説明

地下水流の自動計測監視システム

【課題】1箇所または複数箇所以上の地下水流の監視を遠隔操作により簡単かつ低コストでしかも長期間にわたり観測できるようにする。
【解決手段】地下掘削孔内に設置された流速流向計と、該流速流向計を遠隔操作可能な観測操作部と、該観測操作部の観測データを管理するサーバーとからなる。これにより特定箇所のみならず、監視が必要とされる複数の地域における地下水流の監視を無人で同時的に、しかも長期間にわたり継続しておこなうことができるために、低コストでしかも正確かつ効率的に、また遠隔操作が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば化学工場や産業廃棄物処理施設などに隣接する地域の安全性を監視し、あるいは河川堤防およびその付近、あるいはフィルダムの堤体やダム湖周辺地山、地滑り地などの周辺地盤における地下水流の監視システムに関し、簡単かつ低コストでしかもがけ崩れ等落石発生、雪崩、あるいは道路やトンネル内変状などが懸念される箇所の地下水流速および流向を正確にしかも効率よく測定及び監視することができるようにすることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
地下水の流れを測定する手段としては、これまでに種々のものが案出されているが、地中に掘削した単一の抗井内において測定するものとしては、円柱形のプローブの適所に多孔金属板および金網によって囲まれた検出室を設けるとともに、該検出室の中心に電熱線により表面が均一に加熱されている円柱形の発熱体を設け、これを同心円状に囲んで複数の温度検出器を配置し、検出室の内部空間にガラスビーズを充填してなる地下水の流向流速測定装置が知られる(特開平11−326359号公報参照)。
【0003】
また特定の電極に対して放射方向等間隔に複数の電極を配設したものを地下水中に浸漬し、特定電極との間における各電極の電差(電気的抵抗値差)またはその変化により地下水の動向を測定するようにしたものも知られる(特開昭56−154670号公報参照)。
【特許文献1】特開平11−326359号公報
【特許文献2】特開昭56−154670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した装置を用いて地下水の流速・流向を測定する場合においては、これらの機器を測定作業員が現場に持ち込んで、ボーリング孔内に設置した後、トレーサーの投入や、あるいは計測用ピストンの上昇など、各種の操作をそれぞれ手動にておこなう必要があり、長期的に繰り返し測定するには不向きである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明にあっては、測定機器類を被測定箇所に設置した後、これを遠隔操作により長期的に繰り返し連続測定が可能であって、しかも同時に複数箇所の測定をも可能とするものであって、具体的には地下掘削孔内に設置された流速流向計と、該流速流向計を遠隔操作可能な観測操作部と、該観測操作部の観測データを管理するサーバーとからなる地下水流の自動計測監視システムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、地下掘削孔内に設置された流速流向計と、該流速流向計を遠隔操作可能な観測操作部と、該観測操作部の観測データを管理するサーバーとからなるものであるために、特定箇所のみならず、監視が必要とされる複数の地域における地下水流の監視を無人で同時的に、しかも長期間にわたり継続しておこなうことができるために、低コストでしかも正確かつ効率的に、また遠隔操作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の具体的な内容を説明すると、本発明は任意の時間またはあらかじめ設定した間隔毎に、計測区間の中央部に蒸留水や塩水などのトレーサ液を一定量静かに放出できる制御用のソフトおよびハードをならびにデータ収集のためのソフト・ハードを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
具体的には図1〜図5の実施例において、1は地下掘削孔(図示省略)内に設置される流速流向計、Pは該流速流向計1を遠隔操作可能な観測操作部、15は該観測操作部Pの観測データを管理するサーバーをあらわしている。流速流向計1は内部中空のゾンデ2と該ゾンデ2を地下掘削孔内に装入するための管状のロッド11とからなり、さらにゾンデ2の下方部には側面外方に通じるセンサー部3を有するとともにその内部上方にはトレーサタンク8およびアンプ10が内装され、またゾンデ2の上方部にはトレーサタンク8に通じるトレーサ液注入口9が設けられている
【0009】
さらにゾンデ2のセンサー部3は、図3〜5に示したように外周面に沿わせて細かいメッシュ6が配設されているとともに、内部の中心部には中心となる特定電極4が植設されるとともに、該特定電極4を中心として特定電極4に対して放射方向等間隔に環状に12本の周辺電極5a〜5jが植設されている。さらに上記した特定電極4および周辺電極5a〜5jの付近には、上記したメッシュ6との間に、周方向における透水係数が均一となるような人工透水体を構成する充填物7が詰め込まれる。なお本実施例では充填物7としてガラスビーズを用いた。
【0010】
また特定電極4には、その外周面よりトレーサ液Tを放出するためのトレーサ液放出口4aが設けられ、しかも該トレーサ液放出口4aはゾンデ2内のトレーサタンク8に接続されている。また観測操作部Pは流速流向計1の遠隔操作機能と、水流計1による計測データ処理機能と、該計測データをサーバー15に転送する機能とを有する。すなわち観測操作部Pにはタイマー内蔵のマイクロポンプ14および計測用パソコン13が設置されている。
【0011】
さらにゾンデ2内のトレーサタンク8はトレーサ液注入口9、およびケーブル12を介して観測操作部Pのマイクロポンプ14よりトレーサ液Tが供給される。なおここで使用されるトレーサTは自然地下水とは異なる電気抵抗をもつ液体、例えば蒸留水や塩水などが用いられる。
【0012】
またゾンデ2内のアンプ10も同じくケーブル12を介して観測操作部Pの計測用パソコン13と接続され、微弱電流を特定電極4に一定時間供給されるとともに、周辺電極5a〜5jのうち、いずれかの電極との間における電気抵抗差(電位差)またはその変化をアンプ10を介して計測用パソコン13に入力することができる。さらにサーバー15は観測操作部Pの観測データを管理するとともに、通信回線などの通信手段を介して所望の箇所にデータ転送が可能としてある。
【0013】
なおこの場合において、水流計1およびその観測操作部Pが特定箇所以外にも複数または多数箇所設置されている場合においては、これら複数又は多数箇所の計測用パソコン13よりそれぞれ計測データが取り込まれ、これらを上記したのと同様に所望の箇所にデータ転送することが可能である。
【0014】
実際の測定は、自動又は遠隔操作によりマイクロポンプ14を作動させ、所定の量のトレーサ液Tをトレーサ液注入口9を介してゾンデ2内のトレーサタンク8に送り出すとともに、トレーサ液Tを送り出した時点をもって測定開始とする。トレーサタンク8内に供給されたトレーサ液Tは特定電極4のトレーサ液放出口4aから緩やかに放出され、センサー部3内に詰め込まれた充填物7の間を縫って流れる地下水流に乗って地下水と共に流れる。
【0015】
図4および図5には、特定電極4から放出されたトレーサ液Tが地下水とともに流れる移動の様子が示されている。同図の実施例においては、センサー部3内において地下水が左から右方(周辺電極5aから周辺電極5g方向)に向けて流れており、特定電極4から放出されたトレーサ液Tは、(a)の状態から図4(b)→(c)→(d)→(e)と、また図5においては(A)→(B)→(C)と、この流れに乗って次第に周辺電極5gに向け、さらに周辺電極5gから遠ざかる方向に移動する。
【0016】
トレーサ液Tが周辺電極5gに達すると、特定電極4と周辺電極5g間における電気抵抗差(電位差)が、他の周辺電極(5g以外の電極)との間における電気抵抗と異なるために、トレーサ液Tの流れ方向および速さを知ることができ、これをゾンデ2内のアンプ10を介して観測操作部Pの計測用パソコン13に記録させる。さらに計測用パソコン13に記録された記録データは、通信回線などの通信手段を介して遠隔地に備えたサーバー15に送信して蓄積させる。
【0017】
また、観測操作部Pと該観測操作部Pの観測データを管理するサーバー15間におけるデータ送信は通信衛星手段を介在させることもできる。すなわち図6にはその概念図があらわされており、観測操作部Pと該観測操作部Pの観測データを管理するサーバー15(監視用PCであるデータロガー)間におけるデータ送信には通信手段として通信衛星手段Eを介在させることもできる。
【0018】
本発明は上記した構成よりなるものであるために、とくに山岳地や離島などの遠隔地における地下水の流速や流向などの計測・監視を継続的に、しかも無人監視することも可能であるところから、例えば河川堤防およびその周辺地盤や、あるいはフィルダムの堤体やダム湖周辺地山、地滑り地、地下水の動きが問題になるような長期間にわたる地下工事、その他、人が頻繁に現地入りすることが困難な場所などにおける地下水の自動計測・監視をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る地下水の流速流向監視システムの概略の構成をあらわした説明図。
【図2】地下水の流動状況を把握するための一般的な概念を示した断面図。
【図3】流速流向計におけるセンサー部の構造をあらわした要部分解図。
【図4】センサー部の特定電極より放出されたトレーサ液の移動状況を順次あらわした側面図。
【図5】センサー部の特定電極より放出されたトレーサ液の移動状況を順次あらわした部分的平面図。
【図6】観測操作部と該観測操作部の観測データを管理するサーバー間のデータ送信を通信衛星手段によりおこなうようにした場合の衛生通信システムの概念図。
【符号の説明】
【0020】
1 流速流向計
2 ゾンデ
3 センサー部
4 特定電極
4a トレーサ液放出口
5a〜g 周辺電極
6 メッシュ
7 充填物
8 トレーサタンク
9 トレーサ液注入口
10 アンプ
11 ロッド
12 ケーブル
13 計測用パソコン
14 マイクロポンプ
15 サーバー
15a モデム
15b 固定網
15c 移動通信網
15d 衛星基地局
P 観測操作部
P1 通信制御ユニット
P2 外部アンテナ
T トレーサ液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下掘削孔内に設置された水流の流速流向計と、該流速流向計を自動計測又は遠隔操作可能な観測操作部と、該観測操作部の観測データを管理するサーバーとからなる地下水流の自動計測監視システム。
【請求項2】
流速流向計が、特定電極に対して放射方向等間隔に環状に配設された複数の電極からなり、地下水中において特定電極との間における各電極の電位差またはその変化により地下水の動向を検出するものであるところの請求項1に記載の地下水流の自動計測監視システム。
【請求項3】
流速流向計の特定電極には一定量のトレーサーを放出できるようにした請求項1又は請求項2に記載の地下水流の自動計測監視システム。
【請求項4】
流速流向計の特定電極より放出されるトレーサーが蒸留水であるところの請求項1〜3のいずれか1に記載の地下水流の自動計測監視システム。
【請求項5】
観測操作部が、流速流向計の遠隔操作機能と、流速流向計による計測データ処理機能と、該計測データをサーバーに転送する機能とを有するものであるところの請求項1に記載の地下水流の自動計測監視システム。
【請求項6】
観測操作部には複数又は多数の地下掘削孔内に設置された流速流向計と接続されているところの請求項1〜5のいずれか1に記載の地下水流の自動計測監視システム。
【請求項7】
観測操作部と該観測操作部の観測データを管理するサーバー間におけるデータ送信は通信回線などの通信手段を介在させるものであるところの請求項1〜6のいずれか1に記載の地下水流の自動計測監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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