地中埋設物の検出に用いられる標識体およびこの標識体の形成方法
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、地中に埋設された水道管やガス管等の地中埋設物を地上から検出する地中埋設物の検出に用いられる標識体およびこの標識体の形成方法に関する。
[従来の技術]
従来より、地中に埋設された水道管やガス管等の地中埋設物を掘りおこすことなく、その埋設状態を地上より検出できるようにした方法およびこの方法に用いられる標識体が種々案出されている。
これまでに案出された地中埋設物の検出方法およびその方法に用いられる標識体として、以下に挙げるものがある。なお、以下に述べる地中埋設物は、水道管を例にした。
■ 水道管が埋設されていると思われる地点において、地上の任意の放射点より地中へ向けて電磁波を放射し、この電磁波の放射範囲内に存在する水道管に誘導起電力を発生させる。そして、発生した誘導起電力によって生じる誘導磁界を放射点から離れた地点で検出することによって配管の有無を探査する。
■ 水道管の埋設時に、長尺帯状の非導電性部材の一方の面にアルミ等の金属箔を設けた標識体を該水道管と地表との間に埋設する。そして、■項で述べた方法と同様の方法によって標識体を検出することによって水道管の有無を探査する。
■ 水道管の埋設時に、輪状に形成された導線の両端にコンデンサを接続し、特定の周波数に共振する共振素子(標識体)を該水道管の特定箇所(例えば、分岐点等)の近傍に埋設する。そして、標識体の共振周波数と同一の周波数を断続的に発振させて、電磁波を地中へ向けて放射する。そして、地中に存在する水道管からの反射波を受信することによって該水道管の有無を探査し、さらに、標識体が発振側の発振エネルギーを吸収し、このエネルギーによって発振する電磁波を受信することにより水道管の特定箇所の位置を探査する(特開昭60-230076号公報参照)。
■ 水道管の埋設時に、特定の周波数に共振する共振素子(標識体)を該水道管の近傍に埋設する。そして、前記標識体の共振周波数と同一の周波数の電磁波を発振させて、電磁波を地中へ向けて放射する。そして、発振エネルギーが標識体に吸収されることを検出できる検出装置を用いて、発振エネルギーが最大に吸収される地点を検出することによって水道管の位置を探査する(特開昭48-27762号公報)。
[発明が解決しようとする課題]
ところで、上述した従来の各地中埋設物検出方法にあっては次のような問題があった。
まず、■項に示す検出方法にあっては、 水道管の存在を確認した後、これの埋設方向を探査するために検出点を電磁波の放射点から遠ざけて行く必要があるが、この検出点を遠ざけて行くにしたがって、該水道管の磁気抵抗が徐々に大きくなり、逆に検出点側の検出信号のレベルは徐々に小さくなる。このため、水道管をその埋設方向に沿って探査する際に、連続して一定のレベルの検出信号が得られないので、導電性を有する異物が該水道管と地表との間に存在する場合に、この異物と水道管とを識別することが難しい。すなわち、対象物と非対象物とを正確に識別することが困難である。そこで、連続して一定のレベルの検出信号を得ることができる距離毎に放射点を移動させなければならないが、この場合、探査作業に多くの時間がかかり、作業効率が悪い。
また、検出した磁界からでは、“
”型や“+”型等の分岐点を確認することが困難である。また、検知した物が目的とする対象物であるか否かを識別することができないので、結果的には試し掘りに頼るしかない。また、水道管などの金属管以外の、例えば塩化ビニル等の非導電性部材で作製された配管(近年、塩化ビニル等の非導電性部材を用いた配管の使用が多くなっている)にあっては誘導起電力が発生しないので、この種のものを検出することができない。
次に、■項に示す検出方法にあっては、 標識体を用いるので、塩化ビニル等の非導電性部材から作製した配管でも、検出することができるが、上記■項における方法の欠点と同様に、標識体をその埋設方向に沿って探査する際に、連続して一定のレベルの検出信号が得られないことや、“
”型や“+”型等の分岐点の検出が困難であるなどの欠点を有している。
次に、■項に示す検出方法にあっては、 標識体を用いるので、水道管が導電性部材または非導電性部材のどちらかで作製されたものであっても、その存在の有無や分岐点の位置の確認ができるという利点があるが、非導電性部材により作製された水道管を、その埋設方向に沿って探査できるようにするためは、該水道管に沿って標識体を配置しなければならない。この場合、水道管をその埋設方向に沿って探査する際に、連続して一定レベルの検出信号が得られるようにするためには、標識体の配置間隔を短くする必要がある。このため、多数の標識体が必要となって価格高となる。
また、■項に示す検出方法にあっては、 上記■項に示す方法における欠点と同様の欠点を有するとともに、導電性部材により作製された水道管においても、その埋設方向に沿って探査する際に、連続して一定レベルの検出信号が得られるようにするために多数の標識体が必要となる。したがって、この場合も価格高となる。
上述したように、■〜■項に示す従来の各地中埋設物検出方法にあっては、水道管をその埋設方向に沿って探査をする際に、この水道管と他の配管および異物を正確に識別するためには、この水道管に沿って連続して一定レベルの検出信号を得なければならず、このために検出作業が繁雑になったり、設備が高価格となったりするという問題があった。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、地中に埋設されたガス管や水道管等の地中埋設物を探査する際に、目的とする地中埋設物と目的としない地中埋設物を正確に識別するために、目的とする地中埋設物に沿って連続して一定レベルの検出信号が、簡単な検出作業で得ることができるとともに、検出に要する設備を安価にすることができる地中埋設物の検出に用いられる標識体およびこの標識体の形成方法を提供することを目的としている。
[課題を解決するための手段]
上記目的を実現するために、請求項1に記載の発明にあっては、地中埋設物の近傍に埋設される標識シートと、隣接する各々が互いに近接して前記標識シート中に導電箔等によって形成された当該標識シートの長手方向に対して細長形状のアンテナと、前記複数のアンテナの各々に電磁的または電気的に接続され特定の1つの周波数にのみ共振する共振素子とから構成され、前記周波数の信号を発振させたときに前記共振素子に発振エネルギーが吸収されることを検出できる検出装置を用い、この検出装置から前記周波数を発振させて発振エネルギーが吸収される地点を探査することにより、前記地中埋設物の埋設状態が確認されることを特徴とする。
また請求項2に記載の発明にあっては、請求項1に記載の地中埋設物の検出に用いられる標識体では、前記複数の共振素子は、各々その共振周波数を違えるとによって、前記地中埋設物の有無情報、種類情報、または当該地中埋設物の位置情報を指示することを特徴とする。
また請求項3に記載の発明にあっては、特定の周波数の信号を発振させたときに共振素子に発振エネルギーが吸収されることを検出できる検出装置を用い、この検出装置から前記特定の周波数を発振させて発振エネルギーが吸収される地点を探査することにより、地中埋設物の埋設状態を確認する地中埋設物の検出に用いられる標識体の形成方法であって、前記地中埋設物の近傍に埋設される標識シート中に、各々が電磁的または電気的に接続され特定の1つの周波数にのみ共振する共振素子を有し、導電箔等によって形成された当該標識シートの長手方向に対して細長形状のアンテナを複数形成し、前記複数のアンテナは、互いに隣接する各々について前記地中埋設物の長手方向にその一部が重複する千鳥配列に配設されることを特徴とする。
[作用]
この発明によれば、アンテナを設けた標識シートに特定周波数に共振する共振素子を電磁的または電気的に接続してなる標識体を用いることにより、検出装置から前記特定周波数を発振させたときに、該共振素子は該アンテナが張り巡らされた範囲内で一定量の発振エネルギーを吸収する。すなわち、検出装置発振側にあっては、アンテナが張り巡らされた範囲内で共振素子を探査するにあたり、一定レベルの検出信号が得られる。
また、一つのアンテナに1個の共振素子を割り当てれば良いので、埋設時に標識シートに取り付ける共振素子の数が少なくて済む。
[実施例]
以下、図面を参照してこの発明の実施例について説明する。
第1図はこの発明の方法を実施するための標識体の埋設状態を示す図である。
この図において、符号Waは地中埋設物(例えば、水道管の母管)であり、この母管Waの図面中央部に同図面の左側から枝管Wbが接続されている。また、枝管Wbの図面中央部に同図面の手前側から枝管Wcが接続されている。符号Gsは前記母管Waと平行に埋設されたガス管である。2a,2bは各々長尺帯状に形成された標識シートであり、前記母管Wa,枝管Wb,Wcおよびガス管Gsと地表GLとの間に埋設されている。標識シート2aは前記枝管Wbに対して平行に配置され、標識シート2bは前記母管Waに対して平行に配置されている。これら標識シート2a,2bの上面には、銅箔、アルミニウム箔または導電性プラスチック等より形成された長円形(あるいは長方形や楕円形)ループ状アンテナAT,AT……が、部分的に重なる千鳥状に配置されている。5a,5a……は前記標識シート2a上に配置された固有素子、5b,5b……は前記標識シート2bのアンテナAT,AT……上に配置された固有素子である。6a,6bは各々任意素子であり、これらのうち、任意素子6aは枝管WbとWcとの接続部分(分岐点)および枝管Wbと母管Waとの接続部分(分岐点)各々に対応する標識シート2a,2bのアンテナAT,AT上に配置されている。また、任意素子6bは枝管Wbと母管Waとの接続部分に対応する標識シート2bのアンテナAT上に配置されている。上述した固有素子5a,5a……、5b,5b……および任意素子6a,6bの詳細は後述する。なお、標識シート2a,2bには、例えば、“水道管”の表示が付されてい。この表示を付すことにより、標識シート2a,2bまで地面を掘りおこした際に、このシート2a,2bの下には水道管があることが判る。
ここで、第2図は上記標識シート2aの平面図、第3図は同シート2aのAA線断面図である。第3図に示すように、アンテナAT,AT……は、絶縁性を有する母材3と防水材4との間に固定されている。なお、前記標識シート2bも標識シート2aと同様の構成をなしており、アンテナAT,AT……が配置された上面に固有素子5b,5b……と任意素子6a…,6bとが配置されている。
第4図に示すように、前記固有素子5aは、例えばコンデンサCaとコイルLaとが直列接続されたものである。この固有素子5aは、地中埋設物の種類を表示するものであり、その種類に応じて共振周波数が設定される。例えば、水道管の枝管の場合、共振周波数を100KHzとする。また、前記固有素子5bも固有素子5aと同様に構成されている。この場合、固有素子5bも埋設物の種類に応じて共振周波数が任意に設定される。
第1図に示す、任意素子6a,6bは各々前記固有素子5a,5bと同様に図示せぬコンデンサとコイルとから構成されている。これら任意素子6a,6bは、地中埋設物の埋設状態および隣接する他の埋設物の存在を示すものであり、その埋設状態および隣接する他の埋設物の種類に応じてあらかじめ共振周波数が任意に設定された共振素子を用いる。例えば、第1図に示すように、枝管WbとWcとの接続部BP(“
”状の分岐位置)および枝管Wbと母管Waとの接続部BP(“
”状の分岐位置)を示す場合、共振周波数を150KHzとした共振素子を用いる。
上記した標識シート2a,2bと固有素子5a,5a……、5b,5b……および任意素子6a,6bは標識体DTを構成する。
第1図に示す、7は固有素子5a,5bと任意素子6a,6bとを検出する検出装置である。
ここで、第5図に上記検出装置7の電気的構成を示すブロック図である。この図において、9は所謂デップメータと呼ばれる発振器である。周知のごとく、共振回路の近くに発振器を近づけて、該共振回路の共振周波数と同一の周波数を発振させると、発振器側の発振エネルギーが該共振回路に吸収される。この発振エネルギーが吸収されたときの周波数を求めるものがデップメータである。
上述した発振器9は、発振回路9a、アンテナコイル9bおよびスイープ回路9cを有している。前記発振回路9aは、これに内蔵された可変容量コンデンサ(図示略)の容量値と、前記アンテナコイル9bのインダクタンス値とに基づく周波数を発振するものである。この場合、発振回路9aの出力信号e0のレベルを外部より制御できるようになっている。スイープ回路9cは、発振回路9aに内蔵された前記可変容量コンデンサの容量値を所定の周期で連続的に変化させるものである。これにより、発振回路9aの出力信号e0の周波数が所定の周波数範囲(f1〜fn)で繰り返し変化する。この場合、周波数をf1〜fn範囲内で変化させたときに、アンテナコイル9bの近くに上述した固有素子5a,5bや任意素子6a,6b等の共振回路があると、各素子の共振周波数において発振器9aの発振エネルギーが吸収され、その出力信号e0のレベルが低減する。
10は装置各部の動作が正常に行なわれているか否かをチエックするチエック回路であり、異常を検出した場合にエラー信号Erを出力する。
11は判別回路であり、アナログ入力端子I1〜In、同期信号入力端子Sy、エラー信号入力端子Eiおよび出力端子O1,O2を有している。同期信号入力端子Syには前記発振回路9aから出力信号e0が供給され、エラー信号入力端子Eiには前記チエック回路10からエラー信号Erが供給されるようになっている。この場合、判別回路11は、チエック回路10から供給されるエラー信号Erが“0"となっていると、発振回路9aから供給される出力信号e0を同期信号として読み込み、この出力信号e0に基づいてアナログ入力端子I1〜Inのうちのいずれかに供給される信号を読み込む。そして、読み込んだ信号を出力端子O1を介して操作表示部12へ供給する。一方、判別回路11は、チエック回路10から供給されるエラー信号が“1"となると、異常信号Euを出力端子O2を介して操作表示部12へ供給するとともに、アナログ入力端子I1〜Inに供給される信号の読み込みを行わない。
操作表示部12は、装置各部を制御するとともに、前記判別回路11の出力端子O1を介して供給される信号に基づいて各種表示ランプの点灯を行う。また、エラー入力端子Eiを介して供給されるエラー信号が“1"となると警報を発する。
13は増幅器であり、外部より到来する電磁波によって前記アンテナコイル9bに誘起した誘導起電力を所定の電圧値まで増幅する。この増幅器13の出力がフィルタ回路F1〜Fnへ供給される。フィルタ回路F1〜Fnは、各々所定の周波数の信号のみ通過させるものである。これらフィルタ回路F1〜Fnの各出力は前記判別回路11のアナログ信号入力端子I1〜Inを介して同判別回路11へ供給される。14は電源部であり、装置各部へ電源を供給する。
このように構成された標識体DTおよ検出装置7を用いて、この発明の検出方法について第1図を参照しながら説明する。なお、この検出方法の説明において、第6図に示す波形図を適宜参照する。
なお、第5図に示す前記フィルタ回路F1〜Fnのうち、フィルタ回路F1〜F4は以下に示す周波数を通過する特性を有している。
また、固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6bの共振周波数およびその指示内容は以下のようになっている。
また、検出装置7は、以下に示す各周波数にて前記固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6bを検出すると、その周波数に対応したランプが点灯するようになっている。
さて、作業員が検出装置7を持ち、同装置7の図示せぬ電源スイッチを投入すると、同装置7のアンテナコイル9bからf1〜fn(f1≦100KHz〜200KHz≦fn)の範囲周波数が所定の周期で繰り返し放射される。そして、作業員はこのアンテナコイル9bを地面へ向けて、左右に振りながら探査を開始する。この場合、図示のように、C1地点から真下に標識シート2aが存在し、そのシート2a上に固定素子5aおよび任意素子6aが存在すると、検出装置7のランプL1,L2が順次点灯を繰り返す。すなわち、検出装置7は、100KHzの周波数を発振した時点で、この周波数にアンテナATと結合した固有素子5aが共振するので、この固有素子5aに発振エネルギーが吸収される。この結果、発振回路9aの出力信号e0の出力レベルが低減(第6図(ロ)参照)する。そして、この出力信号e0が増幅器13(第5図参照)に供給されるとともに、判別回路11の同期信号入力端子Syに供給される。増幅器13に供給された出力信号e0は所定の電圧値Eoまで増幅された後、フィルタ回路F1を通過する。この際、フィルタ回路F1を通過した出力信号Eo1は、同期信号入力端子Syに供給される出力信号e0に同期して判別回路11のアナログ信号入力端子I1を介して同回路11に読み込まれる。そして、出力信号Eo1が判別回路11に読み込まれた後、同回路11の出力端子O1を介して出力信号Eo1は、操作表示部12へ供給される。これにより、操作表示部12にてランプL1が点灯する。
また、同様に、検出装置7は、150KHzの周波数を発振した時点で、この周波数にアンテナATと結合した任意素子6aが共振するので、この任意素子6aに発振エネルギーが吸収される。この結果、発振回路9aの出力信号e0の出力レベルが低減(第6図(ハ)参照)する。そして、この出力信号e0が増幅器13に供給されるとともに、判別回路11の同期信号入力端子Syに供給される。増幅器13に供給された出力信号e0は所定の電圧値Eoまで増幅された後、フィルタ回路F2を通過する。この際、フィルタ回路F2を通過した出力信号Eo2は、同期信号入力端子Syに供給される出力信号e0に同期して判別回路11のアナログ信号入力端子I2を介して同回路11に読み込まれる。そして、出力信号Eo2が判別回路11に読み込まれた後、同回路11の出力端子O1を介して出力信号Eo2は操作表示部12へ供給される。これにより、操作表示部12にてランプL2が点灯する。
しかして、作業員はC1地点の真下に枝管(この場合、枝管Wb)があり、更に分岐点BPがあることを確認することができる。
次に、作業員は水道管の枝管Wbおよび分岐点BPを検出した後、更に、枝管Wbを検出しながら図中矢印D方向に沿って進む。この際、標識シート2aにはアンテナAT,AT……が千鳥状に連続して張り巡らされ、各アンテナに一個づつ固有素子5a,5a……が配置されているので、周波数100KHzの周波数が発振される毎に、アンテナAT……に結合した各固有素子5a,5a……に吸収される発振エネルギーは一定量となり、ランプL1は一定の発光量で発光する。しかして、作業員はランプL1の発光を確かめながら標識シート2aの埋設方向を検出することができる。
次に、作業員が図中地点C2に到達すると、同装置7のランプL2〜L4が順次点灯を繰り返す。この場合、150KHzの周波数を発振した時点でアンテナATに結合した任意素子6aが共振し、発振回路9aの入力信号e0(第6図(ハ)参照)が低減する。そして、この出力信号e0が増幅回路13によって所定の電圧値Eoまで増幅された後、フィルタ回路F2を通過し、そして判別回路11を介して操作表示部12へ供給される。これにより、操作表示部12にてランプL2が点灯する。次いで、175KHzの周波数を発振した時点でアンテナATに結合した任意素子6cが共振し、発振回路9aの出力信号e0(第6図(ニ)参照)が低減する。そして、上述した場合と同様に、出力信号e0が増幅器13、フィルタ回路F3、判別回路11を経て操作表示部12へ供給される。これにより、操作表示部12にてランプL3が点灯する。次いで、200KHzの周波数を発振した時点でアンテナに結合した固有素子5bが共振し、発振器9aの出力信号e0(第6図(ホ)参照)が低減する。そして、上述した場合と同様に、出力信号e0が増幅器13、フィルタ回路F4および判別回路11を経て操作表示部12へ供給される。これにより、操作表示部12にてランプL4が点灯する。しかして、作業員は地点C2の真下に母管Wa、分岐点BPおよび隣接するガス管Gsが存在することが確認される。
次に、作業員は水道管の母管Wa、分岐点BPおよび隣接するガス管Gsを検出した後、今度は母管Waを検出しながら、これに沿って進む。この際、標識シート2bにはアンテナAT,AT……が千鳥状に連続して張り巡らされ、各アンテナに一個づつ固有素子5b,5b……が配置されているので、200KHzの周波数が発振される毎に、アンテナATに結合した各固有素子5b,5b……に吸収される発振エネルギーは一定量となり、ランプL4は一定の発光量で発光する。しかして、作業員はランプL4の発光を確かめながら標識シート2bの埋設方向を検出することができる。
以後、作業員は掘起こす予定の範囲内において、上記した検知手順により、地中内の水道管その他の配管等の埋設状態を確認する。
このように、アンテナAT,AT……を設けた標識シート2a,2bに固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6bを該アンテナAT,AT……と電磁的に接続してなる標識体DTを用いることにより、前記固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6bの各共振周波数を発振させたときに、該アンテナAT,AT……が張り巡らされた範囲内で各素子5a.5b,6aおよび6b各々に一定の発振エネルギーが吸収される。すなわち、発振装置7側にあっては、該アンテナAT,AT……が張り巡らされた範囲内で一定の検出信号レベルで前記各素子5a,5b,6aおよび6bを検出することができる。
また、一つのアンテナATに少なくとも一個(分岐点や、隣接する他の配管が存在する地点では、固有素子と任意素子を一つのアンテナに配置する場合があるので)の固有素子または任意素子を配置するので、標識シート2a,2bに配置する各素子の数を多く必要としない。
なお、上記実施例において、標識シート2a,2bに設けたアンテナAT,AT……の形状をループ状にして千鳥状に配置したが、これらを第7図(イ)に示すように、棒状に形成して千鳥状に配置させたり、同図(ロ)に示すように、ループ状に形成して直列に配置させたり、同図(ハ)に示すように、棒状に形成して直列に配置させたりしても良い。
また、上記実施例において、アンテナAT,AT……と固有素子5a,5bおよびアンテナAT,AT……と任意素子6a,6bとの接続を電磁的に行ったが、これを第8図に示すように、アンテナATにコイオルLとコンデンサCを直結しても良い。また、標識シート内にコイルLとコンデンサCを埋め込んでアンテナに接続するようにしても良い。
また、上記実施例において、固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6b各々を構成するコイル内にフェライトコアを挿入することにより、インダクタンスを増加させることができ、回路のQ(共振の鋭さ)を大きくすることができる。この結果、周波数に対する選択性が良くなる。すなわち、共振周波数が近接した固有素子または任意素子を使用することができる。また、固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6bの各々を、コンデンサとコイルとから構成する他に水晶発振子等を用いても良い。この場合、第9図に示すように、水晶発振子Xは、その等価回路がコイルLd,コンデンサCdおよび抵抗Rdの直列共振回路に電極間静電容量Ceが並列に入ったものとなっている。すなわち、上述した固有素子5aと同様の機能を有する。
また、標識シート内にあらかじめアンテナと通常多く埋設されている例えば、水道管を識別するために設定した共振周波数を有する固有素子を設けておいて、水道管の埋設されている配管の上方にこの標識シートを布設し、さらに施工中に水道管の分岐する位置またはこの水道管の近傍に既にガス管が埋設されている時はこのガス管をも識別するために任意素子を水道管の標識シートと電磁的または電気的に接続するように埋設すると、固有素子と任意素子の組合せによって、埋設配管の分岐位置や埋設配管の種類の検出が容易に行える。さらに、標識シート内に設けた固有素子の他に別途用意した任意素子をも組合せて用いることによって、現場施工も簡易である。固有素子と任意素子の組合せによって、検出できる埋設物の情報量は各々共振周波数が異る固有素子と任意素子の合計数をn個とすると2n−1となり、少ない素子で多量の情報量を得ることができる。
[発明の効果]
以上説明したようにこの発明によれば、アンテナを設けた標識シートに特定周波数に共振する共振素子を電磁的または電気的に接続してなる標識体を用いることにより、検出装置から前記特定周波数を発振させたときに、該共振素子は該アンテナが張り巡らされた範囲内で一定量の発振エネルギーを吸収する。すなわち、検出装置にあっては、アンテナが張り巡らされた範囲内で共振素子を探査するにあたり、一定レベルの検出信号が得られる。したがって、地中に埋設されたガス管や水道管等の地中埋設物を、その埋設方向に沿って連続して探査する際に、探査する埋設物と非対象物とを正確に識別できる。
また、一つのアンテナに1個の共振素子を割り当てれば良いので、埋設時に標識シートに取り付ける共振素子の数が少なくて済む。したがって、設備が安価になる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の方法の一実施例を説明するための図、
第2図は同実施例に適用される標識シートを示す平面図、
第3図は第2図のAA線断面図、
第4図は前記実施例に適用される共振素子の電気的構成を示す図、
第5図は前記実施例に適用される検出装置の電気的構成を示すブロック図、
第6図は前記検出装置の動作を説明するための波形図、
第7図は前記標識シートの他の応用例を示す平面図、
第8図は前記標識シートと前記共振素子との電気的接続を示す図、
第9図は前記共振素子の他の応用例を示す図である。
2a,2b……標識シート、5a,5b……固有素子、6a,6b……任意素子(5a,5b,6aおよび6bは各々共振素子)、AT,AT……アンテナ(2a,2b,5a,5b,6a,6bおよびアンテナAT,AT……は標識体DTを構成する)、7……検出装置。
[産業上の利用分野]
この発明は、地中に埋設された水道管やガス管等の地中埋設物を地上から検出する地中埋設物の検出に用いられる標識体およびこの標識体の形成方法に関する。
[従来の技術]
従来より、地中に埋設された水道管やガス管等の地中埋設物を掘りおこすことなく、その埋設状態を地上より検出できるようにした方法およびこの方法に用いられる標識体が種々案出されている。
これまでに案出された地中埋設物の検出方法およびその方法に用いられる標識体として、以下に挙げるものがある。なお、以下に述べる地中埋設物は、水道管を例にした。
[発明が解決しようとする課題]
ところで、上述した従来の各地中埋設物検出方法にあっては次のような問題があった。
まず、
また、検出した磁界からでは、“
”型や“+”型等の分岐点を確認することが困難である。また、検知した物が目的とする対象物であるか否かを識別することができないので、結果的には試し掘りに頼るしかない。また、水道管などの金属管以外の、例えば塩化ビニル等の非導電性部材で作製された配管(近年、塩化ビニル等の非導電性部材を用いた配管の使用が多くなっている)にあっては誘導起電力が発生しないので、この種のものを検出することができない。
次に、
”型や“+”型等の分岐点の検出が困難であるなどの欠点を有している。
次に、
また、
上述したように、
この発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、地中に埋設されたガス管や水道管等の地中埋設物を探査する際に、目的とする地中埋設物と目的としない地中埋設物を正確に識別するために、目的とする地中埋設物に沿って連続して一定レベルの検出信号が、簡単な検出作業で得ることができるとともに、検出に要する設備を安価にすることができる地中埋設物の検出に用いられる標識体およびこの標識体の形成方法を提供することを目的としている。
[課題を解決するための手段]
上記目的を実現するために、請求項1に記載の発明にあっては、地中埋設物の近傍に埋設される標識シートと、隣接する各々が互いに近接して前記標識シート中に導電箔等によって形成された当該標識シートの長手方向に対して細長形状のアンテナと、前記複数のアンテナの各々に電磁的または電気的に接続され特定の1つの周波数にのみ共振する共振素子とから構成され、前記周波数の信号を発振させたときに前記共振素子に発振エネルギーが吸収されることを検出できる検出装置を用い、この検出装置から前記周波数を発振させて発振エネルギーが吸収される地点を探査することにより、前記地中埋設物の埋設状態が確認されることを特徴とする。
また請求項2に記載の発明にあっては、請求項1に記載の地中埋設物の検出に用いられる標識体では、前記複数の共振素子は、各々その共振周波数を違えるとによって、前記地中埋設物の有無情報、種類情報、または当該地中埋設物の位置情報を指示することを特徴とする。
また請求項3に記載の発明にあっては、特定の周波数の信号を発振させたときに共振素子に発振エネルギーが吸収されることを検出できる検出装置を用い、この検出装置から前記特定の周波数を発振させて発振エネルギーが吸収される地点を探査することにより、地中埋設物の埋設状態を確認する地中埋設物の検出に用いられる標識体の形成方法であって、前記地中埋設物の近傍に埋設される標識シート中に、各々が電磁的または電気的に接続され特定の1つの周波数にのみ共振する共振素子を有し、導電箔等によって形成された当該標識シートの長手方向に対して細長形状のアンテナを複数形成し、前記複数のアンテナは、互いに隣接する各々について前記地中埋設物の長手方向にその一部が重複する千鳥配列に配設されることを特徴とする。
[作用]
この発明によれば、アンテナを設けた標識シートに特定周波数に共振する共振素子を電磁的または電気的に接続してなる標識体を用いることにより、検出装置から前記特定周波数を発振させたときに、該共振素子は該アンテナが張り巡らされた範囲内で一定量の発振エネルギーを吸収する。すなわち、検出装置発振側にあっては、アンテナが張り巡らされた範囲内で共振素子を探査するにあたり、一定レベルの検出信号が得られる。
また、一つのアンテナに1個の共振素子を割り当てれば良いので、埋設時に標識シートに取り付ける共振素子の数が少なくて済む。
[実施例]
以下、図面を参照してこの発明の実施例について説明する。
第1図はこの発明の方法を実施するための標識体の埋設状態を示す図である。
この図において、符号Waは地中埋設物(例えば、水道管の母管)であり、この母管Waの図面中央部に同図面の左側から枝管Wbが接続されている。また、枝管Wbの図面中央部に同図面の手前側から枝管Wcが接続されている。符号Gsは前記母管Waと平行に埋設されたガス管である。2a,2bは各々長尺帯状に形成された標識シートであり、前記母管Wa,枝管Wb,Wcおよびガス管Gsと地表GLとの間に埋設されている。標識シート2aは前記枝管Wbに対して平行に配置され、標識シート2bは前記母管Waに対して平行に配置されている。これら標識シート2a,2bの上面には、銅箔、アルミニウム箔または導電性プラスチック等より形成された長円形(あるいは長方形や楕円形)ループ状アンテナAT,AT……が、部分的に重なる千鳥状に配置されている。5a,5a……は前記標識シート2a上に配置された固有素子、5b,5b……は前記標識シート2bのアンテナAT,AT……上に配置された固有素子である。6a,6bは各々任意素子であり、これらのうち、任意素子6aは枝管WbとWcとの接続部分(分岐点)および枝管Wbと母管Waとの接続部分(分岐点)各々に対応する標識シート2a,2bのアンテナAT,AT上に配置されている。また、任意素子6bは枝管Wbと母管Waとの接続部分に対応する標識シート2bのアンテナAT上に配置されている。上述した固有素子5a,5a……、5b,5b……および任意素子6a,6bの詳細は後述する。なお、標識シート2a,2bには、例えば、“水道管”の表示が付されてい。この表示を付すことにより、標識シート2a,2bまで地面を掘りおこした際に、このシート2a,2bの下には水道管があることが判る。
ここで、第2図は上記標識シート2aの平面図、第3図は同シート2aのAA線断面図である。第3図に示すように、アンテナAT,AT……は、絶縁性を有する母材3と防水材4との間に固定されている。なお、前記標識シート2bも標識シート2aと同様の構成をなしており、アンテナAT,AT……が配置された上面に固有素子5b,5b……と任意素子6a…,6bとが配置されている。
第4図に示すように、前記固有素子5aは、例えばコンデンサCaとコイルLaとが直列接続されたものである。この固有素子5aは、地中埋設物の種類を表示するものであり、その種類に応じて共振周波数が設定される。例えば、水道管の枝管の場合、共振周波数を100KHzとする。また、前記固有素子5bも固有素子5aと同様に構成されている。この場合、固有素子5bも埋設物の種類に応じて共振周波数が任意に設定される。
第1図に示す、任意素子6a,6bは各々前記固有素子5a,5bと同様に図示せぬコンデンサとコイルとから構成されている。これら任意素子6a,6bは、地中埋設物の埋設状態および隣接する他の埋設物の存在を示すものであり、その埋設状態および隣接する他の埋設物の種類に応じてあらかじめ共振周波数が任意に設定された共振素子を用いる。例えば、第1図に示すように、枝管WbとWcとの接続部BP(“
”状の分岐位置)および枝管Wbと母管Waとの接続部BP(“
”状の分岐位置)を示す場合、共振周波数を150KHzとした共振素子を用いる。
上記した標識シート2a,2bと固有素子5a,5a……、5b,5b……および任意素子6a,6bは標識体DTを構成する。
第1図に示す、7は固有素子5a,5bと任意素子6a,6bとを検出する検出装置である。
ここで、第5図に上記検出装置7の電気的構成を示すブロック図である。この図において、9は所謂デップメータと呼ばれる発振器である。周知のごとく、共振回路の近くに発振器を近づけて、該共振回路の共振周波数と同一の周波数を発振させると、発振器側の発振エネルギーが該共振回路に吸収される。この発振エネルギーが吸収されたときの周波数を求めるものがデップメータである。
上述した発振器9は、発振回路9a、アンテナコイル9bおよびスイープ回路9cを有している。前記発振回路9aは、これに内蔵された可変容量コンデンサ(図示略)の容量値と、前記アンテナコイル9bのインダクタンス値とに基づく周波数を発振するものである。この場合、発振回路9aの出力信号e0のレベルを外部より制御できるようになっている。スイープ回路9cは、発振回路9aに内蔵された前記可変容量コンデンサの容量値を所定の周期で連続的に変化させるものである。これにより、発振回路9aの出力信号e0の周波数が所定の周波数範囲(f1〜fn)で繰り返し変化する。この場合、周波数をf1〜fn範囲内で変化させたときに、アンテナコイル9bの近くに上述した固有素子5a,5bや任意素子6a,6b等の共振回路があると、各素子の共振周波数において発振器9aの発振エネルギーが吸収され、その出力信号e0のレベルが低減する。
10は装置各部の動作が正常に行なわれているか否かをチエックするチエック回路であり、異常を検出した場合にエラー信号Erを出力する。
11は判別回路であり、アナログ入力端子I1〜In、同期信号入力端子Sy、エラー信号入力端子Eiおよび出力端子O1,O2を有している。同期信号入力端子Syには前記発振回路9aから出力信号e0が供給され、エラー信号入力端子Eiには前記チエック回路10からエラー信号Erが供給されるようになっている。この場合、判別回路11は、チエック回路10から供給されるエラー信号Erが“0"となっていると、発振回路9aから供給される出力信号e0を同期信号として読み込み、この出力信号e0に基づいてアナログ入力端子I1〜Inのうちのいずれかに供給される信号を読み込む。そして、読み込んだ信号を出力端子O1を介して操作表示部12へ供給する。一方、判別回路11は、チエック回路10から供給されるエラー信号が“1"となると、異常信号Euを出力端子O2を介して操作表示部12へ供給するとともに、アナログ入力端子I1〜Inに供給される信号の読み込みを行わない。
操作表示部12は、装置各部を制御するとともに、前記判別回路11の出力端子O1を介して供給される信号に基づいて各種表示ランプの点灯を行う。また、エラー入力端子Eiを介して供給されるエラー信号が“1"となると警報を発する。
13は増幅器であり、外部より到来する電磁波によって前記アンテナコイル9bに誘起した誘導起電力を所定の電圧値まで増幅する。この増幅器13の出力がフィルタ回路F1〜Fnへ供給される。フィルタ回路F1〜Fnは、各々所定の周波数の信号のみ通過させるものである。これらフィルタ回路F1〜Fnの各出力は前記判別回路11のアナログ信号入力端子I1〜Inを介して同判別回路11へ供給される。14は電源部であり、装置各部へ電源を供給する。
このように構成された標識体DTおよ検出装置7を用いて、この発明の検出方法について第1図を参照しながら説明する。なお、この検出方法の説明において、第6図に示す波形図を適宜参照する。
なお、第5図に示す前記フィルタ回路F1〜Fnのうち、フィルタ回路F1〜F4は以下に示す周波数を通過する特性を有している。
また、固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6bの共振周波数およびその指示内容は以下のようになっている。
また、検出装置7は、以下に示す各周波数にて前記固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6bを検出すると、その周波数に対応したランプが点灯するようになっている。
さて、作業員が検出装置7を持ち、同装置7の図示せぬ電源スイッチを投入すると、同装置7のアンテナコイル9bからf1〜fn(f1≦100KHz〜200KHz≦fn)の範囲周波数が所定の周期で繰り返し放射される。そして、作業員はこのアンテナコイル9bを地面へ向けて、左右に振りながら探査を開始する。この場合、図示のように、C1地点から真下に標識シート2aが存在し、そのシート2a上に固定素子5aおよび任意素子6aが存在すると、検出装置7のランプL1,L2が順次点灯を繰り返す。すなわち、検出装置7は、100KHzの周波数を発振した時点で、この周波数にアンテナATと結合した固有素子5aが共振するので、この固有素子5aに発振エネルギーが吸収される。この結果、発振回路9aの出力信号e0の出力レベルが低減(第6図(ロ)参照)する。そして、この出力信号e0が増幅器13(第5図参照)に供給されるとともに、判別回路11の同期信号入力端子Syに供給される。増幅器13に供給された出力信号e0は所定の電圧値Eoまで増幅された後、フィルタ回路F1を通過する。この際、フィルタ回路F1を通過した出力信号Eo1は、同期信号入力端子Syに供給される出力信号e0に同期して判別回路11のアナログ信号入力端子I1を介して同回路11に読み込まれる。そして、出力信号Eo1が判別回路11に読み込まれた後、同回路11の出力端子O1を介して出力信号Eo1は、操作表示部12へ供給される。これにより、操作表示部12にてランプL1が点灯する。
また、同様に、検出装置7は、150KHzの周波数を発振した時点で、この周波数にアンテナATと結合した任意素子6aが共振するので、この任意素子6aに発振エネルギーが吸収される。この結果、発振回路9aの出力信号e0の出力レベルが低減(第6図(ハ)参照)する。そして、この出力信号e0が増幅器13に供給されるとともに、判別回路11の同期信号入力端子Syに供給される。増幅器13に供給された出力信号e0は所定の電圧値Eoまで増幅された後、フィルタ回路F2を通過する。この際、フィルタ回路F2を通過した出力信号Eo2は、同期信号入力端子Syに供給される出力信号e0に同期して判別回路11のアナログ信号入力端子I2を介して同回路11に読み込まれる。そして、出力信号Eo2が判別回路11に読み込まれた後、同回路11の出力端子O1を介して出力信号Eo2は操作表示部12へ供給される。これにより、操作表示部12にてランプL2が点灯する。
しかして、作業員はC1地点の真下に枝管(この場合、枝管Wb)があり、更に分岐点BPがあることを確認することができる。
次に、作業員は水道管の枝管Wbおよび分岐点BPを検出した後、更に、枝管Wbを検出しながら図中矢印D方向に沿って進む。この際、標識シート2aにはアンテナAT,AT……が千鳥状に連続して張り巡らされ、各アンテナに一個づつ固有素子5a,5a……が配置されているので、周波数100KHzの周波数が発振される毎に、アンテナAT……に結合した各固有素子5a,5a……に吸収される発振エネルギーは一定量となり、ランプL1は一定の発光量で発光する。しかして、作業員はランプL1の発光を確かめながら標識シート2aの埋設方向を検出することができる。
次に、作業員が図中地点C2に到達すると、同装置7のランプL2〜L4が順次点灯を繰り返す。この場合、150KHzの周波数を発振した時点でアンテナATに結合した任意素子6aが共振し、発振回路9aの入力信号e0(第6図(ハ)参照)が低減する。そして、この出力信号e0が増幅回路13によって所定の電圧値Eoまで増幅された後、フィルタ回路F2を通過し、そして判別回路11を介して操作表示部12へ供給される。これにより、操作表示部12にてランプL2が点灯する。次いで、175KHzの周波数を発振した時点でアンテナATに結合した任意素子6cが共振し、発振回路9aの出力信号e0(第6図(ニ)参照)が低減する。そして、上述した場合と同様に、出力信号e0が増幅器13、フィルタ回路F3、判別回路11を経て操作表示部12へ供給される。これにより、操作表示部12にてランプL3が点灯する。次いで、200KHzの周波数を発振した時点でアンテナに結合した固有素子5bが共振し、発振器9aの出力信号e0(第6図(ホ)参照)が低減する。そして、上述した場合と同様に、出力信号e0が増幅器13、フィルタ回路F4および判別回路11を経て操作表示部12へ供給される。これにより、操作表示部12にてランプL4が点灯する。しかして、作業員は地点C2の真下に母管Wa、分岐点BPおよび隣接するガス管Gsが存在することが確認される。
次に、作業員は水道管の母管Wa、分岐点BPおよび隣接するガス管Gsを検出した後、今度は母管Waを検出しながら、これに沿って進む。この際、標識シート2bにはアンテナAT,AT……が千鳥状に連続して張り巡らされ、各アンテナに一個づつ固有素子5b,5b……が配置されているので、200KHzの周波数が発振される毎に、アンテナATに結合した各固有素子5b,5b……に吸収される発振エネルギーは一定量となり、ランプL4は一定の発光量で発光する。しかして、作業員はランプL4の発光を確かめながら標識シート2bの埋設方向を検出することができる。
以後、作業員は掘起こす予定の範囲内において、上記した検知手順により、地中内の水道管その他の配管等の埋設状態を確認する。
このように、アンテナAT,AT……を設けた標識シート2a,2bに固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6bを該アンテナAT,AT……と電磁的に接続してなる標識体DTを用いることにより、前記固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6bの各共振周波数を発振させたときに、該アンテナAT,AT……が張り巡らされた範囲内で各素子5a.5b,6aおよび6b各々に一定の発振エネルギーが吸収される。すなわち、発振装置7側にあっては、該アンテナAT,AT……が張り巡らされた範囲内で一定の検出信号レベルで前記各素子5a,5b,6aおよび6bを検出することができる。
また、一つのアンテナATに少なくとも一個(分岐点や、隣接する他の配管が存在する地点では、固有素子と任意素子を一つのアンテナに配置する場合があるので)の固有素子または任意素子を配置するので、標識シート2a,2bに配置する各素子の数を多く必要としない。
なお、上記実施例において、標識シート2a,2bに設けたアンテナAT,AT……の形状をループ状にして千鳥状に配置したが、これらを第7図(イ)に示すように、棒状に形成して千鳥状に配置させたり、同図(ロ)に示すように、ループ状に形成して直列に配置させたり、同図(ハ)に示すように、棒状に形成して直列に配置させたりしても良い。
また、上記実施例において、アンテナAT,AT……と固有素子5a,5bおよびアンテナAT,AT……と任意素子6a,6bとの接続を電磁的に行ったが、これを第8図に示すように、アンテナATにコイオルLとコンデンサCを直結しても良い。また、標識シート内にコイルLとコンデンサCを埋め込んでアンテナに接続するようにしても良い。
また、上記実施例において、固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6b各々を構成するコイル内にフェライトコアを挿入することにより、インダクタンスを増加させることができ、回路のQ(共振の鋭さ)を大きくすることができる。この結果、周波数に対する選択性が良くなる。すなわち、共振周波数が近接した固有素子または任意素子を使用することができる。また、固有素子5a,5bおよび任意素子6a,6bの各々を、コンデンサとコイルとから構成する他に水晶発振子等を用いても良い。この場合、第9図に示すように、水晶発振子Xは、その等価回路がコイルLd,コンデンサCdおよび抵抗Rdの直列共振回路に電極間静電容量Ceが並列に入ったものとなっている。すなわち、上述した固有素子5aと同様の機能を有する。
また、標識シート内にあらかじめアンテナと通常多く埋設されている例えば、水道管を識別するために設定した共振周波数を有する固有素子を設けておいて、水道管の埋設されている配管の上方にこの標識シートを布設し、さらに施工中に水道管の分岐する位置またはこの水道管の近傍に既にガス管が埋設されている時はこのガス管をも識別するために任意素子を水道管の標識シートと電磁的または電気的に接続するように埋設すると、固有素子と任意素子の組合せによって、埋設配管の分岐位置や埋設配管の種類の検出が容易に行える。さらに、標識シート内に設けた固有素子の他に別途用意した任意素子をも組合せて用いることによって、現場施工も簡易である。固有素子と任意素子の組合せによって、検出できる埋設物の情報量は各々共振周波数が異る固有素子と任意素子の合計数をn個とすると2n−1となり、少ない素子で多量の情報量を得ることができる。
[発明の効果]
以上説明したようにこの発明によれば、アンテナを設けた標識シートに特定周波数に共振する共振素子を電磁的または電気的に接続してなる標識体を用いることにより、検出装置から前記特定周波数を発振させたときに、該共振素子は該アンテナが張り巡らされた範囲内で一定量の発振エネルギーを吸収する。すなわち、検出装置にあっては、アンテナが張り巡らされた範囲内で共振素子を探査するにあたり、一定レベルの検出信号が得られる。したがって、地中に埋設されたガス管や水道管等の地中埋設物を、その埋設方向に沿って連続して探査する際に、探査する埋設物と非対象物とを正確に識別できる。
また、一つのアンテナに1個の共振素子を割り当てれば良いので、埋設時に標識シートに取り付ける共振素子の数が少なくて済む。したがって、設備が安価になる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の方法の一実施例を説明するための図、
第2図は同実施例に適用される標識シートを示す平面図、
第3図は第2図のAA線断面図、
第4図は前記実施例に適用される共振素子の電気的構成を示す図、
第5図は前記実施例に適用される検出装置の電気的構成を示すブロック図、
第6図は前記検出装置の動作を説明するための波形図、
第7図は前記標識シートの他の応用例を示す平面図、
第8図は前記標識シートと前記共振素子との電気的接続を示す図、
第9図は前記共振素子の他の応用例を示す図である。
2a,2b……標識シート、5a,5b……固有素子、6a,6b……任意素子(5a,5b,6aおよび6bは各々共振素子)、AT,AT……アンテナ(2a,2b,5a,5b,6a,6bおよびアンテナAT,AT……は標識体DTを構成する)、7……検出装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】地中埋設物の近傍に埋設される標識シートと、隣接する各々が互いに近接して前記標識シート中に導電箔等によって形成された当該標識シートの長手方向に対して細長形状のアンテナと、前記複数のアンテナの各々に電磁的または電気的に接続され特定の1つの周波数にのみ共振する共振素子とから構成され、前記周波数の信号を発振させたときに前記共振素子に発振エネルギーが吸収されることを検出できる検出装置を用い、この検出装置から前記周波数を発振させて発振エネルギーが吸収される地点を探査することにより、前記地中埋設物の埋設状態が確認されることを特徴とする地中埋設物の検出に用いられる標識体。
【請求項2】前記複数の共振素子は、各々その共振周波数を違えることによって、前記地中埋設物の有無情報、種類情報、または当該地中埋設物の位置情報を指示することを特徴とする請求項1に記載の地中埋設物の検出に用いられる標識体。
【請求項3】特定の周波数の信号を発振させたときに共振素子に発振エネルギーが吸収されることを検出できる検出装置を用い、この検出装置から前記特定の周波数を発振させて発振エネルギーが吸収される地点を探査することにより、地中埋設物の埋設状態を確認する地中埋設物の検出に用いられる標識体の形成方法であって、前記地中埋設物の近傍に埋設される標識シート中に、各々が電磁的または電気的に接続され特定の1つの周波数にのみ共振する共振素子を有し、導電箔等によって形成された当該標識シートの長手方向に対して細長形状のアンテナを複数形成し、前記複数のアンテナは、互いに隣接する各々について前記地中埋設物の長手方向にその一部が重複する千鳥配列に配設されることを特徴とする地中埋設物の検出に用いられる標識体の形成方法。
【請求項1】地中埋設物の近傍に埋設される標識シートと、隣接する各々が互いに近接して前記標識シート中に導電箔等によって形成された当該標識シートの長手方向に対して細長形状のアンテナと、前記複数のアンテナの各々に電磁的または電気的に接続され特定の1つの周波数にのみ共振する共振素子とから構成され、前記周波数の信号を発振させたときに前記共振素子に発振エネルギーが吸収されることを検出できる検出装置を用い、この検出装置から前記周波数を発振させて発振エネルギーが吸収される地点を探査することにより、前記地中埋設物の埋設状態が確認されることを特徴とする地中埋設物の検出に用いられる標識体。
【請求項2】前記複数の共振素子は、各々その共振周波数を違えることによって、前記地中埋設物の有無情報、種類情報、または当該地中埋設物の位置情報を指示することを特徴とする請求項1に記載の地中埋設物の検出に用いられる標識体。
【請求項3】特定の周波数の信号を発振させたときに共振素子に発振エネルギーが吸収されることを検出できる検出装置を用い、この検出装置から前記特定の周波数を発振させて発振エネルギーが吸収される地点を探査することにより、地中埋設物の埋設状態を確認する地中埋設物の検出に用いられる標識体の形成方法であって、前記地中埋設物の近傍に埋設される標識シート中に、各々が電磁的または電気的に接続され特定の1つの周波数にのみ共振する共振素子を有し、導電箔等によって形成された当該標識シートの長手方向に対して細長形状のアンテナを複数形成し、前記複数のアンテナは、互いに隣接する各々について前記地中埋設物の長手方向にその一部が重複する千鳥配列に配設されることを特徴とする地中埋設物の検出に用いられる標識体の形成方法。
【第1図】
【第2図】
【第3図】
【第4図】
【第8図】
【第9図】
【第5図】
【第7図】
【第6図】
【第2図】
【第3図】
【第4図】
【第8図】
【第9図】
【第5図】
【第7図】
【第6図】
【特許番号】第2597381号
【登録日】平成9年(1997)1月9日
【発行日】平成9年(1997)4月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−79047
【出願日】昭和63年(1988)3月31日
【公開番号】特開平1−250888
【公開日】平成1年(1989)10月5日
【出願人】(999999999)昭和電工株式会社
【出願人】(999999999)平成ポリマー株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭64−38686(JP,A)
【文献】特開 昭63−66484(JP,A)
【文献】特開 昭63−10300(JP,A)
【文献】特開 昭59−43212(JP,A)
【文献】特開 昭48−27762(JP,A)
【登録日】平成9年(1997)1月9日
【発行日】平成9年(1997)4月2日
【国際特許分類】
【出願日】昭和63年(1988)3月31日
【公開番号】特開平1−250888
【公開日】平成1年(1989)10月5日
【出願人】(999999999)昭和電工株式会社
【出願人】(999999999)平成ポリマー株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭64−38686(JP,A)
【文献】特開 昭63−66484(JP,A)
【文献】特開 昭63−10300(JP,A)
【文献】特開 昭59−43212(JP,A)
【文献】特開 昭48−27762(JP,A)
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