垂木固定用木ネジ
【課題】 屋根の強度メンバーである垂木を横架材に木ネジによって簡易に固定できると共に、垂木と横架材との締結保持力が従来の固定金具と同等のものの提供。
【解決手段】 木ネジの軸部1の後端に円錐台形部2を介して頭部3を有し、そのネジ6の外直径D1に相当する軸面積とその軸方向長さとの積が714 mm3〜1250 mm3であり、頭部3の有効鍔部面積が60 mm2〜105 mm2であると共に、頭部3の縦断面における下面側円錐角θが30度以下であること。
【解決手段】 木ネジの軸部1の後端に円錐台形部2を介して頭部3を有し、そのネジ6の外直径D1に相当する軸面積とその軸方向長さとの積が714 mm3〜1250 mm3であり、頭部3の有効鍔部面積が60 mm2〜105 mm2であると共に、頭部3の縦断面における下面側円錐角θが30度以下であること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の強度メンバーとして用いられる垂木と横架材(もや,小屋ばり,軒げた等の垂木固定材)との間を迅速に締結固定し得る垂木固定用木ネジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、垂木と横架材との間を固定するは、図8に示すいわゆる、ひねり金物と言われる垂木用固定金具7が用いられていた。
これは、細長い金属板を中間部において一端部側と他端部側とが互いに90度異なるように捩じり加工し、夫々にビス穴を複数穿設したものである。そして、金具の一方側を垂木15の側面に釘10により釘止めすると共に、他方側を横架材9である桁等に釘止めしていた。このとき、一本の垂木固定用金具7の必要とする耐力は、3000N〜5250Nが要求されていた。即ち、釘止め後に垂木15に外力を加えて横架材9からそれを引き剥がすのに必要な力が3000N〜5250Nとなる。
なお、垂木および横架材は通常松材、檜材、杉材等が用いられ、垂木は断面の幅が40 mm〜60 mmで高さが40 mm〜200 mmのものが一般に用いられていた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−38775号公報
【特許文献2】特開2002−88965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の垂木用固定金具は、その取付け作業に多くの時間と労力を要する欠点があった。特に、足場の悪いところで多数の垂木に夫々多数ヶ所金具を取り付ける作業は体力を消耗した。また、4本ずつの釘と金具とを必要とし、コスト高となる欠点もあった。
そこで、本発明は短時間で取り付けられ、従来の垂木用固定金具と同等の保持力を有する垂木固定用木ネジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、軸部(1)の後端に円錐台形部(2)を介して偏平な頭部(3)を有すると共に、その軸部(1)の先端部に鋭角の円錐部(4)を有し、その先端部(4)および中間部の外周に先端部ネジ(5)および中間部ネジ(6)が形成された垂木固定用木ネジにおいて、
その中間部ネジ(6)の外直径D1の断面積と、中間部ネジ(6) の軸方向長さLとの積で表される体積が、714 mm3 〜1250 mm3であり、
前記頭部(3)の平面積から前記円錐台形部(2)の最大の断面積を差し引いた前記頭部(3)の有効鍔部面積が60 mm2 〜105 mm2であり、
前記頭部(3)の縦断面における下面側円錐角θが0〜30度であると共に、前記円錐台形部(2)の円錐角βが30度以上であることを特徴とする垂木固定用木ネジである。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
中間部ネジ(6)の存在しない部分で、軸部(1)の直径が3.5 mm〜4.2 mmのとき、
前記中間部ネジ(6)の外径D1が5.0 mm〜6.0mm で且つ、その中間部ネジ(6)の前記軸方向長さLが30mm〜60mmであることを特徴とする垂木固定用木ネジである。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
前記頭部(3)の端面に平面正方形に凹陥された回転工具の嵌着凹部(8)の対角線長さM0 が4.5 mm〜5.0 mmであるとき、前記頭部(3)の直径Dhが11.0 mm〜14.0 mmである垂木固定用木ネジである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の垂木固定用木ネジは、その各構成を請求項1に記載の範囲に特定したから、垂木を固定するのに必要な従来の垂木固定用金具と同等の強度を保持し、且つ垂木を横架材に回転工具で容易、迅速に取り付けることができる。
即ち、木ネジとして有効な中間部ネジ6のネジ部体積を714 mm3〜1250 mm3としたので、そのネジ部による必要耐力を3000N〜5250N保持し得る。
また、頭部3の有効鍔部面積を60 mm2〜105 mm2としたので、その鍔部が木材を押さえ込む必要耐力3000N〜5250Nを確保し得る。そして、中間部ネジ6の耐力と鍔部の耐力とのバランスにより、垂木を横架材に確実に保持しえる。
さらに、頭部3の縦断面における下面側円錐角θを30度以下としたので、そのθに基づく鍔部の木材を押さえ込む力を有効に保持し得る。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、その軸部1の直径を3.5 mm〜4.2 mmとすることにより、経済的で製造容易な木ネジを提供できると共に、その軸部1の直径に応じて中間部ネジ6の外径D1を5.0 mm〜6.0 mm と、無理なく形成することができる。
そして請求項1の前記ネジ部体積の必要条件に基づき、中間部ネジ6の軸方向長さLを30mm〜60mmとすることができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、頭部3の端面に平面正方形の回転工具の嵌着凹部8が形成され、その対角線長さM0 を4.5 mm〜5.0 mmとした場合には、その嵌着凹部8の先端部が前記円錐台形部2にまで達するものとして、有効鍔部面積の条件から頭部3の直径Dhを11.0 mm〜14.0 mmとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明の垂木固定用木ネジ12の一部切断、正面図及び平面図であり、図7は同木ネジ12により垂木15を横架材9に締結固定した説明図。
この垂木固定用木ネジ12は、軸部1の後端に円錐台形部2を介して偏平な頭部3が設けられている。さらに、頭部3の上面には回転工具の嵌着凹部8が形成されている。この嵌着凹部8の高さは、図1(A)の如く円錐部3に達する。そして軸部1の先端部には、鋭角な円錐部4を有し、その円錐部4に先端部ネジ5が設けられる。また、その先端部ネジ5の上端に連続して中間部ネジ6が形成されている。
【0012】
このような垂木固定用木ネジ12を用い、図7の如く、軸部1と横架材9との間を固定し、図8の垂木固定金具7と同一の固定能力を有するには、次の条件が必要である。
先ず、第1に先端部ネジ5および中間部ネジ6を横架材9に螺着固定したとき、垂木固定用木ネジ12の引抜き力が垂木固定金具7と同様に3000N〜5250N必要である。そのために、本発明者の後述する実験より、次の条件にすれば良いことが明らかとなった。
即ち、中間部ネジ6の外直径D1を断面積とし、それと軸方向長さLとの積である体積が、714 mm3 〜1250mm3とする。
【0013】
この条件は、次の実験から求められた。実験では通常広く使用される垂木材のうち最も弱い材料である杉材を使用した。これは杉材で所定の固定強度が保たれれば、他の垂木材でも十分な固定強度が保てるからである。
そこで杉材からなる横架材9に、垂木固定用木ネジ12の先端部ネジ5及び中間部ネジ6を完全に螺着締結する。そして、垂木固定用木ネジ12を図2において上方に引っ張る。その引張の外力を次第に強くし、垂木固定用木ネジ12が横架材9から引き抜ける力を次の各種の条件の下で測定する。
先ず、中間部ネジ6,先端部ネジ5の長さ及び中間部ネジ6の外直径D1(ネジの山直径)を一定とし、中間部ネジ6の谷部の直径D0を各種変えてみた。
なお、このときD1とD0との比を1:1.43〜1:1.77の範囲とする。(この値は市販の大多数の木ネジに広く採用されている)。そして、D0を2.0 mm〜4.0 mmまで1mmおきに細くしたものを用い実験を行った。本発明者の予測では、D1とD0との差が大きい程、引抜き耐力があると予測した。ところが予測に反し、D0が太くても細くても引抜き耐力は略同一であることが判った。
【0014】
次に、中間部ネジ6の外直径D1(山径)及び谷径D0を一定とすると共に、先端部ネジ5の長さを一定とし、中間部ネジ6の長さを各種変化させ同様の実験を行った。そして中間部ネジ6及び先端部ネジ5の引抜き耐力を測定した結果、引抜きの耐力は中間部ネジ6の長さLに比例し、先端部ネジ5による引抜き力は殆ど関係がないことが判った。
さらに実験の結果、引抜き強度は、中間部ネジ6の外直径D1を軸断面として、それと中間部ネジ6の長さLとの積から表される体積に比例する。
その実験の結果、上記単位体積当たりの強度の平均値は4.2 N/mm3であることが確認された。従って、必要な耐力3000N〜5250Nを単位体積強度で除した値が中間部ネジ6の必要体積であり、それは714 mm3 〜1250mm3である。
【0015】
次に、垂木固定用木ネジ12の中間部ネジ6が横架材9に所定の引抜き強度を有して螺着されたとき、垂木固定用木ネジ12の頭部3によって垂木15を確実に支持する必要がある。即ち、垂木15が上方に持ち上げられたとき、頭部3が垂木15内に潜り込んでしまった場合には、垂木15は横架材9を保持することができない。
そこで、頭部3の保持力を各種条件でどのように変化するかを実験的に求めた。
そのために先ず、頭部3の直径を各種大きさのものを用意し、図4に示す如く、垂木固定用木ネジ12の軸部1を垂木15に貫通させ、その頭部3を垂木15に接触させまたは僅かにもぐらせた状態とする。このとき垂木15は図示しないフレームに固定しておく。そして、軸部1を下方に矢印の如く引っ張る。その引張外力を次第に強くし、頭部3が垂木15に許容深さ潜り込む引っ張り力を測定した。このとき垂木15として比較的柔らかい杉材を使用した。
【0016】
その結果、次のことが明らかとなった。
垂木固定用木ネジ12の引抜き耐力は、頭部3の有効鍔部13の面積に比例する。即ち、頭部3の平面積から軸部1の断面積を差し引いた差が有効鍔部13であり、その有効鍔部13の面積に引抜き耐力が比例する。
そして実験の結果、有効鍔部13による単位面積当たりの引抜き力は50 N/mm2 であることが判明した。ここで、有効鍔部13が負担する必要耐力は3000N〜5250Nであるので、それを上記単位面積当たりの力、50N/mm2 で除すと、有効鍔部13の必要面積は60mm2 〜105mm2となることが判明した。
【0017】
次に、本発明者は図5に示す木ネジの頭部を各種の形状とした実験を行った。
これは、軸部1の直径及び頭部3の直径を同一とし、頭部3の下面側の有効鍔部13の傾斜角度θが夫々異なったものを各種用意し、垂木15に軸部1を貫通させ、図において軸部1を下方に引っ張り、その外力を次第に強くしていった。そして、頭部3が垂木15に許容深さ潜り込む引っ張り力を特定した。その結果、次のことが判った。
θが0度〜30度の間は、θが変わってもその引っ張り耐力は殆ど変化しなかった。しかしながら、30度を越えると急激に引っ張り耐力が低下した。それ故、頭部3の有効鍔部13の傾斜角度θは30度以下である必要がある。
【0018】
ところが、頭部3の上面に回転工具の嵌着凹部8を充分大きく形成する必要がある。そのためには、頭部3の下面が図4,図5の形状のものは、経済性の観点から実質的に製作できないことが判った。嵌着凹部8が軸部1の付根部に達し、頭部3の強度が弱くなるためである。そこで図1に示す如く、軸部1の上端には円錐台形部2を介して頭部3を取付けることにする。それにより、嵌着凹部8の深さを充分深くしつつ、頭部3回りの強度を強くするものである。このとき、円錐台形部2の傾斜角度βは製造上の都合から30度以上にならざるを得ない。すると、円錐台形部2自体は図4の実験結果から、その角度が30度以上であるので保持力が期待できないものとなる。従って、図1の垂木固定用木ネジ12において、有効鍔部13は頭部3の平面積から円錐台形部2の最大断面積を差し引いた値であり、それが60mm2 〜105 mm2 である。
【0019】
次に、軸部1の直径は製造上の都合及び経済性から3.5 mm〜4.2 mmが最適範囲である。軸部1の直径を3.5 mm以下とすると、垂木固定用木ネジとしては比較的長いものとならざるを得ないため、強度が弱く、製造が困難となる。また、軸部1の直径が4.2 mm以上であると、経済性が悪くなりコスト高となる欠点がある。しかも、軸部1の直径は4.2 mmまでで充分その強度を保つことができるからである。そこで、軸部1の直径を3.5 mm〜4.2 mmとしてとき、中間部ネジ6の外径D1(山径)は5.0 mm〜6.0mm の範囲で作ることができる。それによって充分なる中間部ネジ6の外直径D1を得ることができる。この外直径D1で前記中間部ネジ6の必要体積714 mm3 〜1250mm3を除すると、必要な中間部ネジ6の軸方向長さLは約30mm〜60mmとなる(請求項2の構成)。
【0020】
次に、頭部3の上面に形成される平面正方形の回転工具用嵌着凹部8は、その対角線長さM0が4.5 mm〜5.0 mmの範囲に入るのが一般的である。これは木ネジ用の嵌着工具の先端部の一辺が3.0 mm〜4.0 mmであって、それが嵌着される嵌着凹部8の対角線長さM0が4.5 mm〜6.0 mmとなるものである。すると、円錐台形部2の最大直径であるDs は図1(B)において、嵌着凹部8の対角線長さM0+2mm必要である。これは図1(A)において、嵌着凹部8の底部と円錐台形部2の外面とが近接しないようにするためである。結果、Ds の範囲は6.5 mm〜8.0 mmとなる。そして有効鍔部13の必要面積とDh 直径部分の断面積との和が頭部3の平面積である。この平面積は、円錐台形部2の最大断面積をS2とすると、上記有効断面積の条件から、最小でS2+60mm2であり、最大でS2+105mm2である。これから頭部3の外直径を逆算すると、頭部3の直径Dh は11.0mm〜14.0mm程度になる。この構成が請求項3に記載されている。
これは、頭部平面積:Dh2 π/4=Ds2 π/4 + 60 または105 の式からDh を求めたものである。
【0021】
次に、図6は本発明の第2の実施の形態を示し、この例が図1のそれと異なる点は、頭部3と軸部1との付根部分に首部ネジ14が形成されたことである。
この首部ネジ14のネジ高さは、極めて小なるものである。この首部ネジ14は、中間部ネジ6が横架材9から外れて挿入されたとき、頭部3を逆方向に回転させてそれを引き抜けるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す垂木固定用木ネジ12の正面図及び平面図。
【図2】同垂木固定用木ネジ12を横架材9に螺着締結し、その引抜き強度を実験する説明図。
【図3】同垂木固定用木ネジ12の中間部ネジ6及び先端部ネジ6の作用を示す説明図。
【図4】同頭部3の保持力を求める実験方法の説明図。
【0023】
【図5】同頭部3の下面に傾斜した有効鍔部13が設けられた場合の頭部3の保持力の実験説明図。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す垂木固定用木ネジ12の正面図。
【図7】本発明の垂木固定用木ネジにより垂木を横架材に固定した説明図。
【図8】従来の垂木固定用金具の取付け状態を示す斜視説明図。
【符号の説明】
【0024】
1 軸部
2 円錐台形部
3 頭部
4 円錐部
5 先端部ネジ
6 中間部ネジ
7 垂木固定金具
【0025】
8 嵌着凹部
9 横架材
10 釘
11 欠切部
12 垂木固定用木ネジ
13 有効鍔部
14 首部ネジ
15 垂木
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の強度メンバーとして用いられる垂木と横架材(もや,小屋ばり,軒げた等の垂木固定材)との間を迅速に締結固定し得る垂木固定用木ネジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、垂木と横架材との間を固定するは、図8に示すいわゆる、ひねり金物と言われる垂木用固定金具7が用いられていた。
これは、細長い金属板を中間部において一端部側と他端部側とが互いに90度異なるように捩じり加工し、夫々にビス穴を複数穿設したものである。そして、金具の一方側を垂木15の側面に釘10により釘止めすると共に、他方側を横架材9である桁等に釘止めしていた。このとき、一本の垂木固定用金具7の必要とする耐力は、3000N〜5250Nが要求されていた。即ち、釘止め後に垂木15に外力を加えて横架材9からそれを引き剥がすのに必要な力が3000N〜5250Nとなる。
なお、垂木および横架材は通常松材、檜材、杉材等が用いられ、垂木は断面の幅が40 mm〜60 mmで高さが40 mm〜200 mmのものが一般に用いられていた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−38775号公報
【特許文献2】特開2002−88965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の垂木用固定金具は、その取付け作業に多くの時間と労力を要する欠点があった。特に、足場の悪いところで多数の垂木に夫々多数ヶ所金具を取り付ける作業は体力を消耗した。また、4本ずつの釘と金具とを必要とし、コスト高となる欠点もあった。
そこで、本発明は短時間で取り付けられ、従来の垂木用固定金具と同等の保持力を有する垂木固定用木ネジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、軸部(1)の後端に円錐台形部(2)を介して偏平な頭部(3)を有すると共に、その軸部(1)の先端部に鋭角の円錐部(4)を有し、その先端部(4)および中間部の外周に先端部ネジ(5)および中間部ネジ(6)が形成された垂木固定用木ネジにおいて、
その中間部ネジ(6)の外直径D1の断面積と、中間部ネジ(6) の軸方向長さLとの積で表される体積が、714 mm3 〜1250 mm3であり、
前記頭部(3)の平面積から前記円錐台形部(2)の最大の断面積を差し引いた前記頭部(3)の有効鍔部面積が60 mm2 〜105 mm2であり、
前記頭部(3)の縦断面における下面側円錐角θが0〜30度であると共に、前記円錐台形部(2)の円錐角βが30度以上であることを特徴とする垂木固定用木ネジである。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
中間部ネジ(6)の存在しない部分で、軸部(1)の直径が3.5 mm〜4.2 mmのとき、
前記中間部ネジ(6)の外径D1が5.0 mm〜6.0mm で且つ、その中間部ネジ(6)の前記軸方向長さLが30mm〜60mmであることを特徴とする垂木固定用木ネジである。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
前記頭部(3)の端面に平面正方形に凹陥された回転工具の嵌着凹部(8)の対角線長さM0 が4.5 mm〜5.0 mmであるとき、前記頭部(3)の直径Dhが11.0 mm〜14.0 mmである垂木固定用木ネジである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の垂木固定用木ネジは、その各構成を請求項1に記載の範囲に特定したから、垂木を固定するのに必要な従来の垂木固定用金具と同等の強度を保持し、且つ垂木を横架材に回転工具で容易、迅速に取り付けることができる。
即ち、木ネジとして有効な中間部ネジ6のネジ部体積を714 mm3〜1250 mm3としたので、そのネジ部による必要耐力を3000N〜5250N保持し得る。
また、頭部3の有効鍔部面積を60 mm2〜105 mm2としたので、その鍔部が木材を押さえ込む必要耐力3000N〜5250Nを確保し得る。そして、中間部ネジ6の耐力と鍔部の耐力とのバランスにより、垂木を横架材に確実に保持しえる。
さらに、頭部3の縦断面における下面側円錐角θを30度以下としたので、そのθに基づく鍔部の木材を押さえ込む力を有効に保持し得る。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、その軸部1の直径を3.5 mm〜4.2 mmとすることにより、経済的で製造容易な木ネジを提供できると共に、その軸部1の直径に応じて中間部ネジ6の外径D1を5.0 mm〜6.0 mm と、無理なく形成することができる。
そして請求項1の前記ネジ部体積の必要条件に基づき、中間部ネジ6の軸方向長さLを30mm〜60mmとすることができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、頭部3の端面に平面正方形の回転工具の嵌着凹部8が形成され、その対角線長さM0 を4.5 mm〜5.0 mmとした場合には、その嵌着凹部8の先端部が前記円錐台形部2にまで達するものとして、有効鍔部面積の条件から頭部3の直径Dhを11.0 mm〜14.0 mmとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明の垂木固定用木ネジ12の一部切断、正面図及び平面図であり、図7は同木ネジ12により垂木15を横架材9に締結固定した説明図。
この垂木固定用木ネジ12は、軸部1の後端に円錐台形部2を介して偏平な頭部3が設けられている。さらに、頭部3の上面には回転工具の嵌着凹部8が形成されている。この嵌着凹部8の高さは、図1(A)の如く円錐部3に達する。そして軸部1の先端部には、鋭角な円錐部4を有し、その円錐部4に先端部ネジ5が設けられる。また、その先端部ネジ5の上端に連続して中間部ネジ6が形成されている。
【0012】
このような垂木固定用木ネジ12を用い、図7の如く、軸部1と横架材9との間を固定し、図8の垂木固定金具7と同一の固定能力を有するには、次の条件が必要である。
先ず、第1に先端部ネジ5および中間部ネジ6を横架材9に螺着固定したとき、垂木固定用木ネジ12の引抜き力が垂木固定金具7と同様に3000N〜5250N必要である。そのために、本発明者の後述する実験より、次の条件にすれば良いことが明らかとなった。
即ち、中間部ネジ6の外直径D1を断面積とし、それと軸方向長さLとの積である体積が、714 mm3 〜1250mm3とする。
【0013】
この条件は、次の実験から求められた。実験では通常広く使用される垂木材のうち最も弱い材料である杉材を使用した。これは杉材で所定の固定強度が保たれれば、他の垂木材でも十分な固定強度が保てるからである。
そこで杉材からなる横架材9に、垂木固定用木ネジ12の先端部ネジ5及び中間部ネジ6を完全に螺着締結する。そして、垂木固定用木ネジ12を図2において上方に引っ張る。その引張の外力を次第に強くし、垂木固定用木ネジ12が横架材9から引き抜ける力を次の各種の条件の下で測定する。
先ず、中間部ネジ6,先端部ネジ5の長さ及び中間部ネジ6の外直径D1(ネジの山直径)を一定とし、中間部ネジ6の谷部の直径D0を各種変えてみた。
なお、このときD1とD0との比を1:1.43〜1:1.77の範囲とする。(この値は市販の大多数の木ネジに広く採用されている)。そして、D0を2.0 mm〜4.0 mmまで1mmおきに細くしたものを用い実験を行った。本発明者の予測では、D1とD0との差が大きい程、引抜き耐力があると予測した。ところが予測に反し、D0が太くても細くても引抜き耐力は略同一であることが判った。
【0014】
次に、中間部ネジ6の外直径D1(山径)及び谷径D0を一定とすると共に、先端部ネジ5の長さを一定とし、中間部ネジ6の長さを各種変化させ同様の実験を行った。そして中間部ネジ6及び先端部ネジ5の引抜き耐力を測定した結果、引抜きの耐力は中間部ネジ6の長さLに比例し、先端部ネジ5による引抜き力は殆ど関係がないことが判った。
さらに実験の結果、引抜き強度は、中間部ネジ6の外直径D1を軸断面として、それと中間部ネジ6の長さLとの積から表される体積に比例する。
その実験の結果、上記単位体積当たりの強度の平均値は4.2 N/mm3であることが確認された。従って、必要な耐力3000N〜5250Nを単位体積強度で除した値が中間部ネジ6の必要体積であり、それは714 mm3 〜1250mm3である。
【0015】
次に、垂木固定用木ネジ12の中間部ネジ6が横架材9に所定の引抜き強度を有して螺着されたとき、垂木固定用木ネジ12の頭部3によって垂木15を確実に支持する必要がある。即ち、垂木15が上方に持ち上げられたとき、頭部3が垂木15内に潜り込んでしまった場合には、垂木15は横架材9を保持することができない。
そこで、頭部3の保持力を各種条件でどのように変化するかを実験的に求めた。
そのために先ず、頭部3の直径を各種大きさのものを用意し、図4に示す如く、垂木固定用木ネジ12の軸部1を垂木15に貫通させ、その頭部3を垂木15に接触させまたは僅かにもぐらせた状態とする。このとき垂木15は図示しないフレームに固定しておく。そして、軸部1を下方に矢印の如く引っ張る。その引張外力を次第に強くし、頭部3が垂木15に許容深さ潜り込む引っ張り力を測定した。このとき垂木15として比較的柔らかい杉材を使用した。
【0016】
その結果、次のことが明らかとなった。
垂木固定用木ネジ12の引抜き耐力は、頭部3の有効鍔部13の面積に比例する。即ち、頭部3の平面積から軸部1の断面積を差し引いた差が有効鍔部13であり、その有効鍔部13の面積に引抜き耐力が比例する。
そして実験の結果、有効鍔部13による単位面積当たりの引抜き力は50 N/mm2 であることが判明した。ここで、有効鍔部13が負担する必要耐力は3000N〜5250Nであるので、それを上記単位面積当たりの力、50N/mm2 で除すと、有効鍔部13の必要面積は60mm2 〜105mm2となることが判明した。
【0017】
次に、本発明者は図5に示す木ネジの頭部を各種の形状とした実験を行った。
これは、軸部1の直径及び頭部3の直径を同一とし、頭部3の下面側の有効鍔部13の傾斜角度θが夫々異なったものを各種用意し、垂木15に軸部1を貫通させ、図において軸部1を下方に引っ張り、その外力を次第に強くしていった。そして、頭部3が垂木15に許容深さ潜り込む引っ張り力を特定した。その結果、次のことが判った。
θが0度〜30度の間は、θが変わってもその引っ張り耐力は殆ど変化しなかった。しかしながら、30度を越えると急激に引っ張り耐力が低下した。それ故、頭部3の有効鍔部13の傾斜角度θは30度以下である必要がある。
【0018】
ところが、頭部3の上面に回転工具の嵌着凹部8を充分大きく形成する必要がある。そのためには、頭部3の下面が図4,図5の形状のものは、経済性の観点から実質的に製作できないことが判った。嵌着凹部8が軸部1の付根部に達し、頭部3の強度が弱くなるためである。そこで図1に示す如く、軸部1の上端には円錐台形部2を介して頭部3を取付けることにする。それにより、嵌着凹部8の深さを充分深くしつつ、頭部3回りの強度を強くするものである。このとき、円錐台形部2の傾斜角度βは製造上の都合から30度以上にならざるを得ない。すると、円錐台形部2自体は図4の実験結果から、その角度が30度以上であるので保持力が期待できないものとなる。従って、図1の垂木固定用木ネジ12において、有効鍔部13は頭部3の平面積から円錐台形部2の最大断面積を差し引いた値であり、それが60mm2 〜105 mm2 である。
【0019】
次に、軸部1の直径は製造上の都合及び経済性から3.5 mm〜4.2 mmが最適範囲である。軸部1の直径を3.5 mm以下とすると、垂木固定用木ネジとしては比較的長いものとならざるを得ないため、強度が弱く、製造が困難となる。また、軸部1の直径が4.2 mm以上であると、経済性が悪くなりコスト高となる欠点がある。しかも、軸部1の直径は4.2 mmまでで充分その強度を保つことができるからである。そこで、軸部1の直径を3.5 mm〜4.2 mmとしてとき、中間部ネジ6の外径D1(山径)は5.0 mm〜6.0mm の範囲で作ることができる。それによって充分なる中間部ネジ6の外直径D1を得ることができる。この外直径D1で前記中間部ネジ6の必要体積714 mm3 〜1250mm3を除すると、必要な中間部ネジ6の軸方向長さLは約30mm〜60mmとなる(請求項2の構成)。
【0020】
次に、頭部3の上面に形成される平面正方形の回転工具用嵌着凹部8は、その対角線長さM0が4.5 mm〜5.0 mmの範囲に入るのが一般的である。これは木ネジ用の嵌着工具の先端部の一辺が3.0 mm〜4.0 mmであって、それが嵌着される嵌着凹部8の対角線長さM0が4.5 mm〜6.0 mmとなるものである。すると、円錐台形部2の最大直径であるDs は図1(B)において、嵌着凹部8の対角線長さM0+2mm必要である。これは図1(A)において、嵌着凹部8の底部と円錐台形部2の外面とが近接しないようにするためである。結果、Ds の範囲は6.5 mm〜8.0 mmとなる。そして有効鍔部13の必要面積とDh 直径部分の断面積との和が頭部3の平面積である。この平面積は、円錐台形部2の最大断面積をS2とすると、上記有効断面積の条件から、最小でS2+60mm2であり、最大でS2+105mm2である。これから頭部3の外直径を逆算すると、頭部3の直径Dh は11.0mm〜14.0mm程度になる。この構成が請求項3に記載されている。
これは、頭部平面積:Dh2 π/4=Ds2 π/4 + 60 または105 の式からDh を求めたものである。
【0021】
次に、図6は本発明の第2の実施の形態を示し、この例が図1のそれと異なる点は、頭部3と軸部1との付根部分に首部ネジ14が形成されたことである。
この首部ネジ14のネジ高さは、極めて小なるものである。この首部ネジ14は、中間部ネジ6が横架材9から外れて挿入されたとき、頭部3を逆方向に回転させてそれを引き抜けるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す垂木固定用木ネジ12の正面図及び平面図。
【図2】同垂木固定用木ネジ12を横架材9に螺着締結し、その引抜き強度を実験する説明図。
【図3】同垂木固定用木ネジ12の中間部ネジ6及び先端部ネジ6の作用を示す説明図。
【図4】同頭部3の保持力を求める実験方法の説明図。
【0023】
【図5】同頭部3の下面に傾斜した有効鍔部13が設けられた場合の頭部3の保持力の実験説明図。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す垂木固定用木ネジ12の正面図。
【図7】本発明の垂木固定用木ネジにより垂木を横架材に固定した説明図。
【図8】従来の垂木固定用金具の取付け状態を示す斜視説明図。
【符号の説明】
【0024】
1 軸部
2 円錐台形部
3 頭部
4 円錐部
5 先端部ネジ
6 中間部ネジ
7 垂木固定金具
【0025】
8 嵌着凹部
9 横架材
10 釘
11 欠切部
12 垂木固定用木ネジ
13 有効鍔部
14 首部ネジ
15 垂木
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部(1)の後端に円錐台形部(2)を介して偏平な頭部(3)を有すると共に、その軸部(1)の先端部に鋭角の円錐部(4)を有し、その先端部(4)および中間部の外周に先端部ネジ(5) および中間部ネジ(6)が形成された垂木固定用木ネジにおいて、
その中間部ネジ(6)の外直径D1の断面積と、中間部ネジ(6)の軸方向長さLとの積で表される体積が、714 mm3〜1250 mm3であり、
前記頭部(3)の平面積から前記円錐台形部(2)の最大の断面積を差し引いた前記頭部(3)の有効鍔部面積が60 mm2〜105 mm2であり、
前記頭部(3)の縦断面における下面側円錐角θが0〜30度であると共に、前記円錐台形部(2)の円錐角βが30度以上であることを特徴とする垂木固定用木ネジ。
【請求項2】
請求項1において、
中間部ネジ(6)の存在しない部分で、軸部(1)の直径が3.5 mm〜4.2 mmのとき、
前記中間部ネジ(6)の外径D1が5.0 mm〜6.0 mmで且つ、その中間部ネジ(6)の前記軸方向長さLが30 mm〜60 mmであることを特徴とする垂木固定用木ネジ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記頭部(3)の端面に平面正方形に凹陥された回転工具の嵌着凹部(8)の対角線長さM0が4.5 mm〜5.0 mmであるとき、前記頭部(3)の直径Dhが11.0 mm〜14.0 mmである垂木固定用木ネジ。
【請求項1】
軸部(1)の後端に円錐台形部(2)を介して偏平な頭部(3)を有すると共に、その軸部(1)の先端部に鋭角の円錐部(4)を有し、その先端部(4)および中間部の外周に先端部ネジ(5) および中間部ネジ(6)が形成された垂木固定用木ネジにおいて、
その中間部ネジ(6)の外直径D1の断面積と、中間部ネジ(6)の軸方向長さLとの積で表される体積が、714 mm3〜1250 mm3であり、
前記頭部(3)の平面積から前記円錐台形部(2)の最大の断面積を差し引いた前記頭部(3)の有効鍔部面積が60 mm2〜105 mm2であり、
前記頭部(3)の縦断面における下面側円錐角θが0〜30度であると共に、前記円錐台形部(2)の円錐角βが30度以上であることを特徴とする垂木固定用木ネジ。
【請求項2】
請求項1において、
中間部ネジ(6)の存在しない部分で、軸部(1)の直径が3.5 mm〜4.2 mmのとき、
前記中間部ネジ(6)の外径D1が5.0 mm〜6.0 mmで且つ、その中間部ネジ(6)の前記軸方向長さLが30 mm〜60 mmであることを特徴とする垂木固定用木ネジ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記頭部(3)の端面に平面正方形に凹陥された回転工具の嵌着凹部(8)の対角線長さM0が4.5 mm〜5.0 mmであるとき、前記頭部(3)の直径Dhが11.0 mm〜14.0 mmである垂木固定用木ネジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2007−327540(P2007−327540A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158357(P2006−158357)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(500167928)東日本パワーファスニング株式会社 (13)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(500167928)東日本パワーファスニング株式会社 (13)
[ Back to top ]