説明

圧電素子及び圧電素子の製造方法

【課題】焼成時の変形による不具合を防止できる圧電素子及び圧電素子の製造方法を提供する。
【解決手段】圧電素子1は、第1〜第4圧電体層4,6,8,10が積層されると共に、第1〜第4圧電体層4,6,8,10の積層方向に直交する表面2aを有する積層体2と、積層体2の表面2aに配置される複数の個別電極20と、積層体2の内部に配置され、複数の個別電極20との間に電圧が印加されるコモン電極30と、積層体2の表面2aに配置され、コモン電極30との間に電圧が印加されないダミー電極22と、を備え、積層体2の表面2aは、外周縁部Eに沿う外側領域と、外側領域に囲まれる内側領域とを有しており、個別電極20は、内側領域に配置され、ダミー電極22は、外側領域に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子及び圧電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の圧電素子として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の圧電素子は、個別電極のパターンが形成されたセラミックシートと、コモン電極のパターンが形成されたセラミックシートとが積層された部分の上側に、個別電極用の表面電極とコモン電極用の表面電極とが表面に形成されたトップセラミックシートが配置されている。トップセラミックシートの表面には、表面電極の間及び外側に電気的な導通に関与しないダミー電極が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−324491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、圧電素子が搭載される装置の小型化に伴い、圧電素子の小型化が進められている。圧電素子の小型化としては、変位部位の表面積を縮小し、且つ変位部位の数を増加させることが検討されている。このように、変位部位を小さくした場合、従来の圧電素子と同様の特性(変位)を得るためには、圧電素子の厚みを薄くする必要がある。しかしながら、圧電素子の厚みを薄く(特に、100μm以下)すると、グリーンシートを積層した積層体グリーンを焼成したときに反りやうねりが発生し易くなる。この反りやうねり等の変形は、圧電素子の厚みのばらつき、磁器密度のばらつき、変位部位の特性のばらつき発生などの要因となる。
【0005】
積層体グリーンの焼成時の反りやうねりは、グリーンシートを積層してプレスした際に、表面のグリーンシートにおいて電極パターンが形成された領域と、電極パターンが形成されていない領域とにおける密度のムラに起因する。特に、個別電極が配置されない周縁部の密度のばらつきの問題は顕著である。この密度のムラが焼成時の収縮のムラとなり、反りやうねりを発生させる。これについて、上記従来の圧電素子は、厚みを有しているため、密度のムラを抑制するためのダミー電極の配置が十分に検討されていない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、焼成時の変形による不具合を防止できる圧電素子及び圧電素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る圧電素子は、複数の圧電体層が積層されると共に、圧電体層の積層方向に直交する表面を有する積層体と、積層体の表面に配置される複数の個別電極と、積層体の内部に配置され、複数の個別電極との間に電圧が印加される共通電極と、積層体の表面に配置され、共通電極との間に電圧が印加されないダミー電極とを備え、積層体の表面は、外周縁部に沿う外側領域と、外側領域に囲まれる内側領域とを有しており、個別電極は、内側領域に配置され、ダミー電極は、外側領域に配置されていることを特徴とする。
【0008】
この圧電素子では、積層体の表面上に、個別電極とダミー電極とが配置されている。ダミー電極は、外周縁部に沿う外側領域、すなわち個別電極が配置される内側領域の外側で且つ変位部位として使用されない部分に、個別電極を囲うように配置されている。つまり、圧電素子の製造工程では、積層体の表面を構成するグリーンシートにおいて、個別電極に対応する電極パターンを内側領域に形成すると共に、ダミー電極に対応する電極パターンを外側領域に形成している。このように、表面のグリーンシートにおいて、ダミー電極に対応する電極パターンが、密度のばらつきの問題が顕著な外周縁部を含む外側領域に形成されているため、電極パターンの有無に起因するプレス時の密度のムラの抑制できる。したがって、積層体グリーンを焼成した際に、密度のムラによる収縮ムラの発生を防止でき、反りやうねりを抑制できる。その結果、圧電素子の変形や密度のばらつき発生を防止できる。
【0009】
複数の圧電体層は、表面を構成する第1の圧電体層と、表面とは反対側の裏面を構成する第2の圧電体層とを少なくとも含んでおり、第1の圧電体層上には、複数の個別電極及びダミー電極が配置され、第2の圧電体層上には、共通電極が配置されている。
【0010】
積層体の厚みは、100μm以下である。100μm以下といった厚みの薄い圧電素子は、焼成による反りがより顕著となる。そこで、100μm以下の圧電素子の場合には、上記のようにダミー電極を設けることが特に有効である。
【0011】
第2の圧電体層の厚みは、他の圧電体層の厚みよりも薄いことが好ましい。このように、積層体の裏面を構成する第2の圧電体層の厚みを他の圧電体層の厚みより薄くすることで、焼成時における反りやうねりをより抑制できる。
【0012】
第2の圧電体層に配置される共通電極の厚みは、他の圧電体層に配置される電極の厚みよりも厚いことが好ましい。このように、積層体の裏面を構成する第2の圧電体層に形成さえる共通電極の厚みを、他の圧電体層に形成される電極の厚みよりも厚くすることで、焼成時における反りやうねりをより抑制できる。
【0013】
ダミー電極は、個別電極と略同一形状を呈していることが好ましい。このような構成によれば、積層体グリーンをプレスする際、圧力がグリーンにより均一に加わる。これにより、密度のムラがより抑制され、その結果、圧電素子の変形をより防止できる。
【0014】
第1の圧電体層において、個別電極とダミー電極とは同一工程で形成される。
【0015】
本発明に係る圧電素子の製造方法は、複数の圧電体層が積層されると共に、圧電体層の積層方向に直交する表面を有する積層体と、積層体の表面に配置される複数の個別電極と、積層体の内部に配置され、複数の個別電極との間に電圧が印加される共通電極と、積層体の表面に配置され、共通電極との間に電圧が印加されないダミー電極とを備える圧電素子の製造方法であって、圧電体層となるグリーンシートを準備するグリーン準備工程と、グリーンシートに個別電極、ダミー電極及び共通電極に対応する電極パターンをそれぞれ形成するパターン形成工程と、グリーンシートを積層してプレスし、積層体グリーンを作製するプレス工程と、積層体グリーンを焼成する焼成工程とを有し、パターン形成工程では、ダミー電極に対応する電極パターンをグリーンシートの外周縁部に沿う外側領域に形成し、個別電極に対応する電極パターンを外側領域に囲まれる内側領域に形成することを特徴とする。
【0016】
この圧電素子の製造方法では、積層体の表面を構成するグリーンシートにおいて、個別電極に対応する電極パターンを内側領域に形成すると共に、ダミー電極に対応する電極パターンを外側領域に形成している。このように、表面のグリーンシートにおいて、ダミー電極に対応する電極パターンが、密度のばらつきの問題が顕著な外周縁部を含む外側領域に形成されているため、電極パターンの有無に起因するプレス時の密度のムラの抑制できる。したがって、積層体グリーンを焼成した際に、密度のムラによる収縮ムラの発生を防止でき、反りやうねりを抑制できる。その結果、圧電素子の変形や密度のばらつき発生を防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圧電素子の焼成時の変形による不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧電素子を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す圧電素子の積層体を構成する第1圧電体層を示す平面図である。
【図3】図1に示す圧電素子の積層体を構成する第2圧電体層を示す平面図である。
【図4】図1に示す圧電素子の積層体を構成する第3圧電体層を示す平面図である。
【図5】図1に示す圧電素子の積層体を構成する第4圧電体層を示す平面図である。
【図6】圧電素子の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、説明中、「上」及び「下」なる語を使用することがあるが、これは図1あるいは図6の上下方向に対応したものである。
【0020】
図1〜6に基づいて、本実施形態に係る圧電素子の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る圧電素子を示す分解斜視図である。図2は、図1に示す圧電素子の積層体を構成する第1圧電体層を示す平面図である。図3は、図1に示す圧電素子の積層体を構成する第2圧電体層を示す平面図である。図4は、図1に示す圧電素子の積層体を構成する第3圧電体層を示す平面図である。図5は、図1に示す圧電素子の積層体を構成する第4圧電体層を示す平面図である。図5は、圧電素子の断面構成を示す図である。
【0021】
各図に示すように、圧電素子1は、直方体形状の積層体2を備えており、いわゆる積層型圧電素子である。積層体2は、第1圧電体層(第1の圧電体層)4と、第2圧電体層6と、第3圧電体層8と、第4圧電体層(第2の圧電体層)10とがこの順序で上側から積層されて構成されている。つまり、第1圧電体層4は、最上層であり、積層体2における積層方向(以下、単に積層方向と称する)での一方の端面(積層体2の表面2a)を構成する。第4圧電体層10は、最下層であり、積層方向での他方の端面(積層体2の裏面2b)を構成する。圧電素子1は、長さが20mm程度、幅が25mm程度、高さが100μm程度である。なお、圧電素子1の厚みは、100μm以下に設定される。
【0022】
第1圧電体層4には、個別電極20、ダミー電極22及び接続用電極23が配置されている。第2圧電体層6には、コモン電極(共通電極)30及び中間電極32が配置されている。第3圧電体層8には、個別電極40及び接続用電極41が配置されている。第4圧電体層10には、コモン電極(共通電極)50が配置されている。
【0023】
第1〜第3圧電体層4,6,8は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電性セラミック材料からなり、「20mm×25mm×25μm」の長方形薄板状に形成されている。第4圧電体層10は、上記セラミック材料からなり、「20mm×25mm×20μm」の長方形薄板状に形成されている。すなわち、第4圧電体層10の厚みは、第1〜第3圧電体層4,6,8の厚みよりも薄く設定されている。個別電極20,40、ダミー電極22、コモン電極30,50、中間電極32及び接続用電極23,41は、銀及びパラジウムを主成分とし、スクリーン印刷によりパターン形成されるものである。
【0024】
続いて、各圧電体層4,6,8,10について、図2〜図6を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
第1圧電体層4は、積層体2の表面2aを構成している。図2に示されるように、第1圧電体層4(積層体2)の表面2aは、個別電極20が配置される内側領域A1と、この内側領域A1を取り囲み、ダミー電極22が配置される外側領域A2とを有している。外側領域A2は、第1圧電体層4の外周縁部Eに沿った領域であり、内側領域A1は、第1圧電体層4の内側の領域である。
【0026】
第1圧電体層4の上面には、内側領域A1に個別電極20がマトリックス状に配置されている。各個別電極20は、互いに所定の間隔を有して配置されることで、表面2a上での電気的な独立が達成され、且つ互いの振動による影響が防止されている。個別電極20は、積層体2の表面2aに配置される表面電極である。
【0027】
ここで、第1圧電体層4の長手方向を行方向、当該長手方向に直交する方向を列方向とすると、個別電極20は、例えば75行8列(=600個)というように配置されている。具体的には、個別電極20は、第1圧電体層4の長手方向に直交する方向において2つの個別電極20が近接してそれぞれ配置されており、この2つの個別電極20の組が所定の間隔を有して4列配置されている。また、近接して配置された2つの個別電極20の組では、第1圧電体層4の長手方向において、個別電極20が互いに1個分だけずれて配置されている。
【0028】
個別電極20は、例えば0.4mm×0.2mmの長方形状に形成され、その長手方向が第1圧電体層4の長手方向に直交するように配置されている。個別電極20は、その直下において第1圧電体層4に形成されたスルーホール21内の導電部材に接続されている。
【0029】
また、第1圧電体層4の上面には、外側領域A2(個別電極20の非配置領域)に、ダミー電極22が形成されている。ダミー電極22は、第1圧電体層4の外周縁部E、つまり第1圧電体層4の長手方向の縁部、及び長手方向に直交する方向の縁部に沿って個別電極20を囲うように、所定の間隔を有して配置されている。ダミー電極22は、個別電極20と略同形状を有している。ダミー電極22には、コモン電極30との間に電圧が印加されない。
【0030】
第1圧電体層4における長手方向の縁部には、接続用電極23が形成されている。接続用電極23は、外側領域A2に配置されており、第1圧電体層4の長手方向に直交する方向において対向するダミー電極22の間に配置されている。接続用電極23は、その直下において第1圧電体層4に形成されたスルーホール24内の導電部材に接続されている。
【0031】
第2圧電体層6の上面には、図3に示されるように、コモン電極30が形成されている。コモン電極30は、第2圧電体層6上において、1行目と2行目の中間電極32の集合、3行目と4行目の中間電極32の集合、5行目と6行目の中間電極32の集合、及び7行目と8行目の中間電極32の集合をそれぞれ包囲すると共に、厚み方向から見て、各個別電極20の端部(スルーホール21の直上の部分)を除く部分と重なっている。つまり、コモン電極30は、複数(ここでは4つ)の非形成領域を除く部分にベタ状に形成されている。第2圧電体層6における長手方向の縁部には、スルーホール31が形成されている。コモン電極30は、スルーホール31内の導電部材に接続されている。
【0032】
中間電極32が配置されるコモン電極30の非形成領域は、上面視において長尺の矩形状を呈しており、第2圧電体層6の長手方向に直交する方向に所定の間隔を有して形成されている。
【0033】
中間電極32は、積層方向において第1圧電体層4に形成されたスルーホール21に対向する位置に形成されている。中間電極32は、その直下において第2圧電体層6に形成されたスルーホール33内の導電部材に接続されている。すなわち、中間電極32は、第1圧電体層4のスルーホール21内の導電部材と、第2圧電体層6のスルーホール33内の導電部材とに電気的に接続し、上に位置する第1圧電体層4の個別電極20と、下に位置する第3圧電体層8の個別電極40とを電気的に接続するための電極である。
【0034】
第3圧電体層8の上面には、図4に示されるように、個別電極40が形成されている。個別電極40は、積層方向において第1圧電体層4に配置された個別電極20に対向する位置に形成されている。第3圧電体層8における長手方向の縁部には、接続用電極41が形成されている。接続用電極41は、その直下において第3圧電体層8に形成されたスルーホール42内の導電部材に接続されている。すなわち、接続用電極41は、第2圧電体層6のスルーホール31内の導電部材と、第3圧電体層8のスルーホール42内の導電部材とに電気的に接続し、上に位置する第2圧電体層6のコモン電極30と、下に位置する第4圧電体層10のコモン電極50とを電気的に接続するための電極である。
【0035】
第4圧電体層10は、積層体2の裏面2bを構成している。第4圧電体層10の上面には、図5に示されるように、コモン電極50が形成されている。第4圧電体層10の厚みは、図6に示されるように、第1〜第3圧電体層4,6,8の厚みよりも薄く設定されている。コモン電極50の厚みは、第1〜第3圧電体層4,6,8に形成された各電極20,22,30,33,40,41よりも厚みよりも厚く設定されている。コモン電極50は、積層方向から見て第4圧電体層10と同一形状に形成されている。すなわち、第4圧電体層10におけるコモン電極50に隣接する面(コモン電極50が形成される面)全体がコモン電極50に覆われるように、ベタ状に形成されている。
【0036】
以上のような第1〜第4圧電体層4,6,8,10を積層することにより、スルーホール21及びスルーホール33内の導電部材により、個別電極20と個別電極40とが電気的に接続されることになる。また、スルーホール31及びスルーホール42内の導電部材により、コモン電極30とコモン電極50とが電気的に接続されることになる。
【0037】
以上の構成を有する圧電素子1における電気的接続により、所定の個別電極20と接続用電極23との間に電圧(例えば、個別電極20を正の電位、接続用電極23を負の電気)を印加すると、所定の個別電極20、及びこの個別電極20の下に整列する個別電極40とコモン電極30,50との間に電圧が印加されることとなる。これにより、第1〜第3圧電体層4,6,8においては、個別電極20,40とコモン電極30,50とで挟まれる領域に電界が生じ、当該部分が活性部60(図6参照)として変位することになる。
【0038】
次に、上述した圧電素子1の製造方法(作製手順)について説明する。まず、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とし、Nb(ニオブ)やSr(ストロンチウム)を添加した圧電セラミクス材料粉体に、有機バインダや有機溶剤等を混合して基体ペーストを作製する。次いで、作製した基体ペーストを用いて、各圧電体層4,6,8,10となる所定の厚みのグリーンシートを例えばドクターブレード法により成形する(グリーン準備工程)。このとき、第4圧電体層10となるグリーンシートの厚みを、第1〜第3圧電体層4,6,8となるグリーンシートの厚みよりも薄く設定しておく。
【0039】
また、所定比率のパラジウム(Pd)と銀(Ag)とからなる金属材料(例えば、Pd:Ag=3:7)に有機バインダや有機溶剤等を混合することにより、電極パターン用の導電ペーストを作製する。なお、金属材料は、Pdの代わりにPt(白金)を用いたり、Agの代わりにAu(金)を用いたりすることができる。また、金属材料としては、Cu(銅)を用いることもできる。
【0040】
続いて、第1〜第3圧電体層4,6,8となるグリーンシートの所定の位置に、レーザ光を照射してスルーホール21,24,31,33,42を形成する。このとき用いるレーザは、YAGの3次高周波レーザである。スルーホールの孔径は、例えば40〜50μmとする。
【0041】
次に、第1圧電体層4となるグリーンシートに対して、個別電極20、ダミー電極22及び接続用電極23に対応する電極パターンを形成する(パターン形成工程)。具体的には、内側領域A1に対応する部分に個別電極20に対応する電極パターンを形成し、外側領域A2に対応する部分にダミー電極22及び接続用電極23を形成する。第2圧電体層6となるグリーンシートに対して、コモン電極30及び中間電極32に対応する電極パターンを形成する。第3圧電体層8となるグリーンシートに対して、個別電極40及び接続用電極41に対応する電極パターンを形成する。第4圧電体層10となるグリーンシートに対して、コモン電極50に対応する電極パターンを形成する。各電極パターンの形成により、スルーホール21,24,31,33,42内に導電ペーストが充填され、導電部材が形成される。各電極パターンの形成は、上述した導電ペーストを用いたスクリーン印刷にて行う。
【0042】
次に、各電極パターンが形成されたグリーンシートを上述した順序となるように積層する。その後、積層された4枚のグリーンシートを積層方向にプレスして、積層体グリーンを作製する(プレス工程)。作製した積層体グリーンを安定化ジルコニアで構成されたセッターに載置し、400℃前後で脱脂(脱バインダ)する。その後、積層体グリーンが載置されたセッターをマグネシア質の匣鉢(さや)に入れ、1100℃程度で焼成して焼結体を得る(焼成工程)。そして、100℃程度で3分間に渡って電界強度2kV/mmになるように分極処理を行い、圧電素子1を得る。
【0043】
続いて、本実施形態に係る圧電素子1の作用・効果について説明する。従来の圧電素子では、グリーンシートを積層してプレスした際、その表面のグリーンシートにおいて、個別電極が配置されている配置領域と、個別電極が配置されていない非配置領域とにおいて密度にムラが生じることがある。積層体グリーンにおいて発生した密度のムラは、焼成時の収縮ムラを発生させる原因となる。これは、圧電素子の厚みが100μm以下である場合、顕著な問題となっている。焼成時の収縮のムラにより、反りやうねりが発生し、その結果、圧電素子の変形や密度のばらつきが生じるおそれがある。したがって、圧電素子の特性を十分に得ることができず、信頼性が低下するおそれがあった。
【0044】
これに対して、本実施形態の圧電素子1では、積層体2の表面2a上に、個別電極20とダミー電極22とが配置されている。ダミー電極22は、外周縁部Eに沿う外側領域A2、すなわち個別電極20が配置される内側領域A1の外側で且つ変位部位として使用されない部分に、個別電極20を囲うように配置されている。
【0045】
つまり、圧電素子1の製造工程では、積層体2の表面2aを構成するグリーンシートにおいて、個別電極20に対応する電極パターンを内側領域A1に形成すると共に、ダミー電極22に対応する電極パターンを外側領域A2に形成している。このように、表面のグリーンシートにおいて、ダミー電極22に対応する電極パターンが、密度のばらつきの問題が顕著な外周縁部Eを含む外側領域A2に形成されているため、電極パターンの有無に起因するプレス時の密度のムラの抑制できる。したがって、積層体グリーンを焼成した際に、密度のムラによる収縮ムラの発生を防止でき、反りやうねりを抑制できる。その結果、圧電素子1の変形や密度のばらつき発生を防止できる。
【0046】
また、ダミー電極22は、個別電極20と略同形状を呈している。そのため、プレスの際の圧力がグリーンにより均一に加わり、密度のムラがより抑制される。その結果、焼結体の変形を防止でき、圧電素子1の特性を十分に得ることができる。
【0047】
また、第4圧電体層10の厚みを第1〜第3圧電体層4,6,8の厚みよりも薄く設定すると共に、コモン電極50の厚みを他の電極の厚みよりも厚く設定している。このような構成により、焼成時における反りをより抑制できる。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、第1〜第4圧電体層4,6,8,10を積層して積層体2を構成しているが、積層体2を構成する圧電体層の枚数はこれに限定されない。積層体は、個別電極及びダミー電極が配置された圧電体層と、共通電極が配置された圧電体層とを少なくとも含んで構成されていればよい。
【0049】
また、上記実施形態では、個別電極20とダミー電極22とを略同一形状としているが、ダミー電極22の形状はこれに限定されない。例えば、ダミー電極22は、第1圧電体層4の各縁部に沿って延びる長尺形状であってもよいし、第1圧電体層4の外側領域A2(外周縁部E)に沿って環状に形成されていてもよい。要は、個別電極20が配置されない第1圧電体層4の外周縁部Eにダミー電極が形成されていればよい。
【符号の説明】
【0050】
1…圧電素子、2…積層体、2a…表面、2b…裏面、4…第1圧電体層(第1の圧電体層)、6…第2圧電体層、8…第3圧電体層、10…第4圧電体層(第2の圧電体層)、20,40…個別電極、22…ダミー電極、30,50…コモン電極(共通電極)、A1…内側領域、A2…外側領域、E…外周縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電体層が積層されると共に、前記圧電体層の積層方向に直交する表面を有する積層体と、
前記積層体の前記表面に配置される複数の個別電極と、
前記積層体の内部に配置され、前記複数の個別電極との間に電圧が印加される共通電極と、
前記積層体の前記表面に配置され、前記共通電極との間に電圧が印加されないダミー電極とを備え、
前記積層体の前記表面は、外周縁部に沿う外側領域と、前記外側領域に囲まれる内側領域とを有しており、
前記個別電極は、前記内側領域に配置され、
前記ダミー電極は、前記外側領域に配置されていることを特徴とする圧電素子。
【請求項2】
前記複数の圧電体層は、前記表面を構成する第1の圧電体層と、前記表面とは反対側の裏面を構成する第2の圧電体層とを少なくとも含んでおり、
前記第1の圧電体層上には、前記複数の個別電極及び前記ダミー電極が配置され、
前記第2の圧電体層上には、前記共通電極が配置されていることを特徴とする請求項1記載の圧電素子。
【請求項3】
前記積層体の厚みは、100μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電素子。
【請求項4】
前記第2の圧電体層の厚みは、他の圧電体層の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項2又は3記載の圧電素子。
【請求項5】
前記第2の圧電体層に配置される前記共通電極の厚みは、他の圧電体層に配置される電極の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載の圧電素子。
【請求項6】
前記ダミー電極は、前記個別電極と略同一形状を呈していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の圧電素子。
【請求項7】
前記ダミー電極は、前記個別電極と同一工程で形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の圧電素子。
【請求項8】
複数の圧電体層が積層されると共に、前記圧電体層の積層方向に直交する表面を有する積層体と、
前記積層体の前記表面に配置される複数の個別電極と、
前記積層体の内部に配置され、前記複数の個別電極との間に電圧が印加される共通電極と、
前記積層体の前記表面に配置され、前記共通電極との間に電圧が印加されないダミー電極とを備える圧電素子の製造方法であって、
前記圧電体層となるグリーンシートを準備するグリーン準備工程と、
前記グリーンシートに前記個別電極、前記ダミー電極及び前記共通電極に対応する電極パターンをそれぞれ形成するパターン形成工程と、
前記グリーンシートを積層してプレスし、積層体グリーンを作製するプレス工程と、
前記積層体グリーンを焼成する焼成工程とを有し、
前記パターン形成工程では、前記ダミー電極に対応する電極パターンを前記グリーンシートの外周縁部に沿う外側領域に形成し、前記個別電極に対応する電極パターンを前記外側領域に囲まれる内側領域に形成することを特徴とする圧電素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−256791(P2012−256791A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130205(P2011−130205)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)