説明

地中熱ヒートポンプシステム

【課題】メンテナンス性の良い地中熱ヒートポンプシステムを提供する。
【解決手段】地中熱を熱源として利用する地中熱ヒートポンプ装置1と、地盤中に埋設され内部に熱媒を流通させる複数の地中熱交換パイプ5と、地盤中に埋設され地中熱交換パイプ5のうち隣り合う地中熱交換パイプ5同士、または地中熱交換パイプ5と地中熱ヒートポンプ装置1とを接続し、内部に熱媒を流通させる横引きパイプ7とを備えた地中熱ヒートポンプシステムにおいて、地盤中に埋設され上面が地表に向かって開口したU字溝11と、U字溝11の開口を覆うU字溝蓋12とを設け、U字溝11とU字溝蓋12は、U字溝11にU字溝蓋12を取り付けた状態で、U字溝蓋12の上面が地表に対して略平坦になるように設置され、U字溝11とU字溝蓋12との間に形成される内部空間H内に、地中熱交換パイプ5と横引きパイプ7との接続部9、および横引きパイプ7を配設するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、年間を通じて温度が比較的安定している地中熱をヒートポンプ装置を介して空調等に利用する地中熱ヒートポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のものにおいては、熱媒体が流通する熱媒体管が収容され地盤に埋設される複数の熱交換用埋設管と、複数の熱交換用埋設管相互の熱媒体管または熱媒体管と熱交換装置とを接続すると共に地盤に埋設される横主管と、熱媒体管と横主管とを接続する部位で一方が地盤に埋設され、他方が地表面に開口し得る縦メンテナンス管とを有し、横主管が地盤に埋設配置された横メンテナンス管に収容されると共に、熱媒体管と横主管が着脱可能に接続され、それを脱離することで熱交換用埋設管に収容された熱媒体管および横メンテナンス管に収容された横主管を縦メンテナンス管を利用して、熱媒体管および横主管を容易に交換することができるものがあった。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4318516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来のものにおいては、施工作業の際に横主管を横メンテナンス管に格納する時に破損させたことに気付かずにそのまま施工してしまった、または横主管が経年劣化等により破損してしまった場合、修理業者は横主管を修理または交換する時に、横主管の破損箇所は縦メンテナンス管からは確認できず、いちいち熱媒体管と横主管とを脱離して縦メンテナンス管から横主管を引き出して破損しているか否かを確認し、その作業を破損した箇所が確認されるまで繰り返さなければならず面倒であり、また、引き出す前は破損のなかった横主管も引き出す時に傷つける可能性があると共に、再び熱媒体管と接続するために横主管を横メンテナンス管に戻す時にも傷つける可能性があり、メンテナンス性が悪いという問題点を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決するためにその構成を、地盤中の地中熱を熱源として利用する地中熱ヒートポンプ装置と、地盤中に鉛直方向に埋設され内部に熱媒を流通させる複数の地中熱交換パイプと、地盤中に埋設され、前記地中熱交換パイプのうち隣り合う前記地中熱交換パイプ同士、または前記地中熱交換パイプと前記地中熱ヒートポンプ装置とを接続し、内部に熱媒を流通させる横引きパイプとを備えた地中熱ヒートポンプシステムにおいて、地盤中に埋設され上面が地表に向かって開口したU字溝と、該U字溝の開口を覆うU字溝蓋とを設け、前記U字溝および前記U字溝蓋は、前記U字溝に前記U字溝蓋を取り付けた状態で、前記U字溝蓋の上面が地表に対して略平坦になるように設置され、さらに、前記U字溝と前記U字溝蓋との間に形成される内部空間内に、前記地中熱交換パイプと前記横引きパイプとの接続部、および前記横引きパイプを配設するものとした。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、メンテナンスを行う際に、U字溝蓋を取り外すだけで、接続部および横引きパイプを確認でき、地中熱交換パイプまたは横引きパイプをメンテナンスあるいは交換する作業を容易に行うことができ、さらに、何らかの原因により横引きパイプに破損が生じ、破損した横引きパイプを修理もしくは交換する場合は、U字溝蓋を取り外して破損箇所を確認し、破損が生じている横引きパイプだけを取り替えることが可能となりメンテナンス性が良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の一実施形態の地中熱ヒートポンプシステムの平面図。
【図2】同一実施形態の地中熱ヒートポンプシステムの断面図。
【図3】同一実施形態の要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、この発明の一実施形態の地中熱ヒートポンプシステムを図面に基づき説明する。
1は地盤中の地中熱をヒートポンプ装置の熱源として空調等に利用する地中熱ヒートポンプ装置、2は地中熱ヒートポンプ装置1を載置する土台で、家屋3の敷地内の地盤中には所定の深さで鉛直方向に埋設された地中熱鋼管杭4が互いに所定間隔開けて複数設けられている。
【0009】
前記地中熱鋼管杭4内には、地中熱ヒートポンプ装置1から循環される熱媒としての不凍液を流通させるU字状の架橋ポリエチレンパイプからなる地中熱交換パイプ5が鉛直方向に挿設され、地中熱鋼管杭4と地中熱交換パイプ5との間隙には、熱伝導を促すための珪砂や水等のグラウト材6が充填されており、地盤中の地中熱と地中熱交換パイプ5内の熱媒との間で熱の授受が効率良く行われるものである。
【0010】
7は地盤中に水平方向に埋設され、地中熱鋼管杭4内に挿設された地中熱交換パイプ5のうち隣り合う地中熱交換パイプ5同士、または地中熱交換パイプ5と地中熱ヒートポンプ装置1とを接続し、内部に熱媒を流通させる架橋ポリエチレンパイプよりなる横引きパイプ、8は横引きパイプ7外周を覆う断熱用の保温材、9は地中熱交換パイプ5と横引きパイプ7との接続部に設けられ、地中熱交換パイプ5と横引きパイプ7とを連通させる継手で、地中熱交換パイプ5と横引きパイプ7と継手9とで、地中熱ヒートポンプ装置1に熱媒を循環させる地中熱循環回路10を構成するものである。なお、図1中の矢印は地中熱循環回路10を循環する熱媒の流れ方向を示すものである。
【0011】
11は地表に対して略水平方向に地盤中に埋設され上面が地表に向かって開口したコンクリート製の複数のU字溝、12はU字溝11の開口を覆い、取り外し可能なコンクリート製の複数のU字溝蓋で、U字溝11にU字溝蓋12を取り付けた状態で、U字溝11とU字溝蓋12との間に中空の内部空間Hを形成するものであり、U字溝11は一方が地盤中に埋設され、他方が地表に開口しており、U字溝蓋12の上面が地表に対して凹凸がなく略平坦になるように設置されるものである。
【0012】
前記U字溝11の底面には、地中熱鋼管杭4が干渉しないように切り欠き部が設けられており、具体的に説明すると、前記U字溝11の一端側または両端側の底面に、ハツリ加工が施されて三角状に切削されたハツリ部13が設けられ、図1または図3に示されるように、複数のU字溝11を設置した時に、隣り合うU字溝11の端部を突き合わせてハツリ部13同士で形成される菱形状の切り欠きの中に地中熱鋼管杭4の上部が配置されているものであり、地中熱鋼管杭4とハツリ部13との間はモルタル14で埋めるものである。なお、ハツリ部13は地中熱鋼管杭4と干渉しない程度の大きさで、地中熱鋼管杭4と干渉しない形状であれば三角状でなくてもよく、例えば半円状であってもよい。
【0013】
また、前記U字溝蓋12の一端側には、U字溝蓋12を取り外す際に手をかける箇所となる内方に窪ませた持ち手部15が設けられており、持ち手部15は本実施形態のようにU字溝蓋12の一端側だけでなく、両端側に設けられていてもよいものである。
【0014】
ここで、地中熱鋼管杭4の上端部は、ハツリ部13を設けたU字溝11の底面よりも鉛直方向において上方に存在し、内部空間H内に突出しており、内部空間H内には、地中熱鋼管杭4の上端部よりも上方に地中熱交換パイプ5と横引きパイプ7との接続部である継手9と横引きパイプ7が配設されているものであり、この内部空間H内で地中熱交換パイプ5と横引きパイプ7とが継手9により着脱可能に接続されるものである。
【0015】
16は地中熱ヒートポンプ装置1から最も遠い位置に埋設された終端のU字溝11に連結され内部に集水空間を有する集水桝、17は集水桝蓋であり、U字溝11およびU字溝蓋12と同様に、集水桝16はその全てが地盤中に埋設され、集水桝蓋17の上面が地表に対して凹凸がなく平坦になるように施工されるものである。
【0016】
前記集水桝16は、その一側壁に終端のU字溝11の内部空間Hと集水桝16の集水空間とを連通する流入口18が設けられていると共に、集水桝16の集水空間に集められた水を地盤中に流出させる開口端としての流出口19が集水桝16下端に設けられているものであり、各U字溝11に集水桝16に向かうような下り勾配をつけて接続しておけば、U字溝11内に雨水が流れ込んできたとしても、雨水は集水枡16に集水され、地盤中に排出されるものである。
【0017】
次に、熱媒を循環させる地中熱交換パイプ5および横引きパイプ7や継手9のメンテナンスを行う場合について説明すると、まず、U字溝11の上面開口を覆うU字溝蓋12を取り外して、継手9によって接続された地中熱交換パイプ5および横引きパイプ7の接続を外し、地中熱交換パイプ5および横引きパイプ7を取り出してメンテナンスまたは交換を行うものである。なお、グラウト材6が水以外の珪砂等の場合は、地中熱交換パイプ5は取り出さず、横引きパイプ7と継手9がメンテナンスの対象となるものである。
【0018】
メンテナンスを終了した後は、地中熱鋼管杭4に地中熱交換パイプ5を挿入し、内部空間H内に横引きパイプ7を配設し、内部空間H内で地中熱交換パイプ5および横引きパイプ7を継手9で接続する接続作業を行い、U字溝11の上面開口を覆うようにU字溝蓋12を取り付けて作業を完了するものである。
【0019】
このように、メンテナンスを行う際は、U字溝蓋12を取り外すだけで、地中熱交換パイプ5および横引きパイプ7の接続部である継手9および横引きパイプ7を確認でき、地中熱交換パイプ5および横引きパイプ7をメンテナンスまたは交換する作業を容易に行うことができるものである。
【0020】
また、経年劣化や何らかの原因により横引きパイプ7に破損が生じ、熱媒漏れが疑われるエラーが地中熱ヒートポンプ装置1に発生して、修理業者が破損した横引きパイプ7を修理もしくは交換する場合は、U字溝蓋12を取り外して破損箇所を確認し、破損が生じている横引きパイプ7だけを簡単に取り替えることができるので、メンテナンス性がよいものである。
【0021】
また、本実施形態において、地中熱交換パイプ5と横引きパイプ7との接続部および横引きパイプ7を内部に収納させるものとしてU字溝11を用いたことで、一般に市販されているU字溝を使用でき、さらに施工に際して特別な技術を要することなく取り扱えるので、コストが安価で且つ均一な品質での施工を行うことができるものである。
【0022】
なお、本発明は、先に説明した一実施形態に限定されるものでなく、本実施形態では、地中熱交換パイプ5を地中熱鋼管杭4内に挿設し、地中熱交換パイプ5の周囲にグラウト材6を充填するようにしたが、ボーリング等により所定の深さに掘削した孔を互いに所定間隔を開けて複数設けて、その孔内に、直接、地中熱交換パイプ5を挿設し、地中熱交換パイプ5の周囲に、掘削した土を埋め戻す、または珪砂等のグラウト材6を充填するようにしてもよいものであり、上記のように、地中熱交換パイプ5を直接地盤中に埋設した場合、U字溝11底面のハツリ部13は、地中熱交換パイプ5が干渉しない程度に切り欠かれていればよいものである。
【符号の説明】
【0023】
1 地中熱ヒートポンプ装置
5 地中熱交換パイプ
7 横引きパイプ
9 継手
11 U字溝
12 U字溝蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中の地中熱を熱源として利用する地中熱ヒートポンプ装置と、地盤中に鉛直方向に埋設され内部に熱媒を流通させる複数の地中熱交換パイプと、地盤中に埋設され、前記地中熱交換パイプのうち隣り合う前記地中熱交換パイプ同士、または前記地中熱交換パイプと前記地中熱ヒートポンプ装置とを接続し、内部に熱媒を流通させる横引きパイプとを備えた地中熱ヒートポンプシステムにおいて、地盤中に埋設され上面が地表に向かって開口したU字溝と、該U字溝の開口を覆うU字溝蓋とを設け、前記U字溝および前記U字溝蓋は、前記U字溝に前記U字溝蓋を取り付けた状態で、前記U字溝蓋の上面が地表に対して略平坦になるように設置され、さらに、前記U字溝と前記U字溝蓋との間に形成される内部空間内に、前記地中熱交換パイプと前記横引きパイプとの接続部、および前記横引きパイプを配設するようにしたことを特徴とする地中熱ヒートポンプシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−169473(P2011−169473A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30805(P2010−30805)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)