説明

地中線事故区間判定装置

【課題】 単心ケーブルによる地中送電線の地絡事故区間を正確に判定する。
【解決手段】 電力ケーブルの一方の終端部近傍において各相に取り付けた変流器群1aと、それらの残留回路電流を被測定電流とする第1の光電流センサ5aと、もう一方の終端部において各相に取り付けた変流器群1bと、それらの残留回路電流を被測定電流とする第2の光電流センサ5bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線における事故区間の検出装置に関する。特に、架空線区間と地中線区間が混在する送電線における地中線区間の事故を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線は、架空送電線と地中送電線とに分けられる。架空送電線は、鉄塔・木柱・コンクリート柱などに電線を敷設し、電力を空中搬送するものである。一方、地中送電線は洞道などに電力ケーブルを敷設し、電力を地中搬送するもである。架空送電線においては雷、鳥獣、風雨、設備の劣化などの要因によって、地中送電線においては人的ミス・設備の劣化などの要因による送電設備の絶縁破壊によって、送電線事故が発生する。
このような送電線事故が発生した時には、事故点の早期発見による設備の早期復旧が要求されるが、送電線設備は長距離に亘って敷設されていることから、事故点の発見は容易でないことが多い。特に、地中送電線では、電力ケーブルが地中に敷設されているため、事故点の発見がよりいっそう困難になることが多い。
そこで、送電設備に各種センサを取り付け、送電線のどの区間で事故が発生したかを瞬時に判定する送電線事故区間の判定装置が実用化されている。
【0003】
地中送電線の電力ケーブル終端部に光電流センサを取り付け、これらの光電流センサで検出した電流情報を用いて地中送電線区間内の地絡事故を検出する装置として、例えば「電気学会論文誌B,112巻10号、光ZCTの開発と66kV地中分岐送電線路事故区間判別への応用」P885に図4に示すような地中線事故区間判定装置が示されている。
図4において、21は架空送電線31と接続された地中送電線の電力ケーブルである。5a,5bは、架空送電線との接続部近傍で電力ケーブル21を3相一括して周回するように取り付けた光電流センサであって、ファラデー効果を利用して取り付け点に流れる零相電流により発生する磁界の大きさに依存した光強度に、入射光を変換して出力する。
3aは光電流センサ5aに入力するための光信号を発する光源である。4aは光源3aが発する光信号を光電流センサ5aまで伝送する光ファイバである。6aは光電流センサ5aが出力する光信号を光電変換器7aに伝送する光ファイバである。7aは光ファイバ6aを経由して受光した前記第1の光電流センサの光信号出力を光電変換し、所定の交流電圧信号を出力する光電変換器である。
これにより、光電流センサ5aで検出した零相電流を交流電圧信号として出力することができる。
3bは光電流センサ5bに入力するための光信号を発する光源である。4bは光源3bが発する光信号を光電流センサ5bまで伝送する光ファイバである。6bは光電流センサ5bが出力する光信号を光電変換器7bに伝送する光ファイバである。7bは光ファイバ6bを経由して受光した前記第2の光電流センサの光信号出力を光電変換し、所定の交流電圧信号を出力する光電変換器である。
これにより、光電流センサ5bで検出した零相電流を交流電圧信号として出力することができる。
8は光電変換器7a,7bからの交流電圧信号、即ち、光電流センサ5a,5bで検出した零相電流の大きさや位相などを用いて、光電流センサ5aと光電流センサ5bとで挟まれた地中線区間の地絡事故の有無を判定する判定部である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置では、地中線区間の両端に光電流センサを取り付ける必要がある。77kV以下で使用されているトリプレックス形CVケーブルや154kV以下で使用されている3心形OFケーブルの場合は、ケーブル径が数10センチ程度であるため、数10センチ程度の小口径の光電流センサで電力ケーブルを3相一括で周回することが可能である。一方、154kVや275kV系統で使用されている単心形のOFケーブルやCVケーブルでは架空送電線と地上分岐方式で接続するような場合、各相のケーブル間隔が154kV系統では約3m、275kV系統では約5mと絶縁階級に応じて非常に大きく、3相を一括する光電流センサは前者では約6m、後者では約10mもの非常に大口径にする必要がある。しかし、これを製作するのは技術的にも経済的にも困難である。したがって、従来装置はトリップレックス形CVケーブルや3心OFケーブルが敷設されている地中送電線にのみ適用でき、単心ケーブルが敷設されている154kV系統や275kV系統の地中送電線には適用できない問題があった。
この問題への回避策として、小口径の光電流センサを各相に取り付け、光ファイバを経由して各相毎に判定部側に伝送し、光電変換した後、3相加算して零相電流を検出する方法が考えられるが、光電流センサや光ファイバ伝送路、光電変換器が各相毎に必要になり、高コストになる問題がある。
また、従来装置では1回線毎に地中線区間の両端に設置する1組の光電流センサとそれに対応する光ファイバ伝送路が必要なため、複数回線に適用する場合には回線毎にそれぞれ光電流センサや光ファイバ伝送路が必要になり、高コストになることも課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明の地中線事故区間判定装置では、地中送電線の一方の終端部近傍に取り付けた第1の変流器と、前記第1の変流器の残留回路に流れる電流を被測定電流とする第1の光電流センサと、前記第1の光電流センサに入力するための光信号を発生させる第1の光源と、前記第1の光源が発した光信号を前記第1の光電流センサに伝送するための第1の光ファイバと、前記第1の光電流センサから出力される光信号を伝送するための第2の光ファイバと、前記第2の光ファイバを経由して受光した前記第1の光電流センサの光信号出力を光電変換し、所定の交流電圧信号を出力する第1の光電変換器と、前記地中送電線のもう一方の終端部近傍に取り付けた第2の変流器と、前記第2の変流器の残留回路に流れる電流を被測定電流とする第2の光電流センサと、前記第2の光電流センサに入力するための光信号を発生させる第2の光源と、前記第2の光源が発した光信号を前記第2の光電流センサに伝送するための第3の光ファイバと、前記第2の光電流センサから出力される光信号を伝送するための第4の光ファイバと、前記第4の光ファイバを経由して受光した前記第2の光電流センサの光信号出力を光電変換し、所定の交流電圧信号を出力する第2の光電変換器と、前記第1の光電変換器の出力と前記第2の光電変換器の出力とから地中送電線部分に発生した地絡事故を検出する判定部とを備える。
【0006】
請求項2の発明の地中線事故区間判定装置では、請求項1記載の地中線事故区間判定装置において、前記第1の変流器の残留回路を複数回周回させて入力することにより、被測定電流とする第1の光電流センサと、前記第2の変流器群の残留回路を複数回周回させて入力することにより、被測定電流とする第2の光電流センサとを備える。
【0007】
請求項3の発明の地中線事故区間判定装置では、請求項1記載または請求項2記載の地中線事故区間判定装置において、複数の地中送電線の一方の終端部近傍でそれぞれの地中送電線に取り付けた前記第1の変流器群と、前記第1の変流器群のそれぞれの残留回路群を一括して周回することにより、被測定電流とする第1の光電流センサと、前記複数の地中送電線のもう一方の終端部近傍でそれぞれの地中送電線に取り付けた前記第2の変流器群と、前記第2の変流器群のそれぞれの残留回路群を一括して周回することにより、被測定電流とする第2の光電流センサとを備える。
【発明の効果】
【0008】
上記のように、この発明によれば相間間隔の広い単心ケーブルの地中送電線路に対して、安価に、且つ高精度に地絡事故区間を検出することができる。
また、2回線以上の複数の地中送電線路に対しても、1回線分の光電流センサと光ファイバ伝送路で地絡事故区間の検出が実用上の問題が無く可能となり、コストメリットの高い装置が構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下3つの実施例を請求項と比較して説明する。
【実施例】
【0010】
図1は請求項1の発明の地中線事故区間判定装置を1回線の地中送電線に適用した場合の実施の形態の一例である。
図1において、21は架空送電線31と接続された地中送電線の電力ケーブルである。1aは、地中送電線21の終端部近傍に取り付けた計器用変流器であり、2次側はスター接続して残留回路を構成している。1bは、地中送電線21のもう一方の終端部に取り付けた計器用変流器であり、2次側はスター接続して残留回路を構成している。5aは、計器用変流器1aの残留回路を周回して取り付けた光電流センサである。5bは、計器用変流器1bの残留回路を周回して取り付けた光電流センサである。光電流センサ5a,5bはファラデー効果を利用して入射光を取り付け点に流れる零相電流により発生する磁界の大きさに依存した光強度に変換して出力する。
3aは光電流センサ5aに入力するための光信号を発する光源である。4aは光源3aが発する光信号を光電流センサ5aまで伝送する光ファイバである。6aは光電流センサ5aが出力する光信号を光電変換器7aに伝送する光ファイバである。7aは光ファイバ6aを経由して受光した光電流センサの光信号出力を所定の交流電圧信号に変換する光電変換器である。
これにより、光電流センサ5aで検出した計器用変流器1aの残留回路に流れる零相電流を所定の交流電圧信号として出力することができる。
3bは光電流センサ5bに入力するための光信号を発する光源である。4bは光源3bが発する光信号を光電流センサ5bまで伝送する光ファイバである。6bは光電流センサ5bが出力する光信号を光電変換器7bに伝送する光ファイバである。7bは光ファイバ6bを経由して受光した光電流センサ5bの光信号出力を所定の交流電圧信号に変換する光電変換器である。
これにより、光電流センサ5bで検出した計器用変流器1bの残留回路に流れる零相電流を所定の交流電圧信号として出力することができる。
8は光電変換器7a,7bからの交流電圧信号、即ち、光電流センサ5a,5bで検出した零相電流情報を用いて、光電流センサ5aと光電流センサ5bとで挟まれた地中線区間の地絡事故の有無を判定する判定部である。
【0011】
地中送電線に流れる事故電流(零相電流)を、地中送電線に取り付けた計器用変成器の2次側残留回路に流れる電流として光電流センサで検出する構成としたため、単心ケーブルが大きな相間間隔で敷設されている地中送電線にも小口径の光電流センサを用いて故障区間判定が可能になる。
【0012】
図2は請求項2の発明の地中線事故区間判定装置を1回線の地中送電線に適用した場合の実施の形態の一例である。
図2において、5aは、計器用変流器1aの残留回路を複数回周回させて入力することにより、零相電流による発生磁界を増幅させて光電流センサの被測定電流とする光電流センサである。同様に、5bは、計器用変流器1bの残留回路を複数回周回させて入力することになり、零相電流による発生磁界を増幅させて光電流センサの被測定電流とする光電流センサである。
また、他の構成は図1と同様に構成されているので、同一部分については同一符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0013】
請求項1の発明の地中線事故区間判定装置は、単心ケーブルに計器用変流器を取り付け、その2次側の残留回路電流を光電流センサの被測定対象とすることより、単心ケーブルを広い相間間隔で敷設した地中送電線においても事故区間判定を可能にしたものである。しかし、系統側の事故電流(零相電流)に比べて計器用変流器の2次側の残留回路電流は変流比の逆数倍に縮小されるため、光電流センサは非常に小さな電流を高精度に測定する必要がある。例えば、変流比が400/5の計器用変流器を用いる場合では、400Aの事故電流は残留回路では5Aとなるので、光電流センサは5A程度の小さな電流を測定する必要がある。請求項2の発明は、この問題を解決するものであり、残留回路電流を複数回周回させることにより発生磁界を増幅して光電流センサの被測定電流とすることで、低電流に対しても高精度な電流測定を可能にするものである。
また、この周回数を変流比に応じて変えることが可能であり、変流比の異なった計器用変流器に対しても共通の光電流センサで対応できる。
【0014】
図3は請求項3の発明の地中線事故区間判定装置を2回線の地中送電線に適用
した場合の実施の形態の一例である。
図3において、21は第1の架空送電線31に接続された第1の地中送電線である。22は、第2の架空送電線32に接続された第2の地中送電線である。
1aは第1の地中送電線21の一方の終端部近傍に取り付けた第1の計器用変流器である。1bは第1の地中送電線21のもう一方の終端部近傍に取り付けた第2の計器用変流器である。2aは第2の地中送電線22の一方の終端部近傍に取り付けた第3の計器用変流器である。2bは第2の地中送電線22のもう一方の終端部近傍に取り付けた第4の計器用変流器である。
5aは、第1の計器用変流器1aの残留回路と第3の計器用変流器2aの残留回路を一括して周回することにより、第1の計器用変流器1aの残留回路に流れる電流と第3の計器用変流器2aの残留回路に流れる電流とのベクトル加算電流を被測定電流とする第1の光電流センサである。
5bは、第2の計器用変流器1bの残留回路と第4の計器用変流器2bの残留回路を一括して周回することにより、第2の計器用変流器1bの残留回路に流れる電流と第4の計器用変流器2bの残留回路に流れる電流とのベクトル加算電流を被測定電流とする第2の光電流センサである。
【0015】
光電流センサ5aのように計器用変流器1a,2aのそれぞれの残留回路を一括して周回して被測定電流とすることは、計器用変流器1aの残留回路に流れる電流によって発生する磁界と計器用変流器2aの残留回路に流れる電流によって発生する磁界とを磁気加算した磁界でファラデー効果を作用させるものである。 これによって、計器用変流器1aの残留回路電流と計器用変流器2aの残留回路電流のベクトル合成電流、即ち、第1の地中送電線21に流れる零相電流と第2の地中送電線22に流れる零相電流のベクトル合成電流を1台の光電流センサで検出することができるようになる。一方、零相電流は健全時には殆ど流れていないことと、地中送電線の地絡事故が2回線同時に発生することが非常に希であることを考慮すると、ベクトル合成電流を検出することにより、2回線の地中送電線のいずれで発生した地絡事故においても、その時の零相電流を1台の光電流センサで検出できるようになる。即ち、2回線分の地中送電線の事故検出を行うためには、従来装置では2台が必要であったが、請求項3の発明によれば1台で可能になる。更に、複数回線の地絡電流をベクトル加算して1台の光電流センサで検出することも可能であり、複数の地中送電線に発生する地絡事故を1台の装置で故障区間検出できるため、コストメリットの非常に高い装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】請求項1の発明の地中線事故区間判定装置の実施の形態の一例を示す説明図である。
【図2】請求項2の発明の地中線事故区間判定装置の実施の形態の一例を示す説明図である。
【図3】請求項3の発明の地中線事故区間判定装置の実施の形態の一例を示す説明図である。
【図4】従来の地中線事故区間判定装置の説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1a,1b,2a,2b 計器用変流器
3a,3b 発光部
4a,4b,6a,6b 光ファイバ
5a,5b 光電流センサ
7a,7b 光電変換器
8 判定部
9 出力
10 電源
11 判定装置
21,22 地中送電線
31,32 架空送電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中送電線の一方の終端部近傍に取り付けた第1の変流器と、
前記第1の変流器の残留回路に流れる電流を被測定電流とする第1の光電流センサと、
前記第1の光電流センサに入力するための光信号を発生させる第1の光源と、
前記第1の光源が発した光信号を前記第1の光電流センサに伝送するための第1の光ファイバと、
前記第1の光電流センサから出力される光信号を伝送するための第2の光ファイバと、
前記第2の光ファイバを経由して受光した前記第1の光電流センサの光信号出力を光電変換し、所定の交流電圧信号を出力する第1の光電変換器と、
前記地中送電線のもう一方の終端部近傍に取り付けた第2の変流器と、
前記第2の変流器の残留回路に流れる電流を被測定電流とする第2の光電流センサと、
前記第2の光電流センサに入力するための光信号を発生させる第2の光源と、
前記第2の光源が発した光信号を前記第2の光電流センサに伝送するための第3の光ファイバと、
前記第2の光電流センサから出力される光信号を伝送するための第4の光ファイバと、
前記第4の光ファイバを経由して受光した前記第2の光電流センサの光信号出力を光電変換し、所定の交流電圧信号を出力する第2の光電変換器と、
前記第1の光電変換器の出力と前記第2の光電変換器の出力とから地中送電線部分に発生した地絡事故を検出する判定部と、
を備えたことを特徴とする地中線事故区間判定装置。
【請求項2】
請求項1記載の地中線事故区間判定装置において、
前記第1の変流器の残留回路を複数回周回させて入力することにより、被測定電流とする第1の光電流センサと、
前記第2の変流器群の残留回路を複数回周回させて入力することにより、被測定電流とする第2の光電流センサと、
を備えたことを特徴とする地中線事故区間判定装置。
【請求項3】
請求項1記載および請求項2記載の地中線事故区間判定装置において、
複数の地中送電線の一方の終端部近傍でそれぞれの地中送電線に取り付けた前記第1の変流器群と、
前記第1の変流器群のそれぞれの残留回路群を一括して周回することにより、被測定電流とする第1の光電流センサと、
前記複数の地中送電線のもう一方の終端部近傍でそれぞれの地中送電線に取り付けた前記第2の変流器群と、
前記第2の変流器群のそれぞれの残留回路群を一括して周回することにより、被測定電流とする第2の光電流センサと、
を備えたことを特徴とする地中線事故区間判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−50696(P2006−50696A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225040(P2004−225040)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】