説明

地下住居

本発明は、好ましくはコンクリートからなる1つ以上の3次元モジュール(1,1')によって形成される住居に関し、このモジュールは、モジュールが横方向または鉛直方向に連結されて複数の室をもつ住居または複数の住居が形成されるように各モジュールを連結する相補的な連結手段(7,7')を有する。この住居は、内部へのアクセス開口(2)と、煙突(4)のためのパイプ(3)のポートと、通気孔および自然光入口(5)を有する。住居を構成するモジュール(1,1')は、適切な地面(6)に形成された溝または掘削空間に設置され、扉(8)をもつアクセス壁および/または窓(9)を除く総てが、モジュール(1,1')および住居を設置するための地面(6)の掘削で生じた土砂によって完全に覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然の洞窟のような特性を持つが、モジュールの性質を持って、今まで不可能であった工業化が可能という利点を有するように特に考案された地下住居に関する。
【0002】
本発明の目的は、市場または大衆に、モジュールまたはプレハブで組み立てられ、設置される用地の土で殆んど覆われて、自然の洞窟のような地下住居を得る可能性を提供することにある。
【背景技術】
【0003】
従来、人工洞窟としては、次のようなものがある(スペイン国実用新案第248970号明細書:特許文献1参照)。この人口洞窟は、適切な形状をもつ金属または他の剛な材料からなる軸組の上に、繊維質の材料(紙,布,織物,アスベスト,天然綿)を凝固材料または熱硬化材料(膠,プラスタ,石膏,泥,熱硬化プラスチック)と混合して得られる材料を塗布,積層して、前面が開口し、岩の外観,更には鍾乳石や石筍を模した自然の突起や凹部をもつ不規則な形状の中空体を作り、これら総てが人工洞窟を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】スペイン国実用新案第248970号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の人口洞窟は、種々の形状に素材化できるように設計されてはいるが、殆んど装飾的な機能しか持たず、住居として用いるようには設計あるいは企図されていない。
【0006】
一方、住居として用いられている自然の洞窟は在るが、地面を単に掘削して作られていて、工業化が不可能なため、機能面で非常に多くの制限がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的である地下洞窟は、洞窟住居であるが、住居の総てまたは一部である3次元モジュールを組み立てることによって得られ、工業化できる顕著な性質を賦与できる洞窟住居であると考えられる。
【0008】
この意味で、所定の高さをもつ地面は、空洞または穴を作るように掘削され、この空洞にコンクリート製の3次元モジュールが、好ましくは打設により設置される。このモジュールは、内部へのアクセスの役目を果たす少なくとも1つの開口を有し、このプレハブモジュールは、窓用の開口と煙道,通気孔,光源としての穴を有し、モジュールをなすこれら部材の総ては、それ自体で全住居を構成する。なぜなら、住居は、地面が一旦掘削されると、連結可能な壁の設計に組み込まれた相補的なさねはぎ要素で形成されるのが好ましい複数の連結または組立モジュールで構成でき、モジュールは互いに横方向,更には鉛直方向に組み立てられて2室住居、あるいは必要なモジュールを設置,連結した1組の異なった住居を構成できるからである。
【0009】
いずれの場合も、1つ以上のモジュールは、煙道,通気孔等として働く上述の穴に連結され、住居が2つ以上のモジュールからなる場合は、複数のモジュール間の連通手段として働く適切なアクセス開口と連結される。
【0010】
住居のモジュールは、アクセス開口および窓開口をもつ壁を除いて、夏,冬共に熱条件的に有利である土砂の厚い層で覆われる。
【0011】
モジュールは、壁および天井を形成するために便利に継ぎ合わせるパネルによって構成できることが明らかである。
【0012】
以上の解決策によって、地下住居型洞窟は、プレハブモジュールによって作られ、掘削工程で得られる自然の土砂の層でモジュールを覆うことができる適切な傾斜地面に掘られた空洞または穴に設置されるので、工業化された方法で得られることが明らかである。
【0013】
モジュールは、コンクリートで作られるのが好ましいが、絶縁材料,耐火材料,ポリウレタンなどからなる積層(サンドイッチ)型のパネルなど他の適切な材料を排除するものではない。
【0014】
住居の前面または正面パネルは、住居が1つまたは複数のモジュールのいずれからなっていても、残りのパネルよりも高く、高い正面パネルは、地盤荷重が正面パネルまたは住居の前部に加わることを防止し、潜在的地滑りに対する障壁として作用する。
【0015】
また、地下住居は、側方に住居ユニットの一部である一対のアプスを一体化でき、このアプスは、主空間を拡大する働きをし、浸食がユニットに及ぼす影響を減じるべく、住居全体により大きな平面を与えるのに寄与する。
【0016】
また、さねはぎ、溶接、連結すべきパネルの両縁の嵌合、ねじ,ボルト,リベットなど固定を確実にするための相補的要素を必要に応じて用いて,一方のパネルを他方のパネルへ固定することなどによって、側パネルを互いに連結することが計画に取り入れられている。一方、頭上囲いのためのパネルを固定するには、上述のねじ,ボルト,リベットなどの周知の固定手段を持つさねはぎが用いられる。
【0017】
モジュールの地面への固定は、地面に配置される従来の中実コンクリートのピアまたはフーチング要素によって行われ、コンクリートの上面に、相補的な他の金属板を重ねて溶接した金属板が固定され、モジュールの基礎をなすパネルの下面が、上記相補的な金属板に当接させられる。
【0018】
最後に、連結されたパネルの継ぎ目に、粒子,虫,湿気などを遮断するパテなどが充填され、連結されたパネルで作られる内部空間を絶縁し、水密にする。
【0019】
本発明の地下住居は、内部が、表面積の程度に制限なく作ることができる扉,窓その他の適切で必要な装飾要素を備えて多数の材料を用いて種々の寸法および外観にできる住居であり、各住居に適合した構造計画を有して種々の高さに作ることができる。
【0020】
また、一種の洞窟住居をなす本発明の地下住居は、環境的に健全で、職人の熟練の品質を持ち、高品質な特性を提供できるうえ、非常に容易かつ安価に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】地面に掘られた空洞内のモジュールセットの断面図であり、モジュールで作られる住居へのアクセス開口が形成された1つの壁またはパネルと、煙道や通気孔に対応する上部鉛直導管が示されている。
【図2】モジュール方式の一例を示す概略平面図であり、住居または幾つかの室または空間を形成すべく互いに横方向に連結された複数のモジュール更には互いに連結された複数の住居を含むモジュール方式が示されている。
【図3】掘削用地に異なるモジュールを組み立てて形成された複数の住居を示す正面斜視図である。
【図4】本発明の目的物で作られた地下洞窟の他の例の正面斜視図であり、正面パネルが、住居の異なった後部モジュールを組み立てるために用いられる残りのパネルよりも高いことが示されている。
【図5】地下住居に対応するモジュールの複数のパネルを横方向に連結する手段の詳細を示す図である。
【図6】地下住居に対応するモジュールの複数のパネルを横方向に連結する他の手段の詳細を示す図である。
【図7】地下住居に対応するモジュールの複数のパネルを横方向に連結する他の手段の詳細を示す図である。
【図8】地下住居に対応するモジュールの複数のパネルを横方向に連結する他の手段の詳細を示す図である。
【図9】天井パネルを組み立てる可能な方法の詳細を示す図である。
【図10】床パネルまたはベースパネルを地面に固定する好ましい方法の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記各図、特に図1〜3を参照すると、住居そのものを構成する好ましくは打設コンクリートからなる3次元モジュール1が見られる。この3次元モジュールは、モジュール内,したがって住居内に導くアクセス開口2と、煙突4,自然光入口5をもつ通気孔として用いられる鉛直ダクト3として機能する上記アクセス開口よりも上方の領域に設けられた1つ以上の孔を有する。また、モジュール1は、隣接するモジュールを互いに連結する雄と雌の対応する相補的連結要素7,7'を備えた1つ以上の壁または側部を有し、地面6に掘削された用地に嵌め込まれる。上記連結要素7,7'の雄と雌の構成は、さねはぎにすることができる。
【0023】
3次元モジュール1によって得られる住居は、幾つかのモジュール1を横方向に連結して形成され、あるいは鉛直方向,つまり高さを異ならせて組み立てた複数の室または空間を有する。図2は、4つの同じモジュール1の間に三角形のモジュール1'を介在させて弓形に形成したモジュールアセンブリの例を示しており、上記空間の側壁,つまりモジュール1,1'の側壁に取り付けられた相補的連結手段7,7'によって横方向に連結された複数の室または住居が形成されている。
【0024】
モジュールは、地下住居型の洞窟を設置するために地面6を掘削して生じた土砂でモジュールが覆われるので、モジュール1および適切であればモジュール1'は、好ましくはコンクリート製のプレハブモジュールであるのは明らかだが、他の適切な材料を排除するものではない。
【0025】
図3は、掘削された空洞または空間に特別な形態のモジュール1を配置した例の斜視図である。図中のモジュールの1つは、モジュール1の対応する開口2に取り付けられたアクセス扉8を有し、対応するプレハブモジュール1の設計で計画された窓9を有する。図3には、図1に示されたダクト3に対応する煙突4と、ダクト3に設けられた通気孔,つまり自然光源5が示されている。これらの部材の総ては、モジュールが図2更には図3に示すように互いに連結されると、単一の住居の場合は、空間を閉鎖または対応するアクセス扉8を取り付ける開口2のみが開放されるように、同じ住居の複数の空間を構成する場合は、この複数の空間を互いに連通する開口を各モジュールが持つように設計され、配置される。
【0026】
図4は、上述の記載によって得られる地下住居を示しており、この地下住居は、正面10と、頭上の囲い11と、図3に示した用地6の掘削で生じる土砂による被覆12を有し、正面10は、住居の内部に入るための主アクセス扉を取り付けるための適切な開口13および窓を取り付けるための開口9'を有する。
【0027】
図4では、正面10を構成するパネルは、残りのパネルよりも高く、頭上囲い11の上方まで突出して、潜在的な地滑りや土砂流が正面または住居の前部に近づくことを防止する障壁を形成している。
【0028】
住居の一般的態様に平坦性を与えるアプス14が、側方にあって、住居の拡大と浸食に対する保護を提供している。
【0029】
図5,6,7,8において番号15,15'で示す異なる横方向のパネルの連結は、多くの異なった方法で行うことができる。
【0030】
例えば、図5は、パネル15,15'に設けられた2重ジグザグ状の食い違い縁16(相欠き継ぎ)は、両パネルを連結する手段を構成する。
【0031】
一方、図6は、パネル15の上縁をパネル15'に設けた溝17に嵌め込んでなる継手を、ねじやボルトなどの固着要素18で固定して、両パネル15,15'を連結している。
【0032】
図7は、溶接19によって接合されたパネル15,15'を示し、図8は、貫通する固着要素20をパネル15'に挿通して、パネル15に固定した連結またはこれとは逆の連結を示している。
【0033】
天井パネル21,21'の連結手段は、図9に示すように、さねつぎ要素22によって行われ、図6に示すサイドパネルの連結面に設けられた上述の固着要素18と同様の固着要素23によって補強されている。
【0034】
最後に、ベースパネルまたは床パネル24の地面25への連結は、地面25に置かれたピア27の上面に、金属板26を固定する一方、モジュールのベースまたは床パネルの下面に、上記金属板26と相補的な他の金属板26'を対向するように固定し、両者を溶接で接合して、ベースを介してモジュールを地面25上のピア27に完全に固定している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適切な地面に掘削された用地に設置される地下住居であって、好ましくはコンクリート製の1つ以上の3次元モジュール(1,1')からなり、このモジュールは、室内空間に導き、あるいは隣接する他のモジュールに連通する少なくとも1つのアクセス開口(2,13)と、煙突(4),通気孔,または自然光入口(5)として機能する穴およびダクト(3)の少なくとも一方を備え、各モジュール(1,1')は、隣接する他のモジュールに連結するための相補的連結手段(7,7')を壁の少なくとも1つに有して、1つ以上の室または空間をもつ住居あるいは連結された複数の住居を形成し、上記アクセス開口および適用可能な場合は窓(9)を除く総てのモジュール(1.1')は、上記用地の事前の掘削で生じた土砂の層で完全に覆われて、掘削空間に地下住居が設置されるようになっていることを特徴とする地下住居。
【請求項2】
請求項1に記載の地下住居において、モジュール(1,1')間の上記連結手段(7,7')は、相補的な雄突起と雌凹部からなることを特徴とする地下住居。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地下住居において、上記モジュール(1,1')は、プレハブ要素であることを特徴とする地下住居。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の地下住居において、上記モジュール(1,1')は、横方向に互いに接続し、あるいは鉛直方向に重ね合わせまたは積み上げることができ、同一階あるいは高さの異なる複数の室からなる住居を形成し、あるいは横方向に連結または鉛直方向に重ね合わせた異なる構造の複数の住居を形成することを特徴とする地下住居。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の地下住居において、前面(10)を形成するパネルは、潜在的な地滑りに対する障壁を形成すべく残りのパネルよりも高く、横方向のパネルに連結するための連結手段と、上部閉鎖または天井要素に属するパネル(21,21')に連結するための連結手段と、地面(25)上の床パネルに連結するための連結手段が取り付けられていることを特徴とする地下住居。
【請求項6】
請求項5に記載の地下住居において、地下住居と一体の部材であって全体に平坦な外観を与えるアプス(14)があることを特徴とする地下住居。
【請求項7】
請求項5または6に記載の地下住居において、パネル(15,15')間の上記連結手段は、パネル(15,15')の縁に形成された相補的食い違い縁(16)からなることを特徴とする地下住居。
【請求項8】
請求項5または6に記載の地下住居において、パネル(15,15')間の上記連結手段は、パネルに加工され、対応する相手パネルが嵌め込まれて固定手段として働く溝(17)であることを特徴とする地下住居。
【請求項9】
請求項5または6に記載の地下住居において、パネル(15,15')間の上記連結手段は、ねじ,ボルト,リベットなどの固着手段(20)からなることを特徴とする地下住居。
【請求項10】
請求項5または6に記載の地下住居において、パネル(15,15')間の上記連結手段は、上記パネルの当接縁における金属板の溶接(19)であることを特徴とする地下住居。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか1つに記載の地下住居において、上記連結手段は、固着要素(18)と相補でき、パネル(15,15')間の連結手段または固定手段を補強することを特徴とする地下住居。
【請求項12】
請求項5または6に記載の地下住居において、上記上部閉鎖または天井要素に属するパネル(21,21')間の連結手段は、パネル(21,21')の当接縁または連結縁に設けられたさねつぎ(22)からなり、上記固定手段を補強すべく、固着手段と相補できることを特徴とする地下住居。
【請求項13】
請求項5または6に記載の地下住居において、床パネル(24)を地面(25)に連結する上記連結手段は、地面(25)に設置されたピア(27)の上面と床パネル(24)の内面に互いに対向して設けられた金属板(26,26')間の溶接であることを特徴とする地下住居。
【請求項14】
請求項5乃至13のいずれか1つに記載の地下住居において、上記パネル間の継手(15,15', 21,21', 24-27)に、住居の内外を遮断する絶縁手段を設けたことを特徴とする地下住居。
【請求項15】
請求項14に記載の地下住居において、継手の上記絶縁手段は、パテ,シリコン,フォームなどであることを特徴とする地下住居。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−503782(P2010−503782A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527850(P2009−527850)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/ES2007/000515
【国際公開番号】WO2008/031907
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(509073660)ビオビビエンダ・ソシエダッド・リミターダ (1)
【氏名又は名称原語表記】BIOVIVIENDA, S.L.
【Fターム(参考)】