説明

圧電振動デバイスの温度試験装置

【課題】圧電振動デバイスの試験工程において温度特性を測定する際に余分な待機時間や測定時間がかかるのを防止する、すなわち製造タクトの時間を抑制する。
【解決手段】温度試験装置1は、1つの温度槽11内において水晶振動子CRをX方向に沿って搬送しながら水晶振動子CRの特性を測定するインライン方式の温度試験装置である。温度試験装置1には、水晶振動子CRを搭載したキャリアCを一次待機させる待機部4と、水晶振動子CRの温度変化に伴った各温度における水晶振動子CRの発振周波数を測定する測定部5と、がX方向に沿って設けられている。また、待機部4と測定部5とは1つの温度槽11内に設けられている。この温度槽11内には、X方向に沿って3つの第1〜3温度領域12〜14が構成され、第1〜3温度領域12〜14それぞれに設定温度が異なる第1〜3測定部51〜53が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスの温度試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動デバイスとして、例えば、水晶振動子などが挙げられる。この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が略直方体のパッケージで構成される。このパッケージはセラミックのベースと金属のキャップとから構成され、パッケージ内部は気密封止されている。また、このパッケージ内部では、水晶振動片が、ベース上の電極パッドに導電性接着剤を介して接合されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、下記する特許文献1に記載された水晶振動子のような圧電振動デバイスの製造工程の一つに、温度試験工程がある。この温度試験工程は、圧電振動デバイスの温度特性を測定する工程であり、任意に設定された温度下における圧電振動デバイスの特性、例えば発振周波数が適正な値か否かで圧電振動デバイスの良否を判定する工程である。
【0004】
従来の圧電振動デバイスの温度試験工程は、図14に示すようなリング状の温度槽91を備えた温度試験装置9により行なわれる。
【0005】
この図14に示す温度試験装置9では、リング状の温度槽91内に複数の圧電振動デバイスDを搭載するリング状の搭載部92が設けられ、温度槽91の内部外周に圧電振動デバイスDの発振周波数を測定する測定部93が設けられている。
【0006】
そして、この図14に示す温度試験装置9では、搭載部92に複数の圧電振動デバイスDを載置し、温度槽91内を予め設定した設定温度にする。温度槽91内が設定温度になると、搭載部を図14の矢印に示すように反時計回りに回しながら測定部93直近の圧電振動デバイスD(この図14では圧電振動デバイスD1)の発振周波数を測定部93により測定する。この測定方法では、1つ1つ個別に圧電振動デバイスDの発振周波数を測定する。なお、図14に示すような従来の温度試験装置9では、温度槽91で設定できる温度は1つとなっている。そのため、温度試験装置9では複数の温度槽91を備えている。
【特許文献1】特開2002−158558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図14に示すリング状の温度試験装置9では、上記したように、1つの温度槽91内が設定温度に保たれているので、温度槽91の搭載部92に載置した全ての圧電振動デバイスDの発振周波数の測定を終えるまで、測定済みの圧電振動デバイスDを待機させなければならない。
【0008】
また、1つの温度槽91に対して常に1つの温度領域しか温度試験を行なうことができず、他の温度領域の試験は、他の温度槽91に圧電振動デバイスDを移して行なわなければならない。
【0009】
上記したことから、従来の温度試験装置9では、圧電振動デバイスD1つ1つに対して余分な待機時間や測定時間(複数の温度槽91間の圧電振動デバイスDの移送時間など)がかかる。
【0010】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、圧電振動デバイスの試験工程において温度特性を測定する際に余分な待機時間や測定時間がかかるのを防止する、すなわち製造タクトの時間を抑制する圧電振動デバイスの温度試験装置ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスの温度試験装置は、圧電振動デバイスの温度変化に伴った各温度における特性を測定する測定部が設けられ、この測定部で測定した特性に基づいて複数の圧電振動デバイスの特性の良否を試験する圧電振動デバイスの温度試験装置において、1つの温度槽内において圧電振動デバイスを一方向に搬送しながら圧電振動デバイスの特性を測定するインライン方式の温度試験装置であり、前記温度槽内には、圧電振動デバイスの搬送方向に沿って複数の温度領域が構成され、前記複数の温度領域には、それぞれに対応した前記測定部が設けられ、前記複数の測定部では、夫々異なる予め設定した設定温度下における圧電振動デバイスの特性を測定することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、1つの前記温度槽内において圧電振動デバイスを一方向に搬送しながら圧電振動デバイスの特性を測定するインライン方式の温度試験装置であり、前記温度槽内には、圧電振動デバイスの前記搬送方向に沿って複数の温度領域が構成され、前記複数の温度領域には、それぞれに対応した前記測定部が設けられ、前記複数の測定部では、夫々異なる予め設定した設定温度下における圧電振動デバイスの特性を測定するので、圧電振動デバイスの試験工程において温度特性を測定する際に余分な待機時間や測定時間がかかるのを防止することが可能となる。すなわち、複数の圧電振動デバイスの特性の良否を試験するときのタクト時間を減らすことが可能となる。また、上記した従来の技術(リング型の温度試験装置)と比較して、本発明によれば温度試験装置により特性を測定した圧電振動デバイスの待機時間を減らすことが可能となる。すなわち、本発明によればインライン方式を採用しているので、ある設定温度下における圧電振動デバイスを測定した後、この測定した圧電振動デバイスは次の設定温度下における特性を測定に移行することが可能となる。そのため、他の圧電振動デバイスの同一設定温度下における特性の測定を待機する時間を短縮もしくは無くすことが可能となる。
【0013】
前記構成において、前記複数の測定部の間にはシャッタが介在されてもよい。
【0014】
この場合、前記複数の測定部の間には前記シャッタが介在されているので、前記測定部における温度変化を抑えることが可能となり、前記測定部の温度を設定温度として温度保持することが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記温度領域では、ドライエアーまたは不活性ガスが注入されてもよい。
【0016】
この場合、前記温度領域ではドライエアーまたは不活性ガスが注入されているので、温度領域を気密状態に保つことが可能となり、前記温度領域における温度を一定に保つことが可能となる。また、ドライエアーが注入されているので、前記温度領域における温度が低い場合、結露が発生するのを抑制することが可能となる。なお、不活性ガスよりもドライエアーのほうがコストの削減の面で優れている。
【0017】
前記構成において、前記温度領域は、複数の温度室が圧電振動デバイスの搬送方向に沿って配されてなり、前記測定部は、前記複数の温度室のうちいずれかに設けられ、前記複数の温度室のうち、前記測定部が設けられた温度室と、他の少なくとも1つの温度室とは、異なる温度に設定され、前記測定部が設けられた温度室の圧電振動デバイスの搬送方向に沿って前室となる他の温度室の温度は、前記測定部が設けられた温度室の温度に対してオーバーシュートするように設定された温度であってもよい。
【0018】
この場合、前記温度領域は、複数の温度室が圧電振動デバイスの搬送方向に沿って配されてなり、前記測定部は、前記複数の温度室のうちいずれかに設けられ、前記複数の温度室のうち、前記測定部が設けられた温度室と、他の少なくとも1つの温度室とは、異なる温度に設定され、前記測定部が設けられた温度室の圧電振動デバイスの搬送方向に沿って前室となる他の温度室の温度は、前記測定部が設けられた温度室の温度に対してオーバーシュートするように設定された温度であるので、前記測定部での圧電振動デバイスの測定前に、圧電振動デバイスの温度を前記測定部が設けられた温度室の温度に対してオーバーシュートして圧電振動デバイスの温度の上下変動を短時間で行ない、前記測定部の設定温度まで圧電振動デバイスの温度を合わせ込む時間を短縮させることが可能となる。特にこの構成は、前記複数の温度領域のそれぞれ設定温度が、圧電振動デバイスの搬送方向に沿って高温から低温、もしくは低温から高温に移行する場合に好適である。なお、ここでいうオーバーシュートさせるとは、前記測定部における特性の測定前の圧電振動デバイスの温度を、前記測定部における設定温度に合わせ込む場合、温度設定を設定温度とするのではなく、前記測定部における特性の測定前の圧電振動デバイスの温度から見て、設定温度を越えた温度に前記測定部の前室となる他の温度室の温度を設定し、圧電振動デバイスの温度を急激に変動させることを意味する。例えば、圧電振動デバイスの温度が±0℃であり、前記測定部における設定温度が+40℃である場合、前記測定部の前室である他の温度室の温度を+60℃に設定することを示す。また、圧電振動デバイスの温度が70℃であり、前記測定部における設定温度が+40℃である場合、前記測定部の前室である他の温度室の温度を+20℃に設定することを示す。
【0019】
前記構成において、温度変化に伴った各温度における特性の基準となるリファレンスワークとして、温度試験を行なう圧電振動デバイスと同じデバイスであって良品の圧電振動デバイスを用いてもよい。
【0020】
この場合、前記リファレンスワークとして、温度試験を行なう圧電振動デバイスと同じデバイスであって良品の圧電振動デバイスを用いるので、前記各測定部において前記リファレンスワークの測定を行なって前記各測定部における温度設定の安定化を図ることが可能となる。
【0021】
前記構成において、圧電振動デバイス内部には、圧電振動片が搭載され、温度変化に伴った各温度における特性の基準となるリファレンスワークとして、温度試験を行なう圧電振動デバイス内部に搭載された圧電振動片より厚みがある圧電振動片を内部に搭載した良品の圧電振動デバイスを用いてもよい。
【0022】
この場合、前記リファレンスワークとして、温度試験を行なう圧電振動デバイス内部に搭載された圧電振動片より厚みがある圧電振動片を内部に搭載した圧電振動デバイスを用いるので、前記リファレンスワークの温度(具体的には圧電振動片の温度)が設定温度になっている場合、温度試験を行なう圧電振動デバイスの温度は設定温度(具体的には圧電振動片の温度)になっている。そのため、前記各測定部において前記リファレンスワークの測定を行なって前記各測定部における温度設定の安定化を図ることが可能となる。さらに、前記リファレンスワークの特性を測定するために下記するプローブピンにより前記リファレンスワークを押圧した際にリファレンスワークが反ってしまった場合であっても、その内部に搭載した圧電振動片が厚みのある圧電振動片であれば、圧電振動片が反りにくくなる。そのため、この圧電振動片の反りによって発振周波数変動などの特性が悪くなることを抑制することができる。従って、この構成は、前記リファレンスワークの発振周波数などの特性を測定するのに好ましい。
【0023】
前記構成において、前記測定部においてリファレンスワークの特性を測定し、この測定したリファレンスワークの特性から前記温度領域の設定温度に対する実質温度の誤差を算出し、この誤差から前記実質温度における圧電振動デバイスの特性を前記設定温度における圧電振動デバイスの特性に補正する制御部が設けられてもよい。
【0024】
この場合、前記測定部においてリファレンスワークの特性を測定し、この測定したリファレンスワークの特性から前記温度領域の設定温度に対する実質温度の誤差を算出し、この誤差から前記実質温度における圧電振動デバイスの特性を前記設定温度における圧電振動デバイスの特性に補正する前記制御部が設けられたので、前記各測定部における圧電振動デバイスの特性の測定の安定を図ることが可能となる。すなわち、前記温度領域の設定温度に対して実質温度が異なった場合であっても、その温度差に基づいて圧電振動デバイスの特性を適正な特性に修正して、仮想的に温度を変調させることが可能となる。
【0025】
前記構成において、1つの温度槽内において圧電振動デバイスを1つのキャリアに対して複数個搭載し、このキャリアを複数一方向に順に搬送しながら圧電振動デバイスの特性を測定するインライン方式の温度試験装置であり、前記測定部での圧電振動デバイスの特性を測定する際、前記キャリアの反りを抑制する反り防止ピンが設けられてもよい。
【0026】
この場合、前記反り防止ピンが、前記キャリアの搬送方向に沿って少なくとも1つ以上設けられたので、前記各測定部における温度変化によって前記キャリアが熱変形するのを抑制することが可能となる。また、前記キャリアの熱変形の抑制により、前記キャリアに搭載された圧電振動デバイスの特性の測定を容易にする(例えば、下記するプローブピン等のコンタクトが確実になる等)。
【0027】
前記構成において、前記複数の圧電振動デバイスを識別する識別部が設けられてもよい。
【0028】
この場合、前記複数の圧電振動デバイスを識別する前記識別部が設けられたので、前記識別部により複数の圧電振動デバイスの良否選別を正確に行なうことが可能となる。
【0029】
前記構成において、前記識別部は、圧電振動デバイスの搬送方向に沿った前記測定部の前後位置に配されてもよい。
【0030】
この場合、前記1つの温度槽内において圧電振動デバイスを一方向に搬送しながら圧電振動デバイスの特性を測定するインライン方式の温度試験装置であり、前記複数の圧電振動デバイスを識別する前記識別部が設けられ、前記識別部は、圧電振動デバイスの前記搬送方向に沿った前記測定部の前後位置に配されるので、測定する複数の圧電振動デバイスの識別不良を抑制して、同時期に試験する複数の圧電振動デバイスの良否判定の取り間違えを抑制することが可能となる。すなわち、前記測定部の前位置に配された前記識別部で、圧電振動デバイスを特定することが可能となり、さらに、前記測定部の後位置に配された前記識別部で、圧電振動デバイスの温度変化に伴った各温度における特性を測定して良否に選別される圧電振動デバイスの確認を行なうことが可能となり、2回の識別を行なう前記識別部により複数の圧電振動デバイスの良否選別を正確に行なうことが可能となる。
【0031】
前記構成において、1つの温度槽内において圧電振動デバイスを1つのキャリアに対して複数個搭載し、このキャリアを複数一方向に順に搬送しながら圧電振動デバイスの特性を測定するインライン方式の温度試験装置であり、前記識別部では、前記複数のキャリアおよび前記キャリアに搭載した複数の圧電振動デバイスをそれぞれ識別してもよい。
【0032】
この場合、1つの温度槽内において圧電振動デバイスを1つのキャリアに対して複数個搭載し、このキャリアを複数一方向に順に搬送しながら圧電振動デバイスの特性を測定するインライン方式の温度試験装置であり、前記識別部では、前記複数のキャリアおよび前記キャリアに搭載した複数の圧電振動デバイスをそれぞれ識別するので、圧電振動デバイスの温度変化に伴った各温度における特性を測定する前に行なう前記識別部で、前記キャリアを特定するとともに、このキャリアに搭載した圧電振動デバイスの前記キャリア上の配置を特定することが可能となり、さらに、圧電振動デバイスの温度変化に伴った各温度における特性を測定した後に行なう前記識別部で、圧電振動デバイスの温度変化に伴った各温度における特性を測定して良否に選別される圧電振動デバイスの確認を行なうことが可能となり、2回の識別を行なう前記識別部により複数の圧電振動デバイスの良否選別を更に正確に行なうことが可能となる。
【0033】
前記構成において、前記キャリアにはバーコードが付され、前記識別部における前記キャリアおよび前記キャリアに搭載した圧電振動デバイスの識別は、前記キャリアに付された前記バーコードの識別により行なってもよい。
【0034】
この場合、前記キャリアにはバーコードが付され、前記識別部における前記キャリアおよび前記キャリアに搭載した圧電振動デバイスの識別は、前記キャリアに付された前記バーコードの識別により行なうので、前記キャリアの識別を容易にすることが可能となる。
【0035】
前記構成において、圧電振動デバイスの温度変化に伴った各温度における特性を測定する後位置に配された前記識別部の圧電振動デバイスの前記搬送方向後方に、良品の圧電振動デバイスと不良品の圧電振動デバイスとを選別する選別部が設けられ、選別部には、不良品の圧電振動デバイスを不良品収容部に搬送する不良品搬送部と、良品の圧電振動デバイスを良品収容部に搬送する良品搬送部とが、圧電振動デバイスの前記搬送方向に沿って順に配されてもよい。
【0036】
この場合、圧電振動デバイスの温度変化に伴った各温度における特性を測定する後位置に配された前記識別部の圧電振動デバイスの前記搬送方向後方に、良品の圧電振動デバイスと不良品の圧電振動デバイスとを選別する前記選別部が設けられ、前記選別部には、不良品の圧電振動デバイスを不良品収容部に搬送する不良品搬送部と、良品の圧電振動デバイスを良品収容部に搬送する良品搬送部とが、圧電振動デバイスの前記搬送方向に沿って順に配されているので、前記不良品の圧電振動デバイスを良品搬送部に搬送するのを防止することが可能となる。そのため、本発明によれば、不良品の圧電振動デバイスを間違って前記良品収容部に搬送することを防止することが可能となる。
【0037】
前記構成において、前記測定部に、圧電振動デバイスの特性を測定する一対のプローブピンと、前記一対のプローブピンの圧電振動デバイスへの接着を防止する付着防止手段とが設けられてもよい。
【0038】
この場合、前記測定部に、圧電振動デバイスの特性を測定する前記一対のプローブピンと、前記一対のプローブピンの圧電振動デバイスへの接着を防止する前記付着防止手段とが設けられているので、前記一対のプローブピンを用いた圧電振動デバイスの特性の測定後に前記一対のプローブピンが圧電振動デバイスに接着して離れなくなるのを抑制することが可能となる。
【0039】
前記構成において、前記付着防止手段は、絶縁性部材からなってもよい。
【0040】
この場合、前記付着防止手段は絶縁性部材からなるので、前記付着防止手段の圧電振動デバイスへの接着による圧電振動デバイスの端子電極間のショートを抑制することが可能となる。
【0041】
前記構成において、前記一対のプローブピンと前記付着防止手段とは、それぞれのストローク量が異なり、前記付着防止手段は、圧電振動デバイスの特性を測定する際に前記一対のプローブピンより先に圧電振動デバイスと接し、かつ、圧電振動デバイスの特性の測定終了後、前記一対のプローブピンより後に圧電振動デバイスから離反する構成からなってもよい。
【0042】
この場合、前記一対のプローブピンと前記付着防止手段とは、それぞれのストローク量が異なり、前記付着防止手段は、圧電振動デバイスの特性を測定する際に前記一対のプローブピンより先に圧電振動デバイスと接し、かつ、圧電振動デバイスの特性の測定終了後、前記一対のプローブピンより後に圧電振動デバイスから離反する構成からなるので、圧電振動デバイスの特性の測定終了後に、前記一対のプローブピンが圧電振動デバイスに接着状態を保持するのを防止することが可能となる。
【0043】
前記構成において、前記一対のプローブピンは、複数設けられ、これら複数の前記一対のプローブピンが離反されて配置されてもよい。
【0044】
この場合、前記一対のプローブピンは、複数設けられ、これら複数の前記一対のプローブピンが離反されて配置されているので、複数の前記一対のプローブピンに接続されているそれぞれの制御回路において互いに干渉するのを避けることが可能となる。
【0045】
前記構成において、前記付着防止手段には、可変容量コンデンサが接続されてもよい。
【0046】
この場合、前記付着防止手段には、可変容量コンデンサが接続されるので、容量調整を自動に行なうことが可能となり、当該温度試験装置の自動化に好ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、圧電振動デバイスの試験工程において温度特性を測定する際に余分な待機時間や測定時間がかかるのを防止する、すなわち製造タクトの時間を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した場合の水晶振動子の温度試験装置について説明する。
【0049】
本実施例にかかる水晶振動子CR(図参照)の温度試験装置1は、水晶振動子の温度変化に伴った各温度(本実施例では−30℃,+25℃,+80℃の3箇所;下記参照)における特性(発振周波数)を測定し、この測定した特性結果に基づいて水晶振動子CRの良否を判定して、水晶振動子CRの良否選別する装置である。なお、本実施例では、温度試験装置1での試験対象である圧電振動デバイスとして水晶振動子CR(図8参照)を用いている。この水晶振動子CRは、内部に搭載された水晶振動片(図示省略)と、この水晶振動片を保持するベースと、ベースに保持した水晶振動片を気密封止するためのキャップとからなる。この水晶振動子CRには、外部電極と接続するための端子電極CR1,CR2が形成されている。また、これら端子電極CR1,CR2は異電極で構成されている。
【0050】
温度試験装置1は、図1に示すように、1つの温度槽11内において水晶振動子CRを一方向(図1に示すX方向)に搬送しながら水晶振動子CRの特性を測定するインライン方式の温度試験装置である。具体的に、この温度試験装置1では、図1に示すように、複数の水晶振動子CRを1つのキャリアCに搭載し、この複数の水晶振動子CRを搭載したキャリアCを複数X方向に順に搬送しながら水晶振動子CRの特性を測定するインライン方式の温度試験装置である。
【0051】
ここでいうキャリアCは、図1に示すように、直方体に成形されたプレートで構成され、このキャリアCは、図1に示すY方向にキャリアCの平面視長辺を向けて下記する配置部2に配され、キャリアCの平面視短辺方向(X方向)に沿って搬送される。このキャリアCには、合計28個の開口部C1((X方向、Y方向)=(2個,14個))が形成され、この開口部C1には最大26個の検査対象の水晶振動子CRと、試験基準となる2個のリファレンスワークRとが搭載される。このキャリアCは、温度バラツキを考慮したうえで、できる限り小型化させたものであることが好ましく、本実施例では、キャリアCのサイズを120×10mm以下に設定し、材料として温度バラツキを無くすためにアルミニウムを採用している。また、上記したキャリアCの寸法および材料は、キャリアの反りが起こり難くするのに好ましい。また、このキャリアCにはバーコードC2が付され、このバーコードC2の識別により下記する識別部3におけるキャリアCの識別を行なう。また、図1に示すように、キャリアCの両短辺には平面視V字状の窪み部C3が設けられており、この窪み部C3に下記する温度試験装置1の搬送ギア16を咬ましてキャリアCを搬送方向(X方向)に沿って搬送する(下記参照)。さらに、キャリアCには、下記する測定部5における測定の際の位置決め孔C4が形成されている。なお、本実施例では、図1に示すキャリアCのバーコードC2から遠方に位置する開口部C1には水晶振動子CRが搭載されずに、予備用の開口部として構成されている。また、本実施例では、リファレンスワークRに、温度試験を行なう検査対象の水晶振動子CR(以下、この場合検査対象の水晶振動子CRとする)と同じものであって、良品と判定された水晶振動子CRを用いており、このリファレンスワークRは開口部C1に配されて嵌合される。
【0052】
次に、温度試験装置1には、図1に示すように、キャリアCを配置する配置部2と、キャリアC及びキャリアCに搭載した水晶振動子CRを識別する識別部3と、水晶振動子CRを搭載したキャリアCを一次待機させる待機部4と、水晶振動子CRの温度変化に伴った各温度における水晶振動子CRの発振周波数を測定する測定部5と、キャリアCを当該温度試験装置1外に搬出するとともにキャリアCに搭載した水晶振動子CRの良否を判定して良品と不良品の水晶振動子CRを選別する選別部6と、がキャリアCの搬送方向(X方向)に沿って設けられている。
【0053】
また、待機部4と測定部5とは1つの温度槽11内に設けられている。この温度槽11内には、図1に示すように、水晶振動子CRを搭載したキャリアCの搬送方向(X方向)に沿って3つの第1〜3温度領域12〜14が構成されている。具体的に、下記する各部材を参照して、第1温度領域12には2つの温度室である第1待機部41、第1測定部51が搬送方向(X方向)に沿って順に配されている。また、第2温度領域13には2つの温度室である第2待機部42および第2測定部52が搬送方向(X方向)に沿って順に配されている。また、第3温度領域14には3つの温度室である第3待機部43、第3測定部53及び第4待機部44が搬送方向(X方向)に沿って順に配されている。本実施例では、第1温度領域12の温度が−30℃に設定され、第2温度領域13の温度が+25℃に設定され、第3温度領域14の温度が+80℃に設定されている。なお、本実施例では、便宜上、第1温度領域12の温度を低温の温度領域、第2温度領域13の温度を中温の温度領域,第3温度領域14の温度を高温の温度領域とする。
【0054】
また、上記した温度槽11にはドライエアーを温度槽11内に注入するドライエアー発生装置71が接続されている。具体的に、ドライエアー発生装置71から、測定部5と待機部4にドライエアーが注入されている。また、下記する第1測定部51に当該第1測定部51内を冷却するための冷却装置72が接続されている。
【0055】
次に、上記した温度試験装置1の各部材について図面を用いて説明する。
【0056】
配置部2は、図2に示すように、水晶振動子CRと搭載したキャリアCを当該温度試験装置1に供給する部材である。この配置部2へのキャリアCの供給は、作業人の手作業によって行なう。なお、図2に示すように配置部2に供給したキャリアCは、下記する搬送ギア16によってX方向に沿って搬送される。
【0057】
識別部3は、図1,3に示すように、第1識別部31と第2識別部32とから構成され、水晶振動子CRの搬送方向(X方向)に沿った測定部5(具体的に、下記する第1測定部51と第3測定部53)の前後位置に配されている。第1識別部31では、当該温度試験装置1に供給される複数のキャリアCおよびこれらキャリアCに搭載した複数の水晶振動子CRをそれぞれ識別する部材であり、キャリアCおよび水晶振動子CRの識別は、キャリアCに付されたバーコードC2の認識により行なう。第2識別部32は、キャリアC及びキャリアCに搭載した水晶振動子CRが第1識別部31で識別したものと同一であるか否かを識別する部材であり、キャリアCおよび水晶振動子CRの識別は、キャリアCに付されたバーコードC2の識別により行なう。
【0058】
第1識別部31には、図1,3に示すように、キャリアCの搬送方向(X方向)の上方に識別センサ33が設けられている。この識別センサ33の下部にはバーコード認識部34が設けられ、キャリアCが識別センサ33下方まで搬送方向(X方向)に沿って搬送された際、識別部31がZ下方向に可動して識別センサ33に設けられたバーコード認識部34によりキャリアCに付されたバーコードC2を読み取り、キャリアCを認識して他のキャリアCと識別する。なお、キャリアCに搭載された水晶振動子CRの読み取りは、バーコードC2によりキャリアCの情報を読み取る際に各開口部C1の情報も読み取り、これら各開口部C1に搭載された水晶振動子CRを、開口部C1の情報に基づいて仮想的に開口部C1を水晶振動子CRとして判断して行なわれる。なお、第2識別部32は、第1識別部31とは基本的な同一構成からなる。そのため、第2識別部32の説明は省略する。
【0059】
待機部4は、図1に示すように、第1待機部41と第2待機部42と第3待機部43と第4待機部44とから構成されている。第1待機部41は、キャリアC表面にドライエアーを吹きつけてキャリアC表面に付着した水分を除去するものである。第2待機部42は、下記する第2測定部52での測定に先立って水晶振動子CRを暖めるものである。第3待機部43は、下記する第3測定部53での測定に先立って水晶振動子CRを暖めるものである。第4待機部44は、下記する第3測定部53での測定で高温となった水晶振動子CRの温度を常温に戻すものである。
【0060】
第1待機部41は、図1,4に示すように、キャリアCの搬送方向(X方向)の上方にドライエアー注入部45が設けられ、このドライエアー注入部45の搬送方向(X方向)前後にシャッタ461,462が設けられている。また、ドライエアー注入部45の下方には、ドライエアー注入部45によるキャリアCへのドライエアーの注入によりキャリアCに搭載された水晶振動子CRが飛散するのを防止するための押さえ部47が設けられている。なお、第1待機部41の設定温度は、任意の低温に設定されている。この第1待機部41に第1識別部31からキャリアCが搬送されるとシャッタ461がZ上方向に開いて第1待機部41にキャリアCが搬送されて、キャリアCが第1待機部41に搬送されるとシャッタ461がZ下方向に閉じる。そして、押さえ部47によりキャリアCに搭載した水晶振動子CRを固定するように押さえる。その後にドライエアー注入部45によりキャリアCにドライエアーが注入されてキャリアC表面の水分除去を行ない、キャリアCは下記する第1測定部51での測定待機状態となる。キャリアC表面の水分除去を行なった後に、第1測定部51での測定が可能になると、押さえ部47による水晶振動子CRの押さえが解除されて、シャッタ462がZ上方向に開いて、第1待機部41から第1測定部51にキャリアCが搬送される。そして、キャリアCが第1測定部51に搬送されるとシャッタ462がZ下方向に閉じる。なお、本実施例では、第1待機部41には、図4に示すように、キャリアCの搬送方向(X方向)の下方に温調素子と温度センサからなる温度部48が設けられており、任意の設定により第1待機部41の温度を調整することも可能である。
【0061】
第2待機部42には、図1,5に示すように、キャリアCの搬送方向(X方向)の下方に温調素子と温度センサからなる温度部48が設けられている。この温度部48の搬送方向(X方向)前後にはシャッタ461,462が設けられ、シャッタ461,462下方であってキャリアCの搬送経路上に、キャリアCの発熱分布を均等にするための均熱プレート49が敷設されている。なお、この第2待機部42は、ドライエアー注入部45からの注入されたドライエアーによりドライエアー雰囲気となり、その温度が、+25℃に設定されている。この第2待機部42に第1測定部51からキャリアCが搬送されるとシャッタ461がZ上方向に開いて第2待機部42にキャリアCが搬送される。第2待機部42にキャリアCが搬送されるとシャッタ462がZ下方向に閉じて、キャリアCは下記する第2測定部52での測定待機状態となる。第2測定部52での測定が可能になると、シャッタ461がZ上方向に開いて、第2待機部42から第2測定部52にキャリアCが搬送される。そして、キャリアCが第2測定部52に搬送されるとシャッタ462がZ下方向に閉じる。
【0062】
第3,4待機部43,44は、上記した第2待機部42とは、それぞれ設定温度が異なるだけであり、基本的な同一構成からなる。そのため、第3,4待機部43,44の説明は省略する。なお、第3待機部43の設定温度は、+80℃であり、第4待機部44の設定温度は、+80℃である。なお、第1〜4待機部41〜44では、温調素子にペルチェ素子およびヒータの少なくとも一部材を用いている。
【0063】
測定部5は、図1に示すように、第1測定部51と第2測定部52と第3測定部53とから構成されている。第1測定部51は、設定温度を低温の−30℃に設定して、−30℃下における水晶振動子CRの発振周波数を測定するものである。また、第2測定部52は、設定温度を低温の+25℃に設定して、+25℃下における水晶振動子CRの発振周波数を測定するものである。また、第3測定部53は、設定温度を低温の+80℃に設定して、+80℃下における水晶振動子CRの発振周波数を測定するものである。
【0064】
第1測定部51は、図1,6に示すように、キャリアCの搬送方向(X方向)の上方に検査部54が設けられ、この検査部54の搬送方向(X方向)前後にシャッタ551,552が設けられている。また、検査部54の下方には、温調素子と温度センサからなる温度部56が設けられている。さらに、第1測定部51のキャリアCの搬送経路上に、キャリアCの発熱分布を均等にするための均熱プレート57が敷設されている。なお、この第1測定部51は、ドライエアー雰囲気であり、温調素子にペルチェ素子を用いている。この第1測定部51に第1待機部41からキャリアCが搬送されるとシャッタ551がZ上方向に開いて第1測定部51にキャリアCが搬送される。第1測定部51にキャリアCが搬送されるとシャッタ551がZ下方向に閉じて、検査部54によるキャリアCに搭載した水晶振動子CRの発振周波数の測定が行なわれる。検査部54による発振周波数の測定が終わると、シャッタ552がZ上方向に開いて、第1測定部51からキャリアCが第2待機部42に搬送される。そして、キャリアCが第2待機部42に搬送されるとシャッタ552がZ下方向に閉じる。
【0065】
第2,3測定部52,53は、上記した第1測定部51とは、それぞれ設定温度が異なるだけであり、基本的な同一構成からなる。そのため、第3,4待機部43,44の構成の説明は省略する。なお、第2,3測定部52,53では、温調素子にヒータを用いている。
【0066】
次に、上記した第1測定部51の検査部54の具体的な構成について説明する。
【0067】
検査部54は、図7に示すように、キャリアCの搬送経路上での位置決めを行なうためにキャリアCの位置決め孔C4と係合する位置決めピン541と、水晶振動子CRの発振周波数を測定するために水晶振動子CRの端子電極CR1,CR2と接続するための2つのヘッド542と、可変容量コンデンサであるバリキャップ及びΠ回路からなる検査回路とネットアナライザーとが同軸ケーブルで接続された制御部545とから構成されている。また、これらヘッド542それぞれには一対のプローブピン543が備えられている。これらヘッド542間隔は、キャリアCの開口部C1を例にして、図8に示すように複数の開口部C1間の距離であって、間に開口部C1を5つはさんだ開口部C1間の距離に相当する。すなわち、2つのヘッド542は、離れて配されている。また、図8に示すように各ヘッド542の一対のプローブピン543の間には、一対のプローブピン543の水晶振動子CRへの接着を防止するためのピアノ線544(本発明でいう付着防止手段)が設けられている。このピアノ線544と一対のプローブピン543とはZ方向のストローク量が異なり、本実施例では一対のプローブピン543よりピアノ線544のストロークが長くなるように設定されている(図9参照)。なお、図8に示す水晶振動子CRおよびリファレンスワークR上の中央に付されている直線は、ピアノ線544との接点を示す。
【0068】
次に、上記した第1測定部51を例にして、検査部54による水晶振動子CRの発振周波数の測定を説明する。
【0069】
第1測定部51にキャリアCが搬送されると、位置決めピン541がZ下方向に下降して、キャリアCの位置決め孔C4と係合して第1測定部51におけるキャリアCの位置決めを行なう。キャリアCの位置決めを行なった後に、ヘッド542が定位置からキャリアC上方に移動する(X方向に可動する)。キャリアC上方に移動したヘッド542をエアシリンダーを用いた機構により、Z下方向に下降させる(図7,9参照)。図9(a)に示すようにZ下方向に下降させたヘッド542の一対のプローブピン543及びピアノ線544では、ピアノ線544のほうがストロークが長いため、図9(b)に示すようにピアノ線544の下方先端が先に水晶振動子CRと接し、その後に一対のプローブピン543が水晶振動子CRの端子電極CR1,CR2と接続して、検査部54により水晶振動子CRおよびリファレンスワークRの発振周波数を測定する(図9(c)参照)。検査部54による水晶振動子CRおよびリファレンスワークRの発振周波数の測定を終えると、ヘッド542をZ上方向に上昇させる(図9(c),9(d)に示す一対のプローブピン543およびピアノ線544参照)。この時、ピアノ線544のほうがストロークが長いため、図9(d)に示すように一対のプローブピン543だけが先にZ方向に上昇する。そして、その後にピアノ線544も併せてZ上方向に上昇して(図9(e)参照)、ヘッド542がZ上方向に上昇し終えると、次の検査対象となる水晶振動子CRの上方にヘッド542がX方向に可動して、上記と同様の動作により他の水晶振動子CRの発振周波数を測定する。そして、キャリアCに搭載した全ての水晶振動子CRおよびリファレンスワークRの発振周波数の測定を終えると、最初の定位置に戻る。その後、検査部54による水晶振動子CRの発振周波数の測定を終えたキャリアCは、次工程である第2待機部42に搬送される。なお、検査部54によるこれら一連の測定作業は、第2測定部52、第3測定部53でも同様に執り行われる。
【0070】
なお、上記した検査部54による測定では、まず、リファレンスワークRと、試験を行なう検査対象の水晶振動子CRとの発振周波数の測定を行なう。そして、リファレンスワークRの発振周波数の値から、制御部545で第1測定部51の設定温度に対する実質温度の誤差を算出する。この算出した誤差に基づいて実質温度における水晶振動子CRの発振周波数の値を設定温度の場合の水晶振動子CRの発振周波数の値に補正して、検査対象の水晶振動子CRの設定温度における発振周波数を算出する。そして、このリファレンスワークRによる補正は、キャリアCに搭載された他の水晶振動子CRの発振周波数の測定にも適用される。
【0071】
選別部6は、図1に示すように第2識別部32のキャリアCの搬送方向(X方向)後方に配され、図1に示すように、1つのキャリアCから24個の水晶振動子CRを外してキャリアCを当該温度試験装置1から搬出するキャリア搬送部61と、24個の水晶振動子CRのうち不良品と判定された水晶振動子CRを搬送する不良品搬送部62と、24個の水晶振動子CRのうち良品と判定された水晶振動子CRを搬送する良品搬送部63とから構成されている。この選別部6では、キャリアCの搬送方向(X方向)に沿って、キャリア搬送部61、不良品搬送部62、および良品搬送部63が順に配されている。
【0072】
第2識別部32から搬送されたキャリアCは、キャリア搬送部61においてキャリアCから水晶振動子CRが外される。水晶振動子CRが外されたキャリアCは、図1,10に示すように当該温度試験装置1外に搬出される。そしてキャリアCから外された水晶振動子CRは、第2識別部32の良否判定に基づいて不良品搬送部62と良品搬送部63とに選別される。
【0073】
ところで、上記した本実施例にかかる温度試験装置1では、当該温度槽11内に、図11に示すように、測定部5での水晶振動子CRの発振周波数を測定する際、水晶振動子CRの反りを抑制するために反り防止ピン15が設けられている。この反り防止ピン15は、水晶振動子CRの発振周波数の測定時に図11に示すように作動するものである。なお、ここでいう反り防止ピン15は、図11に示すように、キャリアCを搬送ギア16に正確に嵌めるためにも用いられている。そのため、反り防止ピン15は、第1測定部51だけでなく他の部材にも設けられている。
【0074】
また、この図11に示す符号16は、キャリアCを搬送方向(X方向)に搬送するための搬送ギアであり、キャリアCを搬送方向(X方向)に沿って配置部2から選別部6まで搬送する部材である。本実施例では、図1を参照して、搬送ギア16は、配置部2から第1待機部41までのキャリアCの搬送に用いるものと、第1測定部51から第2待機部42までのキャリアCの搬送に用いるものと、第2測定部52から第3待機部43までのキャリアCの搬送に用いるものと、第3測定部53から選別部6までのキャリアCの搬送に用いるものとの4つから構成される。これは、配置部2から選別部6まで1つの搬送ギア16によりキャリアCの搬送を行なうことと比較して、待機時間を減らすことができ、さらに搬送ギア16を複数にすることで当該温度試験装置1の部材点数を変更して、例えば、測定部5の数の増減を容易にすることができる。
【0075】
次に、本実施例におけるキャリアCの搬送について簡単に説明する。
【0076】
図11(a)に示すように配置部2においてキャリアCの位置決めを反り防止ピン15により行なう。そして、図11(b)に示すように、キャリアCの窪み部C3に搬送ギア16を正確に嵌め、その後に反り防止ピン15をZ上方向に上昇させて反り防止ピン15をキャリアCから離反させる。そして、図11(c)に示すように、搬送ギア16をZ上方向に上昇させ、搬送ギア16を駆動させることにより搬送方向(X方向)に沿ってキャリアCを搬送する。そして、搬送ギア16により搬送しているキャリアCが、例えば第1測定部51などの測定部5に搬送されると、図11(d)に示すように反り防止ピン15によりキャリアCがZ下方向に押さえられる。そして、反り防止ピン15により搬送経路上に押さえられた状態を保持して、搬送ギア16がキャリアCの窪み部C3から外れて第1測定部51による水晶振動子CRの発振周波数の測定が行なわれる。測定部5における水晶振動子CRの発振周波数の測定を終えると、他の待機部4,測定部5などにおいて図11(a)〜11(d)に示す工程を繰り返し、キャリアCを搬送方向(X方向)に沿って選別部6まで搬送する。
【0077】
上記したように、本実施例にかかる温度試験装置では、配置部2から供給されたキャリアCおよび水晶振動子CRは、第1識別部31、第1待機部41、第1測定部51、第2待機部42、第2測定部52、第3待機部43、第3測定部53、第4待機部44、第2識別部32を順に通って、選別部6に搬送され、この選別部6のキャリア搬送部においてキャリアCが当該温度試験装置1から搬出され、不良品搬送部62および良品搬送部63において水晶振動子CRが良品と不良品とに選別される。
【0078】
上記したように、本実施例にかかる水晶振動子CRの温度試験装置1によれば、1つの温度槽11内において水晶振動子CRを搬送方向(X方向)に沿って搬送しながら水晶振動子CRの発振周波数を測定するインライン方式の温度試験装置1であり、温度槽11内には、水晶振動子CRの搬送方向(X方向)に沿って3つの第1〜3温度領域12〜14が構成され、第1〜3温度領域12〜14には、それぞれに対応した第1〜3測定部51〜53が設けられ、第1〜3測定部51〜53では、夫々異なる予め設定した設定温度下における水晶振動子CRの発振周波数を測定するので、水晶振動子CRの温度試験工程において温度特性を測定する際に余分な待機時間や測定時間がかかるのを防止することが可能となる。すなわち、複数の水晶振動子CRの発振周波数の良否を試験するときのタクト時間を減らすことができる。また、上記した従来の技術(図14に示す温度試験装置9)と比較して、本実施例によれば温度試験装置1により発振周波数を測定した水晶振動子CRの待機時間を減らすことができる。すなわち、本実施例によればインライン方式を採用しているので、ある設定温度(例えば第1温度領域の設定温度)下における水晶振動子CRを測定した後、この測定した水晶振動子CRは次の設定温度(例えば第2温度領域の設定温度)下における発振周波数を測定に移行することができる。そのため、他の水晶振動子CRの同一設定温度下における発振周波数の測定を待機する時間を短縮もしくは無くすことができる。
【0079】
また、第1〜3測定部51〜53の間にはシャッタ551,552(具体的にはシャッタ461,462も含む)が介在されているので、第1〜3測定部51〜53における温度変化を抑えることができるとなり、第1〜3測定部51〜53の温度を設定温度として温度保持することができる。
【0080】
また、第1〜3温度領域12〜14ではドライエアーが注入されているので、第1〜3温度領域12〜14を気密状態に保つことができ、第1〜3温度領域12〜14における温度を一定に保つことができる。また、ドライエアーが注入されているので、第1〜3温度領域12〜14における温度が低い場合、結露が発生するのを抑制することができる。
【0081】
また、リファレンスワークRとして、温度試験を行なう水晶振動子CRと同じデバイスであって良品の水晶振動子CRを用いるので、各第1〜3測定部51〜53においてリファレンスワークRの測定を行なって各第1〜3測定部51〜53における温度設定の安定化を図ることができる。
【0082】
また、測定部5においてリファレンスワークRの発振周波数を測定し、この測定したリファレンスワークRの発振周波数から第1〜3温度領域12〜14の設定温度に対する実質温度の誤差を算出し、この誤差から実質温度における水晶振動子CRの発振周波数を設定温度における水晶振動子CRの発振周波数に補正する制御部545が設けられたので、各第1〜3測定部51〜53における水晶振動子CRの発振周波数の測定の安定を図ることができる。すなわち、第1〜3温度領域12〜14の設定温度に対して実質温度が異なった場合であっても、その温度差に基づいて水晶振動子CRの発振周波数を適正な発振周波数に修正して、仮想的に温度を変調させることができる。
【0083】
また、反り防止ピン15が、キャリアCの搬送方向(X方向)に沿って設けられているので、各第1〜3測定部51〜53における温度変化によってキャリアCが熱変形するのを抑制することができる。また、キャリアCの熱変形の抑制により、キャリアCに搭載された水晶振動子CRの特性の測定を容易にする(例えば、一対のプローブピン543等のコンタクトが確実になる等)。
【0084】
また、複数の水晶振動子CRを識別する識別部3が設けられたので、識別部3により複数の水晶振動子CRの良否選別を正確に行なうことができる。
【0085】
また、1つの温度槽11内において水晶振動子CRを搬送方向(X方向)に沿って搬送しながら水晶振動子CRの発振周波数を測定するインライン方式の温度試験装置であり、複数の水晶振動子CRを識別する識別部3が設けられ、識別部3は、水晶振動子CRの搬送方向(X方向)に沿った測定部5の前後位置に配されるので、測定する24個の水晶振動子CRの識別不良を抑制して、同時期に試験する24個の水晶振動子CRの良否判定の取り間違えを抑制することができる。すなわち、測定部5の前位置に配された識別部(第1識別部31)で、水晶振動子CRを特定することができ、さらに、測定部5の後位置に配された識別部(第2識別部32)で、水晶振動子CRの温度変化に伴った各温度における発振周波数を測定して良否に選別される水晶振動子CRの確認を行なうことができる。このように、本実施例によれば、2回の識別を行なう識別部3により複数の水晶振動子CRの良否選別を正確に行なうことができる。
【0086】
また、1つの温度槽11内において水晶振動子CRを1つのキャリアCに対して24個搭載し、このキャリアCを複数搬送方向(X方向)に沿って順に搬送しながら水晶振動子CRの発振周波数を測定するインライン方式の温度試験装置1であり、識別部3では、複数のキャリアCおよびキャリアCに搭載した24個の水晶振動子CRをそれぞれ識別するので、水晶振動子CRの温度変化に伴った各温度における発振周波数を測定する前に行なう識別部(第1識別部31)で、キャリアCを特定するとともに、このキャリアCに搭載した水晶振動子CRのキャリアC上の配置を特定することができ、さらに、水晶振動子CRの温度変化に伴った各温度における発振周波数を測定した後に行なう識別部(第2識別部32)で、水晶振動子CRの温度変化に伴った各温度における発振周波数を測定して良否に選別される水晶振動子CRの確認を行なうことができる。このように、本実施例によれば、2回の識別を行なう識別部3により複数の水晶振動子CRの良否選別を更に正確に行なうことができる。
【0087】
また、キャリアCにはバーコードC2が付され、識別部3におけるキャリアCおよびキャリアCに搭載した水晶振動子CRの識別は、キャリアCに付されたバーコードC2の識別により行なうので、キャリアCの識別を容易にすることができる。
【0088】
また、第2識別部32の水晶振動子CRの搬送方向後方に、良品の水晶振動子CRと不良品の水晶振動子CRとを選別する選別部6が設けられ、選別部6には、不良品の水晶振動子CRを不良品収容部(図示省略)に搬送する不良品搬送部62と、良品の水晶振動子CRを良品収容部(図示省略)に搬送する良品搬送部63とが、水晶振動子CRの搬送方向(X方向)に沿って順に配されているので、不良品の水晶振動子CRを良品搬送部に搬送するのを防止することができる。そのため、本実施例によれば、不良品の水晶振動子CRを間違って良品収容部に搬送することを防止することができる。
【0089】
また、測定部5に、水晶振動子CRの発振周波数を測定する一対のプローブピン543と、この一対のプローブピン543の水晶振動子CRへの接着を防止するピアノ線544とが設けられているので、一対のプローブピン543を用いた水晶振動子CRの発振周波数の測定後に一対のプローブピン543が水晶振動子CRに接着して離れなくなるのを抑制することができる。
【0090】
また、一対のプローブピン543とピアノ線544とは、それぞれのストローク量が異なり、ピアノ線544は、水晶振動子CRの発振周波数を測定する際に一対のプローブピン543より先に水晶振動子CRと接し、かつ、水晶振動子CRの発振周波数の測定終了後、一対のプローブピン543より後に水晶振動子CRから離反する構成からなるので、水晶振動子CRの発振周波数の測定終了後に、一対のプローブピン543が水晶振動子CRに接着状態を保持するのを防止することができる。
【0091】
また、一対のプローブピン543は、図8に示すように2つ設けられ(ヘッド542が2つ設けられている)、これら2つの一対のプローブピン543が離反されて配置されているので、2つの一対のプローブピン543に接続されているそれぞれの制御回路(図示省略)において互いに干渉するのを避けることができる。
【0092】
また、ピアノ線544には、可変容量コンデンサであるバリキャップが接続されるので、容量調整を自動に行なうことができ、本実施例は当該温度試験装置1の自動化に好ましい形態である。
【0093】
なお、本実施例では、圧電振動デバイスとして図8に示す水晶振動子CRを用いているが、これに限定されるものでなく、他の形態の水晶振動子や水晶フィルタ、水晶発振器等であってもよい。また、水晶デバイスだけでなく、圧電セラミックやLiNbO2等の圧電単結晶材料を用いた任意の圧電振動デバイスであってもよい。
【0094】
また、本実施例では、水晶振動子CRの発振周波数を測定しているが、これに限定されるものではなく、水晶振動子CRの他の特性、例えば直列共振抵抗値、または、発振周波数および直列共振抵抗値を測定して水晶振動子CRの良否判定を行なってもよい。
【0095】
また、本実施例では、リファレンスワークRとして、検査対象の水晶振動子CRと同じ良品と判定された水晶振動子CRを用いているが、これに限定されるものではなく、検査対象の水晶振動子CR内部に搭載された水晶振動片より厚みがある水晶振動片を内部に搭載した良品の圧電振動デバイスを用いてもよい。この場合、リファレンスワークRの温度(具体的には水晶振動片の温度)が設定温度になっている場合、試験を行なう薄い水晶振動子CRの温度(具体的には水晶振動片の温度)は設定温度になっている。そのため、測定部5においてリファレンスワークRの測定を行なって測定部5における温度設定の安定化を図ることができる。さらに、リファレンスワークRの特性を測定するために一対のプローブピン543によりリファレンスワークRを押圧した際にリファレンスワークRが反ってしまった場合であっても、本実施例のようにその内部に搭載した水晶振動片が厚みのある水晶振動片であれば、水晶振動片が反りにくくなる。そのため、この水晶振動片の反りによってリファレンスワークRの発振周波数変動などの特性が悪くなることを抑制することができる。従って、この構成は、リファレンスワークRの発振周波数などの特性を測定するのに好ましい。
【0096】
また、本実施例では、リファレンスワークRを用いた水晶振動子CRの温度試験を行なっているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではない。そのため、リファレンスワークRを用いずに水晶振動子CRの温度試験を行なってもよい。
【0097】
また、本実施例では、待機部4および測定部5の一部に均熱プレート49,57を用いているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではない。そのため、待機部4および測定部5の一部に均熱プレート49,57を用いなくてもよい。
【0098】
また、本実施例では、1つのキャリアCに最大24個の水晶振動子CRを搭載するが、この水晶振動子CRの搭載数は限定されるものではなく、任意の数の水晶振動子が搭載可能な形態であればよい。
【0099】
また、本実施例では、キャリアCが、図1に示すように、その平面視短辺方向に沿って搬送されており、これは1つのキャリアCに対する当該温度試験装置1の検査時間を抑えるために最適なキャリアCの配置である。しかしながら、これに限定されるものではなく、図12に示すように、キャリアCがその平面視長辺方向に沿って搬送されてもよい。
【0100】
また、本実施例でいう水晶振動子CRの一方向(X方向)の搬送方向とは、厳密にX方向に沿った搬送方向というものではなく、水晶振動子CRが循環することはなく水晶振動子CRの搬送方向が一方に向いていればよい。
【0101】
また、本実施例では、温度槽11内に待機部4と測定部5とを設けているが、これに限定されるものでなく、例えば、待機部4および測定部5だけでなく識別部3も温度槽11内に設けてもよい。
【0102】
また、本実施例では、温度槽11内の、第1温度領域12の温度が−30℃に設定され、第2温度領域13の温度が+25℃に設定され、第3温度領域14の温度が+80℃に設定されているが、これに限定されるものではなく、複数の温度領域を構成していればよい。また、本実施例に示すように、圧電振動デバイスにATカットの水晶振動子CRを用いた場合、水晶の発振周波数は3次曲線からなるので、本実施例に示すように、3つの区分の温度領域(低温、中温,高温の温度領域)から構成されることが好ましい。また、本実施例の他に、例えば、測定部5と待機部4との各構成毎に温度領域を構成してもよい。この場合、さらに詳細な温度設定を行なうことができる。
【0103】
また、本実施例では、複数の温度領域がキャリアCの搬送方向(X方向)に沿って低温、中温,高温の順に設定された温度領域であるが、これは好適な例であり、これに限定されるものではない。例えば、キャリアCの搬送方向(X方向)に沿って高温、中温,低温の順に設定された温度領域であってもよい。また、複数の温度領域の温度が連続して上昇もしくは下降するように構成されることが好ましいが、キャリアCの搬送方向(X方向)に沿って中温,高温、低温の順や、中温,低温、高温の順に設定された温度領域であってもよい。
【0104】
また、本実施例では、キャリアCにアルミニウムを用いているが、これに限定されるものではなく、真鍮やステンレスを用いても良く、この場合、コスト面で優れている。
【0105】
また、本実施例では、第1待機部41はキャリアC表面にドライエアーを吹きつけてキャリアC表面に付着した水分を除去するものであるが、これに限定されるものではなく、第1測定部51での測定に先立って水晶振動子CRを冷やしながら、キャリアC表面にドライエアーを吹きつけてキャリアC表面に付着して水分を除去するものであってもよい。
【0106】
また、本実施例では、温度槽11内にドライエアー発生装置71からドライエアーを注入しているが、これに限定されるものではなく、窒素ガスなどの不活性ガスを図示しない不活性ガス発生装置から温度槽11内に注入してもよい。なお、コストを削減するためにはドライエアーを注入することが好ましく、結露防止などを精度よく図るためには不活性ガスを注入することが好ましい。そのため、当該温度試験装置1で温度特性する圧電振動デバイスの条件によってドライエアーと不活性ガスとを任意に又は併せて用いることが好ましい。
【0107】
また、本実施例では、付着防止手段としてピアノ線544を用いているが、これに限定されるものでなく、他の部材であってもよく、例えば絶縁性材料(プラスチック,セラミック)などであってもよい。この場合、付着防止手段の水晶振動子CRへの接着による水晶振動子CRの端子電極間のショートを抑制することが可能となる。特に、付着防止手段が絶縁性材料である場合、検査対象である水晶振動子CRの筐体サイズが小型化され、水晶振動子CRの異電極で構成される端子電極CR1,CR2両方に付着防止手段が接した場合であっても端子電極CR1,CR2間のショートを避けることが可能となる。また、特に、凍結し難く、凍結によるプローブピンと水晶振動子との接着を防止することができる部材であることが好ましい。
【0108】
また、本実施例では、第1測定部51の温調素子にペルチェ素子を用い、第2,3測定部52,53の温調素子にヒータを用いているが、これに限定されるものではなく、環境や製造コストに応じて任意の温調素子およびその組み合わせを用いてもよい。
【0109】
また、本実施例では、第1待機部41と第1測定部51の設定温度、第2待機部42と第2測定部52の設定温度、および第3待機部43と第3測定部53の設定温度を同じにしているが、これに限定されるものではない。例えば、第1待機部41の設定温度を−40℃にし、第1測定部51の設定温度を−30℃にし、第2待機部42の設定温度を+40℃にし、第2測定部52の設定温度を+25℃にし、第3待機部43の設定温度を+90℃にし、第3測定部53の設定温度を+80℃にしてもよい。すなわち、測定部(例えば、第1測定部51)が設けられた温度領域(この場合、第1温度領域12)において水晶振動子CRの搬送方向(X方向)に沿って測定部(この場合、第1測定部51)の前室となる他の温度室(この場合、第1待機部41)の設定温度は、測定部(この場合、第1測定部51)の設定温度に対してオーバーシュートするように設定された温度であればよい。そのため、第1待機部41の設定温度を+90℃にし、第1測定部51の設定温度を+80℃にし、第2待機部42の設定温度を+25℃にし、第2測定部52の設定温度を+40℃にし、第3待機部43の設定温度を−40℃にし、第3測定部53の設定温度を−30℃にしてもよい。この例は、上記したように、特に複数の温度領域のそれぞれ設定温度が、水晶振動子CRの搬送方向に沿って高温から低温、もしくは低温から高温に移行する場合に好適に作用する。また、この例と、上記した本実施例との水晶振動子CRの発振周波数の良否を試験するときの試験時間を比較すると、図13に示すように、設定温度をオーバーシュートする本例のほうが短くなる。これは、測定部5での設定温度に水晶振動子CRの温度を合わせこむ時間を減らすことができることに関係する。すなわち、待機部4での水晶振動子CRの待機時間を減らすことに関係する。このように、この構成によれば、第1〜3温度領域12〜14は、それぞれ複数の温度室(測定部5,待機部4)が水晶振動子CRの搬送方向(X方向)に沿って配されてなり、測定部5は、複数の温度室のうちいずれかに設けられ、複数の温度室のうち、測定部5が設けられた温度室と、待機部4が設けられた温度室とは、異なる温度に設定され、水晶振動子CRの搬送方向(X方向)に沿って測定部5の前室となる待機部4の温度は、測定部5の温度に対してオーバーシュートするように設定された温度であるので、測定部5での水晶振動子CRの測定前に、水晶振動子CRの温度を測定部5が設けられた温度室の温度に対してオーバーシュートして水晶振動子CRの温度の上下変動を短時間で行ない、測定部5の設定温度まで水晶振動子CRの温度を合わせ込む時間を短縮させることができる。特にこの構成は、第1〜3温度領域12〜14のそれぞれ設定温度が、水晶振動子CRの搬送方向に沿って高温から低温、もしくは低温から高温に移行する場合に好適である。なお、ここでいうオーバーシュートさせるとは、測定部5における発振周波数の測定前の水晶振動子CRの温度を、測定部5における設定温度に合わせ込む場合、温度を設定温度とするのではなく、測定部5における発振周波数の測定前の水晶振動子CRの温度から見て、設定温度を越えた温度に測定部5の前室となる待機部4の温度を設定し、水晶振動子CRの温度を急激に変動させることを意味する。例えば、第1待機部41に搬送された水晶振動子CRの温度が±0℃であり、第1測定部51における設定温度が+40℃である場合、第1測定部51の前室である第1待機部41の温度を+60℃に設定することを示す。また、第2待機部52に搬送された水晶振動子CRの温度が+70℃であり、第2測定部52における設定温度が+40℃である場合、第2測定部52の前室である第2待機部42の温度を+20℃に設定することを示す。
【0110】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、圧電振動デバイスの製造工程で好ましく適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、本実施例にかかる温度試験装置の構成を示した概略ブロック図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる温度試験装置に設けた配置部の概略斜視図である。
【図3】図3は、本実施例にかかる温度試験装置に設けた第1識別部の概略斜視図である。
【図4】図4は、本実施例にかかる温度試験装置に設けた第1待機部の概略斜視図である。
【図5】図5は、本実施例にかかる温度試験装置に設けた第2待機部の概略斜視図である。
【図6】図6は、本実施例にかかる温度試験装置に設けた第1測定部の概略斜視図である。
【図7】図7は、本実施例にかかる温度試験装置に設けた第1測定部における検査部の概略斜視図である。
【図8】図8は、本実施例にかかる温度試験装置に設けた第1測定部におけるヘッドとキャリアとの位置関係を示した図である。
【図9】図9(a)〜(e)は、本実施例にかかる温度試験装置の検査部による水晶振動子の発振周波数の測定工程を示した工程図である。
【図10】図10は、本実施例にかかる温度試験装置に設けた選別部の概略斜視図である。
【図11】図11(a)〜(d)は、本実施例にかかる温度試験装置におけるキャリアの搬送工程を示した工程図である。
【図12】図12は、本実施の他の例にかかる温度試験装置におけるキャリアの搬送を示す図である。
【図13】図13(a)は、本実施例にかかる温度試験装置の待機部において温度をオーバーシュートさせた場合の1つのキャリアに対するタクト時間を示したグラフ図である。図13(b)は、本実施例にかかる温度試験装置の待機部において温度をオーバーシュートさせていない場合の1つのキャリアに対するタクト時間を示したグラフ図である。
【図14】図14は、従来の温度試験装置の温度槽の概略内部公開図である。
【符号の説明】
【0113】
1 温度試験装置
11 温度槽
12〜13 第1〜3温度領域(温度領域)
15 反り防止ピン
3 識別部
461,462,551,552 シャッタ
5 測定部
543 プローブピン
544 ピアノ線(付着防止手段)
6 選別部
62 不良品搬送部
63 良品搬送部
C キャリア
C2 バーコード
CR 水晶振動子(圧電振動デバイス)
R リファレンスワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動デバイスの温度変化に伴った各温度における特性を測定する測定部が設けられ、この測定部で測定した特性に基づいて複数の圧電振動デバイスの特性の良否を試験する圧電振動デバイスの温度試験装置において、
1つの温度槽内において圧電振動デバイスを一方向に搬送しながら圧電振動デバイスの特性を測定するインライン方式の温度試験装置であり、
前記温度槽内には、圧電振動デバイスの搬送方向に沿って複数の温度領域が構成され、
前記複数の温度領域には、それぞれに対応した前記測定部が設けられ、
前記複数の測定部では、夫々異なる予め設定した設定温度下における圧電振動デバイスの特性を測定することを特徴とする圧電振動デバイスの温度試験装置。
【請求項2】
前記複数の測定部の間にはシャッタが介在されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイスの温度試験装置。
【請求項3】
前記温度領域では、ドライエアーまたは不活性ガスが注入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動デバイスの温度試験装置。
【請求項4】
前記温度領域は、複数の温度室が圧電振動デバイスの搬送方向に沿って配されてなり、
前記測定部は、前記複数の温度室のうちいずれかに設けられ、
前記複数の温度室のうち、前記測定部が設けられた温度室と、他の少なくとも1つの温度室とは、異なる温度に設定され、
前記測定部が設けられた温度室の圧電振動デバイスの搬送方向に沿って前室となる他の温度室の温度は、前記測定部が設けられた温度室の温度に対してオーバーシュートするように設定された温度であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの温度試験装置。
【請求項5】
温度変化に伴った各温度における特性の基準となるリファレンスワークとして、温度試験を行なう圧電振動デバイスと同じデバイスであって良品の圧電振動デバイスを用いることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの温度試験装置。
【請求項6】
圧電振動デバイス内部には、圧電振動片が搭載され、
温度変化に伴った各温度における特性の基準となるリファレンスワークとして、温度試験を行なう圧電振動デバイス内部に搭載された圧電振動片より厚みがある圧電振動片を内部に搭載した良品の圧電振動デバイスを用いることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの温度試験装置。
【請求項7】
前記測定部においてリファレンスワークの特性を測定し、この測定したリファレンスワークの特性から前記温度領域の設定温度に対する実質温度の誤差を算出し、この誤差から前記実質温度における圧電振動デバイスの特性を前記設定温度における圧電振動デバイスの特性に補正する制御部が設けられたことを特徴とする請求項5または6に記載の圧電振動デバイスの温度試験装置。
【請求項8】
1つの温度槽内において圧電振動デバイスを1つのキャリアに対して複数個搭載し、このキャリアを複数一方向に順に搬送しながら圧電振動デバイスの特性を測定するインライン方式の温度試験装置であり、
前記測定部での圧電振動デバイスの特性を測定する際、前記キャリアの反りを抑制する反り防止ピンが設けられたことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの温度試験装置。
【請求項9】
前記複数の圧電振動デバイスを識別する識別部が設けられたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの温度試験装置。
【請求項10】
前記識別部は、圧電振動デバイスの搬送方向に沿った前記測定部の前後位置に配されたことを特徴とする請求項9に記載の圧電振動デバイスの温度試験装置。
【請求項11】
前記測定部に、圧電振動デバイスの特性を測定する一対のプローブピンと、前記一対のプローブピンの圧電振動デバイスへの接着を防止する付着防止手段とが設けられたことを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの温度試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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