説明

圧縮空気生成方法及び圧縮空気生成システム

【課題】窒素酸化物による空気圧縮機の腐食を抑制して圧縮空気を生成する圧縮空気生成方法及び圧縮空気生成システムを提供することを目的とする。
【解決手段】窒素酸化物が成分に含まれている圧縮用の空気を、オゾン水製造装置により水の電気分解により製造されたオゾン水に接触させる気液接触工程を気液接触装置によって行うことにより、圧縮用の空気に含まれている窒素酸化物をオゾン水中に溶解除去する。その後、窒素酸化物を除去した圧縮用の空気を空気圧縮機に供給して当該空気を圧縮する空気圧縮工程を行い、圧縮空気を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機を用いて圧縮空気を生成する圧縮空気生成方法及び圧縮空気生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気を圧縮して利用するための空気圧縮機においては、圧縮の際に発生する熱による圧縮空気等の温度上昇を防止したり、圧縮空気を生成している領域である圧縮作用空間中における機械要素同士の隙間を密封したり、機械要素同士が摺動する部分における潤滑性を確保したりする必要から、圧縮途中の圧縮作用空間内に潤滑油を注入する油潤滑式空気圧縮機が一般に用いられている。このような油潤滑式空気圧縮機にはスクリュー型、レシプロ型、スクロール型、ターボ型など様々な圧縮方式が用いられている。また、最近では、半導体、食品、医薬品などの分野においては圧縮空気の清浄化が求められており、空気圧縮機から吐出される空気に油が混入することをなくすために、油を使用しないオイルフリータイプの空気圧縮機も提案され、使用されている。オイルフリータイプの空気圧縮機としては、潤滑媒体を全く使用しないタイプの空気圧縮機があるが、圧縮作用空間の隙間を完全に密閉することは困難であり、圧縮効率の低下が問題となる。そのため、圧縮効率のよい圧縮機として、油の代わりに水を潤滑媒体として使用するタイプの水潤滑式空気圧縮機が広く用いられている。この水潤滑式空気圧縮機は、油を使用しないため、油の交換コストが不要であり、また、排出する空気に油を含むことがなく環境負荷を少なくすることができる。
【0003】
上述したような油潤滑式空気圧縮機や水潤滑式空気圧縮機等の空気圧縮機ははさまざまな環境で使用される。そのため、腐食性ガスを含む空気環境下で使用する場合は、腐食性ガスが圧縮機内に入り込み、装置内部が腐食することが問題となる。例えば、油潤滑式圧縮機においては、圧縮機内部の金属が腐食し油中に溶け込むことによって金属石鹸を生成し、油を循環する際、油内の異物を取り除くために使用するフィルターの目詰まりの原因となる。また、油の劣化が促進され、油によるロータの潤滑や冷却を十分に行うことができなくなる。一方、水潤滑式圧縮機は、圧縮機内部及び配管部材等は常時水と接触する構造であるため、接触部における発錆が起こり易く、腐食性ガスによる影響は油潤滑式空気圧縮機よりも大きくなる。例えば、腐食性ガスが溶け込んだ水が腐食を助長し、内部に錆などが発生した場合は、圧縮機から清浄な圧縮空気を送ることができなくなり問題となる。このような腐食の原因となる腐食性ガスとしては、自動車の排気ガスや工場の排煙等に含まれるNO、NO等の窒素酸化物が問題となることが分かっており、特に水潤滑式空気圧縮機においては、使用する水に窒素酸化物が溶け込むことによって、水と反応して硝酸を生成し、酸性の強い水が圧縮機内部の全体に行き渡るため腐食の影響が大きくなり問題となる。
【0004】
このような問題に対し、特許文献1に記載の水潤滑式空気圧縮機においては、水循環系統中のアルミニウム合金部材を腐食電位差の小さい金属材料や不動態材料で皮膜することにより腐食を防止している。また、特許文献2では、無電解ニッケルめっきとフッ素樹脂等の二重膜を構成部材の表面に形成することにより、発錆を防止し耐久性を向上させている水潤滑式空気圧縮機が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−240574
【特許文献2】特開2000−34991
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に記載された空気圧縮機の腐食を防止する方法は、空気圧縮機内部において窒素酸化物を含む空気や窒素酸化物が溶け込んだ水が接触する全ての部分に皮膜をする必要があり、加工コストが増加する問題がある。また、空気圧縮機の駆動時の摩擦や、経年劣化等により皮膜がはがれた部分から腐食が進行し、窒素酸化物を含んだ空気を圧縮する場合は、特に腐食の進行が加速され問題となる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、窒素酸化物を含んだ空気を圧縮する場合においても空気圧縮機の腐食を抑制することができる圧縮空気生成方法及び圧縮空気生成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明に係る圧縮空気生成方法は、空気圧縮機により圧縮空気を生成する方法に関する。そして、本発明に係る圧縮空気生成方法は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴のうちの少なくともいずれかを有している。
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る圧縮空気生成方法における第1の特徴は、窒素酸化物が成分に含まれている圧縮用の空気を、オゾンを溶解させた水であるオゾン水に接触させる気液接触工程と、前記オゾン水に接触させた前記空気を空気圧縮機に供給して当該空気を圧縮する空気圧縮工程とを備えることである。
【0010】
この構成によると、気液接触工程により、圧縮用の空気に含まれる窒素酸化物の一つであるNOはオゾン水中に溶解する。また、圧縮用の空気に含まれる窒素酸化物の一つであり水に溶解しにくいNOはオゾン水中のオゾンにより酸化され、NOよりも水に溶解し易いNOに変化してオゾン水中に溶解する。これにより、圧縮用の空気に含まれる窒素酸化物は減少する。空気圧縮工程においては、含有する窒素酸化物の量が少なくなった空気を空気圧縮機で圧縮するため、空気圧縮機内部の腐食を抑制して圧縮空気を生成することができる。
【0011】
尚、オゾン水を用いずに圧縮空気とオゾンガスとを直接接触させることによっても、NOを酸化してNOとすることが可能であるが、オゾンガスを製造するための放電式オゾナイザ等は大型である。また、高周波高電圧電源やオゾンの原料気体としての酸素等も必要となり装置全体が更に大型になりコストも上昇するため、空気圧縮機に付帯する設備としては、スペースやコスト面から適するとは言い難い。本発明の構成によれば、水を電気分解する方法等により低コスト、かつ、小型の装置で製造が可能であるオゾン水を使用することにより上記問題を解決することが可能である。
【0012】
また、本発明に係る圧縮空気生成方法における第2の特徴は、第1の特徴を有する圧縮空気生成方法において、空気圧縮機が水潤滑式空気圧縮機であることである。
【0013】
この構成によると、気液接触工程により含有する窒素酸化物の量が少なくなった空気を水潤滑式空気圧縮機で圧縮するため、水潤滑式空気圧縮機で使用する水に溶け込む窒素酸化物の量が減少する。したがって、水潤滑式空気圧縮機において使用される水に窒素酸化物が溶け込むことによって起こる圧縮機内の腐食を抑制することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る圧縮空気生成システムは、空気圧縮機により圧縮空気を生成するシステムに関する。そして、本発明に係る圧縮空気生成システムは、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴のうち少なくともいずれかを有している。
【0015】
本発明に係る圧縮空気生成システムにおける第1の特徴は、圧縮空気生成システムは、オゾンを溶解させた水であるオゾン水を製造するオゾン水製造装置と、窒素酸化物が成分に含まれている空気と前記オゾン水とを接触させる気液接触装置と、前記気液接触装置により前記オゾン水と接触させた前記空気を圧縮する空気圧縮機とを備えることである。
【0016】
この構成によると、気液接触装置により、オゾン水製造装置によって製造されたオゾン水と圧縮用の空気とを接触させることにより、圧縮用の空気に含まれる窒素酸化物の一つであるNOはオゾン水中に溶解する。また、圧縮用の空気に含まれる窒素酸化物の一つであり水に溶解しにくいNOはオゾン水中のオゾンにより酸化され、NOよりも水に溶解し易いNOに変化し、オゾン水中に溶解する。これにより、圧縮用の空気に含まれる窒素酸化物は減少する。この含有する窒素酸化物の量が少なくなった空気を空気圧縮機で圧縮するため、空気圧縮機内部の腐食を抑制して圧縮空気を生成することができる。
【0017】
尚、上述したように、オゾン水を用いずに圧縮空気とオゾンガスとを直接接触させることによっても、NOを酸化してNOとし、その後水などに溶解させて吸収することも可能であるが、設備が大型になり、コストも増加するため、空気圧縮機に付帯する設備としては適するとは言い難い。本発明の構成によれば、水を電気分解する方法等によりオゾン水を製造するオゾン水製造装置を用いることで上記問題を解決することが可能である。
【0018】
また、本発明に係る圧縮空気生成システムにおける第2の特徴は、第1の特徴を有する圧縮空気生成システムにおいて、空気圧縮機が水潤滑式空気圧縮機であることである。
【0019】
この構成によると、気液接触装置により含有する窒素酸化物の量が少なくなった空気を水潤滑式空気圧縮機で圧縮するため、水潤滑式空気圧縮機で使用する水に溶け込む窒素酸化物の量が減少する。したがって、水潤滑式空気圧縮機において使用される水に窒素酸化物が溶け込むことによって起こる圧縮機内の腐食を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明に係る圧縮空気生成システムを作動させることにより、本発明に係る圧縮空気生成方法が実施されるため、本発明に係る圧縮空気生成システムの実施形態の説明とともに、本発明に係る圧縮空気生成方法の実施形態について説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の圧縮空気生成システム1を示す図である。第1実施形態の圧縮空気生成システム1は、オゾン水製造装置2と、気液接触装置3と、油潤滑式空気圧縮機4(空気圧縮機)を備えるシステムである。図1における矢印は、空気、水、オゾン水の流れ方向を示す。圧縮空気生成システム1は、外部から供給される空気を気液接触装置3にてオゾン水製造装置2により製造されたオゾン水と接触させ、その空気を管路10を介して油潤滑式空気圧縮機4に供給し、圧縮空気を生成して管路13から排出する。
【0022】
外部からの空気が流入する管路9は気液接触装置3に接続する経路であり、バルブ17により流入する空気の量を調整可能である。管路9の途中には空気中のNO濃度を測定するためのNO濃度モニタ6が設置されている。また、管路10は気液接触装置3と油潤滑式空気圧縮機4を繋ぐ経路であり、管路の途中には空気中の水分を除去するための除湿機15が設置されている。オゾン水製造装置2で製造されたオゾン水は管路16を介して気液接触装置3に供給される。気液接触装置3で使用したオゾン水は、管路11から排出される。管路11は使用したオゾン水を外部に排水する排水管路11aとオゾン水製造装置2に供給する管路11bとに分岐している。排水管路11aに設置されているバルブ19を開くことにより、気液接触装置3で使用したオゾン水を排出することができ、また、バルブ19を閉めることにより使用したオゾン水を再利用することもできる。管路7および管路11bにはオゾン水搬送用ポンプ7、8が設置されている。
【0023】
図2は、本発明の第1実施形態のオゾン水製造装置2を示す図である。オゾン水製造装置2は、電源装置23により駆動される電解セル22と、オゾン水タンク21を備え、外部から供給される水を用いて電解セル22によりオゾン水を生成し、オゾン水タンク21で貯留する。バルブ18を調整することにより管路14を介して外部から供給される水は、管路14に設置されている軟水器25で硬度成分等を除去されてオゾン水タンク21に供給される。外部から供給される水の成分を調整する軟水器25等の機器は、外部から供給される水が成分調整不要であれば使用する必要はない。オゾン水タンク21に供給された水は、管路27を介してポンプ26により電解セル22に送られる。電源装置23により直流電圧を印加することにより、電解セル22内で水の電気分解が起こり、オゾン水が生成され、管路28を介してオゾン水タンク21に送られる。オゾン水タンク21にはオゾン水濃度計24が設置され、所望のオゾン水濃度になるまでオゾン水タンク21内のオゾン水は管路27、28を通って循環し、電解セル22により電気分解される。
【0024】
オゾン水濃度は、一般的なオゾン水製造装置で製造可能な0.1〜20mg/L程度でよいが、空気に含まれるNOの量により適宜調整することで効率よく窒素酸化物を除去することが可能である。また、オゾン水製造装置2から気液接触装置3に供給するオゾン水の流量(オゾン水量)によっても窒素酸化物の除去効率が変化するため調整することで効率を向上することが可能である。そのため、NOの酸化に必要なオゾン水濃度及び窒素酸化物を吸収するために必要なオゾン水量は、予め実験により決定することが望ましい。具体的には、種々のオゾン水濃度オゾン水を流量調整しながら気液接触装置3に供給し、気液接触装置3でオゾン水と接触させる前の空気中の窒素酸化物濃度と、気液接触後の窒素酸化物濃度を測定することにより、最適なオゾン水濃度及びオゾン水量を決定する。空気圧縮機内部の腐食を防止するためには、空気圧縮機に導入される空気中の窒素酸化物濃度は0.1ppm以下にすることが望ましく、気液接触後の空気中の窒素酸化物濃度が0.1ppm以下になるようなオゾン水濃度及びオゾン水量に設定することで空気圧縮機の腐食防止の効果をより顕著にすることができる。また、1モルのNOをNOに酸化するために必要なオゾンは1モルであるが、他の成分とオゾンとの反応、またはNOとオゾンとの反応効率を考慮し、1.5〜3モル程度のオゾンを用いるほうがよい。
【0025】
また、圧縮用の空気に含まれるNOの濃度が一定の場合は、一定のオゾン水濃度及びオゾン水量で運転すればよいが、NO濃度が変動する場合は、NO濃度が最大の場合に窒素酸化物を除去可能なオゾン水濃度及びオゾン水量に設定することで、腐食を確実に防いで油潤滑式空気圧縮機4を運転することが可能である。また、NO濃度モニタ6により、NO濃度を常時測定し、その濃度により必要なオゾン水濃度及びオゾン水量を制御することで、過剰に高濃度のオゾン水を製造することがなくなり、効率よく圧縮空気を生成することができる。
【0026】
尚、オゾン水製造装置は第1実施形態で用いるものに限らず、所定濃度のオゾン水が製造できる装置であればよい。
【0027】
図3は、本発明の第1実施形態の気液接触装置3を示す図である。この気液接触装置3により窒素酸化物が成分に含まれている圧縮用の空気をオゾン水に接触させる気液接触工程が行われる。気液接触装置3は、管路9から供給される気体を、管路16から装置内に供給される液体と接触させるための装置であり、圧縮空気生成システム1においては、窒素酸化物が成分に含まれている圧縮用の空気をオゾン水製造装置2により製造されたオゾン水と接触させるために使用される。気液接触装置3の気液接触部31には例えば粒径3〜6mmの多孔質担体が充填されており、気液接触部31の上部に接続された管路16からオゾン水が散水され、下部の排出管11から排出される。ここで、充填剤としては樹脂担体、無機担体、金属ウール、ガラスウール、スポンジ等を用いることができる。また、オゾン水の散水量はオゾン水製造装置2から供給されるオゾン水量とする場合に限らず、気液接触装置3にてオゾン水を一時貯留して、散水量を調整することも可能である。
【0028】
窒素酸化物を含む空気は、気液接触装置3の下部に接続される管路9から供給され、オゾン水と接触して、ポンプ32によって管路10から排出される。このとき、散水されたオゾン水は充填剤表面に広く分布して流れるため、空気との接触面積が大きくなり、空気中の窒素酸化物と反応し易くなる。気液接触前の空気中に含まれるNOは水に溶けやすい気体であるため、オゾン水中に溶解して吸収される。また、空気中に含まれるNOは水に溶けにくい気体であるが、オゾンにより酸化されてNOとなり、オゾン水中に溶解して吸収される。ここで、NOがオゾン水中に吸収される際に、水と反応するとNOが生成される(化1参照)が、生成されたNOもオゾンにより酸化されてオゾン水中に吸収されるため、除去されずに残留する窒素酸化物の量を減少することができる。以上より、圧縮用の空気に含まれる窒素酸化物の量は減少し、この空気が空気圧縮工程において油潤滑式空気圧縮機4で圧縮されるため、油潤滑式空気圧縮機4内部の腐食を抑制して圧縮空気を生成することができる。
【0029】
(化1)
3NO+HO→NO+2HNO
【0030】
尚、オゾン水と空気の接触は、第1実施形態で示した気液接触装置3による方法に限定されず、不織布やスポンジ等の吸水性のある素材にオゾン水を吸収させて空気をその素材に通過させる方法、オゾン水中に空気を曝気する方法等を用いることができる。また、オゾン水中に空気を供給する際に、焼結フィルター等を通して空気を細かく分散して供給することにより、空気とオゾン水との接触面積を大きくし、効率よく窒素酸化物の除去が可能である。
【0031】
図4は、本発明の第1実施形態の油潤滑式空気圧縮機4を示す図である。この油潤滑式空気圧縮機4により窒素酸化物を除去された空気を圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮工程が行われる。気液接触装置3により窒素酸化物を除去された空気は管路10を通り油潤滑式空気圧縮機4に供給される。油潤滑式空気圧縮機4では圧縮用の空気中に含まれる水分により発生するドレンの除去が必要となるため、含まれる水分量が少ない空気を供給することが望ましい。そのため、管路10に設置された除湿器15(図1参照)により油潤滑式空気圧縮機4に供給される圧縮用の空気の水分を除去している。除湿器15による水分除去方法としては、空気を冷却することにより空気中に含まれる水分を凝縮させて除去する方法、シリカやアルミナ等の吸湿剤を用いる方法、重力により湿気を多く含んだ空気を分離して除去する方法、水分離フィルターを通して除去する方法等を用いることができる。
【0032】
油潤滑式空気圧縮機4は、空気を圧縮する圧縮機本体41と、圧縮空気中に含まれる油を分離するオイルセパレータタンク42と、圧縮空気中に含まれる水分を除去するためのドライヤ43と、油を冷却するオイルクーラ44と、油に混入する異物を除去するためのオイルフィルタ45とを備える。
【0033】
空気圧縮工程においては、気液接触装置3により窒素酸化物を除去され、除湿器15により水分を除去された圧縮用空気が、管路10から圧縮機本体41に供給される。したがって、含有する窒素酸化物の量が少なくなった空気を圧縮機本体41で圧縮するため、圧縮機本体41内部の腐食を抑制して圧縮空気を生成することができる。
【0034】
圧縮機本体41による空気の圧縮にはスクリュー型の圧縮方式を用いており、管路60から圧縮機本体41内に供給される油はロータ間の潤滑及びロータの冷却等に用いられる。ここで、圧縮機本体41による空気の圧縮方式は、スクリュー型に限られず、レシプロ型、スクロール型、ターボ型など方式を問わず用いることが可能である。圧縮機本体41で圧縮された空気は油とともに管路49を通ってオイルセパレータタンク42に移動し油と分離される。油と分離された空気はドライヤ43により乾燥されて排出管13から外部に排出される。オイルセパレータタンク42にて分離された油46はオイルクーラ44により冷却され、オイルフィルタ45で異物を除去された後、管路60を通って圧縮機本体41に供給される。劣化した油及び油中に含まれるドレンは管路48から適宜排出され、新しい油が管路47から供給される。
【0035】
表1に、第1実施形態の圧縮空気生成システム1を用いて、圧縮空気を生成した時の、気液接触装置3から排出される空気の窒素酸化物濃度を測定した結果を示す。また、比較例として、オゾン水を使用せずオゾンを含まない水を気液接触装置3で用いた場合の結果も併せて示す。尚、測定時の空気中の窒素酸化物濃度は2ppm(NO濃度1ppm、NO2濃度1ppm)であり、第1実施形態においてはオゾン水製造装置2で製造するオゾン水の濃度は1.5mg/Lに設定した。また、気液接触部31に供給する空気の流量は1m/min、気液接触部31の上部から散水するオゾン水(比較例においては水)の流量は2L/minとした。
【0036】
【表1】

【0037】
表1より、第1実施形態においては、気液接触装置3から排出される空気の窒素酸化物濃度は0.01ppm未満であり、気液接触装置3に供給される前の空気の窒素酸化物濃度(2ppm)に比べて減少している。これより、第1実施形態においては、空気に含まれる窒素酸化物濃度を0.1ppm以下にすることができるため、空気圧縮機内の腐食を防止することが可能であることが分かる。一方、比較例においては、気液接触装置3から排出される空気の窒素酸化物濃度は1.0ppmであり、第1実施形態に比べて窒素酸化物の除去が十分ではなく、空気圧縮機の腐食を防止することは困難である。
【0038】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の圧縮空気生成システム及び圧縮空気生成方法について説明する。本発明の第2実施形態の圧縮空気生成システムは、第1実施形態の圧縮空気生成システムにおける油潤滑式空気圧縮機4を水潤滑式空気圧縮機5に置き換えた点で第1実施形態と異なる。また、本発明の第2実施形態の圧縮空気生成方法は、第1実施形態の圧縮空気生成方法における油潤滑式空気圧縮機4を水潤滑式空気圧縮機5に置き換えた点で第1実施形態と異なる。尚、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付記してその説明を省略する。
【0039】
図5に、本発明の第2実施形態に係る水潤滑式空気圧縮機5を示す。水潤滑式空気圧縮機5は、圧縮機本体51に供給する潤滑媒体が水である点で油潤滑式空気圧縮機4と異なる。尚、油潤滑式空気圧縮機4と同様に、種々の圧縮方式の水潤滑式空気圧縮機を用いることができる。油潤滑式空気圧縮機4内を循環する油と同様に、水潤滑式空気圧縮機5内の水は、圧縮機本体51から圧縮空気とともに排出され、セパレータタンク52で空気と分離された後、水クーラ54により冷却され、水フィルタ55により異物を除去されて圧縮機本体51に供給される。また、圧縮空気はセパレータタンク52で水と分離された後、さらにドライヤ53で乾燥され外部に排出される。尚、水潤滑式空気圧縮機5で圧縮する空気に水が含まれていても問題ないため、図1に示す圧縮空気生成システム1における除湿器15は使用しなくてもよい。
【0040】
このように内部に水を循環させて使用する水潤滑式空気圧縮機5においては、圧縮用の空気に窒素酸化物を含む場合、使用する水に窒素酸化物酸化物が溶け込み、圧縮機内の全体に窒素酸化物を含んだ水が行き渡るため腐食の影響が大きくなる。特に、NOが水と反応する際に生成される硝酸(化1参照)により腐食が促進されるため、油潤滑式空気圧縮機4よりも窒素酸化物の影響を大きく受けることになる。
【0041】
第2実施形態の圧縮空気生成システム1は、外部から供給される窒素酸化物を含む空気を、気液接触装置3にてオゾン水製造装置2により製造されたオゾン水と接触させ、その空気を水潤滑式空気圧縮機5に供給して圧縮するものである。したがって、気液接触装置3によるオゾン水と圧縮用空気の接触(気液接触工程)で、水潤滑式空気圧縮機5に供給される圧縮用空気に含まれる窒素酸化物の量を減少することができるため、水潤滑式空気圧縮機で使用する水に溶け込む窒素酸化物の量は減少する。これより、水潤滑式空気圧縮機において使用される水に窒素酸化物が溶け込むことによって起こる圧縮機内の腐食を抑制することが可能となる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態の圧縮空気生成システムを示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態のオゾン水製造装置を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態の気液接触装置を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態の空気圧縮機を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態の水潤滑式空気圧縮機を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 圧縮空気生成システム
2 オゾン水製造装置
3 気液接触装置
4 油潤滑式空気圧縮機(空気圧縮機)
5 水潤滑式空気圧縮機(空気圧縮機)
6 NO濃度モニタ
15 除湿器
21 オゾン水タンク
22 電解セル
23 電源装置
24 オゾン水濃度計
25 軟水器
41 圧縮機本体
42 オイルセパレータタンク
43 ドライヤ
44 オイルクーラ
45 オイルフィルタ
51 圧縮機本体
52 セパレータタンク
53 ドライヤ
54 水クーラ
55 水フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物が成分に含まれている圧縮用の空気を、オゾンを溶解させた水であるオゾン水に接触させる気液接触工程と、
前記オゾン水に接触させた前記空気を空気圧縮機に供給して当該空気を圧縮する空気圧縮工程と、を備えることを特徴とする圧縮空気生成方法。
【請求項2】
前記空気圧縮機は、水潤滑式空気圧縮機であることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気生成方法。
【請求項3】
オゾンを溶解させた水であるオゾン水を製造するオゾン水製造装置と、
窒素酸化物が成分に含まれている空気と前記オゾン水とを接触させる気液接触装置と、
前記気液接触装置により前記オゾン水と接触させた前記空気を圧縮する空気圧縮機と、
を備えることを特徴とする圧縮空気生成システム。
【請求項4】
前記空気圧縮機は水潤滑式空気圧縮機であることを特徴とする請求項3に記載の圧縮空気生成システム。































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−162485(P2007−162485A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356122(P2005−356122)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】