説明

地盤改良攪拌装置

【目的】支持力の低下が防止される柱状体を造成する地盤改良攪拌装置を提供すること。
【構成】回転軸と、前記回転軸の先端に設けられる掘削部材と、前記回転軸の外周に設けられる攪拌部材と、前記回転軸の外周に、前記回転軸の回転が伝播しないように枢設される共回り防止部材と、を備え、前記掘削部材が回転して地盤を掘削し、前記攪拌部材が回転して掘削土と地盤固化材とを混合攪拌して地盤中に柱状体を形成する地盤改良攪拌装置であって、前記掘削部材は、掘削方向に突設される可撓性の掘削攪拌補助部材を備える、ことを特徴とする地盤改良攪拌装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は地盤改良攪拌装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱な地盤上に住宅等を建築する場合において、その地盤を強化する方法の一つとして、地盤を掘削し縦穴を形成し、その掘削土と地盤固化材(セメントミルク)とを混合して縦穴に柱状体を造成して、地盤の支持力を高める地盤改良工法がある。この工法は、例えば図6(a)に示す地盤改良攪拌装置100により行われる。まず、昇降回転可能に設けられた回転軸101を回転しながら地盤に貫入し、その先端の掘削部材102により地盤を掘削する(図6(b)及び(c)を参照)。所定の深さまで掘削した後、回転軸101の先端に設けられた吐出口105から地盤固化材を吐出するとともに回転軸101を回転しながら引き上げる。これにより、回転軸101に横方向へ突設された掘削部材102、攪拌翼103、104が回転して掘削土と地盤固化材とを混合攪拌する。このとき、共回り防止部材106が掘削土と地盤固化材が掘削部材102、攪拌翼103、104と共回りすることを防止することにより、混合攪拌作用が高まる。このようにして地盤中に柱状体を造成して地盤を改良する。
【0003】
【特許文献1】特開平8‐13473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記地盤改良攪拌装置100では、掘削部材102の先端(回転軸の先端)は例えば円錐状に突出している。軟弱地盤の下に掘削が困難なほど硬い地盤が存在する場合、このような地盤改良攪拌装置100では造成される柱状体の下端が硬い地盤内に埋め込まれないため、支持力が低下するおそれがある。より詳細には、図7(a)に示す柱状体900の下端近傍の模式図を用いて説明する。掘削部材102の先端が軟弱地盤を掘削して、掘削が困難なほど硬い地盤90に到達すると、掘削部材102は地盤90を掘削できずに強い反発力を受けて押し戻される。そのため、地盤90近傍の軟弱地盤を十分に掘削することができない。加えて、地盤90から受ける反発力により、地盤90近傍では掘削土と回転軸の先端近傍の吐出口から放出される地盤固化材とを十分に攪拌することができず、吐出口近傍が積極的に固化する。その結果、図7に示すように、造成される柱状体900の下端は先端部901が略円錐状に突出した形状となる。このとき柱状体900の下端は硬い地盤90に埋め込まれず、軟弱地盤中に形成されることとなる。このように造成された柱状体900では、その下端が軟弱地盤中に存在するため荷重によって沈下するおそれがある。さらに柱状体900への荷重は下端の先端部901に集中することとなる。荷重が先端部901に過度に集中すると先端部901が破損し、柱状体900の支持力を著しく低下させる。
一方、柱状体を造成する軟弱地盤の下に擁壁の底板や地下車庫等のコンクリート体が存在する場合、地盤改良攪拌装置の掘削部材がコンクリート体に接触してコンクリート体を損傷することを防止する必要がある。そのため、コンクリート体の近傍では掘削土と地盤固化材を十分に攪拌することが困難である。その結果、このような場合においても、造成される柱状体の先端は略円錐状に突出した形状となりやすく、上述の場合と同様の結果を招く。
そこで、本発明は支持力の低下が防止される柱状体を造成する地盤改良攪拌装置を提供することを課題の一つとする。また、擁壁の底板や地下車庫等のコンクリート体の損傷を防ぐ地盤改良攪拌装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以上の課題を少なくとも一つを解決するためになされたものであり、以下の構成からなる。即ち、
回転軸と、
前記回転軸の先端に設けられる掘削部材と、
前記回転軸の外周に設けられる攪拌部材と、
前記回転軸の外周に、前記回転軸の回転が伝播しないように枢設される共回り防止部材と、
を備え、前記掘削部材が回転して地盤を掘削し、前記攪拌部材が回転して掘削土と地盤固化材とを混合攪拌して地盤中に柱状体を形成する地盤改良攪拌装置であって、
前記掘削部材は、掘削方向に突設される可撓性の掘削攪拌補助部材を備える、ことを特徴とする地盤改良攪拌装置である。
【発明の効果】
【0006】
このように構成された地盤改良攪拌装置によれば、掘削部材に対して掘削方向に突設される掘削攪拌補助部材は可撓性を有するため、掘削が困難なほど硬い地盤に掘削部材が到達した場合に生じる、地盤からの反発力を低減することができる。これにより、攪拌段階において、硬い地盤近傍の掘削土と地盤固化材とを十分に攪拌することができため、造成される柱状体の先端の形状が円錐状に突出した形状とならない。その結果、荷重が柱状体の先端の一部に集中せず、柱状体の破損とこれに伴う支持力の低下が防止される。さらに、掘削部材の掘削方向に突設された掘削攪拌補助部材が可撓性を有するため、擁壁の底板や地下車庫等のコンクリート体へ接触した場合に、これらの損傷を防ぐことができる。加えて、コンクリート体の近傍において掘削土と固化材とを十分に攪拌することができる。その結果、支持力の高い柱状体を造成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の地盤改良攪拌装置における構成要素について詳細に説明する。
回転軸は中空であって昇降回転駆動機によりガイドに沿って回転昇降可能なように立設される。回転軸の先端には掘削部材が設けられる。掘削部材は、回転軸の回転に伴って回転して地盤を掘削可能であれば、その形態は特に限定されない。通常、掘削部材は下方に突出する複数の掘削爪を備え、回転軸の回転に伴って複数の掘削爪が地盤を掘削する。掘削部材の大きさは作製する柱状体の大きさを考慮して決定される。
さらに回転軸の先端近傍には吐出口が形成される。回転軸には地盤固化材注入機に接続されており、地盤固化材注入機から注入された地盤固化材が回転軸の中空部を経て吐出口から吐出される。なお、ここで使用する地盤固化材は特に限定されず、地盤の組成、作製する柱状体の大きさなどを考慮して、公知の地盤固化材の中から適宜選択することができる。
【0008】
掘削部材は可撓性の掘削攪拌補助部材を備える。掘削攪拌補助部材の材質は、可撓性を有する公知の材質を利用することができ、例えば、可撓性を有するエラストマー、プラスティック等をあげることができる。また、金属材料を板ばね状、コイルばね状に成形したものを掘削攪拌補助部材として利用することもできる。金属材料であってもこのような形状とすれば、高い可撓性(弾性)を呈するため、掘削が困難な地盤からの反発力を低減し、擁壁の底板や地下車庫等のコンクリート体の損傷を防ぐことができる。なお、掘削攪拌補助部材の形状を鎖状又はワイヤー状とすることにより、上記材料に限らず種々の金属材料、繊維材料等を掘削攪拌補助部材の材料として採用することができる。掘削攪拌補助部材は以上の材料を組み合わせて形成しても良い。例えば、エラストマー内に金属製のワイヤーを含ませた複合体から掘削攪拌補助部材を形成してもよい。このようにすれば、エラストマーによる可撓性と金属製ワイヤーによる剛性とを併せ持つ掘削攪拌補助部材とすることができる。
掘削攪拌補助部材は掘削部材に対して掘削方向に突設される。掘削攪拌補助部材の形状は特に限定されず、平板状、線(ワイヤー)状などとすることができる。掘削攪拌補助部材の下端は、掘削部材の下端と同じ位置、又は掘削部材の下端よりも下方に位置することが好ましい。このようにすれば、柱状体を造成する軟弱地盤の下に擁壁の底板や地下車庫等のコンクリート体が存在する場合、掘削部材の下端(先端)がコンクリート体に接触してコンクリート体を損傷することがより一層防止されるからである。
掘削攪拌補助部材は、掘削部材に着脱自在に突設されることが好ましい。着脱自在とすれば、必要に応じて、掘削攪拌補助部材を取り付けることができるからである。例えば、地盤を掘削する時には掘削攪拌補助部材を取り付けず、掘削土と地盤固化材とを攪拌する時に掘削攪拌補助部材を取り付けるようにしても良い。掘削部材は複数の掘削攪拌補助部材を備えることとしても良い。使用する掘削攪拌補助部材の個数は、地盤の性質(礫や粘性土の割合など)、必要とされる支持力を考慮して適宜調整することができる。
【0009】
回転軸の外周に攪拌部材が設けられる。撹拌部材は回転軸の回転に伴って回転軸の周方向に回転して、後述の共回り防止部材と協調して掘削土又は掘削土と地盤固化材の混合体を混合撹拌する。撹拌部材は混合撹拌時において、掘削土又は掘削土と地盤固化材との混合体の抵抗に応じて変形するようにしてもよい。撹拌部材の形状は特に限定されず、板状、棒状などの形状とすることができる。撹拌部材の長さは、形成する柱状体の大きさを考慮して決定することができる。回転軸の外周に複数の撹拌部材を設けてもよい。例えば、回転軸の上下方向において異なる位置(即ち、高さが異なる位置)に撹拌部材を複数設けてもよい。
【0010】
撹拌部材は可撓性を有することとしてもよい。このようにすれば、掘削土中の礫、石や粘性土による干渉の低減とともに、掘削土又は掘削土と地盤固化材との混合体に対する反発力が撹拌部材に生じる。この反発力により、撹拌部材が掘削土をすり潰して細粒化する。その結果、掘削土と地盤固化材との混合撹拌作用が一層向上することとなる。特に掘削土が粘性土からなる場合に、撹拌部材に発生する反発力により、粘性土をすり潰して細粒化し、掘削土と地盤固化材の混合撹拌作用が一層向上する。可撓性を有する撹拌部材を構成する材料としては、天然ゴム、合成ゴム等のエラストマー、プラスティックなどを挙げることができる。撹拌部材を構成する材料としてエラストマーを採用すれば、撹拌部材が高い可撓性を有することとなるため、掘削土中の礫、石や粘性土による干渉が一層低減され、掘削土(特に粘性土)のすり潰し効果が増す。
また、金属材料を板ばね状、コイルばね状に成形したものを撹拌部材として利用することもできる。金属材料であってもこのような形状とすれば、高い可撓性(弾性)を呈するため、上記反発力が得られ、混合撹拌作用の向上が図られる。なお、撹拌部材の形状を鎖状又はワイヤ状とすることにより、上記材料に限らず種々の金属材料、繊維材料等を撹拌部材の材料として採用することができる。撹拌部材は以上の材料を組み合わせて形成しても良い。例えば、エラストマー内に金属製のワイヤーを含ませた複合体から撹拌部材を形成してもよい。このようにすれば、エラストマーによる可撓性と金属製ワイヤーによる剛性とを併せ持つ撹拌部材とすることができる。
【0011】
撹拌部材は回転軸の外周に突設する撹拌翼と、撹拌翼に取り付けられる、可撓性を有する補助撹拌部とからなることとしてもよい。可撓性の補助撹拌部を設けることにより、掘削土又は掘削土と地盤固化材との混合体への接触面積が増加するとともに、掘削土又は掘削土と地盤固化材に対する反発力が補助撹拌部に生じて掘削土(特に粘性土)のすり潰し効果が増す。補助撹拌部は撹拌翼に複数個形成しても良い。例えば、ピン状の補助撹拌部を撹拌翼に等間隔に複数個配列させても良い。使用する補助撹拌部の数や配置する間隔は、地盤に含まれる礫、石や粘性土の割合や、形成する柱状体の強度などを考慮して適宜決定することができる。補助撹拌部材を複数個使用する場合は、その材料や形状が全て同一であっても良いことはもちろん、地盤に含まれる礫、石や粘性土の割合や形成する柱状体の強度などを考慮して一部の材料や形状が他と異なるようにしてもよい。
【0012】
共回り防止部材は、回転軸の回転が伝播しないように回転軸の外周に枢設される。共回り防止部材により、混合撹拌時において、撹拌部材が回動するのに伴って掘削土又は掘削土と地盤固化材との混合体とが回動することが防止され、混合撹拌作用が向上する。共回り防止部材は可撓性を有することが好ましい。上述の可撓性を有する撹拌部材と同様に、掘削土又は掘削土と地盤固化材との混合体に対する反発力が共回り防止部材に生じ、共回り防止部材が掘削土をすり潰して細粒化し、掘削土と地盤固化材との混合撹拌作用が一層向上することとなる。特に掘削土が粘性土からなる場合には、この反発力により、粘性土をすり潰して細粒化し、掘削土と地盤固化材の混合撹拌作用が一層向上する。可撓性を有する共回り防止部材を構成する材料としては、上述の可撓性を有する撹拌部材と同様に、天然ゴム、合成ゴム等のエラストマー、プラスティックなどを挙げることができる。撹拌部材を構成する材料としてエラストマーを採用すれば、撹拌部材が高い可撓性を有することとなるため、掘削土中の礫、石や粘性土による干渉が一層低減され、掘削土(特に粘性土)のすり潰し効果が増す。上記可撓性を有する撹拌部材を使用するとともに、可撓性を有する共回り防止部材を使用することが好ましい。掘削土中の礫、石や粘性土による干渉が一層低減され、掘削土(特に粘性土)のすり潰し効果がより一層増すからである。共回り防止部材の形状は特に限定されないが、例えば、回転軸に対して横方向に突出する棒状又は板状とすることができる。
【実施例1】
【0013】
以下この発明の実施例について説明をする。
本発明の実施例である地盤改良撹拌装置1の側面図を図1に示す。図1に示すように、地盤改良撹拌装置1は操作部2と、操作部2に連結されたガイド21と、ガイド21に沿って立設された回転軸3とを備える。回転軸3の下方の先端には掘削部材4が取り付けられている。さらに回転軸3の下方側には撹拌部材5、6及び共回り防止部材7を設けられている。また地盤改良撹拌装置1はミキサー8とパイプ81を介して連結しており、ミキサー8から地盤固化材(セメントミルク)が供給される。
図2に回転軸3の下方先端付近の一部拡大斜視図を示す。図2に示すように、掘削部材4は爪部41、先端部42及び掘削攪拌補助部材43をそれぞれ左右一対備える。爪部41は回転軸3に対して横方向に突出して下方向に向いている。先端部42は回転軸3の軸心上に鋭角に形成されている。掘削攪拌補助部材43はエラストマー製であって、その形状は平面視で矩形の板状である。掘削攪拌補助部材43は爪部41の上方から掘削方向(図2において紙面下方)に向かって突出するように、爪部41の上部にボルト44で固定されている。掘削攪拌補助部材43の下端は爪部41の下端及び先端部42の下端よりも下方に位置している。掘削部材4の上縁には補助撹拌部45が取り付けられている。補助撹拌翼43はエラストマー製であって、その形状は横長の矩形の平板状である。回転軸3の先端近傍には吐出口31が形成されている。吐出口31はミキサー8から供給されたセメントミルクを吐出する。
撹拌部材5は撹拌翼50と補助撹拌部53とからなる。撹拌翼50は棒状であって、回転軸3の側面に回転軸3に対して左右一対に突設されている。撹拌翼50の下縁には鉄製の固定板51とボルト52により補助撹拌部53が取り付けられている。補助撹拌部53は補助撹拌翼43と同様に、エラストマー製であって、その形状は横長の矩形の平板状である。撹拌部材6は撹拌翼60と補助撹拌部63、64とからなる。撹拌翼60は棒状であって、回転軸3の側面に回転軸に対して左右一対に突設されている。撹拌翼60の上縁には固定板61とボルト62により補助撹拌部63が取り付けられている。撹拌翼60の下縁には固定板61とボルト62により補助撹拌部64が取り付けられている。補助撹拌部63、64はエラストマー製であって、補助撹拌部53と同一の形状を有する。撹拌部材5と撹拌部材6は回転軸3の軸心方向からみて直交するように配置されている。
共回り防止部材7は平板部70、補助撹拌部73、74とからなる。平板部70は回転軸3の側面に対して、回転軸の回転が伝播しないように左右一対に枢設されている。平板部70の下縁には鉄製の固定板71とボルト72により補助撹拌部73が取り付けられている。平板部70の上縁には鉄製の固定板71とボルト72により補助撹拌部74が取り付けられている。
【0014】
地盤改良撹拌装置1の第1の使用態様の概要を図3(a)〜(d)に示す。第1の使用態様では、軟弱地盤の下に掘削が困難なほど硬い地盤が存在する。まず所定位置に地盤改良撹拌装置1を設置し、回転軸3を回転降下する(図3(a))。これに伴って、掘削部材4が回転して地盤に押圧されて地盤を掘削しながら地盤中に貫入していく(図3(b))。掘削が困難な硬い地盤90まで掘削する(図3(c))。その後、吐出口31からセメントミルクを吐出しながら回転軸3を逆回転させて回転上昇させて、地盤改良撹拌装置1を地盤から引き上げ、柱状体91を地盤中に造成する(図3(d))。
図3(c)に示すように、地盤90は、掘削部材4では掘削できない程度に硬い地盤であるが、掘削部材4が地盤90に到達しても、可撓性を有する掘削撹拌補助部材43が地盤90からの反発力を低減し、地盤90近傍まで掘削することができる。さらに、掘削撹拌補助部材43により、地盤90近傍で掘削土とセメントミルクとが十分に撹拌混合されることとなる。その結果、図3(d)に示すように、造成された柱状体91の下端92は地盤90に沿って略平面状に形成される。このように、柱状体91の下端92が地盤90に沿って平面状となっているため、柱状体91にかかる建物の荷重が下端92の一部ではなく、略全面にかかることとなる。その結果、荷重が下端92の一部に集中せず、柱状体91の下端92の破損と、これに伴う柱状体91の支持力の低下が防止される。
ここで、図3(b)に示すように回転軸3が回転降下することにより、攪拌部材5、6が回転軸3の周方向に回転する。これにより、掘削部材4が掘削した掘削土9を攪拌する。攪拌部材6は補助攪拌部63、64を備えるため、攪拌翼60単独の場合に比べて掘削土9と接する面積が多い。一方、共回り防止部材7は回転軸3の回転が伝播しないように枢設されているため、撹拌部材6と共に共回り防止部材7が回転することはない。これにより、撹拌部材6と共回り防止部材7との間に位置する掘削土9が撹拌部材6とともに回転することが防止され、撹拌が十分に行われる。また、共回り防止部材7も補助攪拌部73、74を備えるため平板部70単独の場合に比べて掘削土9と接する面積が多い。これにより、掘削土9への攪拌作用が高まる。さらに図3(c)及び(d)に示すように、回転軸3を逆回転させて回転上昇するのに伴って攪拌部材5、6も回転軸3の周方向に逆回転する。これにより、掘削土9と吐出口31から吐出されたセメントミルクとが混合攪拌されて、地盤中に柱状体91が造成される。
【0015】
地盤改良撹拌装置1の第2の使用態様を図4(a)〜(d)に示す。第2の使用態様では、柱状体91を造成すべき地盤の下にコンクリート製の擁壁93が存在する。第1の使用態様と同様に、まず所定位置に地盤改良撹拌装置1を設置し、回転軸3を回転降下する(図4(a))。これに伴って、掘削部材4が回転して地盤に押圧されて地盤を掘削しながら地盤中に貫入していく(図4(b))。擁壁93まで掘削する(図4(c))。その後、吐出口31からセメントミルクを吐出しながら回転軸3を逆回転させて回転上昇させて、地盤改良撹拌装置1を地盤から引き上げ、柱状体91を地盤中に造成する(図4(d))。
ここで、掘削撹拌補助部材43が可撓性を有するエラストマー製であって、掘削撹拌補助部材43の下端が爪部41及び先端部42の下端よりも下方に位置するため、図4(c)に示すように、掘削部材4が擁壁93に到達しても、擁壁93を損傷せずに擁壁93近傍まで掘削することができる。さらに掘削撹拌補助部材43により、擁壁93近傍で掘削土とセメントミルクとが十分に撹拌混合されることとなる。その結果、図4(d)に示すように、造成された柱状体91の下端92は地盤90に沿って略平面状に形成される。このように、第1の使用態様と同様に、柱状体91の下端92が擁壁93に沿って平面状となっているため、柱状体91にかかる建物の荷重が下端92の一部ではなく、略全面にかかることとなる。その結果、荷重が下端92の一部に集中せず、柱状体91の下端92の破損と、これに伴う柱状体91の支持力の低下が防止される。
【0016】
地盤改良撹拌装置1では、エラストマー製の平面視で矩形の板状の掘削撹拌補助部材43を使用したが、掘削撹拌補助部材の形態はこれに限定されない。掘削撹拌補助部材の他の形態の例を図5(a)〜(d)に示す。なお、地盤改良撹拌装置1の構成と実質的に同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。図5(a)に示す他の形態では、掘削撹拌補助部材43aは掘削部材4の爪部41の上部から掘削方向に向かって突設されている。掘削撹拌補助部材43aはエラストマー製の中間部44aと中間部44aの下端に取り付けられた鋼製板45aとからなる。図5(b)に示す他の形態では、隣り合う爪部41の間から掘削方向に突設するように設けられた3個の金属製のワイヤー43bが掘削撹拌補助部材となる。図5(c)に示す他の形態では、隣り合う爪部41の間から掘削方向に突設するように設けられた3個の金属製のワイヤー44cのそれぞれの下端に平面視で正方形の鋼板55cを取り付けたものが掘削撹拌補助部材43cとなる。図5(d)に示す他の形態では、隣り合う爪部41の間から掘削方向に突設するように設けられた3個の金属製のワイヤー44dの下端に一個の鋼製の下端部45dが取り付けられ掘削撹拌補助部材43dが形成される。以上の掘削撹拌補助部材43a〜43dによっても地盤改良撹拌装置1と同等の効果を奏する。
【0017】
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施例である地盤改良撹拌装置1の構成を示す模式図である。
【図2】図2は回転軸3の下方先端付近の一部拡大斜視図である。
【図3】図3(a)〜(d)は地盤改良撹拌装置1の第1の使用態様の概要を示す図である。
【図4】図4(a)〜(d)は地盤改良撹拌装置1の第2の使用態様の概要を示す図である。
【図5】図5(a)〜(d)は掘削撹拌補助部材の他の形態の例を示す。
【図6】図6は従来の地盤改良撹拌装置100の使用態様を示す模式図である。
【図7】図7従来の地盤改良撹拌装置100により造成された柱状体900の下端近傍の模式図である。
【符号の説明】
【0019】
1、100 地盤改良撹拌装置
2 操作部
3、101 回転軸
31 吐出口
4 掘削部材
41 掘削爪
42 先端部
43、43a〜d 掘削撹拌補助部材
44、52、62 ボルト
45、63、64、73、74 補助攪拌部
5、6 攪拌部材
50、60 撹拌翼
51、61 固定板
7 共回り防止部材
8 ミキサー
81 パイプ
9 掘削土
90 地盤
91、900 柱状体
92、901 下端
93 擁壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の先端に設けられる掘削部材と、
前記回転軸の外周に設けられる攪拌部材と、
前記回転軸の外周に、前記回転軸の回転が伝播しないように枢設される共回り防止部材と、
を備え、前記掘削部材が回転して地盤を掘削し、前記攪拌部材が回転して掘削土と地盤固化材とを混合攪拌して地盤中に柱状体を形成する地盤改良攪拌装置であって、
前記掘削部材は、掘削方向に突設される可撓性の掘削攪拌補助部材を備える、ことを特徴とする地盤改良攪拌装置。
【請求項2】
前記掘削攪拌補助部材の下端は、前記掘削部材の下端と同じ位置、又は前記掘削部材の下端よりも下方に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良攪拌装置。
【請求項3】
前記掘削攪拌補助部材は前記掘削部材に着脱自在に突設される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良攪拌装置。
【請求項4】
前記掘削補助部材は、可撓性を有するエラストマー、プラスティック、又は金属製ワイヤーからなる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の地盤改良攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−308871(P2008−308871A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157369(P2007−157369)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(505181550)株式会社新生工務 (8)
【Fターム(参考)】