説明

地下構造物の構築方法

【課題】曲線部の施工が可能なうえに、先行掘削後の地表面の沈下を極力抑えることが可能な地下構造物の構築方法を提供する。
【解決手段】発進立坑51から横方向の地盤Gに向けて延伸される地下構造物1を構築する方法である。
そして、発進立坑から地下構造物の上部が形成される位置の地盤に向けて鋼製函体2を掘進させる工程と、鋼製函体より下方の地下構造物の側面が形成される位置に向けて、鋼製函体の内部から土留杭31を構築する工程と、鋼製函体の内部から下方に向けて複数の支持杭4,・・・を構築する工程と、複数の支持杭の頭部間に架け渡される天井構造体11を構築する工程と、天井構造体の下方を土留杭に沿って掘削する工程と、天井構造体の下方の掘削空間に、地下構造物の残りの部分を構築する工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市部や地盤が弱い場所に、地下鉄や地下道路又はそれらの合流分岐部などに利用される地下構造物を構築する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤を掘削して地下構造物を構築するに際して、地表面の沈下などを抑えるために、複数の鋼管を先行して地盤に向けて押し込んで平屋根状のパイプルーフを構築し、そのパイプルーフで保護された内側の地盤を、支保工によって支持しながら掘削を進める方法が知られている(特許文献1など参照)。
【0003】
また、特許文献2には、地下構造物の天井と側壁上部にあたる部分に、先行して複数のルーフ用筒体とそれらの外周をまとめて覆う門形のフリクションカットプレートとを掘進させ、ルーフ用筒体を順次撤去しながらフリクションカットプレートの下方に矩形の地下構造物を掘進させる方法が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、地下構造物の天井にあたる部分に先行して複数の矩形ルーフとそれらを覆う門形のカバープレートを掘進させ、矩形ルーフを順次撤去した後に地下構造物と同じ大きさの本断面掘削機を掘進させておこなう地下構造物の構築方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3511145号公報
【特許文献2】特開2001−73670号公報
【特許文献3】特開2008−303681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように鋼管を隣接させただけのパイプルーフを構築した場合、相互の連結力が弱いためパイプルーフを受けるための支保工が大掛りになって内部掘削の支障になったり、工事費が高くなったりする原因になっていた。また、隣接するパイプルーフ同士を継手などで連結させた場合、連結部の拘束力が強くなり過ぎるため、曲線部を設けることが難しく直線状の地下道しか構築することができない。
【0007】
他方、特許文献2,3の方法では、先行して掘進させるルーフ用筒体及び矩形ルーフは地盤によって支持されているだけなので、地下構造物又は本断面掘削機を掘進させるために下方の地盤を掘削すると、土被りの地盤が緩んで地表面が沈下するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、曲線部の施工が可能なうえに、先行掘削後の地表面の沈下を極力抑えることが可能な地下構造物の構築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の地下構造物の構築方法は、地下空間から横方向の地盤に向けて延伸される地下構造物を構築する地下構造物の構築方法であって、前記地下空間から前記地下構造物の上部が形成される位置が含まれる地盤に向けて函体を掘進させる工程と、前記函体より下方の前記地下構造物の側面が形成される位置に向けて、前記函体の内部から土留体の少なくとも一部を構築する工程と、前記函体の内部から下方に向けて複数の支持杭を構築する工程と、前記複数の支持杭の頭部間に架け渡される上部構造体を前記函体の内部で構築する工程と、前記上部構造体の下方を前記土留体に沿って掘削する工程と、前記上部構造体の下方の掘削空間に、前記地下構造物の残りの部分を構築する工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記地下空間から延伸される函体は、前記地下構造物の幅方向に横並びになるように複数列が設けられる構成であってもよい。さらに、前記複数列は、前記幅方向に間隔を置いて設けられるとともに、前記函体間を接続する工程を備えた構成であってもよい。そして、前記函体のそれぞれから前記支持杭を構築することができる。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の地下構造物の構築方法は、まず地下構造物の上部が形成される位置に函体を配置し、その函体の内部から下方に向けて複数の支持杭を構築する。そして、それらの支持杭の頭部間に上部構造体を架け渡した後に、上部構造体の下方を掘削して地下構造物を構築する。
【0012】
このため、函体を掘進させた後の掘削は、支持杭によって支えられた上部構造体の下方の掘削になるため、上部構造体より上方の地盤が緩んで地表面が沈下することがほとんど無い。また、先行して掘進させる函体は、曲線部であってもその線形に従って掘進させることができるので、トンネルの曲線部なども容易に構築することができる。
【0013】
さらに、複数の函体を並列に並べる方法であれば、一回の掘削量が少なく、沈下量を抑えることができる。また、幅方向に間隔を置いて函体を掘進させる方法であれば、曲率の大きな曲線部であっても容易に掘進させることができる。そして、函体のそれぞれから支持杭を構築する方法であれば、荷重を分散させることができる。また、上部構造体を仮受けのためだけに高剛性にしなくても地表面の沈下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の地下構造物の構築方法を説明する横断面図である。
【図2】函体を掘進させる工程を説明する横断面図である。
【図3】函体を掘進させた掘削機を発進立坑に戻す工程を説明する縦断面図である。
【図4】函体を幅方向に並列させた状態を説明する斜視図である。
【図5】支持杭及び上部構造体を構築する工程を説明する横断面図である。
【図6】地下構造物を完成させる工程を説明する横断面図である。
【図7】実施例1の地下構造物の構築方法を説明する図であって、(a)は支持杭を構築するまでの工程を説明する図、(b)は上部構造体を構築する工程を説明する図である。
【図8】実施例2の地下構造物の構築方法を説明する図であって、(a)は函体間を接続する工程を説明する図、(b)は支持杭及び上部構造体を構築する工程を説明する図である。
【図9】実施例3の地下構造物の構築方法を説明する図であって、(a)は支持杭を構築するまでの工程を説明する図、(b)は上部構造体を構築する工程を説明する図である。
【図10】実施例4の函体間を接続する工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1−図6は、本実施の形態の地下構造物1の構築方法を説明する図である。
【0017】
この地下構造物1は、例えば地表に鉄道や道路などが延設された地盤Gの比較的、土被りの浅い箇所に構築され、地下鉄、地下道路又はそれらの合流分岐部などに利用される断面視矩形の構造物である。
【0018】
また、この地下構造物1を構築するにあたって、図3に示すように、地下空間としての発進立坑51と、地下空間としての到達立坑52とを構築する。そして、その発進立坑51と到達立坑52との間に地下構造物1を延伸させる。このため、発進立坑51と到達立坑52との間を結ぶ線形が延伸方向となる。ここでは、図4に示すように曲線部のある平面視円弧状の地下構造物1を構築する場合について説明する。
【0019】
また、構築される地下構造物1の上方の地盤Gには、図3に示すように下水函渠S1、水道管S2、マンホールS3などが配設されており、上方を開削することができない条件となっている。
【0020】
また、発進立坑51から到達立坑52に向けて掘進させる函体としての鋼製函体2は、例えば先端に掘削機53を付けて発進立坑51から推進ジャッキ55によって押し出すことによって掘進させる。
【0021】
この掘削機53は、前面にカッタビットを備えたカッター部53aと、その後方に接続される胴体部53bと、カッター部53aと胴体部53bを保護するルーフ部53cとから主に構成される。この掘削機53は、カッター部53aと胴体部53bとルーフ部53cとが分解や組み立てが容易になるように製作されている。
【0022】
また、発進立坑51には、推進ジャッキ55の反力を確保するための反力壁54、推進ジャッキ55と鋼製函体2との間に介在させる架台56などが配置される。
【0023】
そして、この掘削機53と推進ジャッキ55によって地盤Gに掘進される鋼製函体2は、図2−図4に示すように正面視矩形の短尺筒状に形成される。すなわち、図2は、地下構造物1の延伸方向に直交する幅方向に5体の鋼製函体2,・・・を並列させた状態を示している。これに対して図3は、鋼製函体2,・・・を側方から見た図である。すなわち、図4に示すように、発進立坑51から5列の鋼製函体2,・・・群が延伸されることになる。
【0024】
この5列の鋼製函体2,・・・は、図2に示すように、地下構造物1の上部が形成される位置の地盤Gに配置される。そして、図5に示すように、これらの鋼製函体2,・・・の内部から下方の地盤Gに向けて土留杭31,31及び支持杭4,・・・が打ち込まれる。
【0025】
この土留杭31は、土留体としての土留壁3の一部を構成する部材である。すなわち、土留壁3は、先行して打設される土留杭31を支持体とし、掘削後に土留杭31,31間に架け渡される土留板又は矢板(図示省略)によって壁状に形成される。
【0026】
また、この土留杭31は、地下構造物1の側面が形成される位置に沿って打ち込まれる。すなわち、土留杭31は、5列に並んだ鋼製函体2,・・・の両端の鋼製函体2,2の内部から、それぞれ打ち込まれる。
【0027】
これに対して支持杭4は、土留杭31,31間に間隔を置いて打ち込まれる。例えば、図5に示すように5体の鋼製函体2,・・・のそれぞれに対して支持杭4,・・・を設ける。また、支持杭4は、支持層G1まで打ち込むことによって支持力を確保する。さらに、この土留杭31,・・・及び支持杭4,・・・は、図4に示すように、延伸方向に所定の間隔を置いても設けられる。
【0028】
一方、鋼製函体2,・・・の内部では、地下構造物1の上部を形成する上部構造体としての天井構造体11を構築する。この天井構造体11は、図5に示すように、平板状の天井部111と、その両側縁からそれぞれ垂下される上部側壁112,112とを、鉄筋コンクリートなどで一体に成形することによって構築される。ここで、天井部111は、複数の鋼製函体2,・・・に跨って構築されるため、天井部111の構築に支障となる部分の鋼製函体2の鋼殻は、切断して撤去することになる。
【0029】
また、天井部111の下面と支持杭4の上端との間には、油圧ジャッキなどの受部41を介在させる。このように天井構造体11は、複数の支持杭4,・・・の頭部間に跨って架け渡されることになる。
【0030】
次に、本実施の形態の地下構造物1の構築方法について説明する。
【0031】
まず、図3に示すように、地下構造物1を構築する区間の両端に発進立坑51と到達立坑52とをそれぞれ構築する。また、発進立坑51の内部には、反力壁54、推進ジャッキ55、架台56などを設置する。
【0032】
そして、発進立坑51の内部に掘削機53と鋼製函体2を搬入し、掘削機53の後方に鋼製函体2を接続する。また、鋼製函体2の後方には架台56を配置し、その架台56の背面に推進ジャッキ55の先端を当接させる。
【0033】
続いて発進立坑51の発進口51aから地盤Gに向けて掘削機53を発進させる。この掘削機53のカッター部53aによって地盤Gが切削され、推進ジャッキ55の推力によって掘削機53と鋼製函体2とが地盤Gに押し出される。
【0034】
また、鋼製函体2の掘進の進捗に合わせて、発進立坑51の内部で最後部の鋼製函体2と架台56との間に新たな鋼製函体2を継ぎ足していくことによって、到達立坑52の到達口52aに至るまで鋼製函体2,・・・を延伸させる。
【0035】
このようにして1列目の鋼製函体2,・・・群によって発進立坑51と到達立坑52とが繋がった後に、到達立坑52の内部で掘削機53を分解し、鋼製函体2,・・・群によって形成されたトンネルを使って発進立坑51まで分解された掘削機53を戻す。
【0036】
そして、発進立坑51の内部では、掘削機53を再び組み立て、1列目の鋼製函体2,・・・の隣から2列目の鋼製函体2,・・・の掘進をおこなう。なお、この掘進の順序は、5列の中で一つ置きにおこなってもよいし、近接しておこなってもよい。
【0037】
このように各列で鋼製函体2,・・・の掘進をおこなうと、図4に示すように発進立坑51から円弧状に延伸される5列の鋼製函体2,・・・のトンネル群が構築される。
【0038】
さらに、発進立坑51から到達立坑52までの鋼製函体2,・・・のトンネルが開通した後は、図4に示すように、隣接する場所での鋼製函体2,・・・の掘進作業と並行して、鋼製函体2,・・・の内部から下方の地盤Gに向けて土留杭31及び支持杭4を打ち込むことができる。
【0039】
また、土留杭31及び支持杭4の打設をおこなう前に、鋼製函体2,・・・の内部から下方の地盤Gに対して、必要に応じて薬液注入などで地盤改良をおこなったり地下水位を低下させたりする。
【0040】
また、土留杭31は、鋼製函体2,・・・の下方の地盤Gを掘削した際に土留壁3として必要となる耐力が確保できる深さまで打ち込めばよい。これに対して支持杭4は、天井構造体11とその上載荷重を支持させるために、支持層G1まで打ち込む。
【0041】
一方、天井構造体11を構築するのに支障となる鋼製函体2,2間の鋼殻は切断及び撤去し、隣接する鋼製函体2,2間を連通させる。そして、鋼製函体2,・・・間に跨る天井部111とその両側縁の上部側壁112,112とを鉄筋コンクリートによって一体に成形することで、図5に示すような門形の天井構造体11を構築する。
【0042】
ここで、この天井構造体11の構築に際して必要となる支保工には、支持杭4,・・・が利用できる。すなわち、受部41,・・・の油圧ジャッキを伸長して天井部111の型枠の下面に当接させることで支保工とすることができる。
【0043】
そして、図1に示すように、支持杭4,・・・によって支持された天井構造体11の下方の地盤Gを掘削する。この掘削は、土留杭31,31間の地盤に対しておこなわれ、掘削によって露出した土留杭31には土留板(図示省略)を取り付けて土留壁3を構築する。また、土留壁3,3間には、切梁32及び腹起し32a,32aを設置する。
【0044】
このようにして掘削底面G2を掘り下げていき、所定の深さまで掘削した掘削空間に対して、図6に示すように地下構造物1の下部構造体12を鉄筋コンクリートによって構築する。この下部構造体12は、底版とその両側縁から立設される下部側壁とによって溝状に形成されるとともに、天井構造体11の上部側壁112,112の下端と接合されて一体の地下構造物1となる。
【0045】
そして、地下構造物1の内部に残った支持杭4,・・・、受部41,・・・などを撤去し、地下構造物1を完成させる。
【0046】
次に、本実施の形態の地下構造物1の構築方法の作用について説明する。
【0047】
このように構成された本実施の形態の地下構造物1の構築方法は、まず地下構造物1の上部が形成される位置に鋼製函体2,・・・を配置し、その鋼製函体2,・・・の内部から下方に向けて複数の支持杭4,・・・を構築する。そして、それらの支持杭4,・・・の頭部間に天井構造体11を架け渡した後に、天井構造体11の下方の地盤Gを掘削して地下構造物1を構築する。
【0048】
すなわち、鋼製函体2,・・・を掘進させた後の地盤Gの掘削は、支持杭4,・・・によって支えられた天井構造体11の下方でおこなわれる。このため、天井構造体11より上方の地盤Gが緩んで地表面が沈下するという現象が発生するおそれがほとんど無い。
【0049】
また、先行して掘進させる鋼製函体2,・・・は、曲線部であってもその線形に従って掘進させることができるので、トンネルの曲線部などであっても容易に構築することができる。
【0050】
さらに、掘削したい領域を分割して小型の鋼製函体2,・・・を掘進させていく方法であれば、一回の掘削量が少なく、一度に開放される応力も低減されるため、沈下量を抑えることができる。
【0051】
そして、複数隣接された鋼製函体2,・・・のそれぞれから支持杭4,・・・を構築する方法であれば、荷重を分散させることができるので応力集中が起き難い。また、支持杭4,4間のスパンが短ければ、天井構造体11を仮受けのためだけに剛性の高いものにしなくても、充分に地表面の沈下を抑えることができる。
【実施例1】
【0052】
次に、前記実施の形態とは別の形態の地下構造物1の構築方法について、図7を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0053】
この実施例1では、図7(a)に示すように、函体としての鋼製函体2A,・・・を、地下構造物1の幅方向に間隔を置いて配置する場合について説明する。すなわち、実施例1では、正面視矩形の鋼製函体2Aを、一定の間隔を置いて掘進させる。このように鋼製函体2A,2A間に間隔があれば、大きな曲率の線形であっても容易に掘進させることができる。
【0054】
そして、鋼製函体2A,2A間は、接続工によって接続する。この実施例1では、鋼製函体2Aの半分程度の高さの接続函体21を鋼製函体2A,2A間に掘進させることによって接続をおこなう。このため、掘削機53による掘削量を前記実施の形態に比べて削減することができ、工期及び工費の短縮に繋がる。
【0055】
また、内空が連通された鋼製函体2A,・・・及び接続函体21,・・・間には、鉄筋コンクリートによって天井構造体11Aを構築する。この天井構造体11Aは、接続函体21の高さと略同じ厚さに成形される天井部111Aと、その両側縁から垂下される上部側壁112A,112Aと、内側の鋼製函体2A,2Aの内部に設けられるリブ113A,113Aとによって主に構成される。
【0056】
このように間隔を置いて配置された鋼製函体2A,2A間を、天井部111Aの厚さと同じ高さの接続函体21で繋いだ場合、天井部111Aの下面側の型枠を省略することができる。
【0057】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例2】
【0058】
次に、前記実施の形態及び実施例1とは別の形態の地下構造物1の構築方法について、図8を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0059】
この実施例2では、実施例1と同様に地下構造物1の幅方向に間隔を置いて函体を掘進させる。但し、この実施例2で使用する函体は円筒状の鋼製函体2Bである。
【0060】
そして、図8(a)に示すように間隔を置いて配置された鋼製函体2B,2B間は、曲線パイプルーフ22を使って接続する。すなわち、曲線パイプルーフ22を紙面直交方向に連続して配置することでアーチ状の屋根を構築し、その下方の地盤を掘削して鋼製函体2B,2B間を連通させる。
【0061】
また、鋼製函体2B,・・・間に跨る天井部111Bと、その両側縁から垂下される上部側壁112B,112Bと、天井部111Bの下面から突出するリブ113B,113Bとを備えた天井構造体11Bを鉄筋コンクリートによって一体に構築する。
【0062】
このように間隔を置いて鋼製函体2B,・・・を掘進させるのであれば、曲率の大きな曲線部を有する地下構造物1であっても容易に構築できる。また、比較的、地盤の状態が良いところであれば、曲線パイプルーフ22のように簡単に施工できる接続工を適用することによって、工費及び工期の削減ができる。
【0063】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例3】
【0064】
次に、前記実施の形態及び実施例1,2とは別の形態の地下構造物1の構築方法について、図9を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1,2で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0065】
前記実施の形態及び実施例1,2では、小断面の鋼製函体2,2A,2Bを横並びにして配置する場合について説明したが、実施例3では、図9(a)に示すように、大断面の鋼製函体2Cを掘進させ、その内部から両側の土留杭31,31と複数の支持杭4,・・・とを打ち込む。
【0066】
このような鋼製函体2Cは、シールド工法などによって配置することができる。すなわち、この鋼製函体2Cは、円弧状のセグメントを複数組み合わせることで形成されている。
【0067】
また、図9(b)に示すように、鋼製函体2Cの内周面に沿って天井構造体11Cを構築する。すなわち、天井構造体11Cは、半円状の天井部111Cと、その両側縁からそれぞれ垂下される上部側壁112C,112Cと、天井部111Cと支持杭4,・・・の頭部とを繋ぐ中間壁113C,・・・とが鉄筋コンクリートによって一体に成形されている。また、この実施例3では、土留杭31と上部側壁112Cとも接続されている。
【0068】
このように一つの鋼製函体2Cの内部から複数の支持杭4,・・・及び土留杭31,31を構築する方法であれば、杭打ち機の移動が容易になるため、効率的に支持杭4及び土留杭31を打ち込むことができる。また、鋼殻を切断しなくても複数の支持杭4,・・・に跨る天井構造体11Cを容易に構築することができる。
【0069】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例4】
【0070】
次に、前記実施の形態及び実施例1−3とは別の形態の地下構造物1の構築方法について、図10を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1−3で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0071】
この実施例4では、実施例1,2と同様に地下構造物1の幅方向に間隔を置いて函体を掘進させる。そして、図10に示すように間隔を置いて配置された鋼製函体2D,2D間の上下に、スライド鋼板23,23を差し渡す。
【0072】
このスライド鋼板23は、鋼製函体2Dを掘進させているときには一方の鋼製函体2Dの天井裏及び床下に収容されており、鋼製函体2D,2D間を幅方向に接続する工程において、一方の鋼製函体2Dから隣接する他方の鋼製函体2Dに向けて(図10では左側の鋼製函体2Dから右側の鋼製函体2Dに向けて)差し渡される。
【0073】
また、スライド鋼板23の外側の地盤Gには、薬液注入工法や凍結工法などによって止水部24を構築する。そして、鋼製函体2D,2Dの側壁と上下のスライド鋼板23,23とに囲まれた地盤を掘削して鋼製函体2D,2D間を幅方向に連通させる。
【0074】
このように2つの鋼製函体2D,2D間を接続する工程が、スライド鋼板23,23を差し渡すことによっておこなわれるのであれば、鋼製函体2D,2Dの掘進位置に多少の施工誤差があったとしても容易に接続をおこなうことができる。
【0075】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【0076】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0077】
例えば、前記実施の形態では、発進立坑51を地下空間として説明したが、これに限定されるものではなく、地下構造物1に繋がるトンネルを地下空間とすることもできる。
【0078】
また、前記実施の形態では、発進立坑51から掘進させた掘削機53を到達立坑52の内部で分解して発進立坑51に戻す場合について説明したが、これに限定されるものではなく、掘削機53を到達立坑52の内部でUターンさせ、発進立坑51に向けて掘進させることで次の鋼製函体2,・・・のトンネルを構築することができる。さらに、掘削機53が発進立坑51に到達したときには、発進立坑51の内部でUターンさせて到達立坑52に向けて掘進させればよい。
【0079】
また、前記実施の形態では、土留体として土留杭31を有する土留壁3を構築する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、鋼製函体2の内部から連続地中壁を土留体として構築することもできる。
【0080】
さらに、前記実施の形態及び実施例では、面板状の天井構造体11,11A,11B,11Cを先行して構築する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、梁状の上部構造体を先行して支持杭4,・・・間に架け渡して鋼製函体2,・・・の天井を支持させ、後から梁状の上部構造体間を繋ぐ地下構造物1の天井部を構築してもよい。
【0081】
また、前記実施の形態及び実施例では、地下構造物1を鉄筋コンクリートで構築する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、鉄骨鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリート、プレキャストコンクリートなどを使って構築してもよい。
【0082】
さらに、前記実施の形態では、地下構造物1の一部を天井構造体11として構築したが、これに限定されるものではなく、天井構造体11は仮設として構築し、その天井構造体11の下方に本設の地下構造物1を別途、設けてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 地下構造物
11,11A,11B,11C 天井構造体
12 下部構造体(地下構造物の残りの部分)
2,2A,2B,2C,2D 鋼製函体(函体)
21 接続函体
22 曲線パイプルーフ
23 スライド鋼板
3 土留壁(土留体)
31 土留杭
4 支持杭
51 発進立坑(地下空間)
52 到達立坑(地下空間)
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下空間から横方向の地盤に向けて延伸される地下構造物を構築する地下構造物の構築方法であって、
前記地下空間から前記地下構造物の上部が形成される位置が含まれる地盤に向けて函体を掘進させる工程と、
前記函体より下方の前記地下構造物の側面が形成される位置に向けて、前記函体の内部から土留体の少なくとも一部を構築する工程と、
前記函体の内部から下方に向けて複数の支持杭を構築する工程と、
前記複数の支持杭の頭部間に架け渡される上部構造体を前記函体の内部で構築する工程と、
前記上部構造体の下方を前記土留体に沿って掘削する工程と、
前記上部構造体の下方の掘削空間に、前記地下構造物の残りの部分を構築する工程とを備えたことを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項2】
前記地下空間から延伸される函体は、前記地下構造物の幅方向に横並びになるように複数列が設けられることを特徴とする請求項1に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項3】
前記複数列は、前記幅方向に間隔を置いて設けられるとともに、前記函体間を接続する工程を備えたことを特徴とする請求項2に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項4】
前記函体のそれぞれから前記支持杭を構築することを特徴とする請求項2又は3に記載の地下構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−202402(P2011−202402A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70509(P2010−70509)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】