説明

地中ドリリングピラー設置方法及びドリル機

【課題】より使い勝手がよく汎用性に富むドリル機及び方法を提供する。
【解決手段】マスト2上に可変位搭載されたキャリッジ22上に、ドリルパイプ6を回転駆動するためのドリル駆動部11が配置されており、ドリルパイプ6と連結可能なパイプバンカ30に設けた貯留部33内に充填材が貯留されており、ドリルパイプ6引抜時にこの充填材によってドリル孔を埋め地中にドリリングピラーを建立するドリル機や、これを用いてドリリングピラーを建立する方法にて、キャリッジ22に対するパイプバンカ30の軸方向位置を調整できるよう、キャリッジ22上にパイプバンカ30を搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の通り、地中にドリリングピラーを設置乃至建立するドリル機に関する。即ち、マスト、そのマスト上に可変位搭載されたキャリッジ、ドリルパイプ回転駆動用にキャリッジ上に配置されたドリル駆動部、並びにドリルパイプと連結可能なパイプバンカを備え、パイプバンカに設けた貯留部内の充填材によって、ドリルパイプ引抜時にドリル孔を埋めるドリル機に関する。
【0002】
本発明は、更に、請求項10の前提部分に記載の通り、地中にドリリングピラーを設置乃至建立する方法に関する。即ち、穿孔方向に向いマスト沿いに変位させうるようキャリッジ上に配置されているドリル駆動部により、地中にドリルパイプを螺入し、所望深度に達したらドリルパイプを後退させ、その跡にできた孔をドリルパイプ上方のパイプバンカから充填材を供給して埋める方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば特許文献1に記載のドリル機においては、複数個の部分から構成されるマルチパート型ドリルパイプの頂部に、ドリル孔を埋めるためのコンクリートを入れるパイプバンカが設けられている。このパイプバンカは回転駆動部の頂部に固定されており、その回転駆動部はキャリッジによりマスト沿いに変位させうるよう設けられている。穿孔時には、回転駆動部によってパイプバンカを軸心回転させ、その回転をパイプバンカからドリルパイプへと伝えることによってドリルパイプを軸心回転させ、それによって地面に孔を形成する。そして、ドリルパイプによって形成されたこの孔を、パイプバンカから供給されるコンクリートの注入により埋める。
【0004】
なお、ドリルパイプ上方にパイプバンカが位置するドリル機は特許文献2にも記載されている。
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1580325号明細書
【特許文献2】米国特許第5647690号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、この種のドリル機及び方法を更に改良し、より使い勝手がよく汎用性(ユニバーサリティ)に富むものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明に係るドリル機は請求項1に記載の構成を、また本発明に係る方法は請求項10に記載の構成を備える。従属形式で記載されている他の請求項には、本発明の好適な実施形態を示してある。
【0008】
本発明に係るドリル機は、キャリッジに対するパイプバンカの軸方向位置を調整できるようパイプバンカがキャリッジ上に搭載されたことを特徴とする。また、本発明に係る方法は、ドリルパイプ差込時におけるドリルパイプの地面接近方向移動をパイプバンカと一体に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るドリル機の基本的特徴は、パイプバンカのキャリッジに対する軸方向位置を調整できること、従ってパイプバンカの軸方向位置を(例えば何段階かに)変化させて固定できることである。即ち、本発明に係るドリル機によれば、回転駆動対象たるドリルパイプにドリル駆動部をトルクプルーフ連結させつつキャリッジに対するパイプバンカの軸方向位置関係を変化させることができるので、例えばパイプバンカ内に充填材を入れる際に、キャリッジに対してパイプバンカを移動させ、パイプバンカの位置を直接アクセス可能な位置にすることができる。更に、パイプバンカの軸方向位置が可調である分、差込及び引抜に際するドリルパイプの軸方向可動量が増す。
【0010】
パイプバンカとは具体的にはドリルパイプを連結可能な充填材容器のことである。本発明におけるパイプバンカの軸方向位置は、好ましくはドリルパイプの端部のうちドリルビットとは逆側の端部上とし、或いはドリルパイプの延長線上とする。なお、本願では、ドリルパイプ長尺方向、マスト沿いキャリッジ変位方向又はその双方のことを指して「軸方向」と称している。
【0011】
更に、本発明に係るドリル機には、好ましくは、キャリッジに対する軸方向位置を調整できるようパイプバンカ及びドリルパイプを搭載する。より好ましくは、パイプバンカに対する軸方向位置を変えられないようドリルパイプをパイプバンカに固定する。特に、パイプバンカ上にパイプカップリングを設けてドリルパイプをパイプバンカに着脱可能に固定するとよい。ドリルパイプは好ましくはマルチパート型の構成にする。
【0012】
また、本発明においては、ドリル駆動部、キャリッジ又はその双方に対しパイプバンカの軸方向位置を上方、ドリルパイプの少なくとも一部の軸方向位置を下方とすることによって、コンパクトな割りにドリル部可動量が大きなドリル機を得ることができる。この構成においては、一連なりになったパイプバンカとドリルパイプが、ドリル駆動部、キャリッジ又はその双方の内部を軸方向に過ぎることになる。
【0013】
更に、充填済のパイプバンカの慣性モーメントはかなり大きなものであるので、トルクプルーフな形態でパイプバンカをキャリッジ上に搭載するとなおよい。そのようにすれば、所要ドリル駆動パワーを抑えることができ、またパイプバンカへの充填がかなり簡便になる。
【0014】
逆に、ドリル機の構成を単純化し経済性を向上させたければ、パイプバンカを軸心回転可能な形態でキャリッジ上に、特にトルクプルーフな形態でドリルパイプ上方に、設ければよい。その場合、ドリル駆動部によってドリルパイプを軸心回転させるとそのドリルパイプに連結されているパイプバンカも回転する。また、このパイプバンカを簡便に充填できるようにするには、パイプバンカ内に充填材を送給する送給装置を、キャリッジ、マスト又はその双方に対してトルクプルーフな形態で配設するのが望ましい。送給装置は例えばコンクリート供給ラインと例えばチューブで連結すればよい。
【0015】
パイプバンカをキャリッジ上にトルクプルーフな形態で設けるには、例えば、ドリルパイプの軸心回転がパイプバンカに伝わらないよう両者を連結するロータリカップリングを、パイプバンカとドリルパイプの間に設ければよい。ロータリカップリングの軸方向位置は好ましくはドリル駆動部から見て上方とする。その場合のロータリカップリングは自在継ぎ手とも呼べる。
【0016】
こうしたロータリカップリングに加え又はそれに代えて、送給装置とパイプバンカの間にロータリカップリングを設けてもよい。
【0017】
本発明に係るドリル機においては、好ましくは、キャリッジ上にトルクサポートを設け、パイプバンカ内に充填材を送給する送給装置、パイプバンカ又はその双方をこのトルクサポートによってトルクプルーフ支持するようにする。
【0018】
更に好ましくは、送給装置、パイプバンカ又はその双方をトルクサポートにより軸方向変位可能に案内可能な構成とする。その場合、例えば、トルクサポートに軸方向ジブを設けてキャリッジ上に配置し、パイプバンカ、送給装置又はその双方をキャリッジ乃至スリーブガイド等によって軸方向ジブ上に支持し、軸方向ジブ等に沿って軸方向変位可能に案内する構成にするとよい。
【0019】
また、パイプバンカをキャリッジに対し軸方向変位させるため、例えば重力を作用させること、その固定先であるキャリッジを変位させること、或いはそれらを併用することも基本的に可能ではあるが、より好ましくは、パイプバンカ軸方向変位用の能動的な駆動機構を例えばキャリッジ上に設けるようにする。例えば、一方の側がパイプバンカ上に位置し他方の側がキャリッジ上に位置するようにリニアドライブを設ければよい。駆動機構の配置場所は好ましくはトルクサポート上とする。
【0020】
本発明に係るドリル機においては、好ましくはドリルパイプとパイプバンカの間に延長パイプを設け、ドリル駆動部のドライブシャフトにその延長パイプを軸方向変位可能にトルクプルーフ連結する。これを実現するには例えばスプライン/トゥース系を延長パイプに設ければよい。この延長パイプは、好ましくは回転駆動部(ドリル駆動部)を貫きキャリッジを過ぎるよう軸方向沿いに延設する。更に、この延長パイプは入れ子式構造、とりわけトルク伝達用長尺ウェブ乃至溝及び軸方向力伝達乃至供給用ロッキングポケットを有するケリーバー状にするとよい。本発明に係るドリル機においては、この延長パイプの下端にドリルパイプとの連結用のカップリング装置を設けることができる。
【0021】
また、好ましくは、ドリル駆動部のドライブシャフトを中空シャフトとし、その中空シャフトの片面上にパイプバンカが位置し他面上をドリルパイプの少なくとも一部が過ぎるようにする。より好ましくは、延長パイプ、ドリルパイプ又はその双方が中空シャフト内で軸方向変位しうるようにする。
【0022】
また、好ましくは、パイプバンカからドリルパイプに至る充填材通路を閉止可能な閉止装置を設ける。この閉止装置は例えばフラップ状とし、その配設箇所は例えばパイプバンカの下面上、延長パイプ上、ドリルパイプの頂部上、或いはそれらの任意の組合せとする。こうした閉止装置は、特にマルチパート型のドリルパイプで好適に使用できる。
【0023】
また、本発明に係る方法によれば、ドリルパイプ差込時におけるドリルパイプの地面接近方向移動をパイプバンカと一体に行うようにしたため、ドリル機における軸方向可動範囲が拡がり、従来より深さのあるドリリングピラーを従来より簡便に建立することができる。また、ドリルパイプ引抜時におけるドリルパイプの地面離隔方向即ち上方移動も、パイプバンカと一体に行うとよい。
【0024】
本発明に係る方法は本発明に係るドリル機により実施できる。そうした場合、本発明に係るドリル機について上述した各種の効果乃至利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、別紙図面を参照しつつまたその好適な実施形態により、本発明について詳細に説明する。なお、その動作が同一又は類似の構成要素には全図を通じ同一の参照符号を付してある。
【0026】
図1及び図2に本発明の第1実施形態を示す。このドリル機のシャーシ1上にはマスト2がピボット可能に配置されており、そのマスト2の前方にはキャリッジ22が設けられている。このキャリッジ22はマスト2に沿って案内されマスト2沿いに変位する。
【0027】
キャリッジ22上には、ドリル駆動部11が、キャリッジ22によってマスト2沿いに変位させうるように設けられている。このドリル駆動部11はドリルパイプ6を軸心回転させ、ひいてはマスト2と並走する変位ドリルヘッド80を軸心回転させる。ドリル駆動部11は、図示しない駆動モータを内蔵する上側駆動部材12と、この上側駆動部材12の下方に位置するギア部13とを備えており、そのギア部13の底面上には中空シャフト状のドライブシャフト19が設けられている。
【0028】
このドリルパイプ6の上端又はその延長上には延長パイプ40が連結されている。この連結は、延長パイプ40がドリルパイプ6に対し軸方向に固定され且つトルクプルーフになるようパイプカップリング18によって行われている。延長パイプ40は軸方向に沿ってドリル駆動部11を貫き、その上端はドリル駆動部11より上方に達している。こうしてドリルパイプ6から延長されドリル駆動部11より上方に達している延長パイプ40の上端には、パイプバンカ30が設けられている。このパイプバンカ30内には充填材を入れておくことができ、その充填材は延長パイプ40を介しドリル駆動部11によってドリルパイプ6内に導入することができる。
【0029】
パイプバンカ30及びその上のチューブ状延長パイプ40並びにドリルパイプ6は、軸方向に変位させうるよう、即ちドリル駆動部11及びキャリッジ22に対し矢印Aの方向に相対変位させうるよう、配置されている。図1及び図2中のパイプバンカ30は上寄りの位置にあり、従ってパイプバンカ30とドリル駆動部11との間隔は比較的拡がっているので、パイプバンカ30及びこれにつながっているドリルパイプ6をこの位置から地面接近方向即ち下方に移動させることができる。下方移動させると、ドリルパイプ6のうちドリル駆動部11及びキャリッジ22から下に出る部分が長くなる。
【0030】
また、ドリル駆動部11とこれに対して軸方向変位するドリルパイプ6との間でトルクを伝達できるよう、ドリルパイプ6にトルクプルーフ連結されている延長パイプ40の外面にはスプラインが、ドリルパイプ6の内面にはこれに対応するティースが、それぞれ設けられている。
【0031】
更に、キャリッジ22に対するパイプバンカ30及びドリルパイプ6の軸方向位置を固定するため、図示しないが、延長パイプ40を直接的又は間接的に保持する保持装置が、ドリル駆動部11上に設けられている。
【0032】
また、パイプバンカ30の下側にはロータリカップリング60が設けられている。ロータリカップリング60は、ドリルパイプ6及びこれにつながっている延長パイプ40の軸心回転がパイプバンカ30に伝わらないようにしている。
【0033】
更に、キャリッジ22上には、パイプバンカ30をキャリッジ22にトルクプルーフ連結するトルクサポート50が設けられている。このトルクサポート50は軸方向ジブ52を有している。ジブ52は、そのサイドアームのうち1本でパイプバンカ30を支えパイプバンカ30の軸方向変位を案内する。ジブ52は、更に、そのサイドアームのうち他の1本でロータリカップリング60特にその固定部を支え、トルクプルーフな形態でその軸方向変位を案内する。ジブ52は例えば入れ子式構造にすることができる。
【0034】
パイプバンカ30は略円筒状の貯留部33を有している。この貯留部33は、その下側にある円錐状のアウトレット部34によって延長パイプ40に連結されている。
【0035】
図3に、本発明に係るドリル機用のパイプバンカ30の他の構成例を示す。この図に示すパイプバンカ30の略円筒状の貯留部33の頂部には、略円錐状のカバー36が配置されている。このカバー36には何個かの充填用開口37が設けられており、これを介してパイプバンカ30内に充填材を満たすことができる。更に、カバー36の上部には何個かのリング38,38’が設けられているので、補助装置を使用してパイプバンカ30を持ち上げることができる。
【0036】
図3に示すパイプバンカ30は更に閉止装置71を備えている。閉止装置71はフラップとして構成されアウトレット部34と延長パイプ40の間に配置されているので、これを用いることによって、パイプバンカ30内から延長パイプ40内、更にはドリルパイプ6内に至る充填材の通路を閉止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る方法を実施できるドリル機を示す図である。
【図2】図1に示したドリル機、特にそのキャリッジ周辺を詳細に示す図である。
【図3】本発明のドリル機にて使用しうるまた別の構成のパイプバンカを示す図である。
【符号の説明】
【0038】
2 マスト、6 ドリルパイプ、11 ドリル駆動部、22 キャリッジ、30 パイプバンカ、33 略円筒状貯留部、40 延長パイプ、50 トルクサポート、60 ロータリカップリング、71 閉止装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マストと、
マスト上に可変位搭載されたキャリッジと、
ドリルパイプ回転駆動用にキャリッジ上に配置されたドリル駆動部と、
ドリルパイプと連結可能で且つドリルパイプ引抜時にドリル孔を埋める充填材用の貯留部を有するパイプバンカと、
を備え、地中にドリリングピラーを建立するのに使用されるドリル機において、
キャリッジに対するパイプバンカの軸方向位置を調整できるようパイプバンカがキャリッジ上に搭載されたドリル機。
【請求項2】
請求項1記載のドリル機であって、
キャリッジに対する軸方向位置を調整できるようパイプバンカ及びドリルパイプが搭載されたドリル機。
【請求項3】
請求項1記載のドリル機であって、
ドリル駆動部に対しパイプバンカの軸方向位置が上方、ドリルパイプの少なくとも一部の軸方向位置が下方であるドリル機。
【請求項4】
請求項1記載のドリル機であって、
ドリルパイプの軸心回転がパイプバンカに伝わないようパイプバンカとドリルパイプの間に設けられたロータリカップリングを備えるドリル機。
【請求項5】
請求項1記載のドリル機であって、
パイプバンカ内に充填材を送給する送給装置、パイプバンカ又はその双方をトルクプルーフ支持するようキャリッジ上に設けられたトルクサポートを備えるドリル機。
【請求項6】
請求項5記載のドリル機であって、
送給装置、パイプバンカ又はその双方がトルクサポートにより軸方向変位可能に案内されるドリル機。
【請求項7】
請求項1記載のドリル機であって、
ドリルパイプとパイプバンカの間に設けられドリル駆動部のドライブシャフトに軸方向変位可能にトルクプルーフ連結された延長パイプを備えるドリル機。
【請求項8】
請求項7記載のドリル機であって、
延長パイプが、トルク伝達用長尺溝及び軸方向力伝達用ロッキングポケットを有するケリーバーとして構成されたドリル機。
【請求項9】
請求項1記載のドリル機であって、
パイプバンカからドリルパイプに至る充填材通路を閉止可能な閉止装置を備えるドリル機。
【請求項10】
請求項1記載のドリル機を用い地中にドリリングピラーを建立する方法であって、
穿孔方向に向いマスト沿いに変位させうるようキャリッジ上に配置されているドリル駆動部により、地中にドリルパイプを螺入し、
所望深度に達したらドリルパイプを後退させ、その跡にできた孔をドリルパイプ上方のパイプバンカから充填材を供給して埋める方法において、
ドリルパイプ差込時におけるドリルパイプの地面接近方向移動をパイプバンカと一体に行う方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−291846(P2007−291846A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109994(P2007−109994)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(502407107)バウアー マシーネン ゲーエムベーハー (48)
【Fターム(参考)】