説明

圧縮機

【課題】圧縮機おいて、製造コスト、製品管理等の点で不都合を生じ難く、ブラケットの組付けを自動化し易く、かつワイヤーハーネスのリード線がブラケットから外れ難くする。
【解決手段】本発明の圧縮機は、ハウジング3に固定され、斜板式圧縮機構5に電気的作用を付与する電磁容量制御弁7と、電磁容量制御弁7と外部とを電気的に接続するワイヤーハーネス9とを備えている。ハウジング3には、内部にワイヤーハーネス9のリード線9bを保持可能な保持室117aをもつブラケット11が固定されている。ブラケット11には、保持室117aに連通し、リード線9bを外部から保持室117a内に挿入可能な挿入口117bと、保持室117a内のリード線9bと接触することによりリード線9bがハウジング3の表面に向かって移動することを阻止する移動阻止壁117cとが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、外部から回転駆動される駆動軸と、駆動軸を回転可能に支持するハウジングとを備えている。ハウジング内には、駆動軸の回転動作に基づいて流体の圧縮作用を行う圧縮機構が内蔵されている。圧縮機構としては、駆動軸とともに回転する斜板を有し、斜板の傾斜角に応じてピストンがシリンダボア内を往復動を行うことにより、圧縮室が容積変化を生じる斜板式圧縮機構等があり得る。
【0003】
この種の圧縮機において、圧縮機構に電気的作用を付与するため、電気部品をハウジングに固定する場合がある。例えば、圧縮機構の吐出容量を自動制御するため、電磁容量制御弁が採用される場合がある。このような電気部品はワイヤーハーネスによって外部と電気的に接続される。ワイヤーハーネスは、コネクタと、一端が電気部品に接続され、他端がコネクタに接続されたリード線とを有している。リード線は、圧縮機自身で邪魔にならず、かつ搭載される車両等においても邪魔にならないよう、また、エンジンルーム内の限られたスペースにおける占有領域を増やさないよう、ハウジングに直接固定される他、ハウジングに固定されたブラケットによって保持され得る。
【0004】
特許文献1には、ハウジングに形成した凹部にリード線を嵌挿することにより、ハウジングに直接リード線を固定する手段が開示されている。また、特許文献2や特許文献3には、ハウジングに固定したブラケットによってリード線を保持する手段が開示されている。ブラケットとしては、内部にリード線を保持可能な保持室をもつが、ハウジングから取り外された状態で保持室内にリード線を挿入させるものがある。また、他のブラケットとして、リード線を保持室に挿入可能な挿入口が形成されたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−249062号公報
【特許文献2】実開平2−139379号公報
【特許文献3】特開2008−2343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハウジングに直接リード線を固定する手段を採用した圧縮機では、リード線の位置が圧縮機のハウジングの形状によって制限されることとなる。このため、そのような圧縮機は、搭載される車両等の種類に応じて異なるハウジングを備える必要性を生じ、製造コスト、製品管理等の点で不都合となる。
【0007】
一方、ハウジングに固定されたブラケットによってリード線を保持した圧縮機では、ブラケットの形状を変更したり、ブラケットを固定する位置を変更したりすれば、搭載される車両等の種類に応じることが可能になる。このため、この場合には、製造コスト、製品管理等の点で不都合を生じ難い。
【0008】
しかしながら、ブラケットが挿入口を有していないものである場合には、予めリード線をブラケットの保持室内に保持し、そのブラケットをハウジングに固定することによって圧縮機を組み付けなければならない。この場合には、ブラケットの組付けを自動化し難いという難点がある。このため、ブラケットに挿入口を設けるとすれば、ブラケットの組み付け後にリード線を保持させることができるので上記問題は解決するが、例えば、作業者や機械が圧縮機を掴む際に保持室内に保持したリード線に触れていまい、挿入口から外れるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、圧縮機おいて、製造コスト、製品管理等の点で不都合を生じ難く、ブラケットの組付けを自動化し易く、かつワイヤーハーネスのリード線がブラケットから外れ難くすることを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の圧縮機は、外部から回転駆動される駆動軸と、該駆動軸を回転可能に支持し、該駆動軸の回転動作に基づいて流体の圧縮作用を行う圧縮機構を内蔵するハウジングと、該ハウジングに固定され、該圧縮機構に電気的作用を付与する電気部品と、該電気部品と外部とを電気的に接続するワイヤーハーネスとを備え、
前記ワイヤーハーネスは、コネクタと、一端が前記電気部品に接続され、他端が該コネクタに接続されたリード線とを有し、
前記ハウジングには、内部に該リード線を保持可能な保持室をもつブラケットが固定され、
該ブラケットには、該保持室に連通し、該リード線を外部から該保持室内に挿入可能な挿入口と、該保持室内の該リード線と接触することにより該リード線が該ハウジングの表面に向かって移動することを阻止する移動阻止壁とが形成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明の圧縮機では、圧縮機自身で邪魔にならず、かつ搭載される車両等において邪魔にならないよう、また、エンジンルーム内における占有領域を増やさないよう、ハウジングに固定されたブラケットによってリード線が保持されている。そして、ブラケットの形状を変更したり、ブラケットを固定する位置を変更したりすれば、搭載される車両等の種類に応じることが可能である。このため、この圧縮機によれば、製造コスト、製品管理等の点で不都合を生じ難い。
【0012】
また、この圧縮機では、ブラケットが挿入口を有しているため、ブラケットをハウジングに固定した後、リード線を外部から挿入口を経てブラケットの保持室内に保持することが可能である。このため、ブラケットの組付けを自動化し易い。
【0013】
ここで、例えば、作業者や機械が圧縮機を掴む際、リード線はハウジングの表面に向かって付勢され易い。この圧縮機では、ブラケットに移動阻止壁が形成され、移動阻止壁は保持室内のリード線と接触することによりリード線がハウジングの表面に向かって移動することを阻止する。このため、この圧縮機では、保持室内に保持したリード線が挿入口から外れ難い。
【0014】
したがって、本発明の圧縮機によれば、製造コスト、製品管理等の点で不都合を生じ難く、ブラケットの組付けを自動化し易く、かつワイヤーハーネスのリード線がブラケットから外れ難い。
【0015】
本発明の圧縮機において、圧縮機構としては、(1)駆動軸とともに回転する斜板を有し、斜板の傾斜角に応じてピストンがシリンダボア内で往復動を行うことにより、圧縮室が容積変化を生じる斜板式圧縮機構、(2)シリンダ内で駆動軸の回転とともに回転するロータと、ロータに形成されたベーン溝内を出没する複数枚のベーンとを有し、圧縮室が容積変化を生じるベーン型圧縮機構、(3)固定スクロールと、駆動軸の回転によって固定スクロールに対して公転される可動スクロールとを有し、圧縮室が容積変化を生じるスクロール型圧縮機構等があり得る。
【0016】
ハウジングには、リード線をハウジングの表面に固定するクランプが固定され得る(請求項2)。この場合、エンジンルームにおける占有領域をより増やさないようにしつつ、リード線はハウジングの表面に向かってより一層付勢され易いことから、本発明の圧縮機がより顕著な作用効果を奏する。
【0017】
ブラケットには、コネクタを保持するコネクタ保持部が形成され得る(請求項3)。この場合、リード線を保持するブラケットにコネクタを保持する機能を持たせるので、新たにコネクタ保持用の部材をハウジングに設ける必要が無くなる。また、コネクタの向きによっては、曲げられたリード線がその弾性復元力によってハウジングの表面に向かってより一層付勢され易い。このため、この場合には、本発明の圧縮機がより顕著な作用効果を奏する。
【0018】
電気部品としては、圧縮機構に電気的作用を付与するものであれば、電磁容量制御弁、センサ等、種々のものを採用することが可能である。特に、電気部品は、吐出容量を自動制御するための電磁容量制御弁であることが好ましい(請求項4)。多くの圧縮機に採用されている電磁容量制御弁が電気部品であれば、多くの圧縮機において本発明の作用効果が発揮される。なお、駆動軸とハウジングとに装着される電磁クラッチは、圧縮機構に電気的作用を付与するものではないため、本発明に係る電気部品には相当しない。
【0019】
移動阻止壁が挿入口の少なくとも一部を形成している場合、挿入口は保持室内のリード線が常態から弾性変形することによって取り外される大きさであることが好ましい(請求項5)。移動阻止壁が挿入口の少なくとも一部を形成している場合には、移動阻止壁にて規制されているリード線は挿入口に近い位置にあるので、リード線が挿入口から外れるおそれが高くなる。しかし、挿入口の大きさをこのように規定すれば、保持室内のリード線は弾性変形しなければ挿入口から取り外されることはなく、リード線が不意にブラケットから外れることがない。
【0020】
ブラケットには、保持室内のリード線が挿入口に近づくことによりリード線を弾性変形させる凸部が形成されていることが好ましい(請求項6)。この場合、保持室内のリード線が挿入口に向かって移動することによって弾性変形することとなる。このため、保持室内のリード線は挿入口から取り外される際に弾性復元力によって抵抗する。一方、リード線を弾性変形に抗して移動させれば、リード線を挿入口から取り外すことができる。
【0021】
挿入口のうち移動阻止壁でない部位には、リード線が挿入口を通過する際の弾性変形量を小さくさせるように傾斜部が形成されていることが好ましい(請求項7)。この場合、リード線を挿入口に通す際の弾性変形量が小さく、リード線を保持室内に収めやすい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の圧縮機は、製造コスト、製品管理等の点で不都合を生じ難く、ブラケットの組付けを自動化し易く、かつワイヤーハーネスのリード線がブラケットから外れ難い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の圧縮機の側面図である。
【図2】実施例1の圧縮機の正面図である。
【図3】実施例1の圧縮機に係り、圧縮機構と電磁容量制御弁との関係を示す模式図である。
【図4】実施例1の圧縮機に係り、ブラケットの斜視図である。
【図5】実施例1の圧縮機に係り、ブラケットの正面図である。
【図6】実施例1の圧縮機に係り、ブラケットの要部拡大正面図である。
【図7】実施例2の圧縮機に係り、ブラケットの要部拡大正面図である。
【図8】実施例3の圧縮機に係り、ブラケットの要部拡大正面図である。
【図9】実施例4の圧縮機に係り、ブラケットの要部拡大正面図である。
【図10】比較例の圧縮機に係り、ブラケットの正面図である。
【図11】比較例の圧縮機に係り、ブラケットの要部拡大模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施例1〜4を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(実施例1)
実施例1の圧縮機は容量可変型斜板式圧縮機である。この圧縮機は、図1及び図2に示すように、外部から回転駆動される駆動軸1と、駆動軸1を回転可能に支持するハウジング3とを備えている。この圧縮機では、フロントハウジング3aとシリンダブロック3bとリヤハウジング3cとによりハウジング3が構成されている。ハウジング3内には、図3に示すように、駆動軸1の回転動作に基づいて冷媒の圧縮作用を行う周知の斜板式圧縮機構5が内蔵されている。
【0026】
すなわち、フロントハウジング3a内にはクランク室3dが形成され、クランク室3d内には駆動軸1とともに回転する斜板5aが設けられている。シリンダブロック3bには複数個のシリンダボア5bが形成されており、ピストン5cは斜板5aの傾斜角に応じて各シリンダボア5b内を往復動するようになっている。シリンダブロック3bとリヤハウジング3cとの間には図示しない弁ユニットが設けられ、シリンダボア5bとピストン5cと弁ユニットとによって形成される圧縮室が容積変化を生じるようになっている。
【0027】
また、リヤハウジング3c内には、容積拡大途中の圧縮室と弁ユニットを介して連通する吸入室3eと、容積縮小途中の圧縮室と弁ユニットを介して連通する吐出室3fとが形成されている。シリンダブロック3b及びリヤハウジング3cには、クランク室3dと吸入室3eとを連通する抽気通路3gが形成されている。抽気通路3gには固定絞り3hが設けられている。また、シリンダブロック3b及びリヤハウジング3cには、クランク室3dと吐出室3fとを連通する給気通路3iが形成されている。給気通路3iには、電気部品としての電磁容量制御弁7が設けられている。電磁容量制御弁7には吸入室3eと連通する検知通路3jが接続されている。
【0028】
なお、図1及び図2に示すように、フロントハウジング3a及びリヤハウジング3cには、車両に搭載するための取付足3k、3l、3mが形成されている。また、図1に示すように、シリンダブロック3bには吸入室3eと連通する吸入フランジ3nが形成され、リヤハウジング3cには吐出室3fと連通する吐出フランジ3oが形成されている。
【0029】
電磁容量制御弁7はワイヤーハーネス9によって外部と電気的に接続される。ワイヤーハーネス9は、コネクタ9aと、一端が電磁容量制御弁7に接続され、他端がコネクタ9aに接続されたリード線9bとからなる。
【0030】
フロントハウジング3aには取付足3kと一体的に取付台3qが形成されており、取付台3qにはブラケット11がボルト13によって固定されている。このブラケット11は、図4及び図5に示すように、取付台3qに固定されるために水平に延びる平板部111を有している。平板部111は平面視で前後に長い長方形状をしている。平板部111には、ボルト13を挿通するための長孔111aが幅方向に長く貫設されている。なお、平板部111の後方には垂下部113が一体に設けられている。
【0031】
平板部111の幅方向の左側には下方に延びる第1連結部115が一体に設けられており、第1連結部115の後方には平板部111から離れる方向で斜め下方に延びる第2連結部117が一体に設けられている。第1連結部115と第2連結部117との間には、それぞれから突設された補強のためのリブ116が設けられている。
【0032】
第2連結部117の下端には、内部にリード線9bを保持可能な保持室117aが形成されている。保持室117aは挿入口117bによって左斜め下に開口している。第2連結部117は挿入口117bの隣が移動阻止壁117cとされている。保持室117a、挿入口117b及び移動阻止壁117cの詳細は後述する。
【0033】
第2連結部117の下端の上側には凹部118を介して後方に延びるコネクタ保持部119が形成されている。このコネクタ保持部119は、互いに平行な2本の支持棒119a、119bと、支持棒119bの中央に形成されて支持棒119aに向かって突設された係止部119cとからなる。
【0034】
図6に示すように、実施例1のブラケット11では、保持室117aがコネクタ保持部119の上面119dと平行な略長方形に形成されている。保持室117aの下端側の面117hから移動阻止壁117cが突出しており、その長さはリード線9bの半径を超えている。このため、挿入口117bは保持室117a内のリード線9bが常態から弾性変形することによって取り外される大きさとなっている。
【0035】
また、保持室117aの上端側の面117iには円弧状の凸部117dが突出している。保持室117aの下端側の面117hから上端側の面117iまでの長さはリード線9bの直径よりやや大きく、面117hから凸部117dまでの長さはリード線9bの直径よりやや小さくされている。
【0036】
さらに、保持室117aの上端側の面は凸部117dより下方が傾斜面117eによって切り欠けられており、移動阻止壁117cの先端と傾斜面117eとで挿入口117bが形成されている。傾斜面117eが傾斜部である。このため、リード線9bを挿入口117bに通す際の弾性変形量が小さく、リード線9bを保持室117a内に収めやすくなっている。また、挿入口117bは、保持室117a内のリード線9bが傾斜面117eに沿って移動することによって保持室117aから取り外されるように形成されている。
【0037】
また、図1に示すように、リヤハウジング1にはクランプ15が外部から固定されている。クランプ15は薄い金属板がU字状に折り曲げられて内部に保持室15aを形成しているものである。電磁容量制御弁7から延びるリード線9bは予めクランプ15の保持室15aに挿通される。この状態でクランプ15がネジ17によってリヤハウジング1に固定される。
【0038】
クランプ15から延びるリード線9aは、図2にも示すように、後方からブラケット11の保持室117aに保持される。この際、ブラケット11は既にフロントハウジング3aに固定されている。このため、図6に示すように、ハウジング3に近い外部に位置するリード線9aは、挿入口117bで弾性変形し、保持室117b内に挿入される。
【0039】
保持室117b内から延びるリード線9bは、図1及び図2に示すように、前方から後方に向けられ、径方向の内側から外側に向かって折り返される。そして、コネクタ9aがブラケット11の支持棒119a、119bに後方から挿入される。支持棒119a、119bに挿入されたコネクタ9aは係止部119cによって係止される。こうして、コネクタ9aがコネクタ保持部119に保持される。
【0040】
この圧縮機は、図3に示す吐出室3fに凝縮器が接続され、凝縮器は膨張弁を介して蒸発器に接続され、蒸発器が吸入室3eに接続される。また、駆動軸1はエンジン等に接続される。駆動軸1とエンジン等との間に電磁クラッチが設けられても良い。ワイヤーハーネス9のコネクタ9aには、他のコネクタ17を介してECU及びバッテリが接続される。
【0041】
この圧縮機では、図1及び図2に示すように、圧縮機自身で邪魔にならず、かつ搭載される車両において邪魔にならないよう、クランプ15及びブラケット11によってリード線9bが保持されている。つまり、この圧縮機では、リード線9bを邪魔にすることなく、シリンダブロック3bに品番プレート等を取り付けることが可能になっている。また、この圧縮機では、リード線9bを邪魔にすることなく、梱包が行われ、かつ車両に搭載される。
【0042】
そして、クランプ15やブラケット11を変更したり、クランプ15やブラケット11を固定する位置を変更したりすれば、搭載される車両の種類に応じることが可能である。このため、この圧縮機によれば、製造コスト、製品管理等の点で不都合を生じ難い。
【0043】
また、この圧縮機では、ブラケット11が挿入口117bを有しているため、ブラケット11をフロントハウジング3aに固定した後、リード線9bを外部から挿入口117bを経て保持室117a内に保持することが可能である。このため、ブラケット11の組付けを自動化し易い。
【0044】
ここで、例えば、作業者や機械が圧縮機を掴む際、リード線9bに触れるおそれがある。また、リード線9bは、電磁容量制御弁7が外部からリヤハウジング3cに固定され、クランプ15によってリヤハウジング3cの表面に固定され、かつブラケット11によって径方向の内側から外側に向かって折り返されているため、ハウジング3の表面に向かって付勢される。しかしながら、この圧縮機では、ブラケット11に移動阻止壁117cが形成され、移動阻止壁117cは保持室117a内のリード線9bと接触することによりリード線9bがハウジング3の表面に向かって移動することを阻止する。このため、この圧縮機では、保持室117a内に保持したリード線9bが挿入口117bから外れ難い。
【0045】
したがって、この圧縮機によれば、製造コスト、製品管理等の点で不都合を生じ難く、ブラケット11の組付けを自動化し易く、かつワイヤーハーネス9のリード線9bがブラケット11から外れ難い。
【0046】
また、この圧縮機では、移動阻止壁117cが挿入口117bの一部を形成しているため、移動阻止壁117cにて規制されているリード線9bは挿入口117bに近い位置にあるので、リード線9bが挿入口117bから外れるおそれが高くなる。しかし、挿入口117bは保持室117a内のリード線9bが常態から弾性変形することによって取り外される大きさであるため、保持室117a内のリード線9bは弾性変形しなければ挿入口117bから取り外されることはなく、リード線9bが不意にブラケット11から外れることがない。
【0047】
さらに、この圧縮機では、ブラケット11に凸部117dが形成されているため、保持室117a内のリード線9bは挿入口117bから取り外される際に弾性復元力によって抵抗する。一方、リード線9bを弾性変形に抗して移動させれば、リード線9bを挿入口117bから取り外すことができる。
【0048】
また、この圧縮機では、挿入口117bが傾斜面117eによっても形成されていることから、リード線9bを挿入口117bに通す際の弾性変形量が小さく、リード線9bを保持室117a内に収めやすい。一方、傾斜面117eに沿わせるかたちでリード線9bを移動させれば、リード線9bを保持室117aから取り外すことができる。
【0049】
(実施例2)
実施例2の圧縮機は、図7に示すように、ブラケット21が凸部117dを有さない。保持室117aの下端側の面117hから上端側の面117iまでの長さはリード線9bの直径よりやや小さくされている。他の構成は実施例1と同様である。
【0050】
この圧縮機では、実施例1の圧縮機と比較し、凸部117dによる作用効果は奏さないものの、他の作用効果は奏することができる。
【0051】
(実施例3)
実施例3の圧縮機は、図8に示すように、ブラケット31における移動阻止壁117fの長さがリード線9bの半径より小さい。また、このブラケット31は、実施例1、2の傾斜面117eと比較し、小さい傾斜面117gを採用している。他の構成は実施例2と同様である。
【0052】
この圧縮機では、傾斜面117gが実施例1、2の傾斜面117eより小さいため、リード線9bが挿入口117bを通過する際の弾性変形量が比較的大きく、リード線9bが保持室117aから外れ難い。しかし、移動阻止壁117fの長さが比較的短いため、リード線9bが保持室117aから外れ易い。これらが作用的に相殺し、この圧縮機は、実施例1の圧縮機と同程度の作用効果を奏することができる。
【0053】
(実施例4)
実施例4の圧縮機は、図9に示すように、ブラケット41における傾斜面117gが実施例3と同様に小さくされている。他の構成は実施例2と同様である。
【0054】
この圧縮機では、移動阻止壁117cが実施例1と同様に長いため、リード線9bが取り外れ難くなっている。このため、この圧縮機は、実施例2の圧縮機と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
(比較例)
発明者らは、図10に示すブラケット51についても種々の検討を行った。このブラケット51は、取付台に固定されるために水平に延びる平板部511を有している。平板部511は、平面視で、前後に長い第1平板部511aと、第1平板部511aから幅方向に突出した後、斜め後方に延びる第2平板部511bと、第2平板部511bから逆方向に直角に屈曲する第3平板部511cとからなる。第1平板部511aには、ボルトを挿通するための長孔511dが幅方向に長く貫設されている。また、第1平板部511a、第2平板部511b及び第3平板部511cには、それぞれから突設された補強のためのリブ512が設けられている。
【0056】
第3平板部511cには、第1平板部511aに近づくように第3平板部511cから直角に延びるコネクタ保持部513が一体に設けられている。コネクタ保持部513には係止部513aが形成されている。
【0057】
コネクタ保持部513にはハウジング3に近づくように屈曲する連結部515が形成され、連結部515の下端に保持室515aが形成されている。保持室515aは挿入口515bによって斜め前方に開口している。
【0058】
発明者らの確認によれば、図11に示すように、保持室515aがリード線9bの断面積よりも大きい場合にリード線9bが挿入口515bから取り外れ難い。また、挿入口515bの左右に保持室515a内に突出する壁515c、515dを設け、壁515c、515dの突出長さに差Δを設けた方がリード線9bが取り外れ難い。これらの手段を実施例1〜4のブラケット11、21、31、41に採用することも可能であろう。
【0059】
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜4に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は容量可変型斜板式圧縮機等に利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…駆動軸
3…ハウジング
5…斜板式圧縮機構(圧縮機構)
7…電気部品、電磁容量制御弁
9…ワイヤーハーネス
9a…コネクタ
9b…リード線
11、21、31、41…ブラケット
15…クランプ
117a…保持室
117b…挿入口
117c…移動阻止壁
117d…凸部
117e、117g…傾斜面(傾斜部)
119…コネクタ保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から回転駆動される駆動軸と、該駆動軸を回転可能に支持し、該駆動軸の回転動作に基づいて流体の圧縮作用を行う圧縮機構を内蔵するハウジングと、該ハウジングに固定され、該圧縮機構に電気的作用を付与する電気部品と、該電気部品と外部とを電気的に接続するワイヤーハーネスとを備え、
前記ワイヤーハーネスは、コネクタと、一端が前記電気部品に接続され、他端が該コネクタに接続されたリード線とを有し、
前記ハウジングには、内部に該リード線を保持可能な保持室をもつブラケットが固定され、
該ブラケットには、該保持室に連通し、該リード線を外部から該保持室内に挿入可能な挿入口と、該保持室内の該リード線と接触することにより該リード線が該ハウジングの表面に向かって移動することを阻止する移動阻止壁とが形成されていることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記リード線を該ハウジングの表面に固定するクランプが固定されている請求項1記載の圧縮機。
【請求項3】
前記ブラケットには、前記コネクタを保持するコネクタ保持部が形成されている請求項1又は2記載の圧縮機。
【請求項4】
前記電気部品は、吐出容量を制御するための電磁容量制御弁である請求項1乃至3のいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項5】
前記移動阻止壁が前記挿入口の少なくとも一部を形成している場合、該挿入口は前記保持室内の前記リード線が常態から弾性変形することによって取り外される大きさである請求項1乃至4のいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項6】
前記ブラケットには、前記保持室内の前記リード線が前記挿入口に近づくことにより該リード線を弾性変形させる凸部が形成されている請求項5記載の圧縮機。
【請求項7】
前記挿入口のうち前記移動阻止壁でない部位には、前記リード線が前記挿入口を通過する際の弾性変形量を小さくさせるように傾斜部が形成されている請求項5又は6記載の圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−24202(P2013−24202A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162161(P2011−162161)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】