均一インビトロFECアッセイ及び成分
均一インビトロアッセイにおいて被検出物質を検出するために適応させられた、レポーター断片、レポーター成分及び系、これらの系を使用するこのようなアッセイ、及び上記のものを作製し使用する方法を提供する。特定の実施形態には、均一インビトロアッセイでの使用のための、溶解性が向上し、凝集性が低下し、阻害剤に対する耐性を示し、安定性が向上した単離精製レポーター断片が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、分子生物学及び診断の分野に関する。とりわけ、本発明は、均一インビトロアッセイにおいて被分析物質を検出するために特異的に適応させられたレポーター断片系及び成分、これらの成分を使用するこのようなアッセイ、診断システム及び上記のものを作製及び使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
レポーター断片系に基づくアッセイは、タンパク質間相互作用検出アッセイ(Protein Fragment Complementation assays)(PCA)、強制的酵素相補性(FEC)アッセイ(Forced Enzyme Complementation Assay)又は相互作用依存タンパク質結合系として知られている。これらのアッセイは、全般的に、例えば、WO01/71702;米国特許第6,270,964号;同第6,294,330号;同第6,428,951号;同第6,342,345号、同第6,828,099号及び米国特許出願公開第20030175836号に記載されている。本明細書中で使用される場合、強制的酵素相補性又はFECアッセイは総称的にこのようなアッセイを指す。
【0003】
FECの基礎となる基本原理を図1で図示する。これらのアッセイは通常、可視的な表現型の変化又は抗生物質耐性など、直接検出可能なシグナルを有するレポータータンパク質へと機能的に再構築し得る第一及び第二のメンバーからなるタンパク質断片ペアの使用を特徴とする。このアッセイの有効性の重要な態様は、レポータータンパク質の機能的再構成が、レポータータンパク質断片に連結されている断片ペアの各メンバー内に存在する部分の、相互作用、即ち結合又は吸引に依存するということである。本明細書中で使用される場合、これらの相互作用部分を「インタラクター」又は「インタラクタードメイン」と呼ぶ。インタラクタードメインは、断片ペアコンストラクトの各メンバー内に含有される個別の部分又はドメインである。インタラクタードメインは、レポーター断片ドメインへと直接連結され得るか又はリンカードメインにより連結され得る。タンパク質断片ペアメンバーは、通常、ペアの各メンバーにおけるインタラクタードメインがない場合、レポーター断片が自然には機能的に再構成しないように構築されている。このようにして、ペアの各メンバーのインタラクタードメインは、その断片からの機能的レポータータンパク質の再構成に関与する。
【0004】
機能的なインビボFECアッセイは、いくつかの異なるレポータータンパク質を用いて構築されている。例えば、WO01/71702;米国特許第6,270,964号;同第6,294,330号;同第6,428,951号;同第6,342,345号、同第6,828,099号及び米国特許出願公開第20030175836号で開示されるものを参照。
【0005】
クラスAβ−ラクタマーゼ(特にTEM−1β−ラクタマーゼ)は、それらが単量体であり、比較的サイズが小さく、結晶構造が既知であるので、FECアッセイの開発において特に関心が持たれてきた(WO00/71702及びJelschら、Protein Struct.Funct.(1993)16:364ff)。β−ラクタマーゼは、原核又は真核系の何れかで発現され得る。FECアッセイの設計及び開発におけるβ−ラクタマーゼの使用の例は、WO01/71702;米国特許第6,270,964号;同第6,294,330号;同第6,428,951号;同第6,342,345号、同第6,828,099号、米国特許出願公開第20030175836号及び同第20060094014号及びOoiら(2006)Biochemistry 45:3620−3625で見出すことができる。
【0006】
Cantorら(米国特許出願公開第20060094014号)は、インタラクタードメインが核酸である標的核酸配列の検出での使用のためのFECを示唆する。効率的なFECアッセイ性能に必要な相互作用は、含まれる核酸の間での核酸相補性複合体の形成の結果によるもの(典型的なワトソン−クリック塩基対配列認識の結果)である。このようにして、Cantorらの方法において、標的被分析物質及び各FEC断片のインタラクタードメインは全て核酸である。このように、各断片ペアの各メンバーは、β−ラクタマーゼ由来のタンパク質レポーター断片ペアの混合コンストラクト及びそれらのレポーター断片に連結された核酸インタラクタードメインである。Ooiら(2006)は、β−ラクタマーゼレポーター断片ペアを用いた同様の系を記載した。Stainsら(2005)J.Am.Chem.Soc.127:10782−10783及びStainsら(2006)J.Am.Chem.Soc.128:9761−9765は、レポーター断片ペアとして緑色蛍光タンパク質(GFP)の断片を使用し、インタラクタードメインとして亜鉛フィンガー及びメチル−CpG結合タンパク質を使用する、FECに基づくアッセイを記載した。これらの系は、再構成されたGFPの蛍光を通じて配列特異的な又はメチル化されたポリヌクレオチド配列を検出するように設計されている。
【0007】
FECの原理に基づく広く適用可能なインビトロ均一アッセイの作成により、必然的にFECの設計及び遂行に対する新しい問題が生じる。これらの問題は、均一アッセイ形式内で生成される特定のアッセイ環境、検出を目的とする被分析物質の性質及び源及びこのような均一アッセイの作成と関連する製造の問題から生じる。
【0008】
均一アッセイは通常、使用における、特異性、信頼性、作製の簡便性及び使用におけるロブストな特徴を確実にするために、単離精製成分から構成される。必要な溶解性、安定性及び製造に対する従順性及び最終的な診断用途も生み出す、適切なタンパク質断片ペアの設計(適切なレポーター断片、インタラクタードメイン、連結ドメイン及び融合コンストラクト全体又はそれぞれを組み込むレポーター断片ペアを含む。)ならびにロブストなアッセイ条件は、広く適用可能な均一アッセイプラットフォームを作製するのに不可欠である。インビボFECアッセイ条件と比較して、インビトロ診断アッセイ条件は、細胞外であり、比較的厳しく、インビボで容易に起こり得る適切なタンパク質折り畳み及びタンパク質−タンパク質相互作用を促進し得ない。
【0009】
さらなる問題は、均一アッセイプラットフォームにより起こる。均一アッセイプラットフォームの開発の中核は、洗浄段階の排除である。従って、血清又は少なくともある血清成分の存在下で、均一アッセイプラットフォームにおける診断試験を行い得る。このようにして、被分析物質を含有する試料分画を洗浄なしで処理し得る。洗浄がないと、均一プラットフォーム(特にFECに基づくもの)は、交差反応、妨害及び血清成分又はその他の夾雑物の阻害的影響が起こりやすい状態のままであると思われる。
【0010】
例えば、β−ラクタマーゼは、β−ラクタム抗生物質(Chaibiら、1999、J.Antimicrob.Chemother.43(4):447−58)に対する菌耐性を与える。その結果、細菌感染の治療に対して設計された薬物は、患者血清中に存在する場合、アッセイ性能を妨害し得る。実際に、ヒト投与に対して使用されるβ−ラクタム抗生物質製剤(経口及び静脈内)は、使用される抗生物質の効率を上昇させるために、β−ラクタマーゼ(TEM−1)の不可逆的阻害剤の使用を含み得る。一般に使用される例となる阻害剤には、ペニシリンの誘導体及びペナム又はセファム誘導体が含まれる。このような阻害剤の例、それらの合成及び使用は、米国特許第6,936,711号;同第6,900,184号;同第6,395,726号;同第6,207,661号;同第5,763,603号;同第5,686,441号;同第4,958,020号;同第4,933,444号;同第4,898,939号;同第4,895,941号;同第4,891,369号;同第4,668,514号;同第4,626,384号;及び同第4,529,592号(そのそれぞれはそれらの全体において参照により明確に組み込まれる。)に記載されている。抗生物質及び阻害剤の一般的組み合わせは、それらの商標名又は非公式名により知られ得る。例えば:ピペラシリン及びタゾバクタム;アンピシリンナトリウム及びスルバクタムナトリウム;及びアモキシシリン及びクラブラン酸。さらなる組み合わせ及び阻害剤が当技術分野で公知である。
【0011】
レポーター酵素としてβ−ラクタマーゼを使用する均一アッセイは、これらのβ−ラクタマーゼ阻害剤の影響を受けやすい。例えば、抗生物質投与後に観察されるβ−ラクタマーゼ阻害剤血清Cmaxレベルは、β−ラクタマーゼを阻害するのに十分高いものであり得る。従って、一般にインビトロアッセイにおいてFECを実行する問題に加えて、インビトロ均一アッセイプラットフォームにおけるFECの実行によりさらなる問題が現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第01/71702号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,270,964号明細書
【特許文献3】米国特許第6,294,330号明細書
【特許文献4】米国特許第6,428,951号明細書
【特許文献5】米国特許第6,342,345号明細書
【特許文献6】米国特許第6,828,099号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0175836号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0094014号明細書
【特許文献9】米国特許第6,936,711号明細書
【特許文献10】米国特許第6,900,184号明細書
【特許文献11】米国特許第6,395,726号明細書
【特許文献12】米国特許第6,207,661号明細書
【特許文献13】米国特許第5,763,603号明細書
【特許文献14】米国特許第5,686,441号明細書
【特許文献15】米国特許第4,958,020号明細書
【特許文献16】米国特許第4,933,444号明細書
【特許文献17】米国特許第4,898,939号明細書
【特許文献18】米国特許第4,895,941号明細書
【特許文献19】米国特許第4,891,369号明細書
【特許文献20】米国特許第4,668,514号明細書
【特許文献21】米国特許第4,626,384号明細書
【特許文献22】米国特許第4,529,592号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Jelsch他、Protein Struct.Funct.16、1993年、p.364ff
【非特許文献2】Ooi他、Biochemistry 45、2006年、p.3620−3625
【非特許文献3】Stains他、J.Am.Chem.Soc.127、2005年、p.10782−10783
【非特許文献4】Stains他、J.Am.Chem.Soc.128、2006年、p.9761−9765
【非特許文献5】Chaibi他、J.Antimicrob.Chemother.43(4)、1999年、p.447−58
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、高い、溶解性、安定性、感受性及び/又は酵素阻害剤(例えば本アッセイにおいて試験したい試料中に存在し得る阻害剤)に対する耐性など、インビトロ均一FECアッセイでの使用に対する所望の特徴を示すTEM−1β−ラクタマーゼに基づく修飾レポーター断片(α及びω断片)を提供する。本発明のタンパク質断片により示されるこれらの所望の特徴には、レポーター断片の単離及び精製に対する高い従順性及び、操作可能なインビトロ均一アッセイの続く構成のための、レポーター断片ペアが含まれる。本発明は、さらに、具体的に、均一アッセイプラットフォーム形式及び使用でのアッセイの感受性又は特異性を維持又は向上させながら、均一インビトロアッセイ条件下で溶解性が高く凝集性が低いレポータータンパク質断片を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、ある態様において、本発明は、酵素活性の阻害剤の存在下で酵素活性を保持するポリペプチド複合体を生成させるための、少なくとも第二のポリペプチドとの会合において操作可能なポリペプチドを提供する。
【0016】
好ましい実施形態において、本ポリペプチドは、酵素活性の阻害剤に対するポリペプチド複合体の感受性を低下させる1以上のアミノ酸配列変化を含む。
【0017】
関連する態様において、本発明は、第一のポリペプチドサブユニットを含む第一のレポーター成分及び第二のポリペプチドサブユニットを含む第二のレポーター成分を含み、第一のサブユニット及び第二のサブユニットが、検出可能なシグナルを生成することができる酵素活性を有する活性のあるポリペプチド複合体を生成させるために会合することができ、該会合が関心のある被分析物質に対する第一及び第二のレポーター成分の結合により媒介され;
第一のポリペプチドサブユニット及び/又は第二のポリペプチドレポーターサブユニットが、阻害剤による該酵素活性の阻害に対する活性ポリペプチド複合体の感受性を低下させる1以上のアミノ酸配列変化を含む、レポーター系を提供する。
【0018】
具体的な実施形態において、本発明は、インビトロ均一FECアッセイでの使用に必要とされる所望の特徴を得られる断片に与える、TEM−1β−ラクタマーゼのネイティブアミノ酸配列における、点突然変異、切断点及び欠失に基づく、レポーター断片ペアドメインとしての使用のためのポリペプチドコンストラクトを提供する。これらの所望の特徴には、以下に限定されないが、1以上の血液血清成分存在下で、均一形式においてβ−ラクタマーゼに基づくFECアッセイを可能にするものが含まれる。特定の実施形態において、これらの血液血清成分には、β−ラクタマーゼの阻害剤が含まれる。
【0019】
好ましい実施形態において、本発明は、β−ラクタマーゼ阻害剤の存在下及び均一インビトロFECアッセイで使用するために断片ペアを適応させるその他の方法において、溶解性を向上させ、凝集性を低下させ、性能を向上させるために、断片ペアコンストラクトに有利に導入され得る具体的な突然変異を提供する。これらの突然変異の効果により、単独で(本発明のものではない操作可能なペアメンバーと組み合わせて使用される場合)又は本発明の操作可能なペアメンバーと組み合わせての何れかで、レポーター、リンカー又はインタラクタードメインにおいて複数の長所が与えられ得る。これらの長所には、β−ラクタマーゼの阻害剤又はこのような条件においてFECの有効性を損なう血清又はその他の生体試料に存在するその他の因子を含み得るインビトロ又は均一アッセイ条件での操作可能性が含まれる。
【0020】
具体的な突然変異(アミノ酸配列変化)を同定することにおいて、本明細書中で従った表記法(文脈で必要とされる場合を除く。)は、ネイティブβ−ラクタマーゼアミノ酸配列からの位置情報と組み合わせてアミノ酸に対する1文字コードを使用する。例えば、V74Tは、ネイティブの位置74のバリン(付随の配列で又は代替的な配列付番スキームにおける相同位置で示される。)が、チロシンにより置換されることなどを示す。一貫性及び利便性のために、ネイティブ配列の付番は、実質的にわずかなアミノ酸の配列又はレポーター断片を指す場合でも保持される。このようにして、F230Yは、置換がより短い、例えば本発明のα又はω断片内で起こり得る場合でも、全長ネイティブ配列付番での位置230でのYによるFの置換を指す。
【0021】
特定の実施形態において、本発明のネイティブβ−ラクタマーゼ配列の突然変異は、付随する配列リストの付番において又は何らかの代替的な配列付番法での相同位置において、位置196のグリシンと位置197のグルタミン酸との連結部の間の切断点により形成されるα及びω断片と連結して提供される。本明細書中で提供される突然変異との連結において有用な、代替的なα又はω断片を生じるその他の切断点は、関連技術の通常の技術内である。
【0022】
本発明は、次のものから選択される1又は複数のアミノ酸配列変化を含むTEM−1β−ラクタマーゼのα又はω断片を提供する:M69L;M69I;V74T;M182T;I208T;M211Q;F230Y;及びN276D。これらの突然変異は、個々に又は組み合わせて存在し得る。ネイティブ配列に関連する突然変異の具体的な組み合わせは、完全に1個のレポータードメイン又はレポーター断片ペアメンバー内に存在し得る。具体的な突然変異又は突然変異の組み合わせは、本発明の範囲内のアッセイの必要条件を満たすため、所望のアッセイ及び突然変異の操作可能性に依存して、FECアッセイにおいて有用な1個のレポータードメイン又は2個の相補的レポータードメイン又はレポーター断片ペアメンバーにおいて存在し得る。本発明の範囲内の1個のアミノ酸突然変異の特定の組み合わせには、α断片レポータードメインにおけるM182TとのM69L;α断片レポータードメインにおけるM182TとのM69I;及びω断片レポータードメインにおけるN276Dが含まれる。これら変化したレポータードメイン配列は、言うまでもなく、FECアッセイの操作可能なメンバーを構成するために、適切なレポーター断片メンバーに組み込まれ得る。インタラクタードメインが、操作可能なメンバー又はFECアッセイのメンバーの操作可能なペアを構成するための本発明の改変レポータードメインの1以上に連結される、当業者が所望し得る何らかのこのようなドメインであり得ることは、本発明の範囲内である。当業者にとって当然のことながら、これらのコンストラクトは操作可能であり得、従って、インビボ又はインビトロで有用であり得る。本発明の阻害剤耐性コンストラクトのインビボでの使用が具体的にもくろまれる。
【0023】
さらなる代表的実施形態において、本発明のレポーター断片メンバーは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列の単離又は精製ポリペプチドを含む。ある好ましい実施形態において、本発明のレポーター断片は、基本的に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列の単離又は精製ポリペプチドから構成される。具体的な好ましい実施形態において、本発明のレポーター断片は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列の単離又は精製ポリペプチドから構成される。
【0024】
本発明はまた、レポーター断片ペアの対形成を含む単離又は精製された特異的断片ペアも提供し、この場合、対形成は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される少なくとも1つのポリペプチドを含む。具体的な実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列(標識されたコンストラクトPB15を示す。)により例示されるように、配列の実質的な再編成を特徴とする。さらなる実施形態には、配列番号23及び24により例示されるものなどのこのような再編成された基本配列由来のレポーター断片が含まれる。
【0025】
本発明と一致して、リンカードメインを本発明のレポーター断片に付加し得る。さらに、介在リンカードメイン有り又は無しでインタラクタードメインを本発明のレポーター断片に連結し得る。リンカードメインの数、例えば、G4Sドメイン(即ちGGGGS配列反復)は0、1、2、3、4、5、6以上であり得、(G4S)nとして特定し得る(ここでnは0、1、2、3、4、5、6以上の整数であり得る。)。何らかの特定のインタラクター及びレポータードメインコンストラクト及び断片対形成に対する適切なリンカードメイン配列及び/又はリンカードメイン反復数の選択は、当業者による通常の実験レベル内である。
【0026】
本発明のレポーター断片には、均一インビトロFECアッセイへと操作可能に構成され得る単離及び精製レポーター断片が含まれる。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、66、68、70、72、74、76、80及び82で示される配列から選択されるヌクレオチド配列を含むか又はこれらからなる核酸など、本発明のポリペプチド実施形態をコードする核酸を提供する。
【0028】
本発明は、さらに、本明細書中に記載のレポーター断片及びインビトロFECアッセイ成分を作製し、精製し、単離し、使用する方法を提供する。
【0029】
本発明は、さらに、本発明の単離及び精製ポリペプチド及びレポーター断片ペアを含む均一インビトロFECアッセイを提供する。
【0030】
従って、別の態様において、本発明は、
(a)関心のある被分析物質の存在について試験しようとする試料を得て;
(b)被分析物質に対して親和性があるインタラクタードメインを含む、精製された第一のレポーター断片ペアメンバーを得て;
(c)関心のある被分析物質に対して親和性があり、関心のある被分析物質と第一及び第二のレポーター断片ペアメンバーのインタラクタードメインとの親和性を通じて第一のレポーター断片ペアメンバーとの会合に際してレポーター酵素活性を再構成することにおいて操作可能であるインタラクタードメインを含む精製された第二のレポーター断片ペアメンバーを得て;
(d)第一及び第二のレポーター断片ペアメンバーが、被分析物質とのインタラクタードメインの親和性を通じて会合することを可能にするのに十分なインビトロでのアッセイ条件を提供する段階を含み、レポーター酵素活性の再構成が試料中の被分析物質の存在を示す、被分析物質の存在をアッセイする方法を提供する。
【0031】
関連する態様において、本発明は、本発明のレポーター系と試料を接触させることと、第一及び第二のポリペプチドサブユニットの会合の結果として生じる酵素活性の有無を検出することと、を含む、試料中の関心のある被分析物質の存在を調べる方法も提供する。
【0032】
別の関連する態様において、本発明は、試料中の関心のある被分析物質の存在を調べるための本発明のレポーター系の使用を提供する。
【0033】
本発明はまた、特定の被分析物質に対して均一インビトロアッセイを行うために適応させられた特異的レポーター断片ペアも提供する。ある実施形態において、被分析物質はNi2+、Zn2+又はCo2+などの2価金属陽イオンである。さらに別の実施形態において、被分析物質は抗体である。抗体被分析物質は、関心のあるアッセイに依存して、モノクローナル抗体又はその他、適切な抗体であり得る。さらなる実施形態において、被分析物質は抗原である。さらなる実施形態において、被分析物質は1以上のポリヌクレオチド又は特異的配列である。このようなポリヌクレオチドは、メチル化されていてもされていなくてもよく、それらのメチル化状態は、本発明の特定の実施形態の使用から得られる情報であり得る。
【0034】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のアッセイを行うためのキット又は、材料、試薬及び本発明のアッセイ成分を調製するための又は本発明のアッセイの続く使用のための説明書を含むキットを含む。
【0035】
本発明のその他の目的、特性及び長所は、続く詳細な説明から明らかになろう。しかし、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び変化がこの詳細な説明から当業者にとって明らかとなるので、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の具体的な実施形態を示す一方、単なる説明のために与えられるものであることを理解されたい。
【0036】
次の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある一定の態様をさらに明らかにするために含まれる。本明細書中で与えられる本発明の詳細な説明及び実施例と組み合わせてこれらの図面の1以上を参照することにより、本発明がより詳細に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】FECアッセイ及びその基本成分の概略図。
【図2】2価金属陽イオンに対する均一インビトロFECアッセイの概略図。
【図3】野生型又は突然変異β−ラクタマーゼレポーターコンストラクトを使用する2価陽イオンに対する均一インビトロFECアッセイの実行。
【図4】Ni2+に対する均一インビトロFECアッセイにおける10分間のOD492試験。
【図5】抗ヒスチジンタグモノクローナル抗体に対する均一インビトロFECアッセイの概略図。
【図6】抗ヒスチジンタグモノクローナル抗体に対する均一インビトロFECアッセイの実行(OD492での吸収)。
【図7】本発明のタンパク質断片の精製。図面の左のパネルはαβ−ラクタマーゼ酵素断片の誘導発現前後及びアフィニティー精製物質のゲル電気泳動である。α断片の表示されたクロマトグラム「アフィニティー精製」及び表示されたクロマトグラム「ゲルろ過」プロファイルの両方が、精製酵素断片の実施形態を説明する。本発明のその他の断片に対して同様の結果が得られる。
【図8】被分析物質としてのNi2+に対して反応性のあるβ−ラクタマーゼ酵素断片及び本発明のα及びωβ−ラクタマーゼ断片の等モル量を用いたFECインビトロアッセイの進展の492nmでの吸収読み取り。
【図9】マルチウェルプレート形式でのNi2+に対するインビトロアッセイ中の色の変化の強度の説明。時間点は非線形である。各ウェルの色の強度は、被分析物質の存在及び非存在下(それぞれウェルA1−A8及びB1−B8)及び基質のみ(ウェルC1−C8)において示される。
【図10】突然変異コンストラクトのアッセイの特徴。単位はmOD分−1である。
【図11】HSVに対するコンストラクトのアッセイの特徴。単位はmOD分−1である。
【図12】野生型TEM−1(PB11+PB13)FECと比較した、最適阻害剤耐性突然変異TEM−33M182TN276D(PB11.12+PB13.3)の相対的耐性を示すグラフ。
【図13】野生型TEM−1(PB11+PB13)FEC及び全長TEM−1β−ラクタマーゼと比較した、最適阻害剤耐性突然変異TEM−33M182T N276D(PB11.12+PB13.3)のβ−ラクタマーゼ阻害剤添加血清アッセイの結果を示すグラフ。
【図14】BLαProG/BLω−HSV1を用いたHSV−1アッセイの特徴を示すグラフ。カットオフ=1.20。感受性=HSV 1+veに対して98%。特異性=HSV2+veに対して100%。特異性=HSV−veに対して100%。
【図15】BLαProG/BLω−HSV2を用いたHSV−2アッセイの特徴を示すグラフ。カットオフ=1.16。感受性=HSV2+veに対して94%。特異性=HSV1+veに対して100%。特異性=HSV−veに対して100%。
【図16】BLαHSV1/BLω−ProGを用いたHSV−1アッセイの特徴を示すグラフ。カットオフ=1.15。感受性=HSV1+veに対して98%。特異性=HSV2+veに対して100%。特異性=HSV−veに対して96%。
【図17】BLαHSV1/BLω−ProGを用いたHSV−2アッセイの特徴を示すグラフ。カットオフ=1.20。感受性=HSV2+veに対して98%。特異性=HSV1+veに対して100%。特異性=HSV−veに対して96%。
【図18】正常(対照)又はHSV−2高陽性患者血清の何れかの存在下でのニトロセフィン加水分解の典型的な速度を示すグラフ(15分間の予備温置時間後、492nmで監視)。加水分解の平均速度は0.85mOD分−1(HSV陰性)及び5.14mOD分−1。
【図19】β−ラクタマーゼに基づくFECのイラスト表示及びHSV−1及びHSV−2特異的抗原性ペプチドの配列。(a)酵素断片、α及びω、は、疾患特異的抗原性ペプチド(P)及びプロテインGの1つのドメインなど、被分析物質結合物質に連結される。被分析物質(疾患特異的抗体)の存在下で、断片を強制的に近接近させ(右)、それによりニトロセフィンの加水分解が開始されるが、それは黄色から赤への色の変化として見ることができる。(b)HSV−1及びHSV−2抗原性ペプチドの短縮型糖タンパク質アミノ酸配列。下線付きの太字は免疫優勢領域を表す。
【図20】この研究で使用されるFEC断片の概略図。BLはβ−ラクタマーゼα(α、青)及びω(ω、緑)断片を指す。被分析物質結合部分(赤)、ProG、HSV−P1及びHSV−P2は、それぞれプロテインGドメイン及びHSV−1及びHSV−2に対するHSV型特異的抗原性ペプチドを指す。ヒスチジンタグを灰色で示す。被分析物質結合部分に酵素断片を連結するために、(Gly4Ser)3リンカーを使用した。
【0038】
配列リストの簡単な説明
配列番号1。PB11、ネイティブβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトをコードするヌクレオチド配列。
【0039】
配列番号2。PB11、ネイティブβ−ラクタマーゼのα断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0040】
配列番号3。PB13、ネイティブβ−ラクタマーゼ配列のω断片コンストラクトをコードするヌクレオチド配列。
【0041】
配列番号4。PB13、ネイティブβ−ラクタマーゼのω断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0042】
配列番号5。PB11.2、V74T及びM182Tの置換を含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトをコードするヌクレオチド配列。
【0043】
配列番号6。PB11.2、V74T及びM182Tの置換を含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0044】
配列番号7。PB11.11 置換M69Lを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクト。
【0045】
配列番号8。PB11.11 置換M69Lを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0046】
配列番号9。PB11.12 置換M69L及びM182Tを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクト。
【0047】
配列番号10。PB11.12 置換M69L及びM182Tを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0048】
配列番号11。PB13.1 M211Qの置換を含有するβ−ラクタマーゼ配列のω断片コンストラクトをコードするヌクレオチド配列。
【0049】
配列番号12。PB13.1 M211Qの置換を含有するβ−ラクタマーゼ配列のω断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0050】
配列番号13。PB11.13 置換M69I及びM182Tを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトをコードするヌクレオチド配列。
【0051】
配列番号14。PB11.13 置換M69I及びM182Tを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0052】
配列番号15。PB11.4、(G4S)3リンカードメインを含むネイティブβ−ラクタマーゼのα断片をコードするヌクレオチド配列。
【0053】
配列番号16。PB11.4、(G4S)3リンカードメインを含むネイティブβ−ラクタマーゼのα断片のアミノ酸配列。
【0054】
配列番号17。PB13.2、(G4S)3リンカードメインを含むネイティブβ−ラクタマーゼのω断片をコードするヌクレオチド配列。
【0055】
配列番号18。PB13.2、(G4S)3リンカードメインを含むネイティブβ−ラクタマーゼのω断片のアミノ酸配列。
【0056】
配列番号19。PB13.3 置換N276Dを含有するβ−ラクタマーゼのω断片コンストラクト。
【0057】
配列番号20。PB13.3 置換N276Dを含有するネイティブβ−ラクタマーゼのω断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0058】
配列番号21。PB15、β−ラクタマーゼの再編成コンストラクトのアミノ酸配列。
【0059】
配列番号22。PB15.3、β−ラクタマーゼの、及びM182T、I208T及びF230Yの置換を含む、再編成コンストラクトのアミノ酸配列。
【0060】
配列番号23。PB7.2、PB15.3のα断片のアミノ酸配列。
【0061】
配列番号24。PB9.1、PB15.3のω断片のアミノ酸配列。
【0062】
配列番号25から配列番号65は、表1及び5で記載のとおりの合成プライマーである。
【0063】
配列番号66 P1−I trunc、HSV−1短縮型抗原ヌクレオチド配列。
【0064】
配列番号67 P1−I trunc、HSV−1短縮型抗原アミノ酸配列。
【0065】
配列番号68 BLαHSV−1α断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0066】
配列番号69 BLαHSV−1α断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0067】
配列番号70 BLω、HSV−1ω断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0068】
配列番号71 BLω、HSV−1ω断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0069】
配列番号72 P2−1trunc、HSV−2短縮型抗原ヌクレオチド配列。
【0070】
配列番号73 P2−1trunc、HSV−2短縮型抗原アミノ酸配列。
【0071】
配列番号74 BLαHSV−2 α断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0072】
配列番号75 BLαHSV−2 α断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0073】
配列番号76 BLωHSV−2 ω断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0074】
配列番号77 BLωHSV−2 ω断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0075】
配列番号78 プロテインGヌクレオチド配列。
【0076】
配列番号79 プロテインGアミノ酸配列。
【0077】
配列番号80 BLαProG、プロテインGα断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0078】
配列番号81 BLαProG、プロテインGα断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0079】
配列番号82 BLωProG、プロテインGω断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0080】
配列番号83 BLωProG、プロテインGω断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0081】
配列番号84 HSV1のgG1のアミノ酸92から148。
【0082】
配列番号85 HVS2のgG2のアミノ酸又は551から641。
【発明を実施するための形態】
【0083】
別段の定義がない限り、本明細書中で使用される全ての技術及び科学用語は、当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する(例えば、細胞生物学、化学及び分子生物学において)。分子及び生化学的方法のために使用される標準的技術は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.及びAusbelら、Short Protocols in Molecular Biology(1999)第4版、John Wiley&Sons、Inc.及び題名「Current Protocols in Molecular Biology」の完全版)で見出すことができる。
【0084】
特定の実施形態及び実施例の次の詳細な説明は、説明を目的として与えられるものであり、限定するために与えられるものではない。禁忌であるか又は別段の断りがない限り、これらの説明において及び本明細書を通して、「a」及び「an」という用語は、1又は複数を意味する。同様に、「又は」は「及び/又は」を意味する。
【0085】
「含む(comprising)」は、「含む(comprising)」という語に続くものを全て含むがこれらに限定されないことを意味する。従って、「含む(comprising)」という語の使用は、列挙される要素が必要とされるか又は必須であるが、その他の要素は任意であり、存在してもよいししなくてもよいことを示す。「からなる(consisting of)」は、「からなる(consisting of)」という句に続くものを全て含み、それらに限定されることを意味する。従って、「からなる(consisting of)」という句は、列挙される要素が必要であるか又は必須であり、その他の要素が存在し得ないことを示す。「基本的に、からなる(Cconsisting essentially of)」は、この句の後に列挙される何れの要素も含まれ、列挙される要素に対する開示において指定される活性又は作用を妨害しないか又は寄与しないその他の要素に限定されることを意味する。従って、「基本的に、からなる(Cconsisting essentially of)」という句は、列挙される要素が必要とされるか必須であるが、その他の要素は任意であり、それらが列挙される要素の活性又は作用に影響するか否かによって、存在し得るか又はし得ないことを示す。
【0086】
値の範囲が与えられる場合、途中にある各値、文脈からの明らかな別段の指示がない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間及び何らかのその他の規定されるか又は規定される範囲において途中にある値が本発明内に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立に、このより小さい範囲に含まれ得、また本発明内に包含され、規定される範囲における何らかの具体的に除外される制限に制約される。
【0087】
レポーター成分及びレポーターポリペプチド断片
本発明は、均一インビトロFECアッセイの単離及び精製成分としての使用に適応させられたポリペプチドを含むかそれらからなるレポーター成分を提供する。このレポーター成分はレポーター系の一部をなす。上記で考察したように、FECアッセイにおけるレポーター系は、会合した場合に検出可能なシグナルを生じさせることができるレポータータンパク質複合体を形成する2以上のポリペプチド断片を含む。従って、各レポーター成分は、少なくとも1つのこのようなポリペプチド断片又はサブユニット(本明細書中で、「レポーター断片」と呼ばれる。)を含む。例えば、βラクタマーゼに基づく系の場合、この2つのレポーター成分がアッセイ条件下で会合する場合、結果として得られる複合体がβラクタマーゼ活性を有するように、第一のレポーター成分はβラクタマーゼのα断片を含み得、第二のレポーター成分は、βラクタマーゼのω断片を含み得る。それらの個々のレポーターポリペプチド断片(「サブユニット」とも呼ばれる。)が会合する場合に一緒になって検出可能な酵素活性を生じさせることができる第一のレポーター成分及び第二のレポーター成分の組み合わせは、本明細書中で「レポーター成分ペア」と呼ばれ、個々のレポーターポリペプチド断片はまとめて「レポーター断片ペア」と呼ばれる。
【0088】
レポーター断片及び系に対する基礎として使用され得るレポーターポリペプチドの例には、β−ラクタマーゼ(例えばTEM−1β−ラクタマーゼ:EC:3.5.2.6)β−ガラクトシダーゼ及びルシフェラーゼなどの生物発光タンパク質(例えばホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ)及び緑色蛍光タンパク質を含む蛍光タンパク質が含まれる。レポーターポリペプチドは、通常、会合した場合に元の全長ポリペプチドの活性を再構成することができる2つの断片に分割される。例えば、β−ラクタマーゼ及びβ−ガラクトシダーゼは、通常、2つの断片、α及びω断片に分割される。2つの断片を生じさせるためのこれらの様々なタンパク質のアミノ酸配列における適切な切断点は既に述べている。
【0089】
レポーターポリペプチド/断片は、それらがインビトロでの使用に適切であるように選択される(疑義を避けるために、本文脈において、インビトロという用語は、アッセイが生きている細胞の外で行われることを意味する。)。このレポーターポリペプチドは、通常、例えば、安定性を促進し、溶解性を向上させ及び/又は凝集性を低下させるための、インビトロでの使用に対するそれらの適合性を向上させるアミノ酸変化を有する野生型配列の変異体である。特に好ましい実施形態において、レポーターポリペプチド/断片は、野生型ポリペプチドと比較して、レポーター機能に必要とされるポリペプチドの活性、例えばβラクタマーゼ活性の、酵素阻害剤などの阻害剤に対する感受性が低下している。このような阻害剤には、試料、例えば、関心のある被分析物質の存在について試験することが必要とされる血液及び血清試料などの生体試料中で見出される化合物、が含まれる。このような阻害剤の特定の例は、血液試料を採取する個体への抗生物質の投与の結果血液中で見られるβ−ラクタマーゼ活性の阻害剤である。
【0090】
アッセイ条件下で、レポーター活性を有する活性複合体を形成するためのレポーター断片の会合には、通常、レポーター成分のその他の領域と標的被分析物質との間の相互作用が介在する。従って、このレポーター成分は、通常、インタラクター部分又はドメインを含む。
【0091】
インタラクタードメインは、関心のある標的被分析物質に対する結合特異性を有する。インタラクタードメインには、例えば、ペプチド、糖タンパク質、多糖類、抗原、抗体及び抗体の抗原結合断片、例えば相補性決定領域(CDR)など、が含まれる。抗原には、病原体由来の抗原、例えばウイルス性又は細菌性抗原など、が含まれる。抗体/CDRには、病原体、例えばウイルス又は細菌など、由来の抗原に結合する配列が含まれる。インタラクタードメインの特定の例には、プロテインGのIgG結合ドメイン及び単純ヘルペスウイルス抗原が含まれる(その特に好ましいものは、HSV1からの短縮型糖タンパク質G1エンベロープタンパク質又はHSV2からの短縮型糖タンパク質G2エンベロープタンパク質、例えばgG1のアミノ酸92から148又はgG2の551から641などである。)。
【0092】
インタラクタードメインをレポーター断片に直接又はリンカーを介して連結し得る。適切なリンカードメインには、ペプチド、例えばグリシンリッチ反復配列(例えばG4S反復配列−即ちGGGGS配列回復)が含まれる。リンカードメイン、例えばG4Sドメイン、の数は、1、2、3、4、5、6以上であり得る。ある実施形態において、グリシンリッチ反復配列の数は好ましくは2又は3である(特にインタラクタードメインが150又は100アミノ酸より少ないポリペプチドである場合)。より大きいインタラクタードメインを使用する場合、リンカー長を長くする事が望ましいものであり得る。
【0093】
ある実施形態において、リンカードメインはフレキシブルである。別の実施形態において、リンカードメインは堅い。
【0094】
適切なリンカードメイン配列及び/又は何らかの特定のインタラクター及びレポーター断片コンストラクト及び断片対形成に対するリンカードメイン反復の数の選択は、当業者による通常レベルの実験の範囲内である。
【0095】
レポーター成分を形成するために、レポーター断片ポリペプチド、リンカードメイン及びインタラクタードメインを共有又は非共有手段により連結し得る。
【0096】
ある実施形態において、リンカードメイン及びインタラクタードメインはポリペプチドである。従って、レポーター成分は1つのポリペプチドであり得る。
【0097】
別の実施形態において、結合(conjugation)、例えばチオ−チオ、アミン−カルボキシル又はアミン−アルデヒド官能基を介した、例えば共有カップリングにより、インタラクタードメインにレポーター断片を連結する。特定の例には、炭水化物基を介した糖タンパク質へのポリペプチドの架橋;例えばアミン反応基及びスルフィドリル反応基を有するヘテロ二官能性架橋剤を用いた、一級アミンを介した架橋(N末端及びリジン残基で見られる。);カルボキシル基を介した架橋(C末端で、及び、グルタミン酸及びアスパラギン酸残基での側基として見られる。);遊離スルフヒドリル基を介した架橋;及びジスルフィド交換が含まれる。
【0098】
非共有法には、アビジン−ビオチン系及びオリゴヌクレオチド−タンパク質結合のハイブリッド形成が含まれる。
【0099】
ある態様において本発明は、本明細書中で開示される酵素ペプチドのアミノ酸配列からなるか又は基本的にそれらからなるか又はそれらを含むものなど、単離又は精製ペプチド及びタンパク質レポーター断片及びレポーター成分を提供する。図面又は配列リストにおいて、本発明の代表的な配列が提供される。提供されるペプチド配列は、本明細書中で、本発明に記載のアッセイのレポーター断片又はレポーターペアメンバー/成分と呼ばれる。
【0100】
本明細書中で使用される場合、ペプチド/ポリペプチド/タンパク質は、実質的に細胞性物質不含又は化学的前駆体もしくはその他の化学物質不含であるとき、「単離されている」又は「精製されている」と言われる。本発明のペプチドは、均一になるまで又はその他の程度の純度まで精製され得る。精製レベルは使用目的に基づく。本発明における使用目的は特異的被分析物質に対する均一インビトロFECアッセイの操作可能な成分である。
【0101】
ある使用において、「実質的に細胞性物質不含」には、その他のタンパク質(即ち夾雑タンパク質)が約30%(乾燥重量)未満である、その他のタンパク質が約20%未満である、その他のタンパク質が約10%未満である、又はその他のタンパク質が約5%未満である、ペプチドの調製品が含まれる。ペプチドが組み換え産生される場合、これは実質的に培地不含でもあり得、即ち培地はタンパク質調製品の体積の約20%未満である。
【0102】
「実質的に化学的前駆体又はその他の化学物質不含」という語には、その合成に関与する化学的前駆体又はその他の化学物質からそれが分離されているペプチドの調製品が含まれる。ある実施形態において、「実質的に化学的前駆体又はその他の化学物質不含」という語には、化学的前駆体又はその他の化学物質が約30%未満(乾燥重量)である、化学的前駆体又はその他の化学物質が約20%未満である、化学的前駆体又はその他の化学物質が約10%未満である、又は化学的前駆体又はその他の化学物質が約5%未満である、酵素ペプチドの調製品が含まれる。
【0103】
単離レポーター断片及びポリペプチドレポーター成分は、それを発現するように改変されている細胞から精製され得る(組み換え)か、又は既知のタンパク質合成方法を用いて合成され得る。例えば、酵素ペプチドをコードする核酸分子を発現ベクターにクローニングし、その発現ベクターを宿主細胞に導入し、宿主細胞でそのタンパク質を発現させる。適切な宿主細胞を下記でさらに詳細に記載する。次に、適切なタンパク質精製技術を用いた適切な精製スキームによりこのタンパク質を細胞から単離し得る。本発明の代表的技術は下記で示す実施例で詳細に記載する。
【0104】
ある態様において、本発明は、提供されるアミノ酸配列からなるタンパク質を提供する。あるアミノ酸配列がタンパク質の最終アミノ酸配列である場合、タンパク質はそのアミノ酸配列からなる。さらなる態様において、本発明は、さらに、基本的に提供されるアミノ酸配列からなるタンパク質を提供する。タンパク質は、アミノ酸配列が本発明のタンパク質の機能的特徴を変化させない数個のさらなるアミノ酸残基のみを伴い存在する場合、基本的にこのようなアミノ酸配列からなる。さらなる態様において、本発明は、提供されるアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。アミノ酸配列がタンパク質の最終アミノ酸配列の少なくとも一部である場合、タンパク質はそのアミノ酸配列を含む。このような様式においてこのタンパク質は、そのペプチドのみであり得るか又は、それと連結されるアミノ酸残基(連続するコードされる配列)又は異種アミノ酸残基もしくはペプチド配列などのさらなるアミノ酸分子を有し得る。このようなタンパク質は、数個のさらなるアミノ酸残基を有し得るか又は数百以上のさらなるアミノ酸を含み得る。様々なタイプのこれらのタンパク質がどのようにして作製され、単離され得るかの簡単な説明は以下で与える。
【0105】
キメラ又は融合タンパク質を形成するために、本発明のペプチドは、異種配列に連結され得る。このようなキメラ及び融合タンパク質は、実質的に酵素ペプチドと同種ではないアミノ酸配列を有する異種タンパク質に操作可能に連結された酵素ペプチドを含み得る。「操作可能に連結される」とは、それぞれの操作可能性が破壊されないように酵素ペプチド及び異種タンパク質が融合されることを指す。異種タンパク質を酵素ペプチドのN末端又はC末端に融合させ得る。
【0106】
標準的組み換えDNA技術によりキメラ又は融合タンパク質を作製し得る。例えば、従来の技術に従い、様々なタンパク質配列をコードするDNA断片を一緒にインフレームで連結する。別の実施形態において、自動DNA合成装置を含む従来の技術により融合遺伝子を合成し得る。あるいは、2つの連続した遺伝子断片の間に相補的突出部(続いて、キメラ遺伝子配列を生成させるためにこれをアニーリングし再増幅させ得る。)を生じさせるアンカープライマーを用いて、遺伝子断片のPCR増幅又は連結(ライゲーション)を行い得る(Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、1998)。さらに、既に融合部分をコードする、多くの発現ベクターが市販されている。融合部分がインフレームで酵素ペプチドに連結されるように、酵素ペプチドをコードする核酸をこのような発現ベクターにクローニングし得るが、これは、各成分の操作可能性を破壊することなく融合タンパク質を作製する1つの手段である。
【0107】
代替的な配列付番スキームにおける相同位置の同定
2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列の比較において相同的位置を決定するために、最適な比較のために配列を整列(アラインメント)させる(例えば、最適アラインメントのための第一及び第二のアミノ酸又はヌクレオチド配列の一方又は両方においてギャップを導入し得、比較のために非相同配列を無視し得る。)。好ましい実施において、参照配列の長さの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%以上を比較のために整列させる。次に、対応するアミノ酸の位置又はヌクレオチドの位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第一の配列における位置に第二の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドがある場合、その位置において分子は同一であり、2つにおいてその位置は相同である。2つの配列間の%同一性は、ギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れて(これらは、2つの配列の最適整列のために導入される必要がある。)、それらの配列が共有する同一位置の数の関数である。
【0108】
数学的アルゴリズムを用いて、配列の比較及び2つの配列間の%同一性及び類似性を決定し得る(Computational Molecular Biology、Lesk、A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith、D.W.編、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part 1、Griffin、A.M.及びGriffin、H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje、G.、Academic Press、1987;及びSequence Analysis Primer、Gribskov、M.及びDevereux、J.編、M Stockton Press、New York、1991)。
【0109】
例えば、GCGソフトウェアパッケージのBestFitプログラムを用いて、ペアワイズアラインメント及び配列同一性及びホモロジーのレベルを計算し得る。Needleman及びWunschのアルゴリズム(これは、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている。)を用いて2つのアミノ酸配列間の%同一性を計算し得る(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))。このアルゴリズムは通常、Blossom62マトリクス又はPAM250マトリクスの何れか及び16、14、12、10、8、6又は4のギャップウエイト及び1、2、3、4、5又は6の長さウエイトを用いて、使用される。GAPプログラム(Devereux、J.ら、Nucleic Acids Res.12(1):387(1984))を用いて、NSWgapdna.CMPマトリクス及び40、50、60、70又は80のギャップウエイト及び1、2、3、4、5又は6の長さウエイトとともに、2つのヌクレオチド配列間の%同一性を計算し得る。
【0110】
このようにして、アミノ酸に対する1文字表記と、それに続く関連する非置換配列又はペプチドの位置の数と、それに続く置換アミノ酸に対する1以上の1文字表記により、アミノ酸配列又はペプチドのある位置の置換が示される。例えば、添付の配列リスト及び図面で示されるようなTEM−1β−ラクタマーゼのα断片の位置72のバリンに対するスレオニンの置換は、V74Tと呼ばれる。同様の表示は、本明細書中で提供される文脈及びさらなる詳細から明らかとなろう。
【0111】
インビトロでのレポーター機能を向上させるためのアミノ酸修飾
本発明のアッセイでの使用のためのレポーターポリペプチド断片は、通常、このようなアッセイでの使用に対するレポーターポリペプチドの適合性を向上させるアミノ酸配列変化又は修飾を含む。特に、好ましい実施形態において、少なくとも1つのレポーターポリペプチド断片は、再構成される活性レポーターポリペプチド複合体の、非修飾(例えば野生型)アミノ酸配列の阻害剤である物質による阻害に対する感受性を低下させる、そのアミノ酸配列における変化又はそのアミノ酸配列に対する修飾を含む。
【0112】
このような変異体は、通常、1以上の非保存的アミノ酸の、置換、欠失、挿入、逆転もしくは短縮又は重要な残基もしくは重要な領域における、置換、挿入、逆転もしくは欠失を含有する。機能が変化した変異体はまた、結果として機能が変化しないか又は顕著に変化しない類似アミノ酸の置換も含有し得る。ある実施形態において、変異体は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸変化を含有する。
【0113】
本発明は、1個のアミノ酸置換又はさらに本明細書中で例示されるように、均一インビトロFECアッセイでの使用に特に適応させられた組み合わせでの複数の置換を含む修飾β−ラクタマーゼペプチド配列を提供する。このような置換の具体例は、α断片のアミノ酸位置69での置換(好ましくはM69L又はM69I)(これによりβ−ラクタマーゼ阻害剤による阻害が低下する。)及びω断片のアミノ酸位置276での置換(好ましくはN276D)(これによってもまた、β−ラクタマーゼ阻害剤による阻害が低下する。)である。その他の例は、アミノ酸位置74、182、208、211及び230の1以上での置換(好ましくはV74T、M182T、I208T、M211Q及びF230Yの1以上)から選択される。
【0114】
さらなる例は、次の疎水性アミノ酸残基の、疎水性がより低いと考えられる何らかの残基への突然変異であり、アッセイを向上させ得る:V44、Y46、L49、L51、F66、V74、L81、F151、P183、V184、A187、L190、L194、L198、L199、L207、1208、W210、M211、A232、I247、A249、P257、1260、I261、I262、I263、Y264、I282、L286(特に太字及び下線付きの残基)。
【0115】
与えられるアミノ酸の付番は、配列番号1及び3で示される野生型TEM−1βラクタマーゼ配列を基準にしている。しかし、当然のことながら、等価位置で相同βラクタマーゼ配列にも修飾が適用され得る(配列アラインメントによる等価位置の決定に関する先行するセクションを参照。)。
【0116】
様々な技術を使用して、均一アッセイなどインビトロアッセイでの使用に対する特性が向上している修飾されたレポーター断片を得ることができる。例えば、部位特異的突然変異誘発により配列変化を導入し得る。適切な部位の選択は、例えば、x線結晶学又はNMRなどの技術により決定された構造情報を含む一次アミノ酸配列及び/又は二次/三次構造情報が手がかりとなり得る。例えば、阻害剤に対する感受性が低下している変異体の設計を支援するために、酵素の活性部位の3D構造を使用することができる(例えば、Jelsch、C、F.Lenfantら、1992、FEBS Lett 299(2):135−42に記載のようなTEM1の結晶構造参照)。
【0117】
無作為突然変異誘発又は定方向分子進化などの技術と、それに続く所望の特性を有する変異体の選択によっても、特性が向上している修飾されたレポーター断片を得ることができる(例えば非修飾タンパク質の阻害剤の存在下で酵素活性について変異体を試験することによって)。
【0118】
本発明において有用なさらなる修飾は、一般に20種類の天然に存在するアミノ酸と言われる20種類のアミノ酸以外のアミノ酸を含有する配列を含み得る。さらなる修飾には、以下に限定されないが、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン付加などのタンパク質へのアミノ酸のトランスファー−RNA介在付加及びユビキチン化が含まれる。
【0119】
従って、本発明のペプチド及びコンストラクトはまた、置換されたアミノ酸残基が遺伝子コードによりコードされるものではない誘導体又は類似体も包含し、これには置換基が含まれ、ここでは、成熟酵素ペプチドが、酵素ペプチドの半減期を延長させるための化合物などの別の化合物(例えばポリエチレングリコール)と融合されるか、又はリーダーもしくは分泌配列もしくは成熟酵素ペプチド又はプロタンパク質配列の精製のための配列などのさらなるアミノ酸が成熟酵素ペプチドに融合させられる。
【0120】
核酸分子
本発明は、本明細書中に記載のようなレポーターポリペプチド断片及びレポーター成分を含む、酵素ペプチド又は本発明のタンパク質をコードする単離核酸分子を提供する。特定の実施形態において、本発明は、図面及び添付の配列リストに記載のような本発明の酵素ペプチド又はタンパク質及び様々な修飾又はその断片をコードする単離核酸分子を提供する。このような核酸分子は、本発明のペプチド又はコンストラクトの1つをコードするヌクレオチド配列からなるか又は基本的にそれらからなるか又はそれらを含む。
【0121】
本明細書中で使用される場合、「単離(された)」核酸分子は、その核酸の天然の源に存在するその他の核酸から分離されているものである。さらに、転写産物又はcDNA分子など、「単離(された)」核酸分子は、実質的にその他の細胞性物質又は、組み換え技術により産生される場合は培地又は、化学合成される場合は化学的前駆体もしくはその他の化学物質不含である。しかし、本核酸分子は、その他のコード配列又は調節配列と融合され得、それでも単離されているとみなされ得る。
【0122】
例えば、ベクター中に含有される組み換えDNA分子は単離されているとみなす。単離DNA分子のさらなる例には、異種宿主細胞中で維持される組み換えDNA分子又は溶液中の精製(部分的又は実質的に)DNA分子が含まれる。単離RNA分子には、本発明の単離DNA分子ならびにその新規断片のインビボ又はインビトロRNA転写が含まれる。本発明による単離核酸分子にはさらに、合成により作製されるこのような分子が含まれる。
【0123】
従って、本発明は、提供されるヌクレオチド配列からなる核酸分子を提供する。ヌクレオチド配列がその核酸分子の完全ヌクレオチド配列である場合、核酸分子はヌクレオチド配列からなる。本発明は、基本的に提供されるヌクレオチド配列からなる核酸分子をさらに提供する。このようなヌクレオチド配列が最終核酸分子において数個のさらなる核酸残基のみとともに存在する場合、核酸分子は基本的にヌクレオチド配列からなる。
【0124】
本発明はさらに、提供されるヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。ヌクレオチド配列が核酸分子の最終ヌクレオチド配列の少なくとも一部である場合、核酸分子はヌクレオチド配列を含む。このような様式において、この核酸分子は、そのヌクレオチド配列のみであるか又はそれと天然に結合される核酸残基又は異種ヌクレオチド配列などのさらなる核酸残基を有し得る。このような核酸分子は、数個のさらなるヌクレオチドを有し得るか又は数百以上のさらなるヌクレオチドを含み得る。様々なタイプのこれらの核酸分子がどのようにして容易に作製又は単離され得るかについての簡単な説明は以下で与える。
【0125】
単離核酸分子には、以下に限定されないが、酵素ペプチドのみをコードする配列、成熟ペプチドをコードする配列及びさらなるコード配列、例えばリーダー又は分泌配列など(例えば、プレプロ又はプロタンパク質配列)、さらなるコード配列を伴うか又は伴わない成熟ペプチドをコードする配列、さらに、さらなる非コード配列、例えばイントロン及び非コード5’及び3’配列、例えば転写、mRNAプロセシング(スプライシング及びポリアデニル化シグナルを含む。)、リボソーム結合及びmRNAの安定性に寄与する転写されるが翻訳されない配列などが含まれる。さらに、例えば精製を促進するペプチドをコードするマーカー配列に本核酸分子を融合させ得る。
【0126】
単離核酸分子は、mRNAなどのRNAの形態又はクローニングにより得られるかもしくは化学合成技術により作製されるかもしくはそれらの組み合わせにより作製されるcDNA及びゲノムDNAを含むDNAの形態であり得る。核酸、特にDNAは、2本鎖又は1本鎖であり得る。1本鎖核酸は、コード鎖(センス鎖)又は非コード鎖(アンチセンス鎖)であり得る。
【0127】
遺伝子コードの縮重を斟酌すれば、配列は、それらが本発明のヌクレオチド配列と少なくとも約50%、通常は少なくとも約60%、より一般的には約70%、最も一般的には約80%、好ましくは少なくとも約90%及び最も好ましくは約95%のヌクレオチドにおいて同一である場合、基本的に同じであるとみなされる。示されるものと基本的に同じである配列もまた、標準的条件下でポリヌクレオチドの相補性を含有する核酸セグメントとハイブリッド形成することができる配列として機能上定義され得る。「非常に関連のある配列」という用語は、本明細書中で、比較されているポリヌクレオチド又はポリペプチドと最小又は50%の類似性がある配列を指すために使用される。
【0128】
当然、本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドの配列と相補的であるか又は基本的に相補的であるオリゴヌクレオチドも包含する。「相補的」である核酸配列は、標準的なワトソン−クリック相補性規則に従い塩基対形成することができるものである。本明細書中で使用される場合、「相補的配列」という用語は、上記で述べた同じヌクレオチド比較により評価され得るように、又は本明細書中に記載のものなどの比較的厳しい条件下でのポリヌクレオチドの核酸セグメントとのハイブリッド形成が可能であるとして定義されるように、実質的に相補的であるヌクレオチド配列を意味する。
【0129】
本発明の核酸の変異体は、当技術分野で周知の方法を用いて同定され得る。これらの変異体は、図面で示されるヌクレオチド配列又はこの配列の断片に対して通常は60−70%、70−80%、80−90%及びより一般的には少なくとも約90−95%以上の相同性があるペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。図面で示されるヌクレオチド配列又はこの配列の断片に対して、中程度から厳しい条件下でハイブリッド形成できるものとしてこのような核酸分子を容易に同定し得る。
【0130】
本明細書中で使用される場合、及び当業者にとって周知のように、核酸ハイブリッド形成に対する「高ストリンジェンシー条件」、「中程度のストリンジェンシー条件」及び「低いストリンジェンシー条件」は、「Current Protocols in Molecular Biology」の2.10.1−2.10.16及び6.3.1−6頁で説明されている(Ausubel、F.M.ら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley&Sons、(1998))。ハイブリッド形成のストリンジェンシーを決定する的確な条件は、イオン強度(例えば、0.2xSSC、0.1xSSC)、温度(例えば、室温、42℃、68℃)及びホルムアミドなどの脱安定化剤又はSDSなどの変性剤の濃度だけでなく、ヌクレオチド配列の長さ、塩基組成、ハイブリッド形成する配列間の%ミスマッチ及びその他の非同一配列内でのその配列のサブセットの出現頻度にも依存する。従って、高、中程度又は低ストリンジェンシー条件を実験的に決定することができる。ハイブリッド形成が起こらないストリンジェンシーレベルから、ハイブリッド形成が最初に観察されるレベルへとハイブリッド形成条件を変化させることにより、ある配列を試料中で最も類似した配列と(例えば選択的に)ハイブリッド形成させることができる条件を決定することができる。
【0131】
代表的な条件はまた、Krause、M.H.及びS.A.Aaronson、Methods in Enzymology、200:546−556 (1991)にも記載されている。Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley&Sons、(1998)(これは、中程度又は低ストリンジェンシー条件に対する洗浄条件の決定を記載する。)も参照のこと。洗浄は、通常はハイブリッドの相補性の最小レベルを決定するように条件が設定される段階である。一般に、相同のハイブリッド形成のみが起こる最低温度から開始して、最終洗浄温度を1℃低下させることにより(SSC濃度を一定に保持)、ハイブリッド形成する配列間でミスマッチする程度を最大で1%上昇させることができる。一般に、SSCの濃度を倍にすると、Tmが約17℃上昇する。これらのガイドラインを使用して、求められるミスマッチのレベルに依存して、高、中程度又は低ストリンジェンシーに対して実験的に洗浄温度を決定することができる。
【0132】
例えば、低ストリンジェンシー洗浄は、0.2xSSC/0.1%SDSを含有する溶液中での室温にて10分間の洗浄を含み得;中程度のストリンジェンシー洗浄は、0.2xSSC/0.1%SDSを含有する前もって加温した溶液(42℃)中での42℃にて15分間の洗浄を含み得;高ストリンジェンシー洗浄は、0.1xSSC/0.1%SDSを含有する前もって加温した(68℃)溶液中での68℃にて15分間の洗浄を含み得る。さらに、当技術分野で公知のように所望の結果を得るために洗浄を繰り返して又は連続して行い得る。当技術分野で公知のように、標的核酸分子と使用されるプライマー又はプローブとの間の同一性又は類似性の程度を同様に維持しながら、例として与えられるパラメーターの1以上を変化させることにより、同等の条件を決定することができる。
【0133】
ベクター/宿主細胞
本発明はまた、本明細書中に記載の核酸分子を含有するベクターも提供する。「ベクター」という用語は、ビヒクル、好ましくは核酸分子を指し、これは核酸分子を輸送し得る。ベクターが核酸分子である場合、核酸分子はベクター核酸に共有結合される。本発明のこの態様により、ベクターには、プラスミド、1本鎖もしくは2本鎖ファージ、1本鎖もしくは2本鎖RNAもしくはDNAウイルスベクター又は人工染色体、例えばBAC、PAC、YAC、OR MACなど、が含まれる。
【0134】
ベクターは、染色体外エレメントとして宿主細胞中に維持され、ここでベクター核酸分子のさらなるコピーを複製し産生し得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞ゲノムに一体化され得、宿主細胞が複製する場合、核酸分子のさらなるコピーを産生し得る。
【0135】
本発明は、核酸分子の、維持のためのベクター(クローニングベクター)又は発現のためのベクター(発現ベクター)を提供する。ベクターは、原核又は真核細胞又は両方(シャトルベクター)で機能し得る。
【0136】
発現ベクターは、核酸分子の転写が宿主細胞中で可能となるように、ベクターにおいて核酸分子に操作可能に連結されるシス作用調節領域を含有する。転写に影響を与えることができる別個の核酸分子とともに宿主細胞に核酸分子を導入し得る。このようにして、第二の核酸分子は、ベクターからの核酸分子の転写を可能とするために、シス調節制御領域と相互作用するトランス作用因子を提供し得る。あるいは、宿主細胞によりトランス作用因子が供給され得る。最後に、ベクターそのものからトランス作用因子が産生され得る。しかし、ある実施形態において、核酸分子の転写又は翻訳が細胞不含系で起こり得ることを理解されたい。
【0137】
本明細書中に記載の核酸分子が操作可能に連結され得る調節配列には、mRNA転写を支配するためのプロモーターが含まれる。これらには、以下に限定されないが、バクテリオファージXからの左プロモーター、E.コリからの、lac、TRP及びTACプロモーター、SV40からの初期及び後期プロモーター、CMV前初期プロモーター、アデノウイルス初期及び後期プロモーター及びレトロウイルスの長い末端反復が含まれる。
【0138】
転写を促進する制御領域に加えて、発現ベクターにはまた、リプレッサー結合部位及びエンハンサーなど、転写を調節する領域も含まれ得る。例としては、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー、ポリオーマエンハンサー、アデノウイルスエンハンサー及びレトロウイルスLTRエンハンサーが挙げられる。
【0139】
転写開始及び制御のための部位を含有することに加えて、発現ベクターはまた、転写終結に必要な配列及び、転写された領域において、翻訳のためのリボソーム結合部位も含有し得る。発現のためのその他の調節制御エレメントには、開始及び終結コドンならびにポリアデニル化シグナルが含まれる。当業者は、発現ベクターにおいて有用である多くの調節配列を知っている。このような調節配列は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.に記載されている。
【0140】
核酸分子を発現させるために、様々な発現ベクターを使用し得る。このようなベクターには、染色体、エピソーム及びウイル由来ベクター、例えば、細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、酵母エピソーム由来、酵母染色体エレメント由来(酵母人工染色体を含む。)、ウイルス由来(バキュロウイルス、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスなど)などのベクターが含まれる。ベクターはまた、プラスミド及びバクテリオファージ遺伝要素由来のものなどのこれらの源の組み合わせ由来でもあり得る(例えばコスミド及びファージミド)。原核及び真核宿主に対する適切なクローニング及び発現ベクターは、Sambrookら、前記箇所、に記載されている。
【0141】
調節配列は、1以上の宿主細胞において構成的な発現を与え得る(即ち組織特異的)か又は、1以上の細胞型において、温度、栄養素添加物又は外生要因(ホルモン又はその他のリガンドなど)などによる誘導性発現を与え得る。原核及び真核宿主において構成的で誘導性である発現を与える様々なベクターは、当業者にとって周知である。
【0142】
周知の方法によって核酸分子をベクター核酸に挿入し得る。一般に、1以上の制限酵素を用いてDNA配列及び発現ベクターを切断し、次いで断片を一緒に連結することにより、最終的に発現されるDNA配列を発現ベクターに連結する。
【0143】
制限酵素消化及びライゲーションのための手順は当業者にとって周知である。
【0144】
周知の技術を用いて増殖又は発現のために、適切な核酸分子を含有するベクターを適切な宿主細胞導入し得る。細菌細胞には、以下に限定されないが、E.コリ、ストレプトミセス及びSalmonella typhimurium(ネズミチフス菌)が含まれる。真核細胞には、以下に限定されないが、酵母、昆虫細胞(ショウジョウバエなど)、動物細胞(COS及びCHO細胞など)及び植物細胞が含まれる。
【0145】
本明細書中に記載のように、特に完全レポーター断片ペアメンバーコンストラクトを発現する場合、融合タンパク質として本発明のペプチドを発現することが望まれ得る。従って、本発明は、このようなペプチドの産生を可能にするベクターを提供する。これらのベクターは、組み換えタンパク質の発現を増加させ、組み換えタンパク質の溶解性を向上させ、例えばアフィニティー精製に対するリガンドとして作用することによりタンパク質の精製を促進し得る。所望のペプチドが最終的に融合部分から分離され得るように融合部分の連結点にタンパク質分解性切断部位を導入し得る。タンパク質分解酵素には、以下に限定されないが、第Xa因子、トロンビン及びエンテロ酵素(enteroenzyme)が含まれる。典型的な融合発現ベクターには、標的組み換えタンパク質にそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質又はプロテインAを融合する、pGEX(Smithら、Gene 67:31−40(1988))、pMAL(New England Biolabs、Beverly、Mass.)及びpRIT5(Pharmacia、Piscataway、NJ.)が含まれる。適切な誘導性の非融合E.コリ発現ベクターの例には、pTrc(Amannら、Gene 69:301−315(1988))及びpET 11d(Studierら、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185:60−89(1990))が含まれる。
【0146】
タンパク質分解により組み換えタンパク質を切断する能力を宿主細胞が損なう遺伝的背景を与えることによって、宿主細菌において組み換えタンパク質発現を最大限にし得る(Gottesman、S.、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif.(1990)119−128)。あるいは、特異的な宿主細胞、例えばE.コリに対して選択的なコドンをもたらすために、関心のある核酸分子の配列を変化させ得る(Wadaら、Nucleic Acids Res.20:2111−2118(1992))。
【0147】
酵母において操作可能である発現ベクターによって、核酸分子を発現させることもできる。酵母、例えば、S.セレビシエにおける発現のためのベクターの例には、pYepSec1(Baldariら、EMBO J.6:229−234(1987))、pMFa(Kujanら、Cell 30:933−943(1982))、pJRY88(Schultzら、Gene 54:113−123(1987))及びpYES2(Invitrogen Corporation、San Diego、Calif.)が含まれる。
【0148】
例えばバキュロウイルス発現ベクターを用いて、昆虫細胞において核酸分子を発現させることもできる。培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)でのタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smithら、Mol.Cell Biol.3:2156−2165(1983))及びpVLシリーズ(Lucklowら、Virology 170:31−39(1989))が含まれる。
【0149】
本発明のある実施形態において、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞において本明細書中に記載の核酸分子を発現させる。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8(Seed、B.Nature 329:840(1987))及びpMT2PC(Kaufmanら、EMBO J.6:187−195(1987))が含まれる。
【0150】
核酸分子を発現させるために有用である当業者にとって利用可能な周知のベクターのほんの一例として、本明細書中で列挙される発現ベクターが与えられる。当業者は、本明細書中に記載の核酸分子の維持増殖又は発現に適切なその他のベクターを知っている。これらは、例えばSambrookら、前記箇所、で見出される。
【0151】
本発明はまた、本明細書中に記載のヌクレオチド配列がベクターに逆方向でクローニングされるが、アンチセンスRNAの転写を可能にする調節配列へ操作可能に連結されるベクターも包含する。このようにして、コード及び非コード領域の両方を含め、本明細書中に記載の核酸分子配列の全て又は一部に対して、アンチセンス転写産物が産生され得る。このアンチセンスRNAの発現は、センスRNAの発現と関連する上述のパラメータのそれぞれに影響を受ける(調節配列、構成的又は誘導性発現、組織特異性発現)。
【0152】
本発明は、本明細書中に記載のベクターを含有する組み換え宿主細胞にも関する。従って、宿主細胞には、原核細胞、下等な真核細胞(酵母など)、その他の真核細胞(昆虫細胞など)及び高等真核細胞(哺乳動物細胞など)が含まれる。宿主細胞には、以下に限定されないが、カイコ幼虫、CHO細胞、E.コリ及び酵母が含まれ得る。
【0153】
当業者にとって容易に利用可能な技術により細胞に本明細書中に記載のベクターコンストラクトを導入することによって、組み換え宿主細胞を調製する。これらには、以下に限定されないが、リン酸カルシウムトランスフェクション(遺伝子移入)、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、陽イオン脂質介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、リポフェクション及びその他の技術(Sambrookら、前記箇所、で見出されるものなど)が含まれる。
【0154】
宿主細胞は、複数のベクターを含有し得る。このようにして、同じ細胞の様々なベクターにおいて様々なヌクレオチド配列を導入し得る。同様に、単独で又はその核酸分子と関連のないその他の核酸分子(発現ベクターに対するトランス作用因子を与えるものなど)とともに、の何れかで、核酸分子を導入し得る。複数のベクターを細胞に導入する場合、ベクターを独立に導入するか、同時に導入するか又は核酸分子ベクターに連結し得る。
【0155】
バクテリオファージ及びウイルスベクターの場合、感染及び形質導入のための標準的手順によって、パッケージされるか又はカプセル封入されたウイルスとして細胞にこれらを導入し得る。ウイルスベクターは、複製可能であるか又は複製欠損性であり得る。ウイルス複製が欠損している場合、欠損を補完する機能を与える宿主細胞で複製が起こる。
【0156】
ベクターは、一般に、組み換えベクターコンストラクトを含有する細胞のサブ集団の選択を可能にする選択可能マーカーを含む。このマーカーは、本明細書中に記載の核酸分子を含有する同じベクター中に含有され得るか又は別個のベクター上にあり得る。マーカーには、原核宿主細胞に対するテトラサイクリン又はアンピシリン耐性遺伝子及び真核宿主細胞に対するジヒドロ葉酸還元酵素又はネオマイシン耐性が含まれる。しかし、表現型形質に対する選択を可能にする何らかのマーカーが有効である。
【0157】
適切な調節配列の制御下で、細菌、酵母、哺乳動物細胞及びその他の細胞で成熟タンパク質が産生され得る一方、本明細書中に記載のDNAコンストラクト由来のRNAを用いてこれらのタンパク質を産生させるために細胞不含転写及び翻訳系も使用し得る。
【0158】
ペプチドの分泌が所望され、酵素などの複数膜貫通ドメイン含有タンパク質によって達成することが困難である場合、適切な分泌シグナルをベクターに組み込む。シグナル配列は、これらのペプチドにとって内在性であるかこれらのペプチドにとって異種性であり得る。
【0159】
ペプチドが培地に分泌されない場合、凍結融解、超音波処理、機械的破壊、溶解剤の使用などを含む標準的破壊手順によって宿主細胞からタンパク質を単離し得る。次に、硫酸アンモニウム沈殿、酸抽出、陰イオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィーを含む周知の精製法により、ペプチドを回収し、精製し得る。
【0160】
ある実施形態において、E.コリなどの細菌宿主細胞においてポリペプチドを発現させ、タンパク質を可溶化するためにグアニジン塩酸塩(GuHCl)又は尿素などのカオトロピック剤を用いて宿主細胞に存在する封入体からタンパク質を抽出する。次に、ポリペプチドにおいて存在する融合タグ(例えば6xHisタグ)を介してクロマトグラフィーマトリクスなどの固相にポリペプチドを結合させる。夾雑物を除去するために固相を洗浄したら、カオトロピック剤の濃度勾配を適用することにより、固相に結合したままポリペプチドを好ましくは再び折り畳ませる(試薬の濃度が低下するにれてポリペプチドが再び折り畳まれる。)。発明者らは、この方法を用いることで、結果として均一アッセイにおいてレポーター断片が優れたインビトロ活性を有するようになることを見出した。
【0161】
本明細書中に記載のペプチドの組み換え産生における宿主細胞に依存して、ペプチドが様々なグリコシル化パターンを有し得、細胞によっては、細菌で産生される場合グリコシル化されない可能性があることも理解されたい。さらに、ペプチドは、宿主が介在するプロセスの結果、ある場合においては、最初の修飾メチオニンを含み得る。
【0162】
本明細書中に記載のペプチドを発現する組み換え宿主細胞には様々な用途がある。最初に、この細胞は、酵素タンパク質又は断片の所望の量を産生させるためにさらに精製され得る酵素タンパク質又はペプチドを産生させるのに有用である。このようにして、発現ベクターを含有する宿主細胞はペプチド産生にとって有用である。
【0163】
宿主細胞はまた、上述のものならびに当技術分野で公知のその他の形式など、酵素タンパク質又は酵素タンパク質断片を含む細胞を利用したアッセイを遂行するのにも有用である。このようにして、ネイティブ酵素タンパク質を発現する組み換え宿主細胞は、酵素タンパク質機能を刺激又は阻害する化合物をアッセイするために有用である。
【0164】
宿主細胞はまた、これらの機能が影響を受けている酵素タンパク質突然変異を同定するためにも有用である。この突然変異が天然のものであり、病原性を生じさせる場合、突然変異を含有する宿主細胞は、ネイティブ酵素タンパク質におけるそれらの影響により示され得ない突然変異酵素タンパク質における所望の効果(例えば、刺激又は阻害機能)を有する化合物をアッセイするために有用である。
【0165】
均一アッセイ
関心のある標的被分析物質の存在を調べるために、インビトロアッセイにおいて、本発明の、レポーター断片、ポリペプチド及びレポーター成分を使用することができる。関心のある被分析物質には、環境又は生体試料中に存在するものが含まれる。生体試料には、全血、血清、唾液及び尿が含まれる。「インビトロ」という用語は、この背景中で、細胞不含アッセイなど、生きている細胞の外でアッセイが行われることを意味する。
【0166】
本発明のアッセイ法は、通常、レポーター成分と試料を混合することと、関心のある被分析物質へのレポーター成分の結合が介在するレポーター断片/レポーター成分の会合の結果として得られる検出可能なシグナルの有無(又は程度)を調べることと、を含む。
【0167】
検出可能なシグナルは、例えば、比色シグナル、蛍光シグナル又は化学発光シグナルであり得る。例として、β−ラクタマーゼはニトロセフィンを切断して、黄色から赤への色の変化を生じさせ得る。ルシフェラーゼは、基質ルシフェリンにおいて作用して、化学発光シグナルを生じさせる。
【0168】
インビトロアッセイに必要とされるレポーターポリペプチドの量は、通常、インビボで見出されるものより多い。例えば、反応混合液中のレポートポリペプチドの濃度は、少なくとも1pM、例えば少なくとも10又は100pMなど、又は1nMであり得る。従って、レポーター複合体のメンバー間の自発的会合の可能性を低下させる反応混合液中に試薬を含むことが望ましいものであり得る。このような試薬には、カオトロピック剤/タンパク質変性剤、例えば尿素など(例えば200から700mMの濃度、約500mMなど)、が含まれる。低濃度の尿素で酵素断片が部分的に変性し、それにより互いにそれらの天然の親和性(自然発生的相補性)が低下し、一方で、被分析物質により近接近へと方向付けされた場合(強制的相補性)、相互作用及び立体配座の変化が可能なままであることが、実施例1で特定された。
【0169】
バックグラウンドの低下/ノイズに対するシグナル比の増加を促進するために含まれることが望ましいものであり得るその他の試薬は、(i)エタノールなどの溶媒(好ましくは2%から10%v/v、例えば3%から8%v/vなど);イソプロパノール(好ましくは2%から10%v/v、例えば3%から8%v/vなど);メタノール(好ましくは5%から10%v/v);DMSO(好ましくは10%から20%v/v)又はアセトニトリル(好ましくは2%から10%v/v、例えば3%から8%v/vなど);(ii)BSA;(iii)Tween−20などの界面活性剤(例えば0.1%から0.25%v/v又はTritonX100(好ましくは0.2%超、例えば0.2%から0.4%v/vなど);(iv)塩、例えばNaCl、K2SO4又は(NH4)2SO4;及び/又は(v)イミダゾール(好ましくは5から20mM、例えば5から15mMなど)である。
【0170】
本発明のレポーターポリペプチド及びレポーター成分は、インビトロ均一アッセイでの使用に限定されない。これらはまた、少なくとも1つのレポーター断片又はレポーター成分が固相に固定化されるインビトロ不均一アッセイでも使用され得る。これらは、適切な条件下で細胞においてレポーターポリペプチドの発現を支配することができる本発明のヌクレオチドコンストラクトで細胞に対して形質転換/遺伝子移入を行うことにより細胞に一般には導入されている成分とともにインビボアッセイでも使用され得る。
【0171】
キット
本発明はまた、キットとしてもレポーター断片及び/又はレポーター成分を提供する。試料中の被分析物質の存在及び/又は量を調べるためのインビトロアッセイなどFECアッセイに対してこのようなキットを使用し得る。キットは、本発明の1以上のレポーターポリペプチド断片及び/又はレポーター成分を含む。このキットは、通常、関心のある被分析物質の存在下で検出可能なシグナルを生成させることができる活性ポリペプチド複合体を一緒に形成することができるペアなど、本発明の複数のポリペプチド断片及び/又はレポーター成分を含む。
【0172】
キットはまた使用説明書も含み得る。その他の任意の成分には、緩衝液、標準物質、検出試薬などが含まれる。
【0173】
実施例
次の実施例は、本発明の好ましい実施形態を明らかにするために含まれる。当業者にとって当然のことながら、続く実施例で開示される技術は、本発明の実施においてよく機能することが発明者により発見された技術を表し、従って、その実施に対して好ましい様式を構成すると考えられ得る。しかし、当業者は、本発明の開示に照らして、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示される具体的な実施形態において多くの変更がなされ得、依然として同様又は類似の結果が得られ得ることを認めよう。
【実施例1】
【0174】
2価陽イオンに対する均一インビトロFECアッセイ
本明細書中で概説される手順は、アミノ酸196/197で全長親酵素を分割し、次いで切断点末端でフレキシブルリンカー(G4S)及びヒスチジンタグ(6xH)を導入することにより生成されるTEM1断片の合成及び特性決定を述べる。疎水性相互作用及び凝集性を低下させ、タンパク質安定性を向上させるために、次のα断片(PB11)及びω断片(PB13)を使用して点突然変異を導入した。断片のアミノ酸配列に対するこれらの変化の結果、αV74TM182T断片(PB11.2)及びωM211Q断片(PB13:1)が得られた。
【0175】
フレキシブルリンカー(G4S)及びインタラクタードメイン(ポリヒスチジンタグ(6xH))を含むレポーター断片ペアメンバーを構築するために、これらのペプチド及びそれらをコードする核酸を使用した。フレキシブルリンカー(G4S)、ポリヒスチジンタグ(6xHis)及び点突然変異の位置を示すDNA配列データを提供する。これらの断片ペアメンバーを単離し、精製し、被分析物質の存在に関する操作可能な均一インビトロFECアッセイを構成するために使用した。
【0176】
α及びω断片をコードするTEM1遺伝子のPCR
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてpUC18からTEM1βラクタマーゼをコードするbla遺伝子を増幅した。製造者の推奨に従い、Platinum pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen cat.11708−021)を用いて全ての増幅を行った。SigmaGenosys(Australia)からカスタムメードのオリゴヌクレオチドプライマーを購入した。フォワードプライマーFEC16及びリバースプライマーFEC27を用いて、C末端G4Sリンカー及びヒスチジンタグを有するTEM1のα断片を増幅した。
【0177】
フォワードプライマーFEC24及びリバースプライマーFEC29(表1参照−PCR、配列決定及び突然変異誘発のために使用されるプライマーの説明のためのプライマー配列)を用いて、N−末端ヒスチジンタグ及びG4Sリンカーを有するTEM1のω断片を増幅した。pET−26b(+)へのPCR産物のクローニングのために、フォワードプライマーの5’末端に目的ベクターNdeI制限部位を組み込み、XhoI制限部位をリバースプライマーの5’末端に組み込んだ。
【0178】
1%TAEアガロースゲル上で各PCR反応液4μLアリコートを分析した(100Vで30分間)。
【0179】
【表1】
【0180】
PCR産物の精製及びE.コリ宿主細胞へのクローニング
製造者の説明書に従い、QIAquick PCR精製キット(Qiagen Ccat.28104)を用いて反応チューブからPCR産物を直接精製した。
【0181】
pET−26b(+)ベクター(Novagen cat.69862−3)、E.コリでの組み換えタンパク質の誘導性発現を可能にする原核発現ベクターのNdeI/XhoI部位にPCR産物をクローニングした。製造者の説明書に従い、連結したプラスミドをBL21−Gold(DE3)コンピーテント細胞(Stratagene cat.230132)へと形質転換した。既に述べたようなNdeI/XhoIでの制限消化及びゲル電気泳動による消化産物の分析により、pET−26b(+)ベクター内のクローニング挿入配列の存在を確認するために各形質転換体からの5から10個のコロニーをスクリーニングした。突然変異が起こっていることを確認するために、DNA配列決定(プライマーFEC10及びFEC11−表1を用いて)によっても特定のクローンをチェックした。
【0182】
部位特異的突然変異誘発
製造者の説明書(Rev#124001e)に記載のように、QuickChange II XL−部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene cat.200522)を用いて、α断片(PB11)及びω断片(PB13)の部位特異的突然変異誘発を行った。E.コリのコドン使用頻度を考慮に入れて(www.kazUSA.or.jp/codonでアクセス可能)、ベクターNTI9.0.0(2003年9月2日)を用いて、配列操作及びプライマー設計を行った。プライマー(使用されるフォワード及びリバースプライマーの詳細な説明については表1を参照。)は、SigmaGenosys(Australia)により、合成され、HPLCを使用して精製された。
【0183】
簡潔に述べると、次のようなPCR増幅突然変異誘発反応において、鋳型として、既に述べたように単離し定量したα断片及びω断片プラスミドDNAを使用した;125ngフォワードプライマー(FEC47又はFEC49)、125ngリバースプライマー(FEC48又はFEC50)、1x反応緩衝液、1μL dNTP混合液、3μL QuickSolution及び超純水に、25ng鋳型DNAを50μLの最終体積まで添加した。次に1μL PfuUltra HF DNAポリメラーゼ(2.5U/μL)を添加し、Mastercycler ep勾配サーマルサイクラー(Eppendorf)で温度サイクルを行った。V74T及びM211Q点突然変異の導入のために、次のようにPCRサイクルを行った;95℃x1分で変性及び、95℃x50秒(変性)、60℃x50秒(アニーリング)及び68℃x6分(伸長)を18サイクル、サイクル完了時に68℃x6分の最終伸長段階。M182T突然変異の導入のためのPCRサイクル条件は少し異なり、鋳型としてαV74T断片を用い、それぞれFEC55及びFEC56フォワード及びリバースプライマーを用いて、65℃x50秒でアニーリングを行った。続いて、非突然変異親DNAを消化するために、PCR増幅された突然変異誘発反応物を1μL DpnI制限酵素(10U/μL)(各反応に直接添加)で消化し、37℃で1時間温置した。次に、QuickChange II XL−部位特異的突然変異誘発キットの製造者の説明書(Rev#124001e)で概説されるようにXL10−Gold Ultraコンピーテント細胞を形質転換するために、各試料反応液からのDpnI処理DNA 2μLを使用した。既に概説されているように、点突然変異の正しい挿入を確認するために、得られたプラスミドDNAの配列決定を行ってE.コリ形質転換体をスクリーニングした。次に、タンパク質発現及び精製に対して述べられているように、BL21−Gold(DE3)コンピーテント細胞を形質転換するために、所望の突然変異を組み込んでいるプラスミドDNAを使用した。
【0184】
これらの点突然変異の導入の結果、断片の溶解性が向上し、最終産物の凝集性が低下し、これらは、均一インビトロFECアッセイならびに製造プロセスでの使用に非常に有利である(例えば表2)。
【0185】
【表2】
【0186】
α及びω断片の精製及び特性決定
下記で述べるように、触媒作用の速度及びNiとの強制的酵素相補性におけるノイズに対するシグナル比を直接比較するために、同様にして、全ての4つの酵素断片[α断片(PB11)、ω断片(PB13)、αV74TM182T断片(PB11.2)及びωM211Q断片(PB13.1)]を発現させ、精製し、特性決定を行った。
【0187】
α断片(PB11)及びω断片(PB13)の発現
次のようにBL21−Gold(DE3)での断片の発現を行った;カナマイシン50μg/mLを添加したLBブロス10mLに関心のある1個のコロニーを接種し、250rpmで振盪しながら液体培地を一晩(〜14時間)37℃で温置した。次に、2Lコニカルフラスコ中のカナマイシン50μg/mLを添加した250mL Overnight Express Instant TB培地(Novagen cat.71491−4)に接種するために、この培養物を使用した。250rpmで一晩振盪しながら、37℃で24時間、この培養物を温置した。ここで使用したOvernight Express Instant TB培地により、高細菌密度でのタンパク質発現の自己誘導が可能となる(Novagen User Protocol TB383 Rev.F0505を参照)。細菌培養物が静止期に到達すると最適タンパク質発現が起こるが、これは、600nmで行った光学密度読み取りに基づき、24時間以内に起こることが分かった。続いて、3,220xgで30分間(4℃)、細胞を沈殿させ、上清を廃棄した。タンパク質精製まで−20℃で細胞ペレットを保存した。
【0188】
変性条件下での組み換えタンパク質の抽出
[6M GuHCl 100mM NaH2PO4 10mM Tris pH8]25mL中で、一晩誘導した250mLからのペレットを溶解し、続いて100rpmで振盪しながら、4℃で1時間温置した。溶解を促進するために、Branson250超音波ホモジナイザー(sonifier)を用いて、氷浴中で30秒オン/30秒オフ5サイクルで懸濁液を超音波処理した。超音波処理後、12,000xgで30分間(4℃)溶解液を遠心し、次いで細胞残屑を除去するために0.2μmフィルターに通した。
【0189】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
DuoFlowクロマトグラフィーシステム(BioRad cat.760−0037)の制御下で、1mL HisTrap HPカラム(Amersham cat.17−5247−01)を用いて、組み換えHisタグ付加タンパク質を精製した。1mL/分の流速で、8M尿素、100mM NaH2PO4、10mM Tris pH7.5 10カラム体積(CV)によりHisTrapカラムを平衡化した。次に、0.5mL/分でモデルEP−1 Econopump(BioRad cat.731−8142)を使用して、透明化したE.コリ溶解液をカラムに載せた。8M 尿素 100mM NaH2PO4 10mM Tris pH6.3 10CVでカラムを洗浄した。1mL/分の、8M 尿素 100mM NaH2PO4 10mM Tris 200mM L−アルギニン 100μM GSSG pH7.5から100mM NaH2PO4 10mM Tris 200mM L−アルギニン 100μM GSSG pH7.5 60CV勾配で、結合タンパク質を再び折り畳ませた。250mMイミダゾール 50mM NaH2PO4 150mM NaCl pH8 10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、PAGE、ウエスタンブロッティング、ゲルろ過及び質量分析により分析した。
【0190】
変性断片のカラム上再折り畳みがβ−ラクタマーゼのα及びω断片(野生型及び突然変異があるもの)の両方の産生において非常に効果的であることが分かった。この方法は、ネイティブ物質の精製法を凌ぐ利点があり、大規模の製造プロセスに適切である。
【0191】
ゲルろ過
場合によって、酵素断片のアフィニティー精製後、DuoFlowクロマトグラフィーシステム(BioRad Cat.760−0037)の制御下で、Superdex200GLカラム(Amersham cat.17−5175−01)を用いて、プール溶出物をサイズ排除クロマトグラフィーに供した。精製酵素断片のさらなる精製(夾雑タンパク質の除去)又はカラム上での再折り畳み後の凝集酵素断片に対する単量体の割合の決定の何れかのために、ゲルろ過を使用した。プロトコールは次のとおりである:0.6mL/分での50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7 2CVによる平衡化;0.6mL/分での試料250−500μLの注入;及び0.6mL/分での50mM NaH2PO4 150mM NaCl、pH7 1CVの定組成フロー。典型的な結果については図7参照。
【0192】
質量分析
Insutitute for Molecular Bioscience、University of Queensland、AustraliaのHPLC/TOF質量分析サービスを利用してゲルろ過精製されたα及びω断片の分子量を調べた。個々の実験データを回収し、理論的分子量値との比較のために分析した。
【0193】
酵素断片相補性
動態研究のために6−ヒスチジン−タグを含有する精製α及びω断片を使用して、ノイズ(Ni2+なしでの自発的酵素相補性)に対するシグナル(Ni2+強制的酵素相補性)比を計算した。強制的酵素相補性のノイズに対するシグナル比を調べ、評価するために、様々な基質、緩衝添加物及び阻害剤を使用した。本発明のα及びω断片の等モル量を用いたある実施形態における代表的な結果は、図8及び図9で与える。
【0194】
ニトロセフィン活性アッセイ
ニトロセフィン(Merck、Australia)は、β−ラクタム環の加水分解後黄色から赤(OD492)に色を変化させるTEM−1β−ラクタマーゼの比色基質である。ゆえに、酵素断片相補性の酵素活性を評価するためにニトロセフィンアッセイを行った。96ウェル平底細胞培養プレート(TPP、Australia)を用いてアッセイを行った。50mM NaH2PO4;150mM NaCl;5%DMSO(Sigma、Australia)pH7中で200又は600μMのニトロセフィン保存溶液を調製した。各200μLの反応液に対して、ニトロセフィン保存液100μLを50mM NaH2PO4 150mM NaCl pH7中の酵素断片100μL(Ni2+あり又はなし)に添加した。必要とされる最終的シグナルに依存して、使用されたウェルあたりの酵素断片の濃度は40nMから200nMの範囲であり、Ni2+被分析物質の最終濃度は100μM又は200μMであった。ピペッティングによりアッセイ成分をよく混合し、室温で5分間温置した。SpectraMax190を用いてニトロセフィン加水分解の動態を492nmで読み取った(Molecular Devices、USA)。
【0195】
様々な緩衝添加物の影響
強制α及びω断片相補性のノイズに対するシグナル比を向上させるために、溶媒、BSA、界面活性剤、タンパク質変性剤及び塩などの様々な緩衝添加物の影響を調べた。停止溶液タゾバクタムも調べた。本明細書中に記載のようにアッセイを行った。
【0196】
溶媒
低濃度の溶媒は酵素断片を部分的に変性させ得るので、少量のエタノール、イソプロパノール、メタノール、DMSO及びアセトニトリルが、天然の断片相補性を低下させ、ノイズに対するシグナル比を上昇させるか否かを調べた。試験した各溶媒の最終濃度は、15%、7.5%、3.75%、1.875%、0.9875%及び0%であった。492nmで30分間、相補性アッセイの動態を読み取った。次に、SoftmaxProからの最大速度(mOD分−1)に照らしてシグナル/ノイズ比を計算した。最適な、ノイズに対するシグナル比が、それぞれ3.75%、3.75%、7.5%、15%及び3.75%の濃度の、エタノール、イソプロパノール、メタノール、DMSO及びアセトニトリルで達成されることが分かった。例えば、最終濃度でのエタノールの効果は、15%、7.5%、3.75%、1.875%及び0%の範囲であり、シグナル/ノイズ比はそれぞれ7.1、8.4、8.5、5.4及び3.7であった。
【0197】
溶媒のある範囲の濃度で酵素断片が部分的に変性し、それにより互いに対するその天然の親和性(自発的相補性)が低下する一方で、Ni2+被分析物質(強制的相補性)により近接近に向かわせられた場合に相互作用及び立体配座の変化が可能なままであることが分かった。
【0198】
BSA
BSA(Pierce、USA)はタンパク質安定化剤として広く使用されており;BSAを使用することで、2つの断片の密接な接触を妨害することにより天然の断片の相補性の阻止が促進され、シグナル/ノイズ比が上昇し得る。最終濃度範囲(mg/mL)は、0.6、0.3、0.15、0.075、0.0375、0.01875及び0であった。読み取りデータ回収時間は30分であった。次に、SoftmaxProからの最大速度(mOD/分)により、シグナル/ノイズ比を計算した。BSAを添加することにより、シグナル及びバックグラウンドの両方が上昇したので、最終的シグナル/ノイズ比は顕著には変化しなかったが、シグナル出力はほぼ2倍増幅された。BSAが、シグナル及びバックグラウンドの両方を増幅するために、アッセイ溶液中で込み合い効果を与えることが分かった。
【0199】
界面活性剤
界面活性剤は、タンパク質−タンパク質相互作用又はELISAバックグラウンドを減少させるために広く使用され;少量を使用することにより、2つの断片を離しておくことによって天然の断片相補性の阻止が促進され得、シグナル/ノイズ比が上昇する。Tween−20及びTriton−X100を使用し、最終濃度範囲は、0.3%、0.15%、0.075%、0.0375%、0.01875%及び0%であった。読み取りデータ回収時間は30分であった。次に、SoftmaxProからの最大速度(mOD分−1)に照らして、シグナル/ノイズ比を計算した。
【0200】
それぞれ0.15%及び0.3%の濃度のTween−20及びTriton−X100で最適な、ノイズに対するシグナル比が達成されることが分かった。例えば、0.3%、0.15%、0.075%、0.0375%、0.01875%及び0%からの最終濃度範囲で試験したTX−100の効果において、シグナル/ノイズ比は、それぞれ14.1、6.9、3.8、2.7、1.8及び3.9であった。界面活性剤濃度が上昇すると活性が低下することに注意すること。
【0201】
界面活性剤のある範囲の濃度で酵素断片が部分的に変性し、それにより互いに対するその天然の親和性(自発的相補性)が低下する一方で、Ni2+被分析物質(強制的相補性)により近接近に向かわせられた場合に相互作用及び立体配座の変化が可能なままであることが分かった。
【0202】
変性剤
酵素断片相補性におけるタンパク質変性剤の効果を試験するために、尿素又はグアニジン塩酸塩の存在下で、断片、基質及びNiSO4濃度のマトリクスを使用してニトロセフィン活性アッセイを行った。予備アッセイにおいて、2Mから62.5mMの範囲の尿素濃度及び1Mから31.25mMの範囲のGuHCl濃度で40nM断片の相補性を試験した。アッセイを次のように準備した:尿素[2M尿素、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7から62.5mM 尿素、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7]又はグアニジン塩酸塩[1M GuHCl、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7から31.25mM GuHCl、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7]の連続2倍希釈液に各断片40nMを添加した(2回ずつ試験)。第一セットのウェルに100μMの最終濃度までNiSO4を添加し、一方で第二セットのウェルにはNiSO4は添加しなかった。プレートを5分間温置し、SpectroMaxリーダーを用いて492nmで動態の読み取りを行った。最適な、ノイズに対するシグナル比が0.5Mの濃度の尿素で達成されることが分かり、低バックグラウンドで可能な最大のシグナルを達成するために、続く実験において断片の量を200nMまで増加させ、NiSO4及び基質濃度をそれぞれ200μM及び300μMまで増加させた。
【0203】
低濃度の尿素で酵素断片が部分的に変性し、それにより互いに対するその天然の親和性(自発的相補性)が低下する一方で、Ni2+被分析物質(強制的相補性)により近接近に向かわせられた場合に相互作用及び立体配座の変化が可能なままであることが分かった。
【0204】
塩
静電効果は、酵素触媒作用及びタンパク質−タンパク質相互作用の両方において重要な機能を有し、様々な塩を使用してこれらの効果が調節されるか又は変化し得る。強制的酵素相補性におけるその影響について3種類の異なる塩:NaCl、K2SO4及び(NH4)2SO4を試験した。アッセイを次のように準備した:NaCl[2M NaCl、50mM NaH2PO4、pH7から62.5mM NaCl、50mM NaH2PO4、pH7]、K2SO4[0.4M K2SO4、50mM NaH2PO4、pH7から25mM K2SO4、50mM NaH2PO4、pH7]又は(NH4)2SO4[0.4M(NH4)2SO4、50mM NaH2PO4、pH7から50mM (NH4)2SO4、50mM NaH2PO4、pH7]の連続2倍希釈液に各断片40nMを添加した(2回ずつ試験)。第一セットのウェルにNiSO4 100μMを添加し、一方で第二セットにはNiSO4は添加しなかった。プレートを5分間温置し、SpectroMax190リーダーを用いて492nmで動態の読み取りを行った。
【0205】
FECアッセイに塩を添加することにより、シグナル及びバックグラウンドの両方が上昇したので、最終的シグナル/ノイズ比は顕著には変化しなかったが、シグナル出力が増幅された。
【0206】
イミダゾール
ヒスチジンタグ付加タンパク質精製(www.qiagen.com)において、洗浄緩衝液として少量(20mM)のイミダゾール(ICN、Australia)を使用したが、イミダゾールは、断片表面のヒスチジン相互作用を妨害することによって天然の断片相補性を妨げ、シグナル/ノイズ比の上昇を促進し得る。イミダゾール最終濃度の範囲は、100mM、50mM、25mM、12.5mM及び0mMであった。読み取りデータ回収時間は30分であった。次に、SoftmaxProからの最大速度(mOD分−1)に照らして、シグナル/ノイズ比を計算した。
【0207】
それぞれ12.5mMの濃度のイミダゾールで最適な、ノイズに対するシグナル比が達成されることが分かった。例えば、100mM、50mM、25mM、12.5mM、6.25mM及び0mMからの最終濃度範囲でのイミダゾールの効果、シグナル/ノイズ比はそれぞれ0.8、2.1、3.7、5.3、5.2及び4.0であった。イミダゾール濃度が上昇すると活性が低下することに注意すること。
【0208】
イミダゾールのある範囲の濃度において、互いに対するその天然の親和性(自発的相補性)が低下する一方で、Ni2+被分析物質により近接近に向かわせられた場合(強制的相補性)に相互作用及び立体配座の変化が可能なままであることが分かった。
【0209】
停止溶液(タゾバクタム)
(Sigma、Australia)は、TEM−1β−ラクタマーゼに対する最も効果的な阻害剤の1つであり、IC50が20−50nmであることが報告されている。タゾバクタムのIC50は、50nMの濃度で、全長及び相補断片において社内で計算された。従って、25から50μM(IC50より500−1000倍大きい。)の間のタゾバクタム最終濃度は、OD492の値を変化させることなく速やかに反応を停止させるのに十分であるはずである。阻害の有効性を試験するために、タゾバクタム25又は50μMを使用し、0.5から3時間、タゾバクタム添加後のOD492値の連続モニタリングを行った。得られたOD492の変化を比較し、評価した。
【実施例2】
【0210】
抗ヒスチジンモノクローナル抗体に対する均一インビトロFECアッセイ
ここで概説する手順は、切断点末端において長いフレキシブルリンカー[(G4S)3]及びヒスチジンタグ(6xH)を組み込むα断片(PB11.4)及びω断片(PB13.2)の合成及び特性決定を説明する。DNA配列データにより、長いリンカー[(G4S)3]及びヒスチジンタグ(6xH)の存在が確認された。均一インビトロ方式アッセイにおいて抗体(ヒスチジンタグに結合するペンタ−ヒスチジンモノクローナル抗体)との強制的酵素相補性を示すために、この断片ペアを使用した。
【0211】
部位特異的突然変異誘発
既存のコンストラクト(既にその切断点末端に5アミノ酸のフレキシブルリンカー(G4S)を含有する。)にさらなる10アミノ酸リンカー[(G4S)2]を導入するために、α(PB11)及びω(PB13)断片のPCRによる部位特異的突然変異誘発を行い、15アミノ酸長のリンカーを作製した(PCRプライマー配列は表1で与える。)。
【0212】
簡潔に述べると、長いリンカーを有するα断片(PB11.4)を作製するために、50μLの最終体積になるように、125ngフォワードプライマー(FEC67)、125ngリバースプライマー(FEC68)、1x反応緩衝液、1μL dNTP混合液、3μL QuickSolution及び超純水に鋳型DNA25ngを添加した。次に、1μL PfuUltra HF DNAポリメラーゼ(2.5U/μL)を添加し、Mastercycler ep勾配サーマルサイクラー(Eppendorf)で温度サイクルを行った。次のようにPCRサイクルを行った;95℃x1分で変性及び、95℃x50秒(変性)、60℃x30秒(アニーリング)、65℃x30秒(アニーリング)及び68℃x10分(伸長)を25サイクルと、サイクル完了時に68℃x6分で最終伸長段階。
【0213】
長いリンカーを有するω断片(PB13.2)を作製するために、50μLの最終体積になるように、125ngフォワードプライマー(FEC75)、125ngリバースプライマー(FEC76)、1x反応緩衝液、1μL dNTP混合液、3μL QuickSolution及び超純水に鋳型DNA50ngを添加した。次に、1μL PfuUltra HF DNAポリメラーゼ(2.5U/μL)を添加し、次のようにPCRサイクルを行った;95℃x1分で変性及び、95℃x50秒(変性)、60℃x30秒(アニーリング)、65℃x15秒(アニーリング)及び68℃x10分(伸長)を25サイクルと、サイクル完了時に68℃x7分で最終伸長段階。
【0214】
上述のように1μL DpnIでPCR増幅突然変異誘発反応物を消化した。製造者の説明書に従い、BL21−Gold(DE3)コンピーテント細胞(Stratagene cat.230132)を形質転換するために、DpnI処理したPB11.4 DNA及びDpnI処理したPB13.2 DNAを使用した。既に概説したように、長いリンカーの正しい挿入を確認するために、得られたプラスミドDNAの配列決定を行ってE.コリ形質転換体をスクリーニングした(プライマー FEC10及びFEC11−表1を用いて)。
【0215】
酵素断片相補性
上記で概説したように、酵素断片を発現させ、精製し、特性を調べた。ノイズ(Abなしでの自発的酵素相補性)に対するシグナル(Ab強制的酵素相補性)比を計算するための動態実験のために、15アミノ酸の長いフレキシブルリンカー及びペンタ−ヒスチジンモノクローナル抗体(Ab)に結合し得る6−ヒスチジンタグを含有する精製α及びω断片を使用した。
【0216】
Ab強制FECアッセイの酵素活性を測定するために、ニトロセフィン加水分解を使用した。96ウェル平底細胞培養プレート(TPP、Australia)を用いてアッセイを行い、SpectraMax190(Molecular Devices、USA)プレートリーダーを用いてニトロセフィン加水分解を492nmで読み取った。簡潔に述べると、200μLの反応体積中0.5M尿素、0.625mM Tris、12.5mM L−アルギニン、6.25μM酸化型グルタチオン(GSSG)、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7中でα(PB11.4)及びω(PB13.2)断片20nM及び33nM His−Tagモノクローナル抗体(Novagen cat.70796−3)を希釈し、室温で20分間温置した。次に、反応溶液にニトロセフィン(DMSO中の10mg/mL、2μL)を添加し、1時間にわたりプレートリーダーを用いて492nmで監視した。
【0217】
本発明のα及びω断片の等モル量を使用する代表的な実施形態の結果を図6で与える。
【0218】
図6で、均一インビボFECが、33nMの濃度でモノクローナル抗体(150kDa)などの大きな被分析物質をうまく検出することができることが示される。Ab濃度のKDが18.43nMであることがさらに分かった。
【実施例3】
【0219】
β−ラクタマーゼTEM1阻害剤耐性強制的酵素相補性(FEC)均一アッセイ
この実施例中で概説する手順は、アミノ酸196/197で全長親酵素を分割し、続いて切断点末端にフレキシブルリンカー(G4S)及びヒスチジンタグ(6xH)を導入することにより作製されるTEM1断片の合成及び特性決定を説明する。β−ラクタマーゼ阻害剤に対する耐性を向上させるために、次のα断片(PB11)及びω断片(PB13)を使用して点突然変異を導入し、結果としてαM69LM182T断片(PB11.12)及びωN276D断片(PB13.3)が得られた。DNA配列データにより、フレキシブルリンカー(G4S)ヒスチジンタグ(6xH)及び点突然変異の存在を確認した。β−ラクタマーゼ阻害剤の存在下で、被分析物質(Ni2+)を用いて強制的酵素相補性を示すために、これらの断片ペアを使用した。
【0220】
部位特異的突然変異誘発
PB11.1(αM69L)、PB11.12(αM69LM182T)、PB11.13(αM69IM182T)及びPB13.3(ωN276D)コンストラクトを作製するために、α(PB11)及びω(PB13)断片の部位特異的PCR突然変異誘発を行った。
【0221】
簡潔に述べると、α及びω断片プラスミドDNAを単離し、実施例1に記載のように定量し、次のようにPCR増幅突然変異誘発反応において鋳型として使用した:50μLの最終濃度になるように、125ngフォワードプライマー(FEC55、FEC143、FEC145又はFEC147)、125ngリバースプライマー(FEC56、FEC144、FEC146又はFEC148)、1x反応緩衝液、1μL dNTP混合液、3μL QuickSolution及び超純水に鋳型DNA25ngを添加した。次に、PfuUltra HF DNAポリメラーゼ(2.5U/μL)を添加し、Mastercycler ep勾配サーマルサイクラー(Eppendorf)で温度サイクルを行った。M69L、M69I及びN276D点突然変異の導入のために、PCRサイクルを次のように行った:95℃x1分で変性、及び95℃x50秒(変性)、60℃x50秒(アニーリング)及び68℃x6分(伸長)を18サイクルと、サイクル完了時に68℃x6分で最終伸長段階。M182T突然変異の導入に対するPCRサイクル条件は僅かに変化し、鋳型としてαM69L及びαM69I断片を、及びFEC55及びFEC56フォワード及びリバースプライマーをそれぞれ用いて65℃x50秒でアニーリングを行った。続いて、非突然変異親DNAを消化するために、各反応物に1μL DpnI制限酵素(10U/μL)を直接添加して37℃で1時間温置し、PCR増幅突然変異誘発反応物を消化した。次に、QuixkChangeII XL−部位特異的突然変異誘発キットの製造者の説明書(Rev#124001e)で概説されるように、XL10−Gold ULTRAコンピーテント細胞を形質転換するために、各試料反応物からのDpnI処理DNA2μLを使用した。点突然変異の正しい挿入を確認するために、得られたプラスミドDNAの配列決定を行い、既に概説したようにE.コリ形質転換体をスクリーニングした。
【0222】
次に、タンパク質発現及び精製について記載されるように、BL21−Gold(DE3)コンピーテント細胞を形質転換するために、所望の突然変異を組み込むプラスミドDNAを使用した。
【0223】
α及びω断片の精製及び特性決定
β−ラクタマーゼ阻害剤の非存在下及び存在下でのその動態特性を直接比較し、下記のようにNi2+(被分析物質)を用いて強制的酵素相補性におけるノイズに対するそのシグナル比を決定するために、同様にして、全ての6種類の酵素断片[α(PB11)、αM69L(PB11.11)、αM69LM182T(PB11.12)、αM69IM182T(PB11.13)、ω(PB13)及びωN276D(PB13.3)]を発現させ、精製し、特性決定した。
【0224】
α及びω断片の発現
実施例1に記載のようにBL21−Gold(DE3)における断片の発現を行った。
【0225】
変性条件下での組み換えタンパク質の抽出
溶解緩衝液(α断片に対して6M GuHCl、100mM NaH2PO4、10mM Tris、1mM DTT、pH8又はω断片に対して6M GuHCl、100mM NaH2PO4、10mM Tris、pH8)10mL/g(ペレット湿重量)中で、一晩誘導した250mLからのペレットを溶解し、続いて100rpmで振盪しながら4℃にて1時間温置した。溶解を促進するために、Branson250超音波ホモジナイザー(sonifier)を用いて、氷浴中で30秒オン/30秒オフ5サイクルで懸濁液を超音波処理した。超音波処理後、12,000xgで30分間(4℃)溶解液を遠心し、次いで細胞残屑を除去するために0.2μmフィルターに通した。
【0226】
α断片の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
4℃で、Unicorn5.1コントローラーソフトウェア(GE Healthcare)を用いてAKTA−FPLC(GE Healthcare)の制御下で、1mL HisTrapTMHPカラム(Amersham cat.17−5247−01)を用いて、組み換えHisタグ付加タンパク質を精製した。勾配緩衝液(8M 尿素、100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、1mM GSSG、0.1mM GSH、pH8)10カラム体積(CV)で1mL/分の流速でHisTrapカラムを平衡化した。1mL/分で、注入バルブ(INV−907)を介して直接試料を注入するために50mLスーパーループを用いて、透明化したE.コリ溶解液を直接カラムに載せた。1mL/分での、8M 尿素、100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、1mM GSSG、0.1mM GSH、pH8から100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH8の50カラム体積(CV)勾配にわたり結合タンパク質を再び折り畳ませた。20mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVでカラムから夾雑タンパク質を洗い流した。500mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8の10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、PAGE、ウエスタンブロッティング、ゲルろ過及び質量分析により分析した。
【0227】
ω断片の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
4℃で、Unicorn5.1コントローラーソフトウェア(GE Healthcare)を用いてAKTA−FPLC(GE Healthcare)の制御下で、1mL HisTrapTMHPカラム(Amersham cat.17−5247−01)を用いて、組み換えHisタグ付加タンパク質を精製した。1mL/分の流速で勾配緩衝液10CV(8M 尿素、100mM NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5)でHisTrapカラムを平衡化した。1mL/分で、注入バルブ(INV−907)を介して直接試料を注入するために50mLスーパーループを用いて、透明化したE.コリ溶解液を直接カラムに載せた。1mL/分で、8M 尿素 100mM NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5から100mM NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5の50CV勾配にわたり結合タンパク質を再び折り畳んだ。20mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVで夾雑タンパク質をカラムから洗い流した。500mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8の10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、PAGE、ウエスタンブロッティング、ゲルろ過及び質量分析により分析した。
【0228】
酵素断片相補性
動態研究のためにNi2+に結合することができる6−ヒスチジン−タグを含有する精製α及びω断片を使用して、ノイズ(Ni2+なしでの自発的酵素相補性)に対するシグナル(Ni2+強制的酵素相補性)比を計算した。強制的酵素相補性のノイズに対するシグナル比を調べ、評価するために、様々な基質、緩衝添加物及び阻害剤を使用した。
【0229】
ニトロセフィン活性アッセイ及びパネル血清スクリーニング
190μL反応混合液にニトロセフィン(100%DMSO中で調製した4mM保存溶液の10μM)を添加し、0.75M尿素、150mM NaCl、50mM NaH2PO4、PH7、各酵素断片(α及びω)10−20nM及び適切な場合には200μM Ni2+の最終濃度にした。ピペッティングによりアッセイ成分をよく混合し、基質添加前に室温で5分間温置した。30分間の時間枠にわたり、SpectraMax190(Molecular Devices、USA)を用いてニトロセフィン加水分解の速度を492nmで測定した。血清アッセイの場合、Ni2+ではなく、1/200の最終希釈での血清を添加し、上記のように50検体の個々の血清のパネルをスクリーニングした。血清アッセイの最終濃度は次のとおりであった:各α及びω断片10nMを添加して、0.6M尿素、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7。適切な場合には、血清アッセイに1.1μM タゾバクタム及び2.8μM タゾバクタムを添加した[静脈内タゾバクタム投与後の2x及び5x予想Cmax血清濃度(Wise、R.、M.Loganら、1991、Antimicrob Agents Chemother 35(6):1081−4)。
【0230】
阻害剤耐性突然変異の酵素反応速度
次を例外として、上述のようにNi2+を用いた活性アッセイを行った:ニトロセフィン(0mMから1.6mMの範囲の最終基質濃度とするための様々な連続希釈液100μL)を反応混合液100μL(尿素なし)に添加した。室温で10分間にわたりSpectraMax190を用いて492nmで反応を監視することにより、ニトロセフィン加水分解を測定した。基質濃度に対して反応初速度(最初の10回の読み取り、mOD/分)をプロットし、各α及びω断片ペアに対してKm及びKcatを決定した。Ni2+アッセイにおいて阻害剤IC50値を決定するために、各阻害剤の連続希釈液を含有する反応混合液にニトロセフィン(100%DMSO中の2mM ニトロセフィン10μL)を添加し、200μLの最終体積中50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7、10μM タゾバクタム(Sigma Cat#T2820)、0−100μMスルバクタム(Molekula Prod#19590299)又は0−100μMクラブラン酸(Molekula Prod#87644048)、各α及びω断片25nM、100μMニトロセフィン及び200μM Ni2+の最終濃度を得た。室温で10分間、SpectraMax190を用いて492nmでニトロセフィン加水分解の速度を測定した。次に、各阻害剤濃度に対して反応初速度(最初の10回の読み取り、mOD/分)をプロットし、各α及びω断片ペアに対して阻害剤IC50を決定した。
【0231】
結果
【0232】
【表3】
【0233】
【表4】
【0234】
これらの結果から、上記の突然変異を組み込むβ−ラクタマーゼ断片が阻害剤に対する耐性を向上させたことが分かった。これらの知見は、血清試料中のHSV−1及びHSV−2 IgGの検出のための均一インビトロFECアッセイにおいて使用しようとする次のβ−ラクタマーゼ断片にも当てはまる(実施例4)。
【実施例4】
【0235】
患者血清における疾患特異的IgGの検出のためのβ−ラクタマーゼTEM1阻害剤耐性強制的酵素相補性(FEC)アッセイ
実施例1、2及び3は、アミノ酸196/197で全長親酵素(PB3)を分割し、続いて切断末端にフレキシブルリンカー(G4S)及びヒスチジンタグ(6xH)を導入することにより作製されるTEM1断片の合成及び特性決定を説明する。β−ラクタマーゼ阻害剤に対する耐性を向上させるために、次のα断片(PB11)及びω断片(PB13)を使用して点突然変異を導入し、結果として、αM69L断片(PB11.11)、αM69LM182T断片(PB11.12)、αM69M182T断片(PB11.13)及びωN276D断片(PB13.3)が得られた。DNA配列データから、フレキシブルリンカー(G4S)ヒスチジンタグ(6xH)及び点突然変異の存在が確認された。β−ラクタマーゼ阻害剤(抗生物質を投与されている患者の血清中に存在する可能性がある。)存在下で被分析物質(ヒスチジンタグに結合するNi2+、Zn2+又は6xHモノクローナル抗体)との強制的酵素相補性(FEC)を明らかにするために、これらの断片ペアを使用した。
【0236】
この実施例において、患者血清中の疾患特異的IgG抗体の検出のために、被分析物質結合部分(HSV−1短縮型抗原、HSV−2短縮型抗原及びタンパク質−Gサブユニット)に酵素断片を融合させた。
【0237】
方法
DNAコンストラクト
この実験で使用されるβ−ラクタマーゼコンストラクトの概略図を図20で示す。全てのプラスミドの構築のために使用される対応するオリゴヌクレオチド(Sigma−Genosys)を表5で列挙する。PAN1及びPAN2プライマーを用いたpUC18 Bla遺伝子のPCR増幅によって、C末端ヘキサ−ヒスチジンタグ付加(CHis)全長β−ラクタマーゼ(N末端分泌配列を含まない。)を発現する第一のコンストラクトを作製した。NdeI及びXhoIでPCR産物を消化し、pET−26b(+)(Merck)に連結して、pET−BLを得た。鋳型としてこのコンストラクトを使用して、G4Sリンカーを介して融合されたCHisタグを有するBLα(残基25−196);及びN末端ヘキサヒスチジンタグを有するBLω(残基197−290)(これもG4Sリンカーを介して連結)の発現のためのbla遺伝子の2つの隣接領域を増幅するためにPAN1/PAN3及びPAN4/PAN5を使用した。NdeI及びXhoIで各PCR産物を消化し、pET−26b(+)に連結して、pET−BLα及びpET−BLωを得た。将来のコンストラクトのために前駆体として使用するために、pET−BLα及びpET−BLωの両方に、より長い(G4S)3リンカーを発現する配列を組み込み、pET−BLα(G4S)3及びpET−BLω(G4S)3を得た。それぞれプライマーPAN6/PAN7及びPAN8/PAN9を使用して、部位特異的突然変異誘発(QuickChange II XL−部位特異的突然変異誘発キット)によりこれらを導入した。
【0238】
3つの異なるタイプの被分析物質結合部分:糖タンパク質G1(gG1;HSV−1抗原;図19b)又は糖タンパク質G2(gG2;HSV−2抗原;図19b)の何れかのエピトープを含むペプチド及びプロテインG(ProG)のC2ドメインを有するようにβラクタマーゼの続く断片を改変した。作製された第一の2つのDNAコンストラクトは、HSV−1(pET−BLα−HSV1)又はHSV−2特異的抗原性ペプチド(pET−BLα−HSV2)の何れかに融合されたBLαを発現する。これらの断片の構築を次のように説明する。最初に、HSV−1抗原をコードするメガプライマーを作製するために、オリゴヌクレオチドPAN10、PAN11、PAN12及びPAN13(表5)を用いた重複伸長PCRを行った。第二のPCRでは、BLα−HSV1遺伝子を与えるために、鋳型としてpET−BLα(G4S)3、第一のPCRからのメガプライマー及びPAN14を用いた。NdeI及びXhoIでこの第二のPCR産物を消化し、pET−26b(+)に連結した。重複伸長PCRのためにオリゴヌクレオチドPAN10、PAN15、PAN16、PAN17、PAN18及びPAN19を用いて、同様にして、BLα−HSV2をコードするコンストラクト pET−BLα−HSV2を作製した。
【0239】
続く融合コンストラクトの改変を簡素化するために、様々なドメイン配列の置換を可能にするため、酵素断片、リンカー及び結合部分の間に制限エンドヌクレアーゼ部位が組み込まれたDNA2.0(Menlo Park、U.S.A.)によってユニバーサルBLα及びBLω融合遺伝子を合成した。pET−26b(+)のNdeI/XhoI部位への連結(ライゲーション)のために、何れかの末端において、BamHI、SpeI及びNheI部位が、ProG、(G4S)3リンカー及びNdeI及びXhoI部位があるBLωコードドメインの間に挿入されるように、ユニバーサルBLωコンストラクト、pET−BLω−ProGを設計した。E.コリのコドン使用表により、ベクターNT1(Invitrogen)を用いて、公開されているアミノ酸配列(Gulichら、2002、Protein Eng.15(10):835−42)の戻し翻訳(back−translation)により、連鎖球菌株G148プロテインGのC2 IgG−結合ドメインをコードする配列を得た。同様のアプローチを用いてユニバーサルBLαコンストラクト、pET−BLα−ProGを作製した。pET−26b(+)のNdeI XhoI部位への連結(ライゲーション)のために、何れかの末端において、BLα配列、(G4S)3リンカー及びNdeI及びXhoI部位を有する部分をコードする抗原の間にKpnI、BamHI及びSpeI部位を有するように遺伝子配列を設計した。このコンストラクトに対して、pET−BLω−ProGからProGをコードする配列を切り出し、ユニバーサルBLαコンストラクトのBamHI SpeI部位に連結した。
【0240】
BLα−HSV1及びBLα−HSV2に対する代替物として、発明者らは、ユニバーサルBLωコンストラクトを使用し、個々のHSV−1及びHSV−2抗原性ペプチド配列でProG配列を置換することにより、相補的BLω−HSV1及びBLω−HSV2コンストラクトを作製した。隣接するBglII及びSpeI部位を組み込むためにオリゴヌクレオチドPAN20及びPAN21を用いて、pET−BLα−HSV1からHSV−1ペプチドをコードする配列をPCR増幅した。同様に、隣接するBamHI及びSpeI部位を組み込むためにオリゴヌクレオチドPAN22及びPAN23を用いて、pET−BLα−HSV2からHSV−2ペプチド配列をPCR増幅した。次に、pET−BLω−HSV1及びpET−BLω−HSV2を得るために、pET−BLω−ProGのBamHI/SpeI部位にPCR産物を連結した。
【0241】
オリゴヌクレオチド、PAN24及びPAN25を使用して、部位特異的突然変異誘発(QuickChangeII XL−部位特異的突然変異誘発キット)により、pET−BLω−ProG、pET−BLω−HSV1及びpET−BLω−HSV2のω断片配列に、点突然変異N276Dを導入した。Australian Genome Research Facility(AGRF、Brisbane、Australia)により、クローニングされ突然変異を導入された全ての挿入物の配列決定が行われた。
【0242】
【表5】
【0243】
HSV−1及びHSV−2抗原性ペプチド設計
血清中のHSV−1及びHSV−2に対する抗体を検出しそれを差別化するために、被分析物質結合部分として2種類の特異的HSV抗原性ペプチドを設計した。HSV−1特異的ペプチド(図19b)は、糖タンパク質G1(gG1)の残基92−148からなる。gG1のこの領域は、免疫優勢エピトープ(残基112−127)及び、ヒトにおいてHSVタイプ−1特異的反応を与えることが知られている第二のエピトープ内に2つのキーとなるアミノ酸を含有する。HSV−2特異的ペプチド(図19b)は、糖タンパク質G2(gG2)の残基551−641から構成され、ヒトにおいてHSVタイプ−2特異的反応を与えることが知られている2つの免疫優勢エピトープ(残基561−578及び626−640)からなる。
【0244】
α及びωレポーター断片の発現及び精製
全ての酵素断片[α断片(PB11)、αM69L断片(PB11.11)、αM69LM182T断片(PB11.12)、αM69IM182T断片(PB11.13)、α−HSV−1断片、α−HSV−2断片、α−タンパク質−G断片及びω断片(PB13)、ωN276D断片(PB13.3)、HSV−1−ω断片及びHSV−2−ω断片]を発現させ(実施例1に記載のように)、変性条件下で精製した。ネイティブ条件下でタンパク質−G−ω断片を精製した。精製した全てのタンパク質の特性を同様にして調べ、アッセイした。
【0245】
変性条件下での組み換えタンパク質の抽出
α断片(PB11、PB11.11、PB11.12及びPB11.13)に対する溶解緩衝液(6M GuHCl、100mM NaH2PO4、10mM Tris、1mM DTT、pH8)及びω断片(PB13及びPB13.3)に対する(6MGuHCl、100mM NaH2PO4、10mM Tris、pH8)の10mL/g(ペレット湿重量)で、一晩誘導した250mLからのペレットを溶解した。6M GuHCl、100mM NaH2PO4、200mM L−アルギニン、20mMイミダゾール、2mM DTT、pH8中でα断片−被分析物質結合部分融合物(BLαHSV−1、BLαHSV−2及びBLαProG)を溶解した。6M GuHCl、100mM NaH2PO4、200mM L−アルギニン、20mMイミダゾール、pH8中で被分析物質結合部分−ω−断片融合物(BLωHSV1及びBLωHSV2)を溶解した。100rpmで振盪しながら4℃にて1時間温置した後、溶解を促進するために、Branson250超音波ホモジナイザー(sonifier)を用いて、氷浴中で30秒オン/30秒オフ5サイクルで各懸濁液を超音波処理した。超音波処理後、12,000xgで30分間(4℃)溶解液を遠心し、次いで0.2μmフィルターに通した。
【0246】
ネイティブ条件下でのBLωProGの抽出及び精製
5mL/g(湿重量)で、ネイティブ溶解緩衝液(10mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8)中で、一晩誘導した250mLからのペレットを再懸濁した。リゾチーム(Sigma)を1mg/mLになるように添加し、氷上で30分間、懸濁液を温置した。Branson250超音波ホモジナイザー(sonifier)を用いて、氷浴中で30秒オン/30秒オフ5サイクルで溶解液を超音波処理した(出力6及び70%負荷)。10,000xgで30分間、4℃にて溶解液を遠心した。容器を傾けて上清を取り、0.2μmフィルターに通した。製造者により指示されるように、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Pierce)をろ過液に添加した。Ni−NTAレジン(Qiagen cat#30210)を用いてネイティブ条件下でBLωProGを精製した。Ni−NTA 1mLを溶解液に添加し、4℃で1時間振盪(100rpm)することにより穏やかに混合した。溶解液−Ni−NTA混合液を1x10cmカラムに注ぎ、ネイティブ洗浄緩衝液(20mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8)16mLで洗浄した。ネイティブ溶出緩衝液(250mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl pH8)10mLにより1mL分画になるように結合タンパク質を溶出した。
【0247】
PB11、PB11.11、PB11.12及びPB11.13の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
4℃で、Unicorn5.1コントローラーソフトウェア(GE Healthcare)を用いて、AKTA−FPLC(GE Healthcare)の制御下で、1mL HisTrapTMHPカラム(Amersham cat.17−5247−01)を用いて、組み換え6xHタグ付加タンパク質を精製した。1mL/分の流速で、勾配緩衝液(8M尿素100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、1mM GSSG、0.1mM GSH、pH8)10カラム体積(CV)でHisTrapカラムを平衡化した。1mL/分で、注入バルブ(INV−907)を介して直接試料を注入するために50mLスーパーループを用いて、透明化したE.コリ溶解液を直接カラムに載せた。1mL/分で、8M 尿素、100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、1mM GSSG、0.1mM GSH、pH8から100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH8 50CV勾配にわたり結合したタンパク質を再び折り畳ませた。20mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVで夾雑タンパク質をカラムから洗い流した。500mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、FRAC950分画回収装置(GE Healthcare)を用いて1mL分画になるように回収した。PAGE、ウエスタンブロッティング、ゲルろ過及び質量分析により、タンパク質をさらに分析した。
【0248】
PB13及びPB13.3の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
4℃で、Unicorn5.1コントローラーソフトウェア(GE Healthcare)を用いて、AKTA−FPLC(GE Healthcare)の制御下で、1mL HisTrapTMHPカラム(Amersham cat.17−5247−01)を用いて、組み換え6xHタグ付加タンパク質を精製した。1mL/分の流速で、勾配緩衝液(8M尿素100mM、NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5)10CVでHisTrapカラムを平衡化した。1mL/分で、注入バルブ(INV−907)を介して直接試料を注入するために50mLスーパーループを用いて、透明化したE.コリ溶解液を直接カラムに載せた。1mL/分で、8M 尿素、100mM NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5から100mM NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5 50CV勾配にわたり結合タンパク質を再び折り畳ませた。20mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVで夾雑タンパク質をカラムから洗い流した。500mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、1mL分画になるように回収した。
【0249】
BLα−HSV1、BLα−HSV2、BLω−HSV1、BLω−HSV2及びBLαProGの固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
4℃で、Unicorn5.1コントローラーソフトウェア(GE Healthcare)を用いて、AKTA−Purifier(GE Healthcare)の制御下で、1mL HisTrapTMHPカラムを用いて、融合タンパク質を精製した。1mL/分の流速で、勾配緩衝液(8M尿素、100mM NaH2PO4、200mM L−アルギニン、pH8)10CVでHisTrapカラムを平衡化した。1mL/分で、注入バルブ(INV−907)を介して直接試料を注入するために50mLスーパーループを用いて、透明化したE.コリ溶解液を直接カラムに載せた。1mL/分で、8M 尿素、100mM NaH2PO4、200mM L−アルギニン、pH8から100mM NaH2PO4、200mM L−アルギニン、pH8の20CV勾配にわたり、結合タンパク質を再び折り畳ませた。50mMイミダゾール、100mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH7.5 10CVとそれに続く100mMイミダゾール、100mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH7.5の第二の10CVで夾雑タンパク質をカラムから洗い流した。500mMイミダゾール、100mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH7.5 10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、1mL分画になるように回収した。タンパク質ピーク(2.5mL)を含有する分画をプールし、PD10カラム(GE Healthcare)を用いて50mM NaH2PO4、50%グリセロールに緩衝液を交換し、−20℃で保存した。
【0250】
BLω−ProG融合コンストラクトに対するリンカー長の最適化
より短い(G4S)2又はより長い(G4S)4ドメイン間リンカーを有するBLω−ProGコンストラクトを作製するために、DNA2.0により個々の遺伝子配列を合成し、pET−26b(+)のNdeI/XhoI部位に連結した。元のBLω−ProGのようにネイティブ条件下で両断片を精製した。被分析物質の源として、HSV1陽性の個体からのプール血清又はHSV1抗原性ペプチドで免疫付与したウサギからの過免疫血清の何れかを用いて、BLα−HSV1と組み合わせて3種類のBLω−ProG断片を用いてアッセイを行った。両アッセイに対して、バックグラウンド相補性のレベルを示すために、HSV−1/2陰性血清を加えた。BLα−HSV1(5nM)、BLω−ProG(5nM)、0.5M尿素、150mM NaCl、50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7及び100μMニトロセフィンからなる200μL反応液中で1:100の最終濃度になるように血清を添加した。RTで40分間にわたりニトロセフィン加水分解の動態を492nmで測定する前に、RTで10分間、反応液を温置した。
【0251】
HSV−1及びHSV−2特異的IgGに対するβ−ラクタマーゼに基づくFECアッセイ
正常個体又はHSV−1又はHSV−2感染が証明された個体の何れかからの50検体の血清試料を試験した。150検体の患者血清(50検体のHSV−2陽性/HSV−1陰性;50検体のHSV−1陽性/HSV−2陰性;50検体のHSV−1/HSV−2陰性)のそれぞれとともに、(1)BLα−HSV1/BLω−ProG、(2)BLα−HSV2/BL−ProG、(3)BLω−HSV1/BLα−ProG及び(4)BLω−HSV2/BLα−ProGを含む断片の4種類の異なる組み合わせを試験した。血清(50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7中の1:20希釈液の20μL)、続いてニトロセフィン(Merck)(5%DMSO、50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7中の1mMニトロセフィン20μL)を、96ウェルプレート(Greiner)中の均一反応混合液160μLに添加し、1:200患者血清、100μMニトロセフィン、0.5%DMSO、5nM BLα、5nM BLω、0.5M尿素、150mM NaCl、50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7の最終濃度を得た。プラットフォームロッカー上でRTで15分間、反応混合液を温置し、その後、492nmでRTにて60分間にわたりニトロセフィン加水分解の速度を測定した。SoftMaxProソフトウェア(Molecular Devices)を用いて速度測定の結果を得て、分析した。アッセイの最初の20分間において速度(mOD分−1)を計算した。
【0252】
結果
BLω−ProGに対するリンカー長の最適化
発明者らは、BLω−ProG内での(G4S)2、(G4S)3又は(G4S)4ドメイン間リンカーの何れかの使用の効率を比較した。それぞれモデル被分析物質及びその対照としてウサギ過免疫血清(抗HSV−1ペプチド)又はHSV−1/2陰性血清の何れかと3種類のBLω−ProG変異体及びBLα−HSV1を組み合わせた、相補性アッセイを行った。過免疫血清を用いたアッセイにより、(G4S)3リンカーを有するBLω−ProGで活性レベルが最大となり、従ってバックグラウンドに対するシグナルの比が最大となることが示された。これらのアッセイから、より大きい(G4S)4リンカーを有するものと比較して(G4S)2及び(G4S)3リンカーを有するBLω−ProGで活性レベルが高くなることが示される。この実験においてFECアッセイに対して使用される全てのその他のBLω−ProG断片には(G4S)3リンカーが組み込まれた。
【0253】
BLω−ProGの特異性
BLω−ProGのプロテインG部分が機能的であり、発明者らのHA形式で試験するのに適切であることを確認するために、発明者らは、表面プラズモン共鳴を用いてヒトIgGに対するその結合速度を評価した。センソグラムデータの分析から、BLω−ProGが81nMの解離定数(KD)を有することが示されたが、これは公開されているプロテインGのC2ドメインの親和性(93nM)(これもまたSPRを用いて決定された。)と同等である。BLω−ProGはC2ドメインよりも会合速度が遅いが、これは解離速度がより遅いことにより補正される。ヒト血清アルブミンへの結合を除外するために、短縮型市販の組み換えプロテインGを陽性対照として含めた。この組み換えプロテインGは、同じ条件下で試験された場合、BLω−ProGよりもヒトIgGへの結合親和性が低かった(KD=483nM)。
【0254】
β−ラクタマーゼに基づくFECを用いた被分析物質定量
本明明細書中に記載のインビトロFEC方式の濃度−反応を調べるために、モデル被分析物質の存在下で一緒にBLα−HSV1及びBLω−ProGをアッセイした。この場合、β−ラクタマーゼ分割点末端の近接端部に両酵素断片がヘキサヒスチジンタグを有するので、モデル被分析物質としてマウスモノクローナル抗ヒスチジンAb(抗His MAb)を使用した。得られた曲線(データは示さず。)は、単一部位飽和結合に相応する古典的なシグモイド型を示し、このアッセイ形式が、比例して高い被分析物質濃度と低い被分析物質濃度とを区別できることが確認される。これは、被分析物質濃度が検出範囲に入る限り被分析物質濃度を定量するために本アッセイを使用することができることを示唆する。予想されるように、対照被分析物質(モノクローナル抗グルタチオン−S−トランスフェラーゼAb;抗−GST MAb)は反応曲線をなさず、このことから、抗体の存在下での本アッセイの忠実性が示される。
【0255】
HSV−1及びHSV−2の検出のためのβ−ラクタマーゼに基づくFECを用いた均一アッセイ
発明者らの均一アッセイの性能を試験するために、発明者らは、Brisbane、Australiaからの150検体の患者血清試料(50検体のHSV−1陽性/HSV−2陰性;50検体のHSV−2陽性/HSV−1陰性;50検体のHSV−1/HSV−2陰性)をアッセイし、内部標準として使用した既存の市販アッセイ、HerpeSelect1及び2 ELISA IgG(Focus Diagnostics、USA)と発明者らの結果を比較した。図14から17は、β−ラクタマーゼに基づくFECが高い感受性及び特異性で首尾よくタイプ特異的HSV抗体を検出することができることを示す。HSV−1/2に対する試験で陰性であるプール血清の試料(n=4)に対して、50アッセイの各セットに対する結果(断片の4種類の異なる組み合わせのそれぞれに対して3セットのアッセイ−3日間にわたり3回ずつ行う。)を正規化した。図18は、HSV陰性患者から(0.85mOD分−1)又は高HSV−2陽性血清の個体から(5.14mOD分−1)の血清中でのBLα−HSV2/BLω−ProGによるニトロセフィン加水分解の典型的な速度を示す。HSV−1高陽性血清中でBLα−HSV1/BLω−ProGにより同様の加水分解速度が得られた。BLα−ProG/BLω−HSV1の活性(図14)は全体的にBLα−HSV1/BLω−ProG(図17)よりも僅かに高いが、ある種の融合パートナー(ProG、HSV−1又はHSV−2特異的ペプチド)に対する断片(BLα又はBLω)の選択はアッセイの全体的結果にはあまり影響がなかった。対照試料(HSV陰性血清)において低バックグラウンド活性を維持するために、150mM NaCl及び0.5M尿素を含有するアッセイ中で低断片濃度(5nM)と組み合わせた高血清希釈液(1:200)を使用した。75分間(基質添加後15分間の遅延時間を含む。)にわたり血清試料をアッセイしたが、試料によっては、基質添加後、最初の25分間内に色の変化が観察され得る。
【0256】
考察
発明者らは、多岐にわたる生体指標の検出のために使用することができる可能性がある新しいFECに基づく均一アッセイを開発した。この系は、専用の機器を必要とせず、単純であるため、ポイントオブケアの用途のためにさらに開発することができる。実際に可能であることを示すために、発明者らは、E.コリβ−ラクタマーゼを用いたタイプ特異的HSV IgGの検出のためのアッセイを開発した。この遺伝子を2つに分割し、HSV−1又はHSV−2−特異的ペプチド抗原の何れかに融合させた一方の断片;プロテインGの1つのドメインに融合させた他方の断片を発現するように改変した。β−ラクタマーゼ断片の全てを大量に容易に精製し、単に被分析物質及び基質存在下で2つの相補的断片を一緒に混合することにより緩衝液中でアッセイした。発明者らは、β−ラクタマーゼに基づくFECアッセイは、高感受性及び特異性で、ヒト血清中でのHSV−1及びHSV−2に対する抗体を同定することにより、限られた交差反応性、妨害及び阻害で、血清中の大きな被分析物質を検出することができることを明らかにした。
【0257】
同じ又は異なるレポーター酵素の何れかを用いたPCAの先行報告に相反して、発明者らは、一貫して、被分析物質の存在下で、相補性断片の自発的アセンブリーの結果として、バックグラウンド活性を観察した。この見解の相違は、これら2つのアッセイの基礎となる性質が異なることによって説明することができる。PCAは、インビボで(酵素断片の濃度は細胞あたり25分子程度であり得る。)(〜fMの範囲)タンパク質−タンパク質相互作用を検出するために、最も一般的に使用される。一方、発明者らのインビトロでのFECに基づくアッセイは、5nMという高い断片濃度を有し、それにより、自発的再会合の可能性が向上する。それにもかかわらず、本明細書中で報告される予備アッセイは、平均でバックグラウンドよりも少なくとも2倍高いシグナルを生じさせ、溶液中の被分析物質の濃度によっては、発明者らは、ヒト血清において15という高いノイズに対するシグナル比を達成することができる。将来、発明者らは、互いに対して親和性が非常に低い、つまり、アッセイのダイナミックレンジを向上させながら、被分析物質検出及びバックグラウンドノイズの限界の両方を低くする断片を作製することに焦点を当てることを目標としている。
【0258】
HSV感染の診断のための信頼できる市販のタイプ特異的血清学試験はあまりなく、これらのうち最も一般的であるものはELISAに基づく。発明者らのアッセイ開発ストラテジーの一部として、発明者らは、レポーター酵素断片に融合させた際にHSV−1又はHSV−2に対する抗体の検出に対して感度が高く特異性が高い新規HSVタイプ特異的抗原を設計することに成功した。HSV−1特異的ペプチドは、ヒトにおいてHSVタイプ−1特異的反応を誘発することが知られている2つのキーとなるアミノ酸に加えて、gG1の免疫優勢領域を含有する。同様に、HSV−2特異的ペプチドは、ヒトにおいてHSVタイプ−2特異的反応を誘発することが知られているgG2の2つの免疫優勢エピトープを含有する。
【0259】
本明細書中で報告されるFECに基づく均一EIAは単純であり、リアルタイムでの疾患特異的生体指標の検出のために容易に自動化し得る。リアルタイム被分析物質検出(センサー)により、エンドポイント検出よりも大きいダイナミックレンジが得られ、ライフサイエンスでの応用に対して本質的に定量的である。
【0260】
上記の個々のセクションで言及された本発明の様々な特性及び実施形態は、必要に応じて、変更すべき部分は変更して、他のセクションに適用される。従って、必要に応じて、あるセクションで述べられる特性を他のセクションで述べられる特性と組み合わせ得る。
【0261】
本明細書中で開示され主張される全ての組成物及び方法は、本開示に照らして、不必要な実験を行わずに為し、実行することができる。好ましい実施形態の観点から本発明の組成物及び方法を説明してきたが、当業者にとって当然のことながら、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、組成物及び方法に対して、及び本明細書中に記載の方法段階において又は段階の順番において、変更を適用し得る。さらに具体的には、同じ又は同様の結果が達成されると同時に、化学的かつ物理学的に関連のあるある一定の作用物質で本明細書中に記載の作用物質を置き換えることができることが明らかである。当業者にとって明らかである全てのこのような類似の置換及び変更は、添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの本発明の精神、範囲及び概念内にあるものとみなされる。
【0262】
参考文献
上記文章で特定される参考文献は、それらが、本明細書中で使用される、方法、技術及び/又は組成物の背景を、補足し、説明し、提供するか又はそれらを教示する程度に、参照により本明細書中に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、分子生物学及び診断の分野に関する。とりわけ、本発明は、均一インビトロアッセイにおいて被分析物質を検出するために特異的に適応させられたレポーター断片系及び成分、これらの成分を使用するこのようなアッセイ、診断システム及び上記のものを作製及び使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
レポーター断片系に基づくアッセイは、タンパク質間相互作用検出アッセイ(Protein Fragment Complementation assays)(PCA)、強制的酵素相補性(FEC)アッセイ(Forced Enzyme Complementation Assay)又は相互作用依存タンパク質結合系として知られている。これらのアッセイは、全般的に、例えば、WO01/71702;米国特許第6,270,964号;同第6,294,330号;同第6,428,951号;同第6,342,345号、同第6,828,099号及び米国特許出願公開第20030175836号に記載されている。本明細書中で使用される場合、強制的酵素相補性又はFECアッセイは総称的にこのようなアッセイを指す。
【0003】
FECの基礎となる基本原理を図1で図示する。これらのアッセイは通常、可視的な表現型の変化又は抗生物質耐性など、直接検出可能なシグナルを有するレポータータンパク質へと機能的に再構築し得る第一及び第二のメンバーからなるタンパク質断片ペアの使用を特徴とする。このアッセイの有効性の重要な態様は、レポータータンパク質の機能的再構成が、レポータータンパク質断片に連結されている断片ペアの各メンバー内に存在する部分の、相互作用、即ち結合又は吸引に依存するということである。本明細書中で使用される場合、これらの相互作用部分を「インタラクター」又は「インタラクタードメイン」と呼ぶ。インタラクタードメインは、断片ペアコンストラクトの各メンバー内に含有される個別の部分又はドメインである。インタラクタードメインは、レポーター断片ドメインへと直接連結され得るか又はリンカードメインにより連結され得る。タンパク質断片ペアメンバーは、通常、ペアの各メンバーにおけるインタラクタードメインがない場合、レポーター断片が自然には機能的に再構成しないように構築されている。このようにして、ペアの各メンバーのインタラクタードメインは、その断片からの機能的レポータータンパク質の再構成に関与する。
【0004】
機能的なインビボFECアッセイは、いくつかの異なるレポータータンパク質を用いて構築されている。例えば、WO01/71702;米国特許第6,270,964号;同第6,294,330号;同第6,428,951号;同第6,342,345号、同第6,828,099号及び米国特許出願公開第20030175836号で開示されるものを参照。
【0005】
クラスAβ−ラクタマーゼ(特にTEM−1β−ラクタマーゼ)は、それらが単量体であり、比較的サイズが小さく、結晶構造が既知であるので、FECアッセイの開発において特に関心が持たれてきた(WO00/71702及びJelschら、Protein Struct.Funct.(1993)16:364ff)。β−ラクタマーゼは、原核又は真核系の何れかで発現され得る。FECアッセイの設計及び開発におけるβ−ラクタマーゼの使用の例は、WO01/71702;米国特許第6,270,964号;同第6,294,330号;同第6,428,951号;同第6,342,345号、同第6,828,099号、米国特許出願公開第20030175836号及び同第20060094014号及びOoiら(2006)Biochemistry 45:3620−3625で見出すことができる。
【0006】
Cantorら(米国特許出願公開第20060094014号)は、インタラクタードメインが核酸である標的核酸配列の検出での使用のためのFECを示唆する。効率的なFECアッセイ性能に必要な相互作用は、含まれる核酸の間での核酸相補性複合体の形成の結果によるもの(典型的なワトソン−クリック塩基対配列認識の結果)である。このようにして、Cantorらの方法において、標的被分析物質及び各FEC断片のインタラクタードメインは全て核酸である。このように、各断片ペアの各メンバーは、β−ラクタマーゼ由来のタンパク質レポーター断片ペアの混合コンストラクト及びそれらのレポーター断片に連結された核酸インタラクタードメインである。Ooiら(2006)は、β−ラクタマーゼレポーター断片ペアを用いた同様の系を記載した。Stainsら(2005)J.Am.Chem.Soc.127:10782−10783及びStainsら(2006)J.Am.Chem.Soc.128:9761−9765は、レポーター断片ペアとして緑色蛍光タンパク質(GFP)の断片を使用し、インタラクタードメインとして亜鉛フィンガー及びメチル−CpG結合タンパク質を使用する、FECに基づくアッセイを記載した。これらの系は、再構成されたGFPの蛍光を通じて配列特異的な又はメチル化されたポリヌクレオチド配列を検出するように設計されている。
【0007】
FECの原理に基づく広く適用可能なインビトロ均一アッセイの作成により、必然的にFECの設計及び遂行に対する新しい問題が生じる。これらの問題は、均一アッセイ形式内で生成される特定のアッセイ環境、検出を目的とする被分析物質の性質及び源及びこのような均一アッセイの作成と関連する製造の問題から生じる。
【0008】
均一アッセイは通常、使用における、特異性、信頼性、作製の簡便性及び使用におけるロブストな特徴を確実にするために、単離精製成分から構成される。必要な溶解性、安定性及び製造に対する従順性及び最終的な診断用途も生み出す、適切なタンパク質断片ペアの設計(適切なレポーター断片、インタラクタードメイン、連結ドメイン及び融合コンストラクト全体又はそれぞれを組み込むレポーター断片ペアを含む。)ならびにロブストなアッセイ条件は、広く適用可能な均一アッセイプラットフォームを作製するのに不可欠である。インビボFECアッセイ条件と比較して、インビトロ診断アッセイ条件は、細胞外であり、比較的厳しく、インビボで容易に起こり得る適切なタンパク質折り畳み及びタンパク質−タンパク質相互作用を促進し得ない。
【0009】
さらなる問題は、均一アッセイプラットフォームにより起こる。均一アッセイプラットフォームの開発の中核は、洗浄段階の排除である。従って、血清又は少なくともある血清成分の存在下で、均一アッセイプラットフォームにおける診断試験を行い得る。このようにして、被分析物質を含有する試料分画を洗浄なしで処理し得る。洗浄がないと、均一プラットフォーム(特にFECに基づくもの)は、交差反応、妨害及び血清成分又はその他の夾雑物の阻害的影響が起こりやすい状態のままであると思われる。
【0010】
例えば、β−ラクタマーゼは、β−ラクタム抗生物質(Chaibiら、1999、J.Antimicrob.Chemother.43(4):447−58)に対する菌耐性を与える。その結果、細菌感染の治療に対して設計された薬物は、患者血清中に存在する場合、アッセイ性能を妨害し得る。実際に、ヒト投与に対して使用されるβ−ラクタム抗生物質製剤(経口及び静脈内)は、使用される抗生物質の効率を上昇させるために、β−ラクタマーゼ(TEM−1)の不可逆的阻害剤の使用を含み得る。一般に使用される例となる阻害剤には、ペニシリンの誘導体及びペナム又はセファム誘導体が含まれる。このような阻害剤の例、それらの合成及び使用は、米国特許第6,936,711号;同第6,900,184号;同第6,395,726号;同第6,207,661号;同第5,763,603号;同第5,686,441号;同第4,958,020号;同第4,933,444号;同第4,898,939号;同第4,895,941号;同第4,891,369号;同第4,668,514号;同第4,626,384号;及び同第4,529,592号(そのそれぞれはそれらの全体において参照により明確に組み込まれる。)に記載されている。抗生物質及び阻害剤の一般的組み合わせは、それらの商標名又は非公式名により知られ得る。例えば:ピペラシリン及びタゾバクタム;アンピシリンナトリウム及びスルバクタムナトリウム;及びアモキシシリン及びクラブラン酸。さらなる組み合わせ及び阻害剤が当技術分野で公知である。
【0011】
レポーター酵素としてβ−ラクタマーゼを使用する均一アッセイは、これらのβ−ラクタマーゼ阻害剤の影響を受けやすい。例えば、抗生物質投与後に観察されるβ−ラクタマーゼ阻害剤血清Cmaxレベルは、β−ラクタマーゼを阻害するのに十分高いものであり得る。従って、一般にインビトロアッセイにおいてFECを実行する問題に加えて、インビトロ均一アッセイプラットフォームにおけるFECの実行によりさらなる問題が現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第01/71702号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,270,964号明細書
【特許文献3】米国特許第6,294,330号明細書
【特許文献4】米国特許第6,428,951号明細書
【特許文献5】米国特許第6,342,345号明細書
【特許文献6】米国特許第6,828,099号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0175836号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0094014号明細書
【特許文献9】米国特許第6,936,711号明細書
【特許文献10】米国特許第6,900,184号明細書
【特許文献11】米国特許第6,395,726号明細書
【特許文献12】米国特許第6,207,661号明細書
【特許文献13】米国特許第5,763,603号明細書
【特許文献14】米国特許第5,686,441号明細書
【特許文献15】米国特許第4,958,020号明細書
【特許文献16】米国特許第4,933,444号明細書
【特許文献17】米国特許第4,898,939号明細書
【特許文献18】米国特許第4,895,941号明細書
【特許文献19】米国特許第4,891,369号明細書
【特許文献20】米国特許第4,668,514号明細書
【特許文献21】米国特許第4,626,384号明細書
【特許文献22】米国特許第4,529,592号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Jelsch他、Protein Struct.Funct.16、1993年、p.364ff
【非特許文献2】Ooi他、Biochemistry 45、2006年、p.3620−3625
【非特許文献3】Stains他、J.Am.Chem.Soc.127、2005年、p.10782−10783
【非特許文献4】Stains他、J.Am.Chem.Soc.128、2006年、p.9761−9765
【非特許文献5】Chaibi他、J.Antimicrob.Chemother.43(4)、1999年、p.447−58
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、高い、溶解性、安定性、感受性及び/又は酵素阻害剤(例えば本アッセイにおいて試験したい試料中に存在し得る阻害剤)に対する耐性など、インビトロ均一FECアッセイでの使用に対する所望の特徴を示すTEM−1β−ラクタマーゼに基づく修飾レポーター断片(α及びω断片)を提供する。本発明のタンパク質断片により示されるこれらの所望の特徴には、レポーター断片の単離及び精製に対する高い従順性及び、操作可能なインビトロ均一アッセイの続く構成のための、レポーター断片ペアが含まれる。本発明は、さらに、具体的に、均一アッセイプラットフォーム形式及び使用でのアッセイの感受性又は特異性を維持又は向上させながら、均一インビトロアッセイ条件下で溶解性が高く凝集性が低いレポータータンパク質断片を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、ある態様において、本発明は、酵素活性の阻害剤の存在下で酵素活性を保持するポリペプチド複合体を生成させるための、少なくとも第二のポリペプチドとの会合において操作可能なポリペプチドを提供する。
【0016】
好ましい実施形態において、本ポリペプチドは、酵素活性の阻害剤に対するポリペプチド複合体の感受性を低下させる1以上のアミノ酸配列変化を含む。
【0017】
関連する態様において、本発明は、第一のポリペプチドサブユニットを含む第一のレポーター成分及び第二のポリペプチドサブユニットを含む第二のレポーター成分を含み、第一のサブユニット及び第二のサブユニットが、検出可能なシグナルを生成することができる酵素活性を有する活性のあるポリペプチド複合体を生成させるために会合することができ、該会合が関心のある被分析物質に対する第一及び第二のレポーター成分の結合により媒介され;
第一のポリペプチドサブユニット及び/又は第二のポリペプチドレポーターサブユニットが、阻害剤による該酵素活性の阻害に対する活性ポリペプチド複合体の感受性を低下させる1以上のアミノ酸配列変化を含む、レポーター系を提供する。
【0018】
具体的な実施形態において、本発明は、インビトロ均一FECアッセイでの使用に必要とされる所望の特徴を得られる断片に与える、TEM−1β−ラクタマーゼのネイティブアミノ酸配列における、点突然変異、切断点及び欠失に基づく、レポーター断片ペアドメインとしての使用のためのポリペプチドコンストラクトを提供する。これらの所望の特徴には、以下に限定されないが、1以上の血液血清成分存在下で、均一形式においてβ−ラクタマーゼに基づくFECアッセイを可能にするものが含まれる。特定の実施形態において、これらの血液血清成分には、β−ラクタマーゼの阻害剤が含まれる。
【0019】
好ましい実施形態において、本発明は、β−ラクタマーゼ阻害剤の存在下及び均一インビトロFECアッセイで使用するために断片ペアを適応させるその他の方法において、溶解性を向上させ、凝集性を低下させ、性能を向上させるために、断片ペアコンストラクトに有利に導入され得る具体的な突然変異を提供する。これらの突然変異の効果により、単独で(本発明のものではない操作可能なペアメンバーと組み合わせて使用される場合)又は本発明の操作可能なペアメンバーと組み合わせての何れかで、レポーター、リンカー又はインタラクタードメインにおいて複数の長所が与えられ得る。これらの長所には、β−ラクタマーゼの阻害剤又はこのような条件においてFECの有効性を損なう血清又はその他の生体試料に存在するその他の因子を含み得るインビトロ又は均一アッセイ条件での操作可能性が含まれる。
【0020】
具体的な突然変異(アミノ酸配列変化)を同定することにおいて、本明細書中で従った表記法(文脈で必要とされる場合を除く。)は、ネイティブβ−ラクタマーゼアミノ酸配列からの位置情報と組み合わせてアミノ酸に対する1文字コードを使用する。例えば、V74Tは、ネイティブの位置74のバリン(付随の配列で又は代替的な配列付番スキームにおける相同位置で示される。)が、チロシンにより置換されることなどを示す。一貫性及び利便性のために、ネイティブ配列の付番は、実質的にわずかなアミノ酸の配列又はレポーター断片を指す場合でも保持される。このようにして、F230Yは、置換がより短い、例えば本発明のα又はω断片内で起こり得る場合でも、全長ネイティブ配列付番での位置230でのYによるFの置換を指す。
【0021】
特定の実施形態において、本発明のネイティブβ−ラクタマーゼ配列の突然変異は、付随する配列リストの付番において又は何らかの代替的な配列付番法での相同位置において、位置196のグリシンと位置197のグルタミン酸との連結部の間の切断点により形成されるα及びω断片と連結して提供される。本明細書中で提供される突然変異との連結において有用な、代替的なα又はω断片を生じるその他の切断点は、関連技術の通常の技術内である。
【0022】
本発明は、次のものから選択される1又は複数のアミノ酸配列変化を含むTEM−1β−ラクタマーゼのα又はω断片を提供する:M69L;M69I;V74T;M182T;I208T;M211Q;F230Y;及びN276D。これらの突然変異は、個々に又は組み合わせて存在し得る。ネイティブ配列に関連する突然変異の具体的な組み合わせは、完全に1個のレポータードメイン又はレポーター断片ペアメンバー内に存在し得る。具体的な突然変異又は突然変異の組み合わせは、本発明の範囲内のアッセイの必要条件を満たすため、所望のアッセイ及び突然変異の操作可能性に依存して、FECアッセイにおいて有用な1個のレポータードメイン又は2個の相補的レポータードメイン又はレポーター断片ペアメンバーにおいて存在し得る。本発明の範囲内の1個のアミノ酸突然変異の特定の組み合わせには、α断片レポータードメインにおけるM182TとのM69L;α断片レポータードメインにおけるM182TとのM69I;及びω断片レポータードメインにおけるN276Dが含まれる。これら変化したレポータードメイン配列は、言うまでもなく、FECアッセイの操作可能なメンバーを構成するために、適切なレポーター断片メンバーに組み込まれ得る。インタラクタードメインが、操作可能なメンバー又はFECアッセイのメンバーの操作可能なペアを構成するための本発明の改変レポータードメインの1以上に連結される、当業者が所望し得る何らかのこのようなドメインであり得ることは、本発明の範囲内である。当業者にとって当然のことながら、これらのコンストラクトは操作可能であり得、従って、インビボ又はインビトロで有用であり得る。本発明の阻害剤耐性コンストラクトのインビボでの使用が具体的にもくろまれる。
【0023】
さらなる代表的実施形態において、本発明のレポーター断片メンバーは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列の単離又は精製ポリペプチドを含む。ある好ましい実施形態において、本発明のレポーター断片は、基本的に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列の単離又は精製ポリペプチドから構成される。具体的な好ましい実施形態において、本発明のレポーター断片は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列の単離又は精製ポリペプチドから構成される。
【0024】
本発明はまた、レポーター断片ペアの対形成を含む単離又は精製された特異的断片ペアも提供し、この場合、対形成は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される少なくとも1つのポリペプチドを含む。具体的な実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列(標識されたコンストラクトPB15を示す。)により例示されるように、配列の実質的な再編成を特徴とする。さらなる実施形態には、配列番号23及び24により例示されるものなどのこのような再編成された基本配列由来のレポーター断片が含まれる。
【0025】
本発明と一致して、リンカードメインを本発明のレポーター断片に付加し得る。さらに、介在リンカードメイン有り又は無しでインタラクタードメインを本発明のレポーター断片に連結し得る。リンカードメインの数、例えば、G4Sドメイン(即ちGGGGS配列反復)は0、1、2、3、4、5、6以上であり得、(G4S)nとして特定し得る(ここでnは0、1、2、3、4、5、6以上の整数であり得る。)。何らかの特定のインタラクター及びレポータードメインコンストラクト及び断片対形成に対する適切なリンカードメイン配列及び/又はリンカードメイン反復数の選択は、当業者による通常の実験レベル内である。
【0026】
本発明のレポーター断片には、均一インビトロFECアッセイへと操作可能に構成され得る単離及び精製レポーター断片が含まれる。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、66、68、70、72、74、76、80及び82で示される配列から選択されるヌクレオチド配列を含むか又はこれらからなる核酸など、本発明のポリペプチド実施形態をコードする核酸を提供する。
【0028】
本発明は、さらに、本明細書中に記載のレポーター断片及びインビトロFECアッセイ成分を作製し、精製し、単離し、使用する方法を提供する。
【0029】
本発明は、さらに、本発明の単離及び精製ポリペプチド及びレポーター断片ペアを含む均一インビトロFECアッセイを提供する。
【0030】
従って、別の態様において、本発明は、
(a)関心のある被分析物質の存在について試験しようとする試料を得て;
(b)被分析物質に対して親和性があるインタラクタードメインを含む、精製された第一のレポーター断片ペアメンバーを得て;
(c)関心のある被分析物質に対して親和性があり、関心のある被分析物質と第一及び第二のレポーター断片ペアメンバーのインタラクタードメインとの親和性を通じて第一のレポーター断片ペアメンバーとの会合に際してレポーター酵素活性を再構成することにおいて操作可能であるインタラクタードメインを含む精製された第二のレポーター断片ペアメンバーを得て;
(d)第一及び第二のレポーター断片ペアメンバーが、被分析物質とのインタラクタードメインの親和性を通じて会合することを可能にするのに十分なインビトロでのアッセイ条件を提供する段階を含み、レポーター酵素活性の再構成が試料中の被分析物質の存在を示す、被分析物質の存在をアッセイする方法を提供する。
【0031】
関連する態様において、本発明は、本発明のレポーター系と試料を接触させることと、第一及び第二のポリペプチドサブユニットの会合の結果として生じる酵素活性の有無を検出することと、を含む、試料中の関心のある被分析物質の存在を調べる方法も提供する。
【0032】
別の関連する態様において、本発明は、試料中の関心のある被分析物質の存在を調べるための本発明のレポーター系の使用を提供する。
【0033】
本発明はまた、特定の被分析物質に対して均一インビトロアッセイを行うために適応させられた特異的レポーター断片ペアも提供する。ある実施形態において、被分析物質はNi2+、Zn2+又はCo2+などの2価金属陽イオンである。さらに別の実施形態において、被分析物質は抗体である。抗体被分析物質は、関心のあるアッセイに依存して、モノクローナル抗体又はその他、適切な抗体であり得る。さらなる実施形態において、被分析物質は抗原である。さらなる実施形態において、被分析物質は1以上のポリヌクレオチド又は特異的配列である。このようなポリヌクレオチドは、メチル化されていてもされていなくてもよく、それらのメチル化状態は、本発明の特定の実施形態の使用から得られる情報であり得る。
【0034】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のアッセイを行うためのキット又は、材料、試薬及び本発明のアッセイ成分を調製するための又は本発明のアッセイの続く使用のための説明書を含むキットを含む。
【0035】
本発明のその他の目的、特性及び長所は、続く詳細な説明から明らかになろう。しかし、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び変化がこの詳細な説明から当業者にとって明らかとなるので、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の具体的な実施形態を示す一方、単なる説明のために与えられるものであることを理解されたい。
【0036】
次の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある一定の態様をさらに明らかにするために含まれる。本明細書中で与えられる本発明の詳細な説明及び実施例と組み合わせてこれらの図面の1以上を参照することにより、本発明がより詳細に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】FECアッセイ及びその基本成分の概略図。
【図2】2価金属陽イオンに対する均一インビトロFECアッセイの概略図。
【図3】野生型又は突然変異β−ラクタマーゼレポーターコンストラクトを使用する2価陽イオンに対する均一インビトロFECアッセイの実行。
【図4】Ni2+に対する均一インビトロFECアッセイにおける10分間のOD492試験。
【図5】抗ヒスチジンタグモノクローナル抗体に対する均一インビトロFECアッセイの概略図。
【図6】抗ヒスチジンタグモノクローナル抗体に対する均一インビトロFECアッセイの実行(OD492での吸収)。
【図7】本発明のタンパク質断片の精製。図面の左のパネルはαβ−ラクタマーゼ酵素断片の誘導発現前後及びアフィニティー精製物質のゲル電気泳動である。α断片の表示されたクロマトグラム「アフィニティー精製」及び表示されたクロマトグラム「ゲルろ過」プロファイルの両方が、精製酵素断片の実施形態を説明する。本発明のその他の断片に対して同様の結果が得られる。
【図8】被分析物質としてのNi2+に対して反応性のあるβ−ラクタマーゼ酵素断片及び本発明のα及びωβ−ラクタマーゼ断片の等モル量を用いたFECインビトロアッセイの進展の492nmでの吸収読み取り。
【図9】マルチウェルプレート形式でのNi2+に対するインビトロアッセイ中の色の変化の強度の説明。時間点は非線形である。各ウェルの色の強度は、被分析物質の存在及び非存在下(それぞれウェルA1−A8及びB1−B8)及び基質のみ(ウェルC1−C8)において示される。
【図10】突然変異コンストラクトのアッセイの特徴。単位はmOD分−1である。
【図11】HSVに対するコンストラクトのアッセイの特徴。単位はmOD分−1である。
【図12】野生型TEM−1(PB11+PB13)FECと比較した、最適阻害剤耐性突然変異TEM−33M182TN276D(PB11.12+PB13.3)の相対的耐性を示すグラフ。
【図13】野生型TEM−1(PB11+PB13)FEC及び全長TEM−1β−ラクタマーゼと比較した、最適阻害剤耐性突然変異TEM−33M182T N276D(PB11.12+PB13.3)のβ−ラクタマーゼ阻害剤添加血清アッセイの結果を示すグラフ。
【図14】BLαProG/BLω−HSV1を用いたHSV−1アッセイの特徴を示すグラフ。カットオフ=1.20。感受性=HSV 1+veに対して98%。特異性=HSV2+veに対して100%。特異性=HSV−veに対して100%。
【図15】BLαProG/BLω−HSV2を用いたHSV−2アッセイの特徴を示すグラフ。カットオフ=1.16。感受性=HSV2+veに対して94%。特異性=HSV1+veに対して100%。特異性=HSV−veに対して100%。
【図16】BLαHSV1/BLω−ProGを用いたHSV−1アッセイの特徴を示すグラフ。カットオフ=1.15。感受性=HSV1+veに対して98%。特異性=HSV2+veに対して100%。特異性=HSV−veに対して96%。
【図17】BLαHSV1/BLω−ProGを用いたHSV−2アッセイの特徴を示すグラフ。カットオフ=1.20。感受性=HSV2+veに対して98%。特異性=HSV1+veに対して100%。特異性=HSV−veに対して96%。
【図18】正常(対照)又はHSV−2高陽性患者血清の何れかの存在下でのニトロセフィン加水分解の典型的な速度を示すグラフ(15分間の予備温置時間後、492nmで監視)。加水分解の平均速度は0.85mOD分−1(HSV陰性)及び5.14mOD分−1。
【図19】β−ラクタマーゼに基づくFECのイラスト表示及びHSV−1及びHSV−2特異的抗原性ペプチドの配列。(a)酵素断片、α及びω、は、疾患特異的抗原性ペプチド(P)及びプロテインGの1つのドメインなど、被分析物質結合物質に連結される。被分析物質(疾患特異的抗体)の存在下で、断片を強制的に近接近させ(右)、それによりニトロセフィンの加水分解が開始されるが、それは黄色から赤への色の変化として見ることができる。(b)HSV−1及びHSV−2抗原性ペプチドの短縮型糖タンパク質アミノ酸配列。下線付きの太字は免疫優勢領域を表す。
【図20】この研究で使用されるFEC断片の概略図。BLはβ−ラクタマーゼα(α、青)及びω(ω、緑)断片を指す。被分析物質結合部分(赤)、ProG、HSV−P1及びHSV−P2は、それぞれプロテインGドメイン及びHSV−1及びHSV−2に対するHSV型特異的抗原性ペプチドを指す。ヒスチジンタグを灰色で示す。被分析物質結合部分に酵素断片を連結するために、(Gly4Ser)3リンカーを使用した。
【0038】
配列リストの簡単な説明
配列番号1。PB11、ネイティブβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトをコードするヌクレオチド配列。
【0039】
配列番号2。PB11、ネイティブβ−ラクタマーゼのα断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0040】
配列番号3。PB13、ネイティブβ−ラクタマーゼ配列のω断片コンストラクトをコードするヌクレオチド配列。
【0041】
配列番号4。PB13、ネイティブβ−ラクタマーゼのω断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0042】
配列番号5。PB11.2、V74T及びM182Tの置換を含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトをコードするヌクレオチド配列。
【0043】
配列番号6。PB11.2、V74T及びM182Tの置換を含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0044】
配列番号7。PB11.11 置換M69Lを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクト。
【0045】
配列番号8。PB11.11 置換M69Lを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0046】
配列番号9。PB11.12 置換M69L及びM182Tを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクト。
【0047】
配列番号10。PB11.12 置換M69L及びM182Tを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0048】
配列番号11。PB13.1 M211Qの置換を含有するβ−ラクタマーゼ配列のω断片コンストラクトをコードするヌクレオチド配列。
【0049】
配列番号12。PB13.1 M211Qの置換を含有するβ−ラクタマーゼ配列のω断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0050】
配列番号13。PB11.13 置換M69I及びM182Tを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトをコードするヌクレオチド配列。
【0051】
配列番号14。PB11.13 置換M69I及びM182Tを含有するβ−ラクタマーゼ配列のα断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0052】
配列番号15。PB11.4、(G4S)3リンカードメインを含むネイティブβ−ラクタマーゼのα断片をコードするヌクレオチド配列。
【0053】
配列番号16。PB11.4、(G4S)3リンカードメインを含むネイティブβ−ラクタマーゼのα断片のアミノ酸配列。
【0054】
配列番号17。PB13.2、(G4S)3リンカードメインを含むネイティブβ−ラクタマーゼのω断片をコードするヌクレオチド配列。
【0055】
配列番号18。PB13.2、(G4S)3リンカードメインを含むネイティブβ−ラクタマーゼのω断片のアミノ酸配列。
【0056】
配列番号19。PB13.3 置換N276Dを含有するβ−ラクタマーゼのω断片コンストラクト。
【0057】
配列番号20。PB13.3 置換N276Dを含有するネイティブβ−ラクタマーゼのω断片コンストラクトのアミノ酸配列。
【0058】
配列番号21。PB15、β−ラクタマーゼの再編成コンストラクトのアミノ酸配列。
【0059】
配列番号22。PB15.3、β−ラクタマーゼの、及びM182T、I208T及びF230Yの置換を含む、再編成コンストラクトのアミノ酸配列。
【0060】
配列番号23。PB7.2、PB15.3のα断片のアミノ酸配列。
【0061】
配列番号24。PB9.1、PB15.3のω断片のアミノ酸配列。
【0062】
配列番号25から配列番号65は、表1及び5で記載のとおりの合成プライマーである。
【0063】
配列番号66 P1−I trunc、HSV−1短縮型抗原ヌクレオチド配列。
【0064】
配列番号67 P1−I trunc、HSV−1短縮型抗原アミノ酸配列。
【0065】
配列番号68 BLαHSV−1α断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0066】
配列番号69 BLαHSV−1α断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0067】
配列番号70 BLω、HSV−1ω断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0068】
配列番号71 BLω、HSV−1ω断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0069】
配列番号72 P2−1trunc、HSV−2短縮型抗原ヌクレオチド配列。
【0070】
配列番号73 P2−1trunc、HSV−2短縮型抗原アミノ酸配列。
【0071】
配列番号74 BLαHSV−2 α断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0072】
配列番号75 BLαHSV−2 α断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0073】
配列番号76 BLωHSV−2 ω断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0074】
配列番号77 BLωHSV−2 ω断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0075】
配列番号78 プロテインGヌクレオチド配列。
【0076】
配列番号79 プロテインGアミノ酸配列。
【0077】
配列番号80 BLαProG、プロテインGα断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0078】
配列番号81 BLαProG、プロテインGα断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0079】
配列番号82 BLωProG、プロテインGω断片コンストラクトヌクレオチド配列。
【0080】
配列番号83 BLωProG、プロテインGω断片コンストラクトアミノ酸配列。
【0081】
配列番号84 HSV1のgG1のアミノ酸92から148。
【0082】
配列番号85 HVS2のgG2のアミノ酸又は551から641。
【発明を実施するための形態】
【0083】
別段の定義がない限り、本明細書中で使用される全ての技術及び科学用語は、当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する(例えば、細胞生物学、化学及び分子生物学において)。分子及び生化学的方法のために使用される標準的技術は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.及びAusbelら、Short Protocols in Molecular Biology(1999)第4版、John Wiley&Sons、Inc.及び題名「Current Protocols in Molecular Biology」の完全版)で見出すことができる。
【0084】
特定の実施形態及び実施例の次の詳細な説明は、説明を目的として与えられるものであり、限定するために与えられるものではない。禁忌であるか又は別段の断りがない限り、これらの説明において及び本明細書を通して、「a」及び「an」という用語は、1又は複数を意味する。同様に、「又は」は「及び/又は」を意味する。
【0085】
「含む(comprising)」は、「含む(comprising)」という語に続くものを全て含むがこれらに限定されないことを意味する。従って、「含む(comprising)」という語の使用は、列挙される要素が必要とされるか又は必須であるが、その他の要素は任意であり、存在してもよいししなくてもよいことを示す。「からなる(consisting of)」は、「からなる(consisting of)」という句に続くものを全て含み、それらに限定されることを意味する。従って、「からなる(consisting of)」という句は、列挙される要素が必要であるか又は必須であり、その他の要素が存在し得ないことを示す。「基本的に、からなる(Cconsisting essentially of)」は、この句の後に列挙される何れの要素も含まれ、列挙される要素に対する開示において指定される活性又は作用を妨害しないか又は寄与しないその他の要素に限定されることを意味する。従って、「基本的に、からなる(Cconsisting essentially of)」という句は、列挙される要素が必要とされるか必須であるが、その他の要素は任意であり、それらが列挙される要素の活性又は作用に影響するか否かによって、存在し得るか又はし得ないことを示す。
【0086】
値の範囲が与えられる場合、途中にある各値、文脈からの明らかな別段の指示がない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間及び何らかのその他の規定されるか又は規定される範囲において途中にある値が本発明内に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立に、このより小さい範囲に含まれ得、また本発明内に包含され、規定される範囲における何らかの具体的に除外される制限に制約される。
【0087】
レポーター成分及びレポーターポリペプチド断片
本発明は、均一インビトロFECアッセイの単離及び精製成分としての使用に適応させられたポリペプチドを含むかそれらからなるレポーター成分を提供する。このレポーター成分はレポーター系の一部をなす。上記で考察したように、FECアッセイにおけるレポーター系は、会合した場合に検出可能なシグナルを生じさせることができるレポータータンパク質複合体を形成する2以上のポリペプチド断片を含む。従って、各レポーター成分は、少なくとも1つのこのようなポリペプチド断片又はサブユニット(本明細書中で、「レポーター断片」と呼ばれる。)を含む。例えば、βラクタマーゼに基づく系の場合、この2つのレポーター成分がアッセイ条件下で会合する場合、結果として得られる複合体がβラクタマーゼ活性を有するように、第一のレポーター成分はβラクタマーゼのα断片を含み得、第二のレポーター成分は、βラクタマーゼのω断片を含み得る。それらの個々のレポーターポリペプチド断片(「サブユニット」とも呼ばれる。)が会合する場合に一緒になって検出可能な酵素活性を生じさせることができる第一のレポーター成分及び第二のレポーター成分の組み合わせは、本明細書中で「レポーター成分ペア」と呼ばれ、個々のレポーターポリペプチド断片はまとめて「レポーター断片ペア」と呼ばれる。
【0088】
レポーター断片及び系に対する基礎として使用され得るレポーターポリペプチドの例には、β−ラクタマーゼ(例えばTEM−1β−ラクタマーゼ:EC:3.5.2.6)β−ガラクトシダーゼ及びルシフェラーゼなどの生物発光タンパク質(例えばホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ)及び緑色蛍光タンパク質を含む蛍光タンパク質が含まれる。レポーターポリペプチドは、通常、会合した場合に元の全長ポリペプチドの活性を再構成することができる2つの断片に分割される。例えば、β−ラクタマーゼ及びβ−ガラクトシダーゼは、通常、2つの断片、α及びω断片に分割される。2つの断片を生じさせるためのこれらの様々なタンパク質のアミノ酸配列における適切な切断点は既に述べている。
【0089】
レポーターポリペプチド/断片は、それらがインビトロでの使用に適切であるように選択される(疑義を避けるために、本文脈において、インビトロという用語は、アッセイが生きている細胞の外で行われることを意味する。)。このレポーターポリペプチドは、通常、例えば、安定性を促進し、溶解性を向上させ及び/又は凝集性を低下させるための、インビトロでの使用に対するそれらの適合性を向上させるアミノ酸変化を有する野生型配列の変異体である。特に好ましい実施形態において、レポーターポリペプチド/断片は、野生型ポリペプチドと比較して、レポーター機能に必要とされるポリペプチドの活性、例えばβラクタマーゼ活性の、酵素阻害剤などの阻害剤に対する感受性が低下している。このような阻害剤には、試料、例えば、関心のある被分析物質の存在について試験することが必要とされる血液及び血清試料などの生体試料中で見出される化合物、が含まれる。このような阻害剤の特定の例は、血液試料を採取する個体への抗生物質の投与の結果血液中で見られるβ−ラクタマーゼ活性の阻害剤である。
【0090】
アッセイ条件下で、レポーター活性を有する活性複合体を形成するためのレポーター断片の会合には、通常、レポーター成分のその他の領域と標的被分析物質との間の相互作用が介在する。従って、このレポーター成分は、通常、インタラクター部分又はドメインを含む。
【0091】
インタラクタードメインは、関心のある標的被分析物質に対する結合特異性を有する。インタラクタードメインには、例えば、ペプチド、糖タンパク質、多糖類、抗原、抗体及び抗体の抗原結合断片、例えば相補性決定領域(CDR)など、が含まれる。抗原には、病原体由来の抗原、例えばウイルス性又は細菌性抗原など、が含まれる。抗体/CDRには、病原体、例えばウイルス又は細菌など、由来の抗原に結合する配列が含まれる。インタラクタードメインの特定の例には、プロテインGのIgG結合ドメイン及び単純ヘルペスウイルス抗原が含まれる(その特に好ましいものは、HSV1からの短縮型糖タンパク質G1エンベロープタンパク質又はHSV2からの短縮型糖タンパク質G2エンベロープタンパク質、例えばgG1のアミノ酸92から148又はgG2の551から641などである。)。
【0092】
インタラクタードメインをレポーター断片に直接又はリンカーを介して連結し得る。適切なリンカードメインには、ペプチド、例えばグリシンリッチ反復配列(例えばG4S反復配列−即ちGGGGS配列回復)が含まれる。リンカードメイン、例えばG4Sドメイン、の数は、1、2、3、4、5、6以上であり得る。ある実施形態において、グリシンリッチ反復配列の数は好ましくは2又は3である(特にインタラクタードメインが150又は100アミノ酸より少ないポリペプチドである場合)。より大きいインタラクタードメインを使用する場合、リンカー長を長くする事が望ましいものであり得る。
【0093】
ある実施形態において、リンカードメインはフレキシブルである。別の実施形態において、リンカードメインは堅い。
【0094】
適切なリンカードメイン配列及び/又は何らかの特定のインタラクター及びレポーター断片コンストラクト及び断片対形成に対するリンカードメイン反復の数の選択は、当業者による通常レベルの実験の範囲内である。
【0095】
レポーター成分を形成するために、レポーター断片ポリペプチド、リンカードメイン及びインタラクタードメインを共有又は非共有手段により連結し得る。
【0096】
ある実施形態において、リンカードメイン及びインタラクタードメインはポリペプチドである。従って、レポーター成分は1つのポリペプチドであり得る。
【0097】
別の実施形態において、結合(conjugation)、例えばチオ−チオ、アミン−カルボキシル又はアミン−アルデヒド官能基を介した、例えば共有カップリングにより、インタラクタードメインにレポーター断片を連結する。特定の例には、炭水化物基を介した糖タンパク質へのポリペプチドの架橋;例えばアミン反応基及びスルフィドリル反応基を有するヘテロ二官能性架橋剤を用いた、一級アミンを介した架橋(N末端及びリジン残基で見られる。);カルボキシル基を介した架橋(C末端で、及び、グルタミン酸及びアスパラギン酸残基での側基として見られる。);遊離スルフヒドリル基を介した架橋;及びジスルフィド交換が含まれる。
【0098】
非共有法には、アビジン−ビオチン系及びオリゴヌクレオチド−タンパク質結合のハイブリッド形成が含まれる。
【0099】
ある態様において本発明は、本明細書中で開示される酵素ペプチドのアミノ酸配列からなるか又は基本的にそれらからなるか又はそれらを含むものなど、単離又は精製ペプチド及びタンパク質レポーター断片及びレポーター成分を提供する。図面又は配列リストにおいて、本発明の代表的な配列が提供される。提供されるペプチド配列は、本明細書中で、本発明に記載のアッセイのレポーター断片又はレポーターペアメンバー/成分と呼ばれる。
【0100】
本明細書中で使用される場合、ペプチド/ポリペプチド/タンパク質は、実質的に細胞性物質不含又は化学的前駆体もしくはその他の化学物質不含であるとき、「単離されている」又は「精製されている」と言われる。本発明のペプチドは、均一になるまで又はその他の程度の純度まで精製され得る。精製レベルは使用目的に基づく。本発明における使用目的は特異的被分析物質に対する均一インビトロFECアッセイの操作可能な成分である。
【0101】
ある使用において、「実質的に細胞性物質不含」には、その他のタンパク質(即ち夾雑タンパク質)が約30%(乾燥重量)未満である、その他のタンパク質が約20%未満である、その他のタンパク質が約10%未満である、又はその他のタンパク質が約5%未満である、ペプチドの調製品が含まれる。ペプチドが組み換え産生される場合、これは実質的に培地不含でもあり得、即ち培地はタンパク質調製品の体積の約20%未満である。
【0102】
「実質的に化学的前駆体又はその他の化学物質不含」という語には、その合成に関与する化学的前駆体又はその他の化学物質からそれが分離されているペプチドの調製品が含まれる。ある実施形態において、「実質的に化学的前駆体又はその他の化学物質不含」という語には、化学的前駆体又はその他の化学物質が約30%未満(乾燥重量)である、化学的前駆体又はその他の化学物質が約20%未満である、化学的前駆体又はその他の化学物質が約10%未満である、又は化学的前駆体又はその他の化学物質が約5%未満である、酵素ペプチドの調製品が含まれる。
【0103】
単離レポーター断片及びポリペプチドレポーター成分は、それを発現するように改変されている細胞から精製され得る(組み換え)か、又は既知のタンパク質合成方法を用いて合成され得る。例えば、酵素ペプチドをコードする核酸分子を発現ベクターにクローニングし、その発現ベクターを宿主細胞に導入し、宿主細胞でそのタンパク質を発現させる。適切な宿主細胞を下記でさらに詳細に記載する。次に、適切なタンパク質精製技術を用いた適切な精製スキームによりこのタンパク質を細胞から単離し得る。本発明の代表的技術は下記で示す実施例で詳細に記載する。
【0104】
ある態様において、本発明は、提供されるアミノ酸配列からなるタンパク質を提供する。あるアミノ酸配列がタンパク質の最終アミノ酸配列である場合、タンパク質はそのアミノ酸配列からなる。さらなる態様において、本発明は、さらに、基本的に提供されるアミノ酸配列からなるタンパク質を提供する。タンパク質は、アミノ酸配列が本発明のタンパク質の機能的特徴を変化させない数個のさらなるアミノ酸残基のみを伴い存在する場合、基本的にこのようなアミノ酸配列からなる。さらなる態様において、本発明は、提供されるアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。アミノ酸配列がタンパク質の最終アミノ酸配列の少なくとも一部である場合、タンパク質はそのアミノ酸配列を含む。このような様式においてこのタンパク質は、そのペプチドのみであり得るか又は、それと連結されるアミノ酸残基(連続するコードされる配列)又は異種アミノ酸残基もしくはペプチド配列などのさらなるアミノ酸分子を有し得る。このようなタンパク質は、数個のさらなるアミノ酸残基を有し得るか又は数百以上のさらなるアミノ酸を含み得る。様々なタイプのこれらのタンパク質がどのようにして作製され、単離され得るかの簡単な説明は以下で与える。
【0105】
キメラ又は融合タンパク質を形成するために、本発明のペプチドは、異種配列に連結され得る。このようなキメラ及び融合タンパク質は、実質的に酵素ペプチドと同種ではないアミノ酸配列を有する異種タンパク質に操作可能に連結された酵素ペプチドを含み得る。「操作可能に連結される」とは、それぞれの操作可能性が破壊されないように酵素ペプチド及び異種タンパク質が融合されることを指す。異種タンパク質を酵素ペプチドのN末端又はC末端に融合させ得る。
【0106】
標準的組み換えDNA技術によりキメラ又は融合タンパク質を作製し得る。例えば、従来の技術に従い、様々なタンパク質配列をコードするDNA断片を一緒にインフレームで連結する。別の実施形態において、自動DNA合成装置を含む従来の技術により融合遺伝子を合成し得る。あるいは、2つの連続した遺伝子断片の間に相補的突出部(続いて、キメラ遺伝子配列を生成させるためにこれをアニーリングし再増幅させ得る。)を生じさせるアンカープライマーを用いて、遺伝子断片のPCR増幅又は連結(ライゲーション)を行い得る(Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、1998)。さらに、既に融合部分をコードする、多くの発現ベクターが市販されている。融合部分がインフレームで酵素ペプチドに連結されるように、酵素ペプチドをコードする核酸をこのような発現ベクターにクローニングし得るが、これは、各成分の操作可能性を破壊することなく融合タンパク質を作製する1つの手段である。
【0107】
代替的な配列付番スキームにおける相同位置の同定
2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列の比較において相同的位置を決定するために、最適な比較のために配列を整列(アラインメント)させる(例えば、最適アラインメントのための第一及び第二のアミノ酸又はヌクレオチド配列の一方又は両方においてギャップを導入し得、比較のために非相同配列を無視し得る。)。好ましい実施において、参照配列の長さの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%以上を比較のために整列させる。次に、対応するアミノ酸の位置又はヌクレオチドの位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第一の配列における位置に第二の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドがある場合、その位置において分子は同一であり、2つにおいてその位置は相同である。2つの配列間の%同一性は、ギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れて(これらは、2つの配列の最適整列のために導入される必要がある。)、それらの配列が共有する同一位置の数の関数である。
【0108】
数学的アルゴリズムを用いて、配列の比較及び2つの配列間の%同一性及び類似性を決定し得る(Computational Molecular Biology、Lesk、A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith、D.W.編、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part 1、Griffin、A.M.及びGriffin、H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje、G.、Academic Press、1987;及びSequence Analysis Primer、Gribskov、M.及びDevereux、J.編、M Stockton Press、New York、1991)。
【0109】
例えば、GCGソフトウェアパッケージのBestFitプログラムを用いて、ペアワイズアラインメント及び配列同一性及びホモロジーのレベルを計算し得る。Needleman及びWunschのアルゴリズム(これは、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている。)を用いて2つのアミノ酸配列間の%同一性を計算し得る(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))。このアルゴリズムは通常、Blossom62マトリクス又はPAM250マトリクスの何れか及び16、14、12、10、8、6又は4のギャップウエイト及び1、2、3、4、5又は6の長さウエイトを用いて、使用される。GAPプログラム(Devereux、J.ら、Nucleic Acids Res.12(1):387(1984))を用いて、NSWgapdna.CMPマトリクス及び40、50、60、70又は80のギャップウエイト及び1、2、3、4、5又は6の長さウエイトとともに、2つのヌクレオチド配列間の%同一性を計算し得る。
【0110】
このようにして、アミノ酸に対する1文字表記と、それに続く関連する非置換配列又はペプチドの位置の数と、それに続く置換アミノ酸に対する1以上の1文字表記により、アミノ酸配列又はペプチドのある位置の置換が示される。例えば、添付の配列リスト及び図面で示されるようなTEM−1β−ラクタマーゼのα断片の位置72のバリンに対するスレオニンの置換は、V74Tと呼ばれる。同様の表示は、本明細書中で提供される文脈及びさらなる詳細から明らかとなろう。
【0111】
インビトロでのレポーター機能を向上させるためのアミノ酸修飾
本発明のアッセイでの使用のためのレポーターポリペプチド断片は、通常、このようなアッセイでの使用に対するレポーターポリペプチドの適合性を向上させるアミノ酸配列変化又は修飾を含む。特に、好ましい実施形態において、少なくとも1つのレポーターポリペプチド断片は、再構成される活性レポーターポリペプチド複合体の、非修飾(例えば野生型)アミノ酸配列の阻害剤である物質による阻害に対する感受性を低下させる、そのアミノ酸配列における変化又はそのアミノ酸配列に対する修飾を含む。
【0112】
このような変異体は、通常、1以上の非保存的アミノ酸の、置換、欠失、挿入、逆転もしくは短縮又は重要な残基もしくは重要な領域における、置換、挿入、逆転もしくは欠失を含有する。機能が変化した変異体はまた、結果として機能が変化しないか又は顕著に変化しない類似アミノ酸の置換も含有し得る。ある実施形態において、変異体は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸変化を含有する。
【0113】
本発明は、1個のアミノ酸置換又はさらに本明細書中で例示されるように、均一インビトロFECアッセイでの使用に特に適応させられた組み合わせでの複数の置換を含む修飾β−ラクタマーゼペプチド配列を提供する。このような置換の具体例は、α断片のアミノ酸位置69での置換(好ましくはM69L又はM69I)(これによりβ−ラクタマーゼ阻害剤による阻害が低下する。)及びω断片のアミノ酸位置276での置換(好ましくはN276D)(これによってもまた、β−ラクタマーゼ阻害剤による阻害が低下する。)である。その他の例は、アミノ酸位置74、182、208、211及び230の1以上での置換(好ましくはV74T、M182T、I208T、M211Q及びF230Yの1以上)から選択される。
【0114】
さらなる例は、次の疎水性アミノ酸残基の、疎水性がより低いと考えられる何らかの残基への突然変異であり、アッセイを向上させ得る:V44、Y46、L49、L51、F66、V74、L81、F151、P183、V184、A187、L190、L194、L198、L199、L207、1208、W210、M211、A232、I247、A249、P257、1260、I261、I262、I263、Y264、I282、L286(特に太字及び下線付きの残基)。
【0115】
与えられるアミノ酸の付番は、配列番号1及び3で示される野生型TEM−1βラクタマーゼ配列を基準にしている。しかし、当然のことながら、等価位置で相同βラクタマーゼ配列にも修飾が適用され得る(配列アラインメントによる等価位置の決定に関する先行するセクションを参照。)。
【0116】
様々な技術を使用して、均一アッセイなどインビトロアッセイでの使用に対する特性が向上している修飾されたレポーター断片を得ることができる。例えば、部位特異的突然変異誘発により配列変化を導入し得る。適切な部位の選択は、例えば、x線結晶学又はNMRなどの技術により決定された構造情報を含む一次アミノ酸配列及び/又は二次/三次構造情報が手がかりとなり得る。例えば、阻害剤に対する感受性が低下している変異体の設計を支援するために、酵素の活性部位の3D構造を使用することができる(例えば、Jelsch、C、F.Lenfantら、1992、FEBS Lett 299(2):135−42に記載のようなTEM1の結晶構造参照)。
【0117】
無作為突然変異誘発又は定方向分子進化などの技術と、それに続く所望の特性を有する変異体の選択によっても、特性が向上している修飾されたレポーター断片を得ることができる(例えば非修飾タンパク質の阻害剤の存在下で酵素活性について変異体を試験することによって)。
【0118】
本発明において有用なさらなる修飾は、一般に20種類の天然に存在するアミノ酸と言われる20種類のアミノ酸以外のアミノ酸を含有する配列を含み得る。さらなる修飾には、以下に限定されないが、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン付加などのタンパク質へのアミノ酸のトランスファー−RNA介在付加及びユビキチン化が含まれる。
【0119】
従って、本発明のペプチド及びコンストラクトはまた、置換されたアミノ酸残基が遺伝子コードによりコードされるものではない誘導体又は類似体も包含し、これには置換基が含まれ、ここでは、成熟酵素ペプチドが、酵素ペプチドの半減期を延長させるための化合物などの別の化合物(例えばポリエチレングリコール)と融合されるか、又はリーダーもしくは分泌配列もしくは成熟酵素ペプチド又はプロタンパク質配列の精製のための配列などのさらなるアミノ酸が成熟酵素ペプチドに融合させられる。
【0120】
核酸分子
本発明は、本明細書中に記載のようなレポーターポリペプチド断片及びレポーター成分を含む、酵素ペプチド又は本発明のタンパク質をコードする単離核酸分子を提供する。特定の実施形態において、本発明は、図面及び添付の配列リストに記載のような本発明の酵素ペプチド又はタンパク質及び様々な修飾又はその断片をコードする単離核酸分子を提供する。このような核酸分子は、本発明のペプチド又はコンストラクトの1つをコードするヌクレオチド配列からなるか又は基本的にそれらからなるか又はそれらを含む。
【0121】
本明細書中で使用される場合、「単離(された)」核酸分子は、その核酸の天然の源に存在するその他の核酸から分離されているものである。さらに、転写産物又はcDNA分子など、「単離(された)」核酸分子は、実質的にその他の細胞性物質又は、組み換え技術により産生される場合は培地又は、化学合成される場合は化学的前駆体もしくはその他の化学物質不含である。しかし、本核酸分子は、その他のコード配列又は調節配列と融合され得、それでも単離されているとみなされ得る。
【0122】
例えば、ベクター中に含有される組み換えDNA分子は単離されているとみなす。単離DNA分子のさらなる例には、異種宿主細胞中で維持される組み換えDNA分子又は溶液中の精製(部分的又は実質的に)DNA分子が含まれる。単離RNA分子には、本発明の単離DNA分子ならびにその新規断片のインビボ又はインビトロRNA転写が含まれる。本発明による単離核酸分子にはさらに、合成により作製されるこのような分子が含まれる。
【0123】
従って、本発明は、提供されるヌクレオチド配列からなる核酸分子を提供する。ヌクレオチド配列がその核酸分子の完全ヌクレオチド配列である場合、核酸分子はヌクレオチド配列からなる。本発明は、基本的に提供されるヌクレオチド配列からなる核酸分子をさらに提供する。このようなヌクレオチド配列が最終核酸分子において数個のさらなる核酸残基のみとともに存在する場合、核酸分子は基本的にヌクレオチド配列からなる。
【0124】
本発明はさらに、提供されるヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。ヌクレオチド配列が核酸分子の最終ヌクレオチド配列の少なくとも一部である場合、核酸分子はヌクレオチド配列を含む。このような様式において、この核酸分子は、そのヌクレオチド配列のみであるか又はそれと天然に結合される核酸残基又は異種ヌクレオチド配列などのさらなる核酸残基を有し得る。このような核酸分子は、数個のさらなるヌクレオチドを有し得るか又は数百以上のさらなるヌクレオチドを含み得る。様々なタイプのこれらの核酸分子がどのようにして容易に作製又は単離され得るかについての簡単な説明は以下で与える。
【0125】
単離核酸分子には、以下に限定されないが、酵素ペプチドのみをコードする配列、成熟ペプチドをコードする配列及びさらなるコード配列、例えばリーダー又は分泌配列など(例えば、プレプロ又はプロタンパク質配列)、さらなるコード配列を伴うか又は伴わない成熟ペプチドをコードする配列、さらに、さらなる非コード配列、例えばイントロン及び非コード5’及び3’配列、例えば転写、mRNAプロセシング(スプライシング及びポリアデニル化シグナルを含む。)、リボソーム結合及びmRNAの安定性に寄与する転写されるが翻訳されない配列などが含まれる。さらに、例えば精製を促進するペプチドをコードするマーカー配列に本核酸分子を融合させ得る。
【0126】
単離核酸分子は、mRNAなどのRNAの形態又はクローニングにより得られるかもしくは化学合成技術により作製されるかもしくはそれらの組み合わせにより作製されるcDNA及びゲノムDNAを含むDNAの形態であり得る。核酸、特にDNAは、2本鎖又は1本鎖であり得る。1本鎖核酸は、コード鎖(センス鎖)又は非コード鎖(アンチセンス鎖)であり得る。
【0127】
遺伝子コードの縮重を斟酌すれば、配列は、それらが本発明のヌクレオチド配列と少なくとも約50%、通常は少なくとも約60%、より一般的には約70%、最も一般的には約80%、好ましくは少なくとも約90%及び最も好ましくは約95%のヌクレオチドにおいて同一である場合、基本的に同じであるとみなされる。示されるものと基本的に同じである配列もまた、標準的条件下でポリヌクレオチドの相補性を含有する核酸セグメントとハイブリッド形成することができる配列として機能上定義され得る。「非常に関連のある配列」という用語は、本明細書中で、比較されているポリヌクレオチド又はポリペプチドと最小又は50%の類似性がある配列を指すために使用される。
【0128】
当然、本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドの配列と相補的であるか又は基本的に相補的であるオリゴヌクレオチドも包含する。「相補的」である核酸配列は、標準的なワトソン−クリック相補性規則に従い塩基対形成することができるものである。本明細書中で使用される場合、「相補的配列」という用語は、上記で述べた同じヌクレオチド比較により評価され得るように、又は本明細書中に記載のものなどの比較的厳しい条件下でのポリヌクレオチドの核酸セグメントとのハイブリッド形成が可能であるとして定義されるように、実質的に相補的であるヌクレオチド配列を意味する。
【0129】
本発明の核酸の変異体は、当技術分野で周知の方法を用いて同定され得る。これらの変異体は、図面で示されるヌクレオチド配列又はこの配列の断片に対して通常は60−70%、70−80%、80−90%及びより一般的には少なくとも約90−95%以上の相同性があるペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。図面で示されるヌクレオチド配列又はこの配列の断片に対して、中程度から厳しい条件下でハイブリッド形成できるものとしてこのような核酸分子を容易に同定し得る。
【0130】
本明細書中で使用される場合、及び当業者にとって周知のように、核酸ハイブリッド形成に対する「高ストリンジェンシー条件」、「中程度のストリンジェンシー条件」及び「低いストリンジェンシー条件」は、「Current Protocols in Molecular Biology」の2.10.1−2.10.16及び6.3.1−6頁で説明されている(Ausubel、F.M.ら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley&Sons、(1998))。ハイブリッド形成のストリンジェンシーを決定する的確な条件は、イオン強度(例えば、0.2xSSC、0.1xSSC)、温度(例えば、室温、42℃、68℃)及びホルムアミドなどの脱安定化剤又はSDSなどの変性剤の濃度だけでなく、ヌクレオチド配列の長さ、塩基組成、ハイブリッド形成する配列間の%ミスマッチ及びその他の非同一配列内でのその配列のサブセットの出現頻度にも依存する。従って、高、中程度又は低ストリンジェンシー条件を実験的に決定することができる。ハイブリッド形成が起こらないストリンジェンシーレベルから、ハイブリッド形成が最初に観察されるレベルへとハイブリッド形成条件を変化させることにより、ある配列を試料中で最も類似した配列と(例えば選択的に)ハイブリッド形成させることができる条件を決定することができる。
【0131】
代表的な条件はまた、Krause、M.H.及びS.A.Aaronson、Methods in Enzymology、200:546−556 (1991)にも記載されている。Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley&Sons、(1998)(これは、中程度又は低ストリンジェンシー条件に対する洗浄条件の決定を記載する。)も参照のこと。洗浄は、通常はハイブリッドの相補性の最小レベルを決定するように条件が設定される段階である。一般に、相同のハイブリッド形成のみが起こる最低温度から開始して、最終洗浄温度を1℃低下させることにより(SSC濃度を一定に保持)、ハイブリッド形成する配列間でミスマッチする程度を最大で1%上昇させることができる。一般に、SSCの濃度を倍にすると、Tmが約17℃上昇する。これらのガイドラインを使用して、求められるミスマッチのレベルに依存して、高、中程度又は低ストリンジェンシーに対して実験的に洗浄温度を決定することができる。
【0132】
例えば、低ストリンジェンシー洗浄は、0.2xSSC/0.1%SDSを含有する溶液中での室温にて10分間の洗浄を含み得;中程度のストリンジェンシー洗浄は、0.2xSSC/0.1%SDSを含有する前もって加温した溶液(42℃)中での42℃にて15分間の洗浄を含み得;高ストリンジェンシー洗浄は、0.1xSSC/0.1%SDSを含有する前もって加温した(68℃)溶液中での68℃にて15分間の洗浄を含み得る。さらに、当技術分野で公知のように所望の結果を得るために洗浄を繰り返して又は連続して行い得る。当技術分野で公知のように、標的核酸分子と使用されるプライマー又はプローブとの間の同一性又は類似性の程度を同様に維持しながら、例として与えられるパラメーターの1以上を変化させることにより、同等の条件を決定することができる。
【0133】
ベクター/宿主細胞
本発明はまた、本明細書中に記載の核酸分子を含有するベクターも提供する。「ベクター」という用語は、ビヒクル、好ましくは核酸分子を指し、これは核酸分子を輸送し得る。ベクターが核酸分子である場合、核酸分子はベクター核酸に共有結合される。本発明のこの態様により、ベクターには、プラスミド、1本鎖もしくは2本鎖ファージ、1本鎖もしくは2本鎖RNAもしくはDNAウイルスベクター又は人工染色体、例えばBAC、PAC、YAC、OR MACなど、が含まれる。
【0134】
ベクターは、染色体外エレメントとして宿主細胞中に維持され、ここでベクター核酸分子のさらなるコピーを複製し産生し得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞ゲノムに一体化され得、宿主細胞が複製する場合、核酸分子のさらなるコピーを産生し得る。
【0135】
本発明は、核酸分子の、維持のためのベクター(クローニングベクター)又は発現のためのベクター(発現ベクター)を提供する。ベクターは、原核又は真核細胞又は両方(シャトルベクター)で機能し得る。
【0136】
発現ベクターは、核酸分子の転写が宿主細胞中で可能となるように、ベクターにおいて核酸分子に操作可能に連結されるシス作用調節領域を含有する。転写に影響を与えることができる別個の核酸分子とともに宿主細胞に核酸分子を導入し得る。このようにして、第二の核酸分子は、ベクターからの核酸分子の転写を可能とするために、シス調節制御領域と相互作用するトランス作用因子を提供し得る。あるいは、宿主細胞によりトランス作用因子が供給され得る。最後に、ベクターそのものからトランス作用因子が産生され得る。しかし、ある実施形態において、核酸分子の転写又は翻訳が細胞不含系で起こり得ることを理解されたい。
【0137】
本明細書中に記載の核酸分子が操作可能に連結され得る調節配列には、mRNA転写を支配するためのプロモーターが含まれる。これらには、以下に限定されないが、バクテリオファージXからの左プロモーター、E.コリからの、lac、TRP及びTACプロモーター、SV40からの初期及び後期プロモーター、CMV前初期プロモーター、アデノウイルス初期及び後期プロモーター及びレトロウイルスの長い末端反復が含まれる。
【0138】
転写を促進する制御領域に加えて、発現ベクターにはまた、リプレッサー結合部位及びエンハンサーなど、転写を調節する領域も含まれ得る。例としては、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー、ポリオーマエンハンサー、アデノウイルスエンハンサー及びレトロウイルスLTRエンハンサーが挙げられる。
【0139】
転写開始及び制御のための部位を含有することに加えて、発現ベクターはまた、転写終結に必要な配列及び、転写された領域において、翻訳のためのリボソーム結合部位も含有し得る。発現のためのその他の調節制御エレメントには、開始及び終結コドンならびにポリアデニル化シグナルが含まれる。当業者は、発現ベクターにおいて有用である多くの調節配列を知っている。このような調節配列は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.に記載されている。
【0140】
核酸分子を発現させるために、様々な発現ベクターを使用し得る。このようなベクターには、染色体、エピソーム及びウイル由来ベクター、例えば、細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、酵母エピソーム由来、酵母染色体エレメント由来(酵母人工染色体を含む。)、ウイルス由来(バキュロウイルス、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスなど)などのベクターが含まれる。ベクターはまた、プラスミド及びバクテリオファージ遺伝要素由来のものなどのこれらの源の組み合わせ由来でもあり得る(例えばコスミド及びファージミド)。原核及び真核宿主に対する適切なクローニング及び発現ベクターは、Sambrookら、前記箇所、に記載されている。
【0141】
調節配列は、1以上の宿主細胞において構成的な発現を与え得る(即ち組織特異的)か又は、1以上の細胞型において、温度、栄養素添加物又は外生要因(ホルモン又はその他のリガンドなど)などによる誘導性発現を与え得る。原核及び真核宿主において構成的で誘導性である発現を与える様々なベクターは、当業者にとって周知である。
【0142】
周知の方法によって核酸分子をベクター核酸に挿入し得る。一般に、1以上の制限酵素を用いてDNA配列及び発現ベクターを切断し、次いで断片を一緒に連結することにより、最終的に発現されるDNA配列を発現ベクターに連結する。
【0143】
制限酵素消化及びライゲーションのための手順は当業者にとって周知である。
【0144】
周知の技術を用いて増殖又は発現のために、適切な核酸分子を含有するベクターを適切な宿主細胞導入し得る。細菌細胞には、以下に限定されないが、E.コリ、ストレプトミセス及びSalmonella typhimurium(ネズミチフス菌)が含まれる。真核細胞には、以下に限定されないが、酵母、昆虫細胞(ショウジョウバエなど)、動物細胞(COS及びCHO細胞など)及び植物細胞が含まれる。
【0145】
本明細書中に記載のように、特に完全レポーター断片ペアメンバーコンストラクトを発現する場合、融合タンパク質として本発明のペプチドを発現することが望まれ得る。従って、本発明は、このようなペプチドの産生を可能にするベクターを提供する。これらのベクターは、組み換えタンパク質の発現を増加させ、組み換えタンパク質の溶解性を向上させ、例えばアフィニティー精製に対するリガンドとして作用することによりタンパク質の精製を促進し得る。所望のペプチドが最終的に融合部分から分離され得るように融合部分の連結点にタンパク質分解性切断部位を導入し得る。タンパク質分解酵素には、以下に限定されないが、第Xa因子、トロンビン及びエンテロ酵素(enteroenzyme)が含まれる。典型的な融合発現ベクターには、標的組み換えタンパク質にそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質又はプロテインAを融合する、pGEX(Smithら、Gene 67:31−40(1988))、pMAL(New England Biolabs、Beverly、Mass.)及びpRIT5(Pharmacia、Piscataway、NJ.)が含まれる。適切な誘導性の非融合E.コリ発現ベクターの例には、pTrc(Amannら、Gene 69:301−315(1988))及びpET 11d(Studierら、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185:60−89(1990))が含まれる。
【0146】
タンパク質分解により組み換えタンパク質を切断する能力を宿主細胞が損なう遺伝的背景を与えることによって、宿主細菌において組み換えタンパク質発現を最大限にし得る(Gottesman、S.、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif.(1990)119−128)。あるいは、特異的な宿主細胞、例えばE.コリに対して選択的なコドンをもたらすために、関心のある核酸分子の配列を変化させ得る(Wadaら、Nucleic Acids Res.20:2111−2118(1992))。
【0147】
酵母において操作可能である発現ベクターによって、核酸分子を発現させることもできる。酵母、例えば、S.セレビシエにおける発現のためのベクターの例には、pYepSec1(Baldariら、EMBO J.6:229−234(1987))、pMFa(Kujanら、Cell 30:933−943(1982))、pJRY88(Schultzら、Gene 54:113−123(1987))及びpYES2(Invitrogen Corporation、San Diego、Calif.)が含まれる。
【0148】
例えばバキュロウイルス発現ベクターを用いて、昆虫細胞において核酸分子を発現させることもできる。培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)でのタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smithら、Mol.Cell Biol.3:2156−2165(1983))及びpVLシリーズ(Lucklowら、Virology 170:31−39(1989))が含まれる。
【0149】
本発明のある実施形態において、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞において本明細書中に記載の核酸分子を発現させる。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8(Seed、B.Nature 329:840(1987))及びpMT2PC(Kaufmanら、EMBO J.6:187−195(1987))が含まれる。
【0150】
核酸分子を発現させるために有用である当業者にとって利用可能な周知のベクターのほんの一例として、本明細書中で列挙される発現ベクターが与えられる。当業者は、本明細書中に記載の核酸分子の維持増殖又は発現に適切なその他のベクターを知っている。これらは、例えばSambrookら、前記箇所、で見出される。
【0151】
本発明はまた、本明細書中に記載のヌクレオチド配列がベクターに逆方向でクローニングされるが、アンチセンスRNAの転写を可能にする調節配列へ操作可能に連結されるベクターも包含する。このようにして、コード及び非コード領域の両方を含め、本明細書中に記載の核酸分子配列の全て又は一部に対して、アンチセンス転写産物が産生され得る。このアンチセンスRNAの発現は、センスRNAの発現と関連する上述のパラメータのそれぞれに影響を受ける(調節配列、構成的又は誘導性発現、組織特異性発現)。
【0152】
本発明は、本明細書中に記載のベクターを含有する組み換え宿主細胞にも関する。従って、宿主細胞には、原核細胞、下等な真核細胞(酵母など)、その他の真核細胞(昆虫細胞など)及び高等真核細胞(哺乳動物細胞など)が含まれる。宿主細胞には、以下に限定されないが、カイコ幼虫、CHO細胞、E.コリ及び酵母が含まれ得る。
【0153】
当業者にとって容易に利用可能な技術により細胞に本明細書中に記載のベクターコンストラクトを導入することによって、組み換え宿主細胞を調製する。これらには、以下に限定されないが、リン酸カルシウムトランスフェクション(遺伝子移入)、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、陽イオン脂質介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、リポフェクション及びその他の技術(Sambrookら、前記箇所、で見出されるものなど)が含まれる。
【0154】
宿主細胞は、複数のベクターを含有し得る。このようにして、同じ細胞の様々なベクターにおいて様々なヌクレオチド配列を導入し得る。同様に、単独で又はその核酸分子と関連のないその他の核酸分子(発現ベクターに対するトランス作用因子を与えるものなど)とともに、の何れかで、核酸分子を導入し得る。複数のベクターを細胞に導入する場合、ベクターを独立に導入するか、同時に導入するか又は核酸分子ベクターに連結し得る。
【0155】
バクテリオファージ及びウイルスベクターの場合、感染及び形質導入のための標準的手順によって、パッケージされるか又はカプセル封入されたウイルスとして細胞にこれらを導入し得る。ウイルスベクターは、複製可能であるか又は複製欠損性であり得る。ウイルス複製が欠損している場合、欠損を補完する機能を与える宿主細胞で複製が起こる。
【0156】
ベクターは、一般に、組み換えベクターコンストラクトを含有する細胞のサブ集団の選択を可能にする選択可能マーカーを含む。このマーカーは、本明細書中に記載の核酸分子を含有する同じベクター中に含有され得るか又は別個のベクター上にあり得る。マーカーには、原核宿主細胞に対するテトラサイクリン又はアンピシリン耐性遺伝子及び真核宿主細胞に対するジヒドロ葉酸還元酵素又はネオマイシン耐性が含まれる。しかし、表現型形質に対する選択を可能にする何らかのマーカーが有効である。
【0157】
適切な調節配列の制御下で、細菌、酵母、哺乳動物細胞及びその他の細胞で成熟タンパク質が産生され得る一方、本明細書中に記載のDNAコンストラクト由来のRNAを用いてこれらのタンパク質を産生させるために細胞不含転写及び翻訳系も使用し得る。
【0158】
ペプチドの分泌が所望され、酵素などの複数膜貫通ドメイン含有タンパク質によって達成することが困難である場合、適切な分泌シグナルをベクターに組み込む。シグナル配列は、これらのペプチドにとって内在性であるかこれらのペプチドにとって異種性であり得る。
【0159】
ペプチドが培地に分泌されない場合、凍結融解、超音波処理、機械的破壊、溶解剤の使用などを含む標準的破壊手順によって宿主細胞からタンパク質を単離し得る。次に、硫酸アンモニウム沈殿、酸抽出、陰イオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィーを含む周知の精製法により、ペプチドを回収し、精製し得る。
【0160】
ある実施形態において、E.コリなどの細菌宿主細胞においてポリペプチドを発現させ、タンパク質を可溶化するためにグアニジン塩酸塩(GuHCl)又は尿素などのカオトロピック剤を用いて宿主細胞に存在する封入体からタンパク質を抽出する。次に、ポリペプチドにおいて存在する融合タグ(例えば6xHisタグ)を介してクロマトグラフィーマトリクスなどの固相にポリペプチドを結合させる。夾雑物を除去するために固相を洗浄したら、カオトロピック剤の濃度勾配を適用することにより、固相に結合したままポリペプチドを好ましくは再び折り畳ませる(試薬の濃度が低下するにれてポリペプチドが再び折り畳まれる。)。発明者らは、この方法を用いることで、結果として均一アッセイにおいてレポーター断片が優れたインビトロ活性を有するようになることを見出した。
【0161】
本明細書中に記載のペプチドの組み換え産生における宿主細胞に依存して、ペプチドが様々なグリコシル化パターンを有し得、細胞によっては、細菌で産生される場合グリコシル化されない可能性があることも理解されたい。さらに、ペプチドは、宿主が介在するプロセスの結果、ある場合においては、最初の修飾メチオニンを含み得る。
【0162】
本明細書中に記載のペプチドを発現する組み換え宿主細胞には様々な用途がある。最初に、この細胞は、酵素タンパク質又は断片の所望の量を産生させるためにさらに精製され得る酵素タンパク質又はペプチドを産生させるのに有用である。このようにして、発現ベクターを含有する宿主細胞はペプチド産生にとって有用である。
【0163】
宿主細胞はまた、上述のものならびに当技術分野で公知のその他の形式など、酵素タンパク質又は酵素タンパク質断片を含む細胞を利用したアッセイを遂行するのにも有用である。このようにして、ネイティブ酵素タンパク質を発現する組み換え宿主細胞は、酵素タンパク質機能を刺激又は阻害する化合物をアッセイするために有用である。
【0164】
宿主細胞はまた、これらの機能が影響を受けている酵素タンパク質突然変異を同定するためにも有用である。この突然変異が天然のものであり、病原性を生じさせる場合、突然変異を含有する宿主細胞は、ネイティブ酵素タンパク質におけるそれらの影響により示され得ない突然変異酵素タンパク質における所望の効果(例えば、刺激又は阻害機能)を有する化合物をアッセイするために有用である。
【0165】
均一アッセイ
関心のある標的被分析物質の存在を調べるために、インビトロアッセイにおいて、本発明の、レポーター断片、ポリペプチド及びレポーター成分を使用することができる。関心のある被分析物質には、環境又は生体試料中に存在するものが含まれる。生体試料には、全血、血清、唾液及び尿が含まれる。「インビトロ」という用語は、この背景中で、細胞不含アッセイなど、生きている細胞の外でアッセイが行われることを意味する。
【0166】
本発明のアッセイ法は、通常、レポーター成分と試料を混合することと、関心のある被分析物質へのレポーター成分の結合が介在するレポーター断片/レポーター成分の会合の結果として得られる検出可能なシグナルの有無(又は程度)を調べることと、を含む。
【0167】
検出可能なシグナルは、例えば、比色シグナル、蛍光シグナル又は化学発光シグナルであり得る。例として、β−ラクタマーゼはニトロセフィンを切断して、黄色から赤への色の変化を生じさせ得る。ルシフェラーゼは、基質ルシフェリンにおいて作用して、化学発光シグナルを生じさせる。
【0168】
インビトロアッセイに必要とされるレポーターポリペプチドの量は、通常、インビボで見出されるものより多い。例えば、反応混合液中のレポートポリペプチドの濃度は、少なくとも1pM、例えば少なくとも10又は100pMなど、又は1nMであり得る。従って、レポーター複合体のメンバー間の自発的会合の可能性を低下させる反応混合液中に試薬を含むことが望ましいものであり得る。このような試薬には、カオトロピック剤/タンパク質変性剤、例えば尿素など(例えば200から700mMの濃度、約500mMなど)、が含まれる。低濃度の尿素で酵素断片が部分的に変性し、それにより互いにそれらの天然の親和性(自然発生的相補性)が低下し、一方で、被分析物質により近接近へと方向付けされた場合(強制的相補性)、相互作用及び立体配座の変化が可能なままであることが、実施例1で特定された。
【0169】
バックグラウンドの低下/ノイズに対するシグナル比の増加を促進するために含まれることが望ましいものであり得るその他の試薬は、(i)エタノールなどの溶媒(好ましくは2%から10%v/v、例えば3%から8%v/vなど);イソプロパノール(好ましくは2%から10%v/v、例えば3%から8%v/vなど);メタノール(好ましくは5%から10%v/v);DMSO(好ましくは10%から20%v/v)又はアセトニトリル(好ましくは2%から10%v/v、例えば3%から8%v/vなど);(ii)BSA;(iii)Tween−20などの界面活性剤(例えば0.1%から0.25%v/v又はTritonX100(好ましくは0.2%超、例えば0.2%から0.4%v/vなど);(iv)塩、例えばNaCl、K2SO4又は(NH4)2SO4;及び/又は(v)イミダゾール(好ましくは5から20mM、例えば5から15mMなど)である。
【0170】
本発明のレポーターポリペプチド及びレポーター成分は、インビトロ均一アッセイでの使用に限定されない。これらはまた、少なくとも1つのレポーター断片又はレポーター成分が固相に固定化されるインビトロ不均一アッセイでも使用され得る。これらは、適切な条件下で細胞においてレポーターポリペプチドの発現を支配することができる本発明のヌクレオチドコンストラクトで細胞に対して形質転換/遺伝子移入を行うことにより細胞に一般には導入されている成分とともにインビボアッセイでも使用され得る。
【0171】
キット
本発明はまた、キットとしてもレポーター断片及び/又はレポーター成分を提供する。試料中の被分析物質の存在及び/又は量を調べるためのインビトロアッセイなどFECアッセイに対してこのようなキットを使用し得る。キットは、本発明の1以上のレポーターポリペプチド断片及び/又はレポーター成分を含む。このキットは、通常、関心のある被分析物質の存在下で検出可能なシグナルを生成させることができる活性ポリペプチド複合体を一緒に形成することができるペアなど、本発明の複数のポリペプチド断片及び/又はレポーター成分を含む。
【0172】
キットはまた使用説明書も含み得る。その他の任意の成分には、緩衝液、標準物質、検出試薬などが含まれる。
【0173】
実施例
次の実施例は、本発明の好ましい実施形態を明らかにするために含まれる。当業者にとって当然のことながら、続く実施例で開示される技術は、本発明の実施においてよく機能することが発明者により発見された技術を表し、従って、その実施に対して好ましい様式を構成すると考えられ得る。しかし、当業者は、本発明の開示に照らして、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示される具体的な実施形態において多くの変更がなされ得、依然として同様又は類似の結果が得られ得ることを認めよう。
【実施例1】
【0174】
2価陽イオンに対する均一インビトロFECアッセイ
本明細書中で概説される手順は、アミノ酸196/197で全長親酵素を分割し、次いで切断点末端でフレキシブルリンカー(G4S)及びヒスチジンタグ(6xH)を導入することにより生成されるTEM1断片の合成及び特性決定を述べる。疎水性相互作用及び凝集性を低下させ、タンパク質安定性を向上させるために、次のα断片(PB11)及びω断片(PB13)を使用して点突然変異を導入した。断片のアミノ酸配列に対するこれらの変化の結果、αV74TM182T断片(PB11.2)及びωM211Q断片(PB13:1)が得られた。
【0175】
フレキシブルリンカー(G4S)及びインタラクタードメイン(ポリヒスチジンタグ(6xH))を含むレポーター断片ペアメンバーを構築するために、これらのペプチド及びそれらをコードする核酸を使用した。フレキシブルリンカー(G4S)、ポリヒスチジンタグ(6xHis)及び点突然変異の位置を示すDNA配列データを提供する。これらの断片ペアメンバーを単離し、精製し、被分析物質の存在に関する操作可能な均一インビトロFECアッセイを構成するために使用した。
【0176】
α及びω断片をコードするTEM1遺伝子のPCR
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてpUC18からTEM1βラクタマーゼをコードするbla遺伝子を増幅した。製造者の推奨に従い、Platinum pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen cat.11708−021)を用いて全ての増幅を行った。SigmaGenosys(Australia)からカスタムメードのオリゴヌクレオチドプライマーを購入した。フォワードプライマーFEC16及びリバースプライマーFEC27を用いて、C末端G4Sリンカー及びヒスチジンタグを有するTEM1のα断片を増幅した。
【0177】
フォワードプライマーFEC24及びリバースプライマーFEC29(表1参照−PCR、配列決定及び突然変異誘発のために使用されるプライマーの説明のためのプライマー配列)を用いて、N−末端ヒスチジンタグ及びG4Sリンカーを有するTEM1のω断片を増幅した。pET−26b(+)へのPCR産物のクローニングのために、フォワードプライマーの5’末端に目的ベクターNdeI制限部位を組み込み、XhoI制限部位をリバースプライマーの5’末端に組み込んだ。
【0178】
1%TAEアガロースゲル上で各PCR反応液4μLアリコートを分析した(100Vで30分間)。
【0179】
【表1】
【0180】
PCR産物の精製及びE.コリ宿主細胞へのクローニング
製造者の説明書に従い、QIAquick PCR精製キット(Qiagen Ccat.28104)を用いて反応チューブからPCR産物を直接精製した。
【0181】
pET−26b(+)ベクター(Novagen cat.69862−3)、E.コリでの組み換えタンパク質の誘導性発現を可能にする原核発現ベクターのNdeI/XhoI部位にPCR産物をクローニングした。製造者の説明書に従い、連結したプラスミドをBL21−Gold(DE3)コンピーテント細胞(Stratagene cat.230132)へと形質転換した。既に述べたようなNdeI/XhoIでの制限消化及びゲル電気泳動による消化産物の分析により、pET−26b(+)ベクター内のクローニング挿入配列の存在を確認するために各形質転換体からの5から10個のコロニーをスクリーニングした。突然変異が起こっていることを確認するために、DNA配列決定(プライマーFEC10及びFEC11−表1を用いて)によっても特定のクローンをチェックした。
【0182】
部位特異的突然変異誘発
製造者の説明書(Rev#124001e)に記載のように、QuickChange II XL−部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene cat.200522)を用いて、α断片(PB11)及びω断片(PB13)の部位特異的突然変異誘発を行った。E.コリのコドン使用頻度を考慮に入れて(www.kazUSA.or.jp/codonでアクセス可能)、ベクターNTI9.0.0(2003年9月2日)を用いて、配列操作及びプライマー設計を行った。プライマー(使用されるフォワード及びリバースプライマーの詳細な説明については表1を参照。)は、SigmaGenosys(Australia)により、合成され、HPLCを使用して精製された。
【0183】
簡潔に述べると、次のようなPCR増幅突然変異誘発反応において、鋳型として、既に述べたように単離し定量したα断片及びω断片プラスミドDNAを使用した;125ngフォワードプライマー(FEC47又はFEC49)、125ngリバースプライマー(FEC48又はFEC50)、1x反応緩衝液、1μL dNTP混合液、3μL QuickSolution及び超純水に、25ng鋳型DNAを50μLの最終体積まで添加した。次に1μL PfuUltra HF DNAポリメラーゼ(2.5U/μL)を添加し、Mastercycler ep勾配サーマルサイクラー(Eppendorf)で温度サイクルを行った。V74T及びM211Q点突然変異の導入のために、次のようにPCRサイクルを行った;95℃x1分で変性及び、95℃x50秒(変性)、60℃x50秒(アニーリング)及び68℃x6分(伸長)を18サイクル、サイクル完了時に68℃x6分の最終伸長段階。M182T突然変異の導入のためのPCRサイクル条件は少し異なり、鋳型としてαV74T断片を用い、それぞれFEC55及びFEC56フォワード及びリバースプライマーを用いて、65℃x50秒でアニーリングを行った。続いて、非突然変異親DNAを消化するために、PCR増幅された突然変異誘発反応物を1μL DpnI制限酵素(10U/μL)(各反応に直接添加)で消化し、37℃で1時間温置した。次に、QuickChange II XL−部位特異的突然変異誘発キットの製造者の説明書(Rev#124001e)で概説されるようにXL10−Gold Ultraコンピーテント細胞を形質転換するために、各試料反応液からのDpnI処理DNA 2μLを使用した。既に概説されているように、点突然変異の正しい挿入を確認するために、得られたプラスミドDNAの配列決定を行ってE.コリ形質転換体をスクリーニングした。次に、タンパク質発現及び精製に対して述べられているように、BL21−Gold(DE3)コンピーテント細胞を形質転換するために、所望の突然変異を組み込んでいるプラスミドDNAを使用した。
【0184】
これらの点突然変異の導入の結果、断片の溶解性が向上し、最終産物の凝集性が低下し、これらは、均一インビトロFECアッセイならびに製造プロセスでの使用に非常に有利である(例えば表2)。
【0185】
【表2】
【0186】
α及びω断片の精製及び特性決定
下記で述べるように、触媒作用の速度及びNiとの強制的酵素相補性におけるノイズに対するシグナル比を直接比較するために、同様にして、全ての4つの酵素断片[α断片(PB11)、ω断片(PB13)、αV74TM182T断片(PB11.2)及びωM211Q断片(PB13.1)]を発現させ、精製し、特性決定を行った。
【0187】
α断片(PB11)及びω断片(PB13)の発現
次のようにBL21−Gold(DE3)での断片の発現を行った;カナマイシン50μg/mLを添加したLBブロス10mLに関心のある1個のコロニーを接種し、250rpmで振盪しながら液体培地を一晩(〜14時間)37℃で温置した。次に、2Lコニカルフラスコ中のカナマイシン50μg/mLを添加した250mL Overnight Express Instant TB培地(Novagen cat.71491−4)に接種するために、この培養物を使用した。250rpmで一晩振盪しながら、37℃で24時間、この培養物を温置した。ここで使用したOvernight Express Instant TB培地により、高細菌密度でのタンパク質発現の自己誘導が可能となる(Novagen User Protocol TB383 Rev.F0505を参照)。細菌培養物が静止期に到達すると最適タンパク質発現が起こるが、これは、600nmで行った光学密度読み取りに基づき、24時間以内に起こることが分かった。続いて、3,220xgで30分間(4℃)、細胞を沈殿させ、上清を廃棄した。タンパク質精製まで−20℃で細胞ペレットを保存した。
【0188】
変性条件下での組み換えタンパク質の抽出
[6M GuHCl 100mM NaH2PO4 10mM Tris pH8]25mL中で、一晩誘導した250mLからのペレットを溶解し、続いて100rpmで振盪しながら、4℃で1時間温置した。溶解を促進するために、Branson250超音波ホモジナイザー(sonifier)を用いて、氷浴中で30秒オン/30秒オフ5サイクルで懸濁液を超音波処理した。超音波処理後、12,000xgで30分間(4℃)溶解液を遠心し、次いで細胞残屑を除去するために0.2μmフィルターに通した。
【0189】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
DuoFlowクロマトグラフィーシステム(BioRad cat.760−0037)の制御下で、1mL HisTrap HPカラム(Amersham cat.17−5247−01)を用いて、組み換えHisタグ付加タンパク質を精製した。1mL/分の流速で、8M尿素、100mM NaH2PO4、10mM Tris pH7.5 10カラム体積(CV)によりHisTrapカラムを平衡化した。次に、0.5mL/分でモデルEP−1 Econopump(BioRad cat.731−8142)を使用して、透明化したE.コリ溶解液をカラムに載せた。8M 尿素 100mM NaH2PO4 10mM Tris pH6.3 10CVでカラムを洗浄した。1mL/分の、8M 尿素 100mM NaH2PO4 10mM Tris 200mM L−アルギニン 100μM GSSG pH7.5から100mM NaH2PO4 10mM Tris 200mM L−アルギニン 100μM GSSG pH7.5 60CV勾配で、結合タンパク質を再び折り畳ませた。250mMイミダゾール 50mM NaH2PO4 150mM NaCl pH8 10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、PAGE、ウエスタンブロッティング、ゲルろ過及び質量分析により分析した。
【0190】
変性断片のカラム上再折り畳みがβ−ラクタマーゼのα及びω断片(野生型及び突然変異があるもの)の両方の産生において非常に効果的であることが分かった。この方法は、ネイティブ物質の精製法を凌ぐ利点があり、大規模の製造プロセスに適切である。
【0191】
ゲルろ過
場合によって、酵素断片のアフィニティー精製後、DuoFlowクロマトグラフィーシステム(BioRad Cat.760−0037)の制御下で、Superdex200GLカラム(Amersham cat.17−5175−01)を用いて、プール溶出物をサイズ排除クロマトグラフィーに供した。精製酵素断片のさらなる精製(夾雑タンパク質の除去)又はカラム上での再折り畳み後の凝集酵素断片に対する単量体の割合の決定の何れかのために、ゲルろ過を使用した。プロトコールは次のとおりである:0.6mL/分での50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7 2CVによる平衡化;0.6mL/分での試料250−500μLの注入;及び0.6mL/分での50mM NaH2PO4 150mM NaCl、pH7 1CVの定組成フロー。典型的な結果については図7参照。
【0192】
質量分析
Insutitute for Molecular Bioscience、University of Queensland、AustraliaのHPLC/TOF質量分析サービスを利用してゲルろ過精製されたα及びω断片の分子量を調べた。個々の実験データを回収し、理論的分子量値との比較のために分析した。
【0193】
酵素断片相補性
動態研究のために6−ヒスチジン−タグを含有する精製α及びω断片を使用して、ノイズ(Ni2+なしでの自発的酵素相補性)に対するシグナル(Ni2+強制的酵素相補性)比を計算した。強制的酵素相補性のノイズに対するシグナル比を調べ、評価するために、様々な基質、緩衝添加物及び阻害剤を使用した。本発明のα及びω断片の等モル量を用いたある実施形態における代表的な結果は、図8及び図9で与える。
【0194】
ニトロセフィン活性アッセイ
ニトロセフィン(Merck、Australia)は、β−ラクタム環の加水分解後黄色から赤(OD492)に色を変化させるTEM−1β−ラクタマーゼの比色基質である。ゆえに、酵素断片相補性の酵素活性を評価するためにニトロセフィンアッセイを行った。96ウェル平底細胞培養プレート(TPP、Australia)を用いてアッセイを行った。50mM NaH2PO4;150mM NaCl;5%DMSO(Sigma、Australia)pH7中で200又は600μMのニトロセフィン保存溶液を調製した。各200μLの反応液に対して、ニトロセフィン保存液100μLを50mM NaH2PO4 150mM NaCl pH7中の酵素断片100μL(Ni2+あり又はなし)に添加した。必要とされる最終的シグナルに依存して、使用されたウェルあたりの酵素断片の濃度は40nMから200nMの範囲であり、Ni2+被分析物質の最終濃度は100μM又は200μMであった。ピペッティングによりアッセイ成分をよく混合し、室温で5分間温置した。SpectraMax190を用いてニトロセフィン加水分解の動態を492nmで読み取った(Molecular Devices、USA)。
【0195】
様々な緩衝添加物の影響
強制α及びω断片相補性のノイズに対するシグナル比を向上させるために、溶媒、BSA、界面活性剤、タンパク質変性剤及び塩などの様々な緩衝添加物の影響を調べた。停止溶液タゾバクタムも調べた。本明細書中に記載のようにアッセイを行った。
【0196】
溶媒
低濃度の溶媒は酵素断片を部分的に変性させ得るので、少量のエタノール、イソプロパノール、メタノール、DMSO及びアセトニトリルが、天然の断片相補性を低下させ、ノイズに対するシグナル比を上昇させるか否かを調べた。試験した各溶媒の最終濃度は、15%、7.5%、3.75%、1.875%、0.9875%及び0%であった。492nmで30分間、相補性アッセイの動態を読み取った。次に、SoftmaxProからの最大速度(mOD分−1)に照らしてシグナル/ノイズ比を計算した。最適な、ノイズに対するシグナル比が、それぞれ3.75%、3.75%、7.5%、15%及び3.75%の濃度の、エタノール、イソプロパノール、メタノール、DMSO及びアセトニトリルで達成されることが分かった。例えば、最終濃度でのエタノールの効果は、15%、7.5%、3.75%、1.875%及び0%の範囲であり、シグナル/ノイズ比はそれぞれ7.1、8.4、8.5、5.4及び3.7であった。
【0197】
溶媒のある範囲の濃度で酵素断片が部分的に変性し、それにより互いに対するその天然の親和性(自発的相補性)が低下する一方で、Ni2+被分析物質(強制的相補性)により近接近に向かわせられた場合に相互作用及び立体配座の変化が可能なままであることが分かった。
【0198】
BSA
BSA(Pierce、USA)はタンパク質安定化剤として広く使用されており;BSAを使用することで、2つの断片の密接な接触を妨害することにより天然の断片の相補性の阻止が促進され、シグナル/ノイズ比が上昇し得る。最終濃度範囲(mg/mL)は、0.6、0.3、0.15、0.075、0.0375、0.01875及び0であった。読み取りデータ回収時間は30分であった。次に、SoftmaxProからの最大速度(mOD/分)により、シグナル/ノイズ比を計算した。BSAを添加することにより、シグナル及びバックグラウンドの両方が上昇したので、最終的シグナル/ノイズ比は顕著には変化しなかったが、シグナル出力はほぼ2倍増幅された。BSAが、シグナル及びバックグラウンドの両方を増幅するために、アッセイ溶液中で込み合い効果を与えることが分かった。
【0199】
界面活性剤
界面活性剤は、タンパク質−タンパク質相互作用又はELISAバックグラウンドを減少させるために広く使用され;少量を使用することにより、2つの断片を離しておくことによって天然の断片相補性の阻止が促進され得、シグナル/ノイズ比が上昇する。Tween−20及びTriton−X100を使用し、最終濃度範囲は、0.3%、0.15%、0.075%、0.0375%、0.01875%及び0%であった。読み取りデータ回収時間は30分であった。次に、SoftmaxProからの最大速度(mOD分−1)に照らして、シグナル/ノイズ比を計算した。
【0200】
それぞれ0.15%及び0.3%の濃度のTween−20及びTriton−X100で最適な、ノイズに対するシグナル比が達成されることが分かった。例えば、0.3%、0.15%、0.075%、0.0375%、0.01875%及び0%からの最終濃度範囲で試験したTX−100の効果において、シグナル/ノイズ比は、それぞれ14.1、6.9、3.8、2.7、1.8及び3.9であった。界面活性剤濃度が上昇すると活性が低下することに注意すること。
【0201】
界面活性剤のある範囲の濃度で酵素断片が部分的に変性し、それにより互いに対するその天然の親和性(自発的相補性)が低下する一方で、Ni2+被分析物質(強制的相補性)により近接近に向かわせられた場合に相互作用及び立体配座の変化が可能なままであることが分かった。
【0202】
変性剤
酵素断片相補性におけるタンパク質変性剤の効果を試験するために、尿素又はグアニジン塩酸塩の存在下で、断片、基質及びNiSO4濃度のマトリクスを使用してニトロセフィン活性アッセイを行った。予備アッセイにおいて、2Mから62.5mMの範囲の尿素濃度及び1Mから31.25mMの範囲のGuHCl濃度で40nM断片の相補性を試験した。アッセイを次のように準備した:尿素[2M尿素、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7から62.5mM 尿素、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7]又はグアニジン塩酸塩[1M GuHCl、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7から31.25mM GuHCl、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7]の連続2倍希釈液に各断片40nMを添加した(2回ずつ試験)。第一セットのウェルに100μMの最終濃度までNiSO4を添加し、一方で第二セットのウェルにはNiSO4は添加しなかった。プレートを5分間温置し、SpectroMaxリーダーを用いて492nmで動態の読み取りを行った。最適な、ノイズに対するシグナル比が0.5Mの濃度の尿素で達成されることが分かり、低バックグラウンドで可能な最大のシグナルを達成するために、続く実験において断片の量を200nMまで増加させ、NiSO4及び基質濃度をそれぞれ200μM及び300μMまで増加させた。
【0203】
低濃度の尿素で酵素断片が部分的に変性し、それにより互いに対するその天然の親和性(自発的相補性)が低下する一方で、Ni2+被分析物質(強制的相補性)により近接近に向かわせられた場合に相互作用及び立体配座の変化が可能なままであることが分かった。
【0204】
塩
静電効果は、酵素触媒作用及びタンパク質−タンパク質相互作用の両方において重要な機能を有し、様々な塩を使用してこれらの効果が調節されるか又は変化し得る。強制的酵素相補性におけるその影響について3種類の異なる塩:NaCl、K2SO4及び(NH4)2SO4を試験した。アッセイを次のように準備した:NaCl[2M NaCl、50mM NaH2PO4、pH7から62.5mM NaCl、50mM NaH2PO4、pH7]、K2SO4[0.4M K2SO4、50mM NaH2PO4、pH7から25mM K2SO4、50mM NaH2PO4、pH7]又は(NH4)2SO4[0.4M(NH4)2SO4、50mM NaH2PO4、pH7から50mM (NH4)2SO4、50mM NaH2PO4、pH7]の連続2倍希釈液に各断片40nMを添加した(2回ずつ試験)。第一セットのウェルにNiSO4 100μMを添加し、一方で第二セットにはNiSO4は添加しなかった。プレートを5分間温置し、SpectroMax190リーダーを用いて492nmで動態の読み取りを行った。
【0205】
FECアッセイに塩を添加することにより、シグナル及びバックグラウンドの両方が上昇したので、最終的シグナル/ノイズ比は顕著には変化しなかったが、シグナル出力が増幅された。
【0206】
イミダゾール
ヒスチジンタグ付加タンパク質精製(www.qiagen.com)において、洗浄緩衝液として少量(20mM)のイミダゾール(ICN、Australia)を使用したが、イミダゾールは、断片表面のヒスチジン相互作用を妨害することによって天然の断片相補性を妨げ、シグナル/ノイズ比の上昇を促進し得る。イミダゾール最終濃度の範囲は、100mM、50mM、25mM、12.5mM及び0mMであった。読み取りデータ回収時間は30分であった。次に、SoftmaxProからの最大速度(mOD分−1)に照らして、シグナル/ノイズ比を計算した。
【0207】
それぞれ12.5mMの濃度のイミダゾールで最適な、ノイズに対するシグナル比が達成されることが分かった。例えば、100mM、50mM、25mM、12.5mM、6.25mM及び0mMからの最終濃度範囲でのイミダゾールの効果、シグナル/ノイズ比はそれぞれ0.8、2.1、3.7、5.3、5.2及び4.0であった。イミダゾール濃度が上昇すると活性が低下することに注意すること。
【0208】
イミダゾールのある範囲の濃度において、互いに対するその天然の親和性(自発的相補性)が低下する一方で、Ni2+被分析物質により近接近に向かわせられた場合(強制的相補性)に相互作用及び立体配座の変化が可能なままであることが分かった。
【0209】
停止溶液(タゾバクタム)
(Sigma、Australia)は、TEM−1β−ラクタマーゼに対する最も効果的な阻害剤の1つであり、IC50が20−50nmであることが報告されている。タゾバクタムのIC50は、50nMの濃度で、全長及び相補断片において社内で計算された。従って、25から50μM(IC50より500−1000倍大きい。)の間のタゾバクタム最終濃度は、OD492の値を変化させることなく速やかに反応を停止させるのに十分であるはずである。阻害の有効性を試験するために、タゾバクタム25又は50μMを使用し、0.5から3時間、タゾバクタム添加後のOD492値の連続モニタリングを行った。得られたOD492の変化を比較し、評価した。
【実施例2】
【0210】
抗ヒスチジンモノクローナル抗体に対する均一インビトロFECアッセイ
ここで概説する手順は、切断点末端において長いフレキシブルリンカー[(G4S)3]及びヒスチジンタグ(6xH)を組み込むα断片(PB11.4)及びω断片(PB13.2)の合成及び特性決定を説明する。DNA配列データにより、長いリンカー[(G4S)3]及びヒスチジンタグ(6xH)の存在が確認された。均一インビトロ方式アッセイにおいて抗体(ヒスチジンタグに結合するペンタ−ヒスチジンモノクローナル抗体)との強制的酵素相補性を示すために、この断片ペアを使用した。
【0211】
部位特異的突然変異誘発
既存のコンストラクト(既にその切断点末端に5アミノ酸のフレキシブルリンカー(G4S)を含有する。)にさらなる10アミノ酸リンカー[(G4S)2]を導入するために、α(PB11)及びω(PB13)断片のPCRによる部位特異的突然変異誘発を行い、15アミノ酸長のリンカーを作製した(PCRプライマー配列は表1で与える。)。
【0212】
簡潔に述べると、長いリンカーを有するα断片(PB11.4)を作製するために、50μLの最終体積になるように、125ngフォワードプライマー(FEC67)、125ngリバースプライマー(FEC68)、1x反応緩衝液、1μL dNTP混合液、3μL QuickSolution及び超純水に鋳型DNA25ngを添加した。次に、1μL PfuUltra HF DNAポリメラーゼ(2.5U/μL)を添加し、Mastercycler ep勾配サーマルサイクラー(Eppendorf)で温度サイクルを行った。次のようにPCRサイクルを行った;95℃x1分で変性及び、95℃x50秒(変性)、60℃x30秒(アニーリング)、65℃x30秒(アニーリング)及び68℃x10分(伸長)を25サイクルと、サイクル完了時に68℃x6分で最終伸長段階。
【0213】
長いリンカーを有するω断片(PB13.2)を作製するために、50μLの最終体積になるように、125ngフォワードプライマー(FEC75)、125ngリバースプライマー(FEC76)、1x反応緩衝液、1μL dNTP混合液、3μL QuickSolution及び超純水に鋳型DNA50ngを添加した。次に、1μL PfuUltra HF DNAポリメラーゼ(2.5U/μL)を添加し、次のようにPCRサイクルを行った;95℃x1分で変性及び、95℃x50秒(変性)、60℃x30秒(アニーリング)、65℃x15秒(アニーリング)及び68℃x10分(伸長)を25サイクルと、サイクル完了時に68℃x7分で最終伸長段階。
【0214】
上述のように1μL DpnIでPCR増幅突然変異誘発反応物を消化した。製造者の説明書に従い、BL21−Gold(DE3)コンピーテント細胞(Stratagene cat.230132)を形質転換するために、DpnI処理したPB11.4 DNA及びDpnI処理したPB13.2 DNAを使用した。既に概説したように、長いリンカーの正しい挿入を確認するために、得られたプラスミドDNAの配列決定を行ってE.コリ形質転換体をスクリーニングした(プライマー FEC10及びFEC11−表1を用いて)。
【0215】
酵素断片相補性
上記で概説したように、酵素断片を発現させ、精製し、特性を調べた。ノイズ(Abなしでの自発的酵素相補性)に対するシグナル(Ab強制的酵素相補性)比を計算するための動態実験のために、15アミノ酸の長いフレキシブルリンカー及びペンタ−ヒスチジンモノクローナル抗体(Ab)に結合し得る6−ヒスチジンタグを含有する精製α及びω断片を使用した。
【0216】
Ab強制FECアッセイの酵素活性を測定するために、ニトロセフィン加水分解を使用した。96ウェル平底細胞培養プレート(TPP、Australia)を用いてアッセイを行い、SpectraMax190(Molecular Devices、USA)プレートリーダーを用いてニトロセフィン加水分解を492nmで読み取った。簡潔に述べると、200μLの反応体積中0.5M尿素、0.625mM Tris、12.5mM L−アルギニン、6.25μM酸化型グルタチオン(GSSG)、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7中でα(PB11.4)及びω(PB13.2)断片20nM及び33nM His−Tagモノクローナル抗体(Novagen cat.70796−3)を希釈し、室温で20分間温置した。次に、反応溶液にニトロセフィン(DMSO中の10mg/mL、2μL)を添加し、1時間にわたりプレートリーダーを用いて492nmで監視した。
【0217】
本発明のα及びω断片の等モル量を使用する代表的な実施形態の結果を図6で与える。
【0218】
図6で、均一インビボFECが、33nMの濃度でモノクローナル抗体(150kDa)などの大きな被分析物質をうまく検出することができることが示される。Ab濃度のKDが18.43nMであることがさらに分かった。
【実施例3】
【0219】
β−ラクタマーゼTEM1阻害剤耐性強制的酵素相補性(FEC)均一アッセイ
この実施例中で概説する手順は、アミノ酸196/197で全長親酵素を分割し、続いて切断点末端にフレキシブルリンカー(G4S)及びヒスチジンタグ(6xH)を導入することにより作製されるTEM1断片の合成及び特性決定を説明する。β−ラクタマーゼ阻害剤に対する耐性を向上させるために、次のα断片(PB11)及びω断片(PB13)を使用して点突然変異を導入し、結果としてαM69LM182T断片(PB11.12)及びωN276D断片(PB13.3)が得られた。DNA配列データにより、フレキシブルリンカー(G4S)ヒスチジンタグ(6xH)及び点突然変異の存在を確認した。β−ラクタマーゼ阻害剤の存在下で、被分析物質(Ni2+)を用いて強制的酵素相補性を示すために、これらの断片ペアを使用した。
【0220】
部位特異的突然変異誘発
PB11.1(αM69L)、PB11.12(αM69LM182T)、PB11.13(αM69IM182T)及びPB13.3(ωN276D)コンストラクトを作製するために、α(PB11)及びω(PB13)断片の部位特異的PCR突然変異誘発を行った。
【0221】
簡潔に述べると、α及びω断片プラスミドDNAを単離し、実施例1に記載のように定量し、次のようにPCR増幅突然変異誘発反応において鋳型として使用した:50μLの最終濃度になるように、125ngフォワードプライマー(FEC55、FEC143、FEC145又はFEC147)、125ngリバースプライマー(FEC56、FEC144、FEC146又はFEC148)、1x反応緩衝液、1μL dNTP混合液、3μL QuickSolution及び超純水に鋳型DNA25ngを添加した。次に、PfuUltra HF DNAポリメラーゼ(2.5U/μL)を添加し、Mastercycler ep勾配サーマルサイクラー(Eppendorf)で温度サイクルを行った。M69L、M69I及びN276D点突然変異の導入のために、PCRサイクルを次のように行った:95℃x1分で変性、及び95℃x50秒(変性)、60℃x50秒(アニーリング)及び68℃x6分(伸長)を18サイクルと、サイクル完了時に68℃x6分で最終伸長段階。M182T突然変異の導入に対するPCRサイクル条件は僅かに変化し、鋳型としてαM69L及びαM69I断片を、及びFEC55及びFEC56フォワード及びリバースプライマーをそれぞれ用いて65℃x50秒でアニーリングを行った。続いて、非突然変異親DNAを消化するために、各反応物に1μL DpnI制限酵素(10U/μL)を直接添加して37℃で1時間温置し、PCR増幅突然変異誘発反応物を消化した。次に、QuixkChangeII XL−部位特異的突然変異誘発キットの製造者の説明書(Rev#124001e)で概説されるように、XL10−Gold ULTRAコンピーテント細胞を形質転換するために、各試料反応物からのDpnI処理DNA2μLを使用した。点突然変異の正しい挿入を確認するために、得られたプラスミドDNAの配列決定を行い、既に概説したようにE.コリ形質転換体をスクリーニングした。
【0222】
次に、タンパク質発現及び精製について記載されるように、BL21−Gold(DE3)コンピーテント細胞を形質転換するために、所望の突然変異を組み込むプラスミドDNAを使用した。
【0223】
α及びω断片の精製及び特性決定
β−ラクタマーゼ阻害剤の非存在下及び存在下でのその動態特性を直接比較し、下記のようにNi2+(被分析物質)を用いて強制的酵素相補性におけるノイズに対するそのシグナル比を決定するために、同様にして、全ての6種類の酵素断片[α(PB11)、αM69L(PB11.11)、αM69LM182T(PB11.12)、αM69IM182T(PB11.13)、ω(PB13)及びωN276D(PB13.3)]を発現させ、精製し、特性決定した。
【0224】
α及びω断片の発現
実施例1に記載のようにBL21−Gold(DE3)における断片の発現を行った。
【0225】
変性条件下での組み換えタンパク質の抽出
溶解緩衝液(α断片に対して6M GuHCl、100mM NaH2PO4、10mM Tris、1mM DTT、pH8又はω断片に対して6M GuHCl、100mM NaH2PO4、10mM Tris、pH8)10mL/g(ペレット湿重量)中で、一晩誘導した250mLからのペレットを溶解し、続いて100rpmで振盪しながら4℃にて1時間温置した。溶解を促進するために、Branson250超音波ホモジナイザー(sonifier)を用いて、氷浴中で30秒オン/30秒オフ5サイクルで懸濁液を超音波処理した。超音波処理後、12,000xgで30分間(4℃)溶解液を遠心し、次いで細胞残屑を除去するために0.2μmフィルターに通した。
【0226】
α断片の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
4℃で、Unicorn5.1コントローラーソフトウェア(GE Healthcare)を用いてAKTA−FPLC(GE Healthcare)の制御下で、1mL HisTrapTMHPカラム(Amersham cat.17−5247−01)を用いて、組み換えHisタグ付加タンパク質を精製した。勾配緩衝液(8M 尿素、100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、1mM GSSG、0.1mM GSH、pH8)10カラム体積(CV)で1mL/分の流速でHisTrapカラムを平衡化した。1mL/分で、注入バルブ(INV−907)を介して直接試料を注入するために50mLスーパーループを用いて、透明化したE.コリ溶解液を直接カラムに載せた。1mL/分での、8M 尿素、100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、1mM GSSG、0.1mM GSH、pH8から100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH8の50カラム体積(CV)勾配にわたり結合タンパク質を再び折り畳ませた。20mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVでカラムから夾雑タンパク質を洗い流した。500mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8の10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、PAGE、ウエスタンブロッティング、ゲルろ過及び質量分析により分析した。
【0227】
ω断片の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
4℃で、Unicorn5.1コントローラーソフトウェア(GE Healthcare)を用いてAKTA−FPLC(GE Healthcare)の制御下で、1mL HisTrapTMHPカラム(Amersham cat.17−5247−01)を用いて、組み換えHisタグ付加タンパク質を精製した。1mL/分の流速で勾配緩衝液10CV(8M 尿素、100mM NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5)でHisTrapカラムを平衡化した。1mL/分で、注入バルブ(INV−907)を介して直接試料を注入するために50mLスーパーループを用いて、透明化したE.コリ溶解液を直接カラムに載せた。1mL/分で、8M 尿素 100mM NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5から100mM NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5の50CV勾配にわたり結合タンパク質を再び折り畳んだ。20mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVで夾雑タンパク質をカラムから洗い流した。500mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8の10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、PAGE、ウエスタンブロッティング、ゲルろ過及び質量分析により分析した。
【0228】
酵素断片相補性
動態研究のためにNi2+に結合することができる6−ヒスチジン−タグを含有する精製α及びω断片を使用して、ノイズ(Ni2+なしでの自発的酵素相補性)に対するシグナル(Ni2+強制的酵素相補性)比を計算した。強制的酵素相補性のノイズに対するシグナル比を調べ、評価するために、様々な基質、緩衝添加物及び阻害剤を使用した。
【0229】
ニトロセフィン活性アッセイ及びパネル血清スクリーニング
190μL反応混合液にニトロセフィン(100%DMSO中で調製した4mM保存溶液の10μM)を添加し、0.75M尿素、150mM NaCl、50mM NaH2PO4、PH7、各酵素断片(α及びω)10−20nM及び適切な場合には200μM Ni2+の最終濃度にした。ピペッティングによりアッセイ成分をよく混合し、基質添加前に室温で5分間温置した。30分間の時間枠にわたり、SpectraMax190(Molecular Devices、USA)を用いてニトロセフィン加水分解の速度を492nmで測定した。血清アッセイの場合、Ni2+ではなく、1/200の最終希釈での血清を添加し、上記のように50検体の個々の血清のパネルをスクリーニングした。血清アッセイの最終濃度は次のとおりであった:各α及びω断片10nMを添加して、0.6M尿素、50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7。適切な場合には、血清アッセイに1.1μM タゾバクタム及び2.8μM タゾバクタムを添加した[静脈内タゾバクタム投与後の2x及び5x予想Cmax血清濃度(Wise、R.、M.Loganら、1991、Antimicrob Agents Chemother 35(6):1081−4)。
【0230】
阻害剤耐性突然変異の酵素反応速度
次を例外として、上述のようにNi2+を用いた活性アッセイを行った:ニトロセフィン(0mMから1.6mMの範囲の最終基質濃度とするための様々な連続希釈液100μL)を反応混合液100μL(尿素なし)に添加した。室温で10分間にわたりSpectraMax190を用いて492nmで反応を監視することにより、ニトロセフィン加水分解を測定した。基質濃度に対して反応初速度(最初の10回の読み取り、mOD/分)をプロットし、各α及びω断片ペアに対してKm及びKcatを決定した。Ni2+アッセイにおいて阻害剤IC50値を決定するために、各阻害剤の連続希釈液を含有する反応混合液にニトロセフィン(100%DMSO中の2mM ニトロセフィン10μL)を添加し、200μLの最終体積中50mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7、10μM タゾバクタム(Sigma Cat#T2820)、0−100μMスルバクタム(Molekula Prod#19590299)又は0−100μMクラブラン酸(Molekula Prod#87644048)、各α及びω断片25nM、100μMニトロセフィン及び200μM Ni2+の最終濃度を得た。室温で10分間、SpectraMax190を用いて492nmでニトロセフィン加水分解の速度を測定した。次に、各阻害剤濃度に対して反応初速度(最初の10回の読み取り、mOD/分)をプロットし、各α及びω断片ペアに対して阻害剤IC50を決定した。
【0231】
結果
【0232】
【表3】
【0233】
【表4】
【0234】
これらの結果から、上記の突然変異を組み込むβ−ラクタマーゼ断片が阻害剤に対する耐性を向上させたことが分かった。これらの知見は、血清試料中のHSV−1及びHSV−2 IgGの検出のための均一インビトロFECアッセイにおいて使用しようとする次のβ−ラクタマーゼ断片にも当てはまる(実施例4)。
【実施例4】
【0235】
患者血清における疾患特異的IgGの検出のためのβ−ラクタマーゼTEM1阻害剤耐性強制的酵素相補性(FEC)アッセイ
実施例1、2及び3は、アミノ酸196/197で全長親酵素(PB3)を分割し、続いて切断末端にフレキシブルリンカー(G4S)及びヒスチジンタグ(6xH)を導入することにより作製されるTEM1断片の合成及び特性決定を説明する。β−ラクタマーゼ阻害剤に対する耐性を向上させるために、次のα断片(PB11)及びω断片(PB13)を使用して点突然変異を導入し、結果として、αM69L断片(PB11.11)、αM69LM182T断片(PB11.12)、αM69M182T断片(PB11.13)及びωN276D断片(PB13.3)が得られた。DNA配列データから、フレキシブルリンカー(G4S)ヒスチジンタグ(6xH)及び点突然変異の存在が確認された。β−ラクタマーゼ阻害剤(抗生物質を投与されている患者の血清中に存在する可能性がある。)存在下で被分析物質(ヒスチジンタグに結合するNi2+、Zn2+又は6xHモノクローナル抗体)との強制的酵素相補性(FEC)を明らかにするために、これらの断片ペアを使用した。
【0236】
この実施例において、患者血清中の疾患特異的IgG抗体の検出のために、被分析物質結合部分(HSV−1短縮型抗原、HSV−2短縮型抗原及びタンパク質−Gサブユニット)に酵素断片を融合させた。
【0237】
方法
DNAコンストラクト
この実験で使用されるβ−ラクタマーゼコンストラクトの概略図を図20で示す。全てのプラスミドの構築のために使用される対応するオリゴヌクレオチド(Sigma−Genosys)を表5で列挙する。PAN1及びPAN2プライマーを用いたpUC18 Bla遺伝子のPCR増幅によって、C末端ヘキサ−ヒスチジンタグ付加(CHis)全長β−ラクタマーゼ(N末端分泌配列を含まない。)を発現する第一のコンストラクトを作製した。NdeI及びXhoIでPCR産物を消化し、pET−26b(+)(Merck)に連結して、pET−BLを得た。鋳型としてこのコンストラクトを使用して、G4Sリンカーを介して融合されたCHisタグを有するBLα(残基25−196);及びN末端ヘキサヒスチジンタグを有するBLω(残基197−290)(これもG4Sリンカーを介して連結)の発現のためのbla遺伝子の2つの隣接領域を増幅するためにPAN1/PAN3及びPAN4/PAN5を使用した。NdeI及びXhoIで各PCR産物を消化し、pET−26b(+)に連結して、pET−BLα及びpET−BLωを得た。将来のコンストラクトのために前駆体として使用するために、pET−BLα及びpET−BLωの両方に、より長い(G4S)3リンカーを発現する配列を組み込み、pET−BLα(G4S)3及びpET−BLω(G4S)3を得た。それぞれプライマーPAN6/PAN7及びPAN8/PAN9を使用して、部位特異的突然変異誘発(QuickChange II XL−部位特異的突然変異誘発キット)によりこれらを導入した。
【0238】
3つの異なるタイプの被分析物質結合部分:糖タンパク質G1(gG1;HSV−1抗原;図19b)又は糖タンパク質G2(gG2;HSV−2抗原;図19b)の何れかのエピトープを含むペプチド及びプロテインG(ProG)のC2ドメインを有するようにβラクタマーゼの続く断片を改変した。作製された第一の2つのDNAコンストラクトは、HSV−1(pET−BLα−HSV1)又はHSV−2特異的抗原性ペプチド(pET−BLα−HSV2)の何れかに融合されたBLαを発現する。これらの断片の構築を次のように説明する。最初に、HSV−1抗原をコードするメガプライマーを作製するために、オリゴヌクレオチドPAN10、PAN11、PAN12及びPAN13(表5)を用いた重複伸長PCRを行った。第二のPCRでは、BLα−HSV1遺伝子を与えるために、鋳型としてpET−BLα(G4S)3、第一のPCRからのメガプライマー及びPAN14を用いた。NdeI及びXhoIでこの第二のPCR産物を消化し、pET−26b(+)に連結した。重複伸長PCRのためにオリゴヌクレオチドPAN10、PAN15、PAN16、PAN17、PAN18及びPAN19を用いて、同様にして、BLα−HSV2をコードするコンストラクト pET−BLα−HSV2を作製した。
【0239】
続く融合コンストラクトの改変を簡素化するために、様々なドメイン配列の置換を可能にするため、酵素断片、リンカー及び結合部分の間に制限エンドヌクレアーゼ部位が組み込まれたDNA2.0(Menlo Park、U.S.A.)によってユニバーサルBLα及びBLω融合遺伝子を合成した。pET−26b(+)のNdeI/XhoI部位への連結(ライゲーション)のために、何れかの末端において、BamHI、SpeI及びNheI部位が、ProG、(G4S)3リンカー及びNdeI及びXhoI部位があるBLωコードドメインの間に挿入されるように、ユニバーサルBLωコンストラクト、pET−BLω−ProGを設計した。E.コリのコドン使用表により、ベクターNT1(Invitrogen)を用いて、公開されているアミノ酸配列(Gulichら、2002、Protein Eng.15(10):835−42)の戻し翻訳(back−translation)により、連鎖球菌株G148プロテインGのC2 IgG−結合ドメインをコードする配列を得た。同様のアプローチを用いてユニバーサルBLαコンストラクト、pET−BLα−ProGを作製した。pET−26b(+)のNdeI XhoI部位への連結(ライゲーション)のために、何れかの末端において、BLα配列、(G4S)3リンカー及びNdeI及びXhoI部位を有する部分をコードする抗原の間にKpnI、BamHI及びSpeI部位を有するように遺伝子配列を設計した。このコンストラクトに対して、pET−BLω−ProGからProGをコードする配列を切り出し、ユニバーサルBLαコンストラクトのBamHI SpeI部位に連結した。
【0240】
BLα−HSV1及びBLα−HSV2に対する代替物として、発明者らは、ユニバーサルBLωコンストラクトを使用し、個々のHSV−1及びHSV−2抗原性ペプチド配列でProG配列を置換することにより、相補的BLω−HSV1及びBLω−HSV2コンストラクトを作製した。隣接するBglII及びSpeI部位を組み込むためにオリゴヌクレオチドPAN20及びPAN21を用いて、pET−BLα−HSV1からHSV−1ペプチドをコードする配列をPCR増幅した。同様に、隣接するBamHI及びSpeI部位を組み込むためにオリゴヌクレオチドPAN22及びPAN23を用いて、pET−BLα−HSV2からHSV−2ペプチド配列をPCR増幅した。次に、pET−BLω−HSV1及びpET−BLω−HSV2を得るために、pET−BLω−ProGのBamHI/SpeI部位にPCR産物を連結した。
【0241】
オリゴヌクレオチド、PAN24及びPAN25を使用して、部位特異的突然変異誘発(QuickChangeII XL−部位特異的突然変異誘発キット)により、pET−BLω−ProG、pET−BLω−HSV1及びpET−BLω−HSV2のω断片配列に、点突然変異N276Dを導入した。Australian Genome Research Facility(AGRF、Brisbane、Australia)により、クローニングされ突然変異を導入された全ての挿入物の配列決定が行われた。
【0242】
【表5】
【0243】
HSV−1及びHSV−2抗原性ペプチド設計
血清中のHSV−1及びHSV−2に対する抗体を検出しそれを差別化するために、被分析物質結合部分として2種類の特異的HSV抗原性ペプチドを設計した。HSV−1特異的ペプチド(図19b)は、糖タンパク質G1(gG1)の残基92−148からなる。gG1のこの領域は、免疫優勢エピトープ(残基112−127)及び、ヒトにおいてHSVタイプ−1特異的反応を与えることが知られている第二のエピトープ内に2つのキーとなるアミノ酸を含有する。HSV−2特異的ペプチド(図19b)は、糖タンパク質G2(gG2)の残基551−641から構成され、ヒトにおいてHSVタイプ−2特異的反応を与えることが知られている2つの免疫優勢エピトープ(残基561−578及び626−640)からなる。
【0244】
α及びωレポーター断片の発現及び精製
全ての酵素断片[α断片(PB11)、αM69L断片(PB11.11)、αM69LM182T断片(PB11.12)、αM69IM182T断片(PB11.13)、α−HSV−1断片、α−HSV−2断片、α−タンパク質−G断片及びω断片(PB13)、ωN276D断片(PB13.3)、HSV−1−ω断片及びHSV−2−ω断片]を発現させ(実施例1に記載のように)、変性条件下で精製した。ネイティブ条件下でタンパク質−G−ω断片を精製した。精製した全てのタンパク質の特性を同様にして調べ、アッセイした。
【0245】
変性条件下での組み換えタンパク質の抽出
α断片(PB11、PB11.11、PB11.12及びPB11.13)に対する溶解緩衝液(6M GuHCl、100mM NaH2PO4、10mM Tris、1mM DTT、pH8)及びω断片(PB13及びPB13.3)に対する(6MGuHCl、100mM NaH2PO4、10mM Tris、pH8)の10mL/g(ペレット湿重量)で、一晩誘導した250mLからのペレットを溶解した。6M GuHCl、100mM NaH2PO4、200mM L−アルギニン、20mMイミダゾール、2mM DTT、pH8中でα断片−被分析物質結合部分融合物(BLαHSV−1、BLαHSV−2及びBLαProG)を溶解した。6M GuHCl、100mM NaH2PO4、200mM L−アルギニン、20mMイミダゾール、pH8中で被分析物質結合部分−ω−断片融合物(BLωHSV1及びBLωHSV2)を溶解した。100rpmで振盪しながら4℃にて1時間温置した後、溶解を促進するために、Branson250超音波ホモジナイザー(sonifier)を用いて、氷浴中で30秒オン/30秒オフ5サイクルで各懸濁液を超音波処理した。超音波処理後、12,000xgで30分間(4℃)溶解液を遠心し、次いで0.2μmフィルターに通した。
【0246】
ネイティブ条件下でのBLωProGの抽出及び精製
5mL/g(湿重量)で、ネイティブ溶解緩衝液(10mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8)中で、一晩誘導した250mLからのペレットを再懸濁した。リゾチーム(Sigma)を1mg/mLになるように添加し、氷上で30分間、懸濁液を温置した。Branson250超音波ホモジナイザー(sonifier)を用いて、氷浴中で30秒オン/30秒オフ5サイクルで溶解液を超音波処理した(出力6及び70%負荷)。10,000xgで30分間、4℃にて溶解液を遠心した。容器を傾けて上清を取り、0.2μmフィルターに通した。製造者により指示されるように、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Pierce)をろ過液に添加した。Ni−NTAレジン(Qiagen cat#30210)を用いてネイティブ条件下でBLωProGを精製した。Ni−NTA 1mLを溶解液に添加し、4℃で1時間振盪(100rpm)することにより穏やかに混合した。溶解液−Ni−NTA混合液を1x10cmカラムに注ぎ、ネイティブ洗浄緩衝液(20mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8)16mLで洗浄した。ネイティブ溶出緩衝液(250mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl pH8)10mLにより1mL分画になるように結合タンパク質を溶出した。
【0247】
PB11、PB11.11、PB11.12及びPB11.13の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
4℃で、Unicorn5.1コントローラーソフトウェア(GE Healthcare)を用いて、AKTA−FPLC(GE Healthcare)の制御下で、1mL HisTrapTMHPカラム(Amersham cat.17−5247−01)を用いて、組み換え6xHタグ付加タンパク質を精製した。1mL/分の流速で、勾配緩衝液(8M尿素100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、1mM GSSG、0.1mM GSH、pH8)10カラム体積(CV)でHisTrapカラムを平衡化した。1mL/分で、注入バルブ(INV−907)を介して直接試料を注入するために50mLスーパーループを用いて、透明化したE.コリ溶解液を直接カラムに載せた。1mL/分で、8M 尿素、100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、1mM GSSG、0.1mM GSH、pH8から100mM NaH2PO4、150mM NaCl、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH8 50CV勾配にわたり結合したタンパク質を再び折り畳ませた。20mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVで夾雑タンパク質をカラムから洗い流した。500mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、FRAC950分画回収装置(GE Healthcare)を用いて1mL分画になるように回収した。PAGE、ウエスタンブロッティング、ゲルろ過及び質量分析により、タンパク質をさらに分析した。
【0248】
PB13及びPB13.3の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
4℃で、Unicorn5.1コントローラーソフトウェア(GE Healthcare)を用いて、AKTA−FPLC(GE Healthcare)の制御下で、1mL HisTrapTMHPカラム(Amersham cat.17−5247−01)を用いて、組み換え6xHタグ付加タンパク質を精製した。1mL/分の流速で、勾配緩衝液(8M尿素100mM、NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5)10CVでHisTrapカラムを平衡化した。1mL/分で、注入バルブ(INV−907)を介して直接試料を注入するために50mLスーパーループを用いて、透明化したE.コリ溶解液を直接カラムに載せた。1mL/分で、8M 尿素、100mM NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5から100mM NaH2PO4、10mM Tris、200mM L−アルギニン、pH7.5 50CV勾配にわたり結合タンパク質を再び折り畳ませた。20mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVで夾雑タンパク質をカラムから洗い流した。500mMイミダゾール、50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8 10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、1mL分画になるように回収した。
【0249】
BLα−HSV1、BLα−HSV2、BLω−HSV1、BLω−HSV2及びBLαProGの固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びカラム上での再折り畳み
4℃で、Unicorn5.1コントローラーソフトウェア(GE Healthcare)を用いて、AKTA−Purifier(GE Healthcare)の制御下で、1mL HisTrapTMHPカラムを用いて、融合タンパク質を精製した。1mL/分の流速で、勾配緩衝液(8M尿素、100mM NaH2PO4、200mM L−アルギニン、pH8)10CVでHisTrapカラムを平衡化した。1mL/分で、注入バルブ(INV−907)を介して直接試料を注入するために50mLスーパーループを用いて、透明化したE.コリ溶解液を直接カラムに載せた。1mL/分で、8M 尿素、100mM NaH2PO4、200mM L−アルギニン、pH8から100mM NaH2PO4、200mM L−アルギニン、pH8の20CV勾配にわたり、結合タンパク質を再び折り畳ませた。50mMイミダゾール、100mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH7.5 10CVとそれに続く100mMイミダゾール、100mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH7.5の第二の10CVで夾雑タンパク質をカラムから洗い流した。500mMイミダゾール、100mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH7.5 10CVでヒスチジンタグ付加タンパク質を溶出し、1mL分画になるように回収した。タンパク質ピーク(2.5mL)を含有する分画をプールし、PD10カラム(GE Healthcare)を用いて50mM NaH2PO4、50%グリセロールに緩衝液を交換し、−20℃で保存した。
【0250】
BLω−ProG融合コンストラクトに対するリンカー長の最適化
より短い(G4S)2又はより長い(G4S)4ドメイン間リンカーを有するBLω−ProGコンストラクトを作製するために、DNA2.0により個々の遺伝子配列を合成し、pET−26b(+)のNdeI/XhoI部位に連結した。元のBLω−ProGのようにネイティブ条件下で両断片を精製した。被分析物質の源として、HSV1陽性の個体からのプール血清又はHSV1抗原性ペプチドで免疫付与したウサギからの過免疫血清の何れかを用いて、BLα−HSV1と組み合わせて3種類のBLω−ProG断片を用いてアッセイを行った。両アッセイに対して、バックグラウンド相補性のレベルを示すために、HSV−1/2陰性血清を加えた。BLα−HSV1(5nM)、BLω−ProG(5nM)、0.5M尿素、150mM NaCl、50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7及び100μMニトロセフィンからなる200μL反応液中で1:100の最終濃度になるように血清を添加した。RTで40分間にわたりニトロセフィン加水分解の動態を492nmで測定する前に、RTで10分間、反応液を温置した。
【0251】
HSV−1及びHSV−2特異的IgGに対するβ−ラクタマーゼに基づくFECアッセイ
正常個体又はHSV−1又はHSV−2感染が証明された個体の何れかからの50検体の血清試料を試験した。150検体の患者血清(50検体のHSV−2陽性/HSV−1陰性;50検体のHSV−1陽性/HSV−2陰性;50検体のHSV−1/HSV−2陰性)のそれぞれとともに、(1)BLα−HSV1/BLω−ProG、(2)BLα−HSV2/BL−ProG、(3)BLω−HSV1/BLα−ProG及び(4)BLω−HSV2/BLα−ProGを含む断片の4種類の異なる組み合わせを試験した。血清(50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7中の1:20希釈液の20μL)、続いてニトロセフィン(Merck)(5%DMSO、50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7中の1mMニトロセフィン20μL)を、96ウェルプレート(Greiner)中の均一反応混合液160μLに添加し、1:200患者血清、100μMニトロセフィン、0.5%DMSO、5nM BLα、5nM BLω、0.5M尿素、150mM NaCl、50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7の最終濃度を得た。プラットフォームロッカー上でRTで15分間、反応混合液を温置し、その後、492nmでRTにて60分間にわたりニトロセフィン加水分解の速度を測定した。SoftMaxProソフトウェア(Molecular Devices)を用いて速度測定の結果を得て、分析した。アッセイの最初の20分間において速度(mOD分−1)を計算した。
【0252】
結果
BLω−ProGに対するリンカー長の最適化
発明者らは、BLω−ProG内での(G4S)2、(G4S)3又は(G4S)4ドメイン間リンカーの何れかの使用の効率を比較した。それぞれモデル被分析物質及びその対照としてウサギ過免疫血清(抗HSV−1ペプチド)又はHSV−1/2陰性血清の何れかと3種類のBLω−ProG変異体及びBLα−HSV1を組み合わせた、相補性アッセイを行った。過免疫血清を用いたアッセイにより、(G4S)3リンカーを有するBLω−ProGで活性レベルが最大となり、従ってバックグラウンドに対するシグナルの比が最大となることが示された。これらのアッセイから、より大きい(G4S)4リンカーを有するものと比較して(G4S)2及び(G4S)3リンカーを有するBLω−ProGで活性レベルが高くなることが示される。この実験においてFECアッセイに対して使用される全てのその他のBLω−ProG断片には(G4S)3リンカーが組み込まれた。
【0253】
BLω−ProGの特異性
BLω−ProGのプロテインG部分が機能的であり、発明者らのHA形式で試験するのに適切であることを確認するために、発明者らは、表面プラズモン共鳴を用いてヒトIgGに対するその結合速度を評価した。センソグラムデータの分析から、BLω−ProGが81nMの解離定数(KD)を有することが示されたが、これは公開されているプロテインGのC2ドメインの親和性(93nM)(これもまたSPRを用いて決定された。)と同等である。BLω−ProGはC2ドメインよりも会合速度が遅いが、これは解離速度がより遅いことにより補正される。ヒト血清アルブミンへの結合を除外するために、短縮型市販の組み換えプロテインGを陽性対照として含めた。この組み換えプロテインGは、同じ条件下で試験された場合、BLω−ProGよりもヒトIgGへの結合親和性が低かった(KD=483nM)。
【0254】
β−ラクタマーゼに基づくFECを用いた被分析物質定量
本明明細書中に記載のインビトロFEC方式の濃度−反応を調べるために、モデル被分析物質の存在下で一緒にBLα−HSV1及びBLω−ProGをアッセイした。この場合、β−ラクタマーゼ分割点末端の近接端部に両酵素断片がヘキサヒスチジンタグを有するので、モデル被分析物質としてマウスモノクローナル抗ヒスチジンAb(抗His MAb)を使用した。得られた曲線(データは示さず。)は、単一部位飽和結合に相応する古典的なシグモイド型を示し、このアッセイ形式が、比例して高い被分析物質濃度と低い被分析物質濃度とを区別できることが確認される。これは、被分析物質濃度が検出範囲に入る限り被分析物質濃度を定量するために本アッセイを使用することができることを示唆する。予想されるように、対照被分析物質(モノクローナル抗グルタチオン−S−トランスフェラーゼAb;抗−GST MAb)は反応曲線をなさず、このことから、抗体の存在下での本アッセイの忠実性が示される。
【0255】
HSV−1及びHSV−2の検出のためのβ−ラクタマーゼに基づくFECを用いた均一アッセイ
発明者らの均一アッセイの性能を試験するために、発明者らは、Brisbane、Australiaからの150検体の患者血清試料(50検体のHSV−1陽性/HSV−2陰性;50検体のHSV−2陽性/HSV−1陰性;50検体のHSV−1/HSV−2陰性)をアッセイし、内部標準として使用した既存の市販アッセイ、HerpeSelect1及び2 ELISA IgG(Focus Diagnostics、USA)と発明者らの結果を比較した。図14から17は、β−ラクタマーゼに基づくFECが高い感受性及び特異性で首尾よくタイプ特異的HSV抗体を検出することができることを示す。HSV−1/2に対する試験で陰性であるプール血清の試料(n=4)に対して、50アッセイの各セットに対する結果(断片の4種類の異なる組み合わせのそれぞれに対して3セットのアッセイ−3日間にわたり3回ずつ行う。)を正規化した。図18は、HSV陰性患者から(0.85mOD分−1)又は高HSV−2陽性血清の個体から(5.14mOD分−1)の血清中でのBLα−HSV2/BLω−ProGによるニトロセフィン加水分解の典型的な速度を示す。HSV−1高陽性血清中でBLα−HSV1/BLω−ProGにより同様の加水分解速度が得られた。BLα−ProG/BLω−HSV1の活性(図14)は全体的にBLα−HSV1/BLω−ProG(図17)よりも僅かに高いが、ある種の融合パートナー(ProG、HSV−1又はHSV−2特異的ペプチド)に対する断片(BLα又はBLω)の選択はアッセイの全体的結果にはあまり影響がなかった。対照試料(HSV陰性血清)において低バックグラウンド活性を維持するために、150mM NaCl及び0.5M尿素を含有するアッセイ中で低断片濃度(5nM)と組み合わせた高血清希釈液(1:200)を使用した。75分間(基質添加後15分間の遅延時間を含む。)にわたり血清試料をアッセイしたが、試料によっては、基質添加後、最初の25分間内に色の変化が観察され得る。
【0256】
考察
発明者らは、多岐にわたる生体指標の検出のために使用することができる可能性がある新しいFECに基づく均一アッセイを開発した。この系は、専用の機器を必要とせず、単純であるため、ポイントオブケアの用途のためにさらに開発することができる。実際に可能であることを示すために、発明者らは、E.コリβ−ラクタマーゼを用いたタイプ特異的HSV IgGの検出のためのアッセイを開発した。この遺伝子を2つに分割し、HSV−1又はHSV−2−特異的ペプチド抗原の何れかに融合させた一方の断片;プロテインGの1つのドメインに融合させた他方の断片を発現するように改変した。β−ラクタマーゼ断片の全てを大量に容易に精製し、単に被分析物質及び基質存在下で2つの相補的断片を一緒に混合することにより緩衝液中でアッセイした。発明者らは、β−ラクタマーゼに基づくFECアッセイは、高感受性及び特異性で、ヒト血清中でのHSV−1及びHSV−2に対する抗体を同定することにより、限られた交差反応性、妨害及び阻害で、血清中の大きな被分析物質を検出することができることを明らかにした。
【0257】
同じ又は異なるレポーター酵素の何れかを用いたPCAの先行報告に相反して、発明者らは、一貫して、被分析物質の存在下で、相補性断片の自発的アセンブリーの結果として、バックグラウンド活性を観察した。この見解の相違は、これら2つのアッセイの基礎となる性質が異なることによって説明することができる。PCAは、インビボで(酵素断片の濃度は細胞あたり25分子程度であり得る。)(〜fMの範囲)タンパク質−タンパク質相互作用を検出するために、最も一般的に使用される。一方、発明者らのインビトロでのFECに基づくアッセイは、5nMという高い断片濃度を有し、それにより、自発的再会合の可能性が向上する。それにもかかわらず、本明細書中で報告される予備アッセイは、平均でバックグラウンドよりも少なくとも2倍高いシグナルを生じさせ、溶液中の被分析物質の濃度によっては、発明者らは、ヒト血清において15という高いノイズに対するシグナル比を達成することができる。将来、発明者らは、互いに対して親和性が非常に低い、つまり、アッセイのダイナミックレンジを向上させながら、被分析物質検出及びバックグラウンドノイズの限界の両方を低くする断片を作製することに焦点を当てることを目標としている。
【0258】
HSV感染の診断のための信頼できる市販のタイプ特異的血清学試験はあまりなく、これらのうち最も一般的であるものはELISAに基づく。発明者らのアッセイ開発ストラテジーの一部として、発明者らは、レポーター酵素断片に融合させた際にHSV−1又はHSV−2に対する抗体の検出に対して感度が高く特異性が高い新規HSVタイプ特異的抗原を設計することに成功した。HSV−1特異的ペプチドは、ヒトにおいてHSVタイプ−1特異的反応を誘発することが知られている2つのキーとなるアミノ酸に加えて、gG1の免疫優勢領域を含有する。同様に、HSV−2特異的ペプチドは、ヒトにおいてHSVタイプ−2特異的反応を誘発することが知られているgG2の2つの免疫優勢エピトープを含有する。
【0259】
本明細書中で報告されるFECに基づく均一EIAは単純であり、リアルタイムでの疾患特異的生体指標の検出のために容易に自動化し得る。リアルタイム被分析物質検出(センサー)により、エンドポイント検出よりも大きいダイナミックレンジが得られ、ライフサイエンスでの応用に対して本質的に定量的である。
【0260】
上記の個々のセクションで言及された本発明の様々な特性及び実施形態は、必要に応じて、変更すべき部分は変更して、他のセクションに適用される。従って、必要に応じて、あるセクションで述べられる特性を他のセクションで述べられる特性と組み合わせ得る。
【0261】
本明細書中で開示され主張される全ての組成物及び方法は、本開示に照らして、不必要な実験を行わずに為し、実行することができる。好ましい実施形態の観点から本発明の組成物及び方法を説明してきたが、当業者にとって当然のことながら、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、組成物及び方法に対して、及び本明細書中に記載の方法段階において又は段階の順番において、変更を適用し得る。さらに具体的には、同じ又は同様の結果が達成されると同時に、化学的かつ物理学的に関連のあるある一定の作用物質で本明細書中に記載の作用物質を置き換えることができることが明らかである。当業者にとって明らかである全てのこのような類似の置換及び変更は、添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの本発明の精神、範囲及び概念内にあるものとみなされる。
【0262】
参考文献
上記文章で特定される参考文献は、それらが、本明細書中で使用される、方法、技術及び/又は組成物の背景を、補足し、説明し、提供するか又はそれらを教示する程度に、参照により本明細書中に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素活性の阻害剤の存在下で酵素活性を保持するポリペプチド複合体を生成させるための少なくとも第二のポリペプチドとの会合において操作可能なポリペプチド。
【請求項2】
ポリペプチドが一部であるポリペプチド複合体の酵素活性が、β−ラクタム抗生物質のβ−ラクタム環の加水分解を含み、ならびに酵素活性の阻害剤がβ−ラクタマーゼの阻害剤である、請求項1のポリペプチド。
【請求項3】
単離され及び精製された請求項1又は請求項2のポリペプチド。
【請求項4】
インタラクタードメインに連結されてレポーター断片ペアメンバーを形成する、請求項1から3の何れか一項にポリペプチド。
【請求項5】
インタラクタードメインがリンカーによりポリペプチドに連結される、請求項4のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項6】
強制的酵素相補性アッセイにおいて操作可能な、請求項4又は請求項5のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項7】
インビボ強制的酵素相補性アッセイにおいて操作可能な、請求項6のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項8】
インビトロ強制的酵素相補性アッセイにおいて操作可能な、請求項6のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項9】
メンバーが、そのアミノ酸配列変化を欠く相同配列の安定性と比較してインビトロアッセイ条件下で安定性を促進するアミノ酸配列変化を含む、請求項8のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項10】
メンバーが、そのアミノ酸配列変化を欠く相同配列の溶解性と比較して溶解性を促進するアミノ酸配列変化を含む、請求項8のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項11】
単離され及び精製された請求項4から請求項10の何れか一項のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項12】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列において述べられる連続アミノ酸配列を含む単離ペプチド。
【請求項13】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列のポリペプチドをコードする配列を含む、単離ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項1、3、12又は13の何れか一項のポリペプチドを含む、強制的酵素断片相補性アッセイ。
【請求項15】
請求項4から11の何れか一項のレポーター断片ペアメンバーを含む、強制的酵素断片相補性アッセイ。
【請求項16】
アツセイがインビボで行われる、請求項14又は請求項15のアッセイ。
【請求項17】
アッセイがインビトロで行われる、請求項14又は請求項15のアッセイ。
【請求項18】
血液又は血清を含む、請求項17のアッセイ。
【請求項19】
ポリペプチド又はレポーター断片ペアメンバーが一部である複合体の酵素活性の阻害剤の存在下で行われる、請求項14から18の何れか一項のアッセイ。
【請求項20】
ポリペプチドが一部である複合体の酵素活性がβ−ラクタム抗生物質のβ−ラクタム環の加水分解を含み、ならびに酵素活性の阻害剤がβ−ラクタマーゼの阻害剤である、請求項14から19の何れか一項のアッセイ。
【請求項21】
インタラクタードメインが、2価金属陽イオン、抗体、代謝産物、疾患マーカー又は抗原からなる群から選択される関心のある被分析物質に対して親和性を有する、請求項14から20の何れか一項のアッセイ。
【請求項22】
被分析物質の存在についてアッセイする方法であって、
(a)関心のある被分析物質の存在について試験しようとする試料を得る段階;
(b)被分析物質に対して親和性があるインタラクタードメインを含む、精製された第一のレポーター断片ペアメンバーを得る段階;
(c)関心のある被分析物質に対して親和性があり、ならびに関心のある被分析物質との第一及び第二のレポーター断片ペアメンバーのインタラクタードメインの親和性を通じ、第一のレポーター断片ペアメンバーとの会合に際してレポーター酵素活性を再構成することにおいて操作可能であるインタラクタードメインを含む精製された第二のレポーター断片ペアメンバーを得る段階;及び
(d)第一及び第二のレポーター断片ペアメンバーが、被分析物質とのインタラクタードメインの親和性を通じて会合することができるのに十分なインビトロでのアッセイ条件を提供する段階を含み、レポーター酵素活性の再構成が試料中での被分析物質の存在を示す、方法。
【請求項23】
被分析物質が2価陽イオンである、請求項22の方法。
【請求項24】
被分析物質が抗体である、請求項22の方法。
【請求項25】
均一インビトロ強制的酵素断片相補性アッセイを行うためのキットであって、関心のある被分析物質に対して親和性があるインタラクタードメインを含む単離レポーター断片ペアメンバーを含み、単離レポーター断片ペアメンバーが、インビトロアッセイ条件下で安定であり及び操作可能である、キット。
【請求項26】
均一インビトロ強制的酵素断片相補性アッセイを行うためのキットであって、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列の単離ポリペプチドを含む、キット。
【請求項27】
第一のポリペプチドレポーターサブユニットを含む第一の成分及び第二のポリペプチドレポーターサブユニットを含む第二の成分を含むレポーター系であって、第一のサブユニット及び第二のサブユニットが、検出可能なシグナルを生成し得る酵素活性を有する活性のあるポリペプチド複合体を生成させるために会合することができ、前記会合が関心のある被分析物質に対する第一及び第二の成分の結合により媒介され;第一のポリペプチドサブユニット及び/又は第二のポリペプチドレポーターサブユニットが、阻害剤による前記酵素活性の阻害に対する活性ポリペプチド複合体の感受性を低下させる1以上のアミノ酸配列変化を含む、レポーター系。
【請求項28】
阻害剤が、生体試料中に存在する物質である、請求項27に記載のレポーター系。
【請求項29】
生体試料中に存在する物質が抗生物質である、請求項28に記載のレポーター系。
【請求項30】
活性ポリペプチド複合体がβ−ラクタマーゼ活性を有する、請求項27から29の何れか一項に記載のレポーター系。
【請求項31】
第一のポリペプチドレポーターサブユニットがβラクタマーゼのα断片を含み、ならびに第二のポリペプチドレポーターサブユニットがβラクタマーゼのω断片を含む、請求項30に記載のレポーター系。
【請求項32】
βラクタマーゼがTEM−1βラクタマーゼであり、ならびに第一のポリペプチドサブユニット中の前記アミノ酸配列変化がM69L又はM69I置換を含む、請求項31に記載のレポーター系。
【請求項33】
βラクタマーゼがTEM−1βラクタマーゼであり、ならびに第二のポリペプチドサブユニット中の前記アミノ酸配列変化がN276D置換を含む、請求項31又は請求項32に記載のレポーター系。
【請求項34】
第一及び/又は第二のレポーターポリペプチドサブユニットが、インビトロでのサブユニットの安定性及び/又は溶解性を促進する1以上のアミノ酸変化を含む、請求項27から33の何れか一項に記載のレポーター系。
【請求項35】
第一のポリペプチドサブユニットがTEM−1βラクタマーゼのα断片を含み、ならびに第二のポリペプチドサブユニットがTEM−1βラクタマーゼのω断片を含み、ならびに第一のポリペプチドサブユニット中の前記アミノ酸配列変化がV74T置換及び/又はM182T置換を含む、請求項34に記載のレポーター系。
【請求項36】
第一のポリペプチドサブユニットがTEM−1βラクタマーゼのα断片を含み、ならびに第二のポリペプチドサブユニットがTEM−1βラクタマーゼのω断片を含み、ならびに第二のポリペプチドサブユニット中の前記アミノ酸配列変化がM211Q置換を含む、請求項34又は請求項35に記載のレポーター系。
【請求項37】
第一及び第二のポリペプチドサブユニットが、それぞれ、第一及び第二のインタラクタードメインにサブユニットを連結するフレキシブルペプチドリンカーをそれぞれ含む、請求項27から請求項36の何れか一項に記載のレポーター系。
【請求項38】
第一及び第二の成分が実質的に単離され精製された形態である、請求項27から請求項37の何れか一項に記載のレポーター系。
【請求項39】
第一及び/又は第二のポリペプチドサブユニットが、細菌細胞中で組み換え産生され、変性条件下で細胞から抽出され、固体マトリクスに結合され、ならびに次いで固体マトリクスに結合されると同時に活性のある立体構造に再び折り畳まれる、請求項27から請求項38の何れか一項に記載のレポーター系。
【請求項40】
試料中の関心のある被分析物質の存在を調べるための、請求項27から請求項39の何れか一項に記載のレポーター系の使用。
【請求項41】
試料中の関心のある被分析物質の存在を調べるための方法であって、請求項27から請求項39の何れか一項に記載のレポーター系と試料を接触させること、ならびに第一及び第二のポリペプチドサブユニットの会合の結果による酵素活性の有無を検出することを含む、方法。
【請求項42】
試料が生体試料である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
生体試料が血液試料又は血清試料である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
被分析物質が、ウイルス性又は細菌性抗原と結合する抗体である、請求項41から請求項43の何れか一項に記載の方法。
【請求項45】
被分析物質がウイルス性又は細菌性抗原である、請求項41から請求項43の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
第一及び第二のポリペプチド断片の最終濃度が10pMより高い、請求項41から請求項45の何れか一項に記載の方法。
【請求項1】
酵素活性の阻害剤の存在下で酵素活性を保持するポリペプチド複合体を生成させるための少なくとも第二のポリペプチドとの会合において操作可能なポリペプチド。
【請求項2】
ポリペプチドが一部であるポリペプチド複合体の酵素活性が、β−ラクタム抗生物質のβ−ラクタム環の加水分解を含み、ならびに酵素活性の阻害剤がβ−ラクタマーゼの阻害剤である、請求項1のポリペプチド。
【請求項3】
単離され及び精製された請求項1又は請求項2のポリペプチド。
【請求項4】
インタラクタードメインに連結されてレポーター断片ペアメンバーを形成する、請求項1から3の何れか一項にポリペプチド。
【請求項5】
インタラクタードメインがリンカーによりポリペプチドに連結される、請求項4のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項6】
強制的酵素相補性アッセイにおいて操作可能な、請求項4又は請求項5のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項7】
インビボ強制的酵素相補性アッセイにおいて操作可能な、請求項6のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項8】
インビトロ強制的酵素相補性アッセイにおいて操作可能な、請求項6のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項9】
メンバーが、そのアミノ酸配列変化を欠く相同配列の安定性と比較してインビトロアッセイ条件下で安定性を促進するアミノ酸配列変化を含む、請求項8のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項10】
メンバーが、そのアミノ酸配列変化を欠く相同配列の溶解性と比較して溶解性を促進するアミノ酸配列変化を含む、請求項8のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項11】
単離され及び精製された請求項4から請求項10の何れか一項のレポーター断片ペアメンバー。
【請求項12】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列において述べられる連続アミノ酸配列を含む単離ペプチド。
【請求項13】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列のポリペプチドをコードする配列を含む、単離ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項1、3、12又は13の何れか一項のポリペプチドを含む、強制的酵素断片相補性アッセイ。
【請求項15】
請求項4から11の何れか一項のレポーター断片ペアメンバーを含む、強制的酵素断片相補性アッセイ。
【請求項16】
アツセイがインビボで行われる、請求項14又は請求項15のアッセイ。
【請求項17】
アッセイがインビトロで行われる、請求項14又は請求項15のアッセイ。
【請求項18】
血液又は血清を含む、請求項17のアッセイ。
【請求項19】
ポリペプチド又はレポーター断片ペアメンバーが一部である複合体の酵素活性の阻害剤の存在下で行われる、請求項14から18の何れか一項のアッセイ。
【請求項20】
ポリペプチドが一部である複合体の酵素活性がβ−ラクタム抗生物質のβ−ラクタム環の加水分解を含み、ならびに酵素活性の阻害剤がβ−ラクタマーゼの阻害剤である、請求項14から19の何れか一項のアッセイ。
【請求項21】
インタラクタードメインが、2価金属陽イオン、抗体、代謝産物、疾患マーカー又は抗原からなる群から選択される関心のある被分析物質に対して親和性を有する、請求項14から20の何れか一項のアッセイ。
【請求項22】
被分析物質の存在についてアッセイする方法であって、
(a)関心のある被分析物質の存在について試験しようとする試料を得る段階;
(b)被分析物質に対して親和性があるインタラクタードメインを含む、精製された第一のレポーター断片ペアメンバーを得る段階;
(c)関心のある被分析物質に対して親和性があり、ならびに関心のある被分析物質との第一及び第二のレポーター断片ペアメンバーのインタラクタードメインの親和性を通じ、第一のレポーター断片ペアメンバーとの会合に際してレポーター酵素活性を再構成することにおいて操作可能であるインタラクタードメインを含む精製された第二のレポーター断片ペアメンバーを得る段階;及び
(d)第一及び第二のレポーター断片ペアメンバーが、被分析物質とのインタラクタードメインの親和性を通じて会合することができるのに十分なインビトロでのアッセイ条件を提供する段階を含み、レポーター酵素活性の再構成が試料中での被分析物質の存在を示す、方法。
【請求項23】
被分析物質が2価陽イオンである、請求項22の方法。
【請求項24】
被分析物質が抗体である、請求項22の方法。
【請求項25】
均一インビトロ強制的酵素断片相補性アッセイを行うためのキットであって、関心のある被分析物質に対して親和性があるインタラクタードメインを含む単離レポーター断片ペアメンバーを含み、単離レポーター断片ペアメンバーが、インビトロアッセイ条件下で安定であり及び操作可能である、キット。
【請求項26】
均一インビトロ強制的酵素断片相補性アッセイを行うためのキットであって、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、67、69、71、73、75、77、81及び83からなる群から選択される配列の単離ポリペプチドを含む、キット。
【請求項27】
第一のポリペプチドレポーターサブユニットを含む第一の成分及び第二のポリペプチドレポーターサブユニットを含む第二の成分を含むレポーター系であって、第一のサブユニット及び第二のサブユニットが、検出可能なシグナルを生成し得る酵素活性を有する活性のあるポリペプチド複合体を生成させるために会合することができ、前記会合が関心のある被分析物質に対する第一及び第二の成分の結合により媒介され;第一のポリペプチドサブユニット及び/又は第二のポリペプチドレポーターサブユニットが、阻害剤による前記酵素活性の阻害に対する活性ポリペプチド複合体の感受性を低下させる1以上のアミノ酸配列変化を含む、レポーター系。
【請求項28】
阻害剤が、生体試料中に存在する物質である、請求項27に記載のレポーター系。
【請求項29】
生体試料中に存在する物質が抗生物質である、請求項28に記載のレポーター系。
【請求項30】
活性ポリペプチド複合体がβ−ラクタマーゼ活性を有する、請求項27から29の何れか一項に記載のレポーター系。
【請求項31】
第一のポリペプチドレポーターサブユニットがβラクタマーゼのα断片を含み、ならびに第二のポリペプチドレポーターサブユニットがβラクタマーゼのω断片を含む、請求項30に記載のレポーター系。
【請求項32】
βラクタマーゼがTEM−1βラクタマーゼであり、ならびに第一のポリペプチドサブユニット中の前記アミノ酸配列変化がM69L又はM69I置換を含む、請求項31に記載のレポーター系。
【請求項33】
βラクタマーゼがTEM−1βラクタマーゼであり、ならびに第二のポリペプチドサブユニット中の前記アミノ酸配列変化がN276D置換を含む、請求項31又は請求項32に記載のレポーター系。
【請求項34】
第一及び/又は第二のレポーターポリペプチドサブユニットが、インビトロでのサブユニットの安定性及び/又は溶解性を促進する1以上のアミノ酸変化を含む、請求項27から33の何れか一項に記載のレポーター系。
【請求項35】
第一のポリペプチドサブユニットがTEM−1βラクタマーゼのα断片を含み、ならびに第二のポリペプチドサブユニットがTEM−1βラクタマーゼのω断片を含み、ならびに第一のポリペプチドサブユニット中の前記アミノ酸配列変化がV74T置換及び/又はM182T置換を含む、請求項34に記載のレポーター系。
【請求項36】
第一のポリペプチドサブユニットがTEM−1βラクタマーゼのα断片を含み、ならびに第二のポリペプチドサブユニットがTEM−1βラクタマーゼのω断片を含み、ならびに第二のポリペプチドサブユニット中の前記アミノ酸配列変化がM211Q置換を含む、請求項34又は請求項35に記載のレポーター系。
【請求項37】
第一及び第二のポリペプチドサブユニットが、それぞれ、第一及び第二のインタラクタードメインにサブユニットを連結するフレキシブルペプチドリンカーをそれぞれ含む、請求項27から請求項36の何れか一項に記載のレポーター系。
【請求項38】
第一及び第二の成分が実質的に単離され精製された形態である、請求項27から請求項37の何れか一項に記載のレポーター系。
【請求項39】
第一及び/又は第二のポリペプチドサブユニットが、細菌細胞中で組み換え産生され、変性条件下で細胞から抽出され、固体マトリクスに結合され、ならびに次いで固体マトリクスに結合されると同時に活性のある立体構造に再び折り畳まれる、請求項27から請求項38の何れか一項に記載のレポーター系。
【請求項40】
試料中の関心のある被分析物質の存在を調べるための、請求項27から請求項39の何れか一項に記載のレポーター系の使用。
【請求項41】
試料中の関心のある被分析物質の存在を調べるための方法であって、請求項27から請求項39の何れか一項に記載のレポーター系と試料を接触させること、ならびに第一及び第二のポリペプチドサブユニットの会合の結果による酵素活性の有無を検出することを含む、方法。
【請求項42】
試料が生体試料である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
生体試料が血液試料又は血清試料である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
被分析物質が、ウイルス性又は細菌性抗原と結合する抗体である、請求項41から請求項43の何れか一項に記載の方法。
【請求項45】
被分析物質がウイルス性又は細菌性抗原である、請求項41から請求項43の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
第一及び第二のポリペプチド断片の最終濃度が10pMより高い、請求項41から請求項45の何れか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2010−517945(P2010−517945A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547488(P2009−547488)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000508
【国際公開番号】WO2008/095222
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509220231)パンバイオ・リミテツド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000508
【国際公開番号】WO2008/095222
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509220231)パンバイオ・リミテツド (1)
【Fターム(参考)】
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