説明

地下構造物用蓋の施錠構造

【課題】地下構造物用蓋の施錠構造において、蓋体が専用の開蓋工具以外の部材でもって不正に開蓋されることを防止する。
【解決手段】地下構造物用蓋の施錠構造1は、受枠2と、受枠2に保持される蓋体3と、蓋体3の下面に揺動自在に枢支された錠4とを備える。蓋体3の周縁部には、開蓋工具を挿入するための開口部31が設けられる。錠4は、受枠2の錠座22に施錠時に係合する係合突起41と、施錠時に開口部31に臨み、解錠時に押下される解錠用の突片42とを有する。突片42には、突片42が専用の開蓋工具以外の部材により押下されたとき、該部材の先端が嵌まり込む凹部42aが形成されている。蓋体3を開蓋するとき、専用の開蓋工具10を使用すれば、該工具10が突片42の凹部42aに嵌まり込むことがなく開蓋できるが、専用の開蓋工具以外の部材が用いられると、該部材の先端が凹部42aにより拘束されて開蓋することができない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール蓋や汚水桝蓋等といった地下構造物用蓋の施錠構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の地下構造物用蓋として、地下構造物(例えば、共同溝や下水道管等)に通じる地表の開口部分に配設される受枠と、受枠に開閉可能に保持される蓋体と、蓋体を受枠に錠止するための施錠構造とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この施錠構造は、一般的に、蓋体の下面に振子状の施錠体を揺動自在に枢支し、その施錠体に形成される係合突起が施錠体の自重によって受枠の内周部位に係合するような構造としている。そして、この施錠構造によれば、蓋体の周縁部に形成された工具差込口に開蓋工具を差し込むことにより施錠体を揺動せしめて施錠解除を行い、この状態で蓋体を引き上げることにより蓋体を開蓋することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−56357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のような施錠構造では、施錠体が施錠時に工具差込口に臨み、工具差込口を通じて施錠体を解錠方向に容易に揺動し得る構造となっているので、専用の開蓋工具を持たない部外者等が一般に市販される鶴嘴や金属棒などを用いて蓋体を抉じ開けてしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、蓋体が専用の開蓋工具以外の部材でもって不正に開蓋されることを防止できるようにした地下構造物用蓋の施錠構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の地下構造物用蓋の施錠構造は、受枠と、前記受枠に開閉可能に保持される蓋体と、前記蓋体を施錠するための錠とを備えた地下構造物用蓋の施錠構造であって、前記蓋体の周縁部に開蓋工具を挿入するための開口部が設けられ、前記受枠は、内周面に開口が形成された凹型の錠座を有し、前記錠は、前記開口部の内周方向で蓋体の下面に揺動自在に枢支され、前記錠座に施錠時に係合する係合突起と、施錠時に該開口部に臨み、解錠時に押下される解錠用の突片とを有し、前記解錠用の突片には、該突片が専用の開蓋工具以外の部材により押下されたとき、該部材の先端が嵌まり込んで前記蓋体の開口部周縁に達しないように拘束する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この地下構造物用蓋の施錠構造において、前記凹部は、専用の開蓋工具以外の部材の先端が誘導されるすり鉢形状とされていることが好ましい。
【0008】
この地下構造物用蓋の施錠構造において、前記錠は、揺動自在とする軸回りに常時、錠を施錠方向に回転付勢するバネ部材と、前記軸回りに対する前記係合突起及び解錠用の突片の重量とのバランスを取るウエイトとを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地下構造物用蓋の施錠構造によれば、蓋体の開口部に専用の開蓋工具以外の部材が挿入され、解錠用の突片が押下されたとしても、該部材の先端が凹部に嵌まり込み、蓋体の開口部周縁まで差し込めなくなるので、専用の開蓋工具を持たない悪意の第三者により蓋体が開蓋されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る地下構造物用蓋の施錠構造を示す平面図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】同施錠構造の錠を含む要部断面図。
【図4】図3における矢視B方向の側面図。
【図5】(a)乃至(f)は同地下構造物用蓋の開蓋手順を示す断面図。
【図6】(a)及び(b)は同地下構造物用蓋の開口部に専用の開蓋工具以外の部材を挿入したときの錠の状態を時系列に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る地下構造物用蓋の施錠構造について図面を参照して説明する。図1乃至図4に示すように、地下構造物用蓋の施錠構造1は、地下構造物に通じる地表の開口端に設置される環状の受枠2と、受枠2の内周面にテーパ嵌合により保持される蓋体3と、蓋体3を施錠するための錠4とを備える。受枠2は、蓋体3を嵌め入れることができる大きさの段付開口21を有し、この段付開口21を形成している上部側の内周面が上端から下端に向かうにつれて小径となるテーパ形状とされている。受枠2は、その内周面の下部側で錠4に対応する位置に錠座22を有する。この錠座22は、蓋体3が閉じられた状態から錠4を解錠(回動動作)させることなく開蓋しようとすると、錠4に形成された係合突起41が係合して開蓋を阻止する。蓋体3は、受枠2の段付開口21のテーパ面と同じ傾斜角の外周面を持つ円板部材から成り、その下面に設けられた蝶番5により受枠2に対して開閉可能に連結されている。蓋体3の周縁部には、開蓋工具を挿入するための開口部31が設けられている。この開口部31は、蓋体3の蝶番5のある側とは反対側の周縁部にあって、この周縁部の一部を切り欠いた略半円状に形成されている。また、蓋体3の周縁部には、上記開口部31のほか、開蓋時に蓋体3と受枠2とを縁切りするための小孔32が設けられている。錠4は、開口部31の内周方向で蓋体3の下面に揺動自在に枢支されている
【0012】
錠4は、受枠2の錠座22に施錠時に係合する係合突起41と、施錠時に蓋体3の開口部31に臨み、解錠時に押下される解錠用の突片42と、これら係合突起41及び突片42を保持するアーム43a,43bが形成された本体部43とを有する。本体部43は、その上部両側に、側方に突出した揺動軸44を有する。揺動軸44は、蓋体3の下面に形成された一対の支持側壁33に軸支される。係合突起41は、本体部43の上部から斜め下方に延出するアーム43aの一端に、上方に突出して形成され、錠座22と掛かり得る。突片42は、本体部43の上部からその前方(蓋体3の外周側)に延出するアーム43bの一端に設けられている。突片42には、該突片42が専用の開蓋工具以外の部材により押下されたとき、該部材の先端が嵌まり込んで蓋体3の開口部周縁に達しないように拘束する凹部42aが形成されている。この凹部42aは、専用の開蓋工具以外の部材の先端が誘導されるすり鉢形状とされている。
【0013】
また、錠4は、揺動軸軸回りに常時、錠4を施錠方向に回転付勢するバネ部材45(図4では図示略)、この軸回りに対する係合突起41及び解錠用の突片42の重量とのバランスを取るウエイト46とを備える。バネ部材45は、トーションバネから成り、中心軸が揺動軸44に嵌着され、一片側が蓋体3の揺動軸44より内方側の下面に係止されると共に、他片側がアーム43aの後方面に係止されている。ウエイト46は、本体部43の後方部位に設けられている。
【0014】
次に、上記のように構成された地下構造物用蓋の施錠構造1における蓋体3の開蓋手順について図5を用いて説明する。図5(a)に示すように、蓋体3が受枠2に嵌合されているとき、錠4は、バネ部材45のバネ力とウエイト46の自重により矢印Aの方向に付勢されている。このとき、錠4が回動されることなく開蓋動作が成されたとしても、係合突起41が錠座22に掛り合うことになり、施錠が保持される。解錠用の突片42は、施錠位置において蓋体3上面と同じ高さ位置になるように開口部31に臨んでおり、これにより開口部31が閉塞される。
【0015】
蓋体3を開蓋するときには専用の開蓋工具10を使用する。開蓋工具10は、先端に蓋体3を引き上げるための鉤部10aを有したバール形状とされている。まず、開蓋工具10を蓋体3の開口部31に挿入し、解錠用の突片42を押下する。開蓋工具10の先端は鉤部10aとなっているので、突片42の凹部42aにより拘束されることはない。錠4は、解錠用の突片42が押下されると、図5(b)に示すように、バネ部材45の付勢に抗して揺動軸44を支点として矢印Bの方向に回動する。このとき、係合突起41が錠座22から離隔し、蓋体3の施錠が解錠状態になる。次に、図5(c)に示すように、突片42を押下しながら開蓋工具10を矢印Cの方向に傾けていくと、開蓋工具10の先端が開口部31の内周方向に入り込むように誘導される。図5(d)に示すように、開蓋工具10を矢印Cの方向にさらに傾けていき、その先端が開口部31の内周方向に深く差し込まれると、蓋体3の開口部周縁が開蓋工具10の鉤部10aによりフックされる。このとき、開蓋工具10に形成された突部10bが受枠2の上面に当接される。次に、図5(e)に示すように、開蓋工具10の突部10bを受枠2上面に当接させた状態で、この当接部を支点として開蓋工具10を傾けながら矢印Dの方向に持ち上げると、図5(f)に示すように、係合突起41が錠座22に掛り合うことなく、蓋体3が受枠2から引き上げられる。
【0016】
次に、上記のように構成された地下構造物用蓋の施錠構造1において、専用の開蓋工具以外の部材による蓋体の不正解錠を防止する作用について図6を用いて説明する。本施錠構造1では、上述のように先端に鉤部10aを有した専用の開蓋工具10を用いれば、蓋体3を容易に開蓋できるが、鉤部10aを有していない開蓋工具以外の部材(例えば、鶴嘴や金属棒など)を用いたときには、蓋体3を開蓋することができないようになっている。すなわち、図6(a)に示すように、開蓋工具以外の部材11により突片42を押下しようとしたとき、部材11の先端が突片42の凹部42aに嵌まり込み、開口部31の内周方向への移動が規制される。よって、開蓋工具以外の部材11では、図6(b)に示すように、突片42の押下により係合突起41と錠座22との係合状態は解除できても、部材11の先端が開口部31の内周方向に深く差し込むことが許容されず、蓋体3の開口部周縁をフックして引き上げることができなくなる。
【0017】
このように本実施形態に係る地下構造物用蓋の施錠構造1によれば、蓋体3の開口部31に専用の開蓋工具以外の部材11が挿入され、解錠用の突片42が押下されたとしても、該部材11の先端が凹部42aに嵌まり込み、蓋体3の開口部周縁まで差し込めなくなるので、専用の開蓋工具を持たない悪意の第三者により蓋体3が開蓋されることを防止できる。
【0018】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、地下構造物用蓋は円形のマンホールに限られず、矩形の蓋体及びそれを支える受枠で構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 地下構造物用蓋の施錠構造
2 受枠
3 蓋体
31 開口部
4 錠
41 係合突起
42 突片
42a 凹部
45 バネ部材
46 ウエイト
10 開蓋工具
11 開蓋工具以外の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受枠と、前記受枠に開閉可能に保持される蓋体と、前記蓋体を施錠するための錠とを備えた地下構造物用蓋の施錠構造であって、
前記蓋体の周縁部に開蓋工具を挿入するための開口部が設けられ、
前記受枠は、内周面に開口が形成された凹型の錠座を有し、
前記錠は、前記開口部の内周方向で蓋体の下面に揺動自在に枢支され、前記錠座に施錠時に係合する係合突起と、施錠時に該開口部に臨み、解錠時に押下される解錠用の突片とを有し、
前記解錠用の突片には、該突片が専用の開蓋工具以外の部材により押下されたとき、該部材の先端が嵌まり込んで前記蓋体の開口部周縁に達しないように拘束する凹部が形成されていることを特徴とする地下構造物用蓋の施錠構造。
【請求項2】
前記凹部は、専用の開蓋工具以外の部材の先端が誘導されるすり鉢形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の地下構造物用蓋の施錠構造。
【請求項3】
前記錠は、揺動自在とする軸回りに常時、錠を施錠方向に回転付勢するバネ部材と、前記軸回りに対する前記係合突起及び解錠用の突片の重量とのバランスを取るウエイトとを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地下構造物用蓋の施錠構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−36259(P2013−36259A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174374(P2011−174374)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(505091167)北勢工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】