地盤改良用安全装置および地盤改良工法
【課題】セメントスラリー注入用のホースの破裂を防止し、安全性を高めることができる地盤改良用安全装置および地盤改良工法を提供する。
【解決手段】安全弁が、セメントスラリーを地盤に注入するための注入路に設けられ、注入路を通して地盤に注入されるセメントスラリーの圧力があらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、セメントスラリーを注入路から排出可能に構成されている。循環手段が、安全弁により注入路から排出されたセメントスラリーを、注入路の入口に導くようになっている。停止手段が、注入路を通して地盤に注入されるセメントスラリーの圧力が設定圧力以上の圧力に設定した上限圧力を越えたとき、注入路へのセメントスラリーの供給を停止させるようになっている。
【解決手段】安全弁が、セメントスラリーを地盤に注入するための注入路に設けられ、注入路を通して地盤に注入されるセメントスラリーの圧力があらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、セメントスラリーを注入路から排出可能に構成されている。循環手段が、安全弁により注入路から排出されたセメントスラリーを、注入路の入口に導くようになっている。停止手段が、注入路を通して地盤に注入されるセメントスラリーの圧力が設定圧力以上の圧力に設定した上限圧力を越えたとき、注入路へのセメントスラリーの供給を停止させるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良用安全装置および地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱な地盤の上に建物を建てるとき、地盤補強工事を行う必要がある。地盤補強工事としては、軟弱な地盤そのものを固める地盤改良工法、および、杭を打設する杭工法が一般的に用いられている。軟弱地盤の深さが地下2〜8m程度で、杭工法を採用するまでもないときは、地盤改良工法として、セメント系固化剤を含むセメントスラリーを地盤に注入して、軟弱地盤の土とともに攪拌し、地中に柱状の補強部分を形成する柱状改良工法が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−308887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の柱状改良工法のような、セメントスラリーを地盤に注入する工法は、圧力をかけてセメントスラリーを注入するため、その圧力が注入用のグラウトホース等のホースの耐圧を越えるとホースが破裂して危険であるという課題があった。注入圧力を監視していても、ホースの劣化により、ホースの耐圧が低下していたり、ホースの内部で固化したコンクリート片やホースの内部に混入した異物などにより、セメントスラリーの流れが阻害されてホースの内部圧力が一気に高くなったりすることがあり、ホースの破裂を完全に防止することはできなかった。なお、ホースが破裂すると、セメントスラリーが周辺に飛び散り、隣家の屋根や外壁、自動車、植栽などに付着するため、その復旧作業や賠償などの費用が発生する。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、セメントスラリー注入用のホースの破裂を防止し、安全性を高めることができる地盤改良用安全装置および地盤改良工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る地盤改良用安全装置は、セメント系固化剤を含むセメントスラリーを地盤に注入する地盤改良工事で使用される地盤改良用安全装置であって、前記セメントスラリーを地盤に注入するための注入路に設けられ、前記注入路を通して地盤に注入される前記セメントスラリーの圧力があらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、前記セメントスラリーを前記注入路の途中から外部に排出可能な安全弁を有することを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る地盤改良工法は、注入路を通して地盤に注入されるセメント系固化剤を含むセメントスラリーの圧力が、あらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、前記セメントスラリーを前記注入路の途中から外部に排出することを、特徴とする。
【0008】
本発明に係る地盤改良用安全装置および地盤改良工法は、設定圧力を、セメントスラリー注入用のグラウトホース等のホースの耐圧よりも低く設定することにより、セメントスラリーの圧力がホースの耐圧を越える前に、セメントスラリーを注入路の途中から外部に排出して、セメントスラリーの圧力を低下させることができる。このため、セメントスラリー注入用のホースの破裂を防止することができ、作業の安全性を高めることができる。
【0009】
設定圧力は、状況に応じて、任意に調整可能であることが好ましい。設定圧力は、ホースの劣化による耐圧の低下を考慮して、メーカーが設定したホースの基準耐圧よりも、余裕を持って低く設定することが好ましい。注入路は、例えば、地盤にセメントスラリーを注入する注入装置のセメントスラリー排出口、あるいは、柱状改良工法で一般的に使用されるグラウトホースまたはロッドなどで構成される。
【0010】
本発明に係る地盤改良用安全装置は、前記安全弁により前記注入路から排出された前記セメントスラリーを、前記注入路の入口に導く循環手段を有していてもよい。この場合、排出されたセメントスラリーを無駄にすることなく、再利用することができ、材料コストの低減を図ることができる。また、排出されたセメントスラリーで周辺を汚すのを防ぐこともでき、環境にもよい。
【0011】
本発明に係る地盤改良用安全装置は、前記注入路を通して地盤に注入される前記セメントスラリーの圧力が前記設定圧力以上の圧力に設定した上限圧力を越えたとき、前記注入路へのセメントスラリーの供給を停止させる停止手段を有していてもよい。この場合、上限圧力を、セメントスラリー注入用のホースの耐圧よりも低く設定することにより、安全弁によるセメントスラリーの排出が圧力の上昇に追いつかなかったときなどでも、セメントスラリーの圧力がホースの耐圧を越える前に、停止手段により注入路へのセメントスラリーの供給を停止させ、セメントスラリーの圧力の上昇を止めることができる。このように、安全弁と停止手段とによる二重の安全対策により、セメントスラリー注入用のホースの破裂をほぼ完全に防止することができ、作業の安全性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セメントスラリー注入用のホースの破裂を防止し、安全性を高めることができる地盤改良用安全装置および地盤改良工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置の使用状態を示す地盤改良工事システムの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置の弁装置を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置の弁装置の安全弁を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図3は、本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置を示している。
図1に示すように、本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置は、プラント1で製造したセメント系固化剤を含むセメントスラリーを、注入装置2により地盤に注入する地盤改良工事で使用され、弁装置11と循環手段12と停止手段13とを有している。
【0015】
図2に示すように、弁装置11は、導管21と安全弁22と圧力計23とボールバルブ24とを有している。導管21は、内部にセメントスラリーを通過可能に設けられ、両端にグラウトホースを接続可能になっている。
【0016】
図2および図3に示すように、安全弁22は、ピストン式の圧力制御バルブから成り、導管21の中央部に設けられ、調節ダイヤル22aと排出管22bとを有している。安全弁22は、導管21を通るセメントスラリーの圧力が、あらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、プッシュヘッド22cが上昇してセメントスラリーの導管21の下流側への流れを遮断し、セメントスラリーを排出管22bに導くよう構成されている。調節ダイヤル22aは、設定圧力を調節可能になっている。
前記セメントスラリーを前記注入路の外部に排出可能な安全弁を有することを、
【0017】
図2および図3に示すように、圧力計23は、導管21を通るセメントスラリーの圧力を表示可能に、導管21の上流側端部に設けられている。圧力計23は、ダイヤフラム型ゲージプロテクタ23aにより導管21に固定されている。ボールバルブ24は、操作レバー24aを有し、導管21の下流側端部に設けられている。ボールバルブ24は、操作レバー24aを回して、導管21を通るセメントスラリーの流れを止めたり開放したりするようになっている。
【0018】
図1に示すように、弁装置11は、導管21の上流側の一端にプラント1に伸びるグラウトホース1aが接続され、導管21の下流側の他端に注入装置2に伸びるグラウトホース2aが接続されて、プラント1と注入装置2との間に設けられている。弁装置11は、プラント1で製造されたセメントスラリーを、注入装置2を介して地盤に注入するための注入路に設けられている。注入路は、セメントスラリーがプラント1から地盤に注入されるまでに通るセメントスラリーの経路であって、グラウトホース1a,2a、導管21、ロッド、注入装置2のセメントスラリー排出口で構成される。
【0019】
図1に示すように、循環手段12は、グラウトホースから成り、両端がそれぞれ安全弁22の排出管22bとプラント1とに接続されている。循環手段12は、安全弁22の排出管22bから排出されたセメントスラリーをプラント1に戻し、プラント1のグラウトホース1aの入口に導くよう構成されている。
【0020】
停止手段13は、プラント1に設けられ、グラウトホース1aに入れるセメントスラリーの圧力が、設定圧力以上の圧力に設定した上限圧力を越えたとき、プラント1からグラウトホース1aへのセメントスラリーの供給を停止するようになっている。停止手段13は、上限圧力を調節可能になっている。停止手段13は、プラント1に内蔵されていてもよく、既存のプラント1に後から取付可能であってもよい。
【0021】
なお、安全弁22の設定圧力および停止手段13の上限圧力は、グラウトホース1a,2aの耐圧よりも低く設定されている。標準的な地盤改良用グラウトホースの基準耐圧は、3.0MPaであり、地盤改良工法での一般的なセメントスラリーの注入圧力は、1.5MPaである。これに対し、具体的な一例では、グラウトホース1a,2aの劣化による耐圧の低下を考慮して、メーカーが設定した基準耐圧よりも余裕を持って低く設定しており、安全弁22の設定圧力を2.0MPa、停止手段13の上限圧力を2.5MPaとしている。
【0022】
本発明の実施の形態の地盤改良工法は、本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置により好適に実施される。本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置および地盤改良工法では、まず、弁装置11、プラント1および注入装置2を、それぞれグラウトホース1a,2aで接続し、循環手段12を弁装置11およびプラント1に接続する。次に、グラウトホース1a,2aや導管21に水を通し、ボールバルブ24を閉めて、設定圧力で安全弁22が作動することを、圧力計23を見ながら確認する。このとき、設定圧力がずれている場合や設定圧力を変える場合には、圧力計23を見ながら調節ダイヤル22aで設定圧力を調節する。同様にして、上限圧力の確認、調節を行う。
【0023】
設定圧力および上限圧力の確認、調節が終わったならば、ボールバルブ24を開き、プラント1および注入装置2を駆動して、地盤改良工事を行う。工事中、注入路を通して地盤に注入されるセメントスラリーの圧力が設定圧力を越えると、安全弁22が作動してセメントスラリーの注入装置2への流れが遮断され、セメントスラリーが注入路の途中から排出管22bを通って外部に排出される。このように、セメントスラリーの圧力がグラウトホース1a,1bの耐圧を越える前に、セメントスラリーを注入路の途中から外部に排出して、セメントスラリーの圧力を低下させることができる。このため、セメントスラリー注入用のグラウトホース1a,1bの破裂を防止することができ、作業の安全性を高めることができる。
【0024】
また、安全弁22によるセメントスラリーの排出が圧力の上昇に追いつかず、セメントスラリーの圧力が設定圧力を越えて上昇を続け上限圧力を越えた場合、停止手段13が作動してプラント1からグラウトホース1aへのセメントスラリーの供給を停止する。これにより、セメントスラリーの圧力の上昇を止めることができる。このように、安全弁22と停止手段13とによる二重の安全対策により、セメントスラリー注入用のグラウトホース1a,1bの破裂をほぼ完全に防止することができ、作業の安全性をより高めることができる。
【0025】
排出管22bから排出されたセメントスラリーは、そのセメントスラリーの圧力で循環手段12によりプラント1まで戻り、プラント1のグラウトホース1aの入口に導かれる。これにより、排出管22bから排出されたセメントスラリーを無駄にすることなく、再利用することができ、材料コストの低減を図ることができる。また、排出されたセメントスラリーで周辺を汚すのを防ぐこともでき、環境にもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 プラント
1a グラウトホース
2 注入装置
2a グラウトホース
11 弁装置
12 循環手段
13 停止手段
21 導管
22 安全弁
22a 調節ダイヤル
22b 排出管
23 圧力計
23a ダイヤフラム型ゲージプロテクタ
24 ボールバルブ
24a 操作レバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良用安全装置および地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱な地盤の上に建物を建てるとき、地盤補強工事を行う必要がある。地盤補強工事としては、軟弱な地盤そのものを固める地盤改良工法、および、杭を打設する杭工法が一般的に用いられている。軟弱地盤の深さが地下2〜8m程度で、杭工法を採用するまでもないときは、地盤改良工法として、セメント系固化剤を含むセメントスラリーを地盤に注入して、軟弱地盤の土とともに攪拌し、地中に柱状の補強部分を形成する柱状改良工法が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−308887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の柱状改良工法のような、セメントスラリーを地盤に注入する工法は、圧力をかけてセメントスラリーを注入するため、その圧力が注入用のグラウトホース等のホースの耐圧を越えるとホースが破裂して危険であるという課題があった。注入圧力を監視していても、ホースの劣化により、ホースの耐圧が低下していたり、ホースの内部で固化したコンクリート片やホースの内部に混入した異物などにより、セメントスラリーの流れが阻害されてホースの内部圧力が一気に高くなったりすることがあり、ホースの破裂を完全に防止することはできなかった。なお、ホースが破裂すると、セメントスラリーが周辺に飛び散り、隣家の屋根や外壁、自動車、植栽などに付着するため、その復旧作業や賠償などの費用が発生する。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、セメントスラリー注入用のホースの破裂を防止し、安全性を高めることができる地盤改良用安全装置および地盤改良工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る地盤改良用安全装置は、セメント系固化剤を含むセメントスラリーを地盤に注入する地盤改良工事で使用される地盤改良用安全装置であって、前記セメントスラリーを地盤に注入するための注入路に設けられ、前記注入路を通して地盤に注入される前記セメントスラリーの圧力があらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、前記セメントスラリーを前記注入路の途中から外部に排出可能な安全弁を有することを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る地盤改良工法は、注入路を通して地盤に注入されるセメント系固化剤を含むセメントスラリーの圧力が、あらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、前記セメントスラリーを前記注入路の途中から外部に排出することを、特徴とする。
【0008】
本発明に係る地盤改良用安全装置および地盤改良工法は、設定圧力を、セメントスラリー注入用のグラウトホース等のホースの耐圧よりも低く設定することにより、セメントスラリーの圧力がホースの耐圧を越える前に、セメントスラリーを注入路の途中から外部に排出して、セメントスラリーの圧力を低下させることができる。このため、セメントスラリー注入用のホースの破裂を防止することができ、作業の安全性を高めることができる。
【0009】
設定圧力は、状況に応じて、任意に調整可能であることが好ましい。設定圧力は、ホースの劣化による耐圧の低下を考慮して、メーカーが設定したホースの基準耐圧よりも、余裕を持って低く設定することが好ましい。注入路は、例えば、地盤にセメントスラリーを注入する注入装置のセメントスラリー排出口、あるいは、柱状改良工法で一般的に使用されるグラウトホースまたはロッドなどで構成される。
【0010】
本発明に係る地盤改良用安全装置は、前記安全弁により前記注入路から排出された前記セメントスラリーを、前記注入路の入口に導く循環手段を有していてもよい。この場合、排出されたセメントスラリーを無駄にすることなく、再利用することができ、材料コストの低減を図ることができる。また、排出されたセメントスラリーで周辺を汚すのを防ぐこともでき、環境にもよい。
【0011】
本発明に係る地盤改良用安全装置は、前記注入路を通して地盤に注入される前記セメントスラリーの圧力が前記設定圧力以上の圧力に設定した上限圧力を越えたとき、前記注入路へのセメントスラリーの供給を停止させる停止手段を有していてもよい。この場合、上限圧力を、セメントスラリー注入用のホースの耐圧よりも低く設定することにより、安全弁によるセメントスラリーの排出が圧力の上昇に追いつかなかったときなどでも、セメントスラリーの圧力がホースの耐圧を越える前に、停止手段により注入路へのセメントスラリーの供給を停止させ、セメントスラリーの圧力の上昇を止めることができる。このように、安全弁と停止手段とによる二重の安全対策により、セメントスラリー注入用のホースの破裂をほぼ完全に防止することができ、作業の安全性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セメントスラリー注入用のホースの破裂を防止し、安全性を高めることができる地盤改良用安全装置および地盤改良工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置の使用状態を示す地盤改良工事システムの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置の弁装置を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置の弁装置の安全弁を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図3は、本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置を示している。
図1に示すように、本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置は、プラント1で製造したセメント系固化剤を含むセメントスラリーを、注入装置2により地盤に注入する地盤改良工事で使用され、弁装置11と循環手段12と停止手段13とを有している。
【0015】
図2に示すように、弁装置11は、導管21と安全弁22と圧力計23とボールバルブ24とを有している。導管21は、内部にセメントスラリーを通過可能に設けられ、両端にグラウトホースを接続可能になっている。
【0016】
図2および図3に示すように、安全弁22は、ピストン式の圧力制御バルブから成り、導管21の中央部に設けられ、調節ダイヤル22aと排出管22bとを有している。安全弁22は、導管21を通るセメントスラリーの圧力が、あらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、プッシュヘッド22cが上昇してセメントスラリーの導管21の下流側への流れを遮断し、セメントスラリーを排出管22bに導くよう構成されている。調節ダイヤル22aは、設定圧力を調節可能になっている。
前記セメントスラリーを前記注入路の外部に排出可能な安全弁を有することを、
【0017】
図2および図3に示すように、圧力計23は、導管21を通るセメントスラリーの圧力を表示可能に、導管21の上流側端部に設けられている。圧力計23は、ダイヤフラム型ゲージプロテクタ23aにより導管21に固定されている。ボールバルブ24は、操作レバー24aを有し、導管21の下流側端部に設けられている。ボールバルブ24は、操作レバー24aを回して、導管21を通るセメントスラリーの流れを止めたり開放したりするようになっている。
【0018】
図1に示すように、弁装置11は、導管21の上流側の一端にプラント1に伸びるグラウトホース1aが接続され、導管21の下流側の他端に注入装置2に伸びるグラウトホース2aが接続されて、プラント1と注入装置2との間に設けられている。弁装置11は、プラント1で製造されたセメントスラリーを、注入装置2を介して地盤に注入するための注入路に設けられている。注入路は、セメントスラリーがプラント1から地盤に注入されるまでに通るセメントスラリーの経路であって、グラウトホース1a,2a、導管21、ロッド、注入装置2のセメントスラリー排出口で構成される。
【0019】
図1に示すように、循環手段12は、グラウトホースから成り、両端がそれぞれ安全弁22の排出管22bとプラント1とに接続されている。循環手段12は、安全弁22の排出管22bから排出されたセメントスラリーをプラント1に戻し、プラント1のグラウトホース1aの入口に導くよう構成されている。
【0020】
停止手段13は、プラント1に設けられ、グラウトホース1aに入れるセメントスラリーの圧力が、設定圧力以上の圧力に設定した上限圧力を越えたとき、プラント1からグラウトホース1aへのセメントスラリーの供給を停止するようになっている。停止手段13は、上限圧力を調節可能になっている。停止手段13は、プラント1に内蔵されていてもよく、既存のプラント1に後から取付可能であってもよい。
【0021】
なお、安全弁22の設定圧力および停止手段13の上限圧力は、グラウトホース1a,2aの耐圧よりも低く設定されている。標準的な地盤改良用グラウトホースの基準耐圧は、3.0MPaであり、地盤改良工法での一般的なセメントスラリーの注入圧力は、1.5MPaである。これに対し、具体的な一例では、グラウトホース1a,2aの劣化による耐圧の低下を考慮して、メーカーが設定した基準耐圧よりも余裕を持って低く設定しており、安全弁22の設定圧力を2.0MPa、停止手段13の上限圧力を2.5MPaとしている。
【0022】
本発明の実施の形態の地盤改良工法は、本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置により好適に実施される。本発明の実施の形態の地盤改良用安全装置および地盤改良工法では、まず、弁装置11、プラント1および注入装置2を、それぞれグラウトホース1a,2aで接続し、循環手段12を弁装置11およびプラント1に接続する。次に、グラウトホース1a,2aや導管21に水を通し、ボールバルブ24を閉めて、設定圧力で安全弁22が作動することを、圧力計23を見ながら確認する。このとき、設定圧力がずれている場合や設定圧力を変える場合には、圧力計23を見ながら調節ダイヤル22aで設定圧力を調節する。同様にして、上限圧力の確認、調節を行う。
【0023】
設定圧力および上限圧力の確認、調節が終わったならば、ボールバルブ24を開き、プラント1および注入装置2を駆動して、地盤改良工事を行う。工事中、注入路を通して地盤に注入されるセメントスラリーの圧力が設定圧力を越えると、安全弁22が作動してセメントスラリーの注入装置2への流れが遮断され、セメントスラリーが注入路の途中から排出管22bを通って外部に排出される。このように、セメントスラリーの圧力がグラウトホース1a,1bの耐圧を越える前に、セメントスラリーを注入路の途中から外部に排出して、セメントスラリーの圧力を低下させることができる。このため、セメントスラリー注入用のグラウトホース1a,1bの破裂を防止することができ、作業の安全性を高めることができる。
【0024】
また、安全弁22によるセメントスラリーの排出が圧力の上昇に追いつかず、セメントスラリーの圧力が設定圧力を越えて上昇を続け上限圧力を越えた場合、停止手段13が作動してプラント1からグラウトホース1aへのセメントスラリーの供給を停止する。これにより、セメントスラリーの圧力の上昇を止めることができる。このように、安全弁22と停止手段13とによる二重の安全対策により、セメントスラリー注入用のグラウトホース1a,1bの破裂をほぼ完全に防止することができ、作業の安全性をより高めることができる。
【0025】
排出管22bから排出されたセメントスラリーは、そのセメントスラリーの圧力で循環手段12によりプラント1まで戻り、プラント1のグラウトホース1aの入口に導かれる。これにより、排出管22bから排出されたセメントスラリーを無駄にすることなく、再利用することができ、材料コストの低減を図ることができる。また、排出されたセメントスラリーで周辺を汚すのを防ぐこともでき、環境にもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 プラント
1a グラウトホース
2 注入装置
2a グラウトホース
11 弁装置
12 循環手段
13 停止手段
21 導管
22 安全弁
22a 調節ダイヤル
22b 排出管
23 圧力計
23a ダイヤフラム型ゲージプロテクタ
24 ボールバルブ
24a 操作レバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系固化剤を含むセメントスラリーを地盤に注入する地盤改良工事で使用される地盤改良用安全装置であって、
前記セメントスラリーを地盤に注入するための注入路に設けられ、前記注入路を通して地盤に注入される前記セメントスラリーの圧力があらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、前記セメントスラリーを前記注入路の途中から外部に排出可能な安全弁を有することを、
特徴とする地盤改良用安全装置。
【請求項2】
前記安全弁により前記注入路から排出された前記セメントスラリーを、前記注入路の入口に導く循環手段を有することを、特徴とする請求項1記載の地盤改良用安全装置。
【請求項3】
前記注入路を通して地盤に注入される前記セメントスラリーの圧力が前記設定圧力以上の圧力に設定した上限圧力を越えたとき、前記注入路へのセメントスラリーの供給を停止させる停止手段を有することを、特徴とする請求項1または2記載の地盤改良用安全装置。
【請求項4】
注入路を通して地盤に注入されるセメント系固化剤を含むセメントスラリーの圧力が、あらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、前記セメントスラリーを前記注入路の途中から外部に排出することを、特徴とする地盤改良工法。
【請求項1】
セメント系固化剤を含むセメントスラリーを地盤に注入する地盤改良工事で使用される地盤改良用安全装置であって、
前記セメントスラリーを地盤に注入するための注入路に設けられ、前記注入路を通して地盤に注入される前記セメントスラリーの圧力があらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、前記セメントスラリーを前記注入路の途中から外部に排出可能な安全弁を有することを、
特徴とする地盤改良用安全装置。
【請求項2】
前記安全弁により前記注入路から排出された前記セメントスラリーを、前記注入路の入口に導く循環手段を有することを、特徴とする請求項1記載の地盤改良用安全装置。
【請求項3】
前記注入路を通して地盤に注入される前記セメントスラリーの圧力が前記設定圧力以上の圧力に設定した上限圧力を越えたとき、前記注入路へのセメントスラリーの供給を停止させる停止手段を有することを、特徴とする請求項1または2記載の地盤改良用安全装置。
【請求項4】
注入路を通して地盤に注入されるセメント系固化剤を含むセメントスラリーの圧力が、あらかじめ設定した設定圧力を越えたとき、前記セメントスラリーを前記注入路の途中から外部に排出することを、特徴とする地盤改良工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2012−26127(P2012−26127A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164458(P2010−164458)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(508296853)モットーキュー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(508296853)モットーキュー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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