説明

地理画像処理装置、及びプログラム

【課題】人工衛星等から撮影したハイパースペクトル画像から、抽出対象の領域を抽出するのに適したバンドを自動的に選択することができる画像処理システムを提供する。
【解決手段】複数の波長帯域もつ地理画像を処理する地理画像処理装置であって、分類クラスごとに、複数の波長帯域に対応するスペクトルデータを格納する学習用データ格納手段と、分類クラスごとのスペクトルデータに基づいて、1つの処理対象の分類クラスについて他の分類クラスと比較して特徴ある波長帯域を選択するバンド選定処理手段と、バンド選定処理手段によって選択された処理対象の分類クラスの波長帯域の情報を、被覆分類処理をする際に使用する分類バンドデータとして格納する分類バンドデータ格納手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星画像や航空写真などで得られる多バンドのスペクトル画像(以降、ハイパースペクトル画像と呼称する)を使用して、撮影した地域を、森林・水域・畑地などのクラスに分類する(被覆分類)処理を行う地理画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛星画像や航空写真画像(以下地理画像と呼称する)の利用が広まってきており、被覆分類や、地図の作成・更新における広大な領域の探査を効率的に行う用途などに利用されている。地理画像の利用により、現地調査にかかるコストを削減でき、広い範囲の調査を効率的に行うことができる。
【0003】
領域の被覆分類を行う際には、地理画像のハイパースペクトル画像を利用する方法が提案されている(非特許文献1)。ハイパースペクトル画像とは、ハイパースペクトルセンサによって感知された対象物のスペクトルを、帯域ごとに画像化したものである。ハイパースペクトルセンサは、可視光から近赤外線までの領域を、多くの帯域でデータ収集することができる。ハイパースペクトル画像は、対象物によってスペクトルの特性は異なるため(図3参照)、この特徴を利用することで被覆分類を行うことができる。従来は波長分解能が数10ナノメートル程度であったが、最近では技術の進展にともない、波長分解能が数ナノメートルから10ナノメートル程度に向上されたセンサが実用化されている。
【0004】
【非特許文献1】MicroImages,Inc.「TNT入門 ハイパースペクトル画像分類」,2001年,[平成18年6月10日検索],インターネット,<URL:http://www.microimages.com>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、地理画像を広範囲かつ高分解能な条件で撮影可能となってきたため、従来の地理画像に比べ画像サイズが大きくなってきている。さらに、地理画像の中でもハイパースペクトル画像は一般に数百程度のバンド数の情報を持つため、単バンドの地理画像に比べバンド数の分だけデータが大きい。このような膨大なサイズのハイパースペクトル画像を撮影して被覆分類処理するには、その撮影した地理画像(ハイパースペクトル画像)を格納するための大容量の記憶装置が必要になり、そのコストが問題となっている。例えば、地上分解能1mで10km四方を撮影した場合、100バンドの画像容量は10ギガバイトとなり非常に大きな容量となってしまう。また、このような膨大なデータを用いて、例えば土地の被覆分類処理を行うと処理時間も膨大となる。さらに、ハイパースペクトル画像データに含まれている本質的な情報量はそれほど多くないとする説や、次元数が多くなるとノイズが増えるという問題もある。
【0006】
そのため、ハイパースペクトル画像のバンドから、被覆分類に必要なバンドを効率的に選択する手法の実現が望まれている。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、被覆分類に必要なハイパースペクトル画像のバンドを効率的に選択する処理を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、入力された地図画像に対して効率的に被覆分類処理を行うシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
鋭意研究の結果、本発明者は、各クラスを認識するのに必要十分なバンドの組み合わせをあらかじめ求め、地理画像の撮影時には必要なバンドのみを記録し、そのバンドのみを使用して対象クラスの被覆分類を行うことにより、上記課題が解決されることに想到した。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、地理画像に含まれるハイパースペクトル情報の中から対象とする分類クラスを分類可能なバンドを選択するためのシステムであって、バンド選定処理手段を備えていることを特徴とするシステムを提供するものである。
【0011】
即ち、本発明による地理画像装置は、複数の波長帯域をもつ地理画像を処理する地理画像処理装置であって、分類クラスごとに、複数の波長帯域に対応するスペクトルデータを格納する学習用データ格納手段と、分類クラスごとのスペクトルデータに基づいて、1つの処理対象の分類クラスについて他の分類クラスと比較して特徴ある波長帯域を選択するバンド選定処理手段と、バンド選定処理手段によって選択された処理対象の分類クラスの波長帯域の情報を、被覆分類処理をする際に使用する分類バンドデータとして格納する分類バンドデータ格納手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
より具体的に、バンド選定処理手段は、各波長領域について処理対象の分類クラスと他の分類クラスのスペクトルデータの差分絶対値を算出し、各波長領域において最小差分絶対値を取得し、この各波長領域における最小差分絶対値のうち、総和が所定の閾値を越える値を取る組合せの波長領域の情報を選定する。さらに詳細には、バンド選定処理手段は、各波長領域における最小の差分絶対値について大きい値を取る順に並べ替え、大きい最小差分絶対値から累積加算値を算出し、その累積加算値が前記所定の閾値を越えた場合に、その累積加算値を構成する波長領域の情報を選定するようにしてもよい。
【0013】
本発明による地理画像処理装置は、複数の波長帯域に対応するスペクトルデータを有する地理画像を被覆分類する地理画像処理装置であって、複数の分類クラスについて、被覆分類処理をする際に使用する波長領域を示す分類バンドデータを格納する分類バンドデータ格納手段と、指定された分類クラスのデータを取得する手段と、指定された分類クラスについて分類バンドデータを取得し、その取得した分類バンドデータに含まれる波長領域に対応するスペクトルデータからなる地理画像を取得する処理画像取得手段と、指定された分類クラス毎に、処理画像取得手段によって得られた地理画像のスペクトルデータを用いて被覆分類処理を実行する被覆分類処理手段と、を備えることを特徴とする。なお、分類バンドデータをなす波長領域の情報は、前述の手順によってバンド選定処理手段によって選定され、分類バンドデータとして分類バンドデータ格納手段に格納されている。
【0014】
なお、本発明によれば、コンピュータを上述の地理画像処理装置として機能させるためのプログラムをも提供される。
【0015】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被覆分類に必要なハイパースペクトル画像のバンドを効率的に選択でき、また、入力された地図画像に対して効率的に被覆分類処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の地理画像処理システムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。図1〜図7は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。なお、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではないことに注意すべきである。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、本実施形態にかかる発明の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【0018】
<地図画像処理システムの構成>
図1は、本発明の地理画像処理システムの構成を概略的に示すブロック図である。図1において、本システムは、パソコン、ワークステーション等から構成される処理装置10と、メインメモリとして使用されるRAM(ランダムアクセスメモリ)及び磁気ディスク記憶装置等の補助記憶装置とを含む記憶装置20と、入出力装置30とを備えている。
【0019】
入出力装置30は、キーボード及びマウス等のポインティングデバイスを含む入力装置31と、CRTディスプレイ装置等の表示装置32と、プリンタ33とを備えている。入力装置31は、ユーザによるパラメータの入力やコマンドの起動等、並びに本システムにより分類クラスごとの最適なスペクトルの組み合わせのデータの生成に用いられる。表示装置32及びプリンタ33は、本システムによる地理画像やスペクトルの組み合わせデータをユーザに提示するために用いられる。尚、表示装置としては、表示装置32及びプリンタ33のいずれか一方のみを備える構成としてもよい。
【0020】
処理装置10は、地理画像処理プログラム40を含んでいる。地理画像処理プログラム40は、プログラムモジュールとして、各分類クラスを被覆分類をする際の最適なバンドの組み合わせを求めるバンド選定処理部100と、地理画像に対して指定した分類クラスの被覆分類を行う被覆分類処理部200と、を含む。
【0021】
記憶装置20は、教師データ21、分類バンドデータ22、地理画像データ23を記憶する。これらのうち、教師データ21は、インターネットなどで入手可能な各分類クラスのスペクトルデータである。図3は教師データを例示する図であり、水域、土壌などの分類クラスにおける、波長と反射率の関数を示している。
【0022】
一方、分類バンドデータ22は、本システムにおいて教師データ21に基づいて生成されるデータである。分類バンドデータ22は、教師データ21をもとに、分類対象となるクラスごとの最適なバンドの組み合わせのデータが格納される(図5参照)。分類クラスは、例えば“水域”や“森林”や“道路”といった被覆分類する際の分類項目である。分類クラスは、ユーザの要求に合わせて自由に設定可能である。
【0023】
また、地理画像データ23は、ハイパースペクトル画像データである。ただし、ユーザによって指定された被覆分類クラスを分類するのに必要なバンドのデータだけが格納されている。つまり、地理画像データを構成する全てのハンドデータのうち、後述の図5で示される分類クラスに対応する分類バンドデータのみを格納する。例えば、ユーザがある航空写真画像データについて森林、水域、及び土壌の3つを被覆分類する場合、その航空写真画像データを構成する全てのスペクトルバンドデータではなく、森林に対応するバンド2及びN−1、水域に対応するバンド3、N−1及びN、土壌に対応するバンド1及び3のスペクトルデータのみを地理画像として記憶装置20に格納する。
【0024】
<地理画像処理の詳細>
以下、本発明の画像処理システムにおけるバンド選定処理部100および被覆分類処理部200の処理について、詳細を説明する。本システムにおいて、地理画像処理プログラム40が起動されると、バンド選定処理部100あるいは被覆分類処理部200が実行される。どちらかの処理を行うかはユーザによって選択される。以下、処理の詳細を述べる。
【0025】
まずバンド選定処理部100について説明する。図2は、地理画像処理プログラム40の分類バンド選定処理部100による処理の流れを示すフローチャートである。図2において、分類バンド選定処理部100は、まず記憶装置20から教師データ21を読み込む(S101)。次に未処理の分類クラスを一つ選択する(S102)。次に当該分類クラスの各バンドにおける独立度を計算する。独立度とは、各バンドにおいてある分類クラスのスペクトルが他の分類クラスのスペクトルとどの程度異なる値を持っているかを示す指標である。すなわち、注目している分類クラスのあるバンドにおけるスペクトルが、他の分類クラスの当該バンドのスペクトルと同様の値を持っていれば独立度は小さく、乖離した値を持っていれば独立度は大きい。図4を参照しながら独立度の算出方法を述べる。図4(a)はAからDまでの分類クラスの、各波長における反射率を示している。ここでは例として分類クラスAにおける独立度を求める。
【0026】
各バンドにおいて、注目している分類クラスAと各分類クラスとの反射率の差分絶対値をとる。次に、求めた差分絶対値の中から最小値を求める。この最小値を、注目している分類クラスの当該バンドにおける独立度とする。図4(b)はバンド5における説明図であり、dAB、dAC、dADは分類クラスAに対する分類クラスB,C,Dとの反射率の差分絶対値を表している。この例ではdADが最小値をとるのでdADがバンド5における独立度d5となる。
【0027】
フローチャートに戻り、ステップS103で求めた各バンドにおける独立度を降順に並べ替える(S104)。この後ステップS105、S106、S107で、当該分類クラスを判別するためのバンドの選定処理を行う。まず独立度が高いバンドの順に独立度の値を累積加算する(S105)。例えば図4(a)では、dが最も独立度が高いのでこれをまず加算する。次に、累積加算値があらかじめ設定した閾値以上かどうかを判定する(S106)。
【0028】
ステップS106において累積加算値が閾値以上と判断されればループを抜ける。閾値に満たなければステップS105に戻り、一順前に使用した独立度の次に高い独立度を累積加算する。そしてステップS106で累積独立度が閾値以上となるまで処理を繰り返す。図4(c)では独立度をd、d、dと順に加算していき、dを加算した時点で累積独立度が閾値を超える。ここで用いる閾値は、ユーザによって任意に設定可能である。閾値が高ければ分類の精度は上がるがその分多数のバンドが必要になり記憶容量が増大する。閾値を低く設定すればその逆となる。
【0029】
そして累積独立度の計算に使用したバンドを当該分類クラスの分類用バンドとする(S107)。すなわち他の分類クラスに対して独立度が高いバンドを選択するため、当該分類クラスを識別する際には、それらのバンドを用いれば十分である。例えば図4の例では、バンド1、6及び7のデータを用いて被覆分類処理を行えば、分類クラスAを他の分類クラスと識別可能となる。さらに、当該分類クラスを特定するためのバンド数を、選択したバンド数だけに抑えることができる。このようにしてステップS102で選択した分類クラスを識別するためのバンドを選定する。そして、未処理の分類クラスがなくなるまでステップS102からS107までの処理を繰り返し行う。このようにしてすべての分類クラスに対して、識別するためのバンドの選定を行い、各分類クラスとその分類用バンドの対応データを分類バンドデータ22として記憶装置20に格納する。
【0030】
図5は分類バンドデータ22の一例である。ユーザが、ある地域の例えば“森林”の分布が必要な場合、人工衛星や航空機に搭載されたカメラによって当該地域を撮影する際には、分類バンドデータを参照し、“森林”クラスの分類用バンドだけを記憶媒体に格納すれば十分である。このためハイパースペクトル画像データのすべてのバンドデータを保持する必要がないため記憶容量を削減できる。また、必要なバンドのみを使用して被覆分類処理を行えば十分であるため処理時間を短縮できる。
【0031】
また、1枚の地理画像に対して複数の分類クラスの分布を求めることも可能である。その場合は、地理画像撮影時に各分類クラスの分類用バンドを記憶装置に格納すればよい。例えば“森林”と“水域”の分布を求める際には、地理画像撮影時に“森林”クラスの分類用バンドと“水域”クラスの分類用バンドを記憶媒体に格納すればよい。
【0032】
続いて、被覆分類処理部200の処理について説明する。被覆分類処理部200は、分類バンド選定処理部100によって分類バンドデータ22を求め、それによって得られた被覆分類に必要なバンドの画像データを、人工衛星などからの撮影によって取得した後に行う。図6は、地理画像処理プログラム40の被覆分類処理部200による処理の流れを示すフローチャートである。図6において、被覆分類処理部200は、ユーザが被覆分類したい分類クラスについての情報を取得し、それに基づいて、記憶装置20から分類バンドデータ22(図5のスペクトルバンドの情報)とその分類バンドデータに対応するスペクトルデータで構成される地理画像データ23を取得する(S201)。ここでいう地理画像データ23はハイパースペクトル画像データであり、ユーザが指定した分類クラスを分類するのに必要なバンドのデータだけが記憶装置20に格納されることになる。図7(a)は地理画像データ23のある1バンドのデータを模式的に示す図である。
【0033】
次に、ステップS202からS205で、ユーザが指定した各分類クラスを1クラスずつ被覆分類していく。まず未処理の分類クラスを一つ選択する(S202)。次に分類バンドデータから、当該分類クラスの分類用バンドを取得する(S203)。そしてその分類用バンドを用いて当該分類クラスの被覆分類を行う(S204)(被覆分類の具体的な方法については非特許文献1を参照。)。この結果図7(b)のように、ステップS202で選択した分類クラス(図7(b)では森林)の分布がわかる。ユーザが指定した分類クラスが1つだけの場合はここで処理を終了となり、2つ以上の場合はステップS206からステップS202に戻り処理を繰り返す。このようにして、指定した分類クラスすべてについて被覆分類を行う。図7(c)は処理結果を模式的に示す図である。この図では分類クラスとして、森林、土壌、水域を指定した例である。どの分類クラスにも該当しない領域はその他領域としてひとまとめに分類される。
【0034】
<まとめ>
本実施形態によれば、教師データとして、分類クラスごとに、複数の波長帯域に対応するスペクトルデータを有し(図3参照)、分類クラスごとのスペクトルデータに基づいて、1つの処理対象の分類クラスについて他の分類クラスと比較して特徴ある波長帯域を選択する。この選択された処理対象の分類クラスの波長帯域の情報は、被覆分類処理をする際に使用する分類バンドデータとして格納される(図5参照)。この分類バンドデータを用いれば、全てのバンド(波長領域)について処理する必要がないので、被覆分類処理が短時間で効率的に行うことができる。また、被覆分類処理の対象である航空写真画像等の地理画像データも全てのバンドについてスペクトルデータを格納する必要がないので、装置の記憶装置の容量を大幅に削減することができる。
【0035】
より具体的に、バンド選定処理については、各波長領域について処理対象の分類クラスと他の分類クラスのスペクトルデータの差分絶対値を算出し、各波長領域において最小差分絶対値を取得し、この各波長領域における最小差分絶対値のうち、総和が所定の閾値を越える値を取る組合せの波長領域の情報を選定する。さらに詳細には、各波長領域における最小の差分絶対値について大きい値を取る順に並べ替え、大きい最小差分絶対値から累積加算値を算出し、その累積加算値が前記所定の閾値を越えた場合に、その累積加算値を構成する波長領域の情報を選定するようにしてもよい。このようにすることにより、各分類クラス(例えば、森林、土壌、水域等)について、確実に、かつ効率的に特徴ある波長領域(バンド)を選定することができる。
【0036】
また、本実施形態では、複数の波長帯域に対応するスペクトルデータを有する地理画像を被覆分類する処理も開示されている。本実施形態では、複数の分類クラス(例えば、森林、土壌、水域等)について、被覆分類処理をする際に使用する波長領域を示す分類バンドデータが記憶装置に格納されている。そして、ユーザによって分類クラスが指定され、その指定された分類クラスについて分類バンドデータを記憶装置から取得する。その取得した分類バンドデータに含まれる波長領域に対応するスペクトルデータからなる地理画像を取得し、指定された分類クラス毎に、地理画像のスペクトルデータを用いて被覆分類処理を実行する。このようにすることにより、被覆分類対象となる地域を撮影する際には、必要なバンドのみを保存すればよいので、地理画像データを格納するための記録装置の容量を小さくすることができる。例えば、地上分解能1mで10km四方を撮影した場合、100バンドの画像容量は10ギガバイトとなるが、必要なバンド数が20バンドであれば2ギガバイトとなり、記憶容量を大幅に削減できる。また、処理対象のデータ数が少なくて済むので、処理時間を削減することができる。なお、分類バンドデータをなす波長領域の情報は、前述の手順によって選定され、分類バンドデータとして記憶装置内に格納されている。
【0037】
なお、本実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても本発明は実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピィ(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0038】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0039】
また、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードがネットワークを介して配信されることにより、システム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納され、そのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても、達成されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の地理画像処理システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】地理画像処理プログラムの分類バンド選定処理のフローチャートである。
【図3】被覆分類項目のハイパースペクトル特性の概要を例示する図である。
【図4】図1に示す地理画像処理プログラムの分類バンド選定処理の説明図である。
【図5】本発明の分類バンドデータを例示する図である。
【図6】地理画像処理プログラムの被覆分類処理のフローチャートである。
【図7】本発明の地理画像データと被覆分類結果を例示する図である。
【符号の説明】
【0041】
10 処理装置
20 記憶装置
21 教師データ
22 分類バンドデータ
23 地理画像データ
30 入出力装置
31 入力装置
32 表示装置
33 プリンタ
40 地理画像処理プログラム
100 分類バンド選定処理部
200 被覆分類処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長帯域をもつ地理画像を処理する地理画像処理装置であって、
分類クラスごとに、複数の波長帯域に対応するスペクトルデータを格納する学習用データ格納手段と、
前記分類クラスごとのスペクトルデータに基づいて、1つの処理対象の分類クラスについて他の分類クラスと比較して特徴ある波長帯域を選択するバンド選定処理手段と、
前記バンド選定処理手段によって選択された前記処理対象の分類クラスの波長帯域の情報を、被覆分類処理をする際に使用する分類バンドデータとして格納する分類バンドデータ格納手段と、
を備えることを特徴とする地理画像処理装置。
【請求項2】
前記バンド選定処理手段は、各波長領域について前記処理対象の分類クラスと他の分類クラスのスペクトルデータの差分絶対値を算出し、各波長領域において最小差分絶対値を取得し、この各波長領域における最小差分絶対値のうち、総和が所定の閾値を越える値を取る組合せの波長領域の情報を選定することを特徴とする請求項1に記載の地理画像処理装置。
【請求項3】
前記バンド選定処理手段は、前記各波長領域における最小の差分絶対値について大きい値を取る順に並べ替え、大きい最小差分絶対値から累積加算値を算出し、その累積加算値が前記所定の閾値を越えた場合に、その累積加算値を構成する波長領域の情報を選定することを特徴とする請求項2に記載の地理画像処理装置。
【請求項4】
複数の波長帯域に対応するスペクトルデータを有する地理画像を被覆分類する地理画像処理装置であって、
複数の分類クラスについて、被覆分類処理をする際に使用する波長領域を示す分類バンドデータを格納する分類バンドデータ格納手段と、
指定された分類クラスのデータを取得する手段と、
前記指定された分類クラスについて前記分類バンドデータを取得し、その取得した分類バンドデータに含まれる波長領域に対応するスペクトルデータからなる地理画像を取得する処理画像取得手段と、
前記指定された分類クラス毎に、前記処理画像取得手段によって得られた前記地理画像のスペクトルデータを用いて被覆分類処理を実行する被覆分類処理手段と、
を備えることを特徴とする地理画像処理装置。
【請求項5】
前記分類バンドデータをなす波長領域の情報は、前記分類クラスごとのスペクトルデータに基づいて、1つの処理対象の分類クラスについて他の分類クラスと比較して特徴ある波長帯域がバンド選定処理手段によって選択されることを特徴とする請求項4に記載の地理画像処理装置。
【請求項6】
前記バンド選定処理手段は、各波長領域について前記処理対象の分類クラスと他の分類クラスのスペクトルデータの差分絶対値を算出し、各波長領域において最小差分絶対値を取得し、この各波長領域における最小差分絶対値のうち、総和が所定の閾値を越える値を取る組合せの波長領域の情報を選定することを特徴とする請求項5に記載の地理画像処理装置。
【請求項7】
前記バンド選定処理手段は、前記各波長領域における最小の差分絶対値について大きい値を取る順に並べ替え、大きい最小差分絶対値から累積加算値を算出し、その累積加算値が前記所定の閾値を越えた場合に、その累積加算値を構成する波長領域の情報を選定することを特徴とする請求項6に記載の地理画像処理装置。
【請求項8】
コンピュータを請求項1乃至7の何れか1項に記載の地理画像処理装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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