説明

地下空間に対する連絡通路

【課題】地下空間に供給した暖気が連絡通路から外部に流出しないようにする。
【解決手段】暖房される地下空間1と地上2との間で人16を出入りさせる連絡通路3であって、地下空間1側に暖気溜り空間部5が設けられ、地上2側に冷気溜り空間部6が設けられ、暖気溜り空間部5の床10が、地上2よりも高くなっている。地下空間1の空気で放熱し、冷気溜り空間部6の空気で吸熱するヒートポンプ装置25を有し、冷気溜り空間部6の下部に給気口36を設け、上部に吸気口35を設ける。地下空間1に供給した暖気を暖気溜り空間部5に溜めることにより、外部への流出を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下街や地下鉄構内等の地下空間に対する連絡通路に関する。
【背景技術】
【0002】
地下アーケードなどの地下街、地下鉄構内等といった人の出入りが多い地下空間においては、夏季の冷房のみを行い、冬期は暖房を行わない場合が多い。その理由は、冬期に地下空間を暖房しても、連絡通路を通じて暖気が外部に出て行ってしまい、暖房効率が悪いことによる。
【0003】
即ち、図4に示すように、地下街や地下鉄構内等の地下空間51には、地上52との間で人を出入りさせる連絡通路53が設けられている。地下空間51の天井54には、空調機55で暖められた暖気を地下空間51内に供給する給気口56が設けられている。例えば冬期に、地下空間51に暖気を供給して暖房した場合、地下空間51内の暖気が上昇し、連絡通路53を通じて外部に出て行き、また、外部からは、冷気が下降流となって連絡通路53を通じて地下空間51内に流入する。このように、外気温度が低い冬期に地下空間51を暖房すると、外気と地下空間51内との温度差により、暖気の浮力を起動力とする自然換気が発生し、暖房効率が低下してしまう。また、地下空間51に対する暖房を強化すればするほど、外気と地下空間51内との温度差が大きくなって、流出空気量が大きくなり、消費エネルギーが増大してしまう。
【0004】
このような暖気の流出を防止するために、連絡通路53に二重扉等を利用した風除室を設けることも考えられる。しかし、特に人通りの多い地下鉄構内等の地下空間51の連絡通路53に風除室を設けることは、人通りの妨げとなるため、現実的でない。
【0005】
従来、地下鉄構内を空調する方法として、隣接地下鉄駅空間に空気を流入させる空調方法が開示されている(特許文献1)。また、高層ビルの縦シャフト内の煙突効果をファンによって抑制するシステムが開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平6−264697号公報
【特許文献2】特開2006−77540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のように地下鉄構内等を空調するために、例えば冬期において地下空間内に暖気を供給した場合、連絡通路を通じて暖気が外部に出て行ってしまい、暖房効率が悪くなってしまうことは上述した通りである。一方、上記特許文献2のようにファンによって暖気の上昇流を抑制するためには、ファンなどの特別の動力設備が必要となり、制御も煩雑となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、地下空間に供給した暖気が連絡通路から外部に流出しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によれば、暖房される地下空間と地上との間で人を出入りさせる連絡通路であって、前記地下空間側に暖気溜り空間部が設けられ、前記地上側に冷気溜り空間部が設けられ、前記暖気溜り空間部の床が、地上よりも高くなっている、地下空間に対する連絡通路が提供される。
【0009】
この連絡通路において、前記冷気溜り空間部の下部に給気口が設けられ、外気と同じ温度もしくは外気よりも低い温度に調整した空気が、前記給気口から前記冷気溜り空間部に供給されても良い。また、前記地下空間の空気で放熱し、前記冷気溜り空間部の空気で吸熱するヒートポンプ装置を有しても良い。この場合、前記冷気溜り空間部の下部に給気口が設けられ、前記冷気溜り空間部の上部に吸気口が設けられ、前記吸気口から吸い込まれた空気が、前記ヒートポンプ装置で吸熱され、前記給気口から前記冷気溜り空間部に供給されても良い。また、前記地下空間と前記暖気溜り空間部の間、前記暖気溜り空間部と前記冷気溜り空間部の間、および、前記冷気溜り空間部と前記地上との間は、いずれも連通していても良い。また、前記地下空間と前記暖気溜り空間部の間、前記暖気溜り空間部と前記冷気溜り空間部の間、および、前記冷気溜り空間部と前記地上との間には、階段が設けられていても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地下空間に供給した暖気を暖気溜り空間部に溜めることにより、外部への流出を防止できる。このため、地下空間の暖房効率が向上し、省エネルギー化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照にして説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる連絡通路3を備えた地下空間1の説明図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
地下空間1は、例えば地下街や地下鉄構内などである。地下空間1には、地上2との間を連通させる連絡通路3が設けられている。連絡通路3の地下空間1側には、暖気溜り空間部5が設けられており、地上2側には、冷気溜り空間部6が設けられている。暖気溜り空間部5は、床10、天井13および壁部を備えているが、人16の進行方向には壁が無く、開放されている。同様に、冷気溜り空間部6は、床11、天井12および壁部を備えているが、人16の進行方向には壁が無く、開放されている。
【0013】
暖気溜り空間部5は、冷気溜り空間部6よりも高い位置にある。暖気溜り空間部5の床10の高さは、地上2(地面)よりも高くなっている。冷気溜り空間部6の床11の高さは、地上2(地面)よりも低くなっている。また、冷気溜り空間部6の天井12の高さは、暖気溜り空間部5の天井13の高さよりも低くなっている。
【0014】
地下空間1と暖気溜り空間部5の間、暖気溜り空間部5と冷気溜り空間部6の間、および、冷気溜り空間部6と地上2との間には、階段15がそれぞれ設けられている。また、これら地下空間1と暖気溜り空間部5の間、暖気溜り空間部5と冷気溜り空間部6の間、および、冷気溜り空間部6と地上2との間は、いずれも連通している。このため、人16は、階段15を上り下りしながら、地下空間1から暖気溜り空間部5、冷気溜り空間部6を順に通って、地上2に出ることができる。また、人16は、階段15を上り下りしながら、地上2から冷気溜り空間部6、暖気溜り空間部5を順に通って、地下空間1に入ることができる。
【0015】
地下空間1の天井20には、地下空間1内の空気を吸い込む吸気口21と、地下空間1内に空気(暖気)を供給する給気口22が設けられている。これら吸気口21と給気口22の間は、加熱送風機23を介在させたダクト24で接続されている。加熱送風機23は例えばファンコンベクタであり、加熱送風機23には、ヒートポンプ装置25の凝縮器26との間で温水等の熱媒を循環させる配管27が接続されている。
【0016】
図2に示すように、加熱送風機23は、放熱用の熱交換器30と、送風機31を備えている。放熱用の熱交換器30には、ヒートポンプ装置25の凝縮器26で昇温させられた熱媒が、配管27を介して循環供給されている。加熱送風機23は、吸気口21から吸い込まれた地下空間1内の空気を、放熱用の熱交換器30で加熱して、送風機31の動力によって給気口22に供給する。
【0017】
図1に示すように、冷気溜り空間部6の天井12には、冷気溜り空間部6内の空気を吸い込む吸気口35が設けられており、冷気溜り空間部6の下部には、冷気溜り空間部6内に空気(冷気)を供給する給気口36が設けられている。これら吸気口35と給気口36の間は、ファンコイルユニットなどの冷却送風機37を介在させたダクト38で接続されている。冷却送風機37には、ヒートポンプ装置25の蒸発器38との間で熱媒を循環させる配管39が接続されている。給気口36は、冷気溜り空間部6内において暖気溜り空間部5寄りの位置に配置されている。冷気溜り空間部6の下部に配置されている給気口36から、地上2に出る方向に向けて空気(冷気)が供給される。また、吸気口35は、給気口36よりも地上2への出口に近い位置に配置されている。また、冷却送風機37のファン回転数を制御し、例えば給気口36からの吹き出し時点で0.6m/sec以下、または、給気口36の吹き出し面から1m離れた地点で0.2m/sec以下の低速の冷気が、冷気溜り空間部6の下部に給気されるようにする。また、この冷気供給の目的は、地下空間1の暖気のトラップ効果を高めるためであり、給気口36から吹き出す冷気の温度は、外気より若干(1℃以下)低い程度で構わない。
【0018】
図3に示すように、冷却送風機37は、吸熱用の熱交換器45と、送風機46を備えている。吸熱用の熱交換器45には、ヒートポンプ装置25の蒸発器38で降温させられた熱媒が、配管39を介して循環供給されている。冷却送風機37は、吸気口35から吸い込まれた冷気溜り空間部6内の空気を、吸熱用の熱交換器45で冷却して、送風機46の動力によって給気口36に供給する。ヒートポンプ装置25は、以上のように水等の熱媒を介して間接的に地下空間1の空気で放熱し、冷気溜り空間部6の空気で吸熱している。
【0019】
以上のように構成された地下空間1において、例えば冬期に、ヒートポンプ装置25の凝縮器26で昇温させられた熱媒が、加熱送風機23の熱交換器30に循環供給される。そして、加熱送風機23では、送風機31の動力によって、地下空間1内の空気を吸気口21から吸い込み、熱交換器30で加熱して給気口22から地下空間1内に暖気を供給する。こうして、地下空間1では暖房運転が行われる。
【0020】
なお、地下空間1内の暖房運転に伴い、ヒートポンプ装置25の蒸発器38で降温させられた熱媒が、冷却送風機37の熱交換器45に循環供給される。そして、冷却送風機37では、送風機46の動力によって、冷気溜り空間部6内の空気を天井12に設けられた吸気口35から吸い込み、熱交換器45で冷却して冷気溜り空間部6下部の給気口36から冷気を供給する。このように、天井12の吸気口35から空気を吸い込みつつ、下部の給気口36から冷気を供給することにより、冷気溜り空間部6内では、置換換気が行われる。
【0021】
一方、前述のように地下空間1内に対する暖房運転が行われたことにより、地下空間1内の暖気が上昇し、暖気溜り空間部5に移動して行く。しかしながら、暖気溜り空間部5は、冷気溜り空間部6よりも高い位置にあるため、暖気溜り空間部5に移動した密度の低い暖気は、そのまま暖気溜り空間部5に留められる。こうして、地下空間1に供給された暖気は、暖気溜り空間部5に溜められて、外部へ流出しなくなり、地下空間1内を有効に暖房運転できるようになる。
【0022】
なお、冷気溜り空間部6は、階段15を通じて地上2と連通しており、冷気溜り空間部6内には、地上2から外部の空気(冷気)が流れ込む。しかしながら、冷気溜り空間部6は、暖気溜り空間部5よりも低い位置にあるため、密度の高い冷気は冷気溜り空間部6に留められ、地下空間1内に流入できず、地下空間1内の暖房運転を妨げない。
【0023】
しかも、冷気溜り空間部6内の空気は、冷却送風機37で冷却されて、外気よりも更に低温にされる。このため、冷気溜り空間部6に留められている冷気と、暖気溜り空間部5に溜められている暖気との温度差が更に大きくなる。これにより、暖気溜り空間部5に溜められている暖気は冷気溜り空間部6に向けて下降しにくくなり、冷気溜り空間部6に留められている冷気は暖気溜り空間部5に向けて上昇しにくくなる。その結果、暖気溜り空間部5内に暖気を確実に留めることができ、地下空間1内に冷気が流入することを確実に防止できる。
【0024】
加えて、冷気溜り空間部6では、天井12の吸気口35から空気を吸い込みつつ、下部の給気口36から冷気を供給することにより、置換換気が行われる。このため、冷気溜り空間部6に留められている冷気と、暖気溜り空間部5に溜められている暖気との混合が少なく、地下空間1の暖房効率が更に向上し、省エネルギー化が図れる。
【0025】
また、このように地下空間1を有効に暖房運転した状態においても、人16は、階段15を上り下りしながら、暖気溜り空間部5と冷気溜り空間部6を通過して、地上2と地下空間1の間を容易に行き来することができる。このため、通行を妨げられない。なお、給気口36はボックス形状の置換還気チャンバに設けられ、その置換還気チャンバは、暖気溜り空間部5側を背面に、地上2側を正面にして、置換換気用の冷気が外気の進入方向と対向するように吹かれるようにする。ヒートポンプ装置25は夏季はサイクルを切り替え、放熱は、図示しない冷却塔に管路を切り替えて行い、冷却送風機37は運転を行わない。
【0026】
以上、本発明の好ましい実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0027】
例えば、冬期に地下空間1を暖房運転する例を説明したが、冬期以外の時期に地下空間1を暖房運転する場合もある。また、暖房設備のみを示したが、冷房設備を兼ね備えていても良いことはもちろんである。また、地下街や地下鉄構内の他の地下空間にも同様に適用できる。また、ヒートポンプ装置25で冷却された冷気を給気口36から冷気溜り空間部6に供給する例を説明したが、給気口36から冷気溜り空間部6に外気と同じ温度の空気を供給することもできる。その場合、例えば屋外からフィルタを介して外気を冷気溜り空間部6に送風することも考えられる。また、加熱送風機23と冷却送風機37をいずれも床置きのパッケージエアコンで構成し、冷媒配管で両者を連結することもできる。即ち、前者(加熱送風機23)を凝縮器、後者(冷却送風機37)を蒸発器としてヒートポンプを構成する。但し、暖房側に対し、冷却側は必要熱量が少ないため、他に冷熱の排熱先を設ける必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、地上と地下空間の間の連絡通路に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態にかかる連絡通路を備えた地下空間の説明図である。
【図2】加熱送風機の説明図である。
【図3】冷却送風機の説明図である。
【図4】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 地下空間
2 地上
3 連絡通路
5 暖気溜り空間部
6 冷気溜り空間部
21 吸気口
22 給気口
23 加熱送風機
25 ヒートポンプ装置
26 凝縮器
35 吸気口
36 給気口
37 冷却送風機
38 蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房される地下空間と地上との間で人を出入りさせる連絡通路であって、
前記地下空間側に暖気溜り空間部が設けられ、
前記地上側に冷気溜り空間部が設けられ、
前記暖気溜り空間部の床が、地上よりも高くなっている、地下空間に対する連絡通路。
【請求項2】
前記冷気溜り空間部の下部に給気口が設けられ、外気と同じ温度もしくは外気よりも低い温度に調整した空気が、前記給気口から前記冷気溜り空間部に供給される、請求項1に記載の地下空間に対する連絡通路。
【請求項3】
前記地下空間の空気で放熱し、前記冷気溜り空間部の空気で吸熱するヒートポンプ装置を有する、請求項1または2に記載の地下空間に対する連絡通路。
【請求項4】
前記冷気溜り空間部の下部に給気口が設けられ、前記冷気溜り空間部の上部に吸気口が設けられ、前記吸気口から吸い込まれた空気が、前記ヒートポンプ装置で吸熱され、前記給気口から前記冷気溜り空間部に供給される、請求項3に記載の地下空間に対する連絡通路。
【請求項5】
前記地下空間と前記暖気溜り空間部の間、前記暖気溜り空間部と前記冷気溜り空間部の間、および、前記冷気溜り空間部と前記地上との間は、いずれも連通している、請求項1〜4のいずれかに記載の地下空間に対する連絡通路。
【請求項6】
前記地下空間と前記暖気溜り空間部の間、前記暖気溜り空間部と前記冷気溜り空間部の間、および、前記冷気溜り空間部と前記地上との間には、階段が設けられている、請求項1〜5のいずれかに記載の地下空間に対する連絡通路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−112576(P2010−112576A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283197(P2008−283197)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】