説明

圧縮減容機及び廃発泡プラスチックの圧縮減容方法

【課題】単純な圧縮応力のみで嵩張る廃棄物を減容させる簡易式でありながら、最小限の圧縮応力で使用済み発泡スチロール等の廃発泡プラスチックを効率的に減容できるようにする。
【解決手段】圧縮室1に投入された被圧縮物を圧縮により減容させる圧縮減容機であって、圧縮室1の一つの面を形成する固定圧縮板2と、圧縮室1を介して固定圧縮板2と対向し、直線運動機構3の駆動に応じた直線運動により、固定圧縮板2との間で被圧縮物を圧縮する可動圧縮板4と、圧縮室1の周囲を覆う固定ガイド板5とを備え、可動圧縮板4及び/又は固定圧縮板2の圧縮作用面6が、その中心部で圧縮率が高く、かつ、中心部から周囲に向けて圧縮率が徐々に低減される形状を有するとともに、圧縮室1の低圧縮率側に脱気孔7が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小規模事業所において発生する廃棄物の圧縮減容に適した圧縮減容機、例えば、町の家電小売店や魚屋において発生する梱包材、魚箱等の使用済み発泡スチロール、使用済み段ボール、使用済みパルプモールド、あるいは、商店やコンビニエンストアにおいて発生する空き缶、空きペットボトル等の嵩張る廃棄物を圧縮により減容させる簡易式の圧縮減容機に関し、また、この圧縮減容機を用いて、使用済み発泡スチロール等の廃発泡プラスチックを効率的に減容させる廃発泡プラスチックの圧縮減容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市場に一旦流通し、使用済みとなった梱包材や容器のリサイクルは、これらが多量に発生する大規模事業所の場合、既にリサイクルシステムができあがっているものの、小規模事業所においては、リサイクルのための輸送コストが割高となり、経済的にリサイクルを成り立たせることが難しいことから、高いリサイクル率の達成が困難となっている。
【0003】
例えば、家電製品や事務機の緩衝梱包材は、優れた緩衝性能とコストパフォーマンスから発泡スチロールが多く用いられている。
毎日多量の廃発泡スチロールが発生する大規模事業所では、発生場所に近接するリサイクルセンターを設置し、ここで発泡スチロールを減容した後、素材としてリサイクルすることが一般的となっている。また、減容された回収ポリスチレンは、既に経済原理に従い、再生スチロールとして広く流通している。
【0004】
しかしながら、一日当たりの廃発泡スチロールの発生量が数kg以下といった小規模事業所では、緩衝材や容器を嵩張ったままの状態で回収・運搬するコストが、事業系廃棄物として処理する場合よりも大幅にコストアップとなることから、その多くがリサイクルされていないのが実情である。
これは、リサイクルすべき他の嵩張る廃棄物についても同様であり、とりわけ、発泡スチロール以外では、段ボール、パルプモールド、空き缶、空きペットボトル等も回収運搬費用が高いことから、小規模事業所においては、これらの廃棄物を簡易的に減容できる圧縮減容機が求められている。特に、発泡スチロールの場合は、この傾向が顕著であることから、以下、発泡スチロールの減容機について詳細に説明する。
【0005】
従来から、発泡スチロールの減容機は、非常に多くの方式・機種のものが出回っており、代表的なものだけでも、
(1)ヒータによる加熱溶融で減容を行う方式
(2)摩擦熱による加熱溶融で減容を行う方式
(3)溶剤による溶解・収縮で減容を行う方式
など、種々の方法が提案され、実際に多くの事業所において稼働している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、従来の発泡スチロール用減容機は、減容能力の小さいものでも、10kg/hr程度あり、小規模事業者が活用するためには、あまりにも発生量と処理量の乖離が大きいこと、減容機本体価格が高価であること、設置に付随して発生する電力ユーティリティの新設が必要なこと、設置場所の確保が難しいこと、臭気対策の実施が必要なこと、運転員の確保が必要なことなど、費用対効果の面から小規模事業所では導入が困難であった。
【0007】
そこで、発泡スチロール等の廃棄物を単純な圧縮応力のみで減容する簡易式の圧縮減容機が提案される。このような圧縮減容機によれば、加熱ヒータ、摩擦力発生用のモータ、これらを制御する制御装置、臭気・騒音等の環境対策などが不要であるため、比較的安価なものとし、小規模事業所での導入を促進することが可能と考えられる。
【特許文献1】特開平9−207133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、独立気泡を有する発泡スチロール等の廃発泡プラスチックは、単純な圧縮応力のみで減容する場合、大きな圧縮応力が必要であることから、簡易式の圧縮減容機では、十分な減容効果が得られないという問題がある。
例えば、発泡スチロールを単純な直線圧縮運動により減容する場合、10000〜20000kPaの圧縮応力が必要であるが、比較的安価で、かつ小型の直線運動機構、例えば、2トン、5トン程度の自動車用ジャッキや、20トン程度の工業用ジャッキでは、得られる圧縮応力が1000〜5000kPa程度であるため、廃発泡プラスチックを十分に減容させることは困難であった。
【0009】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、単純な圧縮応力のみで嵩張る廃棄物を減容させる簡易式でありながら、最小限の圧縮応力で使用済み発泡スチロール等の廃発泡プラスチックを効率的に圧縮減容することができるだけでなく、廃発泡プラスチックに限らず、各種の嵩張る廃棄物の圧縮減容に用いることができる圧縮減容機の提供を第一の目的とし、また、この圧縮減容機を用いて、廃発泡プラスチックをより効率的に圧縮減容させることができる廃発泡プラスチックの圧縮減容方法の提供を第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明の圧縮減容機は、圧縮室に投入された被圧縮物を圧縮により減容させる圧縮減容機であって、前記圧縮室の一つの面を形成する固定圧縮板と、前記圧縮室を介して前記固定圧縮板と対向し、直線運動機構の駆動に応じた直線運動により、前記固定圧縮板との間で被圧縮物を圧縮する可動圧縮板と、前記圧縮室の周囲を覆う固定ガイド板とを備え、前記可動圧縮板及び/又は前記固定圧縮板の圧縮作用面が、その中心部で圧縮率が高く、かつ、中心部から周囲に向けて圧縮率が徐々に低減される形状を有するとともに、前記圧縮室の低圧縮率側に脱気孔が形成される構成としてある。
【0011】
このようにすると、単純な圧縮応力のみで嵩張る廃棄物を減容させる簡易式でありながら、廃棄物に含まれる空気を、高圧縮率の中心部から低圧縮率の周囲に向けて押し出すとともに、低圧縮率側に形成した脱気孔から排出するので、最小限の圧縮応力で使用済み発泡スチロール等の廃発泡プラスチックを効率的に圧縮減容することができるだけでなく、廃発泡プラスチックに限らず、各種の嵩張る廃棄物の圧縮減容に用いることができる。
【0012】
また、本発明の圧縮減容機は、前記直線運動機構が、手動油圧ポンプ又は電動油圧ポンプによって駆動される油圧シリンダであり、圧縮動作における圧縮応力が、1000〜5000kPaとしてある。
このようにすると、比較的安価で、かつ小型の直線運動機構、例えば、2トン、5トン程度の自動車用ジャッキや、20トン程度の工業用ジャッキを用いて、使用済み発泡スチロール等の圧縮減容を行うことができる。
【0013】
また、本発明の圧縮減容機は、前記可動圧縮板及び/又は固定圧縮板の圧縮作用面を形成する表面板が、被圧縮物の特性に応じて交換可能としてある。
このようにすると、各種の嵩張る廃棄物の圧縮減容に適用できるだけでなく、廃棄物の特性に適応した表面板を用いることで、各種の廃棄物を効率的に減容させることができる。
【0014】
また、本発明の廃発泡プラスチックの圧縮減容方法は、上記のいずれかに記載の圧縮減容機を用いて、廃発泡プラスチックを圧縮減容する圧縮減容方法であって、前記圧縮室に廃発泡プラスチックを投入する投入工程と、前記可動圧縮板の直線運動により、前記固定圧縮板との間で廃発泡プラスチックを圧縮する圧縮工程と、廃発泡プラスチックの圧縮を保持する圧縮保持工程と、廃発泡プラスチックの圧縮を解放する圧縮解放工程と、圧縮により減容された圧縮減容品を前記圧縮室から取り出す取り出し工程とを含み、前記投入工程、前記圧縮工程、前記圧縮保持工程及び前記圧縮解放工程を複数回繰り返した後、所定時間放置してから前記取り出し工程を行う方法としてある。
このようにすると、同量の廃発泡プラスチックを一回の圧縮工程で減容させる場合に比べ、廃発泡プラスチックを効率的に減容させることができるので、処理時間を短縮したり、処理能力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、単純な圧縮応力のみで嵩張る廃棄物を減容させる簡易式でありながら、廃棄物に含まれる空気を、高圧縮率の中心部から低圧縮率の周囲に向けて押し出すとともに、低圧縮率側に形成した脱気孔から排出するので、最小限の圧縮応力で使用済み発泡スチロール等の廃発泡プラスチックを効率的に圧縮減容することができるだけでなく、廃発泡プラスチックに限らず、各種の嵩張る廃棄物の圧縮減容に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
[圧縮減容機]
図1は、本発明の実施形態に係る圧縮減容機の分解斜視図、図2は、本発明の実施形態に係る圧縮減容機の内部を示す平面図、図3の(a)は、本発明の実施形態に係る圧縮減容機の表面板を示す正面図、(b)は、表面板の平面図、(c)は、表面板の側面図である。
これらの図に示すように、本発明の実施形態に係る圧縮減容機は、圧縮室1に投入された被圧縮物を圧縮により減容させる圧縮減容機であって、圧縮室1の一つの面を形成する固定圧縮板2と、圧縮室1を介して固定圧縮板2と対向し、直線運動機構3の駆動に応じた直線運動により、固定圧縮板2との間で被圧縮物を圧縮する可動圧縮板4と、圧縮室1の周囲を覆う固定ガイド板5とを備えている。
【0018】
本実施形態は、単純な圧縮応力のみで嵩張る廃棄物を圧縮減容させる簡易式の圧縮減容機を構成するにあたり、自動車用や工業用のジャッキのように、比較的安価で、かつ小型の直線運動機構を利用できないかという試みを基本としている。
ただし、発泡スチロールを単純な直線圧縮運動により減容するには、10000〜20000kPa程度の圧縮応力が必要であり、2トン、5トン程度の自動車用ジャッキや、20トン程度の工業用ジャッキで減容することは困難であった。
【0019】
そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、圧縮応力が1000〜5000kPa程度であっても、圧縮課程において発泡スチロール中に残留する空気を効果的に除去することで、圧縮減容が可能であることを見いだした。
具体的には、可動圧縮板4及び/又は固定圧縮板2の圧縮作用面6が、その中心部で圧縮率が高く、かつ、中心部から周囲に向けて圧縮率が徐々に低減される形状を有するとともに、圧縮室1の低圧縮率側に脱気孔7を形成することで、発泡スチロール中に残留する空気を効果的に除去し、最小限の圧縮応力で発泡スチロールを効率的に減容できることを見いだしたものである。
【0020】
また、小規模事業所での利用を想定した簡易式の圧縮減容機では、発泡スチロールに限らず、内部に空気を含む嵩張る廃棄物を圧縮減容することが求められ、その圧縮課程で空気をいかに効率的に除去するかが課題となる。
ここで、本発明の実施形態に係る圧縮減容機によれば、発泡スチロールに限らず、段ボール、パルプモールド、エアーキャップ緩衝材、空き缶、空きペットボトルであっても、中心部で圧縮率が高く、かつ、中心部から周囲に向けて圧縮率が徐々に低減される構造をそのまま適用し、効率良く減容可能であるが、より効率的に減容するためには、可動圧縮板4及び/又は固定圧縮板2に複数の細孔を有する構造であることが好ましい。
【0021】
また、一台の圧縮減容機で各種の廃棄物を減容するには、可動圧縮板4及び/又は固定圧縮板2の圧縮作用面6を形成する表面板8が、廃棄物の特性に応じて交換可能であることが好ましい。例えば、ボルト軸9及びナット10を介して、表面板8を可動圧縮板4に着脱自在に取り付け、廃棄物の種類に応じて、他の表面板8と交換できるようにする。このようにすると、一台の圧縮減容機であっても、各種の嵩張る廃棄物の圧縮減容に適用できるだけでなく、廃棄物の特性に適応した表面板8を用いることで、各種の廃棄物を効率的に減容させることが可能になる。
なお、開放可能な固定ガイド板5は、他の固定ガイド板に対して容易な操作で開閉及び固定できるような構造、例えば、従来用いられている、筐体における蓋の開閉及び固定構造と同様の構造を採用することができる。
【0022】
本実施形態に係る圧縮減容機では、少なくとも、固定ガイド板5の一つ面が開放できる構造とする必要がある(本実施形態では、上部の固定ガイド板5を開放可能としてある)。これにより開放される開口11は、廃棄物の投入口や、減容品の取り出し口として使用されるが、更には、表面板8の取り付けや取り外しを行う場合にも利用することができる。
また、圧縮により減容された減容品は、可動圧縮板4又は固定圧縮板2の圧縮作用面6に固着する可能性があるが、本実施形態の表面板8は、可動圧縮板4に対して着脱自在であることから、固着した減容品を表面板8と一体的に取り外し、開口11から取り出すことが可能である。
【0023】
本実施形態の直線運動機構3は、油圧ポンプ12で駆動される油圧シリンダ13が用いられる。また、油圧ポンプ12としては、手動油圧ポンプや電動油圧ポンプが用いられるが、処理量が小さい用途が多いことから、手動油圧ポンプが優れたコストパフォーマンスを示す。本実施形態の油圧ポンプ12は、油圧シリンダ13と一体化されており、ハンドル14を上下方向に往復操作することにより、油圧シリンダ13に作動油が送られ、可動圧縮板4の直線圧縮運動が行われる。ここで、油圧シリンダ13のロッド15は、装置をよりコンパクトにできることや、圧縮応力の損失を最小限に抑えることができることから、可動圧縮板4に直結することが好ましい。
【0024】
油圧シリンダ13は、定位置復帰機能を有する単動型のものを用い、圧縮応力の解放時には、可動圧縮板4を定位置に自動的に復帰させるものが好ましい。また、可動圧縮板4の復帰を促すために、可動圧縮板4をスプリング等の付勢力で強制復帰させる方法との併用も可能である。これは、発泡スチロールのような発泡プラスチックの場合、一回の単純な圧縮応力のみでは高い圧縮率の減容品を得ることが困難であるため、一日の作業の内で複数回の圧縮作業を容易に繰り返すために必要な機能である。
【0025】
また、油圧ポンプ12は、応力が小さいときは吐出量が多く、応力が高くなるに従い、吐出量が減ずるものが好ましい。その理由は、一般に嵩張る廃棄物を圧縮減容する場合、その初期の動作に必要な応力は、最終的に必要な応力に比較し1/2〜1/10と僅かであることから、特に、手動の油圧ポンプ12を用いたとき、低応力時には一回のポンプハンドル操作による圧縮動作量を大きくするためである。
【0026】
本発明においては、必要となる油圧による圧縮応力は、平均的な小規模事業所で発生する一日10000〜20000リットル程度の発泡スチロールを減容することを目安とした場合、約20トンである。
すなわち、圧縮作業を10回/1日行うと想定した場合、一回の圧縮作業量は、10〜20リットルの発泡スチロールを減容する必要がある。これを立方体の圧縮室を持つ圧縮減容機で想定すると、おおよそ30cmの立方体となる。一辺の長さが30cmの立方体の容積は27リットル、可動圧縮板4の面積は900cmとなることから、必要な応力は以下の計算式で求められる。
900cm×2000kPa=18,000kg=約20t
【0027】
脱気孔7は、圧縮室1を形成する固定圧縮板2、可動圧縮板4及び固定ガイド板5のいずれに形成してもよい。脱気孔7の形状は、任意であり、例えば、小孔やスリット孔とすることができる。
脱気孔7は、圧縮減容の繰り返しで詰まる可能性があるので、定期的なメンテナンスが必要となるが、毎回の圧縮減容の度に駆動される可動圧縮板4に脱気孔7の設置すれば、その詰りを抑制することができる。
より好ましくは、可動圧縮板4と固定ガイド板5との間の隙間を脱気孔7として利用するとともに、圧縮が解放されて可動圧縮板4が定位置に復帰する毎回の課程において、脱気孔7に付着した被減容品が、固定ガイド板5等に設けた突起物よって掻き落とされる構造とする。
【0028】
なお、本実施形態の圧縮減容機における可動圧縮板4の駆動方向は、水平方向であるが、可動圧縮板4を垂直方向に駆動したり、斜め方向に駆動させてもよい。圧縮室1への被圧縮物の投入のし易さや、充填率を考慮すると、垂直方向又は斜め方向の駆動が好ましい。
【0029】
以上のように構成された本実施形態の圧縮減容機は、単純な圧縮応力のみで嵩張る廃棄物を減容させる簡易式の圧縮減容機でありながら、廃棄物に含まれる空気を、高圧縮率の中心部から低圧縮率の周囲に向けて押し出すとともに、低圧縮率側に形成した脱気孔7から排出できるので、最小限の圧縮応力で使用済み発泡スチロール等の廃発泡プラスチックを効率的に圧縮減容することができるだけでなく、廃発泡プラスチックに限らず、各種の嵩張る廃棄物の圧縮減容に用いることができる。
【0030】
また、直線運動機構3は、手動又は電動の油圧ポンプ12によって駆動される油圧シリンダ13であり、圧縮動作における圧縮応力が、1000〜5000kPaとしてあるので、比較的安価で、かつ小型の直線運動機構、例えば、2トン、5トン程度の自動車用ジャッキや、20トン程度の工業用ジャッキを用いて、使用済み発泡スチロール等の圧縮減容を行うことができる。
【0031】
また、可動圧縮板4及び/又は固定圧縮板2の圧縮作用面6を形成する表面板8は、被圧縮物の特性に応じて交換可能であるため、各種の嵩張る廃棄物の圧縮減容に適用できるだけでなく、廃棄物の特性に適応した表面板8を用いることで、各種の廃棄物を効率的に減容させることができる。
【0032】
つぎに、本発明の実施形態に係る廃発泡プラスチックの圧縮減容方法について、図4を参照して説明する。
【0033】
[廃発泡プラスチックの圧縮減容方法]
図4は、本発明の実施形態に係る廃発泡プラスチックの圧縮減容方法を示すフローチャートである。
被減容物が、発泡スチロールのように弾力性のある緩衝材である場合、一回の圧縮作業により、例えば、密度を0.01〜0.02g/mlから0.2〜0.3g/mlまで減容しようとしたとき、単純な圧縮作業では、おおよそ半日程度が必要であり、例えば、内容積27リットルの圧縮減容機では、一日の処理可能量は、おおよそ300g〜600gに過ぎない。
しかしながら、減容状況を確認すると、30分から1時間圧縮すると、圧縮直後は0.1g/mlまで一旦は減容するものの、そのまま圧縮解放状態で放置すると徐々に復元し、0.1〜0.05g/mlの密度に戻ることが確認された。
そこで、本発明者らは、本発明の圧縮減容機を用い、30分〜数時間の圧縮後に圧力を解放すると、解放直後は圧縮室の70〜90%が空隙となることと、その空隙に被減容品を入れて再圧縮し、同様に30分〜数時間おくと、解放直後は同様には70〜90%の空隙ができることを見いだした。更に、一日の作業を想定し、昼間に数回の投入と解放を繰り返し、翌朝に圧縮減容機から減容品を取り出す作業を行うことで、密度が0.2〜0.3g/mlの板状の減容品を得ることができることを見いだした。
【0034】
すなわち、本発明の実施形態に係る廃発泡プラスチックの圧縮減容方法は、図4に示すように、圧縮室に廃発泡プラスチックを投入する投入工程と、可動圧縮板の直線運動により、固定圧縮板との間で廃発泡プラスチックを圧縮する圧縮工程と、廃発泡プラスチックの圧縮を保持する圧縮保持工程と、廃発泡プラスチックの圧縮を解放する圧縮解放工程と、圧縮により減容された圧縮減容品を圧縮室から取り出す取り出し工程とを含み、投入工程、圧縮工程、圧縮保持工程及び圧縮解放工程を複数回繰り返した後、所定時間放置してから取り出し工程を行う方法である。このようにすると、同量の廃発泡プラスチックを一回の圧縮工程で減容させる場合に比べ、廃発泡プラスチックを効率的に減容させることができるので、処理時間を短縮したり、処理能力を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、小規模事業所において発生する廃棄物の圧縮減容に適した圧縮減容機に適用される。例えば、町の家電小売店や魚屋において発生する梱包材、魚箱等の使用済み発泡スチロール、使用済み段ボール、使用済みパルプモールド、あるいは、商店やコンビニエンストアにおいて発生する空き缶、空きペットボトル等の嵩張る廃棄物を圧縮により減容させる簡易式の圧縮減容機に好適であり、特に、本発明の圧縮減容方法を併用することにより、上記の圧縮減容機を用いて、使用済み発泡スチロール等の廃発泡プラスチックを効率的に減容させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る圧縮減容機の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る圧縮減容機の内部を示す平面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る圧縮減容機の表面板を示す正面図、(b)は、表面板の平面図、(c)は、表面板の側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る廃発泡プラスチックの圧縮減容方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1 圧縮室
2 固定圧縮板
3 直線運動機構
4 可動圧縮板
5 固定ガイド板
6 圧縮作用面
7 脱気孔
8 表面板
9 ボルト軸
10 ナット
11 開口
12 油圧ポンプ
13 油圧シリンダ
14 ハンドル
15 ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮室に投入された被圧縮物を圧縮により減容させる圧縮減容機であって、
前記圧縮室の一つの面を形成する固定圧縮板と、
前記圧縮室を介して前記固定圧縮板と対向し、直線運動機構の駆動に応じた直線運動により、前記固定圧縮板との間で被圧縮物を圧縮する可動圧縮板と、
前記圧縮室の周囲を覆う固定ガイド板とを備え、
前記可動圧縮板及び/又は前記固定圧縮板の圧縮作用面が、その中心部で圧縮率が高く、かつ、中心部から周囲に向けて圧縮率が徐々に低減される形状を有するとともに、前記圧縮室の低圧縮率側に脱気孔が形成される
ことを特徴とする圧縮減容機。
【請求項2】
前記直線運動機構が、手動油圧ポンプ又は電動油圧ポンプによって駆動される油圧シリンダであり、圧縮動作における圧縮応力が、1000〜5000kPaであることを特徴とする第1記載の圧縮減容機。
【請求項3】
前記可動圧縮板及び/又は固定圧縮板の圧縮作用面を形成する表面板が、被圧縮物の特性に応じて交換可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧縮減容機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の圧縮減容機を用いて、廃発泡プラスチックを圧縮減容する圧縮減容方法であって、
前記圧縮室に廃発泡プラスチックを投入する投入工程と、
前記可動圧縮板の直線運動により、前記固定圧縮板との間で廃発泡プラスチックを圧縮する圧縮工程と、
廃発泡プラスチックの圧縮を保持する圧縮保持工程と、
廃発泡プラスチックの圧縮を解放する圧縮解放工程と、
圧縮により減容された圧縮減容品を前記圧縮室から取り出す取り出し工程とを含み、
前記投入工程、前記圧縮工程、前記圧縮保持工程及び前記圧縮解放工程を複数回繰り返した後、所定時間放置してから前記取り出し工程を行う
ことを特徴とする廃発泡プラスチックの圧縮減容方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−55469(P2008−55469A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235798(P2006−235798)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(391023057)株式会社ダイセン工業 (14)
【Fターム(参考)】