説明

均一な導電性膜を有する真空コンデンサ用ベローズ

【課題】担体材料と少なくとも1被覆膜とから成る真空コンデンサ用ベローズ、それも、該被覆膜の少なくとも1つが導電性に構成され、かつ出来るだけ均一な膜厚を有する点で優れているベローズを提案すること。
【解決手段】本発明は、真空コンデンサ内のベローズ、それもベローズ構造物1が、担体材料2と少なくとも1つの導電性膜5,6とから成り、しかも該導電性膜が全ベローズ構造物にわたり均一の厚さを有している形式のものに関する。平均値からの厚の偏差は、+/−50%未満であり、好ましくは+/−10%未満である。これによって、機械荷重時の寿命が増す。輻射による放熱率を高めるため、ベローズ構造物1には、黒色の膜7が付加されている。
使用した方法では、変形加工前に導電性膜が施され、そうすることにより均一の膜厚が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲第1項および第7項に記載された、均一な導電性膜を有する真空コンデンサ(Vakuumkondensator)用ベローズおよび該ベローズの製造方法に関するものである。
【0002】
ベローズ構造物は、種々の真空コンデンサに使用されており、その場合、ベローズ構造物は、機械式部材として、電気的特性のほかにシール機能を備えている必要がある。ベローズ構造物は高周波導電性を有していなければならない。言い換えると、高い高周波導電率を有する必要があり、かつ真空コンデンサの長期使用特性を規定する連続的な機械荷重および熱負荷に耐えねばならない。
青銅および他の合金製の公知のベローズは、時とともに材料疲労を生じ、寿命に対する要求を満たせないことが多い。
JP−06204082−Aにより公知の真空コンデンサでは、銅または銀で被覆したステンレス鋼製ベローズを使用することで、電気特性を改善している。従来使用されてきたベローズ被覆方法では、周知のように、被覆過程での不均一な電流分布に起因する極めて不均一な膜厚しか得られない。この不均一な膜厚は、電流容量や寿命にとっては欠点である。なぜなら、機械荷重が負荷される場合、局所的に曲げ力が高くなることで、材料疲労が生じたり、膜の、ひいては担体材料の破断が生じるからである。
本発明の課題は、担体材料と少なくとも1被覆膜とから成る真空コンデンサ用ベローズ、それも、該被覆膜の少なくとも1つが導電性に構成され、かつ出来るだけ均一な膜厚を有する点で優れているベローズを提案することにある。被覆膜が均一であることにより、寿命を長くすることができる。
本発明の別の課題は、そのようなベローズを製造することにある。
本発明により、この課題は、特許請求の範囲第1項に記載のベローズと、同第7項に記載のベローズ製造方法とにより解決された。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【図1】ベローズの略示断面図。
【図2】真空コンデンサの略示断面図。
【0004】
以下で、本発明を図面につき説明する。
図1には、ベローズの断面が略示されている。担体材料2から成るベローズ構造物1は、外側のひだ(Falten)3および内側のひだ3'と、円筒形に構成された接続部4,4'とを備えた通常のリブ構造物を有している。
ベローズ構造物上には、付着特性または電気特性を得るために、導電性膜5,6が設けられている。
担体材料としては、ステンレス鋼製の管、または少なくともニッケル65%を含有するニッケル合金製の管が適している。
膜5は、例えば、膜6に対する導電特性のほかに付着特性を有している。
膜5は、例えば、通常の厚さが0.2〜5μmのニッケル、金、またはこれらの合金のいずれかから成っている。
導電性膜6は、例えば銅、銀、金、パラジウム、またはこれらの合金のいずれかから成り、しかも厚さは1〜50μm、好ましくは25μmである。
膜5は無くてもよく、その場合は、担体材料上には膜6のみが被着される。
導電性膜の数は2個に限定されるものではない。したがって、特別な耐腐食性を有する例えばもう一膜を被着させることができる。その場合には、例えば、厚さ0.2〜0.9μmの金の薄膜を被着させる。
膜6の重要な特性は、変形しても膜厚が均一なことであり、これについては後述する。
膜6上には、更に別の膜7が被着されている。この膜7は、例えば黒クロムメッキまたは酸化銅によって形成され、表面の放熱特性を改善し、かつベローズ構造物を外表面の全体または部分が黒色の物体として現出させる。こうすることにより、輻射(Strahlung)による放熱が著しく促進され、その結果、ベローズの使用温度が低減され、電流容量および寿命に著しい好影響が及ぼされる。
この好影響は、膜7の表面を粗面として構成することにより強化される。粗面としての構成は、サンドブラスト、スクラッチブラッシング、化学処理のいずれかにより達せられる。膜7は、リブ構造部の全体または部分を被覆するが、接続部4,4'の区域には必ずしも必要ではない。
【0005】
以下で、前記の種類のベローズを製造する方法を説明する。
好ましくはステンレス鋼製の担体材料である管を前提として、この管上に少なくとも1つの導電性膜5,6を被着させる。この膜は、例えば電気メッキで被着できる。
管の壁厚が約50〜200μmであるのに対し、膜厚は、その機能に応じて一般に1〜50μmの範囲で変動する。
これらの膜5,6を設けることで、複合部材または複合管が形成され、この管を変形加工することによりベローズ構造物1が得られる。
変形しても、複合管の膜厚は実質的に均一のままである。平均値からの膜厚の偏差は、+/−50%未満であり、好ましくは+/−10%未満であることが判明した。このような均一性が得られることは、変形後にはじめて電気メッキする場合に比して大きな利点を意味している。
本発明による変形により得られるベローズ構造物は、後加工され、そのさいに、別の膜7を別の機能用に被覆し、次いでクリーニング処理等を行うことができる。この別の膜7は、変形加工に先行して被覆することもできる。
後加工では、接続部4,4'を機械式に最適形状に加工することもできる。
後加工により、ベローズは組付け準備が終わり、真空コンデンサに組付けられる。
【0006】
導電性膜を電気メッキで被着させる代わりに、担体材料または第1の管に極めて薄い壁厚の少なくとも1つの別の管をはめ込むか、かぶせるかしてから、変形加工を行うこともできる。ベローズ構造物の後加工は、既述の形式と似た形式で行われる。
【0007】
図2は、可変形真空コンデンサの構造を略示した図である。固定電極ブロック13は機械式かつ電気式にハウジングの下部8と接続され、ハウジングは、同時にコンデンサの外部電気接続部をなしている。環状絶縁体9を介してハウジングの下部8は、ハウジングの上部10と密封結合されている。可動電極ブロック12は、下端が該電極ブロック12に固定されたロッド11を介して、外方から多少の差はあれ深く固定電極ブロック13内へ進入し、それによって所望の容量を調節できる。電気特性を改善するために、内部空間14は、ベローズ1により周囲圧15から分離され真空である。ベローズは、一端16がハウジングの上部10に、また他端16'が可変電極ブロック12に、気密に結合されている。ベローズは、ロッド11と可動電極ブロック12との大幅の垂直運動を保証し、かつ同時に内部空間14と周囲圧15との圧力差に耐え得るように構成されている。ベローズ1は、この場合同時に高い高周波導電性をも有しており、これにより可動電極ブロック12を第2電気接続部10と接続している。
【0008】
本発明による均一の膜厚の別の利点は、均一の膜厚によって規則的な電流線推移および電流密度推移が得られることにあり、これによって熱負荷が均一となり、局所的な過熱が防止される。導電性膜のより薄手の区域も、十分な導電性を保証している。
本発明による均一の膜厚の別の利点は、ベローズ構造物の機械荷重が規則的な点にある。これにより、ベローズの寿命が明らかに改善され、ベローズの、ひいては真空コンデンサの合計サイクル数が著しく高くなる。このことは、全容量範囲にわたり使用される場合に、効果を発揮する。
【0009】
次に記載する例は、均一の膜厚が得られ、かつ寿命が明らかに改善されたことを示すものである。
例1: 銅メッキされたステンレス鋼製ベローズ
100μm厚のステンレス鋼管に、付着性改善のため、まず0.8μm厚の金膜(Schicht aus Au)を施し、次いで25μm厚の銅導電性膜を被着させる。次に、このように準備した管を、公知の方法により変形してベローズを形成し、図2に示すように真空コンデンサ内へ組付ける。このようにして製造した真空コンデンサは、13.5MHzの高周波電流負荷時の温度測定により、電流容量が、青銅製ベローズを有する公知真空コンデンサに比して、同等ないしはそれを上回ることが判明した。言い換えると、膜厚の規則性は、結果的に、均質の金属導体の規則性に対応する。膜厚の測定により、平均値からの膜厚の偏差は+/−10%であることが判明した。
【0010】
例2: 放熱性が改善されたベローズ
80μm厚のステンレス鋼管に20μm厚の銅導電性膜を被覆した。付着性の改善には、1.3μm厚のニッケル膜を選択した。次に、このように加工した鋼管を公知の方法により変形してベローズを形成し、図2に示すように真空コンデンサに組付けた。放熱性の改善のため、別の1つの膜、すなわち1.0μm厚の黒っぽい酸化銅膜で被覆する。電流負荷の下で、例1との比較温度測定を40MHzで行った。この別の1膜を被覆した真空コンデンサのほうが、電流容量が高いことが判明した。
長期的な寿命試験の結果、本発明によるベローズの周期的な軸方向負荷の場合、青銅等の他の通常使用されている材料を有するベローズと比較して、少なくとも2倍の寿命が達せられることが判明した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベローズ構造物(1)が1つの担体材料(2)と少なくとも1つの膜(5,6,7)とを有し、該膜のうちの少なくとも1つの膜(5,6)が導電性膜とされており、かつ全ベローズ構造物(1)にわたり均一な厚さを有する真空コンデンサ用ベローズを製造する方法において、
担体材料(2)として管を用い、該管に、前記少なくとも一つの導電性膜(5,6)を被覆して、複合管を形成するステップと、
このように形成した複合管を変形して、ベローズ構造物(1)を形成するステップと、
該ベローズ構造物を後加工し、真空コンデンサに組付けるステップとを含むことを特徴とする、真空コンデンサ用ベローズを製造する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの導電性膜(5,6)が、前記担体材料(2)とは別の材料から成る少なくとも1つの別の管から成り、該別の管により担体材料(2)を被覆し、しかも、この別の管は担体材料(2)の一部となって、この別の管の壁厚がこの担体材料(2)の壁厚の一部に含まれることとなり、それによって複合管が形成されることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
変形された前記複合管の後加工時に、輻射による放熱性を高めるための少なくとももう一膜(7)を前記少なくとも1つの導電性膜(5,6)に被覆し、前記少なくとももう一膜(7)の下の膜(6)の全体または部分を被覆することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記複合管の変形前に、輻射による放熱性を高めるための少なくとももう一膜(7)を前記少なくとも1つの導電性膜(5,6)に被覆することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載された方法。
【請求項5】
前記少なくとももう一膜(7)を前記少なくとも1つの導電性膜(5,6)に黒クロムメッキ膜または酸化銅膜として被覆することを特徴とする、請求項3または請求項4に記載された方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−245552(P2010−245552A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146590(P2010−146590)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【分割の表示】特願2001−566152(P2001−566152)の分割
【原出願日】平成13年3月7日(2001.3.7)
【出願人】(504133822)コメット アクチェンゲゼルシャフト (3)