説明

地表下地層の加熱用誘導ヒーター

地下地層用加熱システムは地下地層中に配置された長尺の電気導電体を有する。該電気導電体は少なくとも第一接点と第二接点との間に延びる。強磁性導電体が該電気導電体の周囲を少なくとも部分的に囲むと共に、該電気導電体の周囲を少なくとも部分的に長さ方向に延びる。該電気導電体に経時変化性電流でエネルギーを付与すると、強磁性導電体が約300℃以上の温度に抵抗加熱するのに十分な電流を、強磁性導電体中に誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は一般に炭化水素含有地層のような各種地表下地層から炭化水素、水素及び/又はその他の生成物を生産するための加熱方法及び加熱システムに関する。特定の実施態様は強磁性材料に電流を誘導する地表下地層の加熱用加熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
地下(subterranean)地層から得られる炭化水素はエネルギー資源として、供給原料として、また消費用製品として使用されることが多い。入手可能な炭化水素資源の枯渇に対する関心及び生産した炭化水素の全体的な品質低下に対する関心により、入手可能な炭化水素資源の一層効率的な回収、処理及び/又は使用方法が開発されてきた。地下の地層から炭化水素材料を取り出すため、現場プロセスが使用できる。地下の地層から炭化水素材料を一層容易に取り出すためには、地下地層中の炭化水素材料の化学的及び/又は物理的特性を変える必要があるかも知れない。このような化学的物理的変化は、地層中の炭化水素材料についての取出し可能な流体、組成変化、溶解度変化、密度変化、相変化及び/又は粘度変化を生成する現場反応を含むかも知れない。流体は、限定されるものではないが、ガス、液体、エマルジョン、スラリー、及び/又は液体流と同様の流動特性を有する固体粒子の流れであってよい。
【0003】
地層には坑井孔(wellbore)を形成してよい。幾つかの実施態様では、坑井孔にケーシング又は他のパイプシステムを設けるか形成してよい。幾つかの実施態様では坑井孔に拡大可能な管状体(tubular)を使用してよい。現場プロセス中、地層を加熱するため、坑井孔内にヒーターを設けてよい。
【0004】
Ljungstromの米国特許第2,923,535号及びVan Meurs等の米国特許第第4,886,118号には油頁岩地層に熱を加えて油頁構造中のケロジェンを熱分解することが記載されている。熱は地層も破壊して、地層の透過性を増大させる。透過性の増大により、地層流体は生産坑井に運ばれ、そこで油頁岩地層から流体が除去される、Ljungstromにより開示された幾つかの方法では、例えば燃焼を開始させるため、好ましくは予熱工程からの未だ熱いうちに、酸素含有ガス媒体を透過性層に導入している。
【0005】
地下地層を加熱するため、熱源が使用できる。電気ヒーターは輻射熱及び/又は伝熱により地下地層を加熱するのに使用できる。電気ヒーターは素子を抵抗加熱できる。Germainの米国特許第2,548,360号、Eastlund等の米国特許第4,716,960号及びVan Egmondの米国特許第5,065,818号には坑井孔内に配置した電気加熱素子が記載されている。Vinegar等の米国特許第6,023,554号にはケーシング内に配置した電気加熱素子が記載されている。この加熱素子は輻射エネルギーを発生し、それでケーシングを加熱する。
【0006】
Van Meurs等の米国特許第4,570,715号には電気加熱素子が記載されている。この加熱素子は、電導性コア、絶縁材料の周囲層、金属の周囲被覆を有する。導電性コアは高温では比較的低い抵抗を有する。絶縁層は高温で比較的高い電気抵抗、圧縮強度、及び熱電導率特性を持っていてよい。絶縁層はコアから金属被覆へのアーク発生を防止できる。金属被覆は高温で比較的高い、引張り強度及びクリープ抵抗特性を有する。Van Egmondの米国特許第5,060,287号には銅−ニッケル合金のコアを有する電気加熱素子が記載されている。
【0007】
ヒーターは錬ステンレス鋼から製造できる。Maziasz等の米国特許第7,153,373号及び米国特許出願公開第US 2004/0191109号には鋳造微細構造又は粗面をもつ(grained)シート及び箔として変性237ステンレス鋼が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、炭化水素含有地層から炭化水素、水素、及び/又はその他の生成物を経済的に生産するための、ヒーター、方法及びシステムの開発には多大の努力が払われてきた。しかし、現在、経済的には生産できない炭化水素、水素、及び/又はその他の生成物を含む炭化水素含有地層が多く存在する。したがって、各種炭化水素含有地層から炭化水素、水素、及び/又はその他の生成物を生産するための加熱方法及び装置をなお改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
ここで説明する実施態様は一般に地表下(subsurface)地層を処理するためのシステム、方法及びヒーターに関する。また、ここで説明する実施態様は一般に内部に新規な部品を有するヒーターに関する。このようなヒーターは、ここに説明するシステム及び方法を用いて得ることができる。
【0010】
特定の実施態様では、本発明は1つ以上のシステム、方法及び/又はヒーターを提供する。また幾つかの実施態様ではこのシステム、方法及び/又はヒーターは地表下地層を処理するために使用される。
【0011】
特定の実施態様では本発明は、地表下地層中に配置され、少なくとも第一接点と第二接点との間に延びる長尺の電気導電体、及び該電気導電体の周囲を少なくとも部分的に囲むと共に、該電気導電体の周囲を少なくとも部分的に長さ方向に延びる強磁性導電体を有する地表下地層用加熱システムであって、該電気導電体に経時変化性電流でエネルギーを付与すると、強磁性導電体が約300℃以上の温度に抵抗加熱されるのに十分な電流を、強磁性導電体中に誘導する該加熱システムを提供する。
【0012】
別の実施態様では特定の実施態様の特徴は他の実施態様の特徴と組合わせてよい。例えば一つの実施態様の特徴は他の実施態様のいずれかの特徴と組合わせてよい。
【0013】
別の実施態様では地表下地層の処理は、ここで説明した方法、システム又はヒーターのいずれかを用いて行われる。
【0014】
別の実施態様ではここで説明した特定の実施態様に追加の特徴を加えてよい。
【0015】
図面の簡単な説明
本発明の利点は、以下の詳細な説明の記載ならびに援助により添付図面を参照して当業者に明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部の実施態様を概略的に示す。
【0017】
【図2】エネルギーが誘導、付与された管状体を有するu形ヒーターの実施態様を示す。
【0018】
【図3】管状体内に集中化された電気導電体の実施態様を示す。
【0019】
【図4】管状体と電気的に接触した絶縁導電体の外装(sheath)を有する誘導ヒーターの実施態様を示す。
【0020】
【図5】放射状の溝付き表面を有する管状体を備えた抵抗ヒーターの実施態様を示す。
【0021】
【図6】放射状の溝付き表面を有する管状体を備えた誘導ヒーターの実施態様を示す。
【0022】
【図7】ヒーターの長さ沿いに変化する熱出力を付与するため、複数の管状体区画に分割したヒーターの実施態様を示す。
【0023】
【図8】炭化水素層中の電気導電体を囲む3つの管状体を備え、第一の共通坑井孔経由で地層に入り、第二の共通坑井孔経由で地層を出る3つの電気導電体の実施態様を示す。
【0024】
【図9】変圧器に連結した地層中の別々の坑井孔における3つの電気導電体及び3つの管状体の実施態様図である。
【0025】
【図10】多重層誘導管状体の実施態様を示す。
【0026】
【図11】誘導ヒーターとして使用される絶縁導電体の実施態様の端部断面図である。
【0027】
【図12】図11に示す実施態様の側部断面図である。
【0028】
【図13】誘導ヒーターとして使用される2本脚絶縁導電体の実施態様の端部断面図である。
【0029】
【図14】図13に示す実施態様の側部断面図である。
【0030】
【図15】誘導ヒーターとして使用される多重層絶縁導電体の実施態様の端部断面図である。
【0031】
【図16】螺旋状管体(coiled tubing)導管中に配置され、誘導ヒーターとして使用される3つの絶縁導電体の実施態様の端部図である。
【0032】
【図17】絶縁導電体の端部同士が連結した絶縁導電体のコアを示す。
【0033】
【図18】支持部材に束縛され、誘導ヒーターとして使用される3つの絶縁導電体の実施態様の端部図である。
【0034】
【図19】強磁性層で囲まれたコア及び電気絶縁体を有する誘導ヒーターの実施態様図である。
【0035】
【図20】強磁性層で囲まれた絶縁導電体の実施態様図である。
【0036】
【図21】コア及び電気絶縁体上に渦巻状に巻いた2つの強磁性層を有する誘導ヒーターの実施態様図である。
【0037】
【図22】絶縁導電体上に強磁性層を組立てる実施態様を示す。
【0038】
【図23】軸方向に溝付けするか又は波形化した表面を有するケーシングの実施態様を示す。
【0039】
本発明は各種の変形及び代替形態に影響を受け易いが、それらの特定の実施態様を図面で例示し、また詳細に説明したものであって、図面は、物差しで測定できない。しかし、これら図面及び図面についての詳細な説明は、本発明の限定を意図するものではなく、却って本発明は、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の精神及び範囲に含まれる全ての変形、均等物及び代替物を包含するものであると理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
以下の説明は一般には地層中の炭化水素を処理するためのシステム及び方法に関する。このような地層は炭化水素、水素及びその他の生成物を得るために処理できる。
【0041】
”交流(AC)”とは、方向を実質的に正弦状に逆転する時間変動電流をいう。ACは強磁性導電体に表皮効果電流を生じる。
“裸金属”及び“露出金属”とは、長尺部材の操作温度範囲に亘って金属に電気絶縁を与えるように意図された。電気絶縁材料(鉱物絶縁材料など)の層を含まない長尺部材の金属を言う。裸金属及び露出金属は、天然産の酸化層、塗布(applied)酸化層、及び/又はフィルムなどの腐食防止剤を含む金属を包含してもよい。裸金属及び露出金属としては、長尺部材の通常の操作温度では、電気絶縁特性を保持することができない高分子又は他のタイプの電気絶縁材料を有する金属が含まれる。このような材料は、金属上に設けられていてもよく、かつヒーターの使用中に、熱的に劣化してもよい。
“キューリー温度”は、強磁性材料が、その強磁性特性の全てを失う温度を超える温度である。キューリー温度を超える温度では強磁性の全てを失う他、強磁性材料は、増大する電流が強磁性材料を通過する際に、強磁性を失い始める。
【0042】
“流体圧力”は、地層中の流体によって発生する圧力である。“地盤圧力”(しばしば「地盤応力」といわれる)は、地層内圧力であり、重量/(被さっている岩盤の単位面積)に等しい。「静水圧」は、水柱によって生ずる地層内圧力である。
【0043】
“地層”としては、1つ以上の炭化水素含有層、1つ以上の非炭化水素層、上層土(overburden)、及び/又は下層土(underburden)が挙げられる。“炭化水素層”とは、炭化水素を含む地質内の層をいう。炭化水素層は、非炭化水素材料及び炭化水素材料を含んでもよい。上層土及び/又は下層土には、1つ以上の異なるタイプの非透過性材料が含まれる。例えば、上層土及び/又は下層土には、岩石、頁岩、泥岩、又は湿潤/緊密(tight)炭酸塩が含まれてもよい。現場熱処理法の幾つかの実施態様では、上層土及び/又は下層土には、比較的非透過性であり、現場熱処理中の温度を受けない炭化水素含有層が含まれてもよい。上層土及び/又は下層土の炭化水素含有層がこのような温度を受ければ、炭化水素含有層に著しい特性変化をもたらす。例えば上層土は、頁岩又は泥岩を含んでもよいが、下層土は、現場熱処理プロセス中に、熱分解温度まで加熱することはできない。幾つかの場合においては、上層土及び/又は下層土は、若干透過性であってよい。
【0044】
“地層流体”とは、地層内に存在する流体をいい、これには、熱分解流体、合成ガス、易動化炭化水素、及び水(スチーム)が含まれてもよい。地層流体には、炭化水素流体、同様に非炭化水素流体が含まれてもよい。用語“易動化流体”とは、地層の熱処理の結果として、炭化水素含有地層内の流動可能な流体をいう。“生産(又は生成)流体”とは、地層から除去された(又は取り出された)流体をいう。
【0045】
「熱源」は、熱を、実質的に伝導及び/又は輻射熱移動によって、地層の少なくとも一部に供給するいずれかのシステムである。例えば、熱源には、電気ヒーターが含まれてよい。絶縁導電体、長尺部材、及び/又は導管中に配置された導電体などである。熱源にはまた、燃料を地層の外又は中で燃焼することによって、熱を生成するシステムが含まれてもよい。システムは、表面バーナー、ダウンホール(downhole)ガスバーナー、無炎分配型燃焼器、及び自然分配型燃焼器であってもよい。幾つかの実施態様においては、1つ以上の熱源に供給されるか、又はそこで発生する熱は、他のエネルギー源によって供給されてもよい。他のエネルギー源は地層を直接加熱してもよく、或いはこのエネルギーを地層を直接又は間接に加熱する伝達媒体に適用してもよい。地層に熱を加える1つ以上の熱源は、異なるエネルギー源を用いてもよいことは、理解されるべきである。したがって、例えば、所定の地層に対しては、幾つかの熱源は、電気抵抗ヒーターから熱を供給してもよく、幾つかの熱源は、燃焼により熱を供給してもよく、幾つかの熱源は、1つ以上の他のエネルギー源(例えば、化学反応、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマス、又は他の再生可能なエネルギー源)から熱を供給してもよい。化学反応には、発熱反応(例えば、酸化反応)が含まれてよい。熱源にはまた、ヒーター坑井のような加熱場所の近傍、及び/又はそれを取り囲む帯域に熱を供給するヒーターが含まれてもよい。
【0046】
“ヒーター”は、熱を、坑井内又は坑井孔領域付近で生成するためのいずれかのシステム又は熱源である。ヒーターは、限定されるものではないが、電気ヒーター、バーナー、地層内の材料、又はそこから生成する材料と反応する燃焼器、及び/又はそれらの組合せであってよい。
【0047】
“炭化水素”は、一般に、主として炭素及び水素原子によって形成される分子として定義される。炭化水素には、他の元素(限定されるものではないが、ハロゲン、金属元素、窒素、酸素、及び/又は硫黄など)が含まれてもよい。炭化水素は、限定されるものではないが、ケロジェン、ビチュメン、ピロビチュメン、油、天然鉱物質ワックス、及びアスファルト鉱であってよい。炭化水素は、地球の鉱物基質中、又はそれに隣接して配置されてもよい。基質としては、限定されるものではないが、堆積岩、砂、シリシライト、炭酸塩、珪藻土、及び他の多孔質媒体が挙げられる。“炭化水素流体”は、炭化水素を含む流体である。炭化水素流体は、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水、及びアンモニアなど非炭化水素流体を含有してもよいし、これを同伴してもよいし、これに同伴されてもよい。
【0048】
“現場転化法”(in situ conversion)とは、炭化水素含有地層を、熱源で加熱して、地層の少なくとも一部の温度を熱分解温度を超える温度に上げ、こうして熱分解流体が地層内に生産される方法をいう。
【0049】
“現場熱処理法”とは、炭化水素含有地層を熱源で加熱して、層の少なくとも一部の温度を、炭化水素含有材料の易動化流体、粘度低下、及び/又は熱分解が生じる温度を超える温度に上昇させ、こうして地層内に易動化流体、粘度低下流体、及び/又は熱分解流体が生産される方法をいう。
【0050】
“絶縁導電体”とは、電気を導くことができ、かつ全体又は一部が、電気絶縁材料で被覆されたいずれかの長尺材料をいう。
【0051】
強磁性材料の“相変換温度”とは、強磁性材料がその透磁率を低下させる相変化(例えばフェライトからオーステナイトに)を受けている間の温度又は温度範囲をいう。透磁率の低下は強磁性体のキューリー温度での磁気遷移による透磁率の低下に類似する。
【0052】
“熱分解”とは、加熱により化学結合を破壊することである。熱分解は、例えば1つの化合物を熱単独で1種以上の他の化合物に変換することである。熱は、地層の或る区画に伝達されて、熱分解を起こすことができる。
【0053】
“熱分解流体”又は“熱分解生成物”とは、実質的に炭化水素の熱分解中に生産又は生成される流体をいう。熱分解反応で生成した流体は、地層中の他の流体と混合してよい。この混合物は、熱分解流体又は熱分解生成物とみなされる。ここで使用する“熱分解帯域”とは、反応するか、又は反応して熱分解流体を生成する或る容積の地層(例えばタールサンド地層のような比較的透過性のある地層)をいう。
【0054】
“熱の重なり”とは、2つ以上の熱源間の少なくとも1箇所の地層の温度が、これらの熱源により影響を受けるように、地層の選択された区画に2つ以上の熱源から熱を供給することである。
【0055】
“温度制限ヒーター”とは、一般に温度調節器、出力レギュレーター、整流器、又はその他の装置のような外部制御を用いずに、熱出力を調整する(例えば熱出力を低下させる)ヒーターのことである。温度制限ヒーターは、交流(AC)又は変調(例えば“断続(chopped)”)直流(DC)で出力される電気抵抗ヒーターであってよい。
【0056】
“経時変化性電流”とは、強磁性導電体中に表皮効果電気流を生成し、経時変化する大きさを有する電流をいう。経時変化性電流は交流(AC)及び変調直流(DC)の両方を含む。
【0057】
ヒーターに直接電流を流す(apply)温度制限ヒーターについての“折り返し(turndown)比”は、ヒーターに流した所定の電流におけるキューリー温度未満の最高AC又は変調DC抵抗対キューリー温度を超える最低AC又は変調DC抵抗の比である。誘導ヒーターについての折り返し比は、ヒーターに流した所定の電流におけるキューリー温度未満の最大熱出力対キューリー温度を超える最小熱出力の比である。
【0058】
“u形坑井孔”とは、地層の第一開口から延びて、地層の少なくとも一部を経由し、地層の第二開口経由で出る坑井孔のことである。これに関連して坑井孔は、単に大体“v”又は“u”の形状であって、“u”の脚が 、“u”形とみなされる坑井孔の“u”底部に対し互いに平行か、或いは垂直である必要はないと理解する。
【0059】
“品質向上”とは、炭化水素の品質を向上させることである。例えば重質炭化水素を品質向上すると、重質炭化水素のAPI比重を増大できる。
【0060】
用語“坑井孔”とは、地層中に導管を掘削又は挿入して作った地層中の孔のことである。坑井孔は、ほぼ円形の断面又は他の断面形状を有する。ここで、地層の開口に関して使用した用語“坑井”及び“開口”は、用語“坑井孔”と交換可能に使用できる。
【0061】
地層は多数の異なる生成物を生産するため、種々の方法で処理してよい。現場熱処理プロセス中、地層を処理するため、種々の段階又は方法を使用してよい。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は、可溶鉱物を除去するため、溶液採鉱される。鉱物の溶液採鉱は、現場熱処理法の前、処理法中又は処理法の後に行ってよい。幾つかの実施態様では、溶液採鉱される1つ以上の区画の平均温度は約120℃未満に維持してよい。
【0062】
幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は水を除去するため、及び/又はメタン及びその他の揮発性炭化水素を除去する(取り出す)ため、加熱される。幾つかの実施態様では水及び揮発性炭化水素の除去中、平均温度は周囲温度から約220℃未満の温度に上げてよい。
【0063】
幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は地層中の炭化水素を移動及び/又は粘度低下(visbreaking)させる温度に加熱される。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画の平均温度はその区画の炭化水素の易動化温度(例えば100〜250℃、120〜240℃、又は150〜230℃の範囲の温度)に上げられる。
【0064】
幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は地層中で熱分解反応させる温度に加熱される。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画の平均温度はその区画の炭化水素の熱分解温度(例えば230〜900℃、240〜400℃、又は250〜350℃の範囲の温度)に上げてよい。
【0065】
炭化水素含有地層を複数の熱源で加熱すると、地層中の炭化水素の温度を所望の加熱速度で所望の温度に上昇させる熱源周囲の熱勾配を確立できる。所望生成物用の易動化温度範囲及び/又は熱分解温度範囲内での昇温速度は、炭化水素含有地層から生成する地層流体の品質及び量に影響を与える可能性がある。易動化温度範囲及び/又は熱分解温度範囲内で温度を徐々に上昇させると、地層から高品質で高API比重の炭化水素を生産することが可能である。熱分解温度範囲内で地層の温度を徐々に上昇させると、炭化水素生成物として地層中に存在する炭化水素を多量に取出すことが可能である。
【0066】
幾つかの現場熱処理の実施態様では地層の一部は、或る温度範囲内で徐々に所望温度に加熱することなく、所望温度に加熱される。幾つかの実施態様では所望温度は300℃、325℃又は350℃である。所望温度として、その他の温度も選択できる。
【0067】
複数の熱源から熱を重ねると、地層中に比較的早く、かつ効率的に所望温度を確立することができる。熱源からの地層へのエネルギー入力は、地層の温度をほぼ所望温度に維持するように調節してよい。
【0068】
易動化及び/又は熱分解生成物は地層から生産坑井経由で生産できる。幾つかの実施態様では複数区画の1つ以上の区画の平均温度は炭化水素の易動化温度まで上げられ、生産坑井から炭化水素が生産される。1つ以上の区画の平均温度は選択値未満に低下する。幾つかの実施態様では1つ以上の区画の平均温度は熱分解温度に達する前に著しい生産物を伴うことなしで熱分解温度に上げてよい。
【0069】
幾つかの実施態様では1つ以上の区画の平均温度は流動化及び/又は熱分解後に合成ガスを生産するのに充分な温度に上げてよい。幾つかの実施態様では炭化水素は、合成ガスを生産するのに充分な温度に達する前に、著しい生産物を伴わずに合成ガスを生産するのに充分な温度に上げてよい。例えば合成ガスは約400〜1200℃、約500〜1100℃、約550〜1000℃の範囲の温度で生産できる。合成ガス発生用流体(例えば水蒸気及び/又は水)は合成ガスを発生する区画に導入してよい。合成ガスは生産坑井から産出できる。
【0070】
溶液採鉱、揮発性炭化水素及び水の除去、炭化水素の易動化、炭化水素の熱分解、合成ガスの発生、及び/又はその他の方法は現場熱処理法中に行ってよい。幾つかの実施態様では幾つかの方法は現場熱処理法の後で行ってもよい。このような方法としては、限定されるものではないが、処理区画から熱を回収する方法、予備処理区画の流体(例えば水及び/又は炭化水素)を貯蔵する方法、及び/又は予備処理区画に二酸化炭素を隔離する方法が挙げられる。
【実施例】
【0071】
図1は炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部の実施態様を概略的に示す。現場熱処理システムは、障壁坑井(barrier well)200を有する。障壁坑井は処理領域の周囲に障壁を形成するために使用される。この障壁は流体流が処理領域内及び/又は処理領域外に入るのを防止する。障壁坑井としては、限定されるものではないが、水除去性坑井、真空坑井、捕獲坑井、注入坑井、グラウト坑井、凍結坑井、又はそれらの組合わせが挙げられる。幾つかの実施態様では、障壁坑井200は水除去性坑井である。水除去性坑井は液体水を除去できる、及び/又は液体水が加熱すべき又は加熱中の地層又は地層の一部に入るのを防止できる。図1に示す実施態様では障壁坑井200は熱源202の片側沿いにだけ延びているが、障壁坑井は地層の処理領域を加熱するために、使用されるか又は使用すべき熱源202を全て囲っている。
【0072】
熱源202は地層の少なくとも一部に配置される。熱源202としては、絶縁導電体、導管内導電体型ヒーター、表面バーナー、無炎分配燃焼器、及び/又は自然分配燃焼器のようなヒーターが挙げられる。熱源202は、他種のヒーターであってもよい。熱源202は、地層中の炭化水素を加熱するため、地層の少なくとも一部に熱を供給する。供給ライン204経由で熱源202にエネルギーを供給してもよい。供給ライン204は、地層の加熱に使用する熱源の種類に従って、構造的に異なっていてもよい。熱源用供給ライン204は、電気ヒーター用の電気を伝達できるか、燃焼器用の燃料を輸送できるか、或いは地層に循環させる熱交換流体を輸送できる。幾つかの実施態様では現場熱処理プロセス用の電気は原子力発電所により供給できる。原子力を使用すれば、現場熱処理プロセスからの二酸化炭素排出量を低減又は無くすことができる。
【0073】
生産坑井206は地層から地層流体を取出すために使用される。幾つかの実施態様では生産坑井206は熱源を備える。生産坑井中の熱源は、この生産坑井での又は生産坑井近くの地層の1つ以上の部分を加熱できる。現場熱処理法の幾つかの実施態様では、生産坑井から地層に供給される生産坑井1m当たりの熱量は、地層を加熱する熱源から地層に供給される熱源1m当たりの熱量よりも少ない。
【0074】
幾つかの実施態様では、生産坑井206の熱源により、地層からの地層流体の気相除去が可能となる。生産坑井で、又は生産坑井を通して加熱を行うと、(1)これらの生産流体が上層土近傍の生産坑井内を移動している場合には、生産流体の凝縮及び/又は逆流を防止できる、(2)地層中への熱入力を増大できる、(3)生産坑井からの生産速度を、熱源を用いない生産坑井に比較して増大できる、(4)生産坑井における高炭素数化合物(C以上)の凝縮を防止できる、及び/又は(5)生産坑井で、又は生産坑井近傍で地層の透過性を増大できる。
【0075】
地層内の地下圧力は、地層内に生じた流体圧力と一致してもよい。地層の加熱部分における温度が増大するにつれて、流体の熱膨張、流体の生成及び水の気化が増大する結果として、加熱部分における圧力は増大してもよい。地層からの流体除去速度を制御することにより、地層内の圧力の制御が可能である。地層内の圧力は多数の異なる場所(生産坑井付近又は生産坑井、熱源付近又は熱源、又は監視坑井など)で測定してよい。
【0076】
幾つかの炭化水素含有地層では地層からの炭化水素の生産は、地層内の少なくとも若干の炭化水素が易動化及び/又は熱分解するまで抑制される。地層流体が選択された品質を有する場合には、地層流体は地層から生産してもよい。幾つかの実施態様では、選択された品質には、少なくとも約15°、20°、25°、30°、又は40°のAPI比重が含まれる。少なくとも若干の炭化水素が熱分解するまで生産を抑制することにより、重質炭化水素の軽質炭化水素への転化が増大できる。初期の生産を抑制することにより、地層からの重質炭化水素の生産が最小化できる。相当量の重質炭化水素の生産は、高価な設備を必要とするか、及び/又は生産設備の寿命を低下するかも知れない。
【0077】
熱分解温度に達し、地層からの生産が可能になった後、地層内の圧力は、生産された地層流体の組成を変更及び/又は制御するため、地層流体中の非凝縮性流体に比較して凝縮性流体の%割合を制御するため、及び/又は生産中の地層流体のAPI比重を制御するため、変化させてもよい。例えば、圧力の低下により、更に多くの凝縮性流体成分を生産してもよい。凝縮性流体成分はオレフィンを大きな%割合で含んでもよい。
【0078】
幾つかの現場熱処理プロセスの実施態様では地層内の圧力は、API比重が20°を超える地層流体の生産を促進するのに十分に高く保持してよい。増大した圧力を地層内で保持することにより、現場熱処理中の地層の沈下を防止できる。増大した圧力を保持することにより、地層流体を表面で圧縮する必要性を低下又は回避して、流体を収集導管で処理設備に輸送できる。
【0079】
増大した圧力を地層の加熱部分で保持することにより、意外にも、品質の向上及び比較的低分子量を有する多量の炭化水素の生産が可能となる。生産された地層流体が、選択された炭素数を超える化合物の最少量を有するように、圧力を保持できる。選択された炭素数は最大で25、最大で20、最大で12、又は最大で8であってよい。高炭素数の幾つかの化合物は地層内の蒸気に同伴されてもよく、蒸気と一緒に地層から除去されてもよい。増大圧力を地層内で保持することにより、高炭素数の化合物及び/又は多環炭化水素化合物の蒸気への同伴が防止できる。高炭素数の化合物及び/又は多環炭化水素化合物は、かなりの時間の間、液相で地層内にあってもよい。かなりの時間は、化合物が熱分解して、低炭素数の化合物を形成するのに十分な時間であってよい。
【0080】
生産坑井206から生産された地層流体は収集配管208を通って処理設備210に輸送してもよい。また地層流体は熱源202から生産してもよい。例えば流体は熱源202から生産して、熱源に隣接する地層内の圧力を制御してもよい。熱源202から生産された流体は配管を通って、収集配管208へ輸送してもよいし、又は生産された流体は、配管を通って、直接に処理設備210へ輸送してもよい。処理設備210としては、分離ユニット、反応ユニット、品質高向上ユニット、燃料電池、タービン、貯蔵容器、及び/又はその他、生産された地層流体を処理するためのシステム又はユニットが挙げられる。処理設備は、地層で生産された炭化水素の少なくとも一部から輸送用燃料を形成できる。幾つかの実施態様では輸送用燃料はジェット燃料であってよい。
【0081】
図2は誘導的にエネルギーを付与された管状体を有するu字形ヒーターの実施態様を概略的に示す。ヒーター212は、坑井孔218Aと坑井孔218B間に亘る開口に電気導電体214及び管状体216を備える。特定の実施態様では電気導電体214及び/又は電気導電体の電流運搬部分は管状体216から電気的に絶縁される。電気導電体214及び/又は電気導電体の電流運搬部分は、電流が電気導電体から管状体に流れないように、或いはその逆になるように、管状体216から電気的に絶縁される(例えば管状体は電気導電体に電気的に接続されない)。
【0082】
幾つかの実施態様では電気導電体214は管状体216内に集中化される(例えば図3に示すように、集中化部材220又は他の支持構造を用いて)。集中化部材220は管状体216から電気導電体214を絶縁してよい。幾つかの実施態様では管状体216は電気導電体214と接触している。幾つかの実施態様では電気導電体214は、管状体216から電気導電体の電流運搬部分を絶縁する電気絶縁物(例えば酸化マグネシウム又は磁器エナメル)を有する。電気絶縁物は、電気導電体214及び管状体216が互いに物理的に接触した場合、電流が電気導電体の電流運搬部分と管状体間に流れるのを防止する。
【0083】
幾つかの実施態様では電気導電体214は露出金属導電体ヒーター又は導管内導電体型ヒーターである。特定の実施態様では電気導電体214は鉱物絶縁導電体のような絶縁(insulated)導電体である。絶縁導電体は銅コア、銅合金コア、又は電気損失の少ない同様な電気導電性低抵抗コアであってよい。幾つかの実施態様ではコアは直径約0.5インチ(1.27cm)〜約1インチ(2.54cm)の銅コアである。絶縁導電体の外装又は覆いは、347ステンレス鋼、625ステンレス鋼、825ステンレス鋼、304ステンレス鋼、又は保護層(例えば保護覆い)付き銅のような非強磁性耐食性鋼であってよい。外装の外径は約1インチ(2.54cm)〜約1.25インチ(3.18cm)であってよい。
【0084】
幾つかの実施態様では絶縁導電体の外装又は覆いは管状体216と物理的に接触している(例えば管状体は管状体の長さ沿いに外装と接触している)か、或いは外装は管状体に電気的に接続している。このような実施態様では絶縁導電体の電気絶縁は、絶縁導電体のコアを覆い及び管状体から電気的に絶縁する。図4は管状体216と電気的に接触した絶縁導電体の外装を有する誘導ヒーターの実施態様を示す。電気導電体214は絶縁導電体である。絶縁導電体の外装は電気接触器(contactor)222を用いて管状体216に電気的に接続している。幾つかの実施態様では電気接触器222は滑動性接点器である。特定の実施態様では電気接触器222は絶縁導電体を、管状体の端部又はその近くで管状体216に電気的に接続させる。管状体の端部又はその近くで電気的に接続すると、管状体沿いの電圧は絶縁導電体の外装沿いの電圧とほぼ均等化する。管状体沿いの電圧及び外装沿いの電圧を同等にすると、管状体と外装間のアーク発生を防止できる。
【0085】
図2、3、4に示すような管状体216は強磁性であってよいか、或いは強磁性材料を含有してよい。管216は、電気導電体214が管状体216の表面上に電気流を誘導すると、電気導電体は、経時変化性電流によりエネルギーを付与されるような厚さを持ってよい。電気導電体は管状体の強磁特性により電気流を誘導する。電流は管状体216の内表面及び管状体の外表面の両方に誘導される。電流が管状体の1つ以上の表面の表皮(skin)深さに誘導される際、管状体216は表皮効果として操作してよい。特定の実施態様では誘導電流は管状体216の内表面及び/又は外表面上で軸方向(縦方向)に循環する。電気導電体214を流れる縦方向の電流は管状体216中に主として縦方向の電流を誘導する(誘導電流の大部分は管状体中で縦方向である)。管状体216中に主として縦方向の電流が誘導されると、誘導電流が主として角(angular)電流である場合に比べて1フィート当たり高い抵抗が得られる。
【0086】
特定の実施態様では管状体216中の電流は電気導電体214中の低周波電流により誘導される(例えば50又は60Hzから約1000Hzまで)。幾つかの実施態様では管状体216の内表面及び外表面に誘導された電流はほぼ等しい。
【0087】
特定の実施態様では管状体216は強磁性材料のキューリー温度又はその近くで、或いは強磁性材料の相変換温度又はその近くで、管状体中の強磁性材料の表皮深さよりも大きい厚さを有する。例えば管状体216は強磁性材料のキューリー温度又は相変換温度近くで、強磁性材料の表皮深さの2.1倍以上、2.5倍以上、3倍以上又は4倍以上の厚さを有する。特定の実施態様では管状体216は強磁性材料のキューリー温度又は相変換温度よりも約50℃低い点で、強磁性材料の表皮深さの2.1倍以上、2.5倍以上、3倍以上、又は4倍以上の厚さを有する。
【0088】
特定の実施態様では管状体216は炭素鋼である。幾つかの実施態様では管状体216は耐腐食性被膜(例えば磁器又はセラミック被膜)及び/又は電気絶縁性被膜で被覆される。幾つかの実施態様では電気導電体214は電気絶縁性被膜を有する。管状体216及び/又は電気導電体214上の電気導電性被膜の例としては、限定されるものではないが、磁器エナメル被膜、アルミナ被膜又はアルミナ−チタニア被膜が挙げられる。
【0089】
幾つかの実施態様では管状体216及び/又は電気導電体214は、ヒーターにエネルギーを付与した際、溶融又は分解する可能性があるポリエチレン、その他、好適な低摩擦係数被膜のような被膜で被覆される。被膜により管状体及び/又は電気導電体は地層中に容易に配置することができる。
【0090】
幾つかの実施態様では管状体216としては、限定されるものではないが、410ステンレス鋼、446ステンレス鋼、T/P91ステンレス鋼、T/P92ステンレス鋼、合金52、合金42及び不変鋼36のような耐腐食性強磁性材料が挙げられる。幾つかの実施態様では管状体216は、コバルト添加(例えば約3〜約10重量%コバルト添加)及び/又はモリブデン(例えば約0.5重量%モリブデン)含有ステンレス鋼である。
【0091】
管状体216中の強磁性材料のキューリー温度或いは相変換温度又はその近くで強磁性材料の透磁率は急速に低下する。管状体216の透磁率がキューリー温度或いは相変換温度又はその近くで低下すると、これらの温度では管状体は本質的に非強磁性となり、電気導電体214は管状体への電流の誘導に使用できなくなるので、管状体中に電流は殆ど又は全くなくなる。管状体中に電流は殆ど又は全くなくなることにより、透磁率が増大し、管状体が強磁性になるまで管状体の温度は低下する。こうして、管状体216中の強磁性材料の強磁性特性により、管状体216はキューリー温度或いは相変換温度又はその近くで自己制限し、温度制限ヒーターとして操作する。管状体216では電流が誘導されるので、電流を強磁性材料に直接流す温度制限ヒーターよりも管状体に対して折り返し比が高く、また電流低下が急激(sharp)かも知れない。例えば管状体216中に誘導電流を有するヒーターの折り返し比は約5以上、約10以上、又は約20以上であるのに対し、電流を強磁性材料に直接流す温度制限ヒーターの折り返し比は約5以下である。
【0092】
管状体216中に電流が誘導されると、管状体は炭化水素層に熱を供給し、炭化水素層中に加熱帯域を画定する。特定の実施態様では管状体216は約300℃以上、約500℃以上又は約700℃以上に加熱する。電流は管状体216の内表面及び外表面の両方に誘導されるので、電流を直接、強磁性材料に流して、電流の流れを一表面に制限する温度制限ヒーターに比べて管状体の熱発生量は増大する。こうして、電流を直接、強磁性材料に流すヒーターと同じ熱を発生させるため、電気導電体214には少ない電流を供給できる。電気導電体214に少ない電流を使用すると、出力消費を低減すると共に、地層の上層土での出力損失を低減する。
【0093】
特定の実施態様では管状体216は大きな直径を有する。大きな直径を使用して、管状体の内部又は外部のいずれからの管状体への高圧を均等化又はほぼ均等化できる。幾つかの実施態様では管状体216の直径は約1.5インチ(約3.8cm)〜約6インチ(約15.2cm)の範囲である。幾つかの実施態様では管状体216の直径は約3〜約13cm、約4〜約12cm、又は約5〜約11cmの範囲である。管状体216の直径を増大させると、管状体の熱伝達表面積の増大により地層に更に多くの熱出力を供給できる。
【0094】
特定の実施態様では管状体216は管状体の抵抗を増大させるため造形した表面を有する。図5は放射状の溝表面を持った管状体216を有するヒーターの実施態様を示す。ヒーター212は管状体216に連結した電気導電体214A、Bを備えてよい。電気導電体214A、Bは絶縁導電体であってよい。電気導電体は電気的かつ物理的に電気導電体214A、Bを導電体216に連結してよい。特定の実施態様では電気導電体は、電気導電体214A、Bの端部が管状体216の端部中に押し進むと、電気導電体が電気導電体を管状体に連結するような形状を有する。例えば電気導電体は円錐形であってよい。電流を直接、管状体216に流すと、ヒーター212は熱を発生する。電流は電気導電体214A、Bを用いて管状体216に供給される。溝226は管状体216の熱伝達表面積を増大する。
【0095】
幾つかの実施態様では誘導ヒーターの管状体の1つ以上の表面はヒーターの抵抗を増大させるため、織物状組織にしてよい。図6は誘導ヒーターであるヒーター212を示す。電気導電体214は管状体216中を延びている。
【0096】
管状体216は溝226を備えてよい。幾つかの実施態様では溝226は管状体内で切断される。幾つかの実施態様では管状体にひれ(fins)が連結して隆起及び溝216を形成する。一実施態様ではひれは管状体に溶接してもよいし、さもなければ接着させてもよい。一実施態様ではひれは、管状体上に配置した管状体外装に連結してよい。外装は管状体に物理的かつ電気的に連結して管状体216を形成してよい。
【0097】
特定の実施態様では溝は管状体216の外表面上にある。幾つかの実施態様では溝は管状体の内表面上にある。幾つかの実施態様では溝は管状体の内表面上及び外表面上の両方にある。
【0098】
特定の実施態様では溝226は放射状の溝(管状体216の円周の周りを巻く溝)である。特定の実施態様では溝226は真直ぐか、曲がっている(angled)か、又は螺旋状の溝又は隆起である。幾つかの実施態様では溝226は管状体216の表面沿いの均等に間隔を置いた溝である。幾つかの実施態様では溝226は管状体216上にネジ山をつけた(threaded)表面の一部である(溝は表面上に巻付けるネジ山として形成される)。溝226は所望とする各種の形状を有してよい。例えば溝226は正方形のエッジ、長方形のエッジ、v形エッジ、u形エッジ、又は円いエッジを持ってよい。
【0099】
溝226は、管状体の表面に誘導された電流の通路長さの増大により、管状体216の有効抵抗を増大させる。溝226は、平滑な表面を有する同じ外径及び内径の管状体に比べて管状体216の有効抵抗を増大させる。誘導電流は軸方向に進むので、管状体の表面沿いに溝の上下を進まなければならない。したがって、溝226の深さは管状体216中に選択された抵抗を付与するため、変化させてよい。例えば溝の深さを増大させると、通路長さ及び抵抗が増大する。
【0100】
溝226を有する管状体216の抵抗を増大させると、平滑表面を有する管状体に比べて管状体の熱発生量が増大する。こうして、電気導電体214中の同じ電流で、平滑表面の管状体よりも放射状溝付き表面の管状体に大きな熱出力を与える。したがって、放射状溝付き表面の管状体に平滑表面の管状体と同じ熱出力を与えるには、放射状溝付き表面の管状体を有する電気導電体214では電流が少なくて済む。
【0101】
幾つかの実施態様では管状体216の絶縁中、溝を保護するため、溝226には低温で分解する材料が満たされる。例えば溝226はポリエチレン又はアスファルトで満たしてよい。ヒーター212がヒーターの通常の操作温度に達すると、ポリエチレン又はアスファルトは溶融及び/又は脱着できる。
【0102】
溝226は、このような管状体の抵抗を高くするため,ここで説明した他の実施態様で使用してよい。例えば溝226は図2、3、4に示す管状体216の実施態様に使用してよい。
【0103】
図7はヒーターの長さ沿いに変化する熱出力を提供するため、複数の管状体区画に分割したヒーター212の実施態様を示す。ヒーター212は各管状体区画で異なる熱出力を与えるため、異なる特性を有する管状体区画216A、216B、216C、216Dを備えてよい。管状体区画216Dの熱出力は溝区画216A、216B、216Cの熱出力よりも小さくてよい。変化し得る特性の例としては、限定されるものではないが、厚さ、直径、断面積、抵抗、材料、溝の数、溝の深さが挙げられる。管状体区画216A、216B及び216Cにおける異なる特性により、ヒーター212の長さ沿いに異なる最高操作温度(例えばキューリー温度又は相変換温度)が得られる。管状体区画の異なる最高温度は、管状体区画から異なる熱出力を付与する。溝区画216Aのような区画は、分離設備手順に従って坑井孔に下向配置される(placed down)別々の区画であってよい。溝区画216B及び216Cのような幾つかの区画同士は非溝区画216Dにより接続してよいし、また坑井孔の下方に配置してよい。
【0104】
ヒーター212の長さ沿いに異なる熱出力が得られると、1つ以上の炭化水素層に異なる加熱が行える。例えばヒーター212は1つの炭化水素層又は異なる複数の炭化水素層の異なる区画に異なる熱出力を付与するため、2つ以上の加熱区画に分割できる。
【0105】
一実施態様では、ヒーター212の第一部分は炭化水素層の第一区画に熱を供給でき、また該ヒーターの第二部分は該炭化水素層の第二区画に熱を供給できる。第一区画の炭化水素はヒーターの第一部分により供給された熱により易動化できる。第二区画の炭化水素はヒーターの第二部分により、第一区画よりも高い温度に加熱できる。第二区画の高温により、第二区画の炭化水素は、第一区画に比べて品質向上が可能である。例えば炭化水素は第二区画では易動化、粘度低下、及び/又は熱分解できる。第一区画からの炭化水素は、例えば第一区画に供給された駆動流体により第二区画に移動可能である。他の一例として、ヒーター212は、ヒーター端部の熱損失を減殺し、地層の加熱部分において更に一定した温度を維持するため、高い熱出力を付与する端区画を有してよい。
【0106】
特定の実施態様では3つ、又は3の倍数の電気導電体は、地層の加熱すべき部分の中でこれらの電気導電体を囲む複数の管状体を備えた共通の坑井孔経由で地層に出入りする。図8は炭化水素層224中で3つの電気導電体214A、B、Cを囲む3つの管状体216A、B、Cを備え、第一の共通坑井孔218A経由で地層に入り、第二の共通坑井孔218C経由で地層を出る該3つの電気導電体の実施態様を示す。幾つかの実施態様では電気導電体214A、B、Cは単一の三相Y字状回路変圧器により出力される。管状体216A、B、C及び電気導電体214A、B、Cの部分は、炭化水素層224中の3つの別々の坑井孔に存在してよい。これら3つの別々の坑井孔は、第一共通坑井孔218Aから第二共通坑井孔218Bまで坑井孔を掘削するか、又はその逆に坑井孔を掘削することにより、或いは両共通坑井孔から掘削し、掘削した複数の開口を炭化水素層中で接続することにより、形成できる。
【0107】
炭化水素層224中に2つだけの坑井孔から延びる多数の誘導ヒーターを有すると、地層の加熱に必要な表面上の坑井のフットプリントは減少する。地層に掘削した上層土坑井孔の数は減少し、地層中のヒーター1つ当たりの資金が少なくなる。地層の処理に使用される上層土を通る坑井の数が減ったため、上層土での電力(出力)損失は地層に供給される合計電力のより小さい分数になる可能性がある。更に、共通坑井孔の3つの相が互いにほぼ相殺し、坑井孔のケーシング又はその他の構造内の誘導電流を阻止するので、上層土での電力損失は一層少なくなる可能性がある。
【0108】
幾つかの実施態様では3つ、又は3の倍数の電気導電体及び管状体は、地層中の別々の坑井孔に配置される。図9は地層中の別々の坑井孔における3つの電気導電体214A、B、C及び3つの管状体216A、B、Cの実施態様を示す。電気導電体214A、B、Cは各導電体が変圧器の一相に連結した単一の三相Y字状回路変圧器230により出力できる。幾つかの実施態様では3つの導電体の6、9、12又は他の倍数の電気導電体を出力させるのに使用される。3の倍数の電気導電体を三相Y字状回路変圧器に連結すれば、誘導ヒーターに出力を付与するための装備コストを低下できる。
【0109】
幾つかの実施態様では2つ、又は2の倍数の電気導電体は第一共通坑井孔から地層に入り、炭化水素層中で各電気導電体を囲む管状体を有する第二共通坑井孔から地層を出る。2の倍数の電気導電体は単一の二相変圧器により出力できる。このような実施態様では電気導電体は、絶縁導電体の上層土区画及び加熱区画では均質の電気導電体(全体を同じ材料を用いて絶縁した導電体)であってよい。電流は上層土区画で誘導効果を低下又は取り消すので、上層土区画の逆流電流は、坑井孔の上層土区画での電力損失を低減できる。
【0110】
特定の実施態様では図2〜8に示す管状体216は電気絶縁体で分離された多重層を有する。図10は多重層誘導管状体の実施態様を示す。管状体216は電気絶縁体236A、Bで分離された強磁性層232A、B、Cを有する。電気絶縁体の3つの強磁性層及び2つの層を図10に示す。所望ならば、管状体216は追加の強磁性層及び/又は電気絶縁体を有してよい。例えば層の数は管状体から所望の熱出力が得られるように選択される。
【0111】
強磁性層232A、B、Cは例えば空隙により電気導電体214から電気的に絶縁される。強磁性層232A、B、Cは電気絶縁体236A及び電気絶縁体236Bにより互いに電気的に絶縁される。こうして、強磁性層232A、B、C及び電気導電体214間では電流の直接流は阻止される。電流を電気導電体214に流すと、強磁性層232A、B、Cの強磁特性により強磁性層中に電気電流が誘導される。2以上の電気絶縁強磁性層を有すると、誘導電流に多数の電流誘導ループを付与する。多数の電流誘導ループは、電気導電体214用電源に対し直列に(in series)電気負荷として効果的に現れるかも知れない。多数の電流誘導ループは1つだけの電流誘導ループを有する管状体と比べて、管状体216の単位長さ当たりの熱発生量を増加できる。同じ熱出力の場合、多重層を有する管状体は単一層の管状体に比べて、高電圧及び小電流を持つことができる。
【0112】
特定の実施態様では強磁性層232A、B、Cは同じ強磁性材料を含有する。幾つかの実施態様では強磁性層232A、B、Cは異なる強磁性材料を含有する。強磁性層232A、B、Cの特性は異なる層から異なる熱出力を得るため、変化できる。強磁性層232A、B、Cの変化可能の特性としては、限定されるものではないが、層の強磁性材料及び厚さが挙げられる。
【0113】
電気絶縁体236A及び236Bは酸化マグネシウム、磁器エナメル、及び/又は他の好適な電気絶縁体であってよい。電気絶縁体236A及び236Bの厚さ及び/又は材料は管状体216に異なる操作パラメーターを付与するため、変化できる。
【0114】
幾つかの実施態様では流体が図2〜8に示す管状体216に循環される。幾つかの実施態様では地層に熱を加えるため、流体が管状体216に循環される。例えば管状体にエネルギーを付与する(加熱システムに電流を供給する)前に地層を予熱するため、流体を管状体に循環させてよい。幾つかの実施態様では地層から熱を回収するため、流体が管状体に循環される。回収熱は地層の他の部分に熱を供給するため、及び/又は地層から生産された流体の処理に使用される表面処理に熱を供給するため、使用してよい。幾つかの実施態様では流体はヒーターの冷却に使用される。
【0115】
特定の実施態様では絶縁導電体は誘導ヒーターとして操作される。図11は誘導ヒーターとして使用される絶縁導電体240の実施態様の端部断面図である。図12は図11に示す実施態様の側部断面図である。絶縁導電体240はコア234、電気絶縁体236及びジャケット238を備える。コア234は銅、又は熱出力を殆ど又は全く付与しない低抵抗の他の非強磁性電気導電体であってよい。幾つかの実施態様ではコアは、コアの複数部分の電気導電体236への移行を防止するため、ニッケルのような材料の薄層と貼り合わせてよい。電気絶縁体236は酸化マグネシウム又は高電圧でのアークを防止する他の好適な電気絶縁体であってよい。
【0116】
ジャケット238は少なくとも1種の強磁性材料を含有する。特定の実施態様ではジャケット238は炭素鋼又はその他の強磁性鋼(例えば410ステンレス鋼、446ステンレス鋼、T/P91ステンレス鋼、T/P92ステンレス鋼、合金52、合金42及び不変鋼36)を含有する。幾つかの実施態様ではジャケット238は耐腐食性材料(例えば347Hステンレス鋼又は304ステンレス鋼)の外側層を含有する。外側層は当該技術分野に既知の方法を用いて、強磁性材料に貼り合わせるか、さもなければ強磁性材料に連結してよい。
【0117】
特定の実施態様ではジャケット238は、ジャケットの強磁性材料の少なくとも約2の表皮深さ(skin depths)の厚さを有する。幾つかの実施態様ではジャケット238は、少なくとも約3、少なくとも約4又は少なくとも約5の表皮深さの厚さを有する。ジャケット238の厚さが増大すると、絶縁導電体240からの熱出力が増大できる。
【0118】
幾つかの実施態様ではコア234は約0.5インチ(1.27cm)の直径を有する銅であり、電気絶縁体236は約0.20インチ(0.5cm)の厚さ(外径は約0.9インチ(2.3cm))を有する酸化マグネシウムであり、またジャケット238は約1.6インチ(4.1cm)の外径(厚さは約0.35インチ(0.88cm)である)を有する炭素鋼である。耐腐食性材料347Hステンレス鋼の薄層(約0.1インチ(0.25cm)厚(約1.7インチ(4.3cm)の外径)はジャケット238の外側上に貼り合わせてよい。
【0119】
他の一実施態様ではコア234は約0.338インチ(0.86cm)の直径を有する銅であり、電気絶縁体236は約0.096インチ(0.24cm)の厚さ(外径は約0.53インチ(1.3cm))を有する酸化マグネシウムであり、またジャケット238は約1.13インチ(2.9cm)の外径(厚さは約0.30インチ(0.76cm)である)を有する炭素鋼である。耐腐食性材料347Hステンレス鋼の薄層(約0.065インチ(0.17cm)厚(約1.26インチ(3.2cm)の外径)はジャケット238の外側上に貼り合わせてよい。
【0120】
幾つかの実施態様ではコア234は銅であり、電気絶縁体236は酸化マグネシウムであり、またジャケット238は炭素鋼で囲まれた銅の薄層である。コア234、電気絶縁体236、及びジャケット238の銅薄層は、絶縁導電体の長尺片(例えば約500インチ(約150m)以上)として得ることができる。ジャケット238の炭素鋼層は、長尺の絶縁導電体上で該炭素鋼を引き抜く(draw down)ことにより付加できる。ジャケット内の銅薄層はジャケットの内表面にショートするので、このような絶縁導電体はジャケット238の外側上で熱を発生するだけでよい。
【0121】
幾つかの実施態様ではジャケット238は多重層の強磁性材料で作製される。これらの多重層は同じ強磁性材料であっても或いは異なる強磁性材料であってもよい。例えば一実施態様ではジャケット238は3層の炭素鋼から作製した0.35インチ(0.88cm)厚の炭素鋼ジャケットである。第一層及び第二層は0.10インチ(0.25cm)厚であり、第三層は0.15インチ(0.38cm)厚である。他の一実施態様ではジャケット238は、3つの0.10インチ(0.25cm)厚の炭素鋼層から作製した0.3インチ(0.76cm)厚の炭素鋼ジャケットである。
【0122】
特定の実施態様ではジャケット238及びコア234は、ジャケットとコアとの間に直接、電気的な接続がないように電気的に絶縁されている。コア234は、コアの各端部が電源の一極に連結している単一の電源に電気的に連絡してよい。例えば絶縁導電体240は、コア234の各端部が電源の一極に連結しているu形坑井孔に配置したu形ヒーターであってよい。
【0123】
コア234が経時変化性電流でエネルギーを付与されると、コアは(図12の矢印で示すように)ジャケット中の強磁性材料の強磁特性により、ジャケット238の表面上に電気電流を誘導する。特定の実施態様ではジャケット238の内表面及び外表面の両方に電流が誘導される。これら誘導ヒーターの実施態様ではジャケット238は絶縁導電体240の加熱素子として操作する。
【0124】
ジャケット238中の強磁性材料のキューリー温度或いは相変換温度又はその近くで、強磁性材料の透磁率は急速に低下する。ジャケット238の透磁率がキューリー温度或いは相変換温度又はその近くで低下すると、これらの温度ではジャケットは本質的に非強磁性となるので、ジャケットには電流が殆どなくなるか全くなくなり、コア238はジャケット中に電流を誘導することができない。ジャケットには電流が殆どないか全くないため、ジャケットの温度は、透磁率が増大すると共に、ジャケットが強磁性になるまで更に低温に降下する。こうして、ジャケット238はキューリー温度或いは相変換温度又はその近くで自己制限し、絶縁導電体240はジャケットの強磁性特性により、温度制限ヒーターとして操作する。ジャケット238には電流が誘導されるので、折り返し比は電流を直接ジャケットに流す場合よりも高く、またジャケットに対する電流低下が急激かも知れない。
【0125】
特定の実施態様では地層の上層土中のジャケット238の複数部分は、強磁性材料を含まない(例えば非強磁性材料である)かも知れない。ジャケット238の上層土部分を非強磁性材料で作製すると、ジャケットの上層土部分での電流の誘導は防止される。上層土部分での電流の誘導を防止することにより、上層土での電力損失は防止又は減少する。
【0126】
図13は誘導ヒーターとして使用される2本脚絶縁導電体の実施態様の断面図である。図14は図13で示す実施態様の縦断面図である。絶縁導電体240は、2つのコア234A、B;2つの電気絶縁体236A、B;及び2つのジャケット238A、Bを有する。絶縁導電体240の2つの脚は、ジャケット238Aがその長さ沿いにジャケット238Bと接触するように、互いに物理的に接触してよい。コア234A、B;電気絶縁体236A、B;及びジャケット238A、Bは図11及び12に示す絶縁導電体240の実施態様で使用されるもののような材料を含有してよい。
【0127】
図14に示すように、コア234A及びコア234Bは変圧器230及び端子盤242に連結している。こうして、コア234A及びコア234Bは、図14の矢印で示すように、コア234A内の電流がコア234B内の電流とは反対方向に流れるように、電気的に直列に連結している。コア234A、B内の電流は図14の矢印で示すように、ジャケット238A、B内に電流を誘導する。
【0128】
特定の実施態様ではジャケット238A及び/又はジャケット238Bの複数部分は電気絶縁性被膜(例えば磁器エナメル被膜、アルミナ被膜及び/又はアルミナ−チタニア被膜)で被覆される。電気絶縁性被膜は一方のジャケット中の電流が他方のジャケット中の電流に、又はその逆に影響を及ぼす(例えば一方のジャケット中の電流が他方のジャケット中の電流を相殺する)ことを防止できる。ジャケットを互いに電気的に絶縁すると、ヒーターの折り返し比がジャケット内の誘導電流の相互作用により低下するのを防止できる。
【0129】
コア234A及びコア234Bは単一の変圧器(変圧器230)と電気的に直列に連結されているので、絶縁導電体240は地層中で末端となる坑井孔(例えばL形又はJ形の坑井孔のような単一の表面開口を有する坑井孔)に配置してよい。図14に示すような絶縁導電体240は、1つの表面開口を通って作られる、ヒーターと電源(変圧器)との間に電気接続を有する地表下末端誘導ヒーターとして操作できる。
【0130】
上層土中のジャケット238A、Bの部分及び/又は地層中の余り加熱されない部分(例えば2つの炭化水素層間の厚い頁岩の割れ目)の近くは、このような部分での誘導電流を防止するため、非強磁性であってよい。ジャケットは誘導電流を絶縁導電体のヒーター部分に限定するため、電気的に絶縁する1つ以上の部分を有してよい。ジャケットの上層土部分での誘導電流を防止すると、上層土での誘導加熱及び/又は電力損失が防止される。コア234A中の電流はコア234B中の電流とは反対方向に流れるので、絶縁導電体240を囲む上層土中の他の構造(例えば上層土ケーシング)の誘導効果は防止できる。
【0131】
図15は誘導ヒーターとして使用される多重層絶縁導電体の実施態様の断面図である。絶縁導電体240は電気絶縁体236A及びジャケット238Aで囲まれたコア234を有する。電気絶縁体236A及びジャケット238Aは絶縁導電体240の第一層を含む。第一層は電気絶縁体236B及びジャケット238Bを有する第二層で囲まれている。電気絶縁体及びジャケットの2つの層を図15に示す。所望ならば、絶縁導電体は追加の層を有してよい。例えば層の数は絶縁導電体から所望の熱出力が得られるように選択してよい。
【0132】
ジャケット238A及びジャケット238Bは電気絶縁体236A及び電気絶縁体236Bによりコア234から、また互いに電気的に絶縁される。ジャケット238A及びジャケット238B、並びにコア234間では電流の直接流は防止される。電流をコア234に流すと、ジャケットの強磁性特性により、ジャケット238A及びジャケット238Bの両方に電気電流が誘導される。電気絶縁体及びジャケットの2つ以上の層を有すると、多電流誘導ループが得られる。多電流誘導ループは絶縁導電体240用電源に直列の電気負荷として効果的に出現できる。多電流誘導ループは1つだけの電流誘導ループを有する絶縁導電体に比べて、絶縁導電体240の単位長さ当たりの熱発生量を増加できる。同じ熱出力の場合、多重層を有する絶縁導電体は単一層絶縁導電体に比べて高い電圧及び低い電流を持つことができる。
【0133】
特定の実施態様ではジャケット238A及びジャケット238Bは同じ強磁性材料を含有する。幾つかの実施態様ではジャケット238A及びジャケット238Bは異なる強磁性材料を含有する。異なる層から異なる熱出力を得るため、ジャケット238A及びジャケット238Bの特性は変化させてよい。ジャケット238A及びジャケット238Bの変化可能な特性の例としては、限定されるものではないが、層の強磁性材料及び厚さが挙げられる。
【0134】
電気絶縁体236A及び236Bは酸化マグネシウム、磁器エナメル、及び/又は他の好適な電気絶縁体であってよい。電気絶縁体236A及び236Bの厚さ及び/又は材料は絶縁導電体240に異なる操作パラメーターを付与するため、変化させてよい。
【0135】
図16はコイルドチュービング導管中に配置され、誘導ヒーターとして使用される3つの絶縁導電体240の実施態様の端部図である。各絶縁導電体240は図11、12及び15に示す絶縁導電体であってよい。絶縁導電体240のコアは、絶縁導電体が三相Y字状回路構造中で電気的に連結するように、互いに連結してよい。図17は絶縁導電体の端部同士が連結した絶縁導電体240のコア234を示す。
【0136】
図16に示すように、絶縁導電体240は管状体216中に配置される。管状体216はコイルドチュービング導管、或いはその他のコイルドチュービング管状体又はケーシングであってよい。絶縁導電体240は、これを例えばコイルドチュービングリールに巻付ける(coil)際、絶縁導電体上の応力を低下させるため、管状体216内部で螺旋形態(formation)であってよい。管状体216は、コイルドチュービング用具(rig)を用いて絶縁導電体を地層(formation)中に取付け可能にすると共に、地層に取付け中、絶縁導電体を保護する。
【0137】
図18は支持部材上に配置され、誘導ヒーターとして使用される3つの絶縁導電体240の実施態様の端部図である。各絶縁導電体240は、例えば図11、12及び15に示す絶縁導電体であってよい。絶縁導電体240のコアは、絶縁導電体が三相Y字状回路構造中に電気的に連結するように、互いに連結してよい。例えばコア同士は図17に示すように、連結してよい。
【0138】
図18に示すように、絶縁導電体240は支持部材244に連結される。支持部材244は絶縁導電体240用の支持体を提供する。絶縁導電体240は支持部材244の周りに螺旋状に巻き付けてよい。幾つかの実施態様では支持部材244は強磁性材料を含有する。支持部材244の強磁性材料中に電流を誘導してよい。こうして、支持部材244は絶縁導電体240のジャケットで発生した熱の他に、若干の熱を発生できる。
【0139】
特定の実施態様では絶縁導電体240同士はバンド246付き支持部材244上に保持される。バンド246はステンレス鋼又はその他の非腐食性材料であってよい。幾つかの実施態様ではバンド246は絶縁導電体240同士を保持する複数のバンドを含む。絶縁導電体240同士を保持するため、絶縁導電体の周りに周期的にバンドを配置できる。
【0140】
幾つかの実施態様では図11及び12に示すジャケット238又は図14に示すジャケット238A、Bは、ジャケットの有効抵抗を増大させるため、ジャケットの外表面及び/又は内表面上に溝又はその他の構造を有する。溝付きのジャケット238及び/又はジャケット238A、Bの抵抗を増大させると、平滑な表面を有するジャケットに比べて、ジャケットの熱発生量が増加する。こうして、コア234及び/又はコア234A、B中の同じ電流でも平滑表面のジャケットに比べて、溝表面のジャケットは更に多くの熱出力を付与する。
【0141】
幾つかの実施態様ではジャケット238(例えば図11及び12に示すジャケット又は図14に示すジャケット238A、B)はヒーターの長さ沿いに変化する熱出力を付与するため、複数区画に分割される。例えばジャケット238及び/又はジャケット238A、Bは、図7に示す管状体区画216A、216B及び216Cのような区画に分割してよい。図11、12及び14に示すジャケット238の区画は各区画で異なる熱出力を得るため、異なる特性を有してよい。変化可能な異なる特性の例としては、限定されるものではないが、厚さ、直径、抵抗、材料、溝の数、溝の深さが挙げられる。これら区画の異なる特性により、絶縁導電体240の長さ沿いに異なる最高操作温度(例えば異なるキューリー温度又は相変換温度)が得られる。これら区画の異なる最高温度により、これら区画から異なる熱出力が得られる。
【0142】
特定の実施態様では誘導ヒーターは螺旋状に巻いた強磁性材料で囲まれた絶縁電気導電体を含む。例えば螺旋状に巻いた強磁性材料は図2〜8に示す管状体216と同様、誘導加熱素子として操作できる。図19は強磁性層232で囲まれた、コア234及び電気絶縁体236を有する誘導ヒーターの実施態様図である。コア234は銅、又は熱出力を殆ど又は全く付与しない低抵抗の他の非強磁性電気導電体であってよい。電気絶縁体236はテフロン(登録商標)、XPLE(架橋ポリエチレン)又はEPDM(エチレン−プロピレンジエンモノマー)のような高分子電気絶縁体であってよい。幾つかの実施態様ではコア234及び電気絶縁体236は両方ともポリマー(絶縁体)被覆ケーブルとして得られる。幾つかの実施態様では電気絶縁体236は酸化マグネシウム又は高電圧及び/又は高温でのアークを防止する他の好適な電気絶縁体であってよい。
【0143】
特定の実施態様では強磁性層232はコア234及び電気絶縁体236上に螺旋状に巻かれている。強磁性層232は炭素鋼又はその他の強磁性鋼(例えば410ステンレス鋼、446ステンレス鋼、T/P91ステンレス鋼、T/P92ステンレス鋼、合金52、合金42及び不変鋼36)を含有してよい。
【0144】
幾つかの実施態様では強磁性層232は電気絶縁体上に螺旋状に巻かれている。幾つかの実施態様では強磁性層232は耐腐食性材料の外側層を含有する。幾つかの実施態様では強磁性層は棒片(bar stock)である。図20は強磁性層232で囲まれた絶縁導電体240の実施態様図である。絶縁導電体240はコア234、電気絶縁体236及びジャケット238を有する。コア234は銅、又は熱出力を殆ど又は全く付与しない低抵抗の他の非強磁性電気導電体である。電気絶縁体236は酸化マグネシウム又はその他の好適な電気絶縁体である。強磁性層232は絶縁導電体240上に螺旋状に巻かれている。
【0145】
ヒーター上に螺旋状に巻く強磁性層232は誘導ヒーターの他の構築法に比べて、強磁性層の厚さに対する制御を増大できる。例えばヒーターの出力を変化させるため、ヒーター上に2つ以上の強磁性層232を巻いてよい。ヒーターから所望の出力を得るため、強磁性層232の数を選択できる。図21はコア234及び電気絶縁体236上に渦巻状に巻いた2つの強磁性層232A、Bを有する誘導ヒーターの実施態様図である。幾つかの実施態様では強磁性層232Aはヒーター上にニュートラルトルクを供給するため、強磁性層232Bに対し逆向きに巻かれる。ニュートラルトルクは、地層の開口にヒーターを懸垂するか、或いは自由に吊るした際、有効かも知れない。
【0146】
誘導ヒーターの熱出力を変えるため、螺旋巻きの数(例えば強磁性層の数)は変化させてよい。また誘導ヒーターの熱出力を変えるため、他のパラメーターを変化させてもよい。他の変化させたパラメーターの例としては、限定されるものではないが、流した電流、利用した(applied)周波数、配置(geometry)、強磁性材料及び/又は螺旋巻きの数が挙げられる。
【0147】
螺旋巻き強磁性層を使用すると、従来の絶縁ケーブル又は容易に製造した絶縁ケーブルの長尺物に強磁性材料を螺旋巻きすれば、誘導ヒーターを連続長尺状(in continuous long lengths)で製造できる。こうして、螺旋巻き誘導ヒーターは他の誘導ヒーターに比べて、製造コストを低下できた。螺旋巻き強磁性層は頑丈な(solid)強磁性管状誘導ヒーターに比べて、誘導ヒーターの機械的柔軟性を増大できる。柔軟性の増大により、螺旋巻き誘導ヒーターは吊り下げ機ジョイントのような表面突起上で曲げることが可能である。
【0148】
図22は絶縁導電体240上に強磁性層232を組立てる実施態様を示す。絶縁導電体240は絶縁導電体ケーブル(例えば無機絶縁導電体ケーブル又はポリマー絶縁導電体ケーブル)又はその他、絶縁被覆された好適な電気絶縁体コアであってよい。
【0149】
特定の実施態様では強磁性層232は、リール252から供給され、絶縁導電体240上に巻かれた強磁性材料254で作られている。リール252はコイルドチュービング用具又はその他の回転式供給用具であってよい。リール252は絶縁導電体240の周りを回転でき、こうして強磁性材料254は絶縁導電体240上に巻き付いて強磁性層232を形成する。リール252は絶縁導電体の周りを回転するので、絶縁導電体240はリール又はロール機から供給できる。
【0150】
幾つかの実施態様では強磁性材料254を絶縁導電体240上に巻き付ける前に、絶縁導電体は加熱される。例えば強磁性材料254は誘導ヒーター256を用いて加熱してよい。強磁性材料254を巻き付ける前にこれを予熱すると、強磁性材料が冷却する際、強磁性材料は絶縁導電体240に接触し、締付けることが可能である。
【0151】
幾つかの実施態様ではヒーター坑井孔の上層土区画でのケーシングの複数部分はケーシングの有効直径を増大させるために造形した表面を有する。ヒーター坑井孔の上層土区画でのケーシングとしては、限定されるものではないが、上層土ケーシング、ヒーターケーシング、ヒーター管状体、及び/又は絶縁導電体のジャケットが挙げられる。ケーシングの有効直径を増大させると、上層土の下にある1つ又は複数のヒーターの出力に使用される電流がケーシング内を伝送される(transmit)際(例えば出力の一相が上層土区画を伝送される間)、ケーシングでの誘導効果を低減できる。電流が上層土内を一方向にだけ伝送される際、この電流は上層土ケーシング中に見られるような強磁性材料又はその他の電気導電性材料に他の複数の電流を誘導する可能性がある。これらの誘導電流は、地層の上層土に望ましくない電力損失及び/又は望ましくない加熱を与える可能性がある。
【0152】
図23は溝表面又は波形表面を有するケーシング248の実施態様を示す。特定の実施態様ではケーシング248は溝250を有する。幾つかの実施態様では溝250は波形であるか、又は波形を含む。溝250はケーシング248の表面の一部として形成でき(例えばケーシングは溝表面を持って形成される)、或いは溝は、ケーシングの表面に材料を加えるか、又は材料を除去(例えば研磨)することにより形成できる。例えば溝250は、ケーシング248に溶接する管状体の長尺片上に配置してよい。
【0153】
特定の実施態様では溝250はケーシング248の外表面上にある。幾つかの実施態様では溝250はケーシング248の内表面及び外表面の両表面上にある。
【0154】
特定の実施態様では溝250は軸方向の溝(ケーシング248の長さ沿いに縦方向に進む溝)である。特定の実施態様では溝250は真直ぐか、曲がっているか、又は縦方向に螺旋状である。幾つかの実施態様では溝250はほぼ軸方向の溝又は顕著な縦方向の成分を有する螺旋状溝(即ち、螺旋角度は10°未満、5°未満、又は1°未満である)。幾つかの実施態様では溝250はケーシング248の長さ沿いにほぼ軸方向に延びる。幾つかの実施態様では溝250はケーシング248の表面沿いに均等に間隔を置いた溝である。溝250は、所望とする各種の形状を持ってよい。例えば溝250は正方形のエッジ、v形エッジ、u形エッジ、長方形のエッジを持ってよく、或いは丸いエッジを持ってよい。
【0155】
溝250はケーシング248の有効円周を増大させる。溝250は、同じ内径及び外径を有すると共に、平滑表面を有するケーシングの円周に比べて、ケーシング248の有効円周を増大させる。溝250の深さは、ケーシング248の選択された有効円周を得るため、変化させてよい。例えば幅が1/4インチ(0.63cm)、深さが1/4インチ(0.63cm)、溝間隔が1/4インチ(0.63cm)である軸方向の溝は、直径6インチ(15.24cm)のパイプの有効円周18.84インチ(47.85cm)から37.68インチ(95.71cm)(又は直径12インチ(30.48cm)のパイプの円周)に増大できる。
【0156】
特定の実施態様では溝250は、同じ内径及び外径を有すると共に、平滑表面を有するケーシングに比べて、ケーシング248の有効円周を約2以上のファクターだけ増大させる。幾つかの実施態様では溝250は、同じ内径及び外径を有すると共に、平滑表面を有するケーシングに比べて、ケーシング248の有効円周を約3以上、約4以上、又は約6以上のファクターだけ増大させる。
【0157】
溝250を有するケーシング248の有効円周を増大させると、ケーシングの表面積が増大する。ケーシング248の表面積が増大すると、所定の電流束(flux)でのケーシング内の誘導電流が減少する。ケーシング248内での誘導加熱と関連した電力損失は、誘導電流の減少により、平滑表面を有するケーシングに比べて減少する。こうして、同じ電流での誘導加熱による熱出力は、平滑表面のケーシングよりも軸方向に溝付けした表面のケーシングの方が低くなる。ヒーターの上層土区画で熱出力が低下すると、ヒーターの操作効率が向上する上、ヒーターの操作と関連するコストが低下する。ケーシング248の有効円周を増大させると共に、ケーシングでの誘導効果を低減すると、炭素鋼のような比較的安価な材料でケーシングを作ることができる。
【0158】
幾つかの実施態様ではケーシングからの電流及び/又は電力損失を防止するため、ケーシング248の1つ以上の表面に電気絶縁性被膜(例えば磁器エナメル被膜)が設けられる。幾つかの実施態様ではケーシング248は、ケーシングの2つ以上の縦方向区画(例えば、端と端を接して、共に溶接した又はネジ山を付けた縦方向区画)から形成される。これらの縦方向区画は、縦方向区画上の溝が整列するように、整列させてよい。これらの区画を整列させると、セメント又は他の材料を溝に沿って流すことができる。
【0159】
以上の説明から本発明の各種局面での更なる改変及び代替実施態様は当業者には明らかとなり得る。したがって、以上の説明は単に例証と解釈すべきであり、当業者に本発明を実施する一般的な方法を教示する目的のためである。ここに示し説明した本発明の形態は、現在の好ましい実施態様として受取るものと理解すべきである。構成要素及び材料は、ここで例証し、説明したものに変更又は取替え可能であり、部品及び方法は変更及び取替え可能であり、また本発明の特定の特徴は、独立に利用可能である。これらは全て本発明についての以上の説明の利益を享受した後、当業者には明らかであろう。特許請求の範囲に記載した本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、以上説明した構成要素に変化を加えることは可能である。更に、ここで説明した特徴は、特定の実施態様において組合わせ可能であると理解すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0160】
【特許文献1】米国特許第2,923,535号
【特許文献2】米国特許第4,886,118号
【特許文献3】米国特許第2,548,360号
【特許文献4】米国特許第4,716,960号
【特許文献5】米国特許第5,065,818号
【特許文献6】米国特許第6,023,554号
【特許文献7】米国特許第4,570,715号
【特許文献8】米国特許第5,060,287号
【特許文献9】米国特許第7,153,373号
【特許文献10】米国特許出願公開第US 2004/0191109号
【符号の説明】
【0161】
200 障壁坑井
202 熱源
204 供給ライン
206 生産坑井
208 収集配管
210 処理設備
212 ヒーター
214 電気導電体
216 管状体
218 坑井孔
220 集中化部材
222 電気接触器
224 炭化水素層
226 溝
230 三相Y字状回路変圧器
232 強磁性層
234 コア
236 電気絶縁体
238 ジャケット
240 絶縁導電体
242 端子盤
244 支持部材
246 バンド
248 ケーシング
250 溝
252 リール
254 強磁性材料
256 誘導ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表下地層中に配置され、少なくとも第一接点と第二接点との間に延びる長尺の電気導電体、及び
該電気導電体の周囲を少なくとも部分的に囲むと共に、該電気導電体の周囲を少なくとも部分的に長さ方向に延びる強磁性導電体、
を有する地表下地層用加熱システムであって、該電気導電体に経時変化性電流でエネルギーを付与すると、強磁性導電体が約300℃以上の温度に抵抗加熱されるのに十分な電流を、強磁性導電体中に誘導する該加熱システム。
【請求項2】
前記電気導電体が、ほぼu形の電気導電体である請求項1に記載の加熱システム。
【請求項3】
前記強磁性導電体が、地表下地層の少なくとも一部に熱を供給するように構成された請求項1に記載の加熱システム。
【請求項4】
前記強磁性導電体が、約500℃以上の温度に抵抗加熱されるように構成された請求項1に記載の加熱システム。
【請求項5】
前記強磁性導電体が、約700℃以上の温度に抵抗加熱されるように構成された請求項1に記載の加熱システム。
【請求項6】
前記強磁性導電体の長さの少なくとも約10mが、約300℃以上の温度に抵抗加熱されるように構成された請求項1に記載の加熱システム。
【請求項7】
前記強磁性導電体が、炭素鋼を含有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項8】
前記電気導電体が、絶縁導電体のコアである請求項1に記載の加熱システム。
【請求項9】
前記強磁性導電体が、該導電体の強磁性材料のキューリー温度未満の50℃において該強磁性材料の表皮深さの少なくとも2.1倍の厚さを有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項10】
前記強磁性導電体及び前記電気導電体は、電流が電気導電体から強磁性導電体に流れないか、又はその逆であるような互いの関係で構成される請求項1に記載の加熱システム。
【請求項11】
前記強磁性導電体が、該導電体の長さの少なくとも一部に沿って異なる熱出力を付与するように構成された請求項1に記載の加熱システム。
【請求項12】
前記強磁性導電体の長さの少なくとも一部に沿って異なる熱出力を付与するように構成された該強磁性導電体が、該導電体の長さの少なくとも一部に沿って異なる材料を有する該請求項1に記載の加熱システム。
【請求項13】
前記強磁性導電体の長さの少なくとも一部に沿って異なる熱出力を付与するように構成された該強磁性導電体が、該導電体の長さの少なくとも一部に沿って異なる寸法を有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項14】
前記強磁性導電体の少なくとも一部上に耐腐食性材料の被覆を更に有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項15】
前記強磁性導電体が、ほぼ円筒形であり、かつ約3〜約13cmの直径を有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項16】
少なくとも約10mの長さの前記強磁性導電体が、地表下地層の炭化水素含有層に配置される請求項1に記載の加熱システム。
【請求項17】
前記電気導電体が、第一電気接点から第二電気接点に向かって一方向に電流を流すように構成された請求項1に記載の加熱システム。
【請求項18】
前記電気導電体が、強磁性管状体を有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項19】
前記強磁性導電体は1つ以上の絶縁層により分離された2つ以上の強磁性層を有し、該強磁性導電体は、経時変化性電流でエネルギーを付与されると、該強磁性層の少なくとも2つを抵抗加熱するのに十分な電流を、これら強磁性層の少なくとも2つ中に誘導する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項20】
前記電気導電体が、地層中のu形坑井孔内に配置されたほぼu形の電気導電体である請求項1に記載の加熱システム。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の加熱システムに経時変化性電流を供給する工程、
前記電気導電体中の該経時変化性電流により前記強磁性導電体中に電気流を誘導する工程、及び
前記強磁性導電体が約300℃以上の温度に抵抗加熱されるように、該誘導電気流により該強磁性導電体を抵抗加熱する工程、
を含む地表下地層の加熱方法。
【請求項22】
前記強磁性導電体から前記地表下地層の少なくとも一部に熱を伝達する工程を更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記電気導電体への電流を、第一電気接点から第二電気接点に向かって一方向に流す工程を更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
地層中の炭化水素が易動化するように、前記強磁性導電体から地表下地層の少なくとも一部に熱を伝達する工程を更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項25】
地層中の炭化水素が易動化するように、前記強磁性導電体から地表下地層の少なくとも一部に熱を伝達する工程及び地層から該易動化した炭化水素の少なくとも若干を生成する工程を更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項26】
地層中に配置された少なくとも1つの追加の強磁性導電体を抵抗加熱する工程、及び前記強磁性導電体の少なくとも2つからの熱が地層中で重なり、地層中の炭化水素を易動化するように、該強磁性導電体の1つ以上から熱を供給する工程を更に含む請求項21に記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2011−501863(P2011−501863A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530044(P2010−530044)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/079707
【国際公開番号】WO2009/052045
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】