説明

圧電型力検出装置

【課題】 比較的簡便な手法で、積分増幅器の入力側の電気的絶縁性の低下を判定することができる圧電型力検出装置を提供する。
【解決手段】 エンジン1が通常作動させた後に停止され、エンジン1の作動停止後に積分増幅器21がリセットされ、該リセット後に積分増幅器の電源がオンされる(S21〜S24)、電源オン時点からの積分増幅器21の出力変化特性、すなわち出力電圧Eoの立ち上り時間τRが計測される(S25)。計測された立ち上り時間τRに基づいて圧力センサ(または接続ケーブル、接続コネクタ)の劣化状態が判定される。積分増幅器21の入力側に接続される圧力センサまたは接続ケーブル等の絶縁抵抗値が変化すると、圧力センサ11から積分増幅器21の出力までの周波数特性が変化するので、立ち上り時間τRに基づいて絶縁抵抗値の低下を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を用いて圧電素子に加わる力(圧力)を検出する圧電型力検出装置に関し、特に圧電素子に接続された積分増幅器を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電素子及び圧電素子に接続された積分増幅器を備える圧力検出装置が示されている。この装置によれば、内燃機関の筒内圧が検出され、内燃機関の運転状態に応じたタイミングで積分増幅器がリセットされる。
【0003】
特許文献2には、圧電素子と、該圧電素子の温度を検出する温度検出素子と、圧電素子の出力信号を増幅する増幅器とを備える筒内圧検出装置が示されている。この装置によれば、温度検出素子により検出される温度に応じて、増幅器の増幅率が調整され、調整後の出力信号に応じて、増幅器の出力信号を基準値にリセットするタイミングが算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−329812号公報
【特許文献2】特開2009−229329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2に示された装置は、圧電素子出力のオフセットドリフトの除去あるいは補正を行うものであり、圧電素子またはその周辺回路の特性劣化(特に絶縁抵抗値の低下)の検出または特性劣化の影響の補正を行うものではない。
【0006】
圧電素子の電気的絶縁性(絶縁抵抗値)が低下すると検出値の誤差が大きくなるため、圧電素子または周辺回路の電気的絶縁性の低下を判定する機能を有する検出装置が望まれていた。
【0007】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、比較的簡便な手法で、積分増幅器の入力側の電気的絶縁性の低下を判定することができる圧電型力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、被測定物(1)に装着された圧電素子(11)と、該圧電素子に接続される積分増幅器(21)とを備える圧電型力検出装置において、前記被測定物(1)を通常作動させた後にその作動を停止させる停止制御手段と、前記被測定物の作動停止後に前記積分増幅器(21)をリセットするリセット手段と、該リセット手段によるリセット時点からの前記積分増幅器(21)の出力変化特性を検出する出力変化特性検出手段と、前記出力変化特性に基づいて前記圧電素子(11)の劣化状態を判定する劣化状態判定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧電型力検出装置において、前記劣化状態判定手段は、前記積分増幅器(21)をリセットしたときに、前記積分増幅器の出力(Eo)が所定レベル(VRTH)に達するまでの立ち上り時間(τR)を検出し、該立ち上り時間(τR)が第1判定閾値(τRTHD)以下であるときに、前記圧電素子(11)が劣化したと判定し、前記立ち上り時間(τR)が前記第1判定閾値より小さい第2判定閾値(τRTHF)以下であるときは、前記圧電素子(11)が故障したと判定することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の圧電型力検出装置において、前記圧電素子(11)が劣化したと判定されたときに、前記立ち上り時間(τR)に応じて前記積分増幅器の出力信号に含まれる周波数成分の振幅(C1,C2)及び位相(φ1,φ2)を補正する補正手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、被測定物を通常作動させた後にその作動が停止され、被測定物の作動停止後に積分増幅器がリセットされ、該リセット時点からの積分増幅器の出力変化特性に基づいて圧電素子の劣化状態が判定される。積分増幅器の入力側に接続される圧電素子または接続部材の絶縁抵抗値が変化すると、圧電素子から積分増幅器出力までの周波数特性が変化する。したがって、再作動開始時点からの出力変化特性から、圧電素子または接続部材の絶縁抵抗値の変化(低下)を検出することができる。また被測定物を通常作動させた後に停止させて、出力変化特性を検出することにより、被測定物の温度が通常作動状態の温度に近い状態で正確な劣化判定を行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、積分増幅器をリセットしたときにおける積分増幅器出力の立ち上り時間が検出され、該立ち上り時間が第1判定閾値以下であるときに、圧電素子が劣化したと判定され、立ち上り時間が第1判定閾値より小さい第2判定閾値以下であるときは、圧電素子が故障したと判定される。検出される立ち上り時間は、圧電素子及び積分増幅器を含む測定系の周波数特性を示すので、検出される立ち上り時間に応じて、圧電素子の故障または劣化を判定することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、圧電素子が劣化したと判定されたときに、検出された立ち上り時間に応じて積分増幅器の出力信号に含まれる周波数成分の振幅及び位相が補正されるので、例えば当該検出装置を内燃機関の筒内圧の検出に適用し、図示平均有効圧を検出する場合において、劣化状態においても正確な検出値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】圧電型圧力センサの等価回路及び積分増幅器の構成を示す回路図である。
【図3】立ち上り時間(τR)の定義を説明するための図である。
【図4】圧電型圧力センサ及び積分増幅器を含む測定系の低域遮断特性を示す図である。
【図5】図示平均有効圧(IMEP)を算出する処理のフローチャートである。
【図6】圧力センサの劣化状態を判定する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)及びその制御装置の全体構成図であり、例えば4気筒のエンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3にはスロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ4が連結されており、センサ4の検出信号は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)5に供給される。
【0016】
燃料噴射弁6はエンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気管2の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間が制御される。エンジン1の各気筒には、点火プラグ7が設けられており、点火プラグ7はECU5に接続されている。ECU5は、点火プラグ7に点火信号を供給する。
【0017】
スロットル弁3の下流側には吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ8、及び吸気温TAを検出する吸気温センサ9が設けられている。エンジン1の本体には、エンジン冷却水温TWを検出する冷却水温センサ10が装着されている。さらにエンジン1の各気筒の点火プラグ7の近傍には、筒内圧を検出する圧電型圧力センサ11が装着されている。センサ8〜11の検出信号は、ECU5に供給される。圧電型圧力センサ11は、圧電素子で構成され、筒内圧に応じた電荷を出力する。
【0018】
ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ12が接続されており、クランク軸の回転角度に応じた信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ12は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置でパルス(以下「CYLパルス」という)を出力する気筒判別センサ、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)に関し所定クランク角度前のクランク角度位置で(4気筒エンジンではクランク角180度毎に)TDCパルスを出力するTDCセンサ及びTDCパルスより短い一定クランク角周期(例えば6度周期)で1パルス(以下「CRKパルス」という)を発生するCRKセンサから成り、CYLパルス、TDCパルス及びCRKパルスがECU5に供給される。これらのパルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御、エンジン回転数(エンジン回転速度)NEの検出に使用される。
【0019】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)、該CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路(メモリ)、燃料噴射弁6及び点火プラグ7に駆動信号を供給する出力回路等から構成される。
【0020】
ECU5は、圧力センサ11により検出される筒内圧PCYLを用いて燃焼状態パラメータである図示平均有効圧IMEPを算出し、図示平均有効圧IMEPに応じた点火時期制御を行う。この点火時期制御の詳細は、特許第3993851号公報に示されている。
【0021】
図2は、圧力センサ11及び接続ケーブルの等価回路と、圧力センサ11の出力信号を増幅する積分増幅器の構成を示す図である。圧力センサ11及び接続ケーブル(及び接続コネクタ)の等価回路は、電圧Eiを出力する電圧源と、センサ及びケーブルの合成抵抗Roc及び合成静電容量Cocの並列回路として表すことができる。積分増幅器21は、演算増幅器AMP及び帰還抵抗Rf及び帰還容量Cfによって構成される。本実施形態では、積分増幅器21はECU5の入力回路内に設けられている。
【0022】
圧力センサ11に力が加わると、センサ感度Ssに応じた電荷Qが発生し、電荷Qは、印加された力Fに比例する(Q=Ss×F)。積分増幅器21の出力電圧Eoは下記式(1)で与えられ、圧力センサ11の印加される力Fに比例する。
Eo=Q/Cf=Ss×F/Cf (1)
【0023】
一方、エンジン1の燃焼状態を示す図示平均有効圧IMEPは、下記式(2)により比較的高精度かつ簡便に算出することができる。この式(2)による図示平均有効圧の算出手法は特公平8−20339号公報に示されている。
【数1】

【0024】
式(2)のC1は、センサ出力Eoに含まれるエンジン回転数NE[rpm]に対応する周波数(基本周波数)f1(=NE/60)の成分(以下「基本周波数成分」という)の振幅であり、C2は基本周波数f1の2倍の周波数に対応する2次成分の振幅である。またφ1はクランク角度で示される基本周波数成分の位相であり、φ2は2次成分の位相であり、hは4サイクルエンジンでは「1/2」に設定され、2サイクルエンジンでは「1」に設定される定数であり、λはエンジンのコンロッド長sとクランク半径rとの比(s/r)である。
【0025】
次に振幅C1,C2の算出手法を説明する。
圧力センサ11の出力信号を積分増幅器21により増幅することにより得られる出力電圧Eoの時間変化波形P(ωt)は、離散フーリエ変換を行うことにより、下記式(3)で示されるように有限個の正弦波関数の和として示す(近似する)ことができる。式(3)のωが角速度、tは時間であり、本実施形態ではωtがクランク角度に相当する。1燃焼サイクルにおけるデータサンプル数をnとすると、式(3)のmはn/2である。また式(4)及び(5)で振幅Ck及び位相φkを定義すると、式(3)は式(6)に変形される。すなわち、上記振幅C1,C2及び位相φ1,φ2は、それぞれ式(4)及び(5)によって算出することができる。
【数2】

【0026】
また式(4)及び(5)のak及びbkは、下記式(7)及び(8)で与えられ、式(6)のa0は、下記式(9)で与えられる。
【数3】

【0027】
圧力センサ11を含む回路の合成抵抗Rocは、主として圧力センサ11の絶縁抵抗値に相当し、圧力センサ11が劣化してくると合成抵抗Rocが徐々に低下する傾向がある。そのため、圧力センサ11から積分増幅器21の出力までの測定系の低域遮断周波数が上昇し、出力電圧Eoに基づいて算出される図示平均有効圧IMEPの誤差が増加するという課題がある。
【0028】
そこで、本実施形態では、以下に説明するようにエンジン1を停止させて、積分増幅器21をリセットした後に、出力電圧Eoの立ち上り時間τRを計測し、立ち上り時間τRに応じて圧力センサ11の劣化状態を判定するようにしている。
【0029】
立ち上り時間τRは、図3に示すようにリセット後の電源オン時刻t0から、出力電圧Eoが所定レベルVRTH(例えば最大電圧の63%に設定される)に達する時刻t1までの時間として定義される。すなわち、立ち上り時間τRは、所定レベルVRTHを最大電圧の63%に設定した場合、測定系の時定数に相当するので、以下「時定数τR」という。時定数τRは、下記式(10)で与えられる。式(10)のτ0は、合成抵抗Rocが帰還抵抗Rfに比べて十分に大きい理想状態に対応する時定数であり、下記式(11)で与えられる。また「A」は、演算増幅器AMPの増幅率である。なお、式(10)から、合成抵抗Rocは、下記式(12)で与えられる。
【数4】

【0030】
なお、時定数τRの計測は、圧力センサ11の実際の使用状態に近い状態で行うことが望ましいので、エンジン1の通常運転を少なくとも暖機が完了するまで実行し、その後エンジン1を停止させた直後に行われる。ただし、圧力センサ11の劣化(絶縁抵抗の低下)が著しい場合には、暖機完了前であっても劣化検出が可能である。
【0031】
また圧力センサ11から積分増幅器21の出力までの測定系は、帰還抵抗Rfを含むために低域遮断特性を有する一次系となり、低域遮断周波数fcは、下記式(13)で与えられる。
fc=1/(2π×τR) (13)
【0032】
図4は、この低域遮断特性(ゲインGc及び位相遅れθc)を示す図であり、実線がゲイン特性を示し、破線が位相遅れ特性を示す。なお横軸は、低域遮断周波数fcで正規化した相対周波数frである。ゲインGc及び位相遅れθcは、角周波数ωを用いるとそれぞれ下記式(14)及び(15)で与えられる。
【数5】

【0033】
例えば計測された時定数τRが0.1秒である場合、低域遮断周波数fcは、1.59Hzとなる。したがって、エンジン回転数NEが600rpm(10Hzに相当)であるときは、基本周波数成分C1に対応するゲインG1は、「0.988」(図4において、fr=10/1.59=6.28における振幅)となり、位相遅れθ1は「9.04deg」となり、2次成分C2に対応するゲインG2は、「0.997」となり、位相遅れθ2は「4.55deg」となる。
【0034】
したがって、本実施形態では上記式(2)に代えて、下記式(2a)を用いて図示平均有効圧IMEPを算出する。これにより、時定数τRが変化しても正確な図示平均有効圧IMEPを得ることができる。
【数6】

図5は、図示平均有効圧IMEPを算出する処理のフローチャートである。この処理は、ECU5のCPUでTDCパルスの発生に同期して実行される。
【0035】
ステップS10では、故障フラグFFAILが「1」であるか否かを判別する。故障フラグFFAILは、図6に示す処理で圧力センサ11が故障していると判定されたとき「1」に設定される(ステップS23,S24参照)。ステップS10の答が肯定(YES)であるときは、直ちに処理を終了する。
【0036】
ステップS10の答が否定(NO)であるときは、ステップS11に進み、所定クランク角度毎にサンプリングされたデータPj(j=1〜n)を読み込む。ステップS12では上述した離散フーリエ変換演算を、読み込んだデータPjについて実行し、基本周波数成分の振幅C1及び2次成分の振幅C2を算出する(以下それぞれ「第1周波数振幅」及び「第2周波数振幅」という)。
【0037】
ステップS13では、第1及び第2周波数振幅C1,C2、及び図6の処理で算出されるゲインG1,G2,位相遅れθ1,θ2を、上記式(2a)に適用し、図示平均有効圧IMEPを算出する。
【0038】
図6は、圧力センサ11の劣化状態を判定する手順を示すフローチャートである。
エンジン1の通常運転を実行している状態でエンジン1を停止し(ステップS21)、測定系の電源をオフとする(ステップS22)。その後に積分増幅器21をリセットし(ステップS23)、測定系の電源をオンした後の出力電圧Eoの変化を記録して時定数τRを計測する(ステップS24,S25)。積分増幅器21のリセットは、帰還容量Cfの両端を図示しない電子スイッチにより短絡することにより行われる。
【0039】
ステップS26では、時定数τRが故障判定閾値τRTHF以下であるか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときは、圧力センサ11が故障していると判定し、故障フラグFFAILを「1」に設定する(ステップS27)。
【0040】
ステップS26で時定数τRが故障判定閾値τRTHFより大きいときは、時定数τRが劣化判定閾値τRTHD以下であるか否かを判別する(ステップS28)。劣化判定閾値τRTHDは、故障判定閾値τRTHFより大きな値に設定される。ステップS28の答が肯定(YES)であるときは、圧力センサ11が劣化していると判定し、劣化フラグFDETを「1」に設定する(ステップS29)とともに、時定数τRに応じてゲインG1,G2及び位相遅れθ1,θ2を算出する(ステップS30)。
【0041】
ステップS28の答が否定(NO)、すなわち時定数τRが劣化判定閾値τRTHDより大きいときは、圧力センサ11は正常と判定し、正常フラグFOKを「1」に設定する(ステップS31)。次いで、ゲインG1,G2をともに「1.0」に設定し、位相遅れθ1,θ2をともに「0」に設定する(ステップS32)。
【0042】
なお、故障フラグFFAILが「1」となったとき、及び劣化フラグFDETが「1」となったときは、警告表示を行うことが望ましい。
【0043】
以上のように本実施形態では、エンジン1が通常作動させた後に停止され、エンジン1の作動停止後に積分増幅器21がリセットされ、該リセット後に積分増幅器の電源がオンされ、電源オン時点からの積分増幅器21の出力変化特性、すなわち出力電圧Eoの立ち上り時間τRに基づいて圧力センサ(または接続ケーブル、接続コネクタ)の劣化状態が判定される。積分増幅器21の入力側に接続される圧力センサまたは接続ケーブル等の絶縁抵抗値が変化すると、圧力センサ11から積分増幅器21の出力までの周波数特性が変化するので、立ち上り時間τRに基づいて絶縁抵抗値の変化(低下)を検出することができる。またエンジン1を通常作動させた後に停止させて、直ちに立ち上り時間τRを検出することにより、エンジン1の温度が通常作動状態の温度に近い状態で正確な劣化判定を行うことができる。
【0044】
より具体的には、立ち上り時間τRが劣化判定閾値τRTHD以下であるときに、圧力センサ11が劣化したと判定され、立ち上り時間τRが劣化判定閾値τRTHDより小さい故障判定閾値τRTHF以下であるときは、圧力センサ11が故障したと判定される。検出される立ち上り時間τRは、圧力センサ11及び積分増幅器21を含む測定系の周波数特性を示すので、検出される立ち上り時間τRに応じて、圧力センサ11の故障または劣化を判定することができる。
【0045】
さらに圧力センサ11が劣化したと判定されたときに、検出された立ち上り時間τRに応じてゲインG1,G2及び位相遅れθ1,θ2が算出され、これらが適用される式(2a)を用いて図示平均有効圧IMEPが算出されるので、圧力センサ11が劣化した状態においても正確な値を得ることができる。
【0046】
本実施形態では、エンジン1が被測定物に相当し、圧力センサ11及びECU5の積分増幅器21が圧電型力検出装置を構成し、ECU5が停止制御手段、リセット手段、出力変化特性検出手段、及び劣化状態判定手段を構成する。
【0047】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、内燃機関を被測定物とし、筒内圧を検出する圧電型力検出装置を示したが、これに限るものではなく、圧電素子と、圧電素子出力を増幅する積分増幅器を備え、圧電素子に加わる力を検出する圧電型力検出装置であれば、特定の被測定物及び検出対象パラメータに限らず、本発明を適用可能である。
【0048】
また上述した実施形態では、立ち上り時間τRが回路の時定数となるように所定レベルVRTHを設定したが、立ち上り時間の定義は、これに限るものではなく、例えば最大値の10%から90%に達するまでの時間を用いてもよい。
【0049】
また上述した実施形態では、立ち上り時間(時定数)τRと、判定閾値τRTHF、τRTHDとを比較することにより、劣化状態の判定を行う(図6,ステップS26,S28)ようにしたが、時定数τRを式(12)に適用して合成抵抗値(絶縁抵抗値)Rocを算出し、合成抵抗値Rocと、対応する判定閾値とを比較することにより、劣化状態の判定を行うようにしてもよい。
【0050】
また上述した実施形態では、測定系の電源をオフして積分増幅器21のリセットを行い、その後測定系の電源をオンし、電源オン時点から立ち上り時間τRを計測するようにしたが、電源オンのまま積分増幅器21のリセットを行い、そのリセット時点から立ち上り時間τRを計測するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 内燃機関(被測定物)
5 電子制御ユニット(停止制御手段、リセット手段、出力変化特性検出手段、劣化状態判定手段)
11 圧力センサ(圧電素子)
21 積分増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に装着された圧電素子と、該圧電素子に接続される積分増幅器とを備える圧電型力検出装置において、
前記被測定物を通常作動させた後にその作動を停止させる停止制御手段と、
前記被測定物の作動停止後に前記積分増幅器をリセットするリセット手段と、
該リセット手段によるリセット時点からの前記積分増幅器の出力変化特性を検出する出力変化特性検出手段と、
前記出力変化特性に基づいて前記圧電素子の劣化状態を判定する劣化状態判定手段とを備えることを特徴とする圧電型力検出装置。
【請求項2】
前記劣化状態判定手段は、前記積分増幅器をリセットしたときに、前記積分増幅器の出力が所定レベルに達するまでの立ち上り時間を検出し、該立ち上り時間が第1判定閾値以下であるときに、前記圧電素子が劣化したと判定し、前記立ち上り時間が前記第1判定閾値より小さい第2判定閾値以下であるときは、前記圧電素子が故障したと判定することを特徴とする請求項1に記載の圧電型力検出装置。
【請求項3】
前記圧電素子が劣化したと判定されたときに、前記立ち上り時間に応じて前記積分増幅器の出力信号に含まれる周波数成分の振幅及び位相を補正する補正手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の圧電型力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−133332(P2011−133332A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292660(P2009−292660)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【Fターム(参考)】