説明

圧電スピーカ

【課題】 専用の変換回路を用いることなく、オーディオ信号に応じた音声情報を出力することができる。
【解決手段】 筐体8に備えられた変換回路1においてオーディオ信号が入力され、入力されたオーディオ信号が、同じ筐体8に備えられた圧電素子6の特性に適した信号に変換されて出力される。変換回路1から出力された信号が圧電素子6に入力され、入力された信号に応じた音声情報が圧電素子6から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号が入力され、このオーディオ信号に応じた音声情報を出力する圧電スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声が出力される情報機器においては、装置全体の小型化に伴い、ピエゾ素子等といった薄型で軽量の圧電素子が内蔵された圧電スピーカが用いられている。このような圧電スピーカを情報機器に用いる場合は、出力されるオーディオ信号をそのまま圧電スピーカに入力することはできず、専用の昇圧回路と増幅回路とを備えた変換回路を設け、出力されたオーディオ信号を変換回路に入力し、この変換回路にて変換する必要がある。そして、変換回路にて変換されたオーディオ信号が、圧電素子が内蔵された圧電スピーカに入力され、圧電スピーカから音声情報が出力されることになる。
【0003】
ここで、上述したような圧電素子をセンサとして使用し、センサとその周辺回路とを同一空間内に一体化させ、静電遮蔽することにより、ノイズ混入を防止し、取り付け構造を簡素化する方法も考えられている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【特許文献1】特開平02−135521号公報
【特許文献2】特開平03−054621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような圧電スピーカにおいては、出力されたオーディオ信号を専用の変換回路にて変換し、その後、変換されたオーディオ信号が入力される必要があるため、そのための変換回路が必要となり、特に、小型情報機器のように、装置内で回路が占有できるスペースが限られているものにおいては、変換回路で使用される部品サイズの分、搭載不可あるいは小型化への制限が生じてしまうという問題点がある。
【0005】
また、オーディオ信号を出力する制御回路側において、圧電スピーカに内蔵された圧電素子の特性に合わせて変換回路を設定しなければならず、圧電素子を変更する度に、圧電素子の特性に合った変換回路の再設計および再試験を行うための工数が発生してしまうという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点を鑑みてなされたものであって、専用の変換回路を用いることなく、オーディオ信号に応じた音声情報を出力することができる圧電スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、
オーディオ信号に応じた音声情報を出力する圧電スピーカであって、
入力された信号に応じた音声情報を出力する圧電素子と、
前記圧電素子が内蔵された筐体と、
前記筐体に取り付けられ、前記オーディオ信号を前記圧電素子の特性に適した信号に変換して出力する変換回路とを有し、
前記圧電素子は、前記変換回路から出力された信号が入力され、該信号に応じた音声情報を出力する。
【0008】
また、
前記変換回路が搭載され、前記筐体に取り付けられたCOG基板を有することを特徴とする。
【0009】
また、
前記変換回路は、
前記オーディオ信号を予め設定した増幅率で増幅する増幅回路と、
前記増幅回路で増幅されたオーディオ信号をPWM形式に変換するPWM変換回路と、
前記PWM変換回路でPWM変換されたオーディオ信号を前記圧電素子の特性に適した電圧に昇圧する昇圧回路と、
前記昇圧回路で昇圧されたオーディオ信号から低周波数成分を除去するハイパスフィルタとを有することを特徴とする。
【0010】
また、
前記変換回路は、前記圧電素子から前記増幅回路側へ逆電流が流れることを防止する逆電圧防止回路を有することを特徴とする。
【0011】
また、
前記圧電素子は、前記筐体内に複数枚設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、
前記オーディオ信号が入力される2つの入力端子を有し、
前記変換回路は、
前記2つの入力端子を介して入力されたオーディオ信号をそれぞれ前記圧電素子の特性に適した信号に変換して2つの出力信号として出力することを特徴とする。
【0013】
上記のように構成された本発明においては、オーディオ信号が入力され、入力されたオーディオ信号が変換回路によって、圧電素子の特性に適した信号に変換され、出力される。変換回路から出力された信号が圧電素子に入力され、圧電素子において、入力された信号に応じた音声情報が出力される。この変換回路と圧電素子とが、一つの筐体に取り付けられている。
【0014】
このように、変換回路と圧電素子とが一つの筐体に取り付けられているので、専用の変換回路を用いることなく、オーディオ信号に応じた音声情報を出力することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明においては、オーディオ信号に応じた音声情報を出力する圧電スピーカであって、入力された信号に応じた音声情報を出力する圧電素子と、圧電素子が内蔵された筐体と、筐体に取り付けられ、オーディオ信号を圧電素子の特性に適した信号に変換して出力する変換回路とを有し、圧電素子が、変換回路から出力された信号が入力され、信号に応じた音声情報を出力するという構成としたため、専用の変換回路を用いることなく、オーディオ信号に応じた音声情報を出力することができる。
【0016】
また、変換回路が搭載され、筐体に取り付けられたCOG基板を有するものにおいては、変換回路が筐体内を占有するスペースを、エポキシ基板を使用する場合に比べて縮小することができる。
【0017】
また、変換回路に、圧電素子から増幅回路側へ逆電流が流れることを防止する逆電圧防止回路を設けるものにおいては、電源が入ってない状態において、圧電素子が振動することによって発生する逆電流が、増幅回路側へ流れてしまうことを防止できる。
【0018】
また、圧電素子を、筐体内に複数枚設けたものにおいては、大きな音を発生させることができる。
【0019】
また、オーディオ信号が入力される2つの入力端子を有し、変換回路が、2つの入力端子を介して入力されたオーディオ信号をそれぞれ圧電素子の特性に適した信号に変換して2つの出力信号として出力する構成としたものにおいては、ステレオ機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の圧電スピーカの第1の実施の形態を示す図である。
【0022】
本形態は図1に示すように、筐体8の内部に圧電素子6が内蔵され、また、筐体8の上部に、入力されたオーディオ信号を変換して圧電素子6に与えるためのCOG(Chip On Glass)基板2が設けられて構成されている。このCOG基板2には、外部から電源が供給されるための電源端子3およびグランド端子4と、オーディオ信号が入力されるオーディオ信号端子5と、リード線7を介して圧電素子6と接続され、オーディオ信号端子5を介して入力されたオーディオ信号を、圧電素子6の特性に適した信号に変換する変換回路1とが設けられている。
【0023】
図2は、図1に示した変換回路1の構成を示すブロック図である。
【0024】
図2に示すように、図1に示した変換回路1は、オーディオ信号端子5を介して入力されたオーディオ信号を増幅する増幅回路101と、増幅回路101にて増幅されたオーディオ信号をPWM(Pulse Width Modulation)形式の信号に変換するPWM変換回路102と、PWM変換回路102にて変換されたオーディオ信号を、圧電素子6の特性に適した電圧に昇圧する昇圧回路103と、昇圧回路103にて昇圧されたオーディオ信号から低域周波数成分を除去するハイパスフィルタ104と、圧電素子6から増幅回路101へ逆電流が流れることを防止するための逆電圧防止回路105とから構成されている。
【0025】
以下に、上記のように構成された圧電スピーカの動作について図1および図2を用いて説明する。
【0026】
筐体8の上部に設けられたCOG基板2上の電源端子3およびグランド端子4を介して、外部からの電源が変換回路1に供給される。また、オーディオ信号端子5を介して、外部からオーディオ信号が変換回路1に入力される。
【0027】
外部から変換回路1に供給された電源は、変換回路1内の増幅回路101、PWM変換回路102、昇圧回路103、ハイパスフィルタ104および逆電圧防止回路105にそれぞれ供給される。
【0028】
また、オーディオ信号端子5を介して変換回路1に入力されたオーディオ信号は、増幅回路101において、予め設定された増幅率で増幅される。
【0029】
次に、増幅回路101にて増幅されたオーディオ信号は、PWM変換回路102にて入力され、PWM変換回路102において、入力されたオーディオ信号がPWM形式の信号に変換され、PWM形式に変換されたオーディオ信号は、次段の昇圧回路103に入力され、昇圧回路103において、圧電素子6の特性に適した電圧に昇圧されて出力される。
【0030】
さらに、昇圧回路103から出力されたオーディオ信号は、低域周波数成分を除去するためのハイパスフィルタ104に入力され、圧電素子6にて再生が困難である低周波成分が除去される。
【0031】
その後、ハイパスフィルタ104にて低周波数成分が除去されたオーディオ信号は、逆電圧防止回路105を介して変換回路1から出力され、リード線7を介して圧電素子6に入力され、このオーディオ信号によって圧電素子6が振動し、オーディオ信号出力端子5を介して入力されたオーディオ信号に応じた音声情報が出力される。
【0032】
なお、変換回路1内において圧電素子6に出力する前段に逆電圧防止回路105を設けることにより、電源が入っていない状態で圧電素子6が振動することによって発生する逆電流が、圧電素子6から増幅回路101側に流れない構成としている。
【0033】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の圧電スピーカの第2の実施の形態を示す図である。
【0034】
本形態は図3に示すように、第1の実施の形態にて示したものに対して、圧電素子6が1枚追加され、全体的には2枚の圧電素子6が設けられている点のみが異なるものである。
【0035】
これにより、本形態においては、圧電素子6が1枚の場合よりも、大きな音を発生させることができる。つまり、大きな音を発生させる必要がある場合に、適した形態となっている。
【0036】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の圧電スピーカの第3の実施の形態を示す図である。
【0037】
本形態は図4に示すように、第1の実施の形態にて示したものに対して、オーディオ信号が入力されるオーディオ信号端子が、オーディオ信号端子(右)9とオーディオ信号端子(左)10との2つに分かれた構造となっている点が異なるものである。また、COG基板上12には、対になる圧電スピーカへオーディオ信号を出力するための出力端子13が設けられている。
【0038】
図5は、図4に示した圧電スピーカと対になる圧電スピーカの一形態を示す図である。
【0039】
図5に示すように、図4に示した圧電スピーカと対になる圧電スピーカの筐体16には、出力端子13から出力されたオーディオ信号が入力される信号入力端子18およびグランド電位が入力されるグランド端子19が設けられている。さらに、リード線20を介して信号入力端子18およびグランド端子19に接続された圧電素子17が設けられている。
【0040】
図6は、図4に示した変換回路11の構成を示すブロック図である。
【0041】
図6に示すように、図4に示した変換回路11は、第1の実施の形態にて示したものに対して、入力および出力されるオーディオ信号の処理系統が2系統となっている点が異なるものである。
【0042】
オーディオ信号端子(右)9を介して入力されたオーディオ信号は、増幅回路101、PWM変換回路102、昇圧回路103およびハイパスフィルタ104にて上述したものと同様の処理が行われ、リード線14を介して圧電素子15に出力され、また、オーディオ信号端子(左)10を介して入力されたオーディオ信号は、同様に処理され、出力端子13、信号入力端子18およびリード線20を介して、対になる圧電素子17に出力される。
【0043】
以下に、上記のように構成されたステレオ機能が付加された圧電スピーカの動作について説明する。
【0044】
まず、オーディオ信号端子(左)10とオーディオ信号端子(右)9とを介してオーディオ信号がそれぞれ入力される。オーディオ信号端子(左)10とオーディオ信号端子(右)9とを介して入力されたオーディオ信号は、変換回路11に入力され、変換回路11内の各ブロックで、第1の実施の形態にて説明したものと同じ処理が行われる。
【0045】
その後、オーディオ信号端子(右)9から入力されて変換回路11にて処理されたオーディオ信号がリード線14を介して圧電素子15に入力され、また、オーディオ信号端子(左)10から入力されて変換回路11にて処理されたオーディオ信号が、出力端子13、信号入力端子18およびリード線20を介して圧電素子17に入力される。
【0046】
そして、圧電素子15,17のそれぞれから、入力されたオーディオ信号に応じた音声情報が出力される。
【0047】
これにより、オーディオ信号端子(右)9から入力されたオーディオ信号に応じた音声情報が圧電素子15から右側の音声情報として出力され、また、オーディオ信号端子(左)10から入力されたオーディオ信号に応じた音声情報が圧電素子17から左側の音声情報として出力されることになり、ステレオ機能が可能となる。
【0048】
図7は、図4、図5および図6に示した圧電スピーカが搭載された携帯情報機器の一例を示す図である。
【0049】
図7に示すように、図4に示した圧電スピーカ201と、図5に示した圧電スピーカ202とを、携帯情報機器203に搭載することにより、小型の携帯情報機器203において、ステレオ再生可能なシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の圧電スピーカの第1の実施の形態を示す図である。
【図2】図1に示した変換回路1の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の圧電スピーカの第2の実施の形態を示す図である。
【図4】本発明の圧電スピーカの第3の実施の形態を示す図である。
【図5】図4に示した圧電スピーカと対になる圧電スピーカの一形態を示す図である。
【図6】図4に示した変換回路の構成を示すブロック図である。
【図7】図4、図5および図6に示した圧電スピーカが搭載された携帯情報機器の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1,11 変換回路
2,12 COG基板
3 電源端子
4,19 グランド端子
5 オーディオ信号端子
6,15,17 圧電素子
7,14,20 リード線
8,16 筐体
9 オーディオ信号端子(右)
10 オーディオ信号端子(左)
13 出力端子
18 信号入力端子
101 増幅回路
102 PWM変換回路
103 昇圧回路
104 ハイパスフィルタ
105 逆電圧防止回路
201,202 圧電スピーカ
203 携帯情報機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号に応じた音声情報を出力する圧電スピーカであって、
入力された信号に応じた音声情報を出力する圧電素子と、
前記圧電素子が内蔵された筐体と、
前記筐体に取り付けられ、前記オーディオ信号を前記圧電素子の特性に適した信号に変換して出力する変換回路とを有し、
前記圧電素子は、前記変換回路から出力された信号が入力され、該信号に応じた音声情報を出力する圧電スピーカ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電スピーカにおいて、
前記変換回路が搭載され、前記筐体に取り付けられたCOG基板を有することを特徴とする圧電スピーカ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電スピーカにおいて、
前記変換回路は、
前記オーディオ信号を予め設定した増幅率で増幅する増幅回路と、
前記増幅回路で増幅されたオーディオ信号をPWM形式に変換するPWM変換回路と、
前記PWM変換回路でPWM変換されたオーディオ信号を前記圧電素子の特性に適した電圧に昇圧する昇圧回路と、
前記昇圧回路で昇圧されたオーディオ信号から低周波数成分を除去するハイパスフィルタとを有することを特徴とする圧電スピーカ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧電スピーカにおいて、
前記変換回路は、前記圧電素子から前記増幅回路側へ逆電流が流れることを防止する逆電圧防止回路を有することを特徴とする圧電スピーカ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の圧電スピーカにおいて、
前記圧電素子は、前記筐体内に複数枚設けられていることを特徴とする圧電スピーカ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の圧電スピーカにおいて、
前記オーディオ信号が入力される2つの入力端子を有し、
前記変換回路は、
前記2つの入力端子を介して入力されたオーディオ信号をそれぞれ前記圧電素子の特性に適した信号に変換して2つの出力信号として出力することを特徴とする圧電スピーカ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−67092(P2006−67092A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245338(P2004−245338)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】