説明

地形模型の受注システム

【課題】需要者が任意に地形模型の作製対象となる領域を指定することができ、NC加工による立体的な地形模型を、時間や労力を低減して低コストで作製することができる地形模型の受注システムを提供する。
【解決手段】受注システムは需要者端末とインターネットを介して接続された事業者サーバ、地形模型をNC加工するNC加工装置とを具備し、事業者サーバは、地図画像データベースを使用して地図画像を需要者端末に表示させる地図画像表示手段、需要者端末からの入力に基づき指定領域の緯度経度情報を取得する緯度経度情報取得手段、地形模型の縮尺及び模型寸法情報を取得する縮尺・模型寸法取得手段、数値地図データベース及び緯度経度情報に基づき、指定領域の緯度経度点に標高値が付与された三次元座標データを算出する三次元座標算出手段を備え、NC加工装置は三次元座標データ、縮尺及び模型寸法情報に基づいて三次元の地形模型のNC加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地形模型の受注システムに関するものであり、特に、地形模型の製造者がインターネットを介して需要者が所望する地形模型に関する情報を取得する地形模型の受注システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
立体的な地形模型は、学校の地理教材、観光地や景勝地における景観案内、地方自治体等の行政区域を示す展示物、ダム工事などの土木工事の検討用資料、土砂崩れや水害等の自然災害の検討用資料など、種々の用途に用いられている。従来、このような地形模型は、等高線に沿って切り取られたシートを積層する方法(例えば、特許文献1参照)、地図情報をもとに熟練者の手作業で原型を加工し、真空成形法を用いて複製を行う方法によって、主に作製されていた。また、近年では、NC加工装置を用いた地形模型の作製も実施されており、NC加工を業務範囲とする本出願人も、官公庁や地方自治体等の依頼により地形模型の作製を行っている。
【0003】
【特許文献1】特許第2500891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、等高線に沿って切り取られたシートを積層する方法は、地形模型の精度が等高線の間隔やシート厚さによって制限されるものであった。また、原型を手作業で作製する方法も、高精度な模型を作製することは困難であった。加えて、何れの方法も、多大な時間や労力を要するものであった。
【0005】
一方、NC加工による方法は、地形データに基づいた精密な地形模型の作製が可能であるが、NC加工による従来の地形模型は、官公庁や地方自治体等から個々に注文されて一点製作される場合が多く、価格の高いものとなっていた。また、一般需要者向けに市販されている地形模型は、大量生産によってコストを抑えるべく、例えば富士山や阿蘇山など需要の見込まれる特定の領域を模型にした既製品の中から需要者が選択する形式であり、地形模型とする領域を一般需要者が任意に指定できるものは、従来存在しなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、需要者が任意に地形模型の作製対象となる領域を指定することができ、NC加工による立体的な地形模型を、時間や労力を低減して低コストで作製することができる地形模型の受注システムの提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる地形模型の受注システムは、「需要者端末と、該需要者端末とインターネットを介して通信可能に接続された一以上のサーバ装置を備える事業者サーバと、該事業者サーバが前記需要者端末からの入力により受注した地形模型をNC加工するNC加工装置とを具備し、前記事業者サーバは、地図画像用データベース及び緯度・経度・標高値により記述された数値地図データベースを記憶した一以上の記憶装置、前記需要者端末からの要求に応じ、前記地図画像用データベースを使用して地図画像を前記需要者端末に表示させる地図画像表示手段、前記需要者端末からの入力に基づき、需要者が地形模型として所望する領域として指定された指定領域の緯度経度情報を取得する緯度経度情報取得手段、前記需要者端末からの入力に基づき、地形模型の縮尺及び模型寸法情報を取得する縮尺・模型寸法取得手段、前記数値地図データベース及び前記緯度経度情報に基づき、前記指定領域内の緯度・経度で特定される点に標高値が付与された三次元座標データを算出する三次元座標算出手段を備え、前記NC加工装置は、前記三次元座標データ、前記縮尺、及び前記模型寸法情報に基づいて三次元の地形模型のNC加工を行う」ものである。
【0008】
「数値地図データベース」は、緯度方向及び経度方向に同形同サイズに分割した各メッシュについて、メッシュの中心点の緯度、経度、標高値で記述したデータを集めたデータベースを使用することができ、例えば、国土地理院発行の数値地図250mメッシュ、50mメッシュのデータベースを使用することができる。
【0009】
「地図画像用データベース」は、三次元または二次元の地図画像を生成するためのデジタル化された地図情報を集めたデータベースであり、データとしては、緯度、経度、標高値で記述された地形を表すためのデータの他、道路、鉄道、建造物、河川、土地利用等に関する情報が数値化されたデータを使用することができる。また、衛星写真や航空写真がデジタル化され、正確な地理座標が付与されたデータを使用することもできる。なお、地図画像表示手段が需要者端末に表示させる画像を複層構造とし、需要者端末からの要求に応じて、都道府県の境界線や地名等を地図画像と重ね合わせて表示させることとしても良い。
【0010】
「指定領域」とは、需要者が所望する地形模型の対象領域として指定する領域であり、例えば、需要者端末で表示されている地図画像上に枠を発生させ、その枠の位置や大きさにより指定領域を指定することができる。或いは、需要者端末から緯度及び経度を数値入力することにより、指定領域を指定することもできる。また、「緯度経度情報」とは、緯度と経度とで指定領域を特定する情報であり、例えば、指定領域の北端及び南端の緯度、東端及び西端の経度により構成させることができる。或いは、指定領域の輪郭線上の点の緯度及び経度によって構成させることもできる。
【0011】
縮尺及び地形模型の寸法は、何れか一方が需要者端末から入力されれば、緯度経度情報に基づいて算出できる指定領域の輪郭線の実距離との関係から、他方を算出することができる。なお、地形模型の寸法を複数の既定寸法の中から選択する形式とすることもでき、その場合は、指定領域を指定する際に、指定領域の形状や縦横の比率が地形模型の寸法に対応して規制されるものとしても良い。
【0012】
上記の構成により、本発明によれば、NC加工による立体的な地形模型を作製する対象となる領域を、需要者が任意に指定することができる。
【0013】
また、本発明では、需要者からの注文をインターネットを介して事業者サーバが自動的に受け付け、NC加工に必要な情報の処理を行う。そのため、従来は任意の範囲を指定して地形模型を注文しようとすると、一品製作品として高価とならざるを得なかった地形模型を、省力化により一般需要者が購入し易い低価格なものにすることができる。加えて、インターネットを介して不特定多数の需要者が地形模型を注文することができるため、需要者層の多様化と、市場規模の拡大を促すことができる。
【0014】
本発明にかかる地形模型の受注システムは、上記構成に加え、「前記事業者サーバは、前記指定領域内の緯度・経度で特定される点を予め定めた地図投影法により二次元座標上の点に変換する展開手段を更に備え、前記三次元座標算出手段は、変換された前記二次元座標上の点に標高値が付与された三次元座標データを算出する」ものとすることができる。
【0015】
地球は球体であるため、指定領域内の緯度・経度で特定される点に標高値を付与して地形模型を作製した場合は、球体の表面の一部に凹凸が付された態様の地形模型となる。ところが、実際に需要者が所望する地形模型は、普段見慣れている二次元的な地図に、更に標高値の変化が立体的に表現された態様の地形模型であるのが一般的である。
【0016】
上記構成の本発明では、指定領域を予め定めた地図投影法により二次元に展開してから、標高値を有する三次元座標データを算出して地形模型を作製する。これにより、二次元的な地図に高さ方向の凹凸が施された、需要者が一般的に所望する態様の地形模型を提供することができる。
【0017】
本発明にかかる地形模型の受注システムは、「前記指定領域は二つの緯線及び二つの経線で囲まれた領域であり、前記展開手段は、前記指定領域より広い領域内で緯度・経度で特定される点を前記予め定めた地図投影法により二次元座標上の点に変換し、前記三次元座標算出手段は、変換された前記二次元座標上の前記指定領域を包含する最小の矩形で囲まれる範囲内の点に標高値が付与された三次元座標データを算出する」ものとすることができる。なお、「緯線」は同一緯度の点の集合であり、「経線」は同一経度の点の集合である。
【0018】
経線と緯線とで囲まれる領域を指定領域とすると、二次元に展開された後の指定領域の外形は地図投影法の種類によって異なり、必ずしも矩形とはならない。例えば、メルカトル図法によって展開した場合の外形は矩形であるが、ユニバーサル横メルカトル図法によって展開した場合の外形は緯線及び経線が共に曲線の扇形状となり、円錐図法によって展開した場合の外形は緯線が曲線の扇形状となる。ここで、地形模型が小縮尺の場合、換言すれば、指定領域が小さい場合は、地図投影法の種類によらず展開後の指定領域はほぼ矩形に見えるが、大縮尺になると外形が矩形とは異なる形状であることが目立つようになる。ところが、需要者としては、真上から見下ろしたときに(平面視で)、きれいな矩形である地形模型を望む人が多い。
【0019】
上記構成の本発明では、二次元座標上の矩形範囲をNC加工を行う領域とすることができ、その場合底面が矩形の地形模型が作製される。これにより、整った印象及び安定感を与える地形模型であって、多くの需要者の所望する形態の地形模型を提供することができる。加えて、指定領域より広い範囲を二次元に展開してから、展開された指定領域を包含する最小の矩形範囲として加工する領域を決定できるため、矩形とするために指定領域が欠けてしまうことがなく、且つ、地形模型の外縁付近に三次元座標データがないために加工されない部分が生じることない地形模型を作製することができる。
【0020】
本発明にかかる地形模型の受注システムは、「前記展開手段は、前記予め定めた地図投影法として、前記縮尺または前記緯度経度情報に基づいて複数種類の地図投影法の中から選択された地図投影法を用いる」ものとすることができる。
【0021】
球面である地球の表面を平面に展開する方法である地図投影法は、方角、面積、距離、形状等に必ず歪みを伴う。例えば、メルカトル図法では、高緯度ほど実際の地形より拡大される。また、メルカトル図法は投影する円筒が赤道で地球の表面と接する図法であるため、日本のように中緯度にある領域では歪みが大きい。一方、ユニバーサル横メルカトル図法では、中緯度の領域を比較的正確に投影できる反面、中央経線から遠くなるほど歪みが大きくなるため、大縮尺の地形模型を作製する場合には適さない。また、円錐図法は、面積や角度が比較的正確であり、地球全体の三分の二程度を投影できるため大縮尺の場合に適している。
【0022】
上記構成の本発明は、縮尺または緯度経度情報に基づいて地図投影法を選択する構成であるため、縮尺または指定領域の緯度・経度に応じて適した地図投影法を選択し、二次元に展開する際に必ず生じる地形の歪みを小さく抑えることが可能となる。これにより、実際の地形をより反映した、より正確な地形模型を作製することができる。
【0023】
本発明にかかる地形模型の受注システムは、上記構成に加え、「前記事業者サーバは、前記三次元座標データに基づき、地形模型の仕上がりイメージとして三次元の画像を前記需要者端末に表示させるイメージ画像表示手段を」具備するものとすることができる。
【0024】
上記構成の本発明では、予め地形模型の仕上がりイメージを画面上で確認し、所望する要件を満たしているか否かの評価を需要者が行ってから、地形模型を発注することができる。そのため、需要者の期待感を損なうおそれや、出来上がった地形模型が用途に適さないものとなるおそれを低減することができる。加えて、イメージ画像は、実際に地形模型のNC加工に使用される三次元座標データと同一の三次元座標データを用いて作製されるため、イメージ画像と作製される地形模型との同一性が高く、イメージ画像によって評価を行う意義が高いものとなっている。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の効果として、需要者が任意に地形模型の作製対象となる領域を指定することができ、NC加工による立体的な地形模型を、時間や労力を低減して低コストで作製することができる地形模型の受注システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の最良の一実施形態である地形模型の受注システムについて、図1乃至図7に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の地形模型の受注システムの構成図であり、図2は図1の事業者サーバの機能的構成を示すブロック図であり、図3は図1の事業者サーバにおける処理の流れを示すフローチャートであり、図4乃至図7は図1の需要者端末における表示画面を例示する説明図である。
【0027】
本実施形態の地形模型の受注システム1(以下、単に「受注システム1」と称する)は、図1に示すように、需要者端末3と、需要者端末3とインターネットを介して通信可能に接続された二つのサーバ装置2a,2bを備えた事業者サーバ2と、インターネットを介して事業者サーバ2と通信を行うNC加工管理装置6と、LAN5によってNC加工管理装置6と接続されたNC加工装置7とを具備している。
【0028】
より詳細に説明すると、事業者サーバ2は、受注システム1を運営する機能に加え、地形模型に関するウェブページをインターネット上で公開するウェブサーバとしての機能を有すると共に、インターネットに接続されたメールサーバ(図示を省略)を介して、需要者端末3と電子メールの送受信が可能な構成とされている。ここで、サーバ装置2a,2bは、それぞれハード構成として、主記憶装置、補助記憶装置、主記憶装置に記憶されたプログラムに従って処理を行う中央処理装置、及びインターネットを介してデータの送受信を行うモデム等の通信装置を主に具備する汎用のコンピュータにより構成されている。また、サーバ装置2a,2bはそれぞれ補助記憶装置40a,40bを備えている。なお、補助記憶装置40a,40bが本発明の記憶装置に相当する。
【0029】
NC加工管理装置6は、ハード構成として、主記憶装置、補助記憶装置、主記憶装置に記憶されたプログラムに従って処理を行う中央処理装置、インターネットを介してデータの送受信を行うモデム等の通信装置、及びLANアダプターとを主に具備する汎用のコンピュータにより構成されている。
【0030】
一方、需要者端末3は、ハード構成として、主記憶装置、中央処理装置、及びインターネットを介してデータ及びメールを送受信する通信装置を主に具備する汎用のコンピュータで構成されており、キーボードやポインティングデバイス等の入力装置と、ディスプレイやプリンタ等の出力装置が接続されている。
【0031】
以下、事業者サーバ2の機能的構成について、図2を用いて説明する。ここで、事業者サーバ2は主たる機能的構成として、三次元の地図画像の表示等を制御する地図画像制御手段10としてサーバ装置2aのコンピュータを機能させるプログラムと、地形模型の注文を受け付けて処理する受注処理制御手段20としてサーバ装置2bのコンピュータを機能させるプログラムとを備えている。また、事業者サーバ2は、補助記憶装置40aに記憶された三次元の地図画像用データベース41を備えると共に、補助記憶装置40bに記憶された緯度・経度・標高値により記述された数値地図データベース42、地図投影法の種類に対応させて、緯度・経度を二次元座標(x、y)に変換する変換式を記憶させた変換式データベース43、及び、地形模型の寸法及び縮尺等と関連付けて、予め地形模型の作製料金を定めた価格テーブル44を備えている。
【0032】
そして、地図画像制御手段10は、通信装置によるインターネットを介したデータの送受信を制御する通信制御手段11と、需要者端末3からの要求に応じ、地図画像用データベース41を使用して三次元の地図画像を需要者端末3に表示させる地図画像表示手段12と、需要者端末3からの入力に基づき指定領域の緯度経度情報を送出する緯度経度情報送出手段13とを具備している。
【0033】
また、受注処理制御手段20は、通信装置によるインターネットを介したデータの送受信を制御する通信制御手段21と、指定領域の緯度経度情報を取得する緯度経度情報取得手段22と、需要者の所望する地形模型の寸法を模型の底面の一辺の長さとして取得し、緯度経度情報に基づいて地形模型の縮尺及び模型寸法情報を取得する縮尺・模型寸法取得手段24と、縮尺に基づいて地図投影法の種類を決定する地図投影法決定手段25と、地図投影法の種類に応じて変換式データベース43を参照し、緯度経度情報に基づいて指定領域を二次元に展開する展開手段26と、展開された指定領域に基づいてNC加工を行う加工領域を決定する加工領域決定手段27と、数値地図データベース42を使用して加工領域内の点の三次元座標データを算出する三次元座標算出手段28と、算出された三次元座標データを使用して地形模型の出来上がりイメージを三次元の画像として需要者端末3に表示させるイメージ画像表示手段29とを具備している。
【0034】
更に、受注処理制御手段20は、価格テーブル44を参照し地形模型の見積価格を算出する見積価格算出手段31と、需要者端末3から入力された注文情報を取得する注文情報取得手段32と、注文番号を発行すると共に注文情報及び加工領域の三次元座標データ等、NC加工に必要な情報を管理し、これらの情報をNC加工装置に送出する受注処理手段33と、受注後に需要者端末3にメールを送信するメール送信手段34とを具備している。
【0035】
次に、図3乃至図7を用いて、主に事業者サーバ2における処理の流れを説明する。なお、受注システム1は、不特定多数の需要者端末3を構成として構築され得るシステムであるが、以下では説明の便宜上、単一の需要者端末3との関係での事業者サーバ2における処理の流れを例示する。
【0036】
まず、需要者がインターネットに接続された需要者端末3で事業者サーバ2が管理するウェブサイトにアクセスすると、地形模型及びインターネットを介して行われる地形模型の注文に関する説明画面が表示される(ステップS1)。この画面では、地形模型の注文が、地形模型の作製対象となる領域を指定するステップ、地形模型の出来上がりイメージを三次元画像で確認するステップ、需要者に関する情報を入力するステップの手順で行われることが説明される。
【0037】
需要者が需要者端末の画面に表示されている「STEP1 領域指定」というアイコンを操作すると(ステップS2においてYes)、記憶手段40aに記憶された地図画像用データベース41を用いて生成された三次元の地図画像データが需要者端末3に送出され、需要者端末3の表示画面50には図4に例示する三次元の地図画像61が表示される(ステップS3)。また、表示画面50には、地図画像を回転させる際に操作するアイコン51、地図画像を拡大または縮小する際に操作するアイコン52、地図画像を移動させる際に操作するアイコン53が表示される。
【0038】
需要者がアイコン52を操作し、地形模型として所望する範囲を含む地図画像61を拡大して表示させた表示画面50を、図5に例示する。このように、地図画像61を拡大した場合は、一見すると二次元の画像のようにも見える場合もあるが三次元の画像である。
【0039】
また、表示画面40には「指定枠」アイコン54が表示されており、需要者がこれを操作すると、図6に示すように、地図画像61上に指定枠62が発生する。この指定枠62において図示上下方向にのびる二本の枠線はそれぞれ同一経度の経線であり、図示左右方向にのびる二本の横線はそれぞれ同一緯度の緯線である。需要者は、需要者端末3のポインティングデバイスを操作してこの指定枠62の位置及び大きさを変化させることにより、所望する地形模型の対象となる範囲を指定領域として指定する。ここで、指定領域は、北端の緯度N、南端の緯度S、東端の経度E、西端の緯度Sによって記述された緯度経度情報で特定される。緯度経度情報は緯度経度情報送出手段13によって送出され、緯度経度情報取得手段22によって取得されるが、この送受信はインターネットを介してサーバ装置2aとサーバ装置2bとの間で自動的に行われるものであっても、需要者端末3側で緯度経度情報をいったん取得し、これが緯度経度情報取得手段22に対して送出されるものであっても良い。
【0040】
緯度経度情報取得手段22によって緯度経度情報が取得されると(ステップS4においてYes)、需要者が所望する地形模型の寸法を入力するための寸法入力フォームが表示画面50に表示される(ステップS5)。この寸法入力フォームには、複数種類が用意された既定サイズの中から選択できる既定サイズ選択部と、長さを自由に設定できるフリーサイズ入力部とを設けることができる。本実施形態では、底面が矩形の地形模型を作製することとしており、底面の長辺の長さを需要者端末3から入力させる。なお、地形模型の底面が正方形の場合もあり得るが、説明の便宜上その場合も「長辺」の語を用いることとする。
【0041】
寸法入力フォームに地形模型の底面の長辺の長さが入力されると(ステップS6においてYes)、緯度経度情報に基づいて算出できる指定領域の輪郭線である緯線または経線の実距離との関係から、地形模型の底面のもう一辺の長さが算出されると共に、地形模型の縮尺が算出される(ステップS7)。また、算出された縮尺は寸法入力画面のスケール表示部に表示される。なお、スケール表示部に需要者が所望する縮尺が入力されることにより、逆にフリーサイズ入力部に長辺の長さが表示される構成としても良い。
【0042】
表示画面50には、寸法入力フォームと共に「STEP2 仕上がり確認へ」というアイコンが表示されており、これを需要者が操作すると(ステップS8においてYes)、縮尺が確定すると共に、地形模型の底面の両辺の長さが確定し、両辺の長さで記述される模型寸法情報が取得される(ステップS9)。そして、このアイコンが操作されるまでは(ステップS8においてNo)、需要者は長辺の長さを変えて縮尺を確認し、地形模型の寸法を検討することができる。
【0043】
次に、算出された縮尺に基づいて地図投影法の種類が決定される(ステップS10)。例えば、縮尺が所定の値より小縮尺の場合、換言すれば指定領域が小範囲のとき、地図投影法としてユニバーサル横メルカトル図法(UTM図法)を選択し、所定の値より大縮尺の場合は円錐図法を選択することができる。そして、決定された地図投影法の種類に応じて、変換式データベース43から読み出した変換式を用いて、指定領域内の緯度・経度で特定される点(以下、「緯度経度点」と称する)を、予め定めた地図投影法により二次元に展開された二次元座標上の点に変換する(ステップS11)。すなわち、指定領域内の緯度経度点と地図投影法により展開された二次元地図上の座標(x,y)との対応付けが行われる。
【0044】
ここで、指定枠62は図6では長方形のように見えるが、指定領域は球体である地球を経線と緯線とで切り取った範囲であるため、指定領域を地図投影法に基づいて展開した場合に、例えばUTM法により展開した場合、その外形は矩形にはならず各辺が曲線を描く扇形状となる。そこで、本実施形態では、底面が矩形の地形模型を作製するために、次のような処理を行っている。すなわち、指定領域より所定分だけ広い緯度経度範囲内の緯度経度点を、決定された地図投影法により二次元座標上の点に変換し、変換後の領域から、二次元に展開された指定領域を包含する最小の矩形を輪郭とする領域を抽出し、加工領域として決定する(ステップS12)。なお、指定領域よりどの位広い範囲を二次元に展開するかは、縮尺に応じて設定することができる。
【0045】
次に、数値地図データベース43を用いて、加工領域内の点の三次元座標を決定する。具体的には、NC加工装置における加工ピッチごと、緯度経度点と対応する二次元座標(x,y)に、数値地図データベースから読み出される標高値、縮尺、及び高さ強調倍率に基づいて高さ方向のz値を付与する(ステップS13)。これにより、加工領域内の点について三次元座標(x,y,z)で記述された三次元座標データを得ることができる。
【0046】
ここで、高さ強調倍率とは、実際の地形より高さが強調された地形模型を作製するために、高さ方向に拡大する倍率である。本実施形態では高さ強調倍率を予め定めておく設定としているが、縮尺に応じて高さ強調倍率を変化させても良い。或いは、需要者端末3から高さ強調倍率が入力されるようにしても良い。また、地形模型の加工用原材料の板材の厚さには限りがあるため、加工領域における標高差が大きい場合、高さ強調倍率のデフォルト値または需要者の所望した高さ強調倍率を用いたのでは、板材の厚さが足りなくなることがあり得る。この場合は、標高差及び板材の厚さに基づいて高さ強調倍率を変更し、三次元座標を算出する。
【0047】
上記の処理により、加工領域における三次元座標データが求められたため、このデータを用いてNC加工を行うことが可能であるが、本実施形態では、需要者端末3に地形模型の仕上がりイメージを三次元的に表示し、需要者がこれを確認した上で注文を確定することとしている。そのため、三次元座標データに基づいて、加工領域の地形を三次元的に表現する三次元画像データを作成し、図7に例示するように、需要者端末3の表示画面50にイメージ画像65を表示させる(ステップS14)。なお、三次元画像データの作成に当たっては、全ての三次元座標データを用いることなく、適宜データを間引いたものを用いることにより、イメージ画像65を表示する動作速度が遅くなること、いわゆる「重く」なることを防止することができる。
【0048】
また、表示画面50には、イメージ画像を回転させるアイコン56、拡大または縮小するアイコン57、移動させるアイコン58が表示されると共に、緯度経度情報が緯度経度表示部66に、模型寸法情報が模型寸法表示部67に表示される。更に、地形模型の見積価格が算出され、表示画面50の価格表示部68に表示される(ステップS15)。ここで、地形模型の作製にかかるコストは、原材料の板材の大きさ、縮尺等によって異なる。そこで、地形模型の寸法、縮尺等のパラメータと対応させて予め価格や価格の計算式を定めて記憶させておいた価格テーブル44を参照することにより、見積価格が算出される。
【0049】
表示画面50に表示されたイメージ画像65によって、需要者は作製される地形模型の仕上がりイメージを確認し、地形模型が自分の意図や用途に合致しているかを評価する。なお、表示画面50に表示されたイメージ画像65を需要者端末3のプリンタから出力しておくことにより、作製された地形模型を入手した際にこれと対比することもできる。
【0050】
イメージ画像65が表示された表示画面50には、「STEP3 注文情報入力へ」というアイコン59が表示されており、イメージ画像65及び見積価格を確認して注文を決定した需要者によりアイコン59が操作されると(ステップS16においてYes)、需要者の氏名、住所、メールアドレス、注文個数等から構成される注文情報を入力するための注文情報入力フォームが需要者端末3に表示される(ステップS17)。
【0051】
需要者端末3の画面には注文情報入力フォームと共に「注文する」というアイコンが表示されており、需要者によって注文情報入力フォームに入力がなされた後にこのアイコンが操作されると(ステップS18においてYes)、入力された内容で注文情報が取得される。また、注文番号が発行され、需要者端末3に表示される(ステップS19)。更に、注文情報、注文番号、及び、代金の支払方法を記載したメールが、事業者サーバ2から需要者端末3に送信される(ステップS20)。
【0052】
また、事業者サーバ2は、注文番号、注文情報、見積価格、加工領域の三次元座標データ、縮尺、模型寸法情報等の各種情報を、インターネットを介してNC加工管理装置6に送信し(ステップS21)、一つの需要者端末3からの地形模型の受注処理を終了する。
【0053】
一方、NC加工管理装置6では、事業者サーバ2から受信した加工領域の三次元座標データ、縮尺、模型寸法情報に基づいて、NC加工用のNCデータを作成する。作成されたNCデータは、NC加工管理装置6からLAN5を介してNC加工装置7に送出され、NC加工装置7はNCデータに基づいて地形模型の加工を行う。
【0054】
また、NC加工管理装置6は、NC加工に関する各工程の進度に応じて、「NCデータ作成中」、「NCデータ作成終了、加工待ち」、「NC加工中」、「NC加工終了」等の加工進度情報を更新し、注文番号、注文情報等と共に管理する。
【0055】
上記のように、本実施形態の受注システム11によれば、地形模型の対象とする領域を需要者が任意に指定することができる。また、需要者からの注文を、インターネットを介して事業者サーバ2が自動的に受注するシステムであるため、省力化により地形模型の作製コストを低廉なものとすることができる。
【0056】
加えて、本実施形態では、三次元座標データ及びNCデータが自動的に作成され、NC加工装置7によって自動的に地形模型が加工される。すなわち、地形模型の受注から地形模型の作製までの全過程が自動化されている。これにより、一層の省力化を図り、短時間で地形模型を作製することができると共に、地形模型を一般需要者が購入し易い低価格のものとすることができる。
【0057】
更に、本実施形態では、予め地形模型の仕上がりイメージを画面上で確認し、所望する要件を満たしているか否かの評価を行ってから、地形模型を発注することができるため、需要者の期待感を損なうおそれや、出来上がった地形模型が用途に適さないものとなるおそれを低減することができる。加えて、イメージ画像は、実際に地形模型がNC加工される際に使用される三次元座標データと同一の三次元座標データを用いて作製されるため、イメージ画像と実際の地形模型との同一性が高く、イメージ画像により評価を行う意義が高い。
【0058】
また、本実施形態では、指定領域を指定する際は三次元の地図画像を用い、球体である地球を俯瞰するような態様とすることにより、需要者が所望する領域を世界規模で容易に選択することができる。一方、実際に作製される地形模型は、本来三次元である指定領域を地図投影法により二次元に展開した上で作製している。これにより、二次元的な地図に高さ方向の凹凸が施された、需要者が一般的に所望する態様の地形模型を提供することができる。
【0059】
更に、本実施形態では、指定領域を二次元に展開するための地図投影法の種類を、縮尺または緯度経度情報に応じて決定しているため、球体である地球を平面に展開するに当たって回避することができない地形の歪みを小さく抑え、実際の地形をより反映した地形模型を作製することができる。
【0060】
また、加工領域を矩形としているため、底面が矩形である整った形状の地形模型を需要者に提供することができる。加えて、指定領域より広い範囲を二次元に展開してから、展開された指定領域を包含する最小の矩形範囲として加工領域を決定しているため、指定領域が欠けてしまうことなく、且つ、地形模型の外縁付近に加工されない部分が生じることなく、平面視が矩形の地形模型を作製することができる。
【0061】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0062】
例えば、主要な地名や建造物名を、緯度・経度と対応させて記憶させたデータベースを備えることにより、指定領域の指定に際して表示画像に表示させる範囲を、地名や建造物名などに基づいて検索できるシステムとすることができる。
【0063】
また、注文情報が需要者端末から入力されるステップにおいて、地形に加えて付加的な要素の加工を注文できるようにしても良い。例えば、行政界、海岸線、湖岸線、主要道路、鉄道の緯度・経度データを記憶させたデータベースを備えた構成とし、これらの要素の加工の要否をチェックマークによって入力できる入力フォームを、需要者端末に表示させる。そして、その選択に基づき、これらの要素の緯度・経度データを用いてNCデータを作成することにより、例えば行政界や海岸線等に沿って所定の深さで溝が加工された地形模型を作製することができる。これにより、需要者の要望に対して、より細やかに対応できる受注システムとすることができる。
【0064】
また、上記の実施形態では、NC加工管理装置6はNC加工の進度を常に注文番号と共に把握しているため、需要者端末3から事業者サーバ2に注文番号を用いて問合せを行うことにより、事業者サーバ2が更にNC加工管理装置6に注文番号を用いて問合せをし、サーバ装置2を介してNC加工管理装置6から需要者端末3に、地形模型の作製の進展状況を知らせる構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態である地形模型の受注システムの構成図である。
【図2】図1の事業者サーバの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の事業者サーバにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図1の需要者端末における表示画面を説明する説明図である。
【図5】図1の需要者端末における表示画面を説明する説明図である。
【図6】図1の需要者端末における表示画面を説明する説明図である。
【図7】図1の需要者端末における表示画面を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 受注システム(地形模型の受注システム)
2 事業者サーバ
2a,2b サーバ装置(事業者サーバ)
3 需要者端末
6 NC加工管理装置
7 NC加工装置
12 地図画像表示手段
22 緯度経度情報取得手段
24 縮尺・模型寸法取得手段
26 展開手段
28 三次元座標算出手段
29 イメージ画像表示手段
40a,40b 補助記憶装置(記憶装置)
41 地図画像用データベース
42 数値地図データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要者端末と、
該需要者端末とインターネットを介して通信可能に接続された一以上のサーバ装置を備える事業者サーバと、
該事業者サーバが前記需要者端末からの入力により受注した地形模型をNC加工するNC加工装置とを具備し、
前記事業者サーバは、
地図画像用データベース及び緯度・経度・標高値により記述された数値地図データベースを記憶した一以上の記憶装置、
前記需要者端末からの要求に応じ、前記地図画像用データベースを使用して地図画像を前記需要者端末に表示させる地図画像表示手段、
前記需要者端末からの入力に基づき、需要者が地形模型として所望する領域として指定された指定領域の緯度経度情報を取得する緯度経度情報取得手段、
前記需要者端末からの入力に基づき、地形模型の縮尺及び模型寸法情報を取得する縮尺・模型寸法取得手段、
前記数値地図データベース及び前記緯度経度情報に基づき、前記指定領域内の緯度・経度で特定される点に標高値が付与された三次元座標データを算出する三次元座標算出手段を備え、
前記NC加工装置は、前記三次元座標データ、前記縮尺、及び前記模型寸法情報に基づいて三次元の地形模型のNC加工を行う
ことを特徴とする地形模型の受注システム。
【請求項2】
前記事業者サーバは、前記指定領域内の緯度・経度で特定される点を予め定めた地図投影法により二次元座標上の点に変換する展開手段を更に備え、
前記三次元座標算出手段は、変換された前記二次元座標上の点に標高値が付与された三次元座標データを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の地形模型の受注システム。
【請求項3】
前記指定領域は二つの緯線及び二つの経線で囲まれた領域であり、
前記展開手段は、前記指定領域より広い領域内で緯度・経度で特定される点を前記予め定めた地図投影法により二次元座標上の点に変換し、
前記三次元座標算出手段は、変換された前記二次元座標上の前記指定領域を包含する最小の矩形で囲まれる範囲内の点に標高値が付与された三次元座標データを算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の地形模型の受注システム。
【請求項4】
前記展開手段は、前記予め定めた地図投影法として、前記縮尺または前記緯度経度情報に基づいて複数種類の地図投影法の中から選択された地図投影法を用いる
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の地形模型の受注システム。
【請求項5】
前記事業者サーバは、前記三次元座標データに基づき、地形模型の仕上がりイメージとして三次元の画像を前記需要者端末に表示させるイメージ画像表示手段を、更に備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の地形模型の受注システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−107861(P2010−107861A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281651(P2008−281651)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(308018970)徳田工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】