説明

圧電方式インクジェットプリントヘッド及び前記プリントヘッドの駆動装置

【課題】30KHz以上の高周波吐出時にも安定的な吐出特性を得ることができる圧電方式インクジェットプリントヘッド及び前記プリントヘッドの駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明による圧電方式インクジェットプリントヘッドは、圧力チャンバ;前記圧力チャンバにインクを吐出するための駆動力を提供する圧電アクチュエーター;及び前記圧電アクチュエーターに駆動パルスを印加するパルス印加部;を含む。インクジェットヘッドが有している固有の振動周期を測定し、前記振動に強め合う干渉と弱め合う干渉を同時に起こすことができる条件で、前記駆動パルスを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電方式インクジェットプリントヘッド及び前記プリントヘッドの駆動装置に関し、特にインクジェットヘッドが有している固有の振動周期を把握し、強め合う干渉と弱め合う干渉を同時に起こす条件で駆動波形を構成することにより、高速印刷を可能にした圧電方式インクジェットプリントヘッドの駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリントヘッドは、印刷用インクの微小な液滴(droplet)を記録用紙上の求める位置に吐出させて所定色相の画像に印刷する装置である。このようなインクジェットプリントヘッドは、インク吐出方式によって大きく二つに分けられることができる。一つは熱源を利用してインクにバブル(bubble)を発生させ、そのバブルの膨張力によってインクを吐出させる熱駆動方式のインクジェットプリントヘッドであり、また他の一つは圧電体の変形による圧力でインクを吐出させる圧電方式のインクジェットプリントヘッドである。
【0003】
最近は、前記圧電方式を利用したインクジェット技術が発展し続けており、カラーフィルター(color filter)、太陽電池、OLED、PCBなどの多様な工程にインクジェットを利用する方法が広く研究されている。
【0004】
しかし、既存のインクジェット技術を用いる場合、アクチュエーターの動きによってチャンバ内に共振が形成されるため、高速で液滴を吐出することが非常に難しい。従って、このようなインクジェットを利用した工程で生産性を高めるために、インクジェットヘッドの共振特性を利用してインクジェットヘッドの駆動波形を制御する技術に対する研究が必要となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2008−0050291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施例は、インクジェットヘッドが有している固有の振動周期を測定し、前記振動に強め合う干渉と弱め合う干渉を同時に起こすことができる条件でインクジェットヘッドの駆動波形を形成することにより、インクの高周波吐出時にも安定的な吐出特性を得ることができる圧電方式インクジェットプリントヘッド及び前記プリントヘッドの駆動装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の一実施例による圧電方式インクジェットプリントヘッドは、圧力チャンバ;前記圧力チャンバにインクを吐出するための駆動力を提供する圧電アクチュエーター;及び前記圧電アクチュエーターに駆動パルスを印加するパルス印加部;を含む。
【0008】
この際、前記駆動パルスは、電圧が下降する第1下降区間;前記第1下降区間によって下降された電圧が一定に維持される第1持続区間;前記第1持続区間で維持されていた電圧が正(+)の大きさを有する電圧に上昇する上昇区間;前記上昇区間によって上昇された電圧が一定に維持される第2持続区間;及び前記第2持続区間で維持されていた電圧が原点に下降する第2下降区間;を含むことができる。
【0009】
そして、前記駆動パルスの全体長さは前記圧力チャンバの共振周期と同一に構成されることができる。
【0010】
また、前記第1持続区間の長さは前記圧力チャンバの共振周期の半分であることができる。
【0011】
一方、前記課題を解決するための本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッド駆動装置は、駆動パルスを生成し、生成された前記駆動パルスをインクジェットプリントヘッドに供給するインクジェットプリントヘッド駆動装置であって、前記駆動パルスは、電圧が下降する第1下降区間;前記第1下降区間によって下降された電圧が一定に維持される第1持続区間;前記第1持続区間で維持されていた電圧が正(+)の大きさを有する電圧に上昇する上昇区間;前記上昇区間によって上昇された電圧が一定に維持される第2持続区間;及び前記第2持続区間で維持されていた電圧が原点に下降する第2下降区間;を含む。
【0012】
この際、前記駆動パルスの全体長さは前記圧力チャンバの共振周期と同一に構成されることができる。
【0013】
そして、前記第1持続区間の長さは前記圧力チャンバの共振周期の半分であることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施例によると、インクジェットヘッドが有している固有の振動周期を測定し、前記振動に強め合う干渉と弱め合う干渉を同時に起こすことができる条件でインクジェットヘッドの駆動波形を形成することにより、30KHz以上の高周波吐出時にも安定的な吐出特性を得ることができる長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例による圧電方式インクジェットプリントヘッド100の構成を簡略に示したブロック図である。
【図2】一般的なインクジェットヘッドでの圧電アクチュエーターの駆動パルスを説明するための図面である。
【図3】本発明の一実施例による圧電アクチュエーターの駆動パルスを説明するための図面である。
【図4】本発明の一実施例においてB区間の電圧の大きさ変化によるインクジェットヘッドの吐出特性を説明するための図面である。
【図5】本発明の一実施例においてB区間の電圧の大きさ変化によるインクジェットヘッドの吐出特性を説明するための図面である。
【図6】本発明の一実施例においてB区間の長さ変化によるインクジェットヘッドの吐出特性を説明するための図面である。
【図7】本発明の一実施例においてB区間の長さ変化によるインクジェットヘッドの吐出特性を説明するための図面である。
【図8】(a)は従来の単一パルス波形による5kHzでの吐出特性を示し、(b)は本発明のパルス波形による5kHzでの吐出特性を示す図面である。
【図9】(a)は従来の単一パルス波形による10kHzでの吐出特性を示し、(b)は本発明のパルス波形による10kHzでの吐出特性を示す図面である。
【図10】(a)は従来の単一パルス波形による20kHzでの吐出特性を示し、(b)は本発明のパルス波形による20kHzでの吐出特性を示す図面である。
【図11】(a)は従来の単一パルス波形による30kHzでの吐出特性を示し、(b)は本発明のパルス波形による30kHzでの吐出特性を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。しかし、これは例示に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0017】
本発明の説明において、本発明に係わる公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要にぼかす可能性があると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は本発明においての機能を考慮して定義された用語であり、これは使用者、運用者の意図または慣例などによって変わることができる。従って、その定義は本明細書の全体における内容を基に下すべきであろう。
【0018】
本発明の技術的思想は請求範囲によって決まり、以下の実施例は本発明の技術的思想を本発明が属する技術分野にて通常の知識を有する者に効率的に説明するための一つの手段に過ぎない。
【0019】
図1は本発明の一実施例による圧電方式インクジェットプリントヘッド100の構成を簡略に示したブロック図である。
【0020】
図示されたように、本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッド100は、圧力チャンバ102、圧電アクチュエーター104及びパルス印加部106を含む。
【0021】
圧力チャンバ102は内部にインクが貯蔵され、圧電アクチュエーター104から伝達される圧力によってインクをノズル(nozzle)に吐出する。圧電アクチュエーター104はインクを吐出するための駆動力を圧力チャンバ102に伝達する役割をする。このような圧電アクチュエーター104はパルス印加部106から印加された駆動パルスによって動作する。即ち、パルス印加部106から駆動パルスが印加されると、圧電アクチュエーター104は前記駆動パルスによって収縮され、圧力チャンバ102に圧力を伝達するようになる。
【0022】
図2は一般的なインクジェットヘッドでの圧電アクチュエーターの駆動パルスを説明するための図面である。
【0023】
図示されたように、インク液滴を吐出させるために圧電アクチュエーターに印加される駆動パルスは台形波形を有することができる。このような台形波形を有した駆動パルスの全体時間は、電圧が高くなる上昇時間T、駆動電圧が一定に維持される持続時間T及び電圧が低くなる降下時間Tを含む。このうち、駆動電圧が一定に維持される持続時間Tの長さを調節することにより、ノズルを介して吐出される液滴の体積を調節することができる。また、電圧が高くなる上昇時間Tを一定に維持する場合、液滴の吐出速度を一定に維持することができる。しかし、このような形態の駆動波形は、液滴の吐出に影響を及ぼす圧力チャンバの共振周期と無関係に上昇時間の区間で始まるため、チャンバの共振との強め合う干渉の効果を得ることが困難であるという問題がある。
【0024】
図3は本発明の一実施例による圧電アクチュエーターの駆動パルスを説明するための図面である。
【0025】
一般的に、インクジェットプリントヘッド100の内部の圧電アクチュエーター104が振動し始めると、圧力チャンバ102に所定周波数の共振が起こるようになる。本発明の実施例によると、前記圧力チャンバ102の共振周期Tcに駆動パルスを同期化することにより、駆動パルスと共振との強め合う干渉の効果を得るとともに、圧力チャンバ102の振動を減殺させることができる。
【0026】
前記図面において、サイン波形態のグラフ300は圧力チャンバ102の共振を示し、図面符号302に該当するグラフは圧電アクチュエーターの駆動パルスを示す。Tcは圧力チャンバ102の共振周波数である。
【0027】
図3に図示されたように、本発明の一実施例による圧電アクチュエーターの駆動パルスはプルアンドプッシュ(Pull&Push)形態であり、電圧が下降する第1下降区間(A区間)、前記第1下降区間によって下降された電圧が一定に維持される第1持続区間(B区間)、前記第1持続区間で維持されていた電圧が正(+)の大きさを有する電圧に上昇する上昇区間(C区間)、前記上昇区間によって上昇された電圧が一定に維持される第2持続区間(D区間)、及び前記第2持続区間で維持されていた電圧が原点に下降する第2下降区間(E区間)を含む。
【0028】
まず、図4のようにB区間の電圧の大きさ変化によるインクジェットヘッドの吐出特性を示すと図5のグラフの通りである。図5に図示されたように、B区間の電圧を−4V、−6V、−8Vなどのように変化させると、B区間の電圧の大きさが増加するにつれて液滴の吐出速度が減少し、−10V以後には一定の速度を維持することが分かる。
【0029】
次に、図6のようにB区間の長さ変化によるインクジェットヘッドの吐出特性を示すと図7のグラフの通りである。図6に図示されたように、B区間の長さが変化するとC区間の位置も変化するようになる。前記C区間はインクジェットヘッドの吐出に直接的に影響を及ぼす区間であるため、B区間の長さ変化はインクジェットヘッドの吐出特性に大きい変化を与えるようになる。即ち、図7に図示されたように、B区間が短すぎると圧力チャンバ102の共振特性と駆動パルスが一致しないため、液滴の吐出速度が遅い。しかし、B区間の長さを次第に増加させると、駆動パルスが圧力チャンバ102の共振周期と強め合う干渉を起こして吐出速度が増加し、一定時点(図7で12μs)を過ぎると頂点を経てまた減少し始める。
【0030】
前記図6及び図7のグラフをともに参照すると、インクジェットヘッドの吐出速度がもっとも早い区間は駆動パルスと圧力チャンバ102の共振周期との強め合う干渉がもっとも大きく起こる区間であり、図6のC区間が圧力チャンバ102の共振周期の半分に該当する区間であることが分かる。即ち、前記駆動パルスの全体長さが圧力チャンバ102の共振周期と同一であり、前記第1持続区間(B区間)の長さが前記圧力チャンバの共振周期の半分に該当するように構成する場合、高周波吐出特性を向上させることができる。
【0031】
図7の実施例で、B区間の長さが12μsである時もっとも優れた吐出特性を表すため、圧力チャンバ102の共振周期は24μsであると判断することができる。従って、圧力チャンバ102で起こる共振を最大限に減少(ダンピング)させるための位置にE区間を位置させると、高周波吐出特性を向上させることができる。
【0032】
図8から図11はこのような現象を検証するために一般的に用いる単一パルス(single pulse)波形と本発明でのプルアンドプッシュ(Pull&Push)波形との吐出特性を比較した図面である。図8(a)及び8(b)は5kHzでの吐出特性を、図9(a)及び9(b)は10kHzでの吐出特性を、図10(a)及び10(b)は20kHzでの吐出特性を、図11(a)及び11(b)は30kHzでの吐出特性を示したものである。
【0033】
図示されたように、一般的な駆動波形の場合(図8(a)、9(a)、10(a)、11(a))は吐出周波数が増加するにつれて吐出特性が急激に悪くなるが、本発明の実施例による場合(図8(b)、9(b)、10(b)、11(b))は30KHz以上でも安定的な吐出特性を有することが分かる。
【0034】
以上、代表的な実施例を参照して本発明に対して詳細に説明したが、本発明に属する技術分野にて通常の知識を有する者は、上述の実施例に対して本発明の範囲を外れない限度内で多様な変形が可能であることを理解するのであろう。
【0035】
従って、本発明の権利範囲は上述の実施例に限定されてはならず、後述する特許請求範囲だけではなくこの特許請求範囲と均等なものによって決まるべきである。
【符号の説明】
【0036】
100 インクジェットプリントヘッド
102 圧力チャンバ
104 圧電アクチュエーター
106 パルス印加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力チャンバ;
前記圧力チャンバにインクを吐出するための駆動力を提供する圧電アクチュエーター;及び
前記圧電アクチュエーターに駆動パルスを印加するパルス印加部;
を含む圧電方式インクジェットプリントヘッド。
【請求項2】
前記駆動パルスは、
電圧が下降する第1下降区間;
前記第1下降区間によって下降された電圧が一定に維持される第1持続区間;
前記第1持続区間で維持されていた電圧が正(+)の大きさを有する電圧に上昇する上昇区間;
前記上昇区間によって上昇された電圧が一定に維持される第2持続区間;及び
前記第2持続区間で維持されていた電圧が原点に下降する第2下降区間;
を含む請求項1に記載の圧電方式インクジェットプリントヘッド。
【請求項3】
前記駆動パルスの全体長さは前記圧力チャンバの共振周期と同一に構成される請求項2に記載の圧電方式インクジェットプリントヘッド。
【請求項4】
前記第1持続区間の長さは前記圧力チャンバの共振周期の半分である請求項3に記載の圧電方式インクジェットプリントヘッド。
【請求項5】
駆動パルスを生成し、生成された前記駆動パルスをインクジェットプリントヘッドに供給するインクジェットプリントヘッド駆動装置であって、前記駆動パルスは、
電圧が下降する第1下降区間;
前記第1下降区間によって下降された電圧が一定に維持される第1持続区間;
前記第1持続区間で維持されていた電圧が正(+)の大きさを有する電圧に上昇する上昇区間;
前記上昇区間によって上昇された電圧が一定に維持される第2持続区間;及び
前記第2持続区間で維持されていた電圧が原点に下降する第2下降区間;
を含むインクジェットプリントヘッド駆動装置。
【請求項6】
前記駆動パルスの全体長さは前記圧力チャンバの共振周期と同一に構成される請求項5に記載のインクジェットプリントヘッド駆動装置。
【請求項7】
前記第1持続区間の長さは前記圧力チャンバの共振周期の半分である請求項6に記載のインクジェットプリントヘッド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−56307(P2012−56307A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36724(P2011−36724)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】