説明

地盤改良材

【課題】注入当初のpHが低く抑えられた地盤改良材とする。
【解決手段】酸化カルシウムの含有量が20〜50質量%で、内部構造の90%以上がガラス質で、ブレーン値が5000cm2/g以上の微粉末と、水酸化カルシウムと、重炭酸ナトリウムと、配合して地盤改良材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウト注入材などの地盤改良材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高炉水砕スラグ等のカルシウムを含む化合物に対してアルカリを添加すると、加水分解が生じて、高炉水砕スラグ等が有する潜在水硬性が発現することが知られている。そこで、この原理を利用して、例えば、酸化カルシウムを含む微粉末と水酸化ナトリウムとを配合した地盤改良材が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
この従来の地盤改良材は、必要十分な強度を発現するうえに、地盤中に良好に浸透するため、きわめて有用なものとして実用化されるに至っている。
しかしながら、この従来の地盤改良材は、配合された水酸化ナトリウムにより非常にpHが高く、注入地盤周囲のアルカリ汚染の懸念や、特にトンネル等の地盤強化において頭上に注入する際の作業の危険性等が問題であった。もっとも、前述のように、高炉水砕スラグ等のカルシウムを含む化合物は、アルカリによる加水分解により硬化するため、地盤改良材として使用するためにはアルカリの添加が必要である。したがって、注入時にはアルカリが抑えられており、ある程度に時間の経過後にアルカリが放出されて硬化するような地盤改良材が求められている。
【特許文献1】特許第2860717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする主たる課題は、注入当初のpHが低く抑えられた地盤改良材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
酸化カルシウムの含有量が20〜50質量%で、内部構造の90%以上がガラス質で、ブレーン値が5000cm2/g以上の微粉末と、
水酸化カルシウムと、
重炭酸ナトリウムと、が配合されている、ことを特徴とする地盤改良材。
【0005】
〔請求項2記載の発明〕
前記水酸化カルシウムの供給材として、ブレーン値5000cm2/g以上の微粉セメントが配合されている、請求項1記載の地盤改良材。
【0006】
〔請求項3記載の発明〕
前記微粉末が200〜500kg/m3、前記水酸化カルシウムが前記微粉末量の3〜30質量%、前記重炭酸ナトリウムが前記水酸化カルシウム量の5〜200質量%の割合で、それぞれ配合されている、請求項1又は請求項2記載の地盤改良材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、注入当初のpHが低く抑えられた地盤改良材となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本形態の地盤改良材は、酸化カルシウムの含有量が微粉末全量の20〜50質量%で、内部構造の90%以上がガラス質で、ブレーン値が5000cm2/g以上の微粉末が配合されている。この微粉末としては、例えば、高炉水砕スラグの微粉末などを用いることができる。もちろん、他の冶金スラグも用いることができる。
【0009】
酸化カルシウムの配合量は、微粉末全量の25〜35質量%であるのがより好ましい。また、ブレーン値は、浸透性の観点からは、8000〜16000cm2/gであるのがより好ましい。粒子が粗大であると、地盤中に対する浸透性が悪くなる。一方、ブレーン値がより高くても、浸透性の向上をさほど期待することができず、また、粉砕に要するコストが増加する。
【0010】
本形態の地盤改良材は、以上の微粉末に加えて、水酸化カルシウムと、重炭酸ナトリウムと、が配合されている。つまり、従来の地盤改良材においては、水酸化ナトリウム(アルカリ)及び炭酸カルシウム等の二価の炭酸塩が配合されていたのに変えて、水酸化カルシウム及び重炭酸ナトリウムが配合されている。水酸化カルシウムは強アルカリであるが溶解度が低いため、そして、重炭酸ナトリウムはアルカリ領域では酸として働くため、注入当初のpHが低く抑えられる。しかも、水酸化カルシウム及び重炭酸ナトリウムは、次式に示すように、交換反応によって、水酸化ナトリウム(アルカリ)を生成する。
Ca(OH)2 + NaHCO3 → CaCO3 + NaOH + H2
したがって、アルカリによる微粉末の潜在水硬性も確実に発現される。しかも、後述実施例から明らかなように、重炭酸ナトリウムを使用すると、ブリージングが減少し、固結強度は同程度まで発現する。また、固結体内での強度差が少なくなる。
【0011】
ここで、水酸化カルシウムの供給材としては、ブレーン値5000cm2/g以上の微粉セメントを用いるのが好ましい。微粉セメントは水酸化カルシウムを含有するため、水酸化カルシウムの供給材とすることができる。
【0012】
一方、本形態においては、微粉末が200〜500kg/m3、水酸化カルシウムが微粉末量の3〜30質量%、重炭酸ナトリウムが水酸化カルシウム量の5〜200質量%の割合で、それぞれ配合されているのが好ましい。微粉末は、少量の水酸化ナトリウムによっても硬化反応を生じるが、強度の早期発現の点では、200kg/m3以上の割合で配合されているのが好ましい。一方、水酸化カルシウムは、それ自体に硬化能力がなく、また、比重が軽いため、配合が過剰であると、強度低下及び粘度上昇のおそれがある。したがって、水酸化カルシウムは、微粉末量の30質量%以下の割合で配合されているのが好ましい。さらに、重炭酸ナトリウムは、水酸化カルシウムに対して過剰であると、初期強度の発現が大きく遅れ、また、pHが9前後になると、微粉末中の硫化物から硫化水素が発生する。したがって、重炭酸ナトリウムは、水酸化カルシウムの200質量%以下の割合で配合されているのが好ましい。
【0013】
この際、本形態の地盤改良材には、高炉水砕スラグ等の微粉末の分散剤として、リグニンスルホン酸系やナフタリン系の分散剤を配合することもできる。
【0014】
本形態の地盤改良材は、各材料を予め調合し一液で対象地盤に施す、例えば注入管を介して地盤中に注入することができる。ただし、これに限定されるものではなく、例えば微粉末の懸濁液と水酸化カルシウム溶液とをそれぞれ別の注入管に送給し、注入管内で又は地盤中で合流混合させて注入することもできる。この場合、重炭酸ナトリウムは、一方の液に添加して注入することができる。
【0015】
本形態の地盤改良材は、グラウト注入工法のほか、攪拌混合工法などの他の工法においても、用いることができる。
【実施例1】
【0016】
次に、本発明の実施例を説明する。
高炉水砕スラグの微粉末(ブレーン値12000cm2/g)300kg/m3に対する、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)及び水酸化ナトリウム(NaOH)の配合量を変化させて、ブリージング(%)、pH及び強度(kN/m2)を調べた。強度については、懸濁液をポリプロピレン製容器及び直径50mmのグラウト袋に採取し、20℃において恒温養生し、3h(時間)及び6h後におけるベーン試験による「せん断強度」、並びに、3日、7日及び28日後における「一軸強度」を調べた。一軸強度については、グラウト袋の上部、下部及び平均について、調べた。結果を、表1に示した。なお、表中の「N」は、測定不能である。
【0017】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、グラウト注入材などの地盤改良材として適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化カルシウムの含有量が20〜50質量%で、内部構造の90%以上がガラス質で、ブレーン値が5000cm2/g以上の微粉末と、
水酸化カルシウムと、
重炭酸ナトリウムと、が配合されている、ことを特徴とする地盤改良材。
【請求項2】
前記水酸化カルシウムの供給材として、ブレーン値5000cm2/g以上の微粉セメントが配合されている、請求項1記載の地盤改良材。
【請求項3】
前記微粉末が200〜500kg/m3、前記水酸化カルシウムが前記微粉末量の3〜30質量%、前記重炭酸ナトリウムが前記水酸化カルシウム量の5〜200質量%の割合で、それぞれ配合されている、請求項1又は請求項2記載の地盤改良材。

【公開番号】特開2007−314724(P2007−314724A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148295(P2006−148295)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】