説明

地下埋設管の沈下量測定具

【課題】 ガス管など地下に埋設されている地下埋設管は種々の原因により沈下することがあり、その沈下量を正確に把握することは保守管理の為極めて重要であるが、地下埋設管への沈下量測定具の取り付けには、手間がかかり、大規模な掘削も必要で、コストがかかる作業であった。
【解決手段】 地下埋設管から地表に向かって検知棒を伸長し、該検知棒の移動量によって地下埋設管周囲の地盤の沈下量の測定を行う地下埋設管の沈下測定具において、地下埋設管の軸芯に対して直角の方向からその周面に嵌め込み、これを弾性的に囲撓する円弧状をなした固定具を検知棒の下端に取付け、該固定具によって検知棒を地下埋設管に着脱自在に装着出来る様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は地下埋設管の沈下量測定具、主に地下に埋設されているガス管などの沈下量を測定する為の測定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス管などの地下埋設管は、河川付近の沈下地盤、地震、車両通過に伴う振動、雨水の浸透、土木工事の影響などにより、埋設箇所において沈下し、その際に埋設物に生じる亀裂等の応力によって損傷が生ずることがある。特に、ガス管においては、沈下により万が一管壁に亀裂が生じると、そこからガスが漏出し、ガスの炎上事故に至る為、大変危険である。この為、ガス管などの地下埋設管の保守管理の一環として、その沈下量を正確に知ることは極めて重要であり、従来よりいくつかの沈下量測定具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−78449号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、従来から用いられている沈下量測定具の代表例を示したものであり、この沈下量測定具は、防護蓋8、検知棒1、保護管7、ハーフリング20などから構成されており、この沈下量測定具を取り付けようとする箇所の地表面3から下方に向かって穴を掘削した後、地下埋設管2にハーフリング20を固定し、このハーフリング20に検知棒1の下端を固定すると共に、この検知棒1を囲う様に保護管7を垂直に取付け、埋め戻した後、測量機器によって初期測定を行って基準値「0」を設定しておき、その後検知棒1の移動量を適宜測定することにより、地下埋設管2の沈下量を知る様にしていた。なお、防護蓋8は保護管7の上端を取りはずし自在に閉塞する部材であり、沈下量の測定時には取りはずされる。しかしながら、この従来の沈下量測定具においては、地下埋設管2にハーフリング20を固定するには、地下埋設管2の下方部分も含め、その全周を掘削しなければならず、大規模な掘削が必要であった。又、この沈下量測定具を撤去する際には、防護蓋8を撤去した後、検知棒1及び保護管7はそれぞれ引き抜いて撤去できるが、ハーフリング20はその周囲をすべて掘削しなければ撤去出来ない為、そのまま残置するしかなく、地下埋設管2に悪影響を与えることがあった。
【0006】
この為、検知棒1の下端に磁石を取付、磁力によって検知棒1を地下埋設管2の管壁に固定する方法も提案されているが、磁力による固定は確実さに欠け、又、地下埋設管2が非磁性体である場合は、用いることが出来ないという欠点があるので、広く採用されるには至っていなかった。
【0007】
本発明者は、地下埋設管2の沈下量測定に関する上記問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、地下埋設管2に確実に装着出来るにもかかわらず、設置及び撤去が極めて容易であり、地下埋設管の材質を選ばない便利な地下埋設管の沈下量測定具を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
地下埋設管から地表に向かって検知棒を伸長し、該検知棒の移動量によって地下埋設管周囲の地盤の沈下量の測定を行う地下埋設管の沈下測定具において、地下埋設管の軸芯に対して直角の方向からその周面に嵌め込み、これを弾性的に囲撓する円弧状をなした固定具を検知棒の下端に取付け、該固定具によって検知棒を地下埋設管に着脱自在に装着出来る様にして上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
検知棒を介して地上から固定具を地下埋設管の管壁に押圧するだけで、容易かつ確実に装着できるので、ハーフリングを用いた従来のものの様に、取り付け作業の際に、地下埋設管の下方を大きく掘り開く必要は全くなく、固定具を地下埋設管に到着させる為の垂直孔を形成するだけで良いので、掘削面積は最小限で足り、舗装復旧面積も極めて少ない。又、滞水地盤での取付工事も容易に行うことが出来る。
【0010】
更に、検知棒の上端を上方に引き上げれば、固定具は地下埋設管の管壁から簡単に離脱するので、撤去も極めて容易である。又、固定具は地下埋設管の管壁を弾性的に囲撓するので、地下埋設管の素材を選ばず、非磁性体からなる地下埋設管にも確実に装着することが可能で、極めて高い実用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の地下埋設管の沈下量測定具の一例の縦断面図。
【図2】この発明に係る地下埋設管の沈下量測定具の実施例1の斜視図。
【図3】同じく、その要部である固定具の他の例の斜視図。
【図4】同じく、地下埋設管に装着した状態の縦断面図。
【図5】同じく、地下埋設管に固定具が嵌め込まれる状況を示した部分拡大図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
検知棒の下端に、地下埋設管を弾性的に囲撓する円弧状の固定具を取り付け、これによって検知棒を地下埋設管に装着する様にした点に、最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0013】
図2はこの発明に係る地下埋設管の沈下量測定具の実施例1の斜視図、図4は同じく地下埋設管に装着した状態の縦断面図である。
【0014】
図中1は検知棒であり、地下埋設管2の管壁上端から地表面3までの長さより若干短くなる様に、つまり、その上端が地表面3より下になる様に長さが設定されている。
【0015】
そして、この検知棒1の下端には、地下埋設管2を弾性的に囲撓する固定具4が取り付けられている、この固定具4は、弾性を有するステンレスなどの金属製帯材を円弧状に弯曲させ、その表面を合成樹脂で被覆せしめたものであり、装着しようとする地下埋設管2の外径とほぼ同じ内径を有する円弧状をなし、円周方向下方のほぼ1/3の部分が切欠かれて切欠き部6となっており、円周方向の端部は、それぞれ外側に向かって折り返され、折り返し部5となっている。そして、前記切欠き部6の直上の部分に検知棒1の下端が取り付けられている。
【0016】
なお、この実施例1においては固定具4として、弾性を有するステンレス製帯材を用いたが、図3に示す様に、弾性を有するピアノ線を円弧状に弯曲にさせたものでも良く、更には、弾性を有する合成樹脂成形品でも良い。
【0017】
この発明に係る地下埋設管の沈下量測定具は上記の通りの構成を有するものであり、地下埋設管2を取り付け様とする箇所の地表面3から下方に向かって穴を掘削した後、図5に示す様に、地下埋設管2の管壁に固定具4の切欠き部6を当てて検知棒1を介してこれを押圧すると、折り返し部5,5がその管壁を滑りながら、固定具4は弾性的に押し拡げられ、図5において、破線で示す様に、地下埋設管2に嵌め込み、これを囲撓する。
【0018】
この様にして、固定具4を地下埋設管2に取り付けた後、図4に示す様に、検知棒1を囲う、保護管7を垂直に取り付け、埋め戻した後、測量機器によって所期測定を行い、基準値「0」を設定しておき、その後、検知棒1の沈下量を適宜測定することにより、地下埋設物2の沈下量を知る。
【0019】
なお、図4中、9は保護管7内における検知棒1の位置を保持する為のスペーサー、10は保護管7の下端縁に嵌め込まれた緩衝ゴム環である。
【0020】
この発明に係る地下埋設物の沈下量測定具は上記の通りの構成を有するものであり、検知棒1を介して地上から固定具4を地下埋設管2の管壁に押圧するだけで、容易かつ確実に装着できるので、ハーフリングを用いた従来のものの様に、地下埋設管2の下方を大きく掘り開く必要は全くなく、固定具4を地下埋設管2に到着させる垂直孔を形成するだけで良いので、掘削面積は最小限で足り、舗装復旧面積も極めて少ない。又、滞水地盤での取付工事も容易に行うことが出来る。更に、検知棒1の上端を上方に引き上げれば、固定具4は地下埋設管2の管壁から簡単に離脱するので、撤去も極めて用意である。又、固定具4は地下埋設管2の管壁を弾性的に囲撓するので、地下埋設管2の素材を選ばず、非磁性体からなる地下埋設管2にも確実に装着することが可能で、極めて高い実用性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
ガス管をはじめ、上下水道管など各種地下埋設管の保守作業の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1.検知棒
2.地下埋設管
3.地表面
4.固定具
5.折り返し部
6.切欠き部
7.保護管
8.防護蓋
9.スペーサー
10.緩衝ゴム環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下埋設管から地表に向かって検知棒を伸長し、該検知棒の移動量によって地下埋設管周囲の地盤の沈下量の測定を行う地下埋設管の沈下測定具において、地下埋設管の軸芯に対して直角の方向からその周面に嵌め込み、これを弾性的に囲撓する円弧状をなした固定具を検知棒の下端に取付け、該固定具によって検知棒を地下埋設管に着脱自在に装着出来る様にしたことを特徴とする地下埋設管の沈下量測定具。
【請求項2】
固定具が弾性を有する金属製帯材を弯曲させ、その表面を合成樹脂で被覆せしめたものであることを特徴とする請求項1記載の地下埋設管の沈下量測定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−127951(P2011−127951A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285031(P2009−285031)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(593034998)扶桑技研株式会社 (4)
【Fターム(参考)】