説明

地震計およびその制御方法

【課題】加速度計を用いた地震計の待機時および動作時に消費する電力を低減する。
【解決手段】地震計は、電源5から、加速度センサ1、記憶装置3、出力装置4および制御装置2とへの電力供給をオンオフ可能に接続された第1のスイッチ6と、第1のスイッチ6と並列に接続された第2のスイッチ7と、地震によって第1のスイッチ6がオンとなるように動作するスイッチ駆動装置8と、を有する。第1のスイッチ6のオンによって電源5から電力の供給を受けて第2のスイッチ7をオンとし、その後に加速度データの絶対値が所定値以下の状態を所定時間継続するまでの間の加速度データを記憶装置3に記憶し、その後に記憶装置3に記憶された加速度データを出力装置4によって外部に出力し、その後、第2のスイッチ7をオフする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度計を用いた地震計およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの設備が地震時に受けた被害を評価するには対象の機器や配管の必要な部位に加速度計ないしは地震計を設置してそのデータを収集する必要がある。この場合に、無線機能を付加してセンサをネットワークで接続し、センサ情報を収集するシステムを利用した小型でケーブルの敷設も必要ない加速度計ないしは地震計が有用である。たとえば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いたセンサネット(商品名)地震計が市販されている。
【0003】
このような小型の地震計は、電源として電池ないしは太陽光パネル等の発電装置を内蔵し、常時は休止状態で電源の消耗を抑え、定期的に、あるいは地震がトリガーとなって動作状態となり加速度を計測する(特許文献1)。内部の構成は地震の強度を計測する加速度センサ、加速度センサの出力を読み出すマイクロコントローラ、加速度データを外部に出力する出力装置等で構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−77475号公報
【特許文献2】特開2000−214267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の通常の地震計では、休止状態でも数十μA程度の待機電流が消費される。プラントの設備に被害を及ぼす地震はたとえば数十年の長周期で生じるため、たとえば20μAの待機電流で10年間動作させるには容量1700mAhといった比較的大容量の電池が必要となる。太陽光や熱、振動を利用して発電する方法を組み込めば電源の消耗は考えなくてよいが、周囲からエネルギーを得られない場所に設置することもあり、またエネルギーを得られたとしても安定に継続してエネルギーが得られる保証はない。
【0006】
また、余震も含め複数の地震が発生するため、得られたデータの識別のため時刻を付加している。長時間動作させると時計の時刻がずれてくるため時刻合わせをする必要がある(特許文献2)。
【0007】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、加速度計を用いた地震計の待機時および動作時に消費する電力を低減し、長期にわたり電池交換なしに使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するものであって、本発明に係る地震計は、地震の揺れによる加速度を計測して加速度データを出力する加速度センサと、前記加速度データを記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された加速度データを外部に出力する出力装置と、前記記憶装置と前記出力装置とを制御する制御装置と、前記加速度センサと前記記憶装置と前記出力装置と前記制御装置に電力を供給する電源と、前記電源から、前記加速度センサ、前記記憶装置、前記出力装置および前記制御装置への電力供給をオンオフ可能に接続された第1のスイッチと、前記第1のスイッチと並列に接続された第2のスイッチと、地震が発生することによって前記第1のスイッチがオンとなるように動作するスイッチ駆動装置と、を有し、前記制御装置は、前記第1のスイッチのオンによって前記電源から電力の供給を受けて前記第2のスイッチをオンとし、その後に前記加速度データの絶対値が所定値以下の状態を所定時間継続するまでの間の当該加速度データを前記記憶装置に記憶し、その後にその記憶装置に記憶された加速度データを前記出力装置によって外部に出力し、その後、第2のスイッチをオフするように制御すること、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る地震計の制御方法は、地震の揺れによる加速度を計測して加速度データを出力する加速度センサと、前記加速度データを記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された加速度データを外部に出力する出力装置と、前記記憶装置と前記出力装置とを制御する制御装置と、前記加速度センサと前記記憶装置と前記出力装置と前記制御装置に電力を供給する電源と、前記電源から、前記加速度センサ、前記記憶装置、前記出力装置および前記制御装置への電力供給をオンオフ可能に接続された第1のスイッチと、前記第1のスイッチと並列に接続された第2のスイッチと、地震が発生することによって前記第1のスイッチがオンとなるように動作するスイッチ駆動装置と、を有する地震計の制御方法であって、前記制御装置は、前記第1のスイッチのオンによって前記電源から電力の供給を受けて前記第2のスイッチをオンとし、その後に前記加速度データの絶対値が所定値以下の状態を所定時間継続するまでの間の当該加速度データを前記記憶装置に記憶し、その後にその記憶装置に記憶された加速度データを前記出力装置によって外部に出力し、その後、第2のスイッチをオフするように制御すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、加速度計を用いた地震計の待機時および動作時に消費する電力を低減し、長期にわたり電池交換なしに使用できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る地震計の第1の実施の形態の模式的回路図である。
【図2】図1の電源の具体的構成例を示す回路図である。
【図3】図1のスイッチ駆動装置の具体的構成例を示す回路図である。
【図4】本発明に係る地震計の第2の実施の形態におけるスイッチ駆動装置の具体的構成例を示す回路図である。
【図5】本発明に係る地震計の第3の実施の形態におけるスイッチ駆動装置の具体的構成例を示す回路図である。
【図6】本発明に係る地震計の第4の実施の形態の模式的回路図である。
【図7】図6のスイッチ駆動装置の具体的構成例を示す回路図である。
【図8】本発明に係る地震計の第5の実施の形態におけるスイッチ駆動装置の具体的構成例を示す回路図である。
【図9】本発明に係る地震計の第6の実施の形態の模式的回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る地震計の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
(第1の実施形態の構成)
図1は本発明に係る地震計の第1の実施の形態の模式的回路図である。また、図2は図1の電源の具体的構成例を示す回路図である。また、図3は図1のスイッチ駆動装置の具体的構成例を示す回路図である。
【0014】
図1に示すように、この実施形態の地震計は、加速度センサ1と、マイクロコントローラ(制御装置)2と、記憶装置3と、出力装置4とを有する。さらに地震計は、電源5を有し、電源5からの電力が、第1のスイッチ6および第2のスイッチ7を通して給電線20により、上記加速度センサ1、マイクロコントローラ2、記憶装置3および出力装置4に供給されるように構成されている。第1のスイッチ6と第2のスイッチ7は、互いに並列に接続されている。
【0015】
スイッチ駆動装置8が、制御ライン9によって第1のスイッチ6に接続され、これによって、後述のように第1のスイッチ6のオンオフが制御される。第2のスイッチ7は制御ライン10によってマイクロコントローラ2に接続され、これによって、後述のように第2のスイッチ7のオンオフが制御される。
【0016】
マイクロコントローラ2と、加速度センサ1、記憶装置3および出力装置4との間は相互に入出力ライン11で接続されている。
【0017】
加速度センサ1は地震による加速度を検出するセンサであって、センサの値をAD(アナログ・ディジタル)変換するADコンバータ(図示せず)が含まれる。
【0018】
第1のスイッチ6および第2のスイッチ7は、たとえば、FET(Field Effect transistor)、MOS(Metal-Oxide Semiconductor)を使用した半導体スイッチであって、スイッチのオンオフは制御ライン9、10の電圧レベルで行なう。
【0019】
図2に示すように、電源5は、内蔵電源30と、電源切り替えスイッチ31と、外部電源接続用コネクタ32とを有する。外部電源接続用コネクタ32は外部電源33に接続されている。電源切り替えスイッチ31は、たとえば2個のダイオード35、36を含み、内蔵電源30と外部電源33とを切り替える機能を有する。内蔵電源30の内部構造は図示を省略するが、一次電池または二次電池と電源用コンデンサとを備えている。好ましくは、内蔵電源30は二次電池を有し、さらに、この二次電池を充電するために、光、熱、振動、風力、電磁波により発電する発電装置を有する。
【0020】
図3に示すように、スイッチ駆動装置8は、たとえば、地震のゆれで電荷を発生する圧電素子12と、圧電素子12によって発生した電圧を保持する駆動装置用コンデンサ13で構成される。圧電素子12は横波および縦波の両方を検出できるように、X、Y、Zの直交3軸方向に配置し、全ての出力を駆動装置用コンデンサ13に接続してもよい。また、適度な錘(図示せず)を付けて圧電素子12の振動幅を大きくし発生する電圧を大きくしてもよい。
【0021】
出力装置4(図1)は、加速度データを外部のデータ収集装置(図示せず)に送信するものであって、たとえば、LAN(Local Area Network)、RS−232C(Recommended Standard 232C)等の伝送用コネクタを設けたケーブル伝送装置で構成する。あるいはANT、ZigBee、Bluetooth等の規格に準じたアンテナを設けた無線伝送装置で構成する。あるいは光輝度LED(Light Emitting Diode)、フォトカプラといった光送信機と受信機を設けた光通信装置で構成する。
【0022】
(第1の実施形態の作用)
地震が発生していない期間は、第1のスイッチ6と第2のスイッチ7はともにオフとなっている。このため電源5の消費電流は自身の放電電流のみとなっている。
【0023】
地震が発生すると、スイッチ駆動装置8の圧電素子12が振動し、電圧が発生する。発生する電圧を駆動装置用コンデンサ13で保持する。この電圧が、制御ライン9を介して第1のスイッチ6に印加される。これによって第1のスイッチ6がオンし、給電線20を通して、加速度センサ1、マイクロコントローラ2、記憶装置3および出力装置4に電源が供給される。
【0024】
マイクロコントローラ2が起動すると、制御ライン10を介して第2のスイッチ7をオンする。このため、その後、スイッチ駆動装置8の出力がゼロになり第1のスイッチ6がオフになっても、電源は第2のスイッチ7を介して供給される。これにより継続して動作を行なうことができる。
【0025】
マイクロコントローラ2は、加速度センサ1で発生する加速度データを、入出力ライン11を介して一定周期で読み出し、加速度の絶対値が第1の閾値を超えた場合に、記憶装置3に加速度データを保存する。
【0026】
加速度の絶対値が第2の閾値を一定時間継続して下回った場合、地震が終了したとして記憶装置3へのデータ保存を停止する。その後、出力装置4から記憶装置3に保存したデータを外部に出力する。データの出力が終了した場合、マイクロコントローラ2は制御ライン10を介して第2のスイッチ7をオフする。この結果、電源の消費電流は自身の放電電流となって次の地震発生を待つ。
【0027】
無線通信のプロトコル、回線の使用状態により、出力装置4からのデータ出力が遅れる場合がある。このような場合は、加速度センサ1、マイクロコントローラ2、記憶装置3および出力装置4は待機モードとなり、電源の消費電流を抑える。待機電流は数十μA程度であり、100mAhの電源容量があれば1日待機状態になっても1%程度の容量減にとどまり、次の地震の記憶を行なうのに充分な電力が確保される。
【0028】
この実施形態で、外部電源33が供給されている場合は、電源として外部電源33を使用する。外部電源33が供給されていない場合は、電源切り替えスイッチ31を切り替えて、内蔵電源30の一次電池ないし二次電池、コンデンサで電源を供給する。二次電池、コンデンサで消耗した電力は発電機で充電される。
【0029】
出力装置4は、ケーブル伝送装置で構成され、伝送用コネクタに接続したケーブルを介してマイクロコントローラ2から送られてくる加速度データを外部のデータ収集装置に出力する。無線伝送装置は、無線伝送により、マイクロコントローラ2から送られてくる加速度データをデータ収集装置に出力する。あるいは光通信装置は、マイクロコントローラ2から送られてくる加速度データを光伝送によりデータ収集装置に出力する。データ収集装置は中継器を介して離れた場所にあってもよいし、ハンディ型の端末とし、人が地震計の近傍にてデータを収集してもよい。
【0030】
この実施形態で、マイクロコントローラ2が記憶装置3に加速度データを保存する際に、圧縮して保存してもよい。
【0031】
(第1の実施形態の効果)
この実施形態によれば、地震が発生していない期間は第1のスイッチ6と第2のスイッチ7はオフとなっている。このため電源5の消費電流は自身の放電電流のみとなる。電源5にリチウム一次電池を使用した場合の自己放電率は0.5%/年程度で、数十年の使用でも数十%程度の容量減にとどまるため、数十年後にも動作するに充分な電力が確保される。また、第2のスイッチ7により、出力装置4から加速度データが出力されるまで電源が確保されるため、地震時に収集した加速度データは確実に出力される。
【0032】
また、内蔵電源30を有することにより、電源ケーブルの接続をしなくても動作でき、停電時にも動作する。また二次電池、コンデンサを使用する場合は、内蔵電源30が内蔵した発電機で充電されるため、電池が消耗してしまうことはなく、使い続けることができる。
【0033】
また、ケーブルでデータ伝送することにより、地震計に触れなくても遠隔からデータを収集できる。さらに、無線あるいは光伝送することによりケーブルを接続あるいは敷設しなくてもデータを収集できる。
【0034】
また、地震の振動によって電圧が発生し、電源を必要としないスイッチ駆動装置を利用することができるため、電源の消耗が発生しない。
【0035】
マイクロコントローラ2が記憶装置3に加速度データを保存する際に、データを圧縮して保存すると、データ量が少なくなり、より小さい記憶装置構成で済む。たとえば、3軸の12ビット長の加速度データをたとえば毎秒50サンプリングで5分間収集すると、67キロバイトのデータ量となる。データの圧縮により、データ量が1/4から1/10に少なくなる。またこれにより、記憶装置3にアクセスする時間が減り、動作時の消費電流を下げることができる。さらに出力装置4の送信データ数も小さくなるため、無線通信時の動作時間が短くなり、消費電流を下げることができる。
【0036】
[第2の実施形態]
図4は本発明に係る地震計の第2の実施の形態におけるスイッチ駆動装置の具体的構成例を示す回路図である。この実施形態の構成は、スイッチ駆動装置以外の部分は第1の実施形態の構成と同様である。
【0037】
図4に示すように、第2の実施の形態のスイッチ駆動装置8は、圧電素子12と、発生した電圧を昇圧するトランス14と、トランス14で昇圧した電圧を保持する駆動装置用コンデンサ13とを備えている。圧電素子12は、第1の実施形態の圧電素子12と同様の構造であって、直交3軸方向に配置し、全ての出力をトランス14に接続してもよい。
【0038】
この第2の実施形態では、地震が発生すると圧電素子12が振動し、電圧が発生する。発生する電圧をトランス14で昇圧し、電圧を大きくしたものを駆動装置用コンデンサ13で保持する。制御ライン9を介して第1のスイッチ6に電圧が印加される。これによって、第1のスイッチ6がオンし、加速度センサ1、マイクロコントローラ2、記憶装置3および出力装置4に電源が供給される。
【0039】
この第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、地震の振動で電圧が発生し、電源を必要としないスイッチ駆動装置8とすることができるため、電源の消耗が発生しない。さらにこの第2の実施形態では、圧電素子12で発生した電圧をトランス14で増幅するため、小さい地震に対しても動作することができる。
【0040】
[第3の実施形態]
図5は本発明に係る地震計の第3の実施の形態におけるスイッチ駆動装置の具体的構成例を示す回路図である。この実施形態の構成は、スイッチ駆動装置以外の部分は第1および第2の実施形態の構成と同様である。
【0041】
図5に示すように、第3の実施の形態のスイッチ駆動装置8は、圧電素子12と、発生した電圧を昇圧するDC−DC(直流・直流)コンバータ15と、DC−DCコンバータ15で昇圧した電圧を保持する駆動装置用コンデンサ13とを備えている。圧電素子12は、第1および第2の実施形態の圧電素子12と同様の構造であって、直交3軸方向に配置し、全ての出力をDC−DCコンバータ15に接続してもよい。
【0042】
この第3の実施形態では、地震が発生すると圧電素子12が振動し、電圧が発生する。発生する電圧をDC−DCコンバータ15で昇圧し、電圧を大きくしたものを駆動装置用コンデンサ13で保持する。制御ライン9を介して第1のスイッチ6に電圧が印加される。これによって、第1のスイッチ6がオンし、加速度センサ1、マイクロコントローラ2、記憶装置3および出力装置4に電源が供給される。
【0043】
この第3の実施形態では、第1および第2の実施形態と同様に、地震の振動で電圧が発生し、電源を必要としないスイッチ駆動装置8とすることができるため、電源の消耗が発生しない。さらに、この第3の実施形態では、圧電素子12で発生した電圧をDC−DCコンバータ15で増幅するためより、小さい地震に対しても動作することができる。
【0044】
[第4の実施形態]
図6は本発明に係る地震計の第4の実施の形態の模式的回路図である。図7は図6のスイッチ駆動装置の具体的構成例を示す回路図である。この第4の実施形態は第1の実施形態の変形であって、この実施形態の構成は、スイッチ駆動装置8以外の部分は第1の実施形態の構成と同様である。
【0045】
この実施形態では、スイッチ駆動装置8は、地震のゆれで変形あるいは変位してオンになる地震動作スイッチ16と、地震動作スイッチ16の一方に接続された駆動装置用コンデンサ13とを備えている。地震動作スイッチ16の他方は電源5に接続されている。駆動装置用コンデンサ13は電源の電圧を保持することができる。地震動作スイッチ16は地震の横波と縦波の両方を検出できるようにX、Y、Zの直交3軸方向に配置してもよい。
【0046】
図7に示すように、地震動作スイッチ16は板バネ40を有し、地震が発生していない静止時には接点41が開いているが、地震の振動によって板バネ40が矢印A方向に振動し、接点41が断続するように構成されている。
【0047】
地震が発生していないときは、地震動作スイッチ16がオフとなって、駆動装置用コンデンサ13には電圧は発生しない。地震が発生すると、地震動作スイッチ16の板バネ40が変形、ないしは変位して接点41が閉じてオンとなり、電源5が駆動装置用コンデンサ13と接続され、駆動装置用コンデンサ13に電圧が発生する。ここで発生した電圧を駆動装置用コンデンサ13で保持する。この電圧が制御ライン9を介して第1のスイッチ6に電圧が印加され、これにより、第1のスイッチ6がオンとなる。それ以後の動作は第1の実施形態と同様である。
【0048】
この実施形態では、第1のスイッチ6のFET、MOSのゲート電圧を発生・保持するために、駆動装置用コンデンサ13を充電する。そのため、駆動装置用コンデンサ13の容量は数十pF程度でよく、電源の消耗はほとんど生じない。
【0049】
[第5の実施形態]
図8は本発明に係る地震計の第5の実施の形態におけるスイッチ駆動装置の具体的構成例を示す回路図である。この実施形態は第4の実施形態の変形であって、図6に示す地震計の模式的回路図はこの実施形態でも共通である。
【0050】
この実施形態では、スイッチ駆動装置8の地震動作スイッチ16は、コイルバネ42と、コイルバネ42によって支持されて地震時に揺動する揺動片43を有する。揺動片43の両端に接点44が設けられている。地震が発生していない静止時には接点44が開いているが、地震の振動によって揺動片43が矢印B方向に振動し、接点44が断続する。
【0051】
その他の構成、作用、効果は第4の実施形態と同様である。
【0052】
[第6の実施形態]
図9は本発明に係る地震計の第6の実施の形態の模式的回路図である。この実施形態は第1の実施形態の変形であって、図2の電源の構成および図3のスイッチ駆動装置の構成は共通である。
【0053】
この実施形態では、クロックを計数するカウンタ17が設けられ、カウンタ17は、第1のスイッチ6および第2のスイッチ7を介して給電線20により電源5と接続されている。
【0054】
地震が発生すると、第1のスイッチ6がオンしてカウンタ17に電源が供給され、カウンタ17はリセットして、第2のスイッチ7がオフとなって電源が供給されなくなるまでクロックを計数する。加速度データを記憶装置3に保存する時に、マイクロコントローラ2は入出力ライン11を通じてカウンタ17を読み出し、カウント値も記憶装置3に保存する。さらに出力装置4で記憶装置データを出力する際に、カウンタ17を読み出し、カウント値も出力する。
【0055】
地震が発生し、加速度データを計測して記憶装置3に保存し、出力装置4でデータを出力する前に再度地震が発生した場合、最初の加速度データと次の地震で発生した加速度データを識別する必要がある。このために地震が発生したときから一定周期で発生するクロックをカウンタ17で計数し、加速度データを読み出すときにカウンタ17からカウント値を読み出し、記憶装置3に書き込んでおく。これにより、カウント値のずれから複数収集した加速度データを識別できる。
【0056】
さらに、出力装置4でデータを出力する時間が遅れてしまう場合がある。たとえば地震が発生すると、設置した全ての地震計からデータを出力することになり、各地震計から出力される時間は違った時刻になる。また、送信先の収集装置が停電になってリアルタイムに収集したデータを送信できなくなることも考えられる。
【0057】
このようなときに、出力装置4からデータを出力する際のカウンタ17のカウント値も同時に出力する。送信先の収集装置ではデータを出力したときのカウント値がわかるので、加速度データとともに保存したカウント値との差から、その加速度データが発生した時刻を同定できる。たとえば、クロックの発生周期を1秒とし、データを出力する際のカウント値を200とし、加速度データとともに保存したカウント値が100とした場合、その加速度データは100秒前に発生したことが同定できる。
【0058】
[他の実施形態]
以上説明した実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
たとえば、第1の実施形態(図1)で、出力装置4が独立した装置として構成されるものとしたが、記憶装置3を不揮発性の記憶装置3で構成し、コネクタで接続して着脱できる構造としてデータを回収することで、記憶装置3を出力装置とおきかえてもよい。
【0060】
また、上記各実施形態の種々の特徴を種々に組み合わせることもできる。たとえば、第6の実施の形態(図9)は第1の実施形態にカウンタ17を追加するものとしたが、第2ないし第5の実施形態に第6の実施の形態と同様のカウンタ17を追加することもできる。
【符号の説明】
【0061】
1…加速度センサ、2…マイクロコントローラ(制御装置)、3…記憶装置、4…出力装置、5…電源、6…第1のスイッチ、7…第2のスイッチ、8…スイッチ駆動装置、9…制御ライン、10…制御ライン、11…入出力ライン、12…圧電素子、13…駆動装置用コンデンサ、14…トランス、15…DC−DCコンバータ、16…地震動作スイッチ、17…カウンタ、20…給電線、30…内蔵電源、31…電源切り替えスイッチ、32…外部電源接続用コネクタ、33…外部電源、35、36…ダイオード、40…板バネ、41…接点、42…コイルバネ、43…揺動片、44…接点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震の揺れによる加速度を計測して加速度データを出力する加速度センサと、
前記加速度データを記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された加速度データを外部に出力する出力装置と、
前記記憶装置と前記出力装置とを制御する制御装置と、
前記加速度センサと前記記憶装置と前記出力装置と前記制御装置に電力を供給する電源と、
前記電源から、前記加速度センサ、前記記憶装置、前記出力装置および前記制御装置への電力供給をオンオフ可能に接続された第1のスイッチと、
前記第1のスイッチと並列に接続された第2のスイッチと、
地震が発生することによって前記第1のスイッチがオンとなるように動作するスイッチ駆動装置と、
を有し、
前記制御装置は、前記第1のスイッチのオンによって前記電源から電力の供給を受けて前記第2のスイッチをオンとし、その後に前記加速度データの絶対値が所定値以下の状態を所定時間継続するまでの間の当該加速度データを前記記憶装置に記憶し、その後にその記憶装置に記憶された加速度データを前記出力装置によって外部に出力し、その後、第2のスイッチをオフするように制御すること、
を特徴とする地震計。
【請求項2】
前記電源は、一次電池または二次電池と電源用コンデンサとを備えた内蔵電源と、前記内蔵電源と外部電源とを切り替える電源切り替えスイッチと、を有することを特徴とする請求項1に記載の地震計。
【請求項3】
前記内蔵電源は、光、熱、振動、風力または電磁波のいずれかにより発電する発電装置と、前記発電装置によって充電可能な二次電池と、を有することを特徴とする請求項2に記載の地震計。
【請求項4】
前記出力装置は、ケーブル伝送、無線伝送、光伝送のいずれかの伝送によりデータを外部に出力するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の地震計。
【請求項5】
前記スイッチ駆動装置は、
地震の振動で電圧が発生する圧電素子と、
前記圧電素子で発生した電圧を保持する駆動装置用コンデンサと、
を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の地震計。
【請求項6】
前記スイッチ駆動装置は、
地震の振動で電圧が発生する圧電素子と、
前記圧電素子で発生した電圧を昇圧するトランスと、
前記トランスで昇圧した電圧を保持する駆動装置用コンデンサと、
を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の地震計。
【請求項7】
前記スイッチ駆動装置は、
地震の振動で電圧が発生する圧電素子と、
前記圧電素子で発生した電圧を昇圧するDC−DCコンバータと、
前記DC−DCコンバータで昇圧した電圧を保持する駆動装置用コンデンサと、
を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の地震計。
【請求項8】
前記スイッチ駆動装置は、
地震の振動によってオンになる地震動作スイッチと、
前記地震動作スイッチに接続された駆動装置用コンデンサと、
を有し、
前記地震動作スイッチがオフのときに前記電源が前記駆動装置用コンデンサから切り離され、前記地震動作スイッチがオンになったときに前記電源が前記駆動装置用コンデンサに接続されるように構成されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の地震計。
【請求項9】
前記第1のスイッチおよび第2のスイッチを介して前記電源と接続され、所定時間間隔ごとにカウント値を出力するカウンタをさらに有し、
前記記憶装置は、前記加速度データと同期して前記カウンタのカウント値を記憶し、
前記出力装置は、前記記憶装置に記憶された前記加速度データおよびこれと同期して記憶された前記カウント値を出力するとともに、その出力するときに前記カウンタから読み出されたカウント値を出力するように構成されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の地震計。
【請求項10】
地震の揺れによる加速度を計測して加速度データを出力する加速度センサと、
前記加速度データを記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された加速度データを外部に出力する出力装置と、
前記記憶装置と前記出力装置とを制御する制御装置と、
前記加速度センサと前記記憶装置と前記出力装置と前記制御装置に電力を供給する電源と、
前記電源から、前記加速度センサ、前記記憶装置、前記出力装置および前記制御装置への電力供給をオンオフ可能に接続された第1のスイッチと、
前記第1のスイッチと並列に接続された第2のスイッチと、
地震が発生することによって前記第1のスイッチがオンとなるように動作するスイッチ駆動装置と、
を有する地震計の制御方法であって、
前記制御装置は、前記第1のスイッチのオンによって前記電源から電力の供給を受けて前記第2のスイッチをオンとし、その後に前記加速度データの絶対値が所定値以下の状態を所定時間継続するまでの間の当該加速度データを前記記憶装置に記憶し、その後にその記憶装置に記憶された加速度データを前記出力装置によって外部に出力し、その後、第2のスイッチをオフするように制御すること、
を特徴とする地震計の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−202961(P2011−202961A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67583(P2010−67583)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】