説明

地図データ生成装置および地図データ生成方法

【課題】対象システムの機能の追加・変更等によって対象システムに供給する地図データのフォーマットが変更になったとしても、新フォーマットによる地図データを効率よく作成できること。
【解決手段】地図データ提供業者から提供される地図データフォーマットをもとにデータ項目単位に地図データを作成するメソッドを保存するスクリプト記述部保存手段と、メソッドIDと、地図データのデータ項目の配列順に次データ項目IDとを関連付けて保存するフォーマット記述部保存手段と、フォーマット記述部保存手段から次データ項目IDで指定される順にデータ項目を抽出し、対応するメソッドIDを抽出するフォーマット記述部実行手段と、このメソッドIDをもとにスクリプト記述部保存手段からメソッドを抽出して実行し、実行結果を順に出力するスクリプト記述部実行手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データ提供業者から提供される地図データフォーマット(Geographic Data Format)のデータ(以下、「GDFデータ」という。)から、ナビゲーションシステムなど特定用途の対象システムに供給するためのオブジェクト(以下、「地図データ」という。)を効率よく生成することのできる地図データ生成装置および地図データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図データ提供業者から提供されるGDFデータから対象システムに供給するために所定の形式にコンパイルして地図データが生成されている。
【0003】
以下、図面を参照しながら従来の地図データ生成方法について説明する。
図20は、従来の地図データ生成方法を実現するための装置(地図データ生成装置)99のブロック図である。
【0004】
ここで、地図データ生成装置99は、キーボード、マウスなどの入力装置10、ディスプレイなどの出力装置20、CPUを有する演算装置30、および、ハードディスクなどの記憶装置40を有する汎用のコンピュータシステムで構成される。なお外部からのデータの入出力には、DVD装置や通信ネットワークを介した外部サーバ等が用いられる場合があり、この場合は入力装置と出力装置を兼ねる場合もある。記憶装置40の設定ファイル44は、一般のINIファイルと同様に、処理するGDFデータに関する情報と地図データ生成手段32の処理に必要な情報等を定義したテキストデータである。
【0005】
上記の構成を有する地図データ生成装置99は、入力装置10からテキスト形式のデータであるGDFデータが入力されると、GDFデータ入力手段31によって、線形状データ、領域形状データなど、所定の地図要素が抽出され、記憶装置40のGDFデータファイル41(以下、単にGDFデータ41ともいう。)にバイナリ形式で保存される。そして、コンパイラとして機能する地図データ作成手段32が、入力装置10からの起動要求あるいは処理順序を定義したバッチファイルによって起動されると、設定ファイル44とGDFデータ41をもとに対象システムごとの出力形式で地図データファイル42(以下、単に地図データ42ともいう。)を作成する。作成された地図データ42は出力処理手段33によって、DVD装置などの出力装置20へ出力される。各手段31〜33は、CPUの機能としてプログラムによって実現される。
【0006】
図21にGDFデータ41のデータ構成例を示す。これらのデータはISO14825:2004によって標準化されているものの、特許文献2で指摘されているように、データ形式などは地図データ提供業者によって異なる場合がある。
【0007】
地図データ提供業者から提供されるGDFデータは、対象システムごとに異なる地図データとして生成され、夫々の対象システムに供給される。地図データ42は、地域ごとに必要な地図要素(たとえば、道路や通行規制などの情報)を持たせるのが通常である。
【0008】
地図データ作成手段32の地図データ生成処理の一般的な処理手順は次の如くである。地図データ生成手段32は起動されると、GDFデータ41から地図データの生成に必要な情報を収集して、地域ごとに予め定められたアルゴリズムに基づいて出力対象の地図データのレコードデータに変換して、地図データファイル42へ出力する。
【0009】
従来は、地図データの項目追加などフォーマット変更の必要が生じると、その都度、地図データ生成手段32のソースプログラムを修正していた。このとき、GDFデータ41と地図データとは必ずしも1対1に対応するものではないので、修正ミスが発生する可能性がある。このため、プログラム設計者は、フォーマット変更に際して、常に地図データ生成手段32のソースプログラム全体を入念に調べてソースプログラムを修正し、修正したソースプログラムをコンパイルして実行プログラムを生成して、当該プログラムを演算装置30へロードして地図データ生成手段32として機能させる必要があった。
【0010】
また、プログラム設計者は、出力結果ファイルが正しく出力されたかを確認するために、バイナリデータを確認することになるが、通常、地図データファイル42の各レコードは何万〜何十万個、場合によってはそれ以上存在する。このため、地図データフォーマット変更時のプログラム設計者の負担は大きかった。
【0011】
なお、フォーマットの変更としては、不要となったレコードまたは項目を削除するという場合もあるが、基本的には上記と同様に地図データ作成手段32のプログラム全体を解析して、慎重に修正する必要がある。
【0012】
以上の如く、従来は対象システムへ供給するための地図データのフォーマットに変更があった場合、地図データ作成手段32として機能するプログラムを都度改造しなければならず、ソースコードの変更及び追加に対する既存ロジックの影響範囲が広く作業量が多く、バグの発生する可能性が大きいという問題があった。また、既存ロジックの再利用性が低く、既存システムの設計担当者以外の担当者ではフォーマット変更への対応が困難である、といった問題があった。
【0013】
これに対して、従来、地図データ提供業者から提供されるGDFデータのフォーマット変更時の作業負担を軽減するための提案、あるいは、システムのハードウェア構成やOS等に依存しないような地図データの生成方法についての提案がなされている。
【0014】
たとえば、特許文献1では、記録媒体に地図元データとペアでAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)に対応したメソッドを記録しておき、このメソッドを用いて地図元データを読み出すことが記載されている。
【0015】
しかし、特許文献1の技術を用いたとしても、対象システムへ供給するための地図データのフォーマットに変更があった場合は、メソッドの内容を調査して新しいフォーマット形式で出力するように変更しなければならずその作業負担の軽減が望まれる。
【0016】
また、特許文献2は、GDFデータにおいて、記憶媒体である電子地図格納手段のメッシュ毎に管理された各ユニットに追加データを格納するための空き容量を設けておくことが記載されている。しかし、空き領域を設けておいても、実際にデータが追加になった場合、GDFデータから地図データを生成してその空き領域に格納仕様に基づいて所定の値を書き込むために地図データ作成手段32のプログラムを書き変えなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第3927304号公報
【特許文献2】特開2004−191419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、対象システムの機能の追加・変更等によって当該対象システムに供給する地図データのフォーマットが変更になったとしても、新しいフォーマットによる地図データを効率よく作成することのできる地図データ生成装置および地図データ生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するため、本発明に関わる地図データ生成装置は、入力されたGDFデータをもとに対象システムへ供給するための地図データを生成する地図データ生成装置であって、地図データの各データ項目単位にデータ項目の識別情報、データ形式、データ長および前記GDFデータから地図データを作成する手順または関数であるメソッドの識別情報とを関連付け、さらに該地図データにおけるデータ項目の配列順に次のデータ項目の識別情報を関連付けて保存するフォーマット記述部保存手段と、前記メソッドの識別情報ごとにメソッドを保存するスクリプト記述部保存手段と、前記フォーマット記述部保存手段から、前記次のデータ項目の識別情報でリンク付けされた順にデータ項目を抽出し、該抽出したデータ項目に関連付けられたメソッドの識別情報を抽出するフォーマット記述部実行手段と、前記フォーマット記述部実行手段によって抽出されたメソッドの識別情報をもとに、前記スクリプト記述部保存手段からメソッドを抽出して実行し、該実行の結果を該データ項目に関連付けられたデータ形式とデータ長で順に出力するスクリプト記述部実行手段と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明では、フォーマット記述部とスクリプト記述部を設け、フォーマット記述部には地図データの各データ項目に合わせて、データ項目の識別情報(データ項目ID)を取り、データ形式やデータ長を定める出力定義データ、メソッドの識別情報、地図データにおけるデータ項目の配列順に次のデータ項目の識別情報を関連付けて記載する。フォーマット記述部実行手段は、この次のデータ項目の識別情報でリンク付けされた順にデータ項目の記述部を実行する。これにより、対象システムが要求する地図データの形式の変更に柔軟に対応することができる。また、メソッドは、フォーマット記述部とは別にスクリプト記述部で定義する。これによって、地図データ提供業者から提供されるGDFデータの形式が変わってもスクリプト記述部を変更するのみで対応することができる。
【0021】
また、本発明に係る地図データ生成装置は、さらに、前記フォーマット記述部保存手段の一または二以上のデータ項目に夫々関連付けられている前記次のデータ項目の識別情報の書き換え条件を保存する設定ファイルと、前記切替条件に基づいて前記次のデータ項目の識別情報を書き換えるリンク変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明では、フォーマット記述部の「次のデータ項目の識別情報」を、日時や対象システムなど所定の条件によって書き換えることによって、自動的にその条件に合った地図データを作成する。
【0023】
また、本発明に係る地図データ生成方法は、GDFデータをソースデータとして使用し、カーナビゲーション等対象システムへ供給するための地図データを生成する方法であって、地図データの各データ項目単位に該データ項目の形式とデータ長および前記GDFデータから地図データを作成する手順または関数であるメソッドとを関連付け、さらに該地図データにおける前記データ項目の配列順に前記メソッドをリンク付けしたことを特徴とする。
【0024】
本発明では、出力仕様である地図データのデータ項目ごとにメソッドを設定し、これをデータ項目の順にリンク付けする。これにより、地図データの出力形式の変更に柔軟に対応することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、フォーマット記述部の各データ項目に対応して設けられている次のデータ項目の識別情報を書き換えるのみで、地図データのデータ項目の変更・削除に対応することができ、作業効率が向上する。また、フォーマット記述部は、データ項目単位で記載されているので、地図データのデータ項目の追加に対しても、挿入箇所を即座に把握することができる。
【0026】
また、設定ファイルによって、日時や対象システム等の切替条件により、次のデータ項目の識別情報を書き換えることによって、自動的に地図データの出力形式を変更することができ、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態による地図データ生成装置1の機能ブロック図である。
【図2】カーナビゲーションシステム等で用いられる地図データの構造の一例である。
【図3】図1のフォーマット記述部45のデータ構成の説明図である。
【図4】図1のフォーマット記述部45の具体例である。
【図5】図2の各データ項目(アイテム)の基本構成図である。
【図6】図1のスクリプト記述部46のデータ構成例である。
【図7】図1のフォーマット記述部実行手段36のメイン処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図7のitemタグ処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】図7のrecordタグ処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図7のformatタグ処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施例による新規項目追加時の地図データ42の説明図である。
【図12】本発明の一実施例による新規項目追加時の要求処理記載データ43の説明図である。
【図13】本発明の一実施例による既存項目変更時の地図データ42の説明図である。
【図14】本発明の一実施例による既存項目変更時の要求処理記載データ43の説明図である。
【図15】本発明の一実施例による既存項目削除時の地図データ42の説明図である。
【図16】本発明の一実施例による既存項目削除時の要求処理記載データ43の説明図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態による地図データ生成装置1の機能ブロック図である。
【図18】図17の設定ファイル44に書き込まれたポインタ切替条件の一例である。
【図19】図17の設定ファイル44に書き込まれたポインタ切替条件の他の例である。
【図20】従来の地図データ生成装置99のブロック図である。
【図21】GDFデータ41のデータ構成の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態による地図データ生成装置の機能ブロック図である。本実施の形態による地図データ生成装置1は、図20の従来の装置と同様に、汎用のコンピュータシステムで構成でき、入力装置10、出力装置20、演算装置30、記憶装置40を有している。
【0029】
演算装置30は、要求処理の内容が記載された要求処理記載データ43を入力して記憶装置40へ保存する要求処理記載データ入力手段34、テキスト形式のGDFデータを入力して、バイナリ形式のGDFデータとして記憶装置40に保存する地図データ入力手段31、要求処理記載データに基づいて演算処理を実行して地図データ42を生成する要求処理実行手段35、生成した地図データ42を出力装置20へ出力する出力処理手段33を有している。なお、要求処理実行手段35は、要求処理記載データ43のフォーマット記述部45に基づいて処理を実行するフォーマット記述部実行手段36と、要求処理記載データ43のスクリプト記述部46に基づいて処理を実行するスクリプト記述部実行手段37で構成されている。GDFデータ入力手段31と出力処理手段33については、従来の装置99と同様である。各手段31〜37は、CPUの機能としてプログラムによって実現することができる。
【0030】
図2に本実施の形態による地図データ42のデータ構造を示す。この図において、地図データ42は、情報ヘッダ、テーブル1、テーブル2などのデータ群からなり、カーナビゲーションシステムの場合、テーブルは、道路要素や通行規制情報などその対象システムで定められた情報の種類ごとに別々に作成される。各テーブルは、地域ごとに割り付けられる一または二以上のレコードからなり、各レコードは、そのシステムで用いられる複数の項目で構成されている。項目例として、たとえば通行規制情報の場合は一方通行や制限速度などのデータがある。情報ヘッダには、情報ヘッダ識別子、各テーブルに含まれるレコード数、各テーブルの先頭番地などレコードにアクセスするための情報が保存されている。そして、対象システムの地図データ表示処理において、それぞれのテーブルの情報をレコードすなわち同一地域ごとに重ね合わせて表示させるのである。本実施の形態による地図データ42は、このような階層構造を有していることを特徴としている。
【0031】
次に上記の構成を有する地図データ生成装置1の動作を従来装置99との違いを中心に説明する。
(1.要求処理記載データ入力処理)
オペレータは、入力装置10を介して、地図データを処理するための内容を記述した要求処理記載データ43を入力する。入力された要求処理記載データ43は、要求処理記載データ入力手段34によって記憶装置40に保存される。
【0032】
ここで、要求処理記載データ43のデータ構成について説明する。要求処理記載データ43は、地図データの作成範囲等を指定する設定ファイル44、地図データの出力形式を定義したフォーマット記述部45、フォーマット記述部45で指定されたメソッドを記述するスクリプト記述部46から構成されている。設定ファイル44は、従来技術と同様INIファイルの性格を有するもので、ソースファイルであるGDFデータに関する情報(ファイルパス、データセット番号等)と、各処理で必要になる情報(検索処理、ファイル名作成処理等)を定義したテキストファイルである。
【0033】
図3,図4にフォーマット記述部45の例を示す。フォーマット記述部45は、大きくフォーマット(format)、レコード(record)、アイテム(item)の記述部分からなり、それぞれ定義の記載されたXMLファイルである。
【0034】
また、フォーマットは、識別情報(format id)、前処理(prevMethod)、後処理(tailMethod)、処理を開始すべきレコードの識別情報(recordStart)等を含んでいる。
【0035】
レコードは、レコードの識別情報(record id)、項目名(description)、前処理(prevMethod)、後処理(tailMethod)、カウント(count)、サイズ(size)、開始するアイテムの識別情報(itemStart)、次に実行すべきレコードの識別情報(next)等を含んでいる。ここで、カウントとは、地図データの各レコードが繰り替えして記録される回数を意味する。カウントは、たとえば図4のように固定値(1回)の場合や、後述するようにメソッドの作り方によっては、GDFデータのレコード数によって可変設定(variable)の場合がある。また、サイズは、レコードのサイズであるが、文字数を集計することによって自動計算するようにしても良い。この場合サイズ欄を省略することができる。次に説明するアイテムのサイズについても同様である。
【0036】
アイテムは、アイテムの識別情報(item id)、項目名(description)、当該レコードの先頭からのバイト数を示すオフセット(offset)、当該アイテムのサイズ(size)、データの型(type)(定数型(N)、文字列型(CC)、オフセット型(OP)、ID型(GDF ID)等)、実行すべきメソッドの識別情報(method)、単位などの定義値(define)、次に実行すべきアイテムの識別情報(next)を含んでいる。なお、それぞれのレコードやアイテムは、地図データの各データ項目に対応して設けられているので、以降の説明において、個々のレコードやアイテムを総称してデータ項目という場合もある。
【0037】
なお、階層数が図2のレベルを超えるような場合、項目名の欄にさらに下位層の項目名を階層順に記載して指定することにより、任意の階層数のデータ構造に対応させることができる。
【0038】
本発明の実施の形態で特徴的なところは、各アイテムが図5に示すように、データ項目ID、項目名、出力定義データ、メソッドID、実行すべき次のデータ項目の識別情報(以下、「次データ項目ID」という。)で構成されており、この次データ項目IDでチェーンされた順に要求処理実行手段35が処理実行し、確保されたワークエリアに順に処理結果を保存していくことである。
【0039】
なお、要求処理実行手段35は、図5において、各データ項目IDの属性情報で、メソッドIDを抽出すると、スクリプト記述部46の該当するメソッドを実行する。通常、この部分には実行すべき関数を記載する。図6はスクリプト記述部46の一例である。
【0040】
このように、本実施の形態による地図データ生成装置1は、出力すべき地図データの項目ごとに当該項目を生成するための手続き(メソッド)を設定し、これらのメソッドと、データ項目のサイズ、型などデータに関する属性情報をアイテムとして一つの処理単位とする。そして、この処理単位には、次に実行すべき処理単位を指定する情報を持たせる。なお、以降の説明において、この処理単位を処理タグという。
このようにすることによって、地図データの出力形式の変更作業を効率的に行うことができる。
【0041】
なお、メソッドは、GDFデータ41の複数のレコードの各データから出力対象の地図データ42のレコードの各項目への変換処理を規定するものであるが、対象システムによっては、GDFデータ41のそれぞれのレコードごとに出力対象の地図データのレコードの各項目への変換を行って当該レコードを生成する処理をすべてのGDFデータ41のレコードについて繰り返し、GDFデータ41のレコード数だけ生成された地図データの各レコードデータに基づいて重ね合わせ表示をするのが効率的であり、メソッドの作成も簡便になる。この場合、フォーマット記述部45のレコードのカウントは、GDFデータ41のレコード数によって可変設定(variable)にする。
【0042】
(2.地図データ作成処理)
要求処理実行手段35は、予めスケジューリングされたバッチファイル、あるいはオペレータからの起動要求によって起動すると、要求処理記載データ43のフォーマット記述部45およびスクリプト記述部46に記載された内容に沿って、設定ファイル44で指定された生成対象のすべての地図データの作成処理を行う。
以下、図7〜図10を用いて、要求処理実行手段35の動作を詳述する。
【0043】
(2−1.メイン処理)
図7において、要求処理実行手段35のうち、まずフォーマット記述部実行手段36が起動され、要求処理記載データ43のGDFデータ41と設定ファイル44を入力する(S201)。そして現在処理値すなわちフォーマット記述部45内で、処理対象になるタグ(処理タグ)を初期化する(S202)。
【0044】
次に、フォーマット記述部実行手段36は、フォーマット記述部45の"<"で識別される最初の行の処理タグを読み込んで、その処理タグがitemタグの場合は(S203で「YES」)、図8に示すitemタグ処理を実行する(S204)。同様に、その処理タグがrecordタグの場合は(S205で「YES」)、図9に示すrecordタグ処理を実行し(S206)、その処理タグがformatタグの場合は(S207で「YES」)、図10に示すformatタグ処理を実行する(S208)。そして、全てのタグ処理を完了したか否かを判定し(S209)、完了した場合は終了し、完了していない場合は、次のタグを現在処理タグとしてセットし、ステップS203に戻って以降の処理を繰り返す。
【0045】
(2−2.itemタグ処理)
図8において、フォーマット記述部実行手段36は、itemタグ処理として、まずフォーマット記述部45から現在処理タグの属性情報を取得する(S301)。そして、読み取った属性情報にmethod属性情報が存在する場合は(S302で「YES」)、スクリプト記述部実行手段37を起動して、スクリプト記述部46に記載されている当該method属性情報に該当する関数を実行する(S303)。そして、該当関数の戻り値をワークエリアに確保された現在レコードテーブルに追加する(S304)。
【0046】
その後、ステップS301で読み取った属性情報にnext属性情報(すなわち、次のitemタグの識別情報)が存在するか否かを判定し(S305)、next属性情報が存在する場合は、現在処理タグにnext属性値(すなわち次のitemタグID)を設定して終了する(S306)。
【0047】
(2−3.recordタグ処理)
図9において、フォーマット記述部実行手段36は、recordタグ処理として、まずフォーマット記述部45から現在処理タグの属性情報を取得する(S401)。そして、レコードテーブルのワークエリアを確保して(S402)、レコード内の全てのitemタグを実行する(S403)。
【0048】
その後、このワークエリアのデータをtempファイルに出力して(S404)、レコードテーブルのワークエリアを解除する(S405)。
【0049】
次に、ステップS401で取得した属性情報にnext属性情報が存在するか否かを判定し(S406)、next属性情報が存在しない場合はそのまま修了し、next属性情報が存在する場合は、現在処理タグにnext属性値(次のrecordタグID)を設定する(S407)。
【0050】
(2−4.formatタグ処理)
図10において、フォーマット記述部実行手段36は、formatタグ処理として、まずフォーマット記述部45から該当タグの属性情報を取得して(S501)、フォーマット内の全てのrecordタグを実行する(S502)。
【0051】
そして、各レコードのtempファイルのデータを集めて地図データファイル42に出力する(S503)。その後、必要により自動化テスト処理を実行する(S504)。
本実施の形態による地図データ生成装置1の要求処理実行手段35は、以上のごとく構成され、動作する。
【0052】
(3.データ項目の追加・編集・削除の実施例)
本実施の形態によれば、地図データのデータ形式の変更時には、基本的にコンパイラプログラムを変更する必要はなく、要求処理記載データ43を編集するのみで対応することができる。以下、詳細を説明する。
【0053】
(3−1.新しい項目の追加)(図11、図12)
設計担当者は、地図データ42内のレコード2に図11の既存の仕様(項番1〜16の各データ項目)に新項目(項番17のデータ項目)を追加する。
【0054】
具体的には、図12において、追加前のフォーマット記述部45では、項番16のitem id="r7i16"のnext属性情報をnext="nothing"にしておき、項番17追加後のフォーマット記述部45では、項番17の処理タグを追加すると共に、項番16のnext属性情報に項番17のitem id"r7i17"をセットする。
また、スクリプト記述部46には、項番17のメソッドを追加する。
【0055】
なお、本実施の形態では、ユーザー定義仕様を記載する方法として、フォーマット記述部45では、defineタグを使用している。図12のdefine文は、項目ID"r7i17d"の新項目を"is_one_of_list"というテスト処理を実行するメソッドによって自動化テストを実行する。define文の2行目以降はメソッドに渡すパラメータである。オペレータは、地図データ供給業者Aのみの設定値として、この項目が有効の場合は固定値の0に設定し、無効の場合は255に設定し、メソッドの関数はこの設定値に基づいて動作する。
自動化テスト機能を設け無い場合は、defineタグは不要である。
【0056】
(3−2.既存項目の編集)(図13、図14)
設計担当者は、図11で新しく追加した項目(項番17)を新たな仕様に変更する。具体的には、スクリプト記述部46の項番17の記載を図14のように修正する。なお、仕様変更に伴って、フォーマット記述部45の項番17の項目名も更新しておくと良い。
【0057】
また、自動化テスト用のdefine文でも、新たな仕様に基づいて、メソッドへ渡すパラメータを設定する。図14の例では、項目17の設定値(地図データ供給業者Bのみの設定値)として、確認済み(Verified)の場合11、未確認(Not Verified)の場合10、が設定されることを意味している。
【0058】
(3−3.既存項目の削除)(図15、図16)
設計担当者は、既存項目の項目o(図13の項番15)を削除する。
この場合、図16において、項番14のitem id="r7i14"のnext属性情報として、項目oの次のitem id " r7i16"をセットする。すなわち、項番15を飛ばして処理タグをリンク付けするのである。
【0059】
なお、図16では、item id="r7i15"の処理タグも削除しているが、この記述を残しておいて、次データ項目IDのリンクから外すのみでも良い。なお、本実施の形態では、削除した項番は空き項番にしているが、項番が連番になるように自動修正するようにしても良い。
【0060】
設計担当者は、上記の如くそれぞれ要求処理記載データ43を変更入力した後に、要求処理実行手段35を起動する。
【0061】
本実施の形態による地図データ生成装置1は、以下の効果を有する。
地図データの項目の追加・編集・削除の際に、要求処理記載データは、出力フォーマット通りに構成されているので、修正項目さえわかれば、それ以外は検索する必要がない。
【0062】
地図データの項目の追加の場合は、フォーマットの変更と、追加した項目に値を設定するいわゆる設定処理があるため、基本データの編集と、スクリプト関数の追加を行うのみで良い。なお、設定処理は、スクリプト記述部46に関数の形で記載する。
【0063】
地図データの項目の編集の場合は、フォーマットの変更はないため、設定処理を行うスクリプト関数のみ修正すれば良い。また、修正関数も予めスクリプト記述部に記述しておけば、検索する必要はない。そして、設定処理を各項目別に行うため、修正によって他の項目に影響はない。
地図データの項目の削除の場合は、フォーマット記述部の変更のみで済む。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、フォーマット記述部の各データ項目に対応して設けられている次データ項目IDを書き換えるのみで、地図データのデータ項目の変更・削除に対応することができ、要求処理実行手段35を改造する必要は無く作業効率が向上する。また、フォーマット記述部は、データ項目単位で記載されているので、地図データのデータ項目の追加に対しても、挿入箇所を即座に把握することができる。これにより、既存の設計担当者以外の担当者でも、仕様変更及び追加に簡単に対応できる。また、要求処理記載データ43(変更部)を書き換えるのみで、要求処理実行手段35(固定部)を再利用した新しいプロダクトの生成が容易になる。さらに、地図データ提供業者の提供するGDFデータのフォーマットが変更になった場合についても、本実施の形態による地図データの階層構造化および要求処理記載データ43を備えることにより、フォーマットが異なる部分に対応するメソッドのみを変更すれば良いので、作業効率が向上する。
【0065】
次に、第2の実施の形態を説明する。図17は本実施の形態による地図データ生成装置1の機能ブロック図である。図1との違いは、設定ファイル44にフォーマット記述部45のデータ項目ごとの次データ項目IDの切替条件を持たせ、その切替条件によって次データ項目IDを書き換えるリンク変更手段38を追加したことである。また、フォーマット記述部45のデータ項目ごとのnext属性情報欄(次データ項目ID欄)は変数領域(以下、「ポインタ」という。)が割り当てられている。その他の構成は図1と同様であるので、同一要素には同一符号を付し説明を省略する。
【0066】
次に、地図データ生成装置1の次データ項目IDの書き換え処理について説明する。
オペレータは、予め入力装置10を介して、次データ項目ID切替条件を記載した設定ファイル44を記憶装置40に登録しておく。なお、図示しないが、必要によりデータ項目ごとのポインタの初期値を別ファイルとして保存しておき、装置1が起動されるときに初期値をポインタに設定しておくものとする。
【0067】
図18は、設定ファイル44に書き込まれたポインタ切替条件の例である。年月日などの日時情報と、データ項目と、ポインタ設定値として次データ項目IDが互いに関連付けられている。
【0068】
リンク変更手段38は、定期的あるいはスケジューリングされたパッチファイルによって起動すると、設定ファイル44の切替条件からその日時情報に対応するデータ項目のポインタ設定値を抽出して、フォーマット記述部45の当該データ項目のポインタを、抽出した次データ項目IDにセットする。
【0069】
その後フォーマット記述部実行手段36が起動され、リンク変更手段38によってポインタ値が設定されたフォーマット記述部45に基づいて動作する。以降の動作は第一の実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0070】
たとえば、フォーマット記述部45の初期状態の記述が図14において、項番16のitem id="r7i16"のnext属性情報がnext="nothing"であったとすると、図18に示す切替条件によって、切替条件の日時(○年○月○日午前0時)が到来する前は、要求処理実行手段35によって、図13の項番1〜項番16のデータのみが出力され、○年○月○日午前0時以降は、図13の項番1〜項番17のデータが出力されるようになる。さらに○年○月×日15時以降は、図15の形式のデータが出力される。
【0071】
図19は、設定ファイル44に書き込まれたポインタ切替条件の他の例である。対象システムのメーカごとにコードが付され、そのコードと、データ項目と、ポインタ設定値として次のデータ項目の識別情報(データ項目ID)が互いに関連付けられている。
【0072】
オペレータは、入力装置10からメーカのコードを入力すると、リンク変更手段38は、設定ファイル44の切替条件からそのコードに対応するデータ項目のポインタ設定値を抽出して、フォーマット記述部45の当該データ項目のポインタを抽出したデータ項目IDにセットする。
【0073】
そして、フォーマット記述部実行手段36は、このフォーマット記述部45に基づいて動作する。
【0074】
たとえば、フォーマット記述部45の初期状態の記述が図14であったとすると、メーカ1については、図13の形式のデータが出力され、メーカ2については、図15の形式のデータが出力される。
【0075】
以上、本実施の形態によれば、設定ファイルにポインタの切替条件を書き込み、リンク変更手段によって、その切替条件に基づいて自動的にフォーマット記述部45のポインタの次のデータ項目の識別情報を書き換えるので、簡便に地図データを多種多様な出力形式で生成することができ、利便性が向上する。また、すべての条件ごとにフォーマット記述部45を備えることに比べて、メモリ資源を節約することができる。
【0076】
本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施をすることができる。たとえば実施の形態では、地図データとして、カーナビゲーションシステムで用いられる地図データを例に説明したが、本発明は、出力形式が定められている他の対象システムにも適用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0077】
1 地図データ生成装置
10 入力装置
20 出力装置
30 演算装置
31 地図データ入力手段
32 地図データ作成手段
33 出力処理手段
34 要求処理記載データ入力手段
35 要求処理実行手段
36 フォーマット記述部実行手段
37 スクリプト記述部実行手段
38 リンク変更手段
40 記憶装置
41 GDFデータファイル(GDFデータ)
42 地図データファイル(地図データ)
43 要求処理記載データ保存領域(要求処理記載データ)
44 設定ファイル
45 フォーマット記述部
46 スクリプト記述部
99 地図データ生成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された地図データフォーマット(GDF)によるデータ(以下、「GDFデータ」という)をもとに対象システムへ供給するための地図データを生成する地図データ生成装置であって、
地図データの各データ項目単位にデータ項目の識別情報、データ形式、データ長および前記GDFデータから地図データを作成する手順または関数であるメソッドの識別情報とを関連付け、さらに該地図データにおけるデータ項目の配列順に次のデータ項目の識別情報を関連付けて保存するフォーマット記述部保存手段と、
前記メソッドの識別情報ごとにメソッドを保存するスクリプト記述部保存手段と、
前記フォーマット記述部保存手段から、前記次のデータ項目の識別情報でリンク付けされた順にデータ項目を抽出し、該抽出したデータ項目に関連付けられたメソッドの識別情報を抽出するフォーマット記述部実行手段と、
前記フォーマット記述部実行手段によって抽出されたメソッドの識別情報をもとに、前記スクリプト記述部保存手段からメソッドを抽出して実行し、該実行の結果を該データ項目に関連付けられたデータ形式とデータ長で順に出力するスクリプト記述部実行手段と、
を備えたことを特徴とする地図データ生成装置。
【請求項2】
前記フォーマット記述部保存手段の一または二以上のデータ項目に夫々関連付けられている前記次のデータ項目の識別情報の書き換え条件を保存する設定ファイルと、
前記切替条件に基づいて前記次のデータ項目の識別情報を書き換えるリンク変更手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の地図データ生成装置。
【請求項3】
地図データフォーマット(GDF)によるデータ(以下、「GDFデータ」という)をもとに対象システムへ供給するための地図データを生成する方法であって、
地図データの各データ項目単位に該データ項目の形式とデータ長および前記GDFデータから地図データを作成する手順または関数であるメソッドとを関連付け、さらに該地図データにおける前記データ項目の配列順に前記メソッドをリンク付けしたことを特徴とする地図データ生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−73405(P2012−73405A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217977(P2010−217977)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000221096)東芝システムテクノロジー株式会社 (117)
【Fターム(参考)】