説明

圧迫体

【課題】太い上腕と細い上腕のいずれであっても、装着性が良好で安定した阻血を行うことができる圧迫体を提供する。
【解決手段】空気袋2と保持板3外布4とリング5と面ファスナ8を備えた圧迫体1である。面ファスナ8は、フック部8aとループ部8b部とが同一面に略均等な面積比で混在して設けられ、この面ファスナ8は、外布4の最大想定内径D1と最小想定内径D2との範囲内で、リング5の折り返し部分の近傍で係止可能な長さL3に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定時に人体の腕や手首に巻き付けて阻血するための圧迫体に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧測定に用いられる圧迫体は、人体の上腕あるいは手首に巻き付けて装着した後、内部の空気袋を膨張させることで動脈を圧迫して阻血を行うものである。
【0003】
このような圧迫体としては、図4(a)に示すように、膨張・収縮自在な阻血用の空気袋2と、この空気袋2の外周側に配置され、円弧状に湾曲するとともに弾性を有する保持板3と、これら空気袋2および保持板3を包む外布4と、前記保持板3に固定され、外布4の引き出し部4aを折り返すためのリング5と、このリング5で折り返した引き出し部4a同士を剥離可能に係止する面ファスナ6を備えたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
ここで、面ファスナ6とは、フック部6aとループ部6bとが対をなして、両者を強く圧迫すると、フック部6aとループ部6bとが相互に外れにくいように係止されるとともに、フック部6aとループ部6bとを手で強く引き剥がすと、フック部6aとループ部6bとの係止が外れるものをいい、メカニカルファスナとも呼ばれている。
【0005】
そして、面ファスナ6のフック部6aは、外布4の引き出し部4aの先端側に長さL1で取付け、面ファスナ6のループ部6bは、外布4の引き出し部4aの後端側に長さL2取付けている。
【0006】
ところで、人体の上腕の場合、太い上腕と細い上腕とが存在し、太い上腕の場合には、図4(a)のように、外布4の最大想定内径D1が大きくなり(周長で約34cm)、細い上腕の場合には、図4(b)のように、外布4の最小想定内径D2が小さくなる(周長で約20cm)。
【0007】
そして、図4(a)のような太い上腕の場合には、面ファスナ6のフック部6aは、リング5の折り返し部分の近傍でループ部6bに係止可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−77824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図4(b)のような細い上腕の場合には、外布4の引き出し部4aを上腕に巻き付けながら、面ファスナ6のフック部6aは、リング5の折り返し部分より遠く離れた部分でループ部6bに係止しなければならない。
【0010】
そのために、フック部6aの長さL1は短いが、ループ部6bの長さL2を長くする必要があり、これに伴って外布4の全長も長くなるので、細い上腕の人には、装着性が悪くなるという問題があった。
【0011】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、太い上腕と細い上腕のいずれであっても、装着性が良好で安定した阻血を行うことができる圧迫体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、膨張・収縮自在な阻血用の空気袋と、この空気袋の外周側に配置され、円弧状に湾曲するとともに弾性を有する保持板と、これら空気袋および保持板を包む外布と、前記保持板に固定され、外布の一端側を折り返すためのリングと、このリングで折り返した外布の折り返し部を剥離可能に係止する面ファスナを備えた圧迫体であって、前記面ファスナは、フック部とループ部とが同一面に略均等な面積比で混在して設けられ、この面ファスナは、外布の最大想定内径と最小想定内径との範囲内で、前記リングの折り返し部分の近傍で係止可能な長さに設定されていることを特徴とする圧迫体を提供するものである。
【0013】
請求項2のように、請求項1において、前記面ファスナのフック部とループ部は、外布の幅方向に対して斜め状態で、外布の長さ方向に交互に配置されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、面ファスナとして、フック部とループ部とを同一面に混在して設けたものを用いて、外布の最大想定内径と最小想定内径との範囲内で、リングの折り返し部分の近傍で係止可能な長さに設定している。したがって、太い上腕と細い上腕のいずれであっても、面ファスナは、リングの折り返し部分の近傍であればどの位置でも係止可能であるから、リングの折り返し部分より遠く離れた部分で係止する必要がなくなる。このため、特に細い上腕の人であっても装着性が良好になるので、安定した阻血を行うことができる。また、高価な面ファスナの長さが短くてすむので、安価なる。
【0015】
請求項2によれば、既存のフック部とループ部の各シート体をそれぞれクロスカットして、交互に貼り付けるだけでよいので、安価になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の圧迫体の斜視図である。
【図2】図1の圧迫体であり、(a)は太い腕に装着した断面図、(b)は細い腕に装着した断面図である。
【図3】面ファスナであり、(a)は拡大斜視図、(b)は変形例の平面図である。
【図4】従来の圧迫体であり、(a)は太い腕に装着した断面図、(b)は細い腕に装着した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、背景技術と同一構成・作用の箇所は、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0018】
図1は圧迫体1であり、この圧迫体1は、人体の上腕(手首でも可)に挿入することで装着するものである。
【0019】
図2(a)に断面を示すように、圧迫体1は、エアポンプ等から空気を供給することで膨張し、排気弁等で空気を排出することで収縮する阻血用の空気袋2と、この空気袋2の外周側に配置され、円弧状に湾曲するとともに弾性を有する保持板(C形クリップ)3とを備えている。この空気袋2および保持板3は、帯状の外布4内に包まれて収納されている。
【0020】
保持板3の外周面側には、外布4を貫通するビス等で、幅方向に一対の取付けベース7が固定され、両取付けベース7に跨って、金属製の棒材を偏平楕円状に丸めたリング5が回動可能に支持されている。このリング5は、外布4の引き出し部4aを折り返すためのものである。
【0021】
このリング5で折り返される外布4の引き出し部4aの外面には、引き出し部4a同士を剥離可能に係止する面ファスナ8が貼り付けられている。この面ファスナ8については、後で詳細に説明する。
【0022】
この圧迫体1を上腕に装着する際は、圧迫体1をほぼ筒状の状態に保つ保持板3を弾性に抗して押し広げながら、手首側から上腕に挿入(差し込む)して、上腕の外周に圧迫体1を位置させる。その後、リング5の位置が手首側を上にした上腕の上面側となるように位置決めした後、リング5で折り返した外布4の引き出し部4aを引っ張って弛みを無くした状態で、引き出し部4aに設けた面ファスナ8を利用して固定する。
【0023】
そして、周知のように、空気袋2に空気を供給して膨張させることで、上腕を通る動脈を圧迫して阻血し、その後、空気袋2から空気を徐々に排出して収縮させることで、血圧測定を行うものである。
【0024】
前記面ファスナ8は、図3(a)に要部の拡大斜視図を示すように、フック部8aとループ部8bとが同一面に略均等な面積比で、細かい間隔で混在して設けられている。
【0025】
この面ファスナ8は、図2(a)のような太い上腕で、外布4の最大想定内径D1が大きい場合(周長で約34cm)と、図2(b)のような細い上腕で、外布4の最小想定内径D2が小さい場合(周長で約20cm)の範囲内で、リング5の折り返し部分の近傍で係止可能な長さL3に設定されている。このリング5の折り返し部分の近傍で係止長さL4は、例えば3〜5cm程度が好ましい。
【0026】
前記のような圧迫体1であれば、面ファスナ8として、フック部8aとループ部8bとを同一面に混在して設けたものを用いて、外布4の最大想定内径D1と最小想定内径D2との範囲内で、リング5の折り返し部分の近傍で係止可能な長さL3に設定している。
【0027】
したがって、太い上腕と細い上腕のいずれであっても、面ファスナ8は、リング5の折り返し部分の近傍であればどの位置でも係止可能であるから、リング5の折り返し部分より遠く離れた部分で係止する必要がなくなる。
【0028】
このため、特に細い上腕の人であっても装着性が良好になるので、安定した阻血を行うことができる。また、高価な面ファスナ8の長さL3が短くてすむので(背景技術の長さL1+L2の約1/2)、安価なる。
【0029】
図3(b)は、変形例の面ファスナ8である。面ファスナ8のフック部8aとループ部8bは、外布4の幅方向に対して斜め状態で、外布4の長さ方向に交互に配置されている。
【0030】
この変形例であれば、既存のフック部8aとループ部8bの各シート体をそれぞれクロスカットして、交互に貼り付けるだけでよいので、安価になる。
【符号の説明】
【0031】
1 圧迫体
2 空気袋
3 保持板
4 外布
4a 引き出し部
5 リング
8 面ファスナ
8a フック部
8b ループ部
D1 最大想定内径
D2 最小想定内径
L3 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張・収縮自在な阻血用の空気袋と、この空気袋の外周側に配置され、円弧状に湾曲するとともに弾性を有する保持板と、これら空気袋および保持板を包む外布と、前記保持板に固定され、外布の一端側を折り返すためのリングと、このリングで折り返した外布の折り返し部を剥離可能に係止する面ファスナを備えた圧迫体であって、
前記面ファスナは、フック部とループ部とが同一面に略均等な面積比で混在して設けられ、この面ファスナは、外布の最大想定内径と最小想定内径との範囲内で、前記リングの折り返し部分の近傍で係止可能な長さに設定されていることを特徴とする圧迫体。
【請求項2】
前記面ファスナのフック部とループ部は、外布の幅方向に対して斜め状態で、外布の長さ方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧迫体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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