説明

地震波計測システムおよび地震波計測方法

【課題】崩壊しやすい非自立孔や、地下水等の噴出が予想されるボーリング孔での地震波測定を可能とする地震波計測システムと地震波計測方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ボーリング孔内に挿入されるケーブルロッドと、ケーブルロッドの先端に装着されるケーブルコネクターと、ボーリング孔先端部の計測装置と連通される計測ケーブルと、ケーブルコネクターの先端部に取り付けられ、計測装置と計測ケーブルを収納して外周部が地中に固着状体になっているケーブル収納管と、ケーブルコネクターとの螺合を緩める際の回転運動により計測ケーブルを切断するケーブルカッターと、内部に前記ケーブル、前記ケーブルロッド、ケーブルコネクター、計測ケーブルおよびケーブル収納管を収納し、ボーリング孔壁を保護するケーシングと、ケーシングの入口側に装着されてケーシング内部からの噴出物を遮断するケーシング封止栓と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震波計測システムおよび地震波計測方法に係り、より詳しくは、軟弱な地盤でも地震波計測が可能な地震波計測システムおよび地震波計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤状況を調査する方法として、人工的に地震波を発生させこれを測定する地震探査法がある。地震探査法には、ボーリング孔内で地震波を測定する速度検層と言う測定法があり、本発明は、この速度検層に関するものである。
速度検層は、地表から地下深くの地盤の地震波速度を調べる地震探査法に比べ、ボーリング孔を利用して直接目的地盤を測ることため高精度が得やすい。
しかし、測定はボーリング孔が自然状態で維持されることが必須である必要条件である。ボーリング孔自然状態とは自立孔ともいい、保孔管(ケーシング)やセメントで固めて再掘削された孔で無いことである。
自立孔に対し、ロッドやケーシングを抜くと孔が即座に崩れ閉塞する地盤の孔を非自立孔と言う。
従来、非自立孔では孔が崩れて閉塞するため、ケーブル、ロッド、測定器などの回収が困難であったため、測定が困難であった。
また、ボーリングを行うと、しばしばボーリングロッドとボーリング孔壁あるいは、保孔管(ケーシング)の間から地下水やガス・油が噴き出すと言う問題があった。
【特許文献1】特開平06−098435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、崩壊しやすい非自立孔や、地下水等の噴出が予想されるボーリング孔での地震波測定を可能とする地震波計測システムと地震波計測方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、地中ボーリング孔内で地震波を測定するシステムであって、外周部に沿うケーブルとともにボーリング孔内に挿入されるケーブルロッドと、前記ケーブルロッドの前記ボーリング孔の先端に装着され、その1端に前記ボーリング孔入口からのケーブル端末が結合されるケーブルコネクターと、前記ケーブルコネクターの他端の端面中心から離れた位置に結合され、ボーリング孔先端部の計測装置と連通される計測ケーブルと、前記ケーブルコネクターの先端部に取り付けられ、前記計測装置と前記計測ケーブルを収納して外周部が地中に固着状体になっているケーブル収納管と、前記ケーブル収納管の前記ケーブルコネクター側と螺合する端面に装着され、前記ケーブルコネクターとの螺合を緩める際の回転運動により前記ケーブルコネクターの端面の中心から離れた位置に結合された前記計測ケーブルを切断するケーブルカッターと、内部に前記ケーブル、前記ケーブルロッド、前記ケーブルコネクター、前記計測ケーブルおよびケーブル収納管を収納し、ボーリング孔壁を保護するケーシングと、を含むことを特徴とする。
【0005】
また、本発明は、地中ボーリング孔内で地震波を測定するシステムであって、外周部に沿うケーブルとともにボーリング孔内に挿入されるケーブルロッドと、前記ケーブルロッドの前記ボーリング孔の先端に装着され、その1端に前記ボーリング孔入口からのケーブル端末が結合されるケーブルコネクターと、前記ケーブルコネクターの他端の端面中心から離れた位置に結合され、ボーリング孔先端部の計測装置と連通される計測ケーブルと、前記ケーブルコネクターの先端部に取り付けられ、前記計測装置と前記計測ケーブルを収納して外周部が地中に固着状体になっているケーブル収納管と、前記ケーブル収納管の前記ケーブルコネクター側と螺合する端面に装着され、前記ケーブルコネクターとの螺合を緩める際の回転運動により前記ケーブルコネクターの端面の中心から離れた位置に結合された前記計測ケーブルを切断するケーブルカッターと、内部に前記ケーブル、前記ケーブルロッド、前記ケーブルコネクター、前記計測ケーブルおよびケーブル収納管を収納し、ボーリング孔壁を保護するケーシングと、前記ケーブルおよび前記ケーブルロッド用貫通孔を備え、前記ケーシングの入口側に装着されて前記ケーシング内部からの噴出物を遮断するケーシング封止栓と、を含むことを特徴とする。
【0006】
前記ケーブルロッドは、ボーリング孔入口で回転させることが可能であり、前記ケーブルカッターの切断刃は、直径が前記ケーブル収納管の直径の1/2以下である中空の円形または多角形の形状を有し、中空部に前記ケーブルコネクターの他端の端面の中心から離れた位置に結合された前記装置用ケーブルを貫通させ、その中心が前記ケーブル収納管の端面の中心からずれた位置に偏芯して装着されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記地震波計測システムにおいて地震波を計測した後、ケーブルロッドを回転することによりケーブル収納管とケーブルコネクターとの螺合を緩めて前記ケーブル収納管の端面に装着された切断刃を回転させ、ケーブルコネクターに偏芯して結合されて固定状態にある装置用ケーブルを切断して前記装置用ケーブルおよび計測装置をボーリング孔内に留置し、前記ケーブル、前記ケーブルロッドおよび前記コネクターをボーリング孔外に回収することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記地震波計測システムにおいて、ケーシングの入口側にケーシング封止栓を装着して地震波を計測した後、ケーブルロッドを回転することによりケーブル収納管とケーブルコネクターとの螺合を緩めて前記ケーブル収納管の端面に装着された切断刃を回転させ、ケーブルコネクターに偏芯して結合されて固定状態にある装置用ケーブルを切断して前記装置用ケーブルおよび計測装置をボーリング孔内に留置し、前記ケーブル、前記ケーブルロッドおよび前記コネクターをボーリング孔外に回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、従来、速度検層が出来ないとされた崩壊の激しい、破砕帯などの地盤速度が計測可能となった。
また、地中から噴出する、地下水やガスや油等を閉塞し、地中深部を自然状態にもどし、その地盤情報を調べることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、非自立孔地盤に速度検層計測器をセットして、ケーシングを抜き、計測器を地盤崩れとともに抑留させ、地盤速度を計測後、計測器につながるケーブルを切断し、計測器本体を孔内に残置、挿入ロッドと計測ケーブルを回収するシステムである。
この計測器を効率よく使い捨てることで、従来計測が極めて難しかった、非自立孔地盤の速度検層を可能とするものである。また、本発明のケーシング封止栓を用いることで、孔内計測器挿入ロッド、計測用ケーブル、場合により、注入ホースなど複数の挿入物をまとめて閉塞し、地中からの噴出物を止めることで、地盤を自然状況に戻し、その地盤の様々な地盤情報を計測することができる。
【0011】
以下、図面を参照して本発明について詳しく説明する。
図1は、本発明の地震波計測システムに採用したケーブルカッターの概略図、図2は、地震波計測システムによる計測法を説明する説明図、図3は、ケーシング封止栓の概要図、図4は、ケーシング封止栓による閉塞状況を説明する説明図である。
【0012】
図1に示す通り、本発明の地震波計測システム1は、外周部に沿うケーブル4とともにボーリング孔6内に挿入されるケーブルロッド3と、その1端にボーリング孔6入口からのケーブル4の端末が結合されるケーブルコネクター7と、ボーリング孔6先端部の計測装置5と連通される計測ケーブル9と、ケーブルコネクター7の先端部に取り付けられるケーブル収納管8と、ケーブル収納管8の端面に装着され、計測ケーブル9を切断するケーブルカッター10と、内部にケーブル4、ケーブルロッド3、ケーブルコネクター7、計測ケーブル9およびケーブル収納管8を収納し、ボーリング孔壁を保護するケーシング2と、ケーシング2の入口側に装着されてケーシング2内部からの噴出物を遮断するケーシング封止栓12と、を含んで構成される。
【0013】
ケーブルコネクター7は、ケーブルロッド3のボーリング孔6の先端に装着され、その1端にボーリング孔6入口からのケーブル4の端末が結合される。
計測ケーブル9は、ケーブルコネクター7の他端の端面中心から離れた位置に結合され、ボーリング孔6先端部の計測装置5と連通される。
ケーブル収納管8は、ケーブルコネクター7の先端部に取り付けられ、計測装置5と計測ケーブル9を収納して外周部が地中に固着状体になっている。
【0014】
ケーブルカッター10は、ケーブル収納管8と、ケーブル収納管8のケーブルコネクター7側と螺合する端面に装着され、図1(c)に示す通りケーブルコネクター7の端面の中心から離れた位置に取り付けられ、ケーブルコネクター7との螺合を緩める際の回転運動により、同じく中心から離れた位置に取り付けられている計測ケーブル9を切断するようになっている。
ケーシング2は、内部にケーブル4、ケーブルロッド3、ケーブルコネクター7、計測ケーブル9およびケーブル収納管8を収納し、ボーリング孔壁を保護する。
ケーシング封止栓12は、ケーブル4およびケーブルロッド3用の貫通孔を備え、ケーシング2の入口側に装着されてケーシング2内部からの噴出物を遮断する。
【0015】
ケーブルロッド3は、ボーリング孔6入口で回転させることが可能となっている。
また、ケーブルカッター10の切断刃は、直径がケーブル収納管8の直径の1/2以下である中空の円形または多角形の形状を有し、中空部に前記ケーブルコネクター7の他端の端面の中心から離れた位置に結合された装置用ケーブルを貫通させ、その中心がケーブル収納管8の端面の中心からずれた位置に偏芯して装着されている。
【0016】
次に、地震波計測システム1の操作方法について説明する。
地震波計測システム1により地震波を計測した後、ケーブルロッド3を回転することによりケーブル収納管8とケーブルコネクター7との螺合を緩めてケーブル収納管8の端面に装着されたケーブルカッター10の切断刃を回転させ、ケーブルコネクター7に偏芯して結合されて固定状態にある計測ケーブル9を切断して計測ケーブル9および計測装置5をボーリング孔6内に留置する。ケーブル4、ケーブルロッド3およびケーブルコネクター7はボーリング孔6外に回収する。
【0017】
図2に地震波計測システム1の計測ケーブル9の切断法の概要を示す。
図2に示す通り地震波を計測するため、崩れやすい地中にケーシング2を打ち込み、ケーシング2の内部にケーブルロッド3、ケーブル4,計測装置5を挿入する。
計測装置5を目標位置まで挿入した後、ケーシング2を地上に引き抜くことで、計測装置5は崩れた地中に埋まる。計測装置5が崩れた地中に埋まった状態で地震波計測を行なう。
地震波測定終了後、ケーブルロッド3を回転させてケーブルカッター10により計測ケーブル9を切断して切り離し、計測装置5を崩れた地中に放置するとともに、ケーブルロッド3とケーブル4を地上に回収する。
【0018】
図3は、ケーシング封止栓12の概要を示すもので、図3(a)に示すような地下水等が湧出する地盤では、地下水等の噴出により地盤状況の計測が不可能である。
本発明のケーシング封止栓12は、地下水等の湧出が予想される場合にケーシング2の地上側先端に取り付けるもので、ケーシング封止栓12にはケーブルロッド3とケーブル4を通すための孔があけられている。
ケーシング封止栓12を装着することにより地下水等の地上への噴出を止めることができ地震波の計測が可能となる。
【0019】
図4は、ケーシング封止栓12による閉塞状況を説明する説明図であり、従来は(a)、(b)に斜線で示す部分を閉塞していたが、(b)のような場合、複数の挿入物の間を閉塞することは出来なかった。
本発明によるケーシング封止栓12では、(c)のように複数の挿入物がある場合でも完全に閉塞することが可能である。
【0020】
従来、崩れやすい地盤での地震波測定では、ケーブル付きの計測器は抜けなくなったとき、ケーブルを引っ張り強制切断するため、ケーブル全体を回収できても過剰な力が加えられたケーブルは使い物にならないことが多かった。
本発明の地震波測定システムでは、予め切断放置することを前提にしてケーブルのほぼ全量を無傷で回収できるため次の区間の計測が可能となる。
本発明の地震波測定システムでは計測器を地中に放置することになるものの、計測器等の放置は問題ではなく、従来計測できないとされた地層の直接計測が可能となる大きな効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の地震波計測システムに採用したケーブルカッターの概略図である。
【図2】本発明の地震波計測システムによる計測法を説明する説明図である。
【図3】本発明のケーシング封止栓の概要図である。
【図4】本発明のケーシング封止栓による閉塞状況を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 地震波計測システム
2 ケーシング
3 ケーブルロッド
4 ケーブル
5 計測装置
6 ボーリング孔
7 ケーブルコネクター
8 ケーブル収納管
9 計測ケーブル
8 ケーブル収納管
10 ケーブルカッター
12ケーシング封止栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中ボーリング孔内で地震波を測定するシステムであって、
外周部に沿うケーブルとともにボーリング孔内に挿入されるケーブルロッドと、
前記ケーブルロッドの前記ボーリング孔の先端に装着され、その1端に前記ボーリング孔入口からのケーブル端末が結合されるケーブルコネクターと、
前記ケーブルコネクターの他端の端面中心から離れた位置に結合され、ボーリング孔先端部の計測装置と連通される計測ケーブルと、
前記ケーブルコネクターの先端部に取り付けられ、前記計測装置と前記計測ケーブルを収納して外周部が地中に固着状体になっているケーブル収納管と、
前記ケーブル収納管の前記ケーブルコネクター側と螺合する端面に装着され、前記ケーブルコネクターとの螺合を緩める際の回転運動により前記ケーブルコネクターの端面の中心から離れた位置に結合された前記計測ケーブルを切断するケーブルカッターと、
内部に前記ケーブル、前記ケーブルロッド、前記ケーブルコネクター、前記計測ケーブルおよびケーブル収納管を収納し、ボーリング孔壁を保護するケーシングと、
を含むことを特徴とする地震波計測システム。
【請求項2】
地中ボーリング孔内で地震波を測定するシステムであって、
外周部に沿うケーブルとともにボーリング孔内に挿入されるケーブルロッドと、
前記ケーブルロッドの前記ボーリング孔の先端に装着され、その1端に前記ボーリング孔入口からのケーブル端末が結合されるケーブルコネクターと、
前記ケーブルコネクターの他端の端面中心から離れた位置に結合され、ボーリング孔先端部の計測装置と連通される計測ケーブルと、
前記ケーブルコネクターの先端部に取り付けられ、前記計測装置と前記計測ケーブルを収納して外周部が地中に固着状体になっているケーブル収納管と、
前記ケーブル収納管の前記ケーブルコネクター側と螺合する端面に装着され、前記ケーブルコネクターとの螺合を緩める際の回転運動により前記ケーブルコネクターの端面の中心から離れた位置に結合された前記計測ケーブルを切断するケーブルカッターと、
内部に前記ケーブル、前記ケーブルロッド、前記ケーブルコネクター、前記計測ケーブルおよびケーブル収納管を収納し、ボーリング孔壁を保護するケーシングと、
前記ケーブルおよび前記ケーブルロッド用貫通孔を備え、前記ケーシングの入口側に装着されて前記ケーシング内部からの噴出物を遮断するケーシング封止栓と、
を含むことを特徴とする地震波計測システム。
【請求項3】
前記ケーブルロッドは、ボーリング孔入口で回転させることが可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の地震波計測システム。
【請求項4】
前記ケーブルカッターの切断刃は、直径が前記ケーブル収納管の直径の1/2以下である中空の円形または多角形の形状を有し、中空部に前記ケーブルコネクターの他端の端面の中心から離れた位置に結合された前記装置用ケーブルを貫通させ、その中心が前記ケーブル収納管の端面の中心からずれた位置に偏芯して装着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の地震波計測システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の地震波計測システムにおいて地震波を計測した後、
ケーブルロッドを回転することによりケーブル収納管とケーブルコネクターとの螺合を緩めて前記ケーブル収納管の端面に装着された切断刃を回転させ、ケーブルコネクターに偏芯して結合されて固定状態にある装置用ケーブルを切断して前記装置用ケーブルおよび計測装置をボーリング孔内に留置し、前記ケーブル、前記ケーブルロッドおよび前記コネクターをボーリング孔外に回収することを特徴とする地震波計測方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の地震波計測システムにおいて、
ケーシングの入口側にケーシング封止栓を装着して地震波を計測した後、
ケーブルロッドを回転することによりケーブル収納管とケーブルコネクターとの螺合を緩めて前記ケーブル収納管の端面に装着された切断刃を回転させ、ケーブルコネクターに偏芯して結合されて固定状態にある装置用ケーブルを切断して前記装置用ケーブルおよび計測装置をボーリング孔内に留置し、前記ケーブル、前記ケーブルロッドおよび前記コネクターをボーリング孔外に回収することを特徴とする地震波計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−151633(P2010−151633A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330361(P2008−330361)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(306044478)
【Fターム(参考)】