説明

圧電振動片、及びその製造方法、及びその製造装置

【課題】ウエハから多数個の圧電振動片を製造する際、個々の圧電振動片の加工精度を高め、よって圧電振動片の特性のバラツキや悪化を抑制する。
【解決手段】水晶振動片1の製造装置には、ウエハ2を予め設定した水晶振動片1の寸法に基づき、ウエハ2のX,Z‘軸方向に沿ってウエハ2を切断するとともにX,Z‘軸方向に沿った水晶振動片1の形状を成形する切断成形部3が設けられている。切断成形部3には、ウエハ2を切断する切断部31と、予め設定した水晶振動片1の形状を成形する成形部32と、が設けられ、中心軸36を共通の軸として切断部31と成形部32が一体形成されている。この切断成形部3では、テーブル4をX,Z‘軸方向に移動させながら、切断部31及び成形部32を中心軸36を中心にして回転させることで、ウエハ2の切断と水晶振動片1のコンベックス加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハから多数個の圧電振動片を製造する圧電振動片の製造方法、及びその製造装置、及びその製造方法により製造された圧電振動片に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子機器などでは小型化がすすめられており、この電子機器の小型化にともなって、内部に備えられる圧電振動子の軽薄小型化が求められている。
【0003】
上記した圧電振動子は、ベースとキャップとから筐体が構成されている。この筐体の内部のベース上には、圧電振動片が保持されている。そして、ベースとキャップとが接合されることで、筐体の内部の圧電振動片が気密封止される。
【0004】
この気密封止される圧電振動片の製造に関して、一枚のウエハから多数個の圧電振動片の基体となる圧電素子が形成される(例えば、下記する特許文献1ご参照)。この圧電素子の両主面に励振電極が形成されることで、圧電振動片が製造される。
【0005】
下記する特許文献1には、以下に示す圧電振動片の基体となる圧電素子の製造方法が開示されている。
【0006】
この特許文献1に開示の技術は、ウエハをテーブルに保持させ、保持させたウエハを切断機により多数個の圧電素子(水晶素子)に切断成形するものである。この技術で用いる切断機には、2つの回転砥石(第1回転砥石、第2回転砥石)が用いられる。第1回転砥石は、成形される圧電素子のベベル加工を行うものであり、第2回転砥石は、圧電素子のベベル加工を行った後に多数個の圧電素子をウエハから個別切断するものであり、これら回転砥石は一直線上に配されている。
【0007】
具体的に、ウエハが第1回転砥石を通過すると、ウエハの表面が第1回転砥石で削られ、V溝が形成される。第1回転砥石が通過した後、引き続いて第2回転砥石がウエハのV溝の中心を切断して切断溝が形成される。この切断溝によってウエハは左右に分断され、一枚のウエハから複数の短冊状ウエハが形成される。
【0008】
そして、上記した動作を行った後に、切断機により短冊状ウエハの長手方向と直交する方向に沿って短冊状ウエハを切断して圧電素子が製造される。また、この特許文献1に開示の技術では、短冊状ウエハの状態において励振電極が形成される。
【特許文献1】特開2003−11041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記した特許文献1に開示の圧電振動片の製造方法では、ウエハの切断において2つの回転砥石が用いられ、これら回転砥石は一直線上に配されている。そのため、第1回転砥石による切削場所の中心と、第2回転砥石による切削場所の中心が同一位置であるとされている。
【0010】
しかしながら、第1回転砥石及び第2回転砥石による切削場所の中心が全く同一位置にすることは難しい。これは、第1,2回転砥石が一直線上に配されているが、切削工程を2回に分けて行っているために必ず切削誤差が生じる。すなわち、加工バラツキが生じる。この誤差は、外的要件による誤差や機械が有する公称誤差が含まれる。また、この誤差は、圧電振動片が小型化にするに従って顕著になる。例えば、許容誤差(切削場所の中心の位置ずれ)が数μmである場合、上記した切断機では対応することは難しい。
【0011】
上記したように第1回転砥石及び第2回転砥石による切削場所の中心が全く同一位置ではない場合、一枚のウエハから多数個製造される圧電素子の形状がそれぞれ異なる。その結果、この製造方法により製造された圧電振動片を基体とする多数個の圧電振動片の特性(CI値やスプリアスの有無等)のバラツキが生じる。また、圧電振動片の特性(CI値の増大やスプリアスの発生など)が悪化する。
【0012】
また、上記した特許文献1に開示の圧電振動片の製造方法を例とする従来の圧電振動片の製造方法により製造した圧電振動片を、低周波数のATカットの圧電振動片(例えば、水晶振動片)として用いる場合、以下に示す問題点が生じる。
【0013】
低周波数のATカットの水晶振動片では、振動エネルギーを効率的に閉じ込めるためにコンベックス加工や、バレル加工等の面取り加工が必要となる。しかしながら、水晶振動片の寸法を超小型化すると、面取り加工の領域が狭くなり、効率的な振動エネルギー閉じ込めが困難となる。そのため、従来の圧電振動片の製造方法により、超小型であって低周波数の水晶振動片(もしくは水晶振動片を備えた水晶振動子)を製造することは困難である。
【0014】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、ウエハから多数個の圧電振動片を製造する際、個々の圧電振動片の加工精度を高め、よって圧電振動片の特性のバラツキや悪化を抑制する圧電振動片、及びその製造方法、及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動片の製造方法は、ウエハから多数個の圧電振動片を製造する圧電振動片の製造方法において、前記ウエハを予め設定した前記圧電振動片の寸法に基づき、前記ウエハを切断しながら前記圧電振動片の形状を成形する切断成形工程を有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、前記ウエハを予め設定した前記圧電振動片の寸法に基づき、前記ウエハを切断しながら前記圧電振動片の形状を成形する切断成形工程を有するので、一度に前記ウエハの切断と前記圧電振動片の形状の成形を行うことが可能となり、複数回工程により前記ウエハの切断及び前記圧電振動片の形状の成形を行うことと比べて前記ウエハの切断成形における誤差を抑制することが可能となる。その結果、ウエハから多数個の圧電振動片を製造する際、個々の圧電振動片の加工精度を高め、よって圧電振動片の特性のバラツキや悪化を抑制することが可能となる。また、本発明は、例えばATカット水晶振動片等の、厚さで周波数が決定される厚み系圧電振動片の主面の面取り成形に好適である。また、本発明によれば、許容誤差が数μmである場合であっても対応可能である。そのため、前記圧電振動片の軽薄小型化にも対応可能であり、本発明は小型化された前記圧電振動片においてその作用効果が顕著にあらわれる。特に、本発明にかかる圧電振動片では、小型化にともなう弊害として挙げられるコンベックス加工の均一化を図ることや、バレル加工時において圧電振動片の自重が小さい為に生じる加工時間の長時間化を抑えることが可能となる。また、本発明にかかる圧電振動片は周波数の高周波化に適用できるだけでなく、低周波の圧電振動片(4〜10MHz)にも対応可能である。従って、低周波数のATカットの水晶振動片を製造することが可能となる。
【0017】
前記方法において、前記切断成形工程は、前記ウエハを、前記圧電振動片の主面の寸法に基づいて前記設定軸方向に沿って切断するとともに、前記設定軸方向に沿った前記圧電振動片の前記設定軸方向の形状を成形する第1の切断成形工程と、前記ウエハを、前記圧電振動片の主面の寸法に基づいて前記設定軸と直交する軸方向に沿って切断するとともに、前記直交する軸方向に沿った前記圧電振動片の前記直交する軸方向の形状を成形する第2の切断成形工程と、を含んでもよい。
【0018】
この場合、前記切断成形工程が、前記第1の切断成形工程と前記第2の切断成形工程とを含むので、製造される前記圧電振動片の軸方向を明確にすることが可能となり、この圧電振動片をベースに保持して圧電振動子を製造する際の前記圧電振動片の保持方向を容易に明確にすることが可能となる。その結果、前記圧電振動片の前記ベースへの保持方向の間違いによる不良品を無くすことが可能となる。さらに、所望のコンベックス形状等の面取り加工を前記圧電振動片の全周に対して行うことが可能となる。
【0019】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動片の製造装置は、ウエハから多数個の圧電振動片を製造する圧電振動片の製造装置において、前記ウエハを予め設定した前記圧電振動片の寸法に基づき、前記ウエハを切断しながら前記圧電振動片の形状を成形する切断成形部が設けられたことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、前記ウエハを予め設定した前記圧電振動片の寸法に基づき、前記ウエハを切断しながら前記圧電振動片の形状を成形する前記切断成形部が設けられるので、一度に前記ウエハの切断と前記圧電振動片の形状の成形を行うことが可能となり、複数回工程により前記ウエハの切断及び前記圧電振動片の形状の成形を行うことと比べて前記ウエハの切断成形における誤差を抑制することが可能となる。その結果、ウエハから多数個の圧電振動片を製造する際、個々の圧電振動片の加工精度を高め、よって圧電振動片の特性のバラツキや悪化を抑制することが可能となる。また、本発明は、例えばATカット水晶振動片等の、厚さで周波数が決定される厚み系圧電振動片の主面の面取り成形に好適である。また、本発明によれば、許容誤差が数μmである場合であっても対応可能である。そのため、前記圧電振動片の軽薄小型化にも対応可能であり、本発明は小型化された前記圧電振動片においてその作用効果が顕著にあらわれる。特に、本発明にかかる圧電振動片では、小型化にともなう弊害として挙げられるコンベックス加工の均一化を図ることや、バレル加工時において圧電振動片の自重が小さい為に生じる加工時間の長時間化を抑えることが可能となる。また、本発明にかかる圧電振動片は周波数の高周波化に適用できるだけでなく、低周波の圧電振動片(4〜10MHz)にも対応可能である。従って、低周波数のATカットの水晶振動片を製造することが可能となる。
【0021】
前記構成において、前記切断成形部は、前記ウエハから切断する切断部と、予め設定した前記圧電振動片の形状を成形する成形部とが一体形成されてなってもよい。
【0022】
この場合、前記切断成形部は、前記ウエハから切断する切断部と、予め設定した前記圧電振動片の形状を成形する前記成形部とが一体形成されてなるので、当該製造装置の製造工程による前記ウエハの切断位置と前記圧電振動片の形状の成形位置のバラツキを抑えることが可能となる。また、前記成形部の設計変更により前記圧電振動片の形状を任意に設定することが可能となる。
【0023】
前記構成において、前記切断成形部には、前記成形部による前記圧電振動片の形状の成形量を調整するストッパ部が設けられてもよい。
【0024】
この場合、前記切断成形部に前記ストッパ部が設けられているので、前記圧電振動片の形状の成形量(特に、前記圧電振動片の厚さ方向の成形量)を自由に設定可能である。そのため、前記成形部の設計変更により前記圧電振動片の形状を任意に設定することが可能となる。具体的に、前記ストッパ部により、前記ウエハの切断の際の切断を、予め設定した深さまでに設定可能であり、この切断にともなって、前記圧電振動片の形状の成形量を調整することが可能となる。
【0025】
前記構成において、前記切断成形部は、複数個並べて設けられてもよい。
【0026】
この場合、前記切断成形部が複数個並べて設けられるので、前記ウエハに対して前記軸方向に沿って複数個の前記切断成形部により前記ウエハの切断と前記圧電振動片の形状の成形を行うことが可能となる。そのため、前記ウエハから多数個の前記圧電振動片を製造する際の製造工程を減らすことが可能となる。
【0027】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動片は、上記した圧電振動片の製造装置により製造されたことを特徴とする。
【0028】
本発明にかかる圧電振動片によれば、上記した圧電振動片の製造装置により製造されるので、上記した本発明と同様の作用効果を有する。
【発明の効果】
【0029】
本発明にかかる圧電振動片、及びその製造方法、及びその製造装置によれば、ウエハから多数個の圧電振動片を製造する際、個々の圧電振動片の加工精度を高め、よって圧電振動片の特性のバラツキや悪化を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、圧電振動片としてATカット水晶振動片(以下、水晶振動片という)に本発明を適用した場合を示す。
【0031】
本実施の形態にかかる水晶振動片1(図3参照)の製造装置は、図2に示すウエハ2から多数個の水晶振動片1を製造する装置である。この製造装置には、図1に示すように、ウエハ2の両主面を研磨する研磨部(図示省略)と、ウエハ2を切断するとともに水晶振動片1の形状を成形する切断成形部3と、水晶振動片1の両主面に励振電極11(図4参照)を形成する励振電極形成部(図示省略)とが設けられている。なお、本実施の形態にかかる研磨部と切断成形部3と励振電極形成部は、それぞれ異なる装置からなってもよく、これら部材が一体的になって構成される装置であってもよい。
【0032】
本実施の形態では、切断成形部3として、ダイシングソーを用いている。この切断成形部3は、図1に示すように、ウエハ2を予め設定した水晶振動片1の寸法に基づき、ウエハ2の予め設定した軸方向(本実施の形態では、図2に示すX軸とZ‘軸)に沿ってウエハ2を切断するとともに軸方向に沿った水晶振動片1の形状を成形する。なお、本実施の形態では、X軸方向を、本発明でいう設定軸方向と定める。
【0033】
また、切断成形部3には、図1に示すように、ウエハ2を載置するテーブル4と、ウエハ2を切断する切断部31と、予め設定した水晶振動片1の形状を成形する成形部32と、が設けられている。また、中心軸36を共通の軸として切断部31と成形部32が一体形成されている。なお、本実施の形態では、3個の切断成形部3が並べて設けられている。また、これら3個の切断成形部3のそれぞれの間に介する切断部31がそれぞれ隣接する成形部32の共通の切断部31として用いられる。
【0034】
テーブル4は、図1に示すように、土台41と、ウエハ2を載置するダミー水晶42とから構成され、テーブル4上に松脂を接着剤43としてウエハ2が載置される。また、このテーブル4は、図2に示すX,Z‘軸方向のいずれか一方に沿って移動(走査)する。また、テーブル4の土台41は、金属などの硬質部材からなる。
【0035】
切断部31には、図1に示すように、成形部32による水晶振動片1の形状の成形量を調整するストッパ部33が設けられている。このストッパ部33により、ウエハ2の切断の際の切断を、予め設定した深さまで切断として設定可能であり、この切断にともなって、水晶振動片1の形状の成形量を調整することが可能となる。
【0036】
成形部32のウエハ2と接する接面34は、図1に示すように、水晶振動片1のコンベックス加工を行うために、凹形状に形成されている。具体的に、本実施の形態では、中心軸36の軸方向に沿った接面34の形状が、図1に示すように、半円弧状に形成されている。そして、成形部32の両側面35に切断部31が一体形成されている。
【0037】
この切断成形部3では、テーブル4をX,Z‘軸方向のいずれか一方に沿って移動させながら、切断部31及び成形部32を中心軸36を中心にして回転させることで、ウエハ2の切断と水晶振動片1の形状の成形(コンベックス加工)を行う。
【0038】
次に、上記した水晶振動片1の製造装置を用いて、水晶振動片1の製造を図面を用いて説明する。
【0039】
図2に示すウエハ2の両主面を平行平面研磨部により研磨する。そして、図1に示すダミー水晶42に接着剤43を用いて接着して載置する。なお、ウエハ2には、図2(a)に示すように、結晶軸方向を示す面取り部2aが形成されている。
【0040】
そして、図2(b)に示すように、ウエハ2を予め設定した水晶振動片1の寸法に基づき、図2(b)に示す切断ラインLXに沿って(本実施の形態では、X軸方向に沿って)切断成形部3によりウエハ2を切断して10個の短冊状ウエハ21を成形する。なお、この切断は、テーブル4をウエハ2のX軸方向に沿って移動させ、研磨剤を流しながら切断部31及び成形部32を回転させることで行われる。この切断工程と同時に、図1に示すように、X軸方向に沿った水晶振動片1の主面がコンベックス加工されて成形される(本発明でいう切断成形工程もしくは第1の切断成形工程)。
【0041】
短冊状ウエハ21を成形した後、テーブル4を90°回転させ、ウエハ2を予め設定した水晶振動片1の寸法に基づき、図2(c)に示す切断ラインLZ‘に沿って(本実施の形態では、Z‘軸方向に沿って)切断成形部3によりウエハ2を切断してウエハ2を48個の水晶振動片1の基体となる水晶素子を成形する。なお、この切断は、テーブル4をウエハ2のZ’軸方向に沿って移動させ、研磨剤を流しながら切断部31及び成形部32を回転させることで行われる。この切断工程において同時に、図1に示すように、Z’軸方向に沿った水晶振動片1の主面がコンベックス加工されて成形される(本発明でいう切断成形工程もしくは第2の切断成形工程)。この時、水晶振動片1の厚みをモニタリングして周波数を測定する。ここでいうモニタリングには、水晶振動片1の厚みを光学的に測定する方法や、ダミー水晶42を用いて電気を流し周波数を直接測定する方法などがある。
【0042】
第2の切断成形工程の後に、ダミー水晶42から48個の水晶振動片1が外され、これら48個の水晶振動片1が励振電極形成部の電極形成を行う電極形成用テーブル(図示省略)に配される。そして、48個の水晶振動片1の両主面の所定位置に、励振電極形成部により励振電極11が形成され、図4に示す水晶振動片1が製造される。
【0043】
上記した製造工程により製造された水晶振動片1は、図4に示すように、ベース51上に導電性接着剤52を用いて保持される。そして、ベース51の開口を覆うようにキャップ(図示省略)が接合され、筐体内部のベース51上に保持された水晶振動片1が気密封止されて、図4に示す水晶振動子5が製造される。なお、図4に示す水晶振動子5は、水晶振動片1を両保持したものである。
【0044】
上記したように、本実施の形態にかかる水晶振動片1の製造装置によれば、ウエハ2を予め設定した水晶振動片1の寸法に基づき、ウエハ2を切断しながら水晶振動片1の形状を成形する切断成形部3が設けられるので、一度にウエハ2の切断と水晶振動片1の形状の成形を行うことができ、複数回工程によりウエハ2の切断及び水晶振動片1の形状の成形を行うことと比べてウエハ2の切断成形における誤差を抑制することができる。その結果、ウエハ2から48個の水晶振動片1を製造する際、48個の水晶振動片1の加工精度を高め、よって水晶振動片1の特性(CI値やスプリアスの発生の有無等)のバラツキや悪化を抑制することができる。また、本実施の形態にかかる水晶振動片1の製造装置は、ATカットの水晶振動片1等の、厚さで周波数が決定される厚み系圧電振動片の主面の面取り成形に好適である。また、本実施の形態にかかる水晶振動片1の製造装置によれば、許容誤差が数μmである場合であっても対応可能である。そのため、水晶振動片1の軽薄小型化にも対応可能であり、本実施の形態にかかる水晶振動片1は、小型化された水晶振動片1においてその作用効果が顕著にあらわれる。特に、本実施の形態にかかる水晶振動片1では、小型化にともなう弊害として挙げられるコンベックス加工の均一化を図ることや、バレル加工時において水晶振動片1の自重が小さい為に生じる加工時間の長時間化を抑えることができる。また、本実施の形態にかかる水晶振動片1は周波数の高周波化に適用できるだけでなく、低周波の水晶振動片1(4〜10MHz)にも対応可能である。従って、低周波数のATカットの水晶振動片1を製造することができる。
【0045】
また、切断成形部3は、ウエハ2から切断する切断部31と、予め設定した水晶振動片1の形状を成形する成形部32とが一体形成されてなるので、当該製造装置の製造工程によるウエハ2の切断位置と水晶振動片1の形状の成形位置のバラツキを抑えることができる。また、成形部32の設計変更により水晶振動片1の形状を任意に設定することができる。
【0046】
また、切断成形部3にストッパ部33が設けられているので、水晶振動片1の形状の成形量(特に、水晶振動片1の厚さ方向の成形量)を自由に設定可能である。そのため、成形部32の設計変更により水晶振動片1の形状を任意に設定することができる。具体的に、ストッパ部33により、ウエハ2の切断の際の切断を、予め設定した深さまでに設定可能であり、この切断にともなって、水晶振動片1の形状の成形量を調整することが可能となる。また、テーブル4の土台41は、金属などの硬質部材からなるので、ストッパ部33によってウエハ2を切断する際の切断量を、予め設定した深さまでに設定するのに好ましい。すなわち、テーブル4の土台41によりストッパ部33の最大切断量を規制することができる。
【0047】
また、切断成形部3が3個並べて設けられるので、ウエハ2に対して軸方向(X軸方向,Z‘軸方向)に沿って3個の切断成形部3によりウエハ2の切断と水晶振動片1の形状の成形を行うことができる。そのため、ウエハ2から48個の水晶振動片を製造する際の製造工程を減らすことができる。
【0048】
さらに、上記したように、本実施の形態にかかる水晶振動片1の製造方法によれば、ウエハ2を予め設定した水晶振動片1の寸法に基づき、ウエハ2を切断しながら水晶振動片1の形状を成形する切断成形工程を有するので、一度にウエハ2の切断と水晶振動片1の形状の成形を行うことができ、複数回工程によりウエハ2の切断及び水晶振動片1の形状の成形を行うことと比べてウエハ2の切断成形における誤差を抑制することができる。その結果、ウエハ2から48個の水晶振動片1を製造する際、48個の水晶振動片1の加工精度を高め、よって水晶振動片1の特性のバラツキや悪化を抑制することができる。また、本実施の形態にかかる水晶振動片1の製造方法は、ATカットの水晶振動片1等の、厚さで周波数が決定される厚み系圧電振動片の主面の面取り成形に好適である。また、本実施の形態にかかる水晶振動片1の製造方法によれば、許容誤差が数μmである場合であっても対応可能である。そのため、水晶振動片1の軽薄小型化にも対応可能であり、本実施の形態にかかる水晶振動片1の製造方法は小型化された水晶振動片1においてその作用効果が顕著にあらわれる。特に、本実施の形態にかかる水晶振動片1では、小型化にともなう弊害として挙げられるコンベックス加工の均一化を図ることや、バレル加工時において水晶振動片1の自重が小さい為に生じる加工時間の長時間化を抑えることができる。また、本実施の形態にかかる水晶振動片1は周波数の高周波化に適用できるだけでなく、低周波の水晶振動片1(4〜10MHz)にも対応可能である。従って、低周波数のATカットの水晶振動片1を製造することができる。
【0049】
また、切断成形工程が、第1の切断成形工程と第2の切断成形工程とを含むので、製造された水晶振動片1の軸方向を明確にすることができ、この水晶振動片1をベース51に保持して水晶振動子1を製造する際の水晶振動片1の保持方向を容易に明確にすることができる。その結果、水晶振動片1のベース51への保持方向の間違いによる不良品を無くすことができる。さらに、所望のコンベックス形状等の面取り加工を水晶振動片1の全周に対して行うことができる。
【0050】
また、図2(a)に示すように、ウエハ2には、結晶軸方向を示す面取り部2aが形成されているので、ダミー水晶42への載置の際、ウエハ2をその結晶軸方向(X,Z‘軸方向)に沿って載置することが容易となる。
【0051】
さらに、本実施の形態にかかる水晶振動片1によれば、上記した水晶振動片1の製造装置により製造されるので、同様の作用効果を有する。
【0052】
なお、本実施の形態では、ウエハ2から48個の水晶振動片1を製造しているが、これに限定されるものではなく、予め設定した条件によりウエハ2から任意の数の水晶振動片を製造可能である。
【0053】
また、本実施の形態では、松脂を接着剤として用いているが、これに限定されるものではなく、接着剤として用いることが可能であれば、例えば他の樹脂等であってもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、ストッパ部33を設けているが、これに限定されるものではなく、これは好適な例である。
【0055】
また、本実施の形態では、第1,2の切断成形工程の間でテーブル4を90°回転させているが、これに限定されるものではなく、第1の切断成形工程の後に短冊状ウエハ21をテーブル4から外し、短冊状ウエハ21を90°回転させた状態でテーブル4に搭載して第2の切断成形工程を行ってもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、切断成形部3として、ダイシングソーを適用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、切断成形材料としてダイヤモンドを用いた他の切断成形部であってもよい。
【0057】
また、図1に示す切断成形部3では、3個の切断成形部3のそれぞれ間に介する切断部31がそれぞれ隣接する成形部32の共通の切断部31として用いられているが、これに限定されるものではなく、3個の切断成形部3それぞれ個別に切断部31が設けられもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、図1に示すように、切断成形部3は3つからなっているが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、切断成形部3が1個設けられてもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、中心軸36の軸方向に沿った接面34の形状が、図1に示すように、半円弧状に形成されているが、これに限定されるものではなく、任意に設定可能である。例えば、図6に示すように、半円弧状であって、その一部に段差部37を形成してもよい。この場合、製造された水晶振動片1の軸方向を明確にすることができ、この水晶振動片1をベース51に保持して水晶振動子1を製造する際の水晶振動片1の保持方向を容易に明確にすることができる。その結果、水晶振動片1のベース51への保持方向の間違いによる不良品を無くすことができる。さらに、この段差部37を保持部分とすることにより、接合材の拡がりを抑制することができ、さらに特性低下のない水晶振動片1(水晶振動子)を得ることができる。また、図7に示すように、接面34の半円弧状の曲率を可変させてもよく、図7に示す接面34では、切断部31の近傍部分34aの曲率が他の部分34bの曲率よりも小さくなるように設定されている。このような構成により切断成形された圧電振動片(本実施の形態では水晶振動片1)は効率的な振動エネルギーの閉じ込めを行うことができ、面取り加工された良好な特性の圧電振動片(本実施の形態では水晶振動片1)を得ることができる。また、図8に示すように、接面34を、曲面34cと平面34dとから構成してもよく、図8に示す接面34では、切断部31近傍の接面34を曲面34cとし、その他の部分を平面34dとして構成されている。このような構成により切断成形された圧電振動片(本実施の形態では水晶振動片1)は中央部分に表裏が平行な領域が形成されるため、電気的特性の設計がしやすく、また良好な特性を得ることができる。さらに、半円弧状ではなく傾斜面を形成してもよく、この場合、水晶振動片1のベベル加工が行われる。
【0060】
また、本実施の形態では、ダミー水晶42を用いているが、これに限定されるものではなく、ガラスを用いてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、切断成形部3をX,Z‘軸方向に移動させながら、ウエハ2の切断と水晶振動片1の形状の成形を行っているが、これに限定されるものではなく、ウエハを、X,Z‘軸方向に移動させて行ってもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、ウエハ2の両主面の研磨を行った後に、励振電極11を形成しているが、これに限定されるものではなく、第1の切断成形工程の前後、もしくは第2の切断成形工程の後に励振電極を形成してもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、図4に示す水晶振動子5は水晶振動片1を両保持したものであるが、これに限定されるものではなく、水晶振動片1を片保持したものであってもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、水晶振動片の製造工程において水晶振動片1の厚みをモニタリングして周波数を測定するが、これに限定されることではなく、水晶振動片1の厚みをモニタリングしなくてもよい。
【0065】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、特に、水晶振動片に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる水晶振動片の製造装置の概略側面図であって、かつ、ウエハの切断成形工程前後の概略側面である。
【図2】図2(a)は、本実施の形態にかかる切断成形工程前のウエハの概略平面図である。図2(b)は、本実施の形態にかかる第1の切断成形工程後のウエハの概略平面図である。図2(c)は、本実施の形態にかかる第2の切断成形工程後のウエハの概略平面図である。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる水晶振動片の概略斜視図である。
【図4】図4(a)は、本実施の形態にかかる水晶振動子の概略平面図である。図4(b)は、本実施の形態にかかる水晶振動子の概略側面図である。
【図5】図5は、本実施の他の形態にかかる水晶振動片の製造装置の概略側面図であって、かつ、ウエハの切断成形工程前後の概略側面である。
【図6】図6は、本実施の他の形態にかかる水晶振動片の製造装置の概略側面図であって、かつ、ウエハの切断成形工程前後の概略側面である。
【図7】図7は、本実施の他の形態にかかる切断成形部の接面形状の概略側面図である。
【図8】図8は、本実施の他の形態にかかる切断成形部の接面形状の概略側面図である。
【符号の説明】
【0068】
2 ウエハ
1 水晶振動片(圧電振動片)
3 切断成形部
31 切断部
32 成形部
33 ストッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハから多数個の圧電振動片を製造する圧電振動片の製造方法において、
前記ウエハを予め設定した前記圧電振動片の寸法に基づき、前記ウエハを切断しながら前記圧電振動片の形状を成形する切断成形工程を有することを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項2】
前記切断成形工程は、
前記ウエハを、前記圧電振動片の主面の寸法に基づいて前記設定軸方向に沿って切断するとともに、前記設定軸方向に沿った前記圧電振動片の前記設定軸方向の形状を成形する第1の切断成形工程と、
前記ウエハを、前記圧電振動片の主面の寸法に基づいて前記設定軸と直交する軸方向に沿って切断するとともに、前記直交する軸方向に沿った前記圧電振動片の前記直交する軸方向の形状を成形する第2の切断成形工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項3】
ウエハから多数個の圧電振動片を製造する圧電振動片の製造装置において、
前記ウエハを予め設定した前記圧電振動片の寸法に基づき、前記ウエハを切断しながら前記圧電振動片の形状を成形する切断成形部が設けられたことを特徴とする圧電振動片の製造装置。
【請求項4】
前記切断成形部は、前記ウエハから切断する切断部と、予め設定した前記圧電振動片の形状を成形する成形部とが一体形成されてなることを特徴とする請求項3に記載の圧電振動片の製造装置。
【請求項5】
前記切断成形部には、前記成形部による前記圧電振動片の形状の成形量を調整するストッパ部が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の圧電振動片の製造装置。
【請求項6】
前記切断成形部は、複数個並べて設けられたことを特徴とする請求項4または5に記載の圧電振動片の製造装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1つに記載の圧電振動片の製造装置により製造されたことを特徴とする圧電振動片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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