説明

垂直コンベア装置及び搬送装置

【課題】 簡素な構成の垂直コンベア装置ないし魚搬出装置を提供する。
【解決手段】 その一部を重力によって垂下させて垂下部13を形成した無端状の搬送チェーン11を備え、この搬送チェーン11を電動モータ25によって駆動するように構成する。また、搬送チェーン11の一部を貯溜するとともに、その貯溜長さを変更可能な貯溜部20を更に備える。チェーン11には複数のガイドローラ18が間隔をあけて取り付けられており、貯溜部20は複数の前記ガイドローラ18を支持可能な貯溜ガイド19を備え、この貯溜ガイド19において前記ガイドローラ18の間の間隔を狭めることで搬送チェーン11を弛ませて貯溜するよう構成されている。また、貯溜部20の入口側と出口側のスプロケット21・22に回転差を付与することで、貯溜部20での貯溜長さを変え、垂下部13の長さを変更できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直コンベア装置及び搬送装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送装置の例として、鰹漁船における生鰹の水揚作業の効率を高めるために、例えば特許文献1に開示される水揚げ機が提案されている。この特許文献1の水揚げ機は、魚倉口に懸架固定された取付台に上下動可能に配置されたガイドレールと、このガイドレールに沿って上下動自在なコンテナ取付台と、このコンテナ取付台を上動及び下動するための駆動機構と、コンテナ取付台に搭載されたコンテナの降下位置を調整するための変高機構と、を具備している。
【0003】
これにより、水揚作業中に鰹の総量が減少して堆積高さが低くなると、変高機構によってコンテナの降下位置を下げることで、鰹をコンテナ内に並べて入れる作業を容易としている。
【特許文献1】特開平9−151086号公報(要約、0027等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の構成は、鰹をコンテナに乗せて一旦甲板上へ搬送するとコンテナを再度下げなければならないので、作業効率が悪く、鰹の搬出に時間が掛かって鮮度を低下させてしまう。
【0005】
また、特許文献1の構成は、コンテナの降下位置を下げるには、ガイドレールを2名の乗組員が少し持ち上げるように支持して変高バーを一旦抜き取り、ガイドレールを一段又は二段下げてからコンテナ変高板の孔部に変高バーを再度挿通する作業が必要になる。従って、コンテナの降下位置の調整作業が重労働で時間も掛かり、この点からも改善の余地が残されていた。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、その一部を重力によって垂下させて垂下部を形成した湾曲自在な無端状部材と、この無端状部材を駆動する駆動部と、を備え、前記垂下部の部分の前記無端状部材を少なくとも用いて搬送物を搬送する垂直コンベア装置が提供される。
【0008】
この構成によれば、狭いスペースに設置しても邪魔にならない、コンパクトかつ簡素な構成の垂直コンベア装置が実現される。
【0009】
前記の垂直コンベア装置においては、前記無端状部材の一部を貯溜するとともに、その貯溜長さを変更可能な貯溜部を更に備えることが好ましい。
【0010】
この構成により、貯溜部での貯溜長さを変更することで垂下部の長さを容易に変更することができ、搬送経路の下端が状況に応じて変化する場合でも容易に対応することができる。また、搬送作業を行わないときは貯溜部での貯溜長さを長くして垂下部を短くすることで、装置をコンパクトなスペースに収納でき、また装置の移動・運搬も容易である。
【0011】
前記の垂直コンベア装置においては、前記無端状部材には複数のガイド体が間隔をあけて取り付けられ、前記貯溜部は複数の前記ガイド体を支持可能な支持部材を備え、この支持部材において前記ガイド体の間の間隔を狭めることで無端状部材を弛ませて貯溜することが好ましい。
【0012】
この構成により、ガイド体の間で自重によって搬送チェーンが垂れ下がるので、搬送チェーンが自然に折り畳まれる格好となり、コンパクトなスペースに搬送チェーンを貯溜することができる。この結果、貯溜部をコンパクト化することができる。
【0013】
前記の垂直コンベア装置においては、前記支持部材は下に凸の形状に構成されていることが好ましい。
【0014】
この構成により、当該下に凸の部分に複数のガイド体が無端状部材の重み等により自然に集合する形となるので、貯溜部での無端状部材の折り畳みが自動的に行われ、極めて簡素かつコンパクトな構成で貯溜部を構成することができる。
【0015】
前記の垂直コンベア装置においては、前記無端状部材はチェーンであることが好ましい。
【0016】
この構成により、駆動部分にスプロケットを用いることでチェーンの送り出し(駆動)を確実に行うことができる。更に、チェーン自体の自重で前記垂下部を綺麗に形成できる。また無端状部材を強度に優れたチェーンとすることで耐久性を向上でき、またチェーンという入手容易な部品を用いることで製造コストを低減することができる。
【0017】
前記の垂直コンベア装置においては、前記貯溜部の入口側には入口スプロケットを、出口側には出口スプロケットをそれぞれ備え、前記チェーンは、前記入口スプロケットと前記出口スプロケットとの間で弛ませて貯溜されることが好ましい。
【0018】
この構成により、入口スプロケットによって貯溜部の入口に搬送チェーンを確実に送り込んで貯溜できると同時に、貯溜されている搬送チェーンを貯溜部の出口から出口スプロケットによって確実に送り出すことができる。
【0019】
前記の垂直コンベア装置においては、前記入口スプロケットと前記出口スプロケットとの間に回転差を付与することで前記チェーンの貯溜長さを変更することが好ましい。
【0020】
この構成により、貯溜部における貯溜長さを簡単に変更できるので、垂下部の長さを容易に変更することができる。また、搬送チェーンを駆動しながら貯溜長さを変更して垂下部の長さを変更することも可能であり、搬送作業を中断しないで済むので、搬送効率を一層向上することができる。
【0021】
前記の垂直コンベア装置においては、前記入口スプロケットと前記出口スプロケットとの間に回転差を付与するための差動歯車機構を備えることが好ましい。
【0022】
これにより、簡素な構成で貯溜部における搬送チェーンの貯溜長さを変更することができる。
【0023】
本発明の第2の観点によれば、前記の垂直コンベア装置を用いて前記搬送物を搬送する搬送装置が提供される。
【0024】
この構成により、無端状部材を駆動することで搬送物を連続的に搬出することができるから、搬送効率を極めて良好とすることができる。
【0025】
前記の搬送装置においては、前記チェーンには複数の節部材が間隔をあけて備えられるとともに、互いに隣り合う前記節部材同士を繋ぐように可撓性の搬送面部材が備えられ、この搬送面部材に可撓性のポケット体を設けて、前記搬送物を入れて支持するポケットを構成することが好ましい。
【0026】
この構成により、ポケットが節部材の間で支持され、節部材の間で容易に撓むことができるので、搬送途中での搬送物の損傷を回避でき、品質の低下を防止できる。
【0027】
前記の搬送装置においては、前記無端状部材に沿って構成される搬送物の搬出経路の終端において、前記ポケットの開口がポケットの底部より低くなるように構成し、前記終端近傍において前記搬送面部材に接触する当接部材を設けることが好ましい。
【0028】
この構成により、搬送面部材の撓みが当接板によって防止されるので、搬送物をポケットから容易に引き抜いて取り出すことができ、作業性が一層向上される。
【0029】
前記の搬送装置においては、前記ポケットの開口を縁取るポケット体の縁部に芯材が備えられていることが好ましい。
【0030】
この構成によれば、芯材によってポケットの開口が広がるようにポケット体の縁が形付けられるので、搬送物をポケットに入れ易くなり、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る鰹搬出装置の全体側面図、図2はポケットに鰹を差し込んで支持させる様子を示す斜視図、図3は遊星歯車機構の詳細な様子を示す要部斜視図である。図4は貯溜部からチェーンを繰り出して図1の状態よりも垂下部を延長した様子を示す全体側面図である。
【0032】
本実施形態の鰹搬出装置(垂直コンベア装置、搬送装置)1は図1に示すように、近海カツオ漁船の水揚げの際に魚倉2から多数の鰹3を甲板上へ搬出するためのものであり、この鰹搬出装置1は、骨組状の機枠10と、この機枠10に支持される一対の搬送チェーン(無端状部材、チェーン)11・11と、この搬送チェーン11・11に備えられた多数のポケット12・12・・・とを有して構成されている。この搬送チェーン11・11は公知の構成とされており、多数のリンク部材をピン結合して湾曲自在に構成している。
【0033】
本実施形態において、前記機枠10は魚倉2の魚倉口4の脇に設置されている。この機枠10には、第1駆動スプロケット(入口スプロケット)21と、第2駆動スプロケット(出口スプロケット)22と、複数の従動スプロケット23・24と、が支持されている。前記搬送チェーン11・11は、これらスプロケット群21〜24に巻回されている。前記第2駆動スプロケット22には、差動歯車機構(差動機構)としての遊星歯車機構27が連結されている。この遊星歯車機構27の構成は後述する。
【0034】
前記機枠10には駆動部としての電動モータ25が配設されており、この電動モータ25の動力が伝動チェーン26・26を介して、第1駆動スプロケット21及び遊星歯車機構27に対しそれぞれ伝達されるように構成されている。この結果、前記搬送チェーン11・11を駆動スプロケット21・22を介して駆動できるようになっている。
【0035】
図1に示すように、第2駆動スプロケット22と従動スプロケット24との間において、前記搬送チェーン11・11は重力によって垂下されており、図1のV−V区間に垂下部13が形成されている。この結果、搬送チェーン11・11は、側面視で略「P」字状となるように巻回されている。上記垂下部13は、魚倉口4から魚倉2内へ向かって垂れ下げられて、その下端は魚倉2の水面(荷レベル)L近くに位置している。
【0036】
本実施形態では、上記搬送チェーン11のうち、前記垂下部13の下端部から従動スプロケット23・24を通過して第1駆動スプロケット21に至るまでの領域に、鰹3の搬送経路(搬出経路)が構成されている。この搬送経路の始端(魚倉2内に位置する垂下部13の下端)には作業者O1が待機して、魚倉2内の鰹3を拾って頭からポケット12に次々と差し込んでゆく。一方、搬送経路の終端(甲板上)には作業者O2が待機しており、この作業者O2は前記搬送経路を運ばれてきた鰹3を尾部を掴んでポケット12から取り出し、図略の他の作業者に手渡しでリレーしたり、図略の水揚用コンベア装置で更に搬送したりする。
【0037】
垂下部13の下端で作業者O1によってポケット12にセットされた鰹3は、垂直に引き上げられて魚倉口4から魚倉2外へ搬出され、従動スプロケット23の部分を通過した後、若干の距離だけ水平に搬送される。そして従動スプロケット24の部分を通過すると、ポケット12は、開口側(鰹3の尾部側)が低く、袋の底部(鰹3の頭部側)が高い状態になって、斜め下がり状の姿勢になって送られる。この部分に鰹3の搬送経路の終端が構成されており、この終端部分で待機する作業者O2によって、鰹3はポケット12から引き抜かれる。鰹3の一連の搬出作業は以上のようにして行われる。
【0038】
図2には前記垂下部13の下端部近傍(鰹3の搬送経路の始端側)の様子が斜視図として示され、この図2に示すように、搬送チェーン11・11は、鰹3・3の2匹分の幅よりも若干大きな隙間をあけて、平行に2本配置されている。そして、2本の搬送チェーン11・11同士を連結するように、細長い複数の連結棒(節部材)14・14・・・が備えられている。この連結棒14・14は、搬送チェーン11・11の全域にわたって、かつ搬送チェーン11・11の長手方向に互いに等しい間隔をあけて備えられている。
【0039】
そして、互いに隣り合う前記連結棒14・14同士を繋ぐように、可撓性の搬送布(搬送面部材)15がそれぞれ備えられる。そして、この搬送布15の一側の面(搬送チェーン11・11の外周側の面)に可撓性のポケット布(ポケット体)16の縁部が縫い付けられて、前記ポケット12を構成している。ポケット12・12・・・は、チェーン11・11の長手方向に沿って多数並べて配置される。前記ポケット布16は、搬送布15よりも幅広の布が用いられている。また、搬送布15及びポケット布16には防水加工が適宜施されている。
【0040】
なお、搬送布15及びポケット布16は連結棒14に固定されるだけであって、搬送チェーン11・11に対して搬送布15やポケット布16が直接に固定されてはいないので、搬送布15及びポケット布16は、搬送チェーン11とは独立に湾曲したり撓んだりすることができる。
【0041】
前記ポケット12は、その開口が前記搬送チェーン11の搬送方向先頭側を向くように設けられている。ここで図1や図2に示すように、第2駆動スプロケット22を出た搬送チェーン11は魚倉2内を下降した後、反転して上昇する。従って、このチェーン11・11の上昇時においては、前記ポケット12の開口は上側を向くことになる。よって、魚倉2内の作業者O1は、垂下部13の下端部近傍で上昇するポケット12に対し2匹の鰹3・3を上側から差し込むことができる。ポケット12に差し込まれて支持された鰹3・3は、搬送チェーン11・11の駆動に伴って引き上げられて、甲板上で作業者O2によって取り出される。
【0042】
図1に示すように、鰹3の搬送経路の終端近傍においては、斜め下がり状の当接面を有する当接板(当接部材)28が機枠10に固定されており、この当接板28の当接面は、この部分を通過するポケット12の搬送布15に対して当接可能になっている。こうすることで搬送布15の不必要な弛みが防止され、作業者O2は鰹3を当接板28に沿ってポケット12からスムーズに引き抜くことができる。
【0043】
なお、図2に示すように、前記ポケット12の開口を縁取るポケット布16の縁部には細長い芯材17が縫い付けられている。この芯材17は合成樹脂製とされ、略円弧状(曲線状)に成形されている。この構成とすることで、図2に示すように鰹3・3を入れる前のポケット布16の上縁が芯材17の自重によって垂れ下がり、ポケット12の開口の縁が下に凸の曲線状となって、当該開口を広く確保できるようになっている。この結果、作業者O1が鰹3・3を容易かつ確実にポケット12に差し込むことができる。
【0044】
それぞれの前記連結棒14の両端は搬送チェーン11・11の外側まで延出され、その端部にはガイドローラ(ガイド体)18が回転自在に支持される。一方、図1に示すように、前記第1駆動スプロケット21と第2駆動スプロケット22との間の領域(貯溜部20)において、前記機枠10には貯溜ガイド19が取り付けられている。この貯溜ガイド19は、複数の前記ガイドローラ18を支持できるように構成されている。
【0045】
貯溜部20はチェーン11・11を折り畳んだ状態で貯溜できるように構成されている。具体的には、第1駆動スプロケット21で搬送チェーン11が貯溜部20の入口へ送られると、前記ガイドローラ18が貯溜ガイド19上に乗るように移動し、搬送チェーン11が第1駆動スプロケット21から離れるに伴ってガイドローラ18が貯溜ガイド19によって支持されるようになる。この貯溜ガイド19は、中途部が下に凸となる「V」字状の屈曲形状乃至湾曲形状に構成されており、これによって、複数のガイドローラ18・18・・・はチェーン11等の自重によって斜面を転がり、貯溜ガイド19の長手方向中央部の窪み部分に集合し、隣接しながら並ぶ。従って、通常時よりも間隔を狭められたガイドローラ18・18・・・の間で、チェーン11(及びポケット12)は自重によって垂れ下がって小さく綺麗に折り畳まれた状態とされ、チェーン11を絡ませずにコンパクトな領域に貯溜することができる。なお、貯溜ガイド19の上側には規制部材29が設置されており、貯溜部20においてガイドローラ18が先頭側のガイドローラ18を乗り越えて順番が前後しないように、当該規制部材29で規制できるようになっている。
【0046】
一方、貯溜部20においてチェーン搬送方向の先頭側に位置するガイドローラ18は、第2駆動スプロケット22の回転により搬送チェーン11を介して引っ張られて貯溜ガイド19から抜ける。こうして、貯溜部20で貯溜されていたチェーン11は、回転する第2駆動スプロケット22によって下側の垂下部13へ送られる。
【0047】
次に、前述の遊星歯車機構27について説明する。図3の要部斜視図に示すように、この遊星歯車機構27は、回転自在に支持されたサンギア31と、このサンギア31の外周に等間隔に配置されて当該サンギア31に噛合する3つのプラネタリギア32と、回転自在に支持されて前記プラネタリギア32の外周側に噛合するインターナルギア33と、前記プラネタリギア32を回転自在に支持するキャリア34と、を備えて構成されている。
【0048】
前記サンギア31には、図1に示す電動モータ25の動力が、伝動チェーン26を介して入力される。一方、図3に示すように、前記インターナルギア33の外周には前記第2駆動スプロケット22が形成され、この第2駆動スプロケット22には前記搬送チェーン11が巻回されている。また、前記キャリア34にはハンドル軸35が連結されて、このハンドル軸35にはハンドル36が取り付けられている。なおインターナルギア33は、他側の搬送チェーン11を駆動する第2駆動スプロケット22に対し、図略の伝達機構を介して連結される。
【0049】
以上の構成で、ハンドル36を回転させず固定しているときは、電動モータ25から伝動チェーン26を介してサンギア31に入力された動力は、自転するプラネタリギア32を介してインターナルギア33に伝達され、第2駆動スプロケット22を駆動する。なお、このとき、第2駆動スプロケット22は前記第1駆動スプロケット21と等しい速度で駆動されるように、各ギア31・32・33のギア比等が設定されている。従って、ハンドル36が回転していないときは、貯溜部20における搬送チェーン11の貯溜長さは変更されない。
【0050】
一方、ハンドル36を一側(図3に示す矢印A方向)に回転させると、キャリア34が回転するので、プラネタリギア32は自転と同時に公転も行うこととなり、ハンドル36の回転量に相当する分だけインターナルギア33(第2駆動スプロケット22)の回転量が加算される。従って、第2駆動スプロケット22は第1駆動スプロケット21と比較して速い速度で駆動される。これは、貯溜部20へ送り込まれるチェーン11の速度よりも貯溜部20から送り出されるチェーン11の速度が大きいことを意味するので、図1の貯溜部20に貯溜されている搬送チェーン11の長さ(貯溜長さ)を短くすることができる。即ち、貯溜部20に貯溜されている搬送チェーン11を垂下部13へ送り出して、垂下部13の長さを長くすることができる。言い換えれば、垂下部13の下端を低くすることができる。
【0051】
ハンドル36を逆側(図3の矢印B方向)に回転させた場合は、ハンドル36の回転量に相当する分だけインターナルギア33(第2駆動スプロケット22)の回転量が減算されるので、第2駆動スプロケット22は第1駆動スプロケット21と比較して遅い速度で駆動される。この結果、図1の貯溜部20における貯溜長さを長くできるので、垂下部13の長さを短くし、垂下部13の下端を上昇させることができる。
【0052】
本実施形態の鰹搬出装置1ではこれを利用して、通常時はハンドル36を固定した状態で図1の状態から鰹3を連続的に順次搬出してゆき、魚倉2内の鰹3の量が次第に少なくなって荷レベルLが下降した場合には、それに応じてハンドル36を図3の矢印A方向に回転する。すると図4に示すように、貯溜部20の貯溜長さが少なくなってその分が垂下部13へ送り出され、垂下部13の長さが延長されるので、より低い荷レベルLからの鰹3の搬出が容易になる。なお、このハンドル36の回転は、チェーン11を停止させた状態で行うこともできるし、チェーン11の搬送駆動中(即ち、鰹搬出装置1の稼動中)に行うこともできる。
【0053】
以上に示すように、本実施形態の垂直コンベア装置としての鰹搬出装置1は、その一部を重力によって垂下させて垂下部13を形成した湾曲自在な無端状の搬送チェーン11・11と、この搬送チェーン11・11を駆動する電動モータ25と、を備え、この垂下部13の部分のチェーン11を少なくとも用いて搬送物(搬送対象物)としての鰹3を搬送するように構成している。従って、スペースが限られた漁船内でも邪魔にならないコンパクトかつ簡素な構成が実現されている。また、垂下部13はチェーン11を自重で垂下させる簡素な構成であるので、魚倉2の狭い魚倉口4を介して魚倉2内に垂れ下げるのも容易である。
【0054】
また、無端状のチェーン11を駆動することで鰹3を連続的に次々と魚倉2内(作業者O1の位置)から外側の高い位置(作業者O2の位置)へ搬出できるから、コンテナを往復駆動する特許文献1の鰹搬出装置と異なり流れ作業によって鰹3を搬出できるので、搬送効率が極めて良好である。
【0055】
また、本実施形態の鰹搬出装置1は、前記搬送チェーン11の一部を貯溜するとともに、その貯溜長さを変更可能な貯溜部20を更に備えている。従って、貯溜部20の貯溜長さを変更することで垂下部13の長さを容易に変更することができ、搬送経路の始端(下端)の高さが状況に応じて変化する場合でも容易に対応することができる。また、搬出作業を行わないときは貯溜部20での貯溜長さを長くして垂下部13を短くすることで、装置1をコンパクトなスペースに収納でき、また装置1の移動・運搬も容易である。
【0056】
また、本実施形態の鰹搬出装置1においては、前記搬送チェーン11には複数のガイドローラ18・18・・・が間隔をあけて取り付けられており、前記貯溜部20は複数のガイドローラ18を支持可能な貯溜ガイド19を備え、この貯溜ガイド19において前記ガイドローラ18の間の間隔を狭めることで搬送チェーン11を弛ませて貯溜するように構成している。従って、コンパクトなスペースに搬送チェーン11を貯溜することができる簡素な構成が実現される。また、貯溜部20の入口から出口に至るガイドローラ18の移動経路を貯溜ガイド19で案内することで、複数のガイドローラ18・18・・・を規則正しく並べた状態で支持し、ガイドローラ18・18・・・の間で搬送チェーン11を絡ませることなく綺麗に折り畳んでコンパクトな領域に貯溜することができる。
【0057】
また、前記貯溜ガイド19は下に凸の形状に構成されているので、貯溜ガイド19上でガイドローラ18がチェーン11の重み等により転がって、複数のガイドローラ18が貯溜ガイド19の下端の窪み部分に自然に集積するので、ガイドローラ18・18・・・同士の間隔が自然に狭まって、搬送チェーン11の折り畳みが自動的に行われる。従って、貯溜部20を極めて簡素かつコンパクトに構成することができる。
【0058】
また、本実施形態の鰹搬出装置1は、前記貯溜部20の入口側には第1駆動スプロケット21を、出口側には第2駆動スプロケット22をそれぞれ備える。そして、前記搬送チェーン11・11は、前記第1駆動スプロケット21と第2駆動スプロケット22との間で弛ませて貯溜されるように構成されている。従って、搬送チェーン11を第1駆動スプロケット21により貯溜部20の入口にスムーズに導入して貯溜部20で貯溜できるとともに、この貯溜部20の出口では搬送チェーン11を第2駆動スプロケット22に係合させて下流側へ確実に送り出すことができる。
【0059】
また、本実施形態の鰹搬出装置1は、前記第1駆動スプロケット21と第2駆動スプロケット22との間に回転差を付与することで搬送チェーン11の貯溜長さを変更するように構成されている。従って、貯溜部20における貯溜長さを簡単に変更できるので、垂下部13の長さを容易に変更することができる。また、搬送チェーン11を駆動させながら貯溜長さを変更して垂下部13の長さを変更することも可能であり、鰹3の搬送作業を中断しないで済むので、搬送効率を一層向上させることができる。
【0060】
また、2つの駆動スプロケット21・22の間に回転差を付与するために、差動歯車機構としての遊星歯車機構27が備えられている。従って、簡素な機構で貯溜部20における貯溜長さを変更することができる。
【0061】
また、本実施形態の鰹搬出装置1では、前記搬送チェーン11・11には複数の連結棒14が間隔をあけて備えられるとともに、互いに隣り合う前記連結棒14・14同士を繋ぐように可撓性の搬送布15が備えられている。そして、この搬送布15に可撓性のポケット布16を設け、これによって、鰹3を入れて支持するポケット12を構成している。従って、ポケット12が連結棒14・14間で支持され、連結棒14・14間で容易に撓むことができるので、鰹3を損傷させることがない。特に前記従動スプロケット23の部分(図1を参照)では、鰹3の搬送経路は垂直から水平へ向きを急激に変えることになるが、ポケット12は隣り合う連結棒14・14(いわば節としての役割を果たす)の間に支持されているために、この従動スプロケット23の箇所に差し掛かっても搬送布15やポケット布16に急激な力が加わることもなく、ポケット12の内部の鰹3は折損することなく円滑にその向きを変更することができる。
【0062】
また、本実施形態の鰹搬出装置1では、搬送チェーン11に沿って構成される鰹3の搬出経路の終端において、前記ポケット12の開口がポケット12の底部より低くなるように構成するとともに、前記終端近傍において前記搬送布15に接触する当接板28を設けている。従って、搬送布15が必要以上に撓まないように当接板28によって拘束されるので、作業者O2が鰹3をポケット12から容易に引き抜いて取り出すことができ、作業性が一層向上される。
【0063】
また、本実施形態の鰹搬出装置1では、前記ポケット12の開口を縁取るポケット布16の縁部に芯材17が備えられている。従って、ポケット布16の縁部が芯材17の重みによって垂れ下がり、ポケット12の開口が広がって鰹3を差し込み易くなるので、作業者O1の鰹3の差込み作業性が良好である。
【0064】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0065】
無端状部材としては、上記に例示したチェーン11に限定されず、湾曲自在で無端状の部材、例えば無端状の歯付ベルトに変更することができる。ただし、無端状部材としてチェーン11を採用した上記の実施形態では、駆動スプロケット21・22を用いることでチェーン11の送り出し(駆動)を確実に行うことができ、更にチェーン11がそれ自体の自重で綺麗に垂れ下がり、垂下部13を良好に形成できる点で優れている。更には、無端状部材を強度に優れたものとできて耐久性を向上でき、またチェーンという入手容易な汎用部品を用いることで製造コストを低減できる点で有利である。
【0066】
貯溜ガイド19に接触して転動するガイドローラ18の代わりに、例えば、貯溜ガイド19上を摺動可能なスライダをガイド体として設ける構成とすることができる。また、貯溜ガイド19の下に凸の形状は、図1に示すものに限定されず、他の様々な形状とすることができる。
【0067】
上記の実施形態では、連結棒14は隣り合うポケット12・12の間に1本ずつ設け、搬送布15は全てのポケット12で共通の無端状の布として構成されているが、各ポケット12の搬送方向先頭側と末尾側とに1本ずつ連結棒14・14を設け、互いに隣り合う連結棒14・14の間に1枚ずつ搬送布15及びポケット布16を配置する構成に変更することができる。言い換えれば、隣り合う各ポケット12・12の間に2本の連結棒14・14が互いに近接して配置される構成に変更することができる。この場合、使用に伴ってポケット12の搬送布15やポケット布16が破損したときに、その部分のポケット12だけを連結棒14・14から取り外して交換すれば済み、便宜である。
【0068】
また、2つの駆動スプロケット21・22以外のスプロケット、例えば従動スプロケット23・24に電動モータ25からの動力を伝達して駆動する構成に変更することもできる。
【0069】
遊星歯車機構27のキャリア軸にハンドル軸35でなく電動モータの出力軸を連結して、電動で貯溜部20の貯溜長さを変更可能な構成に変更することができる。また、遊星歯車機構27を第2駆動スプロケット22側でなく第1駆動スプロケット21側に設ける構成に変更することができる。また、遊星歯車機構27の代わりに、他の構成の差動機構を用いて、2つの駆動スプロケット21・22に回転差を付与することができる。他の差動機構としては、例えば、ベベルギアを用いた公知のデフ機構が考えられる。
【0070】
また、差動機構を用いることなく、2つの駆動スプロケット21・22を個別に可変速モータで駆動することで、2つの駆動スプロケット21・22に回転差を付与することができる。可変速モータは、パルス制御したり、インバータ制御することが考えられる。
【0071】
あるいは、駆動スプロケット21・22のそれぞれへの動力を断接するクラッチを設け、これらのクラッチを個別に断接制御することで、駆動スプロケット21・22の一方のみを駆動し、これによって2つの駆動スプロケット21・22に回転差を付与することができる。
【0072】
上記の実施形態では、作業者O1・O2が手作業で魚(搬送物)の出し入れをしているが、搬送終端側に作業者O2を配置する代わりに、魚を自重で落下させたり、更にシューターで他へ搬送する構成に変更することができる。また、搬送始端側に作業者O1を配置する代わりに、同期させたコンベア装置を鰹搬出装置1の隣に配置し、搬送物としての鰹がポケット12・12・・・に自動的に入る構成に変更することができる。
【0073】
図1のような貯溜部20の貯溜ガイド19の形状とすることに代えて、図5の変形例の貯溜部20’に示すように、その窪み部を第2駆動スプロケット22寄り(ガイドローラ18の移動方向側)に偏って配置した貯溜ガイド19’に構成することができる。この変形例は、上記の鰹搬出装置1のように搬送物を下から上へのみ搬送する用途の場合、入口側から貯溜部20へ導入されて自重で落ちるガイドローラ18を溜める部分の斜面が長くなって貯溜量を増加でき、垂下部13の長さの可変量を大きく確保できるメリットがある。ただし、搬送物を下から上へ搬送する場合、上から下へ搬送する場合のいずれにも使用できる汎用性の観点からは、図1の貯溜部20のように貯溜ガイド19を対称形状に構成することが有利である。
【0074】
本実施形態の装置は、鰹の搬出のみならず、他の様々な魚の搬出のために用いることができる。また搬送対象物は魚に限らず、ポケット12に水等の液体を溜めて汲み上げる汲上げ装置に適用することができる。また、本装置のような搬送チェーン11・11と電動モータ25、貯溜部20等を有する構成は、例えば、避難はしご装置、建材搬送装置、引越荷物搬送装置、ウインチ装置等に適用することができる。更に、搬送対象物を上側へでなく下側へ搬送するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る鰹搬出装置の全体側面図。
【図2】ポケットに鰹を差し込んで支持させる様子を示す斜視図。
【図3】遊星歯車機構の詳細な様子を示す要部斜視図。
【図4】貯溜部からチェーンを繰り出して図1の状態よりも垂下部を延長した様子を示す全体側面図。
【図5】貯溜部の変形例を示す、図4に対応する全体側面図。
【符号の説明】
【0076】
1 鰹搬出装置(垂直コンベア装置、搬送装置)
3 鰹(搬送対象物、魚)
11 搬送チェーン(無端状部材、チェーン)
13 垂下部
14 連結棒(節部材)
15 搬送布(搬送面部材)
16 ポケット布(ポケット体)
17 芯材
18 ガイドローラ(ガイド体)
19 貯溜ガイド(支持部材)
20 貯溜部
21 第1駆動スプロケット(入口スプロケット)
22 第2駆動スプロケット(出口スプロケット)
25 電動モータ(駆動部)
27 遊星歯車機構(差動歯車機構)
28 当接板(当接部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その一部を重力によって垂下させて垂下部を形成した湾曲自在な無端状部材と、
この無端状部材を駆動する駆動部と、を備え、
前記垂下部の部分の前記無端状部材を少なくとも用いて搬送物を搬送することを特徴とする、垂直コンベア装置。
【請求項2】
請求項1に記載の垂直コンベア装置であって、
前記無端状部材の一部を貯溜するとともに、その貯溜長さを変更可能な貯溜部を更に備えることを特徴とする、垂直コンベア装置。
【請求項3】
請求項2に記載の垂直コンベア装置であって、
前記無端状部材には複数のガイド体が間隔をあけて取り付けられており、
前記貯溜部は複数の前記ガイド体を支持可能な支持部材を備え、この支持部材において前記ガイド体の間の間隔を狭めることで無端状部材を弛ませて貯溜することを特徴とする、垂直コンベア装置。
【請求項4】
請求項3に記載の垂直コンベア装置であって、前記支持部材は下に凸の形状に構成されていることを特徴とする、垂直コンベア装置。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載の垂直コンベア装置であって、前記無端状部材はチェーンであることを特徴とする垂直コンベア装置。
【請求項6】
請求項5に記載の垂直コンベア装置であって、
前記貯溜部の入口側には入口スプロケットを、出口側には出口スプロケットをそれぞれ備え、
前記チェーンは、前記入口スプロケットと前記出口スプロケットとの間で弛ませて貯溜されることを特徴とする、垂直コンベア装置。
【請求項7】
請求項6に記載の垂直コンベア装置であって、
前記入口スプロケットと前記出口スプロケットとの間に回転差を付与することで前記チェーンの貯溜長さを変更することを特徴とする、垂直コンベア装置。
【請求項8】
請求項7に記載の垂直コンベア装置であって、
前記入口スプロケットと前記出口スプロケットとの間に回転差を付与するための差動歯車機構を備えることを特徴とする、垂直コンベア装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までの何れか一項に記載の垂直コンベア装置を用いて前記搬送物を搬送することを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
請求項9に記載の搬送装置であって、
前記無端状部材には複数の節部材が間隔をあけて備えられるとともに、互いに隣り合う前記節部材同士を繋ぐように可撓性の搬送面部材が備えられており、
この搬送面部材に可撓性のポケット体を設けて、前記搬送物を入れて支持するポケットを構成することを特徴とする、搬送装置。
【請求項11】
請求項10に記載の搬送装置であって、
前記無端状部材に沿って構成される前記搬送物の搬出経路の終端において、前記ポケットの開口がポケットの底部より低くなるように構成するとともに、
前記終端近傍において前記搬送面部材に接触する当接部材を設けたことを特徴とする、搬送装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の搬送装置であって、
前記ポケットの開口を縁取るポケット体の縁部に芯材が備えられていることを特徴とする、搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−84315(P2007−84315A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277313(P2005−277313)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【出願人】(505360742)
【Fターム(参考)】