している。対照的に、拡張されたSISの表面図および断面図は変性したコラーゲン性の網および材料の拡張を示している。
【実施例3】
【0077】
この実施例は、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を患者への移植後に急速に再拡張させることを促進する目的でその材料に含まれ得る添加物を同定するために行なわれた。
【0078】
拡張された再構築可能材料をおおむね実施例2に記載されるように調製した。簡潔にいうと、豚の腸全体の10フィート切片を抽出し水で洗浄した。それを水洗した後、この切片の粘膜下組織腸コラーゲン原材料を、0.2体積%過酢酸の5体積%エタノール水溶液中において、攪拌しながら約2時間半処理した。過酢酸溶液を用いたこの処理の後、粘膜下組織層を、殺菌されたケーシングマシンにおいて、腸全体から薄層に裂いた。次いで、得られた粘膜下組織を滅菌水で4回水洗した。この材料の300gを1Lの3M NaOH溶液中において攪拌しながら37℃で2時間浸漬した。材料を取除いて、高純水の1L溶液中において15分間水洗した。15分後、1Lの0.2M酢酸を攪拌しながら添加した。15分間の攪拌後、材料を、1Lの高純水を用いて、5分間振盪させながら水洗した。この水洗ステップを4回繰返し、合計5回水洗した。
【0079】
配合材料が廃棄可能な25mLのピペットを用いて移すことができる程度にまで、その水洗した材料をブレンダのパルス設定を用いて攪拌した。配合材料のサンプルを、手持ち式ブレンダを用いて、表1に同定されるさまざまな添加物と組合せた。次いで、サンプルを、円筒形の成形型に投じ、−80℃で5時間冷凍し、24時間凍結乾燥させて、長さが約15mm〜約19mmの範囲である14mm直径の円筒形構成物を形成した。
【0080】
【表1】

【0081】
試験の際、最初のサンプル直径を記録した。次いで、すべての円筒形サンプルを手で2.7mmと6.7mmとの間にまで圧縮し、圧縮された材料の最終直径を記録した。約20mLの室温の高純水を船型重量容器に移した。圧縮した材料を高純水の表面上に置き、鉗子を用いて水没させ、材料のすべての表面を高純水に暴露した。サンプルの水没時にデジタルタイマをスタートさせた。目視検査を介して評価しながらサンプルが最初のサンプル直径に戻るまで、材料の目視評価を継続的に行なった。サンプルが最初のサンプル直径に戻ると、タイマを停止して、拡張時間を記録した。割当てられた時間が経過して最初のサンプル直径に戻らなかったサンプルについては、目視評価を15分後に中止した。結果を表2〜表8にまとめる。
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
【表7】

【0088】
【表8】

これらの結果に基づくと、好ましい添加物は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ポリエチレングリコール(MW 6000)および小腸粘膜下組織粒子を含む。
【実施例4】
【0089】
この実施例は、ここに記載されるさまざまな形態の拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の血管新生活性を測定するために行なわれた。
【0090】
ある拡張された再構築可能材料をおおむね実施例3に記載されるように調製した。簡潔にまとめると、豚の腸全体の10フィート切片を抽出し水で洗浄した。それを水洗した後、この切片の粘膜下組織腸コラーゲン原材料を、0.2体積%過酢酸の5体積%エタノール水溶液中において、攪拌しながら約2時間半処理した。過酢酸溶液を用いたこの処理の後、粘膜下組織層を、殺菌されたケーシングマシンにおいて、腸全体から薄層に裂いた。次いで、得られた粘膜下組織を滅菌水で4回水洗した。この材料の300gを1Lの3M NaOH溶液中において攪拌しながら37℃で2時間浸漬した。材料を取除いて、高純水の1L溶液中において15分間水洗した。15分後、1Lの0.2M酢酸を攪拌しながら添加した。15分間の攪拌後、材料を、1Lの高純水を用いて、5分間振盪させながら水洗した。この水洗ステップを4回繰返し、合計5回水洗した。この材料から、異なる形態の拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料:(1)配合された、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料、(2)拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料と粘膜下組織粒子との併用(1:10)、および(3)4層凍結乾燥シート状の拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を調製した。
【0091】
第(1)群および第(2)群からのこれらの材料を、約1mmの厚みの薄膜で成型して、−80℃で5時間冷凍し、24時間凍結乾燥させた。10個の15mmの円板を各群から円板パンチを用いて切出すことにより試験サンプルを形成した。0.22μmの孔を有するナイロンフィルタを各円板の頂部および底部に縫付けた。低温のエチレンオキシド殺菌を各サンプルに対して用いた。サンプルを、マウスの背側脇腹に皮下移植した。ケタミン(87mg/kg)およびキシラジン(13mg/kg)を用いた麻酔の後、マウスの後側頸部を小さく切開し、止血鉗子を用いた鈍的切開を用いて皮下に空洞を形成した。これに続いて、サンプルを配置し、切開部を5−0縫合の4つの中断ステッチで閉じた。1群につき6匹のマウスが円板移植を受けた。この移植を、マウスの中に3週間維持し、その後、毛細管形成があるかどうか探査した。
【0092】
マウスを2倍の用量の麻酔を用いて犠牲にすることにより、血管構造における無傷の流れを確保した。心臓は依然として鼓動していたが、胸腔を露出し、大静脈を切断し、10mLのヘパリゼーションされた食塩水を、23gaバタフライ輸血セットを用いて左心室に注入して、マウスを放血した。(輸血針を左心室に維持したまま)注射器を移動させ、4mLの蛍光性ミクロスフェア(黄−緑、0.1μm直径、Molecular Probes, F-8803)懸濁液(ストック懸濁液の1:20希釈)を左心室に注入し、結果として、全血管構造の灌流をもたらした。注入中に気泡が入らないように注意が払われた。なぜなら、気泡は、一貫した灌流を妨害する微小栓子を引起すことになるからである。サンプルは、慎重な切開および線維性被膜の全体除去で採集した。後足筋肉の陽性対照もこの点で採集して適切な灌流を確認した。採集されたサンプルおよび対照群を閉じた容器内の氷の上に置き、組織の完全性(主に湿り気)を維持した。微小血管系の画像化を、共焦点顕微鏡(Biorad)、λex=488nm、λem=530nmを用い、最も大きな血管浸潤の領域におけるサンプルの縁部に沿って行なった。さらに、陽性対照群の、後足筋肉の血管構造を画像化して十分な灌流を確認した。
【0093】
上述の蛍光微小血管撮影技術に加えて、サンプルを採集し、組織構造検査カセットに置き、10%緩衝ホルマリン(Fisher)に水没させた。ヘマトキシリンおよびエオシンを用いた組織学的切片化および染色を、Portland Tissue Processingによって行なった。各サンプルの円板縁部のH&E染色された切片の画像を、10×対物レンズを有する顕微鏡(オリンパス)を用いて得た。
【0094】
3つの試験群すべてからのサンプルの各々は、蛍光微小血管撮影で、何らかの血管新生活性を示した。同様に、組織学的分析によって、3つのサンプル群すべてが何らかの血管の内部成長および細胞の内部成長を有したことが確認された。
【0095】
この実施例は、さまざまな形式の拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料各々によりin vivoで血管新生活性が示されることを示す。
【実施例5】
【0096】
この実施例は、ここに記載される、架橋された、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料の血管新生活性を調査するために行なわれた。
【0097】
拡張された再構築可能材料を概して実施例3に記載されるように調製した。簡潔にいうと、豚の腸全体の10フィート切片を抽出し水で洗浄した。それを水洗した後、この切片の粘膜下組織腸コラーゲン原材料を、0.2体積%過酢酸の5体積%エタノール水溶液中において、攪拌しながら約2時間半処理した。過酢酸溶液を用いたこの処理の後、粘膜下組織層を、殺菌されたケーシングマシンにおいて、腸全体から薄層に裂いた。次いで、得られた粘膜下組織を滅菌水で4回水洗した。この材料の300gを1Lの3M NaOH溶液中において攪拌しながら37℃で2時間浸漬した。材料を取除いて、高純水の1L溶液中において15分間水洗した。15分後、1Lの0.2M酢酸を攪拌しながら添加した。15分間の攪拌後、材料を、1Lの高純水を用いて、5分間振盪させながら水洗した。この水洗ステップを4回繰返し、合計5回水洗した。約250mlの拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料を、250mLの高純水とともにブレンダに入れた。この混合物を1秒間に10回律動させ、各律動の後に45秒間の混和を続けた。得られた材料を、約1mmの厚みを有する5×10cmの成形型に投入した。この成形型を冷凍庫内に−80℃で5時間置き、その後24時間凍結乾燥を行なった。15mmの円板サンプルを、得られた配合シートから切出した。
【0098】
架橋されたサンプルを形成するために、上にて形成されたサンプルを、浅いガラス皿において、200mLの50mM EDC架橋溶液と組合せた。サンプルを伴った円板を溶液下に沈め、回転する振盪器上に24時間室温で置いた。次いで、各サンプルを200mLの高純水で水洗し5回絞った。このステップを4回繰返し、合計5回水洗した。次いで、水洗した材料を約8時間凍結乾燥させた。
【0099】
蛍光微小血管撮影を行なうと、各サンプルは何らかの血管新生活性を示した。同様に、組織学的分析により、3つのすべてのサンプル群が何らかの血管の内部成長および細胞の内部成長を有することが確認された。実際に、架橋された材料はしっかりとした血管新生を有し(1442+108μm)、依然として栓形状で存在した。栓は外植(explant)で拡張し、架橋された材料は価値があり、移植後崩壊しなかったことが示された。さらに、これらのサンプルにおいては、全身的毒性または局所的毒性の兆候および局所的炎症の増大の証拠は全くなかった。
【0100】
この実施例は、さらに、架橋された構造の拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料により、in vivoで血管新生活性が示され得ることを示す。
【実施例6】
【0101】
この実施例はここに記載される拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料のFGF−2含有量を測定すべく行なわれた。
【0102】
拡張された再構築可能材料を、おおむね実施例3に示されるように調製した。簡潔にいうと、豚の腸全体の10フィート切片を抽出し水で洗浄した。それを水洗した後、この切片の粘膜下組織腸コラーゲン原材料を、0.2体積%過酢酸の5体積%エタノール水溶液中において、攪拌しながら約2時間半処理した。過酢酸溶液を用いたこの処理の後、粘膜下組織層を、殺菌されたケーシングマシンにおいて、腸全体から薄層に裂いた。次いで、得られた粘膜下組織を滅菌水で4回水洗した。この材料の300gを1Lの3M NaOH溶液中において攪拌しながら37℃で2時間浸漬した。材料を取除いて、高純水の1L溶液中において15分間水洗した。15分後、1Lの0.2M酢酸を攪拌しながら添加した。15分間の攪拌後、材料を、1Lの高純水を用いて、5分間振盪させながら水洗した。この水洗ステップを4回繰返し、合計5回水洗した。
【0103】
上に記載される材料を2ロット準備し、1つのロットを1つの群につき使用した。一方のロット材料を単層凍結乾燥シートに形成し、他方の材料は、小腸粘膜下組織粒子(〜150μm)と混合し、それを単層凍結乾燥シートに形成した。3つのサンプルを各ロットから切出し(2cm×2cm)、1つの群につき3つのサンプルを得た。各サンプルの重量を計測し、その重量を記録した。個々のサンプルを、1.5mLのエッペンドルフ管内に置き、400μLの無菌リン酸緩衝食塩水(PBS)を各エッペンドルフ管に添加した。サンプルを有するエッペンドルフ管を12000gで5分間、4℃で遠心分離した。得られた上清を1xPBSで1:1に希釈した。サンプルを、複製して、R&D Systems FGF-2 ELISAキットを製造業者の指示に従って用いて、FGF−2含有量についてアッセイした。
【0104】
得られたFGF−2の含有量の計算は、FGF−2含有量をサンプルの重量で除算することにより行なった。シート状の拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料における平均測定FGF−2含有量は0pg/gであった。粘膜下組織粒子を含む拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料における平均測定FGF−2含有量は4500pg/g+1600pg/gであった。
【0105】
この実施例は、この実施例記載のように調製され試験されたシート状の拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料は検出可能なレベルのFGF−2を含有しないこと、およびFGF−2は、粘膜下組織粒子を該材料に含ませることにより、拡張された再構築可能なコラーゲン性の材料に戻り得ることを示す。
【0106】
この発明の記載の文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)「a」および「an」および「the」ならびに同様の表現の使用は、ここにおいて特段の記載がないかまたは前後関係から明確に矛盾しなければ、単数および複数の両方を包含するよう意図される。ここに記載の値の範囲は、他に異なる明示がない限り、その範囲内に入る各々異なる値に個別に言及する省略法として意図されるに過ぎず、各々異なる値は、あたかもそれがここにおいて個々に記載されるように明細書内に組込まれる。ここに記載のすべての方法は、他に異なる明示がない限り、または前後関係と明確に矛盾しない限り、任意の好適な順序で行なわれ得る。ここに提供される任意の実施例およびすべての実施例または例示的文言(たとえば「〜等」)の使用は、この発明をよりよく明らかにするためにのみ意図されるものであり、異なってクレームされない限り、この発明の範囲に対する限定を行なうものではない。明細書中の文言は、クレームされていない要素がこの発明の実施に必要不可欠であると示すものとして解釈すべきではない。
【0107】
この発明の好ましい実施形態を、ここにこの発明を実施するために本発明者らにわかっている最良のモードを含んで記載した。もちろん、前述の記載を読めば、それらの好ましい実施形態の変形物は当業者に明らかとなる。本発明者らは、当業者がその変形物を適切に用いることを予測し、本発明者らは、この発明が、ここに具体的に記載されるものとは違う態様でも実施されることを意図する。したがって、この発明は、特許請求の範囲に記載される主題のすべての改変物および等価物を、適用可能な法律によって認められて含む。さらに、上記の要素の、そのすべての考えられ得る変形物の任意の組合せは、他に異なる明示がない限り、または前後関係と明確に矛盾しない限り、この発明に包含される。加えて、ここに引用されるすべての刊行物は、当業者の能力を示すものであり、それらの全体を、あたかもそれらが個々に引用により援用されかつ十分に述べられるかのように、ここに引用により援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
止血の適用を伴う組織生検方法であって、
生検装置を患者の組織内に前進させること;
生検サンプルを前記組織内のある位置から切断すること;
前記生検サンプルを患者から除去すること;および
止血生検栓を前記組織の前記位置に移植することを含み、
前記生検栓が、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成される弾力のある発泡体本体を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記アルカリ性媒体は水酸化物イオンの供給源を含む水性媒体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水酸化物イオンの供給源は水酸化ナトリウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記拡張された細胞外マトリックス材料はその元の体積の少なくとも120%の体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞外マトリックス材料は脱細胞化された組織層である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脱細胞化された組織層は粘膜下組織を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記粘膜下組織は腸、膀胱または胃の粘膜下組織である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粘膜下組織は小腸粘膜下組織(SIS)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記拡張された細胞外マトリックス材料は凍結乾燥で乾燥されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記患者の前記組織は腎臓組織または肝臓組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
組織生検部位で受け入れられるようにサイズ決めされた弾力のある止血細胞外マトリックス発泡体本体を含む止血組織生検栓製品であって、
前記発泡体栓は、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成され、
前記発泡体栓は、5mmを超えない最大断面寸法を有する圧縮状態に圧縮可能であり、かつ少なくとも10mmの最大断面寸法を有する拡張状態に拡張可能である、止血組織生検栓製品。
【請求項12】
前記拡張された細胞外マトリックス材料は凍結乾燥された乾燥材料からなる、請求項11に記載の栓製品。
【請求項13】
前記構成物は少なくとも1つの生理活性成分をさらに含む、請求項11に記載の栓製品。
【請求項14】
前記少なくとも1つの生理活性成分は、増殖因子、糖タンパク質、グリコサミノグリカンまたはプロテオグリカンの1つ以上を含む、請求項13に記載の栓製品。
【請求項15】
生検部位を止血するための製品であって、
内腔を有する挿管された装置を含み、前記挿管された装置は組織生検部位に前進可能であり;
請求項12に記載の止血組織生検栓を、その内腔の中に受け入れて、含む、製品。
【請求項16】
手術部位の止血方法であって、
患者のある部位の組織を、前記部位において出血を引起すことになるように外科的に処置すること;および
止血細胞外マトリックス発泡体を前記部位に適用して止血を引起すことを含み;
前記発泡体は、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成されている、方法。
【請求項17】
前記アルカリ性媒体は水酸化ナトリウムを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記拡張された細胞外マトリックス材料はその元の体積の少なくとも120%の体積を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞外マトリックス材料は脱細胞化された組織層である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記拡張された細胞外マトリックス材料は凍結乾燥で乾燥されている、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記外科的に処置された組織は腎臓組織または肝臓組織である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
止血の適用を伴う、患者の実質組織の外科的除去方法であって、
患者のそれぞれ腎臓または肝臓において出血を引起すことになるように患者に対して部分的腎切除または肝切除を行なうこと;および
止血細胞外マトリックス発泡体を腎臓または肝臓に適用して止血を生じさせることを含み、
前記発泡体は、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成されている、方法。
【請求項23】
前記細胞外マトリックス材料は脱細胞化された組織層である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記拡張された細胞外マトリックス材料は凍結乾燥で乾燥されている、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
圧縮可能な医療用発泡体製品の調製方法であって、
細胞外マトリックス材料をアルカリ性媒体と接触させることにより、拡張された細胞外マトリックス材料を形成すること;
前記拡張された細胞外マトリックス材料を洗浄すること;
前記拡張された細胞外マトリックス材料を成形型に投入すること;および
前記拡張された細胞外マトリックス材料を前記成形型において凍結乾燥させることにより、凍結乾燥させた細胞外マトリックス材料発泡体を形成すること;
前記凍結乾燥させた細胞外マトリックス材料発泡体を化学架橋剤と接触させることにより、架橋された細胞外マトリックス材料発泡体を形成すること;および
前記架橋された細胞外マトリックス材料発泡体を乾燥させることにより、圧縮可能な医療用発泡体製品を形成することを含む、方法。
【請求項26】
前記アルカリ性媒体は水酸化物イオンの供給源を含む水性媒体を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記水酸化物イオンの供給源は水酸化ナトリウムを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記拡張された細胞外マトリックス材料はその元の体積の少なくとも120%の体積を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞外マトリックス材料は脱細胞化された組織層である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記脱細胞化された組織層は粘膜下組織を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記粘膜下組織は腸、膀胱または胃の粘膜下組織である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記粘膜下組織は小腸粘膜下組織(SIS)である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記拡張された細胞外マトリックス材料は凍結乾燥で乾燥されている、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
患者の前記組織は腎臓組織または肝臓組織である、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
乾燥させた圧縮可能な発泡体本体を含む圧縮可能な医療用発泡体製品であって、
前記発泡体本体は、拡張された細胞外マトリックス材料を形成するのに十分なアルカリ性媒体で処理された細胞外マトリックス材料を用いて形成され、
前記発泡体本体は、前記発泡体本体の弾力を増大させるのに十分な化学的架橋を導入している、圧縮可能な医療用発泡体製品。
【請求項36】
前記拡張された細胞外マトリックス材料はその元の体積の少なくとも120%の体積を有する、請求項35に記載の圧縮可能な医療用発泡体製品。
【請求項37】
前記細胞外マトリックス材料は脱細胞化された組織層である、請求項35に記載の圧縮可能な医療用発泡体製品。
【請求項38】
前記脱細胞化された組織層は粘膜下組織を含む、請求項37に記載の圧縮可能な医療用発泡体製品。
【請求項39】
前記粘膜下組織は腸、膀胱または胃の粘膜下組織である、請求項38に記載の圧縮可能な医療用発泡体製品。
【請求項40】
前記粘膜下組織は小腸粘膜下組織(SIS)である、請求項39に記載の圧縮可能な医療用発泡体製品。
【請求項41】
前記拡張された細胞外マトリックス材料は凍結乾燥された乾燥材料からなる、請求項35に記載の圧縮可能な医療用発泡体製品。
【請求項42】
前記構成物は、少なくとも1つの生理活性成分をさらに含む、請求項35に記載の圧縮可能な医療用発泡体製品。
【請求項43】
前記少なくとも1つの生理活性成分は、増殖因子、糖タンパク質、グリコサミノグリカンまたはプロテオグリカンの1つ以上を含む、請求項35に記載の圧縮可能な医療用発泡体製品。

【図2A】
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【図2B】
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【図1】
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【公表番号】特表2011−525139(P2011−525139A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514887(P2011−514887)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/048152
【国際公開番号】WO2009/155600
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(506270592)クック・バイオテック・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】COOK BIOTECH INCORPORATED
【Fターム(参考)】